(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063643
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】人力駆動車用のフロントディレイラ
(51)【国際特許分類】
B62M 9/1344 20100101AFI20240502BHJP
B62M 9/1342 20100101ALI20240502BHJP
【FI】
B62M9/1344
B62M9/1342
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171751
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】マー ユン
(57)【要約】
【課題】チェーンガイドの位置を容易に調整できる人力駆動車用のフロントディレイラを提供する。
【解決手段】人力駆動車用のフロントディレイラは、ベース部材と、アウタリンクと、チェーンガイドと、前記アウタリンクに設けられ、かつ、前記ベース部材に関する前記チェーンガイドの前記引出位置を選択的に調整するために、前記ベース部材に選択的に接触するように構成される引出位置調整ボルト、および、前記アウタリンクに設けられ、かつ、前記ベース部材に関する前記チェーンガイドの前記引込位置を選択的に調整するために、前記ベース部材に選択的に接触するように構成される引込位置調整ボルトの少なくとも1つを含む位置調整構造と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用のフロントディレイラであって、
前記フロントディレイラは、
前記人力駆動車のフレームに接続されるように構成されるベース部材と、
第1アウタリンク端と第2アウタリンク端と開口部とを有するアウタリンクであって、前記第1アウタリンク端は、第1アウタリンク軸心まわりに回転可能に、前記ベース部材に接続され、前記アウタリンクの少なくとも一部は、前記フロントディレイラが前記人力駆動車の前記フレームに取り付けられる取付状態において、前記ベース部材よりも前記人力駆動車の前記フレームから遠い前記アウタリンクと、
前記ベース部材に対して、引込位置と引出位置との間において動くように構成されるように、第2アウタリンク軸心まわりに回転可能に、前記アウタリンクの前記第2アウタリンク端に接続されるチェーンガイドであって、前記引出位置は、前記取付状態において、前記引込位置よりも前記人力駆動車の前記フレームから遠い前記チェーンガイドと、
前記アウタリンクに設けられ、かつ、前記ベース部材に関する前記チェーンガイドの前記引出位置を選択的に調整するために、前記ベース部材に選択的に接触するように構成される引出位置調整ボルト、および、前記アウタリンクに設けられ、かつ、前記ベース部材に関する前記チェーンガイドの前記引込位置を選択的に調整するために、前記ベース部材に選択的に接触するように構成される引込位置調整ボルトの少なくとも1つを含む位置調整構造と、を備える、フロントディレイラ。
【請求項2】
前記位置調整構造は、前記アウタリンクに設けられ、かつ、前記引出位置調整ボルトを受けるように構成される引出位置調整孔、および、前記アウタリンクに設けられ、かつ、前記引込位置調整ボルトを受けるように構成される引込位置調整孔の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のフロントディレイラ。
【請求項3】
前記引出位置調整孔は、引出孔軸心を有し、
前記引込位置調整孔は、引込孔軸心を有し、
前記第1アウタリンク軸心は、前記引出孔軸心と前記引込孔軸心との間に設けられる、請求項2に記載のフロントディレイラ。
【請求項4】
前記アウタリンクは、前記開口部を定義する周囲部分を有し、
前記引出位置調整孔および前記引込位置調整孔は、前記周囲部分に設けられる、請求項2に記載のフロントディレイラ。
【請求項5】
前記アウタリンクは、前記開口部を定義する周囲部分を有し、
前記引出位置調整ボルトおよび前記引込位置調整ボルトは、前記周囲部分に設けられる、請求項1に記載のフロントディレイラ。
【請求項6】
ボーデンケーブルのインナワイヤを固定するように構成されるインナワイヤ固定構造をさらに含み、
前記インナワイヤ固定構造は、前記アウタリンクに設けられる、請求項1に記載のフロントディレイラ。
【請求項7】
前記チェーンガイドは、横方向アウタガイドプレートと横方向インナガイドプレートとを含み、
前記横方向アウタガイドプレートおよび前記横方向インナガイドプレートは、その間にチェーン受スロットを形成し、
横方向が、前記取付状態において、前記横方向アウタガイドプレートと前記横方向インナガイドプレートとの一方から、前記横方向アウタガイドプレートと前記横方向インナガイドプレートとの他方に向かう方向に定義され、
前記アウタリンクの前記開口部は、前記横方向を向く、請求項1に記載のフロントディレイラ。
【請求項8】
前記チェーンガイドは、横方向アウタガイドプレートと横方向インナガイドプレートとを含み、
前記横方向アウタガイドプレートおよび前記横方向インナガイドプレートは、その間にチェーン受スロットを形成し、
ペダリング時に前記チェーン受スロットにおいて駆動チェーンが動く方向として、チェーン駆動方向が定義され、
前記引出位置調整ボルトおよび前記引込位置調整ボルトは、前記チェーン駆動方向に関して前記アウタリンクの前記開口部の下流側に配置される、請求項1に記載のフロントディレイラ。
【請求項9】
前記ベース部材に設けられる支持ボルトをさらに備え、
前記支持ボルトは、前記人力駆動車の前記フレームに対する前記フロントディレイラの傾きを調整するように構成される、請求項1に記載のフロントディレイラ。
【請求項10】
前記アウタリンクの前記開口部および前記支持ボルトは、前記支持ボルトを回転させるツールが前記アウタリンクの前記開口部を通ってアクセス可能なように設けられる、請求項9に記載のフロントディレイラ。
【請求項11】
前記支持ボルトは、前記アウタリンクから前記ベース部材に向かう視点方向から見た場合に、前記アウタリンクの前記開口部を通して見えるように配置される、請求項9に記載のフロントディレイラ。
【請求項12】
前記引出位置調整ボルトは、前記取付状態において前記人力駆動車の前記フレームから離れる方向を向く第1ツール係合面を有し、
前記引込位置調整ボルトは、前記取付状態において前記人力駆動車の前記フレームから離れる方向を向く第2ツール係合面を有する、請求項1に記載のフロントディレイラ。
【請求項13】
前記位置調整構造は、
前記ベース部材に設けられ、かつ、前記引出位置調整ボルトに接触するように構成される引出位置当接面と、
前記ベース部材に設けられ、かつ、前記引込位置調整ボルトに接触するように構成される引込位置当接面と、を含む、請求項1に記載のフロントディレイラ。
【請求項14】
前記第1アウタリンク軸心は、前記引出位置当接面と前記引込位置当接面との間に配置される、請求項13に記載のフロントディレイラ。
【請求項15】
第1インナリンク端と第2インナリンク端とを有するインナリンクをさらに備え、
前記第1インナリンク端は、第1インナリンク軸心まわりに回転可能に、前記ベース部材に接続され、
前記チェーンガイドは、第2インナリンク軸心まわりに回転可能に、前記インナリンクの前記第2インナリンク端に接続され、
前記アウタリンクは、前記取付状態において、前記インナリンクよりも前記人力駆動車の前記フレームから遠い、請求項1に記載のフロントディレイラ。
【請求項16】
人力駆動車用のフロントディレイラであって、
前記フロントディレイラは、
前記人力駆動車のフレームに接続されるように構成されるベース部材と、
第1インナリンク端と第2インナリンク端とを有するインナリンクであって、前記第1インナリンク端は、第1インナリンク軸心まわりに回転可能に、前記ベース部材に接続される前記インナリンクと、
第1アウタリンク端と第2アウタリンク端と開口部とを有するアウタリンクであって、前記第1アウタリンク端は、第1アウタリンク軸心まわりに回転可能に、前記ベース部材に接続され、前記フロントディレイラが前記人力駆動車の前記フレームに取り付けられる取付状態において、前記インナリンクよりも前記人力駆動車の前記フレームから遠い前記アウタリンクと、
前記ベース部材に対して引込位置と引出位置との間において動くように構成されるように、第2インナリンク軸心まわりに回転可能に、前記インナリンクの前記第2インナリンク端に接続され、かつ、第2アウタリンク軸心まわりに回転可能に、前記アウタリンクの前記第2アウタリンク端に接続されるチェーンガイドであって、前記引出位置は、前記取付状態において、前記引込位置よりも前記人力駆動車の前記フレームから遠い前記チェーンガイドと、
前記アウタリンクに設けられ、かつ、前記ベース部材に関する前記チェーンガイドの前記引出位置を選択的に調整するために、前記ベース部材に選択的に接触するように構成される引出位置調整ボルト、および、前記アウタリンクに設けられ、かつ、前記ベース部材に関する前記チェーンガイドの前記引込位置を選択的に調整するために、前記ベース部材に選択的に接触するように構成される引込位置調整ボルトの少なくとも1つを含む位置調整構造と、を備える、フロントディレイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人力駆動車用のフロントディレイラに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インナワイヤを固定する構造を備える人力駆動車用のフロントディレイラの一例を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のフロントディレイラでは、チェーンガイドの位置を調整するためのボルトがベース部材に設けられる。
【0005】
本開示の目的の1つは、チェーンガイドの位置を容易に調整できる人力駆動車用のフロントディレイラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1側面に従うフロントディレイラは、人力駆動車用のフロントディレイラであって、前記フロントディレイラは、前記人力駆動車のフレームに接続されるように構成されるベース部材と、第1アウタリンク端と第2アウタリンク端と開口部とを有するアウタリンクであって、前記第1アウタリンク端は、第1アウタリンク軸心まわりに回転可能に、前記ベース部材に接続され、前記アウタリンクの少なくとも一部は、前記フロントディレイラが前記人力駆動車の前記フレームに取り付けられる取付状態において、前記ベース部材よりも前記人力駆動車の前記フレームから遠い前記アウタリンクと、前記ベース部材に対して、引込位置と引出位置との間において動くように構成されるように、第2アウタリンク軸心まわりに回転可能に、前記アウタリンクの前記第2アウタリンク端に接続されるチェーンガイドであって、前記引出位置は、前記取付状態において、前記引込位置よりも前記人力駆動車の前記フレームから遠い前記チェーンガイドと、前記アウタリンクに設けられ、かつ、前記ベース部材に関する前記チェーンガイドの前記引出位置を選択的に調整するために、前記ベース部材に選択的に接触するように構成される引出位置調整ボルト、および、前記アウタリンクに設けられ、かつ、前記ベース部材に関する前記チェーンガイドの前記引込位置を選択的に調整するために、前記ベース部材に選択的に接触するように構成される引込位置調整ボルトの少なくとも1つを含む位置調整構造と、を備える。
