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  • 特開-建物及び建築物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063637
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】建物及び建築物
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
E04H1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171743
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】松本 淳
【テーマコード(参考)】
2E025
【Fターム(参考)】
2E025AA12
2E025AA22
(57)【要約】
【課題】架構のシンプル化と、外観意匠性の向上と、を両立可能な、建物及び建築物を提供する。
【解決手段】本発明に係る建物は、最上階部と、任意階部と、を備え、前記最上階部の上梁は、ファサード正面視での前記最上階部の全幅に亘って、直線状に延在している第1梁部を備え、前記任意階部の上梁は、前記ファサード正面視での前記任意階部の全幅に亘って、直線状に延在する第2梁部と、直上階部の屋外床板部を支持し、前記ファサード正面視での前記屋外床板部の全幅に亘って、直線状に延在する第3梁部と、を備え、前記屋外床板部は庇状部を備え、前記庇状部を鉛直方向の下方から支持し、建物の屋外空間同士を区画している第1独立壁部と、側面視で、前記直上階部から前記最上階部までの階層のうち少なくとも1つの階層の外周壁部と重なる位置に配置され、建物の屋外空間同士を区画している第2独立壁部と、を更に備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数階層を備える建物であって、
最上階層に位置する最上階部と、
前記最上階層より下方に位置する任意の所定階層に位置する任意階部と、を備え、
前記最上階部の上梁は、ファサード正面視で最も手前側に位置し、前記ファサード正面視での前記最上階部の全幅に亘って、直線状に延在している第1梁部を備え、
前記任意階部の上梁は、
前記第1梁部の鉛直方向の直下に位置し、前記ファサード正面視での前記任意階部の全幅に亘って、直線状に延在する第2梁部と、
前記ファサード正面視で前記第2梁部より手前側に位置する、前記任意階部の1つ上の階層に位置する直上階部の屋外床板部、を支持する支持梁のうち、前記ファサード正面視で最も手前側に位置し、前記ファサード正面視での前記屋外床板部の全幅に亘って、直線状に延在する第3梁部と、を備え、
前記屋外床板部は、前記任意階部の屋内空間と屋外空間との間を区画する任意階外周壁部より屋外側に延設されている庇状部を備え、
前記屋外床板部の前記庇状部の鉛直方向の下方で地面から立設されていると共に、前記屋外床板部の前記庇状部を鉛直方向の下方から支持し、建物の屋外空間同士を区画している第1独立壁部と、
側面視で、前記直上階部から前記最上階部までの階層のうち少なくとも1つの階層の屋内空間と屋外空間とを区画する外周壁部と重なる位置に配置され、建物の屋外空間同士を区画している第2独立壁部と、を更に備える、建物。
【請求項2】
建物の屋内空間と屋外空間とを区画する外周壁は、
前記直上階部から前記最上階部までの階層により形成される上部外周壁部と、
前記任意階部以下の階層により形成される下部外周壁部と、を備え、
前記上部外周壁部のうち前記ファサード正面視で手前側に位置する上部ファサード外周壁部、及び、前記下部外周壁部のうち前記ファサード正面視で手前側に位置する下部ファサード外周壁部、の少なくも一方には、前記ファサード正面視で手前側とは反対の奥行き側にセットバックして形成されているセットバック壁部が設けられている、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記第1独立壁部及び前記第2独立壁部の少なくとも一方は、前記ファサード正面視で手前奥行き方向に延在する板状の直交壁部である、請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
前記第1独立壁部は、前記ファサード正面視で、前記屋外床板部のうち左右方向の一方側の端部に位置する前記庇状部、の鉛直方向の下方に位置している、請求項1又は2に記載の建物。
【請求項5】
