(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063656
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】液体吐出検査装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171782
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ウォン メンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】三浦 聡
(72)【発明者】
【氏名】横越 優子
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB26
2C056EB29
2C056EB30
2C056EB35
2C056EB36
2C056EC07
2C056EC38
2C056EC42
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドの印刷性能を確認できる液体吐出検査装置を提供する。
【解決手段】実施形態にかかる液体吐出検査装置は、吐出ヘッドと、画像検出部と、制御部と、を備える。吐出ヘッドは、複数の液滴を吐出し、複数の液滴を含む画像を印刷する。画像検出部は、印刷された印刷画像を検出する。制御部は、異なる印刷周波数における複数の印刷画像における複数の前記液滴の着弾位置から、印刷のばらつきを検出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液滴を吐出し、複数の液滴を含む画像を印刷する吐出ヘッドと、
印刷された印刷画像を検出する画像検出部と、
異なる印刷周波数における複数の印刷画像における複数の前記液滴の着弾位置から、印刷のばらつきを検出する、制御部と、を備える、液体吐出検査装置。
【請求項2】
前記吐出ヘッドまたは吐出する液体の温度を調整する温度調整部を備え、
前記制御部は、印刷周波数が異なる複数の前記印刷画像の複数の液滴の着弾位置に基づき、前記吐出ヘッドまたは吐出する液体の温度条件を取得する、請求項1に記載の液体吐出検査装置。
【請求項3】
複数の液滴は、第1の液滴と、第1の液滴の後に吐出される第2の液滴と、を有し、
前記第2の液滴の液量は、前記第1の液滴の液量より少ない、請求項1に記載の液体吐出検査装置。
【請求項4】
前記制御部は、異なる印刷周波数における複数の印刷画像における複数の前記液滴の着弾位置から、液滴の平均吐出速度または着弾位置のばらつきを検出する、請求項1に記載の液体吐出検査装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記平均吐出速度または前記着弾位置のばらつきに基づき、印刷の品質を判定する、請求項4に記載の液体吐出検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンタなどの液体吐出装置において、高画質、高解像度、高生産性、液滴量増加等の様々な印字性能が求められている。
【0003】
例えばインク滴を連続的に吐出させ印刷速度の高速化を図る場合、吐出動作の安定性を確保するため、インク吐出動作の開始時に、ノズル内のインクのメニスカス位置の変動を少なくし、メニスカス位置をノズルの開口付近に安定させることが要求される。
【0004】
インクの粘度が低い場合は、流体内のインクの粘性抵抗が低くなるため、吐出後に後退したメニスカスの復帰に伴うインクの流れの慣性によって、メニスカスがノズルの開口よりオーバーシュートすることがある。メニスカスがオーバーシュートの状態で吐出動作が開始されると、インク滴の平均吐出速度が低下する。一方、インクの粘度が高い場合は、流体内のインクの粘性抵抗が高くなるため、インクのリフィル速度が低下し、メニスカスがノズルの開口よりアンダーシュートすることがある。メニスカスがアンダーシュートの状態で吐出動作が開始されると、インク滴の吐出速度が上昇する。すなわち、連続的なインク吐出において、インクの粘度によって、インク滴の吐出速度が不安定となり、ドット間の隙間、印字抜け、着弾乱れなどの印字不良が発生する要因となり得る。
【0005】