第1側面のフロントディレイラによれば、アウタリンクが開口部を有するため、フロントディレイラを軽量化できる。第1側面のフロントディレイラによれば、アウタリンクに、引出位置調整ボルトおよび引込位置調整ボルトが設けられるため、チェーンガイドの位置を調整するツールが位置調整構造にアクセスし易い。したがって、チェーンガイドの位置を、容易に調整できる。
【0007】
本開示の第1側面に従う第2側面のフロントディレイラにおいて、前記位置調整構造は、前記アウタリンクに設けられ、かつ、前記引出位置調整ボルトを受けるように構成される引出位置調整孔、および、前記アウタリンクに設けられ、かつ、前記引込位置調整ボルトを受けるように構成される引込位置調整孔の少なくとも1つを含む。
第2側面のフロントディレイラによれば、引出位置調整ボルトを受ける引出位置調整孔、および、引込位置調整ボルトを受ける引込位置調整孔がアウタリンクに配置される。したがって、チェーンガイドの位置を調整するツールが、位置調整構造にアクセスし易い。
【0008】
本開示の第2側面に従う第3側面のフロントディレイラにおいて、前記引出位置調整孔は、引出孔軸心を有し、前記引込位置調整孔は、引込孔軸心を有し、前記第1アウタリンク軸心は、前記引出孔軸心と前記引込孔軸心との間に設けられる。
第3側面のフロントディレイラによれば、引出孔軸心と引込孔軸心との間に第1アウタリンク軸心が設けられるように、引出位置調整ボルトおよび引込位置調整ボルトがアウタリンクに配置される。したがって、チェーンガイドの位置を調整するツールが、位置調整構造にアクセスし易い。
【0009】
本開示の第2または3側面に従う第4側面のフロントディレイラにおいて、前記アウタリンクは、前記開口部を定義する周囲部分を有し、前記引出位置調整孔および前記引込位置調整孔は、前記周囲部分に設けられる。
第4側面のフロントディレイラによれば、引出位置調整ボルトを受ける引出位置調整孔、および、引込位置調整ボルトを受ける引込位置調整孔が、アウタリンクの周囲部分に設けられる。したがって、チェーンガイドの位置を調整するツールが、位置調整構造にアクセスし易い。
【0010】
本開示の第1から3側面のいずれか1つに従う第5側面のフロントディレイラにおいて、前記アウタリンクは、前記開口部を定義する周囲部分を有し、前記引出位置調整ボルトおよび前記引込位置調整ボルトは、前記周囲部分に設けられる。
第5側面のフロントディレイラによれば、引出位置調整ボルトおよび引込位置調整ボルトが、アウタリンクの周囲部分に設けられるため、チェーンガイドの位置を調整するツールが、位置調整構造にアクセスし易い。
【0011】
本開示の第1から5側面のいずれか1つに従う第6側面のフロントディレイラにおいて、ボーデンケーブルのインナワイヤを固定するように構成されるインナワイヤ固定構造をさらに含み、前記インナワイヤ固定構造は、前記アウタリンクに設けられる。
第6側面のフロントディレイラによれば、インナワイヤ固定構造によって、ボーデンケーブルのインナワイヤがアウタリンクに接続されるため、フロントディレイラが好適に動作できる。
【0012】
本開示の第1から6側面のいずれか1つに従う第7側面のフロントディレイラにおいて、前記チェーンガイドは、横方向アウタガイドプレートと横方向インナガイドプレートとを含み、前記横方向アウタガイドプレートおよび前記横方向インナガイドプレートは、その間にチェーン受スロットを形成し、横方向が、前記取付状態において、前記横方向アウタガイドプレートと前記横方向インナガイドプレートとの一方から、前記横方向アウタガイドプレートと前記横方向インナガイドプレートとの他方に向かう方向に定義され、前記アウタリンクの前記開口部は、前記横方向を向く。
第7側面のフロントディレイラによれば、開口部が横方向を向くため、開口部の内部にツール等がアクセスしやすい。第7側面のフロントディレイラによれば、開口部がアウタリンクを貫通する貫通孔と連通する場合、開口部を介して、ベース部材にベース部材用のツールがアクセスし易い。
【0013】
本開示の第1から7側面のいずれか1つに従う第8側面のフロントディレイラにおいて、前記チェーンガイドは、横方向アウタガイドプレートと横方向インナガイドプレートとを含み、前記横方向アウタガイドプレートおよび前記横方向インナガイドプレートは、その間にチェーン受スロットを形成し、ペダリング時に前記チェーン受スロットにおいて駆動チェーンが動く方向として、チェーン駆動方向が定義され、前記引出位置調整ボルトおよび前記引込位置調整ボルトは、前記チェーン駆動方向に関して前記アウタリンクの前記開口部の下流側に配置される。
第8側面のフロントディレイラによれば、位置調整構造が開口部と離れて配置されるため、ベース部材にアクセスするツールが、開口部を介してベース部材にアクセスし易い。
【0014】
本開示の第1から8側面のいずれか1つに従う第9側面のフロントディレイラにおいて、前記ベース部材に設けられる支持ボルトをさらに備え、前記支持ボルトは、前記人力駆動車の前記フレームに対する前記フロントディレイラの傾きを調整するように構成される。
第9側面のフロントディレイラによれば、支持ボルトによって、人力駆動車のフレームに対するフロントディレイラの傾きを好適に調整できる。
【0015】
本開示の第9側面に従う第10側面のフロントディレイラにおいて、前記アウタリンクの前記開口部および前記支持ボルトは、前記支持ボルトを回転させるツールが前記アウタリンクの前記開口部を通ってアクセス可能なように設けられる。
第10側面のフロントディレイラによれば、支持ボルトを回転させるツールが、開口部を介して支持ボルトにアクセスし易い。
【0016】
本開示の第9または10側面に従う第11側面のフロントディレイラにおいて、前記支持ボルトは、前記アウタリンクから前記ベース部材に向かう視点方向から見た場合に、前記アウタリンクの前記開口部を通して見えるように配置される。
第11側面のフロントディレイラによれば、視点方向から見た場合にアウタリンクの開口部を通して支持ボルトが見えるため、ユーザが支持ボルトを視認しやすい。したがって、支持ボルトを回転させるツールが、開口部を介して支持ボルトにアクセスし易い。
【0017】
本開示の第1から11側面のいずれか1つに従う第12側面のフロントディレイラにおいて、前記引出位置調整ボルトは、前記取付状態において前記人力駆動車の前記フレームから離れる方向を向く第1ツール係合面を有し、前記引込位置調整ボルトは、前記取付状態において前記人力駆動車の前記フレームから離れる方向を向く第2ツール係合面を有する。
第12側面のフロントディレイラによれば、第1ツール係合面および第2ツール係合面が人力駆動車のフレームから離れる方向を向くため、チェーンガイドの位置を調整するツールが位置調整構造にアクセスし易い。
【0018】
本開示の第1から12側面のいずれか1つに従う第13側面のフロントディレイラにおいて、前記位置調整構造は、前記ベース部材に設けられ、かつ、前記引出位置調整ボルトに接触するように構成される引出位置当接面と、前記ベース部材に設けられ、かつ、前記引込位置調整ボルトに接触するように構成される引込位置当接面と、を含む。
第13側面のフロントディレイラによれば、引出位置調整ボルトに接触する引出位置当接面がベース部材に設けられ、かつ、引込位置調整ボルトに接触する引込位置当接面がベース部材に設けられる。したがって、引出位置調整ボルトおよび引込位置調整ボルトが、ベース部材に向かうようにアウタリンクに設けられるため、チェーンガイドの位置を調整するツールが、位置調整構造にアクセスし易い。
【0019】
本開示の第13側面に従う第14側面のフロントディレイラにおいて、前記第1アウタリンク軸心は、前記引出位置当接面と前記引込位置当接面との間に配置される。
第14側面のフロントディレイラによれば、引出位置当接面と引込位置当接面との間に第1アウタリンク軸心が設けられるため、チェーンガイドの位置を調整するツールが、位置調整構造にアクセスし易い。
【0020】
本開示の第1から14側面のいずれか1つに従う第15側面のフロントディレイラにおいて、第1インナリンク端と第2インナリンク端とを有するインナリンクをさらに備え、前記第1インナリンク端は、第1インナリンク軸心まわりに回転可能に、前記ベース部材に接続され、前記チェーンガイドは、第2インナリンク軸心まわりに回転可能に、前記インナリンクの前記第2インナリンク端に接続され、前記アウタリンクは、前記取付状態において、前記インナリンクよりも前記人力駆動車の前記フレームから遠い。
第15側面のフロントディレイラによれば、アウタリンクがインナリンクよりも遠くに配置されるため、チェーンガイドの位置を調整するツールが、位置調整構造にアクセスし易い。
【0021】
本開示の第16側面に従うフロントディレイラは、人力駆動車用のフロントディレイラであって、前記フロントディレイラは、前記人力駆動車のフレームに接続されるように構成されるベース部材と、第1インナリンク端と第2インナリンク端とを有するインナリンクであって、前記第1インナリンク端は、第1インナリンク軸心まわりに回転可能に、前記ベース部材に接続される前記インナリンクと、第1アウタリンク端と第2アウタリンク端と開口部とを有するアウタリンクであって、前記第1アウタリンク端は、第1アウタリンク軸心まわりに回転可能に、前記ベース部材に接続され、前記フロントディレイラが前記人力駆動車の前記フレームに取り付けられる取付状態において、前記インナリンクよりも前記人力駆動車の前記フレームから遠い前記アウタリンクと、前記ベース部材に対して引込位置と引出位置との間において動くように構成されるように、第2インナリンク軸心まわりに回転可能に、前記インナリンクの前記第2インナリンク端に接続され、かつ、第2アウタリンク軸心まわりに回転可能に、前記アウタリンクの前記第2アウタリンク端に接続されるチェーンガイドであって、前記引出位置は、前記取付状態において、前記引込位置よりも前記人力駆動車の前記フレームから遠い前記チェーンガイドと、前記アウタリンクに設けられ、かつ、前記ベース部材に関する前記チェーンガイドの前記引出位置を選択的に調整するために、前記ベース部材に選択的に接触するように構成される引出位置調整ボルト、および、前記アウタリンクに設けられ、かつ、前記ベース部材に関する前記チェーンガイドの前記引込位置を選択的に調整するために、前記ベース部材に選択的に接触するように構成される引込位置調整ボルトの少なくとも1つを含む位置調整構造と、を備える。
第16側面のフロントディレイラによれば、アウタリンクが開口部を有するため、フロントディレイラを軽量化できる。第16側面のフロントディレイラによれば、アウタリンクに、引出位置調整ボルトおよび引込位置調整ボルトが設けられるため、チェーンガイドの位置を調整するツールが位置調整構造にアクセスし易い。したがって、チェーンガイドの位置が容易に調整できる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の人力駆動車用のフロントディレイラは、チェーンガイドの位置を容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態の人力駆動車のフロントディレイラおよびその周辺を示す人力駆動車の側面図である。