前記第2独立壁部は、前記ファサード正面視で、前記屋外床板部のうち前記左右方向の他方側の端部に位置している、請求項4に記載の建物。
【請求項6】
請求項4に記載の建物と、
前記建物の周囲に設けられる外構と、を備える建築物であって、
前記建物の前記第1独立壁部は、前記ファサード正面視で手前奥行き方向に延在する板状の直交壁部であり、
前記外構は、
前記ファサード正面視で、前記左右方向のうち前記第1独立壁部としての前記直交壁部が位置する一方側とは反対の他方側で、前記屋外床板部より外側に配置され、手前奥行き方向に延在する板状の直交外構壁部と、
前記ファサード正面視で前記直交外構壁部の手前側に連なり、前記ファサード正面視で前記左右方向に延在する対向外構壁部と、を備え、
前記対向外構壁部の少なくとも一部は、前記ファサード正面視で、前記屋外床板部の鉛直方向の下方に位置している、建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物及び建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外面が略鉛直平面状に形成されている外周壁を備える、箱型の建物が知られている。特許文献1には、この種の建物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-34837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、外観形状がシンプルな外周壁を備える建物は、建物の架構もシンプル化できるため、構造材の製造性、建物の施工性など、建物の生産性を高めることができる。また、シンプル化することによって、建物のメンテナンス性を向上させることができる。その一方で、例えば高級感の演出など、外観意匠の観点では、依然として改善の余地がある。
【0005】
本発明は、架構のシンプル化と、外観意匠性の向上と、を両立可能な、建物及び建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様としての建物は、
(1)
複数階層を備える建物であって、
最上階層に位置する最上階部と、
前記最上階層より下方に位置する任意の所定階層に位置する任意階部と、を備え、
前記最上階部の上梁は、ファサード正面視で最も手前側に位置し、前記ファサード正面視での前記最上階部の全幅に亘って、直線状に延在している第1梁部を備え、
前記任意階部の上梁は、
前記第1梁部の鉛直方向の直下に位置し、前記ファサード正面視での前記任意階部の全幅に亘って、直線状に延在する第2梁部と、
前記ファサード正面視で前記第2梁部より手前側に位置する、前記任意階部の1つ上の階層に位置する直上階部の屋外床板部、を支持する支持梁のうち、前記ファサード正面視で最も手前側に位置し、前記ファサード正面視での前記屋外床板部の全幅に亘って、直線状に延在する第3梁部と、を備え、
前記屋外床板部は、前記任意階部の屋内空間と屋外空間との間を区画する任意階外周壁部より屋外側に延設されている庇状部を備え、
前記屋外床板部の前記庇状部の鉛直方向の下方で地面から立設されていると共に、前記屋外床板部の前記庇状部を鉛直方向の下方から支持し、建物の屋外空間同士を区画している第1独立壁部と、
側面視で、前記直上階部から前記最上階部までの階層のうち少なくとも1つの階層の屋内空間と屋外空間とを区画する外周壁部と重なる位置に配置され、建物の屋外空間同士を区画している第2独立壁部と、を更に備える、建物、である。
【0007】
本発明の1つの実施形態としての建物は、
(2)
建物の屋内空間と屋外空間とを区画する外周壁は、
前記直上階部から前記最上階部までの階層により形成される上部外周壁部と、
前記任意階部以下の階層により形成される下部外周壁部と、を備え、
前記上部外周壁部のうち前記ファサード正面視で手前側に位置する上部ファサード外周壁部、及び、前記下部外周壁部のうち前記ファサード正面視で手前側に位置する下部ファサード外周壁部、の少なくも一方には、前記ファサード正面視で手前側とは反対の奥行き側にセットバックして形成されているセットバック壁部が設けられている、上記(1)に記載の建物、である。
【0008】
本発明の1つの実施形態としての建物は、
(3)
前記第1独立壁部及び前記第2独立壁部の少なくとも一方は、前記ファサード正面視で手前奥行き方向に延在する板状の直交壁部である、上記(1)又は(2)に記載の建物、である。
【0009】
本発明の1つの実施形態としての建物は、
(4)