そこで、液体吐出ヘッドの印刷性能を確認できる液体吐出検査装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、液体吐出ヘッドの印刷性能を確認できる液体吐出検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態にかかる液体吐出検査装置は、吐出ヘッドと、画像検出部と、制御部と、を備える。吐出ヘッドは、複数の液滴を吐出し、複数の液滴を含む画像を印刷する。画像検出部は、印刷された印刷画像を検出する。制御部は、異なる印刷周波数における複数の印刷画像における複数の前記液滴の着弾位置から、印刷のばらつきを検出する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る液体吐出装置の構成を示す説明図。
【
図2】同液体吐出装置の検査処理のフローチャート。
【
図3】同液体吐出装置の印刷画像の一例を示す説明図。
【
図4】同液体吐出装置における液体温度と第1インク滴の平均速度との相関関係を示すグラフ。
【
図5】同液体吐出装置の複数の異なる印刷周波数において、吐出時間差と第2インク滴の平均吐出速度との相関を示すグラフ。
【
図6】第2実施形態にかかる液体吐出装置の検査処理のフローチャート。
【
図7】同液体吐出装置の異なる温度でのドット間着弾距離と吐出時間差との関係を示すグラフ。
【
図8】同液体吐出装置における、第2インク滴の吐出速度と許容ドット間距離との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、第1の実施形態に係る液体吐出検査装置としての液体吐出装置100について、
図1乃至
図5を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド10の構成を示すブロック図である。
図2は、液体吐出装置100の検査処理のフローチャートであり、
図3は液体吐出装置100の検出画像と着弾距離の説明図である。
図4は、液体吐出装置100における液体温度と第1インク滴の平均速度との相関関係を示すグラフである。
図5は、複数の異なる印刷周波数において、吐出時間差と第2インク滴の平均吐出速度との相関を示すグラフである。
【0011】
液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド10と、液体供給部21と、搬送部22と、温度調整部23と、画像検出部(読取部)24と、操作部25と、表示部26と、制御部30と、を備える。また、液体吐出装置100は各種センサを適宜備える。
【0012】
液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド10に対向する印刷位置を通る所定の搬送路に沿って、吐出対象物である用紙等の媒体を搬送しながら、液体吐出ヘッド10からインク等の液体を吐出することで、用紙に画像形成処理を行うインクジェットプリンタである。
【0013】
液体吐出ヘッド10は、例えばシェアモードシェアードウォール式のインクジェットヘッドである。液体吐出ヘッド10は、インクを循環させない非循環式のヘッドであってもよく、また、インクを循環させる循環式のヘッドであってもよい。本実施形態において、液体吐出ヘッド10は、非循環式のヘッドの例を用いて説明する。
【0014】
例えば液体吐出ヘッド10は、複数の圧電素子を有するアクチュエータ11と、アクチュエータ11を駆動する駆動回路12と、を備える。例えば液体吐出ヘッド10は、液体を吐出する複数のノズルと、ノズルに連通する複数の圧力室と、複数の圧力室に連通する共通室と、を有する流路を有する。液体吐出ヘッド10の流路は液体供給部21に接続され、液体供給部から液体吐出ヘッド10の流路にインクが供給される。
【0015】
アクチュエータ11は、複数の圧電素子と、圧電素子に形成される電極と、を有し、制御部30による制御によって駆動制御可能に構成される。アクチュエータ11は、各圧力室に対応して設けられる圧電素子の電極に電圧が印加されて圧電素子が変形することで、圧力室の容積を増減させてインクをノズルから噴射させる。
【0016】
駆動回路12は、駆動電圧を圧電体の電極に印加することでアクチュエータ11を駆動する。駆動回路12は、圧電素子を動作させるための制御信号及び駆動信号を生成する。駆動回路12は、液体吐出装置100の制御部30から入力された画像信号に従い、液体を吐出させるタイミング及び液体を吐出させる圧電素子を選択するなどの制御のための制御信号を生成する。また、駆動回路12は、制御信号に従って圧電素子に印加する電圧、すなわち駆動信号(電気信号)を生成する。駆動回路12が圧電素子に駆動信号を印加すると、圧電素子は圧力室の容積を変化させるように駆動する。