【
図2】
図1のフロントディレイラおよびその周辺を示す背面図である。
【
図3】
図2の3-3線におけるフロントディレイラの断面図である。
【
図6】
図1のフロントディレイラにおいて、支持ボルトを回転させるツールが支持ボルトに係合する状態を示す斜視図である。
【
図7】
図1のフロントディレイラのケーブルアクチュエータが第1取付位置に位置する場合の、インナワイヤ固定構造およびその周辺を示す斜視図である。
【
図8】
図7のケーブルアクチュエータが第2取付位置に位置する場合の、インナワイヤ固定構造およびその周辺を示す斜視図である。
【
図9】
図7のケーブルアクチュエータの正面図である。
【
図10】
図1のフロントディレイラのインナワイヤ固定構造およびその周辺を示す斜視図である。
【
図12】
図11の第2取付位置に位置するケーブルアクチュエータが、第1取付位置に移動した状態を示す断面図である。
【
図14】
図13の引込位置に位置するチェーンガイドが、引込位置に移動した状態を示す断面図である。
【
図15】
図2のインナワイヤ固定構造によるフロントディレイラの調整方法の第1工程を示す模式図である。
【
図16】
図2のインナワイヤ固定構造によるフロントディレイラの調整方法の第2工程を示す模式図である。
【
図17】
図2のインナワイヤ固定構造によるフロントディレイラの調整方法の第3工程の一例を示す模式図である。
【
図18】
図1のフロントディレイラの調整に用いられる治具を示す斜視図である。
【
図19】第2実施形態の人力駆動車のフロントディレイラおよびその周辺を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
図1から
図18を参照して、人力駆動車用のフロントディレイラ30が説明される。人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、ハンドバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車10が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車10は、例えば1輪車および2輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車10は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車10は、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するE-bikeを含む。E-bikeは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を自転車として説明する。
【0025】
本明細書において、以下の方向を示す用語「前(フロント)」、「後ろ(リア)」、「前方」、「後方」、「左」、「右」、「横」、「上方」、および、「下方」、並びに任意の他の類似の方向を示す用語は、人力駆動車10の基準位置(例えば、サドルまたはシート上)においてハンドルバーを向いた搭乗者を基準に決定されるそれらの方向を指す。
【0026】
図1に示されるように、人力駆動車10は、例えば、フレーム12と、クランク軸14と、フロントスプロケット16と、駆動チェーン18と、を備える。クランク軸14は、クランク軸心C1まわりに回転するように、フレーム12のボトムブラケットに取り付けられる。フロントスプロケット16は、クランク軸心C1まわりに回転するように、クランクアーム、または、クランク軸14に取り付けられる。駆動チェーン18は、フロントスプロケット16の回転方向に動くように、フロントスプロケット16に係合する。人力駆動車10の駆動輪が後輪である場合、駆動チェーン18によって、フロントスプロケット16の回転が、リアスプロケットを介して人力駆動車10の後輪に伝達される。人力駆動車10の駆動輪が前輪である場合、駆動チェーン18によって、フロントスプロケット16の回転が前輪に伝達されてもよい。
【0027】
フロントスプロケット16は、直径が異なる複数のスプロケットを含む。直径が異なる複数のスプロケットは、例えば、第1スプロケット16Aと、第2スプロケット16Bと、を含む。第2スプロケット16Bの直径は、第1スプロケット16Aの直径よりも大きい。第2スプロケット16Bは、第1スプロケット16Aよりも人力駆動車10のフレーム12から遠いように、人力駆動車10のクランクアーム、または、クランク軸14に取り付けられる。直径が異なる複数のスプロケットは、直径が異なる3枚以上のスプロケットを含んでもよい。直径が異なる3枚以上のスプロケットは、例えば、直径が大きいほど人力駆動車10のフレーム12から遠いように、人力駆動車10のクランク軸14に取り付けられる。
【0028】
人力駆動車10は、例えば、フロントディレイラ30を備える。フロントディレイラ30は、駆動チェーン18が係合するスプロケットを第1スプロケット16Aおよび第2スプロケット16Bの一方から他方に変更するように駆動チェーン18を移動させるように動作する。フロントディレイラ30は、駆動チェーン18が係合するスプロケットを変更するように駆動チェーン18を移動させることによって、変速比を変更する。変速比は、例えば、クランク軸14の回転速度に対する人力駆動車10の後輪の回転速度の比である。人力駆動車10は、例えば、変速比を選択できるように構成される変速操作部を備える。変速操作部は、ボーデンケーブル20によってフロントディレイラ30に接続される。フロントディレイラ30は、駆動チェーン18が係合するスプロケットを、変速操作部によって選択された変速比に対応するスプロケットに変更することによって、変速比を変更するように動作する。
【0029】
図2に示されるように、フロントディレイラ30は、ベース部材32と、アウタリンク38と、インナワイヤ固定構造52と、を備える。ベース部材32は、人力駆動車10のフレーム12に接続されるように構成される。アウタリンク38は、第1アウタリンク端38Aと第2アウタリンク端38Bとを有する。第1アウタリンク端38Aは、第1アウタリンク軸心X1まわりに回転可能に、ベース部材32に接続される。アウタリンク38の少なくとも一部は、取付状態において、ベース部材32よりも人力駆動車10のフレーム12から遠い。取付状態は、フロントディレイラ30が人力駆動車10のフレーム12に取り付けられる状態である。
【0030】
ベース部材32は、例えば、フレーム取付部34と、本体部36と、を含む。フレーム取付部34は、取付状態においてベース部材32を人力駆動車10のフレーム12に取り付けるように構成される。
図2には、フロントディレイラ30が取付状態である場合の一例が示される。フレーム取付部34は、例えば、クランプ34Aを含む。本体部36は、例えばボルトによって、フレーム取付部34に取り付けられる。
【0031】
本体部36は、ボーデンケーブル取付部36Aと、アウタリンク付勢部材36Bと、を含む。ボーデンケーブル20は、例えば、インナワイヤ20Aと、インナワイヤ20Aを収容するアウタケース20Bと、を含む。ボーデンケーブル取付部36Aには、アウタケース20Bの端部が取り付けられる。アウタリンク付勢部材36Bは、アウタリンク38が第1アウタリンク軸心X1まわりに第1アウタリンク回転方向PL1に回転するように、アウタリンク38を付勢する。
【0032】
フロントディレイラ30は、例えば、チェーンガイド44をさらに備える。チェーンガイド44は、ベース部材32に対して引込位置PG1と引出位置PG2との間において動くように構成されるように、第2アウタリンク軸心X2まわりに回転可能に、アウタリンク38の第2アウタリンク端38Bに接続される。引出位置PG2は、取付状態において、引込位置PG1よりも人力駆動車10のフレーム12から遠い。引出位置PG2は、取付状態において、引込位置PG1よりも人力駆動車10のフレーム12から遠い。
【0033】
第1アウタリンク端38Aは、ベース部材32に対して第1アウタリンク軸心X1まわりに第2アウタリンク回転方向PL2および第1アウタリンク回転方向PL1に回転可能に構成される。第2アウタリンク端38Bは、第2アウタリンク軸心X2まわりに回転可能に、チェーンガイド44に接続される。
【0034】
アウタリンク38は、例えば、第1アウタリンク軸部材38Xと、第2アウタリンク軸部材38Yと、を含む。第1アウタリンク軸部材38Xは、第1アウタリンク端38Aが第1アウタリンク軸心X1まわりに回転可能なように、第1アウタリンク端38Aをベース部材32に接続する。第1アウタリンク軸部材38Xの軸心は、第1アウタリンク軸心X1と一致する。第2アウタリンク軸部材38Yは、第2アウタリンク端38Bが第2アウタリンク軸心X2まわりに回転可能なように、第2アウタリンク端38Bをチェーンガイド44に接続する。第2アウタリンク軸部材38Yの軸心は、第2アウタリンク軸心X2と一致する。アウタリンク38は、第1アウタリンク軸部材38Xと、第2アウタリンク軸部材38Yと、を含まなくてもよい。第1アウタリンク端38Aがベース部材32に直接的に接続され、第2アウタリンク端38Bがチェーンガイド44に直接的に接続されてもよい。
【0035】
図2および
図3に示されるように、例えば、アウタリンク38は、取付孔40を有する。例えば、取付孔40は、取付孔軸心A1を含む。取付孔軸心A1は、取付孔40の中心軸心を通過する。取付孔40は、例えば、取付孔軸心A1に平行な方向において、アウタリンク38を貫通する貫通孔である。取付孔40は、例えば、第1アウタリンク端38Aに形成される。第1アウタリンク軸心X1および第2アウタリンク軸心X2は、例えば、フロントディレイラ30の組立状態において取付孔軸心A1に実質的に平行に配置される。
【0036】
図2に示されるように、フロントディレイラ30は、インナリンク42をさらに備える。インナリンク42は、第1インナリンク端42Aと第2インナリンク端42Bとを有する。第1インナリンク端42Aは、第1インナリンク軸心Y1まわりに回転可能に、ベース部材32に接続される。
【0037】
取付孔軸心A1に平行な方向から見て、アウタリンク38の少なくとも一部は、ベース部材32よりも人力駆動車10のフレーム12から遠くに配置される。取付孔軸心A1に平行な方向から見てインナリンク42の少なくとも一部は、取付状態において、ベース部材32よりも人力駆動車10のフレーム12から遠くに配置される。
【0038】
例えば、アウタリンク38の少なくとも一部は、取付状態において、インナリンク42よりも人力駆動車10のフレーム12から遠い。例えば、アウタリンク38は、取付状態において、インナリンク42よりも人力駆動車10のフレーム12から遠い。
図2のように、取付孔軸心A1に平行な方向から見て、アウタリンク38は、インナリンク42よりも人力駆動車10のフレーム12から遠くに配置される。
【0039】
例えば、チェーンガイド44は、第2インナリンク軸心Y2まわりに回転可能に、インナリンク42の第2インナリンク端42Bに接続される。第1インナリンク軸心Y1および第2インナリンク軸心Y2は、フロントディレイラ30の組立状態において取付孔軸心A1と平行に配置される。
【0040】