前記第1独立壁部は、前記ファサード正面視で、前記屋外床板部のうち左右方向の一方側の端部に位置する前記庇状部、の鉛直方向の下方に位置している、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の建物、である。
【0010】
本発明の1つの実施形態としての建物は、
(5)
前記第2独立壁部は、前記ファサード正面視で、前記屋外床板部のうち前記左右方向の他方側の端部から立設されている、上記(4)に記載の建物、である。
【0011】
本発明の第2の態様としての建築物は、
(6)
上記(4)又は(5)に記載の建物と、
前記建物の周囲に設けられる外構と、を備える建築物であって、
前記建物の前記第1独立壁部は、前記ファサード正面視で手前奥行き方向に延在する板状の直交壁部であり、
前記外構は、
前記ファサード正面視で、前記左右方向のうち前記第1独立壁部としての前記直交壁部が位置する一方側とは反対の他方側で、前記屋外床板部より外側に配置され、手前奥行き方向に延在する板状の直交外構壁部と、
前記ファサード正面視で前記直交外構壁部の手前側に連なり、前記ファサード正面視で前記左右方向に延在する対向外構壁部と、を備え、
前記対向外構壁部の少なくとも一部は、前記ファサード正面視で、前記屋外床板部の鉛直方向の下方に位置している、建築物、である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、架構のシンプル化と、外観意匠性の向上と、を両立可能な、建物及び建築物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態としての建築物を示す図である。
図2図1に示す建築物の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る建物及び建築物の実施形態について図面を参照して例示説明する。各図において同一の構成には同一の符号を付している。
【0015】
図1は、本発明に係る建物の一実施形態としての建築物100を示す図である。図1に示すように、建築物100は、道路200に隣接する敷地300内に建築されている。建築物100は、建物1と、外構2と、を備えている。図2は、建築物100の正面図である。建築物100の正面図とは、建築物100を、建物1のファサード面側から見た図を意味する。建物1のファサード面とは、建物1のうち、周辺から視認され易く、外観を整えたい面を意味する。本実施形態のように、敷地300が道路200に隣接する場合には、建物1のファサード面は、道路200から最も視認され易い一面を意味する。建物1のうち敷地300に隣接する道路200側を向く面が一面しかない場合は、その一面が建物1のファサード面である。以下、建築物100全体及び建物1単体を、建物1のファサード面側から見た状態を、単に「ファサード正面視」と記載する。なお、本実施形態では、敷地300が1つの道路200のみと隣接し、建物1が道路200側を向く面を一面のみ有する例を示している。したがって、本実施形態のファサード正面視は、建築物100全体及び建物1単体を道路200側から見た状態を意味している。また、以下、建築物100全体及び建物1単体を、ファサード正面視での左右方向に沿って見た状態を、単に「側面視」と記載する。本実施形態の側面視は、建築物100全体及び建物1単体を道路200の延在方向に沿って見た状態(図1の矢印「X」参照)を意味している。なお、図1図2では、後述する第1梁部12、第2梁部22及び第3梁部23aの位置を破線により示している。
【0016】
まず、本実施形態の建物1の概要について説明する。建物1は、例えば、鉄骨造の骨組を有する2階建ての戸建て住宅とすることができる。このような建物1は、例えば、地盤に支持された鉄筋コンクリート造の布基礎等である基礎構造体と、柱部材や梁部材などの構造材としての骨組部材で構成された架構を有し、基礎構造体に支持される上部構造体と、を備える。なお、架構を構成する骨組部材は、予め規格化(標準化)された部材とすることができ、予め工場にて製造されたのち建築現場に搬入されて組み立てられる。但し、建物1は、いわゆる在来工法にて建設された木造の住宅であってもよい。また、建物1は、鉄筋コンクリート造の住宅であってもよい。更に、建物1は、複数階層を有する構成であればよく、本実施形態の2階建てに限られない。したがって、建物1は、3階以上の階層を有していてもよい。また、建物1は、戸建て住宅に限られず、例えば、集合住宅等であってもよく、その用途は特に限定されない。