【0017】
例えば、駆動回路12は、データバッファ13、デコーダ14、ドライバ15を備える。データバッファ13は、印字データをアクチュエータ11の圧電素子毎に時系列に保存する。デコーダ14は、圧電素子毎に、データバッファ13に保存された印字データに基づいて、ドライバ15を制御する。ドライバ15は、デコーダ14の制御に基づき、各圧電素子を動作させる駆動信号を出力する。駆動信号は、各圧電素子に印加する電圧である。
【0018】
液体供給部21は、液体吐出ヘッド10の流路の一次側に接続され、液体吐出ヘッド10の流路に液体を供給する。例えば液体供給部21は、液体を貯留するタンクと、タンクと液体吐出ヘッド10流路とを接続する接続流路と、タンクの液体を液体吐出ヘッド10に送る送液ポンプと、を備える。
【0019】
搬送部22は、所定の搬送路に沿って、用紙などの媒体を搬送し、印刷位置に供給する。搬送部22は、例えば搬送経路に沿って配置される複数の搬送ローラや搬送ガイドを備える。搬送部22は、媒体を液体吐出ヘッド10に相対移動可能に支持する。
【0020】
温度調整部23は、液体吐出ヘッド10に供給される液体や液体吐出ヘッド10の流路を加熱する加熱装置、または、液体吐出ヘッド10に供給される液体や液体吐出ヘッド10の流路を冷却する冷却装置を備える。
【0021】
画像検出部(読取部)24は、読取対象の画像を取得する光学部として、撮像素子等の画像センサやレンズなどの光学部品を備える。画像検出部24は検査用の印刷処理によって画像が印刷された媒体の画像を取得し、制御部へ送る。
【0022】
操作部25は、例えば電源キー、用紙フィードキー、エラー解除キー等のファンクションキーを備える。
【0023】
表示部26は、画像印刷装置の種々の状態を表示可能なディスプレイを有する。
【0024】
制御部30は、例えば、制御基板であり、プロセッサ31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、画像メモリ34、及び入出力ポートであるI/Oポート35、を備える。
【0025】
プロセッサ31は、コントローラであるCPU(Central Processing Unit)等の処理回路である。プロセッサ31は、コンピュータの中枢部分に相当する。プロセッサ31は、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムに従って、プリンタとしての各種の機能を実現するべく各部を制御する。例えばプロセッサ31は、液体吐出装置100に設けられる液体吐出ヘッド10、液体供給部21、搬送部22、温度調整部23、画像検出部24の動作を制御する。また、プロセッサ31は、印刷時に、画像メモリ34に保存された印字データを描画順に駆動回路12に送信する。
【0026】
一例としてプロセッサ31は搬送部22及び液体吐出ヘッド10を駆動することで検査用の印刷処理を行う。またプロセッサ31は画像検出部24を駆動することで印刷後の媒体の画像を取得する。プロセッサ31は、検出した画像データに基づき、インク滴間の距離やインク滴の吐出速度を算出する。また、プロセッサ31は、算出した吐出速度に基づき、印刷周波数を変化させた時の吐出速度のばらつきを算出する。さらにプロセッサ31は複数の温度条件における吐出速度のばらつきが許容範囲内であるか否かを検出し、印刷に適した温度条件を取得する。
【0027】
ROM32は、上記コンピュータの読み出し専用の主記憶部分に相当する。ROM32は、上記のオペレーティングシステムやアプリケーションプログラムを記憶する。ROM32は、プロセッサ31が各部を制御するための処理を実行する上で必要なデータを記憶する場合もある。
【0028】
RAM33は、上記コンピュータの書換え自在な主記憶部分に相当する。RAM33は、プロセッサ31が処理を実行する上で必要なデータを記憶する。またRAM33は、プロセッサ31によって情報が適宜書き換えられるワークエリアとしても利用される。ワークエリアは、印刷データが展開される画像メモリを含んでいてもよい。
【0029】
画像メモリ34は、例えば外部接続機器200からの印字データを記憶する。
【0030】