インナリンク42は、例えば、第1インナリンク軸部材42Xと、第2インナリンク軸部材42Yと、を含む。第1インナリンク軸部材42Xは、第1インナリンク端42Aが第1インナリンク軸心Y1まわりに回転可能なように、第1インナリンク端42Aをベース部材32に接続する。第1インナリンク軸部材42Xの軸心は、第1インナリンク軸心Y1と一致する。第2インナリンク軸部材42Yは、第2インナリンク端42Bが第2インナリンク軸心Y2まわりに回転可能なように、第2インナリンク端42Bをチェーンガイド44に接続する。第2インナリンク軸部材42Yの軸心は、第2インナリンク軸心Y2と一致する。インナリンク42は、第1インナリンク軸部材42Xと、第2インナリンク軸部材42Yと、を含まなくてもよい。第1インナリンク端42Aがベース部材32に直接的に接続され、かつ、第2インナリンク端42Bがチェーンガイド44に直接的に接続されてもよい。
【0041】
チェーンガイド44は、ベース部材32に対して引込位置PG1と引出位置PG2との間において動くように構成されるように、第2インナリンク軸心Y2まわりに回転可能に、インナリンク42の第2インナリンク端42Bに接続され、かつ、第2アウタリンク軸心X2まわりに回転可能に、アウタリンク38の第2アウタリンク端38Bに接続される。チェーンガイド44が引込位置PG1から引出位置PG2に移動する場合、第1アウタリンク端38Aが第1アウタリンク軸心X1まわりに第2アウタリンク回転方向PL2へ回転する。チェーンガイド44が引出位置PG2から引込位置PG1に移動する場合、第1アウタリンク端38Aが第1アウタリンク軸心X1まわりに第1アウタリンク回転方向PL1へ回転する。
【0042】
例えば、チェーンガイド44は、横方向アウタガイドプレート44Aと横方向インナガイドプレート44Bとを含む。横方向アウタガイドプレート44Aは、取付状態において、横方向インナガイドプレート44Bよりも人力駆動車10のフレーム12から遠くに位置する。例えば、横方向アウタガイドプレート44Aおよび横方向インナガイドプレート44Bは、その間にチェーン受スロット44Cを形成する。チェーンガイド44が引込位置PG1に位置する場合、取付孔軸心A1に平行な方向から見て、チェーン受スロット44Cは、フロントスプロケット16の第1スプロケット16Aの少なくとも一部に重なる。チェーンガイド44が引出位置PG2に位置する場合、取付孔軸心A1に平行な方向から見て、チェーン受スロット44Cは、フロントスプロケット16の第2スプロケット16Bの少なくとも一部に重なる。
【0043】
チェーンガイド44が引込位置PG1に位置する場合、駆動チェーン18は、第1スプロケット16Aに係合する。チェーンガイド44が引出位置PG2に位置する場合、駆動チェーン18が第2スプロケット16Bに係合する。フロントディレイラ30は、チェーンガイド44がベース部材32に対して引込位置PG1と引出位置PG2との間において動くことによって、駆動チェーン18が係合するスプロケットを変更する。つまりチェーンガイド44が引込位置PG1から引出位置PG2に移動する場合、横方向インナガイドプレート44Bによって駆動チェーン18が係合するスプロケットが、第1スプロケット16Aから第2スプロケット16Bに変更される。またチェーンガイド44が引出位置PG2から引込位置PG1に移動する場合、横方向アウタガイドプレート44Aによって駆動チェーン18が係合するスプロケットが、第2スプロケット16Bから第1スプロケット16Aに変更される。
【0044】
図4に示されるように、フロントディレイラ30は、支持ボルト46をさらに備える。例えば、支持ボルト46は、ベース部材32に設けられる。例えば、支持ボルト46は、人力駆動車10のフレーム12に対するフロントディレイラ30の傾きを調整するように構成される。支持ボルト46と人力駆動車10のフレーム12との間には、支持プレート46Aが配置される。ベース部材32には、例えば、支持ボルト孔46Bが形成される。支持ボルト孔46Bは、例えば、貫通孔を含む。支持ボルト46は、支持ボルト孔46Bに螺合するように構成される。必要に応じて、支持プレート46Aは省略されてもよい。
【0045】
支持ボルト46は、支持ボルト46が支持ボルト孔46Bにねじ込まれることによって、支持ボルト46の先端が人力駆動車10のフレーム12を圧するように構成される。支持ボルト46の先端がフレーム12を圧することによって、ベース部材32の本体部36が弾性変形する。ベース部材32の本体部36が弾性変形することによって、人力駆動車10のフレーム12に対するフロントディレイラ30の傾きが変化する。したがって、支持ボルト46がベース部材32にねじ込まれることによって、人力駆動車10のフレーム12に対するフロントディレイラ30の傾きが調整される。支持ボルト46によってベース部材32がフレーム12に対して支持されるため、人力駆動車10のフレーム12に対するフロントディレイラ30の振動が抑制され、かつ、フロントディレイラ30の剛性が向上する。
【0046】
図2および
図5に示されるように、アウタリンク38は、第1アウタリンク端38Aと第2アウタリンク端38Bと開口部48とを有する。例えば、横方向D2が、取付状態において、横方向アウタガイドプレート44Aと横方向インナガイドプレート44Bとの一方から、横方向アウタガイドプレート44Aと横方向インナガイドプレート44Bとの他方に向かう方向に定義される。横方向D2は、例えば、人力駆動車10の横を向く方向に対応する。例えば、アウタリンク38の開口部48は、横方向D2を向く。
【0047】
開口部48は、アウタリンク38のアウタリンク外側面38Cに設けられる。アウタリンク外側面38Cは、取付状態において人力駆動車10のフレーム12から離れる方向を向くアウタリンク38の面である。開口部48は、例えば、横方向D2にアウタリンク38を貫通する貫通孔を含む。開口部48は、アウタリンク38を視点方向D1から見た場合に、開口部48を通してベース部材32が見えるように、アウタリンク外側面38Cに形成される。視点方向D1は、アウタリンク38からベース部材32に向かう方向である。例えば、支持ボルト46は、視点方向D1から見た場合に、アウタリンク38の開口部48を通して見えるように配置される。例えば、アウタリンク38は、周囲部分50を有する。例えば、周囲部分50は、開口部48を定義する。
【0048】
図6に示されるように、例えば、アウタリンク38の開口部48および支持ボルト46は、支持ボルト46を回転させるツールT1がアウタリンク38の開口部48を通ってアクセス可能なように設けられる。開口部48の形状は、支持ボルト46を回転させるツールT1がアウタリンク38の開口部48を通って支持ボルト46にアクセス可能であれば、任意に変更できる。ツールT1は、ベース部材32用のツールであれば、支持ボルト46を回転させるツールT1とは異なるツールでもよい。例えば、ツールT1は、ベース部材32に付着した泥、埃等を取り除く清掃具であってもよい。
【0049】
図2に示されるように、インナワイヤ固定構造52は、インナリンク42およびアウタリンク38の一方に、別のリンクを介さずに設けられる。例えば、インナワイヤ固定構造52がインナリンク42に設けられる場合、インナワイヤ固定構造52が設けられるインナリンク42は、1つの部品から構成される。例えば、インナワイヤ固定構造52がアウタリンク38に設けられる場合、インナワイヤ固定構造52が設けられるアウタリンク38は、1つの部品から構成される。本実施形態のインナワイヤ固定構造52は、アウタリンク38に設けられる。インナワイヤ固定構造52は、インナリンク42およびアウタリンク38の一方に、別のリンクを介して設けられてもよい。
【0050】
インナワイヤ固定構造52は、ボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aを固定するように構成される。インナワイヤ固定構造52は、ボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aを固定した状態において、インナワイヤ20Aの張力を調整できるように構成される。本明細書における「固定」は、人力駆動車10を使用した場合に、フロントディレイラ30の機能が維持される程度のインナワイヤ20Aの動きを許容するものである。フロントディレイラ30の機能が維持される程度のインナワイヤ20Aの動きとは、例えば、インナワイヤ20Aの伸長による微小な動き、インナワイヤ20Aが滑ることによる微小な動き等を含む。
【0051】
本実施形態では、インナワイヤ固定構造52は、アウタリンク38の第1アウタリンク端38Aに設けられる。インナワイヤ固定構造52によってインナワイヤ20Aが固定されることによって、インナワイヤ20Aが第1アウタリンク端38Aに取り付けられる。インナワイヤ20Aによって、アウタリンク付勢部材36Bによる第1アウタリンク端38Aの第1アウタリンク回転方向PL1への回転が抑制される。
【0052】
インナワイヤ固定構造52は、ケーブルファスナ54と、ケーブルアジャスタ56と、を含む。ケーブルファスナ54は、ケーブル固定状態とケーブル解放状態とを切り替えるように構成される。ケーブルファスナ54がケーブル固定状態である間に、ケーブルファスナ54はボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aを固定するように構成される。ケーブルファスナ54がケーブル解放状態である間に、ケーブルファスナ54はボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aを解放するように構成される。ケーブルアジャスタ56は、ボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aを動かすように構成される。インナワイヤ固定構造52は、ケーブルファスナ54がケーブル固定状態である場合に、インナリンク42およびアウタリンク38の一方に対して回転するように構成される。本実施形態では、インナワイヤ固定構造52は、ケーブルファスナ54がケーブル固定状態である間に、アウタリンク38に対して回転するように構成される。
【0053】
図7および
図8に示されるように、インナワイヤ固定構造52は、取付孔軸心A1まわりにアウタリンク38に対して第1取付位置および第2取付位置の間において動くように構成される。インナワイヤ固定構造52は、取付孔軸心A1まわりにおいて、第1ケーブル回転方向PC1および第2ケーブル回転方向PC2に回転するように構成される。第1ケーブル回転方向PC1は、インナワイヤ固定構造52が第1取付位置から第2取付位置に向かう回転方向である。第2ケーブル回転方向PC2は、インナワイヤ固定構造52が第2取付位置から第1取付位置に向かう回転方向である。第2ケーブル回転方向PC2は、第1ケーブル回転方向PC1とは逆の回転方向である。取付孔軸心A1まわりにおける第1取付位置から第2取付位置までのインナワイヤ固定構造52の回転角度は、張力を調整したいインナワイヤ20Aの長さに応じて任意に設定できる。一例では、インナワイヤ固定構造52が第1取付位置から第2取付位置に移動した場合に、インナワイヤ固定構造52が取付孔軸心A1まわりに48度回転するように設定される。
【0054】