【0017】
本実施形態の上部構造体は、複数の柱部材、及び、これら複数の柱部材間に架設された複数の梁部材、から構成される架構と、この架構の外周部に配置される外周壁と、架構の梁部材に支持される床部と、を備える。
【0018】
外周壁の屋外側の面は、連接された外装材としての外壁パネルにより構成されてよい。また、外壁の外壁パネルの屋内側には、断熱層を構成する断熱材及び内装材が配置されてよい。
【0019】
外壁パネルとしては、例えば、軽量気泡コンクリート(以下、「ALC」と記載する。「ALC」とは「autoclaved light weight concrete」の略である。)のパネル、金属系や窯業系のサイディング、押出成形セメント板、木質系パネルなどを用いることができる。この外壁パネルを架構の外周部の周囲に連接することにより、外壁の外皮層を形成することができる。
【0020】
また、断熱材としては、例えば、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡樹脂系の材料からなるパネル状の断熱材の他、ロックウール等の繊維系の断熱材を用いることもできる。この断熱材を外壁パネルの屋内側に、外壁パネルの内面に沿って配置することにより、外壁に断熱層を形成することができる。内装材としては、例えば、石膏ボードを用いることができ、内装材を架構の外周部の屋内側に連接することにより、内皮層を形成することができる。
【0021】
床部は、床板部を構成する床スラブ材を含む。床スラブ材は、架構の梁部材間に架設され、梁部材により直接的又は間接的に支持される。床スラブ材としては、例えば、ALCパネルを用いることできるが、折板、押出成形セメント板、木質パネル材などの別の部材を用いてもよい。
【0022】
なお、建物1の屋根は陸屋根であってよい。陸屋根を構成する屋根床スラブ材についても、ALCパネルを用いることができるが、ALCパネルに限られるものではない。また、屋根床スラブ材は、例えば塩化ビニル樹脂から形成されている防水シート等により覆われることにより、防水処理が施されている。また、建物1の屋根は、陸屋根に限らず、スレート等の屋根外装材を用いた勾配屋根とされてもよい。
【0023】
次に、建物1の更なる詳細について説明する。
【0024】
建物1は、最上階層に位置する最上階部10(本実施形態では2階部分)と、最上階層より鉛直方向の下方に位置する任意の所定階層に位置する任意階部20(本実施形態では1階部分)と、を備えている。本実施形態の建物1は2階建てであるため、任意階部20は1階部分を意味するが、建物1が3階以上の階層を有する場合は、最上階層より下方の階層であれば特に限定されない。つまり、建物が例えば3階建ての場合、最上階部10は3階部分を意味し、任意階部20は1階部分又は2階部分のいずれかを意味する。
【0025】
また、建物1のうち、任意階部20の1つ上の階層に位置する直上階部には屋外床板部40が設けられている。屋外床板部40とは、例えばベランダ、テラス、バルコニー等の建物1の専用屋外空間41の床板部である。本実施形態の直上階部は、任意階部20としての1階部分の1つ上の階層に位置する2階部分である。つまり、本実施形態の建物1では、最上階部10が、任意階部20の1つ上の階層に位置する直上階部に該当する。なお、上述した屋外床板部40は、その全域が専用屋外空間41の居住者が歩行する床として利用される構成に限られない。つまり、屋外床板部40は、その一部の領域のみが専用屋外空間41の居住者が歩行する床として利用される構成であってもよい。したがって、屋外床板部40の後述する庇状部40aについても、専用屋外空間41の居住者が歩行する床として利用されるか否かは問わない。庇状部40aは、例えば、専用屋外空間41に設けられた手摺りの外側、つまり、実際には専用屋外空間41の居住者が歩行する床として利用されない部分であってもよい。
【0026】
最上階部10は、屋根を支持する上梁11を備える。最上階部10の上梁11は、ファサード正面視(図2参照)で最も手前側(本実施形態に示す例では道路200側)に位置し、ファサード正面視(図2参照)での最上階部10の全幅に亘って、直線状に延在している第1梁部12を備える。より具体的に、最上階部10の上梁11は、外周上梁11aを備え、第1梁部12は、外周上梁11aのうち、ファサード正面視(図2参照)で最も手前側に位置する部分を意味する。第1梁部12は、ファサード正面視(図2参照)の左右方向に直線状に延在しているが、単一の梁部材により構成されていなくてもよい。つまり、第1梁部12は、例えば、所定長さの複数の梁部材同士が直線状に連結されて形成されてもよい。また、第1梁部12は、例えば、所定長さの複数の梁部材が柱部材等を挟んで間欠的に直線状に並ぶように配置されていてもよい。
