(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063667
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】保護カバー
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20240502BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
G01N35/02 A
G01N35/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171800
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 勇人
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CC08
2G058HA01
(57)【要約】
【課題】バイオセンサに点着した余剰の血液などの液体検体が測定装置の挿入口から測定装置に浸入することを防ぐことで測定装置の汚損及び故障を防止できる保護カバー。
【解決手段】測定装置用の保護カバーであって、測定装置は、液体検体が点着されるバイオセンサを挿入するための挿入口を備え、保護カバーは、測定装置の挿入口がある端部の形に合わせ、背面側が凹となるように湾曲され、バイオセンサを挿通可能な開口部を備え、開口部の背面側下縁に、液体検体が毛細管力により誘導される誘導部が設けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置用の保護カバーであって、
前記測定装置は、液体検体が点着されるバイオセンサを挿入するための挿入口を備え、
前記保護カバーは、前記測定装置の前記挿入口がある端部の形に合わせ、背面側が凹となるように湾曲され、前記バイオセンサを挿通可能な開口部を備え、
前記開口部の背面側下縁に、前記液体検体が毛細管力により誘導される誘導部が設けられている、保護カバー。
【請求項2】
前記誘導部は、前記開口部の背面側下縁に連接される複数本のリブと、隣接する前記リブの間にある隙間とで構成されている、請求項1に記載の保護カバー。
【請求項3】
前記複数本のリブの上端縁が、前記開口部の背面側下縁と面一に連設されている、請求項2に記載の保護カバー。
【請求項4】
前記測定装置の正面側に装着された状態で、前記誘導部は前記挿入口とは離隔している、請求項1に記載の保護カバー。
【請求項5】
前記背面側には、前記誘導部から溢れた前記液体検体を収容する液体溜まりが形成されている、請求項1に記載の保護カバー。
【請求項6】
前記開口部の正面側下縁に、前記液体検体が毛細管力により誘導される第二誘導部が設けられている、請求項1に記載の保護カバー。
【請求項7】
前記第二誘導部は、前記開口部の正面側下縁に連接される複数本のリブと、隣接する前記リブの間にある隙間とで構成されている、請求項6に記載の保護カバー。
【請求項8】
前記第二誘導部は、前記開口部よりも正面方向に突出している、請求項6又は請求項7に記載の保護カバー。
【請求項9】
前記開口部の背面側上縁に、前記液体検体が毛細管力により誘導される第三誘導部が設けられている、請求項6に記載の保護カバー。
【請求項10】
前記開口部の背面側の左右両端に、前記液体検体が毛細管力により誘導される斜行誘導部が設けられている、請求項1に記載の保護カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体状の検体を測定するための測定装置、特に血糖測定装置に装着される保護カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスポーザブルなバイオセンサを血糖測定装置の挿入口へ挿入して、血液検体をそのバイオセンサへ点着して、血液検体中の血糖値を測定する測定装置は種々提供されてきた。この種の測定装置においては、適量を超える量の血液検体をバイオセンサに点着した際、余剰の血液検体がバイオセンサを伝って測定装置内に浸入することで、測定装置の汚損及び故障をもたらすことが問題となっていた。
【0003】
このような問題を解決する試みとして、下記特許文献1記載の技術が開示されている。この技術では、血液が装置内部に入り込まないように、装置内部に、バイオセンサの挿入に応じる一対のドアを設け、この一対のドアがバイオセンサと当接することにより、装置の開口を液密に閉塞することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の技術によれば、血液の侵入防止を実現するために、装置全体が大型化するとともに構造も複雑になる。そして、装置全体のコスト増にも繋がる。本開示の実施態様は、シンプルな構造で、バイオセンサに点着した余剰の液体検体が測定装置の挿入口から測定装置に浸入することを防ぐことで測定装置の汚損及び故障を防止できる保護カバーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、測定装置用の保護カバーである。測定装置は、液体検体が点着されるバイオセンサを挿入するための挿入口を備える。保護カバーは、測定装置の挿入口がある端部の形に合わせ、背面側が凹となるように湾曲され、バイオセンサを挿通可能な開口部を備え、開口部の背面側下縁に、液体検体が毛細管力により誘導される誘導部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の実施態様によれば、バイオセンサに点着した余剰の血液などの液体検体が測定装置の挿入口から測定装置に浸入することを防ぐことで測定装置の汚損及び故障を防止できる保護カバーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の測定装置の正面上方斜視図である。