図3に示されるケーブルファスナ54は、ケーブル解放状態である。例えば、インナワイヤ固定構造52は、取付孔軸心A1まわりに回転可能に、アウタリンク38の取付孔40に取り付けられる。例えば、ケーブルファスナ54は、ケーブル固定ボルト58を含む。例えば、ケーブル固定ボルト58は、ケーブル固定ヘッド58Aとケーブル固定シャフト58Bとを有する。例えば、ケーブルファスナ54は、ケーブル固定プレート60を含む。例えば、ケーブル固定プレート60は、プレート孔60Aを有する。例えば、プレート孔60Aは、フロントディレイラ30の組立状態においてケーブル固定シャフト58Bが通過するように貫通する。
【0055】
例えば、ケーブル固定ボルト58のケーブル固定シャフト58Bは、ボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aが、取付孔軸方向D3において、ケーブル固定ボルト58のケーブル固定ヘッド58Aとケーブルアクチュエータ62との間に固定されるように、ケーブルアクチュエータ62のアクチュエータ孔62Bに取り付けられる。例えば、ケーブル固定ボルト58のケーブル固定シャフト58Bは、ボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aが、取付孔軸方向D3において、ケーブルファスナ54のケーブル固定プレート60とケーブルアクチュエータ62との間に固定されるように、ケーブルアクチュエータ62のアクチュエータ孔62Bに取り付けられる。
【0056】
例えば、ケーブルアジャスタ56は、ケーブルアクチュエータ62を含む。例えば、ケーブルアジャスタ56は、ケーブルアクチュエータ62と、アクチュエータ固定ボルト64と、を含む。ケーブルアクチュエータ62は、第1アウタリンク端38Aの少なくとも一部を覆うように構成される。例えば、ケーブルアクチュエータ62は、アウタリンク38の取付孔40に取り付けられる。ケーブルアクチュエータ62は、アクチュエータ取付部62Aを含む。アクチュエータ取付部62Aは、円筒形状に形成される。ケーブルアクチュエータ62がアウタリンク38に対して取付孔軸心A1まわりに回転できるように、アクチュエータ取付部62Aがアウタリンク38の取付孔40に配置される。
【0057】
例えば、ケーブルアクチュエータ62は、アクチュエータ孔62Bを有する。アクチュエータ孔62Bは、取付孔軸方向D3に貫通するように、アクチュエータ取付部62Aに形成される。例えば、取付孔軸方向D3は、フロントディレイラ30の組立状態における取付孔軸心A1に関する方向である。取付孔軸方向D3は、例えば、取付孔軸心A1に平行な方向である。ケーブル固定ボルト58がアクチュエータ孔62Bに螺合することによって、ケーブルファスナ54がケーブル解放状態からケーブル固定状態に切り替わる。ケーブル固定状態ではケーブル固定ボルト58がアクチュエータ孔62Bに螺合するため、ケーブルファスナ54がケーブルアクチュエータ62と一体にアウタリンク38に対して回転するように構成される。
【0058】
図2および
図9に示されるように、例えば、ケーブルアクチュエータ62は、ケーブルガイド溝部66を有する。ケーブルガイド溝部66は、取付孔軸心A1に平行な方向において、ケーブルアクチュエータ62の表面から凹むように構成される。ケーブルガイド溝部66は、アクチュエータ孔62Bまわりにおいて、アクチュエータ孔62Bの周囲の少なくとも一部に形成される。例えば、ケーブルガイド溝部66は、フロントディレイラ30の組立状態においてボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aを受けるように構成される。ボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aは、フロントディレイラ30の組立状態において、ボーデンケーブル取付部36Aからケーブルガイド溝部66を介して、インナワイヤ通路74に配置される。
【0059】
例えば、ケーブルアクチュエータ62は、少なくとも1つのケーブル固定突出部68を有する。ケーブル固定突出部68は、取付孔軸心A1に平行な方向において、ケーブルアクチュエータ62の表面から突出するように構成される。本実施形態では、少なくとも1つのケーブル固定突出部68は、3つのケーブル固定突出部68を含む。例えば、少なくとも1つのケーブル固定突出部68は、ケーブルガイド溝部66に設けられる。ケーブル固定突出部68は、先端部がケーブルガイド溝部66が延びる方向に対して垂直に交わるように形成される。したがって、ケーブル固定状態において、少なくとも1つのケーブル固定突出部68が、ケーブルガイド溝部66に受けられるインナワイヤ20Aと接触し易い。
【0060】
例えば、少なくとも1つのケーブル固定突出部68は、ケーブルファスナ54とケーブルアジャスタ56との間におけるボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aの固定を促進するように構成される。例えば、少なくとも1つのケーブル固定突出部68は、ケーブル固定プレート60とケーブルアジャスタ56との間におけるボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aの固定を促進するように構成される。少なくとも1つのケーブル固定突出部68がインナワイヤ20Aをケーブル固定プレート60に圧するため、ケーブル固定プレート60とケーブルアジャスタ56との間におけるインナワイヤ20Aの固定が促進される。
【0061】
図3に示されるように、例えば、ケーブルアクチュエータ62は、アクチュエータ孔ねじ部62Cを有する。例えば、アクチュエータ孔ねじ部62Cは、アクチュエータ孔62Bに形成される。アクチュエータ孔ねじ部62Cは、第1雌ねじ部を有する。例えば、ケーブル固定ボルト58は、ケーブル固定ねじ部58Cを有する。例えば、ケーブル固定ねじ部58Cは、ケーブル固定シャフト58Bに形成される。ケーブル固定ねじ部58Cは、第1雄ねじ部を有する。例えば、ケーブル固定ねじ部58Cは、アクチュエータ孔ねじ部62Cに螺合するように構成される。第1雄ねじ部は、例えば、第1雌ねじ部に螺合するように構成される。本実施形態では、アクチュエータ孔ねじ部62Cの第1雌ねじ部、および、ケーブル固定ねじ部58Cの第1雄ねじ部は、順ねじである。
【0062】
図3および
図10に示されるように、例えば、ケーブルアジャスタ56は、アクチュエータ固定ボルト64を含む。例えば、アクチュエータ固定ボルト64は、アクチュエータ固定ヘッド64Aとアクチュエータ固定シャフト64Bとを有する。例えば、アクチュエータ固定ボルト64のアクチュエータ固定ヘッド64Aは、フロントディレイラ30の組立状態において、アウタリンク38に接するように構成される。ケーブルアクチュエータ62およびアクチュエータ固定ボルト64は、取付孔軸方向D3においてアウタリンク38を挟むように配置され、それぞれアウタリンク38に接する。ケーブルアクチュエータ62およびアクチュエータ固定ボルト64がアウタリンク38を挟むようにアウタリンク38に接するため、インナワイヤ固定構造52が、取付孔軸心A1に平行な方向において、アウタリンク38に対して位置決めされる。
【0063】
例えば、アクチュエータ固定ボルト64のアクチュエータ固定シャフト64Bは、フロントディレイラ30の組立状態において、アウタリンク38の取付孔40とケーブルアクチュエータ62のアクチュエータ孔62Bとに取り付けられる。アウタリンク38の取付孔40は、例えば、第1取付孔部40Aと、第2取付孔部40Bと、を有する。第2取付孔部40Bは、第1取付孔部40Aと取付孔軸心A1に平行な方向において隣り合う。第1取付孔部40Aには、ケーブルアクチュエータ62のアクチュエータ取付部62Aが取り付けられる。第2取付孔部40Bには、アクチュエータ固定ボルト64のアクチュエータ固定シャフト64Bが取り付けられる。第2取付孔部40Bの内周面の直径は、第1取付孔部40Aの内周面の直径よりも小さい。アクチュエータ固定ヘッド64Aの直径が第2取付孔部40Bの内周面の直径よりも大きいため、アクチュエータ固定ヘッド64Aは、取付孔軸方向D3においてアウタリンク38に好適に接することができる。
【0064】
例えば、アクチュエータ固定ボルト64は、アクチュエータ固定ねじ部64Cを有する。例えば、アクチュエータ固定ねじ部64Cは、アクチュエータ固定シャフト64Bに形成される。アクチュエータ固定ねじ部64Cは、第2雄ねじ部を有する。アクチュエータ孔ねじ部62Cは、第2雌ねじ部を有する。第2雌ねじ部は、取付孔軸方向D3において第1雌ねじ部と並ぶように、アクチュエータ孔ねじ部62Cに形成される。例えば、アクチュエータ固定ねじ部64Cは、アクチュエータ孔ねじ部62Cに螺合するように形成される。第2雄ねじ部は、例えば、第2雌ねじ部に螺合するように構成される。アクチュエータ固定ねじ部64Cは、取付孔軸方向D3においてケーブル固定ねじ部58Cとは反対側から、アクチュエータ孔ねじ部62Cに螺合される。
【0065】
図3に示されるように、例えば、ケーブル固定シャフト58Bおよびアクチュエータ固定シャフト64Bは、フロントディレイラ30の組立状態において、取付孔軸方向D3に互いに離れて配置される。要するに、ケーブル固定シャフト58Bおよびアクチュエータ固定シャフト64Bは、アクチュエータ孔62Bの内部において接触しないように、アクチュエータ孔ねじ部62Cに螺合する。ケーブル固定シャフト58Bの長さおよびアクチュエータ固定シャフト64Bの長さは、ケーブル固定シャフト58Bおよびアクチュエータ固定シャフト64Bがアクチュエータ孔62Bの内部において接触しないように設定される。したがって、第1雌ねじ部および第1雄ねじ部が確実に螺合でき、かつ、第2雌ねじ部および第2雄ねじ部も確実に螺合できる。
【0066】
図11および
図12に示されるように、ケーブルアジャスタ56は、取付孔軸心A1まわりに回転可能に、アウタリンク38の取付孔40に取り付けられる。ケーブルアジャスタ56が取付孔軸心A1まわりに回転することによって、インナワイヤ固定構造52が取付孔軸心A1まわりにアウタリンク38に対して回転するように構成される。インナワイヤ固定構造52が取付孔軸心A1まわりにアウタリンク38に対して回転することによって、ボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aが取付孔軸心A1まわりに動くように構成される。
【0067】
例えば、ケーブルアジャスタ56は、アクチュエータアジャスタ70を含む。例えば、アクチュエータアジャスタ70は、アウタリンク38に対するインナワイヤ固定構造52の回転を調整するように構成される。例えば、ケーブルアクチュエータ62は、調整孔72を有する。調整孔72は、調整孔軸心A2を有する。調整孔72は、取付孔軸心A1に平行な方向から見て調整孔軸心A2がアウタリンク38と交差するように開口する貫通孔である。例えば、調整孔72は、アクチュエータアジャスタ70を受けるように構成される。
【0068】
例えば、アクチュエータアジャスタ70は、アクチュエータ調整ねじ部70Aを有する。アクチュエータ調整ねじ部70Aは、第3雄ねじ部を有する。例えば、ケーブルアジャスタ56は、調整孔ねじ部72Aを有する。例えば、調整孔ねじ部72Aは、調整孔72に形成される。調整孔ねじ部72Aは、第3雌ねじ部を有する。例えば、アクチュエータ調整ねじ部70Aは、調整孔ねじ部72Aに螺合するように構成される。第3雄ねじ部は、例えば、第3雌ねじ部に螺合するように構成される。アクチュエータ調整ねじ部70Aは、調整孔軸心A2に平行な方向において、ケーブルアジャスタ56からアウタリンク38に向かうように、調整孔ねじ部72Aに螺合する。