I/Oポート35は、外部接続機器200からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部である。外部接続機器200からの印字データは、I/Oポート35を通じて制御部30へ送信され、画像メモリ34に保存される。
【0031】
このように構成された液体吐出装置100において、制御部30は液体吐出ヘッド10に信号を入力することで、駆動回路12に駆動電圧を印加し、複数の圧電素子に電位差を生じさせて、圧電素子を選択的にシェアモード変形させ、圧力室の容積を増減することでノズルから液体を吐出させる。
【0032】
次に、本実施形態にかかる検査方法の一例について、
図2を参照して説明する。
図2は制御部の制御手順を示すフローチャートである。
【0033】
まずAct1として、プロセッサ31は、印刷周波数を複数の所定値に設定する。印刷周波数の所定値は、例えば、2kHz刻みで6~50kHzに設定される。印刷周波数は第1インク滴DA(第1の液滴)と第2インク滴DB(第2の液滴)の吐出時間差と対応しており、印刷周波数を設定することで、吐出時間差の条件が設定される(1/印刷周波数=第1インク滴を吐出する第1波形の長さ+第1インク滴DAと第2インク滴DBの吐出時間差)。
続いて、Act2として、プロセッサ31は、温度を設定する。すなわち、プロセッサは温度調整装置の条件を所定値に設定する。温度の所定値は、例えば、UVインクを使う場合は30~60℃の範囲内に設定される。温度条件はインクの粘度に対応するため、温度条件の設定により、対応するインクの粘度が設定される。
【0034】
Act3として、プロセッサ31は、設定された温度及び周波数条件下で、搬送部22を駆動して媒体を搬送しながら、検査用の印刷処理を行い、媒体に画像を印刷する。印刷データは、第1インク滴と第2インク滴を含み、第1インク滴の吐出の直後に第2インク滴を吐出する吐出波形を有する。例えば第1インク滴は、第1階調に対応する第1波形によって吐出され、第2インク滴は第2階調に対応する第2波形によって吐出される。メニスカス復帰への影響をより明確に検査するために、多量インク滴の吐出直後に少量インク滴を吐出するのが望ましい。このため、検査印刷用の印刷データは、第1インク滴が第2インク滴よりも液量が多い設定が好ましい。一例として、第1インク滴は3ドロップの量を有するインク滴、第2インク滴は1ドロップの量を有するインク滴とする。
【0035】
検査用の印刷処理の後、プロセッサ31は、画像検出部24を駆動し、検査用の画像が形成された媒体の画像を撮像し、検出画像を取得する(Act4)。
図3は、第1インク滴吐出後に第2インク滴を吐出する印刷画像の例である。
図3に示す例では、各ノズルにおいて、第1インク滴DAと第2インク滴DBはそれぞれ1回ずつ吐出される。なお、複数回の第1インク滴DAと複数回の第2インク滴DBを吐出してもよい。
【0036】
プロセッサ31は、取得した検出画像から、着弾位置情報として、各ノズルからそれぞれ吐出される2つのインク滴DA,DBの距離の平均値である平均ドット間着弾距離Dを検出する(Act5)。例えばプロセッサ31は、検出画像における各部の画素値に基づき、コントラストを検出し、着弾位置情報として、2つのインク滴DA、DBの位置情報を検出し、複数のノズルにおけるインク滴間の距離の平均値である平均ドット間着弾距離Dを求める。平均ドット間着弾距離Dは、画像メモリ34、あるいはROM32、RAM33、その他のデータメモリに、保存される。
【0037】
吐出時間差は印刷周波数に応じて決まるため、プロセッサ31は次の印刷周波数(吐出時間差)の設定値を変更して(Act6)、Act5にて検出が完了するまで、印刷及び画像検出を繰り返し、複数の異なる印刷周波数における複数の印刷画像から、平均ドット間着弾距離Dを取得する(Act3~Act6)。そして、2つのインク滴DA,DBの位置情報に基づき、複数の異なる印刷周波数における複数の印刷画像における第2インク滴DBの吐出速度を算出する(Act7,Act8)。
【0038】
ここで、第1インク滴DAと第2インク滴DBを吐出した際の媒体への着弾時間差は、式1に表される。
【数1】
D:平均ドット間着弾距離 [m]
v
m:媒体搬送速度 [m/s]
h:液体吐出ヘッドと媒体間のギャップ [m]
t:第1インク滴と第2インク滴の吐出時間差 [s]
va:第1インク滴の平均吐出速度 [m/s]
vb:第2インク滴の平均吐出速度 [m/s]
なお、第1インク滴DAの平均吐出速度vaは、事前に取得したデータより設定する。