【0027】
任意階部20は、直上階部の床部を支持する上梁21を備える。直上階部の床部は、上述した屋外床板部40を含む。任意階部20の上梁21は、上述した第1梁部12の鉛直方向の直下に位置し、ファサード正面視(図2参照)での任意階部20の全幅に亘って、直線状に延在する第2梁部22を備える。つまり、第2梁部22は、第1梁部12の鉛直方向の直下で、第1梁部12と平行に延在している。第2梁部22は、ファサード正面視(図2参照)の左右方向に直線状に延在しているが、単一の梁部材により構成されていなくてもよい。つまり、第2梁部22は、例えば、所定長さの複数の梁部材同士が直線状に連結されて形成されてもよい。また、第2梁部22は、例えば、所定長さの複数の梁部材が柱部材等を挟んで間欠的に直線状に並ぶように配置されていてもよい。
【0028】
更に、任意階部20の上梁21は、直上階部としての最上階部10の屋外床板部40を支持する支持梁23を備える。屋外床板部40は、ファサード正面視(図2参照)で上述した第2梁部22より手前側(本実施形態に示す例では道路200側)に位置している。支持梁23は、この屋外床板部40を鉛直方向の下方から支持している。つまり、支持梁23についても、ファサード正面視(図2参照)で上述した第2梁部22より手前側(本実施形態に示す例では道路200側)に位置している。支持梁23は、ファサード正面視(図2参照)で最も手前側に位置し、ファサード正面視(図2参照)での屋外床板部40の全幅に亘って、直線状に延在する第3梁部23aを備えている。つまり、第3梁部23aについても、第1梁部12及び第2梁部22と平行に延在している。第3梁部23aは、ファサード正面視(図2参照)の左右方向に直線状に延在しているが、単一の梁部材により構成されていなくてもよい。つまり、第3梁部23aは、例えば、所定長さの複数の梁部材同士が直線状に連結されて形成されてもよい。また、第3梁部23aは、例えば、所定長さの複数の梁部材が柱部材等を挟んで間欠的に直線状に並ぶように配置されていてもよい。なお、図2では、説明の便宜上、第2梁部22及び第3梁部23aの位置を、上下方向にずらして図示しているが、第2梁部22及び第3梁部23aの上下方向の位置は同じである。
【0029】
以上のように、建物1は最上階部10及び任意階部20を備え、最上階部10の上梁11及び任意階部20の上梁21のうち、ファサード正面視(図2参照)で手前側に配置される第1梁部12、第2梁部22及び第3梁部23aがいずれも、ファサード正面視(図2参照)の左右方向に直線状に延在する構成とされている。このようにすることで、例えば第1梁部12、第2梁部22及び第3梁部23aの少なくとも1つが直線状に延在しない構成と比較して、建物1の架構をシンプル化することができる。
【0030】
更に、屋外床板部40は、任意階部20の屋内空間と屋外空間との間を区画する任意階外周壁部50より屋外側に延設されている庇状部40aを備えている。任意階外周壁部50とは、建物1全体の外周壁のうち、任意階部20に位置する部分を意味している。より具体的に、本実施形態の任意階外周壁部50は、任意階部20としての1階部分の外周壁を意味している。本実施形態の屋外床板部40の庇状部40aは、任意階外周壁部50よりファサード正面視(図2参照)の手前側(本実施形態に示す例では道路200側)に延設されている前方庇状部40a1と、ファサード正面視(図2参照)の左右方向の左側で任意階外周壁部50より更に左側に延設されている側方庇状部40a2と、を備える。本実施形態の前方庇状部40a1は、ファサード正面視(図2参照)で、任意階部20の左右方向の全幅の半分以上の長さに亘って、左右方向に延在している。但し、屋外床板部40の庇状部40aは、上述した構成に限られない。庇状部40aは、前方庇状部40a1及び側方庇状部40a2のいずれか一方のみであってもよい。また、側方庇状部40a2は、ファサード正面視(図2参照)の左右方向の右側で任意階外周壁部50より更に右側に延設されていてもよい。
【0031】
そして、建物1は、屋外床板部40の庇状部40a鉛直方向の下方で地面から立設されていると共に、屋外床板部40を鉛直方向の下方から支持し、建物1の屋外空間同士を区画している第1独立壁部60を更に備えている。