【
図2】
図1の測定装置において、保護カバーを外した状態を示す正面上方斜視図である。
【
図7】
図1のVII-VII断面を、開口部及び挿入口の近傍を拡大して示す。
【
図9】
図7に示す測定装置に、バイオセンサが挿入された状態を示す断面図である。
【
図10】保護カバーの背面側における余剰の液体検体の流れを模式的に示す。
【
図11】保護カバーの正面側における余剰の液体検体の流れを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示における実施形態を、図面を参照しつつ説明する。各図において共通する符号は、特段の説明がなくとも同一の部分を指し示す。また、各図に現された各部材や各部位はあくまで模式的に描かれたものであって、実際の製品のサイズ及び位置関係は必ずしも正確には現されておらず、各図面間で細部の形状又は部位が一致していない場合がある。本開示は、液体検体を測定するための測定装置に関するが、説明の便宜上、液体検体として血液検体を測定する血糖測定装置を測定装置の例として説明する。
【0010】
図1及び
図2を参照しつつ、測定装置10の全体構造を説明する。
図1は、本開示の実施形態の測定装置10の正面上方斜視図である。また、
図2は、
図1の測定装置10において、保護カバー20を外した状態を示す正面上方斜視図である。測定装置10は、四隅がアール形状となっている略箱形の筐体101と後述するバイオセンサ50(
図8参照)を測定する測定器102(
図7参照)で構成されている。すなわち、筐体101は、測定器102を囲む保護部材である。筐体101は測定装置10の外形を成している。そして、筐体101の天面に表示部13が形成されている。ユーザは、この表示部13を介して測定器102の測定結果を目視する。なお、表示部13のある天面の反対側である筐体101の底面の図示は省略している。
【0011】
図1において、測定装置10には、バイオセンサ50が挿入される端部に別体の保護カバー20が装着されている。本開示においては、表示部13を上向きにした状態で、保護カバー20が装着されている側を「正面」又は「前面」と称し、その反対側を「背面」と称し、正面(前面)と背面とを結ぶ方向を「前後方向」と称する。また、表示部13のある方向を「上方」と称し、その反対側を「下方」と称し、上方と下方とを結ぶ方向を「上下方向」と称する。この位置関係を基に、前後方向及び上下方向のいずれにも直交する方向を「左右方向」と称する。
【0012】
図2に示すように、測定装置10の正面側の中心部には、液体検体が点着されるバイオセンサ50を挿入するための挿入口12を備えている。挿入口12は、測定装置10の正面端部に左右方向に延伸しているスリットとして形成される。一方、保護カバー20の中心部には、バイオセンサ50を挿通可能な開口部22が設けられている。開口部22は、保護カバー20の中心部において左右方向に延伸しているスリットとして形成される。開口部22は保護カバー20の前後を貫通している。保護カバー20は、測定装置10の正面側にある挿入口12の周囲を含む領域を覆うように、測定装置10の前面側の端部に装着されている。保護カバー20が測定装置10に装着されている状態における開口部22と挿入口12との位置関係の詳細については後述する。
【0013】
次に、保護カバー20の構造を説明する。
図3は、保護カバー20の正面上方斜視図である。また、
図4は、保護カバー20の正面図である。
図2に示したように、測定装置10の正面側の端部は、中間部が左右両端より前方に突出し、左右両端が中間部から滑らかに背面側に湾曲している形状を呈している。保護カバー20は、測定装置10の正面側の湾曲に合わせ、背面方向に湾曲した形状を呈している。換言すると、測定装置10の保護カバー20は、測定装置10の挿入口12が設けられている端部に装着されるために、その端部にある挿入口12の周囲を含む領域の形に合わせ、背面側が凹となるように湾曲している。また、保護カバー20は、バイオセンサ50を挿通することが可能な開口部22を備えている。保護カバー20の左右両端において、背面側に大きく湾曲した部分が、筐体101の左右両端の角部分を覆うサイドガード21となっている。保護カバー20を測定装置10に装着する手段は、限定されないが、サイドガード21と筐体101の左右両端の角部分とに、お互いに嵌合するための手段などを設置することが可能である。保護カバー20の正面側20aの中間部に位置する開口部22は、正面側20aと背面側20b(
図5及び
図6参照)とを貫通している。
【0014】