図4は、温度と第1インク滴DAの平均速度との相対関係を示すグラフである。プロセッサ31は、
図4に示すような、温度と第1インク滴DAの平均吐出速度との相対関係から、第1インク滴DAの平均吐出速度vaを取得する。
式1を整理すると、検出した印刷画像から、第2インク滴DBの平均吐出速度が、式2によって算出できる。
【数2】
すなわち、第1インク滴DAと第2インク滴DB間の印刷周波数を振り、例えば印刷周波数が1~50kHzに相当する吐出時間差によって、第1インク滴DA吐出直後の第2インク滴DBの吐出速度をそれぞれ算出する。そして、プロセッサはAct9として、印刷周波数を変化させた場合の、第2インク滴の平均吐出速度の最大ばらつきを算出する。印刷周波数を変化させた場合のばらつきは式3によって算出する。
【数3】
ここで、vb
Hは、高周波数域(t<50μs)における第2インク滴の最小平均吐出速度 [m/s]である。すなわち、t<50μsで印刷周波数を変化させたうちの、平均吐出速度が最小となった時の平均速度である。
vb
Lは、低周波数域(t>100μs)における第2インク滴の平均吐出速度 [m/s]である。
図5は、複数の異なる印刷周波数において、第1インク滴と第2インク滴の吐出時間差と第2インク滴の平均吐出速度との相関を示すグラフである。電圧を可変としてTa>Tb>Tcとして異なる温度Ta,Tb,Tcにおいてそれぞれ、印刷周波数を変化させることで吐出時間差を変化させ、第2インク滴の平均吐出速度検出したとき、Taではメニスカス復帰がオーバーシュートとなり、T3ではメニスカス復帰がアンダーシュートとなることがわかる。一方、Tbでは第2インク滴の平均吐出速度の変化が一定の範囲内に収まることが判る。印刷処理においては、印刷周波数を変化させても、平均吐出速度の変化を抑えることが望ましいことから、プロセッサ31は、印刷周波数を変化させたときの平均吐出速度の変化に基づき、平均吐出速度の変化が小さくなるような温度条件を、適正温度条件として取得する。
具体例として、プロセッサ31は、第2インク滴の平均吐出速度のばらつきの大きさが所定の基準範囲内であるか否かを判定する(Act10)。例えば第2インク滴の平均吐出速度のばらつきの基準範囲を2m/sとし、第1インク滴吐出後の第2インク滴の平均吐出速度の最大ばらつき[Max(Δvb)]が2m/s以下になる場合の温度(粘度)条件について「合格」と判定する。そして、第1インク滴吐出後の第2インク滴の平均吐出速度の最大ばらつき[Max(Δvb)]が2m/s以上の場合の温度条件については「不合格」と判定する。
【0039】
例えば、
図5に示す温度条件Tbに近似する「メニスカスが弱オーバーシュート」状態では、幅広い印刷周波数で良い印字品質が得られるため、「合格」となる。一方、
図5に示す温度条件Tcに近似する「メニスカスがアンダーシュート」状態は「不合格」となる。
【0040】
そして、プロセッサ31は、「不合格」と判定した場合に、液体吐出ヘッド10の温度条件を再び設定し(Act2)、所定数のデータが得られるまで(Act5)、印刷、画像検出、吐出速度算出、ばらつき取得、判定、の各処理を、繰り返す。すなわち、異なる複数の温度条件における吐出速度のばらつきを検出して判定を行うことで、ばらつきが少ない温度条件を適正温度条件として取得する。プロセッサ31は、一例として、第2インク滴の平均吐出速度の最大ばらつきが2m/s以下になる温度条件を、適正温度条件として取得する(Act2~Act10)。
【0041】
本実施形態にかかる液体吐出検査装置としての液体吐出装置100によれば、液体吐出ヘッド10の印刷性能を確認できる。また、液体吐出装置100は、複数のインク滴を含む印刷データの印刷画像を検出し、異なる印刷周波数における複数の印刷画像における平均吐出速度を算出して印字品質を判定し、適正温度条件を調査することができる。このため、印刷時に当該適正温度条件にすることにより、インクの粘度を適正に保つことができ、印字品質を向上できる。また、最低限で2ラインのみの印刷画像を使用するため、検査用のインクの消費を抑えることができる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態にかかる検査処理について、
図6乃至
図8を参照して説明する。
図6は、第2実施形態にかかる検査処理のフローチャートである。
図7は、第1インク滴と第2インク滴吐出によるドット間着弾距離と、第1インク滴と第2インク滴の吐出時間差との、相関関係を示すグラフである。