【0032】
このように、建物1は、屋外床板部40の庇状部40aと、第1独立壁部60と、を備えている。そのため、建物1によれば、ファサード正面視(図2参照)で手前側(本実施形態に示す例では道路200側)に位置する上述した第1梁部12、第2梁部22及び第3梁部23aによりシンプル化された架構を実現しつつ、庇状部40a及び第1独立壁部60の存在により、ファサード正面視(図2参照)での手前奥行き方向での凹凸感を演出できる。つまり、建物1によれば、架構のシンプル化と、外観意匠性の向上と、を両立できる。また、第1独立壁部60は、例えば、日射取得量の制御、外部からの視線の制御、等を考慮して、適宜配置されてよい。
【0033】
更に、建物1は、側面視(図1の矢印「X」参照)で、最上階部10の屋内空間と屋外空間とを区画する外周壁部としての最上階外周壁部51と重なる位置に配置され、建物1の屋外空間同士を区画している第2独立壁部65を備えている。本実施形態の建物1は2階建てであり、第2独立壁部65は、側面視(図1の矢印「X」参照)で、最上階外周壁部51と重なる位置に配置されているが、この構成に限られない。例えば、建物1が3階建て以上であって、任意階部20の直上に位置する直上階部から最上階部10まで複数の階層がある場合には、第2独立壁部65は、側面視(図1の矢印「X」参照)で、直上階部から最上階部10までの階層のうち少なくとも1つの階層の屋内空間と屋外空間とを区画する外周壁部と重なる位置に配置されていればよい。
【0034】
このように、建物1は、第2独立壁部65を備えている。そのため、建物1によれば、第2独立壁部65により、日射取得量の制御、外部からの視線の制御、等が可能になる。
【0035】
特に、第2独立壁部65と、側面視(図1の矢印「X」参照)で第2独立壁部65と重なる外周壁部(本実施形態では最上階外周壁部51)との間に区画される空間である専用屋外空間42は、ファサード正面視(図2参照)で視認可能であることが好ましい。このようにすることで、ファサード正面視(図2参照)での建物1の奥行き感や凹凸感を演出できる。
【0036】
次に、本実施形態の建物1の外周壁70について説明する。建物1の外周壁70は、建物1の屋内空間と屋外空間との間を区画する壁である。建物1の外周壁70は、上部外周壁部71と、下部外周壁部72と、を備える。上部外周壁部71は、外周壁70のうち、任意階部20の1つ上の階である直上階部から最上階部10までの階層により形成される部分である。下部外周壁部72は、外周壁70のうち、任意階部20以下の階層により形成される部分である。上述したように、本実施形態の建物1は2階建てであり、任意階部20の1つ上の階である直上階部が、最上階部10である。すなわち、本実施形態の上部外周壁部71は、外周壁70のうち、最上階部10としての2階部分の外周壁を意味しており、本実施形態では上述した最上階外周壁部51と同じである。また、本実施形態の下部外周壁部72は、外周壁70のうち、任意階部20としての1階部分の外周壁を意味しており、本実施形態では上述した任意階外周壁部50と同じである。
【0037】
上部外周壁部71は、ファサード正面視(図2参照)で手前側(本実施形態に示す例では道路200側)に位置する上部ファサード外周壁部71aを備える。本実施形態の上部ファサード外周壁部71aは、ファサード正面視(図2参照)で手前側とは反対の奥行き側にセットバックして形成されている上部セットバック壁部71a2を備えている。より具体的に、本実施形態の上部ファサード外周壁部71aは、第1梁部12の道路200側で鉛直方向に立設されている上部基準壁部71a1と、この上部基準壁部71a1より道路200側とは反対側にセットバックして配置されている上部セットバック壁部71a2と、を備えている。このような上部セットバック壁部71a2を設けることで、ファサード正面視(図2参照)で手前側に位置する上述した第1梁部12、第2梁部22及び第3梁部23aによりシンプル化された架構を実現しつつも、建物1のファサード正面視(図2参照)での手前奥行き方向での凹凸感を演出でき、建物1の外観意匠性を、更に高めることができる。
【0038】
なお、建物1が任意階部20より上に複数階層を備え、かつ、上部ファサード外周壁部71aが任意階部20より上の2階層以上で上部セットバック壁部71a2を備える場合には、各階層の上部セットバック壁部71a2のファサード正面視(図2参照)での手前奥行き方向の位置は一致していることが好ましい。このようにすることで、上部ファサード外周壁部71aが任意階部20より上の2階層以上で上部セットバック壁部71a2を備える場合であっても、ファサード正面視(図2参照)での手前奥行き方向で上部セットバック壁部71a2の位置に配置される、第1梁部12と平行な梁の位置を、各階層で同じにすることができる。そのため、建物1の架構をシンプル化することができる。