【0069】
アクチュエータアジャスタ70が調整孔ねじ部72Aにねじ込まれることによって、アクチュエータアジャスタ70がアウタリンク38に向かって移動する。アウタリンク38は、アクチュエータアジャスタ70の先端部が接触する接触面38Zを含む。接触面38Zは、カム面を形成する。アクチュエータアジャスタ70が調整孔ねじ部72Aにねじ込まれると、アクチュエータアジャスタ70のケーブルアジャスタ56からの突出量が増加するため、アクチュエータアジャスタ70の先端部が接触面38Z上を移動する。本実施形態において、接触面38Zは、インナワイヤ固定構造52が第1取付位置から第2取付位置に移動するほど、調整孔軸心A2上におけるケーブルアジャスタ56とアウタリンク38との距離が大きくなるように形成される。
【0070】
図12のアクチュエータアジャスタ70が、さらに調整孔ねじ部72Aにねじ込まれることによって、ケーブルアジャスタ56からのアクチュエータアジャスタ70の突出量が大きくなる。ケーブルアジャスタ56からのアクチュエータアジャスタ70の突出量が大きくなるほど、アクチュエータアジャスタ70の先端部は、接触面38Z上を第2取付位置に対応する方向に向かって移動する。アクチュエータアジャスタ70が第2取付位置に対応する方向に向かって移動するため、ケーブルアジャスタ56が取付孔軸心A1まわりに第1ケーブル回転方向PC1に移動する。したがって、アクチュエータアジャスタ70が調整孔ねじ部72Aにねじ込まれるほど、ケーブルアジャスタ56が第1ケーブル回転方向PC1に移動するため、インナワイヤ固定構造52も第1ケーブル回転方向PC1に移動する。インナワイヤ固定構造52が取付孔軸心A1まわりに第1ケーブル回転方向PC1に移動することによって、インナワイヤ固定構造52は、
図12の状態から
図11の状態に変化する。アクチュエータアジャスタ70の先端部が接触面38Zに接触しているため、外力が付与されない状態では、インナワイヤ固定構造52の取付孔軸心A1まわりの回転が抑制される。
【0071】
例えば、ケーブルアジャスタ56は、延長調整孔72Xを有する調整孔延長部材70Xを含んでもよい。延長調整孔72Xは、軸心が調整孔軸心A2と一致する貫通孔である。例えば、延長調整孔72Xは、アクチュエータアジャスタ70を受けるように構成される。延長調整孔72Xは、延長調整孔ねじ部72Yを有する。延長調整孔ねじ部72Yは、延長雌ねじ部を有する。例えば、アクチュエータ調整ねじ部70Aは、延長調整孔ねじ部72Yに螺合するように構成される。第3雄ねじ部は、延長雌ねじ部に螺合する。調整孔延長部材70Xによって、アクチュエータ調整ねじ部70Aの第3雄ねじ部が、第3雌ねじ部と延長雌ねじ部とに螺合される。調整孔延長部材70Xによって、調整孔軸心A2に平行な方向において、ケーブルアクチュエータ62が薄い場合であっても、アクチュエータアジャスタ70をケーブルアクチュエータ62に、安定して取り付けることができる。
【0072】
図2に示されるように、フロントディレイラ30は、インナワイヤ通路74を備える。インナワイヤ通路74は、ボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aを誘導するように構成される。本実施形態では、インナワイヤ通路74は、ボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aを人力駆動車10の後方から前方に誘導する。インナワイヤ通路74は、アウタリンク38に設けられる。例えば、インナワイヤ通路74は、第1アウタリンク端38Aおよび第2アウタリンク端38Bの少なくとも1つに設けられる。例えば、インナワイヤ通路74は、第1アウタリンク軸心X1および第2アウタリンク軸心X2の少なくとも1つと同軸である。例えば、インナワイヤ通路74は、第1アウタリンク端38Aに設けられる。例えば、インナワイヤ通路74は、第1アウタリンク軸心X1と同軸である。本実施形態では、インナワイヤ通路74は、第1アウタリンク軸部材38Xに設けられる。アウタリンク38は、例えば、インナワイヤ20Aをケーブルファスナ54からインナワイヤ通路74まで誘導するインナワイヤ溝部74Aを有する。
【0073】
図5および
図10に示されるように、インナワイヤ通路74は、例えば、ベース部材32に設けられる第1通路74Xと、アウタリンク38に設けられる第2通路74Yと、を含む。第1通路74Xおよび第2通路74Yは、第1アウタリンク軸心X1と同軸な貫通孔である。インナワイヤ通路74は、例えば、第1アウタリンク軸部材38Xに設けられる第3通路74Zを含む。第3通路74Zは、第1アウタリンク軸心X1と同軸な貫通孔である。インナワイヤ通路74は、インナワイヤ20Aが第1通路74X、第2通路74Yおよび第3通路74Zを通過するように、インナワイヤ20Aを誘導する。インナワイヤ通路74によって誘導されたインナワイヤ20Aの端部には、エンドキャップ20Cが取り付けられる。
【0074】
図5に示されるように、フロントディレイラ30は、ベース部材32と、アウタリンク38と、チェーンガイド44と、位置調整構造76と、を備える。フロントディレイラ30は、ベース部材32と、インナリンク42と、アウタリンク38と、チェーンガイド44と、位置調整構造76と、を備える。位置調整構造76は、アウタリンク38に設けられる。
【0075】
図13および
図14に示されるように、位置調整構造76は、チェーンガイド44の引出位置PG2および引込位置PG1の少なくとも1つを選択的に調整できるように構成される。位置調整構造76は、人力駆動車10の横方向D2から位置調整構造76を回転させるツールT2がアクセス可能なようにアウタリンク38のアウタリンク外側面38Cに設けられる。位置調整構造76を回転させるツールT2は、チェーンガイド44の位置を調整するツールである。位置調整構造76は、引出位置調整ボルト78、および、引込位置調整ボルト80の少なくとも1つを含む。本実施形態では、位置調整構造76は、引出位置調整ボルト78および引込位置調整ボルト80の両方を含む。例えば、引出位置調整ボルト78および引込位置調整ボルト80は、周囲部分50に設けられる。
【0076】
引出位置調整ボルト78は、アウタリンク38に設けられ、かつ、ベース部材32に関するチェーンガイド44の引出位置PG2を選択的に調整するために、ベース部材32に選択的に接触するように構成される。引込位置調整ボルト80は、アウタリンク38に設けられ、かつ、ベース部材32に関するチェーンガイド44の引込位置PG1を選択的に調整するために、ベース部材32に選択的に接触するように構成される。引出位置調整ボルト78および引込位置調整ボルト80は、フロントディレイラ30の組立状態において、アウタリンク38のアウタリンク内側面38Dから突出するように構成される。アウタリンク内側面38Dは、アウタリンク38において、アウタリンク外側面38Cとは反対側の面である。アウタリンク内側面38Dは、フロントディレイラ30の組立状態において、ベース部材32に面するように配置される。
【0077】
例えば、引出位置調整ボルト78は、第1ツール係合面78Aを有する。例えば、第1ツール係合面78Aは、取付状態において人力駆動車10のフレーム12から離れる方向を向く。例えば、引込位置調整ボルト80は、第2ツール係合面80Aを有する。例えば、第2ツール係合面80Aは、取付状態において人力駆動車10のフレーム12から離れる方向を向く。第1ツール係合面78Aおよび第2ツール係合面80Aは、アウタリンク外側面38Cと同じ方向を向く。第1ツール係合面78Aおよび第2ツール係合面80Aは、位置調整構造76を回転させるツールT2が係合するように構成される。第1ツール係合面78Aには、第2ツール係合面80Aと同じツールT2が係合する。
【0078】
例えば、位置調整構造76は、引出位置調整孔82、および、引込位置調整孔84の少なくとも1つを含む。本実施形態では、位置調整構造76は、引出位置調整孔82および引込位置調整孔84の両方を含む。例えば、引出位置調整孔82は、アウタリンク38に設けられ、かつ、引出位置調整ボルト78を受けるように構成される。例えば、引込位置調整孔84は、アウタリンク38に設けられ、かつ、引込位置調整ボルト80を受けるように構成される。
【0079】
例えば、引出位置調整孔82は、引出孔軸心B1を有する。例えば、引込位置調整孔84は、引込孔軸心B2を有する。例えば、第1アウタリンク軸心X1は、引出孔軸心B1と引込孔軸心B2との間に設けられる。フロントディレイラ30の組立状態において、
図13のように第1アウタリンク軸心X1に平行な方向から見て、第1アウタリンク軸心X1が、引出孔軸心B1と引込孔軸心B2との間を通過するように設けられる。例えば、引出位置調整孔82および引込位置調整孔84は、周囲部分50に設けられる。引出位置調整孔82および引込位置調整孔84は、アウタリンク38のうち周囲部分50に形成される。
【0080】
例えば、位置調整構造76は、引出位置当接面86と、引込位置当接面88と、を含む。例えば、引出位置当接面86は、ベース部材32に設けられ、かつ、引出位置調整ボルト78に接触するように構成される。例えば、引込位置当接面88は、ベース部材32に設けられ、かつ、引込位置調整ボルト80に接触するように構成される。第1アウタリンク軸心X1は、引出位置当接面86と引込位置当接面88との間に配置される。フロントディレイラ30の組立状態において、横方向D2から見て、第1アウタリンク軸心X1が、引出位置当接面86と引込位置当接面88との間を通過するように設けられる。
【0081】
図13に示されるように、引出位置当接面86は、ベース部材32のチェーンガイド44が引出位置PG2に位置する場合に、引出位置調整ボルト78に接触する。引出位置調整ボルト78が引出位置調整孔82にねじ込まれるほど、アウタリンク38のアウタリンク内側面38Dから引出位置調整ボルト78が大きく突出する。引出位置調整ボルト78の突出量が大きいほど、第1アウタリンク端38Aが第1アウタリンク軸心X1まわりに第2アウタリンク回転方向PL2へ回転する場合に、引出位置調整ボルト78が引出位置当接面86に接触するまでの第1アウタリンク端38Aの回転量が少なくなる。引出位置調整ボルト78が引出位置当接面86に接触することによって、第1アウタリンク軸心X1まわりの第2アウタリンク回転方向PL2への第1アウタリンク端38Aの回転が抑制される。したがって、引出位置調整ボルト78が引出位置調整孔82にねじ込まれることによって、人力駆動車10のフレーム12に近づくように、チェーンガイド44の引出位置PG2を選択的に調整できる。
【0082】