図8は、第2インク滴の平均吐出速度と許容ドット間距離との関係を示す説明図である。
【0043】
本実施形態において、プロセッサ31は、第1インク滴と第2インク滴の間の距離であるドット間着弾距離を検出し、着弾位置のばらつきとしてのドット間着弾距離のばらつきに基づいて、温度条件を判定する。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0044】
まずAct11として、プロセッサ31は、印刷周波数を複数設定する。
続いて、Act12として、プロセッサ31は、温度を設定する。すなわち、プロセッサは温度調整装置の条件を設定する。
【0045】
Act13として、プロセッサ31は、設定された温度及び周波数条件下で、搬送部22を駆動して媒体を搬送しながら、検査用の印刷処理を行い、媒体に画像を印刷する。印刷データは、第1インク滴と第2インク滴を含み、第1インク滴の吐出後に第2インク滴を吐出する吐出波形を有する。例えば第1インク滴は、第1階調に対応する第1波形によって吐出され、第2インク滴は第2階調に対応する第2波形によって吐出される。メニスカス復帰への影響をより明確に検査するために、多量インク滴の吐出直後に少量インク滴を吐出するのが望ましい。このため、検査印刷用の印刷データは、第1インク滴が第2インク滴よりも液量が多い設定が好ましい。一例として、第1インク滴は3ドロップの量を有するインク滴、第2インク滴は1ドロップの量を有するインク滴とする。
【0046】
検査用の印刷処理の後、プロセッサ31は、画像検出部24を駆動し、検査用の画像が形成された媒体の画像を撮像し、検出画像を取得する(Act14)。
図3は、第1インク滴吐出後に第2インク滴を吐出する印刷画像の例である。
【0047】
プロセッサ31は、取得した検出画像から、複数のノズルにおける2つのインク滴DA,DBの距離の平均である平均ドット間着弾距離Dを検出する(Act15)。例えばプロセッサ31は、印刷画像における各部の画素値に基づき、コントラストを検出し、2つのインク滴DA、DBの位置情報を検出し、インク滴間の平均ドット間着弾距離Dを求める。平均ドット間着弾距離Dは、画像メモリ34、あるいはROM32、RAM33、その他のデータメモリに、保存される。
【0048】
本実施形態において、プロセッサ31は、着弾距離のばらつきを、算出する。プロセッサ31は、吐出時間差(印刷周波数)を変更して(Act16)、Act15にて検出が完了するまで、印刷及び画像検出を繰り返し、複数の異なる印刷周波数における印刷画像を取得し、(Act13~Act16)、複数の異なる印刷周波数における平均ドット間着弾距離Dを取得する(Act17)。
すなわち、第1インク滴DAと第2インク滴DB間の吐出時間差(印刷周波数)を振り、例えば印刷周波数が1~50kHzに相当する時間差によって、第1インク滴DAと第2インク滴DBの平均ドット間着弾距離をそれぞれ算出する。そして、プロセッサはAct19として、印刷周波数を変化させた場合の、着弾距離の最大ばらつきを算出する。印刷周波数を変化させた場合の、第1インク滴と第2インク滴のドット間着弾距離の最大ばらつき[Max(ΔD)]は、式4に表される。
【数4】
D
Hは、高周波数域(t<50μs)における最大平均ドット間着弾距離 [m]である。
D
Lは、低周波数域(t>100μs)における平均ドット間着弾距離 [m]である。
vb
Hは、高周波数域(t<50μs)における第2インク滴の最小平均吐出速度 [m/s]である。
vb
Lは、低周波数域(t>100μs)における第2インク滴の平均吐出速度 [m/s]である。
図7は、複数の異なる印刷周波数において、第1インク滴と第2インク滴の吐出時間差とドット間着弾距離との相関を示すグラフである。電圧を可変としてTa>Tb>Tcとして複数の温度条件Ta,Tb,Tcにおいて、印刷周波数を変化させることで第1インク滴と第2インク滴の吐出時間差を変化させて、平均ドット間着弾距離を検出したところ、Taではメニスカス復帰がオーバーシュートとなり、Tcではメニスカス復帰がアンダーシュートとなることがわかる。一方、Tbでは第2インク滴の着弾距離の変化が一定の範囲内に収まることが判る。印刷処理においては、印刷周波数を変化させても、平均ドット間着弾距離の変化を抑えることが望ましいことから、プロセッサ31は、吐出速度の変化に基づき、平均ドット間着弾距離の変化が小さくなるような温度条件を、適正温度条件として取得する。