【0039】
また、下部外周壁部72は、ファサード正面視(図2参照)で手前側(本実施形態に示す例では道路200側)に位置する下部ファサード外周壁部72aを備える。本実施形態の下部ファサード外周壁部72aは、ファサード正面視(図2参照)で手前側とは反対の奥行き側にセットバックして形成されている下部セットバック壁部72a2を備えている。より具体的に、本実施形態の下部ファサード外周壁部72aは、最も道路200側で鉛直方向に立設されている下部基準壁部72a1と、この下部基準壁部72a1より道路200側とは反対側にセットバックして配置されている下部セットバック壁部72a2と、を備えている。このような下部セットバック壁部72a2を設けることで、ファサード正面視(図2参照)で手前側に位置する上述した第1梁部12、第2梁部22及び第3梁部23aによりシンプル化された架構を実現しつつも、建物1のファサード正面視(図2参照)での手前奥行き方向での凹凸感を演出でき、建物1の外観意匠性を、更に高めることができる。
【0040】
なお、建物1が任意階部20から下に複数階層を備え、かつ、下部ファサード外周壁部72aが任意階部20から下の2階層以上で下部セットバック壁部72a2を備える場合には、各階層の下部セットバック壁部72a2のファサード正面視(図2参照)での手前奥行き方向の位置は一致していることが好ましい。このようにすることで、下部ファサード外周壁部72aが任意階部20から上の2階層以上で下部セットバック壁部72a2を備える場合であっても、ファサード正面視(図2参照)での手前奥行き方向で下部セットバック壁部72a2の位置に配置される、第3梁部23aと平行な梁の位置を、各層で同じにすることができる。そのため、建物1の架構をシンプル化することができる。
【0041】
上述したように、本実施形態の建物1では、上部セットバック壁部71a2及び下部セットバック壁部72a2の両方を備えるが、いずれか一方であってもよい。但し、本実施形態のように、建物1が上部セットバック壁部71a2及び下部セットバック壁部72a2の両方を備えることで、建物1の外観意匠性を、より一層高めることができる。
【0042】
更に、第1独立壁部60は、ファサード正面視(図2参照)で手前奥行き方向に延在する板状の直交壁部61であることが好ましい。直交壁部61は、その厚み方向がファサード正面視(図2参照)で左右方向となる。第1独立壁部60を直交壁部61とすることで、建物1のファサード正面視(図2参照)での手前奥行き方向の凹凸感を、より高めることができる。特に、本実施形態のように、屋外床板部40の庇状部40aが前方庇状部40a1を備える場合、第1独立壁部60は、前方庇状部40a1の鉛直方向の下方に立設され、前方庇状部40a1を支持する直交壁部61であることが特に好ましい。このようにすることで、建物1では、ファサード正面視(図2参照)で、水平方向に延在する前方庇状部40a1による水平ラインと、第1独立壁部60としての直交壁部61による鉛直ラインと、が強調され、前方庇状部40a1及び直交壁部61により一体で形成されるゲートが意識され易くなる。つまり、前方庇状部40a1及び直交壁部61が、一体となって纏まったデザインとして認識され易くなり、建物1の外観意匠性を、より高めることができる。
【0043】
また、本実施形態では、第1独立壁部60としての直交壁部61は、ファサード正面視(図2参照)で、屋外床板部40のうち左右方向の一方側(本実施形態では左側)の端部に位置する庇状部40a、の鉛直方向の下方に位置している。より具体的に、本実施形態の第1独立壁部60としての直交壁部61は、ファサード正面視(図2参照)で屋外床板部40のうち左右方向の一方側(本実施形態では左側)の端部に位置する、前方庇状部40a1及び側方庇状部40a2、の鉛直方向の下方に位置している。このように、第1独立壁部60としての直交壁部61が、ファサード正面視(図2参照)で屋外床板部40のうち左右方向の一方側(本実施形態では左側)の端部に位置する前方庇状部40a1、の鉛直方向の下方に位置することで、第1独立壁部60としての直交壁部61及び前方庇状部40a1は、ファサード正面視(図2参照)で、一体となって纏まったL形のゲートとして認識され易くなり、建物1の外観意匠性を、より高めることができる。なお、本実施形態のように、前方庇状部40a1が、ファサード正面視(図2参照)で、任意階部20の左右方向の全幅の半分以上の長さに亘って、左右方向に延在している構成とされることで、上述したL形のゲートは、より強調される。