また、開口部22の正面側下縁から、下方に向かって延伸するとともに、正面に向かって突出している複数本の正面側リブ25aが形成されている。換言すると、複数本の正面側リブ25aの上端縁が、開口部22の正面側下縁と連接されて、面一に形成されている。
図3に示すように、これらの正面側リブ25aの間の隙間25bが細長いスリット状となっている。これらの複数の正面側リブ25aと、隣接する正面側リブ25a同士の間に形成されている複数の隙間25bは、液体検体が毛細管力により誘導される第二誘導部25となっている。後述するように、第二誘導部25では、開口部22の正面側下縁に連接される複数本のリブ同士の間にある複数の隙間25bが毛細管となっていて、第二誘導部25に接近してきた余剰の液体検体を第二誘導部25の隙間25bまで毛細管現象により誘導し、表面張力により収容することができる。
図3に示すように、第二誘導部25は、開口部22よりも正面方向に突出している。本開示において、各誘導部の複数本のリブや複数の隙間について、図面上には、2本、5本、6本などを示しているが、これに限らず、開口部22の幅次第で、本数は選択可能である。
【0015】
図5は、保護カバー20の背面上方斜視図である。また、
図6は、保護カバー20の背面図である。これら
図5及び
図6に示されるように、背面側20bが凹となるように湾曲している。開口部22は、保護カバー20の背面側20bの中間部に位置する。開口部22の背面側下縁から、下方に向かって延伸するとともに、背面に向かって突出している複数本の背面側リブ23aが形成されている。換言すると、複数本の背面側リブ23aの上端縁が、開口部22の背面側下縁と連接され、面一に形成されている。これらの背面側リブ23a同士の間の隙間23bが、細長いスリット状となっている。これらの複数の背面側リブ23aと、隣接する背面側リブ23a同士の間に形成されている複数の隙間23bとが、液体検体が毛細管力により誘導される誘導部23となっている。後述するように、誘導部23では、開口部22の背面側下縁に連接される複数本のリブ同士の間にある複数の隙間23bが毛細管となっていて、誘導部23に接近してきた余剰の液体検体を誘導部23の隙間23bまで毛細管現象により誘導し、表面張力により収容することができる。
図5に示すように、誘導部23は、開口部22よりも背面方向に突出している。背面側リブ23aの下端縁と、保護カバー20の下縁から背面側に張り出したフランジ29の上面との間には距離があり、繋がっていない。
【0016】
一方、開口部22の背面側上縁から、上方に向かって延伸するとともに、背面に向かって突出している複数本の上方リブ26aが形成されている。換言すると、複数本の上方リブ26aの下端縁が、開口部22の背面側上縁と連接され、面一に形成されている。これらの上方リブ26aの間に、細長いスリットに形成されている隙間26bがある。複数本の上方リブ26aとそれらの間にある隙間26bとは、毛細管力により液体検体を誘導するための第三誘導部26となっている。また、第三誘導部26の左右両端に位置する上方リブ26aの下端、及び、誘導部23の左右両端に位置する背面側リブ23aの上端からそれぞれ、側下方へ傾斜したリブである斜行リブ28aが形成されている。斜行リブ28aの下端とフランジ29の上面との間には距離があり、繋がっていない。
【0017】
図6の背面図に示すように、開口部22の左右両端がそれぞれ二本の斜行リブ28aに囲まれている。開口部22の左右端部に余剰の液体検体が侵入したときには、二本の斜行リブ28aの間に形成されているスリット状の隙間28bでフランジ29に向かって余剰の液体検体が誘導される。そして、開口部22の左右両端に、それぞれ開口部22の端部から側下方へ傾斜して延伸する二本の斜行リブ28aとその間にある隙間28bとで斜行誘導部28が構成されている。背面側において、開口部22は、誘導部23、第三誘導部26、夫々左右にある斜行誘導部28に囲まれている。後述するように、開口部22から侵入された余剰の液体検体が、開口部22のいずれかの位置から侵入してきても、少なくとも隙間23b、隙間26b、隙間28bのいずれか一方で誘導され、収容される。隙間23bと隙間28bに収容しきれない検体は、フランジ29まで誘導させ、そこへ滞留させることができる。開口部22より下方へ延伸する背面側リブ23a及び斜行リブ28aは、フランジ29に向かっていくが、フランジ29との間に距離が隔てられているので、フランジ29の上面にある空間は、閉鎖されておらず、それによってより多くの検体が表面張力で滞留できるようになる。さらに、フランジ29と、両端の背面側リブ23aと、斜行リブ28aとの間に形成される略三角形の空間もフランジ29の上面の空間と繋がっているので、されに多くの検体を収容可能となる。したがって、上記した略三角形の空間を含み、フランジ29の上面にある空間を、誘導部23から溢れた液体検体を収容する液体溜まり24と称する。
【0018】
図7は、
図1のVII-VII断面図であり、すなわち、開口部22の中心を通る断面にて、開口部22及び挿入口12の近傍を拡大して示すものである。本図に示すように、測定器102を囲む筐体101に保護カバー20が装着されている状態において、開口部22は、挿入口12より上下方向に上方に位置している。
図7に示すように、上下方向において、開口部22の下縁が挿入口12の上縁より上方にある。また、挿入口12の辺縁には、面取り12aが施されている。この面取り12aが、挿入口12の上縁と下縁より滑らかに筐体101の外壁に繋がっている。