ここで、
図8に示すように、第2インク滴の平均吐出速度の最大ばらつき[Max(Δvb)]が2m/sとする場合、ドット間着弾距離の許容範囲は、式5によって算出できる。
【数5】
具体例として、プロセッサ31は、平均ドット間着弾距離の最大ばらつき[Max(ΔD)]が「許容ΔD」以下であるか否かを判定する(Act20)。例えば平均ドット間着弾距離の最大ばらつき[Max(ΔD)]が「許容ΔD」以下になる場合の温度(粘度)条件について「合格」と判定する。そして、平均ドット間着弾距離の最大ばらつき[Max(ΔD)]が「許容ΔD」以上の場合の温度条件については「不合格」と判定する。一例として許容ΔDは、vb
Lが6~10m/sとなる値に設定される。
【0049】
例えば、
図7に示す温度条件Tbに近似する「メニスカスが弱オーバーシュート」状態では、幅広い印刷周波数で良い印字品質が得られるため、「合格」となる。一方、
図7に示す温度条件Tcに近似する「メニスカスがアンダーシュート」状態は「不合格」となる。
「不合格」と判断された場合は、液体吐出ヘッド10の温度を変化させ、前記ドット間着弾距離の最大ばらつきが「許容ΔD」以下になるように温度を調査する。すなわち、プロセッサ31は、「不合格」と判定した場合に、液体吐出ヘッド10の温度条件を再び設定し(Act12)、所定のデータが得られるまで(Act15)、印刷、画像検出、ばらつき取得、判定、の各処理を、繰り返す。異なる複数の温度条件における平均ドット間着弾距離のばらつきを検出して判定を行うことで、適正温度条件を取得する。
【0050】
本実施形態にかかる液体吐出検査装置としての液体吐出装置100によれば、複数のインク滴(液滴)を含む印刷データの印刷画像を検出し、画像から平均ドット間着弾距離のばらつきを検出して印字品質を判定し、適正温度条件を調査することができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0052】
例えば、上記実施形態において、検査条件として、多量のインクの直後に少量のインクを吐出する印字データを検証したが、これに限られるものではなく、第1インク滴及び第2インク滴のドロップ数や液量、タイミング等、検査条件を適宜変更してもよい。
【0053】
例えば液体吐出検査装置として、印刷用の液体吐出装置の構成を利用して液体吐出検査装置を構成した例を示したが、これに限られるものではなく、印刷用の液体吐出装置とは別に液体吐出検査装置が構成されてもよい。
【0054】
また、駆動波形の各電位は適宜変更可能であり、各圧電柱に印加する電圧値は各種条件に応じて適宜調整可能である。例えば隣接する圧電柱の一方を接地して他方に電圧を印加することで電位差を発生してもよく、あるいは両方に電圧をそれぞれ印加して電位差を発生させてもよい。
【0055】
例えば、液体吐出ヘッド10の構成は上記の例に限られるものではなく、他のタイプのヘッドに用いてもよい。例えば静電気で振動板を変形させてインクを吐出する構造、あるいはヒーターなどの熱エネルギーを利用してノズルからインクを吐出する発熱素子型の構造などであってもよい。これらの場合、当該振動板又はヒーターなどが圧力室の内部に圧力振動を与えるためのアクチュエータとなる。
【0056】
液体吐出装置100は、画像形成媒体に、インクによる二次元の画像を形成するインクジェットプリンタを例示したがこれに限られるものではなく、例えば、3Dプリンタ、産業用の製造機械、又は医療用機械などであっても良い。液体吐出装置が3Dプリンタ、産業用の製造機械、又は医療用機械などであってもよく、例えば、素材となる物質又は素材を固めるためのバインダーなどをインクジェットヘッドから吐出させることで、立体物を形成するものであってもよい。
【0057】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、印刷画像から印字品質を判定し、適正温度条件を調査することができる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10…液体吐出ヘッド、11…アクチュエータ、12…駆動回路、13…データバッファ、14…デコーダ、15…ドライバ、21…液体供給部、22…搬送部、23…温度調整部、24…画像検出部、25…操作部、26…表示部、30…制御部、31…プロセッサ、32…ROM、33…RAM、34…画像メモリ、35…I/Oポート、100…液体吐出装置、200…外部接続機器。