【0044】
また、第2独立壁部65についても、ファサード正面視(図2参照)で手前奥行き方向に延在する板状の直交壁部66であることが好ましい。直交壁部66は、その厚み方向がファサード正面視(図2参照)で左右方向となる。第2独立壁部65を直交壁部66とし、かつ、上述の専用屋外空間42がファサード正面視(図2参照)で視認可能な構成、とすることで、ファサード正面視(図2参照)での建物1の奥行き感や凹凸感を、より高めることができる。
【0045】
また、上述したように、第1独立壁部60が、ファサード正面視(図2参照)で、屋外床板部40のうち左右方向の一方側(本実施形態では左側)の端部に位置する庇状部40a、の鉛直方向の下方に位置している場合、第2独立壁部65は、ファサード正面視(図2参照)で、屋外床板部40のうち左右方向の他方側(本実施形態では右側)の端部に位置していることが好ましい。このようにすることで、建物1のファサード正面視(図2参照)での左右方向の両側での日射取得量の制御、外部からの視線の制御等を、第1独立壁部60及び第2独立壁部65により実現できる。なお、本実施形態では、第2独立壁部65としての直交壁部66が、ファサード正面視(図2参照)で、屋外床板部40のうち左右方向の他方側(本実施形態では右側)の端部から鉛直方向上方に立設されている。
【0046】
最後に、敷地300内の外構2について説明する。図1図2に示すように、本実施形態の外構2は、ファサード正面視(図2参照)で、左右方向のうち第1独立壁部60としての直交壁部61が位置する一方側(本実施形態では左側)とは反対の他方側(本実施形態では右側)で、屋外床板部40より外側に配置され、手前奥行き方向に延在する板状の直交外構壁部81を備える。また、本実施形態の外構2は、ファサード正面視(図2参照)で直交外構壁部81の手前側(本実施形態に示す例では道路200側)に連なり、ファサード正面視(図2参照)で左右方向に延在する対向外構壁部82を備える。そして、対向外構壁部82の少なくとも一部は、ファサード正面視(図2参照)で、屋外床板部40の鉛直方向の下方に位置している。外構2がこのような直交外構壁部81及び対向外構壁部82を備えることで、ファサード正面視(図2参照)で、左右方向のうち第1独立壁部60としての直交壁部61が位置する一方側(本実施形態では左側)とは反対の他方側(本実施形態では右側)でも、直交外構壁部81及び対向外構壁部82により、建物1の日射取得量の制御、外部からの視線の制御等を実現できる。また、対向外構壁部82の少なくとも一部が、ファサード正面視(図2参照)で、屋外床板部40の鉛直方向の下方に位置していることで、ファサード正面視(図2参照)での建物1の手前奥行き方向の凹凸感を、より高めることができる。つまり、ファサード正面視(図2参照)での建物1の外観意匠性を、外構2によって高めることができる。
【0047】
本発明に係る建物及び建築物は、上述した実施形態に示す具体的な構成に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変形、変更、組み合わせが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は建物及び建築物に関する。
【符号の説明】
【0049】
1:建物
2:外構
10:最上階部
11:最上階部の上梁
11a:最上階部の外周上梁
12:第1梁部
20:任意階部
21:任意階部の上梁
22:第2梁部
23:支持梁
23a:第3梁部
40:屋外床板部
40a:庇状部
40a1:前方庇状部
40a2:側方庇状部
41:専用屋外空間
42:専用屋外空間
50:任意階外周壁部
51:最上階外周壁部
60:第1独立壁部
61:直交壁部(第1独立壁部の一例)
65:第2独立壁部
66:直交壁部(第2独立壁部の一例)
70:外周壁
71:上部外周壁部
71a:上部ファサード外周壁部
71a1:上部基準壁部
71a2:上部セットバック壁部
72:下部外周壁部
72a:下部ファサード外周壁部
72a1:下部基準壁部
72a2:下部セットバック壁部
81:直交外構壁部
82:対向外構壁部
100:建築物
200:道路
300:敷地
図1
図2