図14に示されるように、引込位置当接面88は、ベース部材32のチェーンガイド44が引込位置PG1に位置する場合に、引込位置調整ボルト80に接触する。引込位置調整ボルト80が引込位置調整孔84にねじ込まれるほど、アウタリンク38のアウタリンク内側面38Dから引込位置調整ボルト80が大きく突出する。引込位置調整ボルト80の突出量が大きいほど、第1アウタリンク端38Aが第1アウタリンク軸心X1まわりに第1アウタリンク回転方向PL1へ回転する場合に、引込位置調整ボルト80が引込位置当接面88に接触するまでの第1アウタリンク端38Aの回転量が小さくなる。引込位置調整ボルト80が引込位置当接面88に接触することによって、第1アウタリンク軸心X1まわりの第1アウタリンク回転方向PL1への第1アウタリンク端38Aの回転が抑制される。したがって、引込位置調整ボルト80が引込位置調整孔84にねじ込まれることによって、人力駆動車10のフレーム12から離れるように、チェーンガイド44の引込位置PG1を選択的に調整できる。
【0083】
図1および
図5に示されるように、例えば、ペダリング時にチェーン受スロット44Cにおいて駆動チェーン18が動く方向として、チェーン駆動方向D4が定義される。チェーン駆動方向D4は、例えば、人力駆動車10の後方から前方に向かう方向に対応する。位置調整構造76は、例えば、チェーン駆動方向D4に関してアウタリンク38の開口部48の下流側に配置される。例えば、引出位置調整ボルト78および引込位置調整ボルト80は、チェーン駆動方向D4に関してアウタリンク38の開口部48の下流側に配置される。
【0084】
図15から
図17を参照して、インナワイヤ固定構造52によるフロントディレイラ30の調整方法を説明する。インナワイヤ固定構造52によるフロントディレイラ30の調整方法は、取付状態において行われる。ケーブルファスナ54がケーブル固定状態である間に、インナワイヤ固定構造52がアウタリンク38に対して回転することによって、人力駆動車10のフレーム12に対するチェーンガイド44の位置が調整される。調整方法は、第1工程、第2工程および第3工程を含む。
【0085】
第1工程は、インナワイヤ固定構造52にインナワイヤ20Aが固定される工程である。第1工程では、
図15に示すケーブル解放状態の一例のように、例えば、ケーブルファスナ54が取り外される。第1工程では、ケーブルファスナ54がケーブル解放状態にされ、かつ、インナワイヤ固定構造52が第1取付位置に配置される。ケーブルファスナ54がケーブル解放状態である場合、アウタリンク付勢部材36Bの付勢力によって、チェーンガイド44が引込位置PG1に移動する。インナワイヤ20Aが、少なくとも1つのケーブル固定突出部68上を通過するようにケーブルガイド溝部66に配置され、ケーブルファスナ54がケーブル解放状態からケーブル固定状態に切り替えられることによって、インナワイヤ20Aが、ケーブル固定プレート60とケーブルアクチュエータ62との間に固定される。
【0086】
第2工程は、チェーンガイド44が引出位置PG2に移動される工程である。第2工程では、
図16に示すように、変速操作部が操作されることにより、チェーンガイド44が引出位置PG2に移動する。
【0087】
第3工程は、人力駆動車10のフレーム12に対するチェーンガイド44の位置が調整される工程である。第3工程では、アクチュエータアジャスタ70がケーブルアジャスタ56の調整孔72にねじ込まれることによって、インナワイヤ固定構造52が第1ケーブル回転方向PC1に回転して、
図16の状態から
図17に示す状態に変化する。インナワイヤ固定構造52が第1ケーブル回転方向PC1に回転することによって、インナワイヤ20Aが取付孔軸心A1まわりに第1ケーブル回転方向PC1へ回転するため、インナワイヤ20Aの張力が強くなる。インナワイヤ20Aの張力が強くなるため、第1アウタリンク端38Aが第1アウタリンク軸心X1まわりに第2アウタリンク回転方向PL2へ回転する。第1アウタリンク端38Aが第1アウタリンク軸心X1まわりに第2アウタリンク回転方向PL2に回転することによって、第2アウタリンク端38Bが人力駆動車10のフレーム12から離れるように横方向D2に移動する。第2アウタリンク端38Bが人力駆動車10のフレーム12から離れるように横方向D2に移動するため、チェーンガイド44も人力駆動車10のフレーム12から離れるように横方向D2に移動する。このようにチェーンガイド44が横方向D2に移動するため、横方向インナガイドプレート44Bと駆動チェーン18との位置関係に応じて、チェーンガイド44の位置が調整される。
【0088】
図18に示されるように、インナワイヤ固定構造52によるフロントディレイラ30の調整方法には、例えば、第1治具J1が用いられる。第1治具J1は、インナワイヤ固定構造52が第1取付位置にある状態において、インナワイヤ固定構造52の回転を抑制するように、ケーブルアクチュエータ62とアウタリンク38との間に配置される。第1治具J1は、インナワイヤ固定構造52によるフロントディレイラ30の調整方法の第1工程において、フロントディレイラ30に取り付けられる。インナワイヤ固定構造52によるフロントディレイラ30の調整方法の第2工程以降の工程では、第1治具J1はフロントディレイラ30から取り外される。第1治具J1によって、第1工程における第1ケーブル回転方向PC1へのインナワイヤ固定構造52の回転が抑制されるため、ケーブル固定ボルト58のケーブル固定ねじ部58Cの第1雄ねじ部が正ねじの場合に、上述の第1工程におけるインナワイヤ20Aの固定が行いやすい。必要に応じて、第1治具J1は省略されてもよい。
【0089】
第1治具J1が省略される場合、ケーブル固定ボルト58がアクチュエータ孔62Bに第2ケーブル回転方向PC2にねじ込まれることによって、ケーブルファスナ54がケーブル解放状態からケーブル固定状態に切り替えられるようにインナワイヤ固定構造52が構成されてもよい。すなわち、ケーブル固定ボルト58のケーブル固定ねじ部58Cの第1雄ねじ部は、逆ねじで構成されてもよい。ケーブル固定ボルト58のケーブル固定ねじ部58Cの第1雄ねじ部が逆ねじである場合、ケーブル固定ボルト58がアクチュエータ孔62Bに第2ケーブル回転方向PC2にねじ込まれても、ケーブルアクチュエータ62の第1ケーブル回転方向PC1への回転を抑制できるため、上述の第1工程におけるインナワイヤ20Aの固定が行いやすい。
【0090】
インナワイヤ固定構造52によるフロントディレイラ30の調整方法には、例えば、第2治具J2が用いられる。第2治具J2は、インナワイヤ20Aがインナワイヤ通路74に配置されていない場合に、インナワイヤ通路74を貫通するようにインナワイヤ通路74に配置される。第2治具J2によって、使用していないインナワイヤ通路74の泥等による目詰まりを抑制できる。第2治具J2は、第1治具J1がケーブルアクチュエータ62とアウタリンク38との間に配置されている場合に、フロントディレイラ30からの第1治具J1の脱落を抑制するため、第1治具J1と一体に形成されてもよい。必要に応じて、第2治具J2は省略されてもよい。
【0091】
<第2実施形態>
図19および
図20を参照して、第2実施形態のフロントディレイラ30について説明する。第2実施形態のフロントディレイラ30は、インナワイヤ固定構造52がケーブルアジャスタ56を備えない点、アウタリンク38の開口部48の大きさが異なる点、および、フロントディレイラ30がインナワイヤ通路74を備えない点以外は第1実施形態のフロントディレイラ30と同様である。したがって、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0092】
本実施形態のインナワイヤ固定構造52は、ケーブルアジャスタ56を備えない。本実施形態のインナワイヤ固定構造52のケーブルファスナ90は、例えば、ケーブル固定ボルト92を含む。ケーブルファスナ90は、例えば、ケーブル固定プレート94を含む。ケーブル固定プレート94のプレート孔は、例えば、フロントディレイラ30の組立状態においてケーブル固定ボルト92のケーブル固定シャフトが通過するように貫通する。
【0093】
本実施形態では、ケーブル固定ボルト92がアウタリンク38の取付孔40に対してねじ込まれることによって、ケーブル固定ボルト92がアウタリンク38の取付孔40に螺合する。本実施形態では、ボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aは、取付孔軸方向D3において、ケーブル固定ボルト92のケーブル固定ヘッドとアウタリンク38との間に固定される。本実施形態では、ボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aが、取付孔軸方向D3において、ケーブルファスナ90のケーブル固定プレート94とアウタリンク38との間に固定される。
【0094】
本実施形態のフロントディレイラ30では、アウタリンク38の開口部48の大きさが、第1実施形態のアウタリンク38の開口部48の大きさと異なる。本実施形態では、視点方向D1から見た場合に、取付孔軸方向D3に垂直な方向における開口部48の長さが、第1実施形態の取付孔軸方向D3に垂直な方向における開口部48の長さよりも短い。本実施形態のアウタリンク38の開口部48の大きさは、視点方向D1から見た場合にアウタリンク38の開口部48を通して支持ボルト46が見えれば、第1実施形態のアウタリンク38の開口部48の大きさと、どのように異なっていてもよい。
【0095】
本実施形態のフロントディレイラ30は、インナワイヤ通路74を備えない。本実施形態では、インナワイヤ固定構造52に固定されたインナワイヤ20Aの端部にエンドキャップ20Cが取り付けられる。
【0096】
<変更例>
各実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用のフロントディレイラが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用のフロントディレイラは、例えば以下に示される各実施形態の変更例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変更例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変更例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0097】
・ケーブルファスナ54は、ケーブル固定プレート60を含まなくてもよい。ケーブルファスナ54がケーブル固定プレート60を含まない場合、ケーブル固定ボルト58とケーブルアクチュエータ62との間にインナワイヤ20Aが固定されてもよい。
【0098】
・少なくとも1つのケーブル固定突出部68は、1つのみのケーブル固定突出部68、2つのケーブル固定突出部68、または、4つ以上のケーブル固定突出部68を含んでいてもよい。少なくとも1つのケーブル固定突出部68の数は、例えば、ケーブルガイド溝部66の長さ、取付孔40の直径等に応じて設定できる。
【0099】
・インナワイヤ通路74は、第1アウタリンク軸部材38X以外の場所に設けられてもよい。例えば、インナワイヤ固定構造52は、第1アウタリンク軸部材38Xに加えて、第2アウタリンク軸部材38Y、第1インナリンク軸部材42X、および、第2インナリンク軸部材42Yの少なくとも1つに設けられてもよい。または、インナワイヤ固定構造52は、第1アウタリンク軸心X1および第2アウタリンク軸心X2のいずれとも同軸ではないように、アウタリンク38に設けられてもよい。要するに、アウタリンク38に、インナワイヤ通路74として、インナワイヤ20Aが適切に誘導されるような貫通孔が設けられてもよい。
【0100】
・位置調整構造76が、引出位置調整ボルト78および引込位置調整ボルト80のいずれか1つのみを含んでもよい。位置調整構造76が引出位置調整ボルト78のみを含む場合、少なくともチェーンガイド44の引出位置PG2を調整できるため、位置調整構造76によってチェーンガイド44の位置を容易に調整できる。位置調整構造76が引込位置調整ボルト80のみを含む場合、少なくともチェーンガイド44の引込位置PG1を調整できるため、位置調整構造76によってチェーンガイド44の位置を容易に調整できる。
【0101】
・位置調整構造76が、引出位置調整孔82および引込位置調整孔84のいずれか1つのみを含んでもよい。例えば、位置調整構造76が引出位置調整ボルト78のみを含む場合、位置調整構造76は、引出位置調整孔82のみを含んでもよい。例えば、位置調整構造76が引込位置調整ボルト80のみを含む場合、位置調整構造76は、引込位置調整孔84のみを含んでもよい。
【0102】
・位置調整構造76は、アウタリンク内側面38Dとは異なる面であれば、アウタリンク外側面38C以外のアウタリンク38の面に設けられてもよい。位置調整構造76がアウタリンク内側面38Dとは異なる面に設けられる場合、位置調整構造76がベース部材等に設けられる場合に比べて、位置調整構造76を操作するためのツールT2がアクセスし易い。
【0103】
・アウタリンク外側面38Cにおける位置調整構造76と開口部48との配置は、任意に変更されてもよい。例えば、引出位置調整ボルト78および引込位置調整ボルト80がチェーン駆動方向D4に関してアウタリンク38の開口部48の上流側に配置されてもよい。または、引出位置調整ボルト78および引込位置調整ボルト80が、チェーン駆動方向D4に関して垂直な方向に並ぶように、アウタリンク38の開口部48の上側に配置されてもよい。
【0104】
・第2実施形態において、フロントディレイラ30がインナワイヤ通路74を備えてもよい。例えば、インナワイヤ通路74は、第1アウタリンク軸部材38Xに設けられる。
【0105】
・第2実施形態において、アウタリンク38がケーブルガイド溝部66を有していてもよい。
【0106】
・第2実施形態において、アウタリンク38が少なくとも1つのケーブル固定突出部を有していていてもよい。
【0107】
・第2実施形態において、アウタリンク38の開口部48の大きさが、第1実施形態のアウタリンク38の開口部48の大きさと同じでもよい。
【0108】
・フロントディレイラ30は、例えば、人力駆動車10のフレーム12に接続されるように構成されるベース部材32と、第1アウタリンク端38Aと第2アウタリンク端38Bとを有するアウタリンク38であって、第1アウタリンク端38Aは、第1アウタリンク軸心X1まわりに回転可能に、ベース部材32に接続され、アウタリンク38の少なくとも一部は、フロントディレイラ30が人力駆動車10のフレーム12に取り付けられる取付状態において、ベース部材32よりも人力駆動車10のフレーム12から遠いアウタリンク38と、アウタリンク38に設けられるインナワイヤ固定構造52と、を備え、インナワイヤ固定構造52は、ケーブル固定状態とケーブル解放状態とを切り替えるように構成されるケーブルファスナ54であって、ケーブルファスナ54がケーブル固定状態である間に、ケーブルファスナ54はボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aを固定するように構成され、ケーブルファスナ54がケーブル解放状態である間に、ケーブルファスナ54はボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aを解放するように構成されるケーブルファスナ54と、ボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aを動かすように構成されるケーブルアジャスタ56と、を含み、インナワイヤ固定構造52は、ケーブルファスナ54がケーブル固定状態である間に、アウタリンク38に対して回転するように構成されていれば、他の構成は省略してもよい。
【0109】
・フロントディレイラ30は、例えば、人力駆動車10のフレーム12に接続されるように構成されるベース部材32と、第1インナリンク端42Aと第2インナリンク端42Bとを有するインナリンク42であって、第1インナリンク端42Aは、第1インナリンク軸心Y1まわりに回転可能に、ベース部材32に接続されるインナリンク42と、第1アウタリンク端38Aと第2アウタリンク端38Bとを有するアウタリンク38であって、第1アウタリンク端38Aは、第1アウタリンク軸心X1まわりに回転可能に、ベース部材32に接続され、フロントディレイラ30が人力駆動車10のフレーム12に取り付けられる取付状態において、インナリンク42よりも人力駆動車10のフレーム12から遠いアウタリンク38と、インナリンク42およびアウタリンク38の一方に、別のリンクを介さずに設けられるインナワイヤ固定構造52と、を備え、インナワイヤ固定構造52は、ケーブル固定状態とケーブル解放状態とを切り替えるように構成されるケーブルファスナ54であって、ケーブルファスナ54がケーブル固定状態である間に、ケーブルファスナ54はボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aを固定するように構成され、ケーブルファスナ54がケーブル解放状態である間に、ケーブルファスナ54はボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aを解放するように構成されるケーブルファスナ54と、ボーデンケーブル20のインナワイヤ20Aを動かすように構成されるケーブルアジャスタ56と、を含み、インナワイヤ固定構造52は、ケーブルファスナ54がケーブル固定状態である場合に、インナリンク42およびアウタリンク38の一方に対して回転するように構成されていれば、他の構成は省略してもよい。
【0110】
・フロントディレイラ30は、例えば、人力駆動車10のフレーム12に接続されるように構成されるベース部材32と、第1インナリンク端42Aと第2インナリンク端42Bとを有するインナリンク42であって、第1インナリンク端42Aは、第1インナリンク軸心Y1まわりに回転可能に、ベース部材32に接続されるインナリンク42と、第1アウタリンク端38Aと第2アウタリンク端38Bとを有するアウタリンク38であって、第1アウタリンク端38Aは、第1アウタリンク軸心X1まわりに回転可能に、ベース部材32に接続され、フロントディレイラ30が人力駆動車10のフレーム12に取り付けられる取付状態において、インナリンク42よりも人力駆動車10のフレーム12から遠いアウタリンク38と、アウタリンク38に設けられるインナワイヤ固定構造52と、アウタリンク38に設けられるインナワイヤ通路74と、を備えていれば、他の構成は省略してもよい。
【0111】
・フロントディレイラ30は、人力駆動車10のフレーム12に接続されるように構成されるベース部材32と、第1アウタリンク端38Aと第2アウタリンク端38Bと開口部48とを有するアウタリンク38であって、第1アウタリンク端38Aは、第1アウタリンク軸心X1まわりに回転可能に、ベース部材32に接続され、アウタリンク38の少なくとも一部は、フロントディレイラ30が人力駆動車10のフレーム12に取り付けられる取付状態において、ベース部材32よりも人力駆動車10のフレーム12から遠いアウタリンク38と、ベース部材32に対して、引込位置PG1と引出位置PG2との間において動くように構成されるように、第2アウタリンク軸心X2まわりに回転可能に、アウタリンク38の第2アウタリンク端38Bに接続されるチェーンガイド44であって、引出位置PG2は、取付状態において、引込位置PG1よりも人力駆動車10のフレーム12から遠いチェーンガイド44と、アウタリンク38に設けられ、かつ、ベース部材32に関するチェーンガイド44の引出位置PG2を選択的に調整するために、ベース部材32に選択的に接触するように構成される引出位置調整ボルト78、および、アウタリンク38に設けられ、かつ、ベース部材32に関するチェーンガイド44の引込位置PG1を選択的に調整するために、ベース部材32に選択的に接触するように構成される引込位置調整ボルト80の少なくとも1つを含む位置調整構造76と、を備えていれば、他の構成は省略してもよい。本変更例のフロントディレイラ30は、インナワイヤ固定構造52をさらに含んでもよい。
【0112】
・フロントディレイラ30は、人力駆動車10のフレーム12に接続されるように構成されるベース部材32と、第1インナリンク端42Aと第2インナリンク端42Bとを有するインナリンク42であって、第1インナリンク端42Aは、第1インナリンク軸心Y1まわりに回転可能に、ベース部材32に接続されるインナリンク42と、第1アウタリンク端38Aと第2アウタリンク端38Bと開口部48とを有するアウタリンク38であって、第1アウタリンク端38Aは、第1アウタリンク軸心X1まわりに回転可能に、ベース部材32に接続され、フロントディレイラ30が人力駆動車10のフレーム12に取り付けられる取付状態において、インナリンク42よりも人力駆動車10のフレーム12から遠いアウタリンク38と、ベース部材32に対して引込位置PG1と引出位置PG2との間において動くように構成されるように、第2インナリンク軸心Y2まわりに回転可能に、インナリンク42の第2インナリンク端42Bに接続され、かつ、第2アウタリンク軸心X2まわりに回転可能に、アウタリンク38の第2アウタリンク端38Bに接続されるチェーンガイド44であって、引出位置PG2は、取付状態において、引込位置PG1よりも人力駆動車10のフレーム12から遠いチェーンガイド44と、アウタリンク38に設けられ、かつ、ベース部材32に関するチェーンガイド44の引出位置PG2を選択的に調整するために、ベース部材32に選択的に接触するように構成される引出位置調整ボルト78、および、アウタリンク38に設けられ、かつ、ベース部材32に関するチェーンガイド44の引込位置PG1を選択的に調整するために、ベース部材32に選択的に接触するように構成される引込位置調整ボルト80の少なくとも1つを含む位置調整構造76と、を備えていれば、他の構成は省略してもよい。
【0113】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0114】
10…人力駆動車、12…フレーム、18…駆動チェーン、20…ボーデンケーブル、20A…インナワイヤ、30…フロントディレイラ、32…ベース部材、38…アウタリンク、38A…第1アウタリンク端、38B…第2アウタリンク端、42…インナリンク、42A…第1インナリンク端、42B…第2インナリンク端、44…チェーンガイド、44A…横方向アウタガイドプレート、44B…横方向インナガイドプレート、44C…チェーン受スロット、46…支持ボルト、48…開口部、50…周囲部分、52…インナワイヤ固定構造、76…位置調整構造、78…引出位置調整ボルト、78A…第1ツール係合面、80…引込位置調整ボルト、80A…第2ツール係合面、82…引出位置調整孔、84…引込位置調整孔、86…引出位置当接面、88…引込位置当接面。