図7に示すように、面取り12aは傾斜面として形成されている。また、面取り12aの上縁が開口部22の下縁より上方に位置している。面取り12aの一部分は、開口部22の下縁と前後方向に重なっている。さらに、挿入口12の背面側にある奥の内部空間は、バイオセンサ50(
図8参照)が収容されるバイオセンサ収容部14となっていて、その奥には後述の電極部52と電気的に接触する端子15が設けられている。
【0019】
本実施形態において、開口部22の下縁は挿入口12の上縁より上方に設置されているが、挿入口12の上縁は開口部22の下縁より上方に形成されていてもよい。挿入口12の上縁が開口部22の下縁より上方に形成される場合には、挿入口12の上縁と開口部22の下縁との高さの差は、バイオセンサ50の厚さより小さく設定すればよい。なお、この場合、
図8に示すバイオセンサ50の厚さをhとすると、挿入口12の上縁が開口部22の下縁との差は、この厚さhより小さい。そして、バイオセンサ50は、開口部22から挿入口12に挿入される際に屈曲することとなる。
【0020】
図7に示すように、筐体101に保護カバー20が装着されている状態であっても、保護カバー20の背面側20bにおいて、特に開口部22の縁部に連接し、背面に突出している背面側リブ23a、上方リブ26aは、挿入口12を含む筐体101の外面とは互いに離隔し、所定の距離を保っている。これで、保護カバー20の各リブや隙間に溜まった液体検体が測定装置10に接触しにくくなる。
【0021】
図8は、本実施形態の測定装置10で使用されるバイオセンサ50を模式的に示す平面図である。なお、図中において、右側が上流側であり、左側が下流側である。バイオセンサ50は、可撓性を有する材質であり、
図8に示すように、細長く形成されているシート状である。バイオセンサ50の上流側には、液体検体が点着される溝状の点着部51が形成され、測定に用いられる電極の一端が露出している。バイオセンサ50の下流側には、その電極の他端が露出している電極部52が形成されている。バイオセンサ50が測定装置10に装着された際、この電極部52が測定装置10の測定器102に設けられた端子15(
図7参照)と接触する部分となっている。バイオセンサ50は、金属製の電極を、2枚の、可撓性を有する合成樹脂等の材質で挟んだ構造を有している。
【0022】
バイオセンサ50を挿入するために、挿入口12も開口部22もバイオセンサ50の形状に合わせ、細長いスリット状に形成されている。
図7に示すように、保護カバー20が筐体101に装着された状態では、開口部22は挿入口12より高い位置にある。換言すると、挿入口12と開口部22とは、上下方向にずれており、測定装置10の底面からの高さが異なる。測定装置10の正面から見ると、開口部22の上縁は、挿入口12の上縁より測定装置10の天面に近く、上方に位置している。開口部22の下縁は、挿入口12の下縁より測定装置10の天面に近く、上方に位置している。さらに、開口部22の下縁は、挿入口12の上縁より測定装置10の天面に近く、上方に位置している。換言すると、上下方向において、挿入口12の上縁は、開口部22の下縁より下方に位置している。なお、挿入口12の上縁は、開口部22の下縁より上方にあってもよい。その際には、挿入口12の上縁と開口部22の下縁との差を、前記したバイオセンサ50の厚さhより小さく設定すればよい。
【0023】
挿入口12の奥にある筐体101の内部には測定器102が収容され、挿入口12から延伸する空間は、バイオセンサ50が収容されるバイオセンサ収容部14(
図7参照)となっている。挿入口12からバイオセンサ収容部14までは、前後方向に延伸しており、バイオセンサ50が挿入口12からバイオセンサ収容部14まで進行する経路となっている。バイオセンサ50はこの経路を経て経路と平行に進むことができ、スムーズにバイオセンサ収容部14にある端子15(
図7参照)に接触することができる。
【0024】
筐体101に保護カバー20が装着されている状態の、
図7に示す測定装置10に、バイオセンサ50が挿入された状態を、
図9の断面図にて示す。バイオセンサ50を保護カバー20の開口部22及び測定装置に挿入する際の様子を説明する。まず、バイオセンサ50の電極部52がある方の先端を、前方に突出している第二誘導部25に載せる。ここで、第二誘導部25の上端縁が開口部22と面一になっているので、バイオセンサ50を、前方へ突出している第二誘導部25に沿って、より幅の小さい開口部22に挿入することが可能となる。これにより、第二誘導部25がない場合に比べて、バイオセンサ50を開口部22に挿入することが容易となる。
【0025】
さらに、バイオセンサ50を第二誘導部25に沿って開口部22に挿入していくと、バイオセンサ50の先端が、筐体101の挿入口12周辺に施されている面取り12aに当たる。上述したように、バイオセンサ50は細長いシート状に形成され、可撓性を有するので、バイオセンサ50をさらに挿入していけば、可撓性によりその先端が開口部22より低い位置にある挿入口12にスムーズに誘導される。ここで、面取り12aの一部分が開口部22の下縁と前後方向に重なっていることで、開口部22の下縁に載せているバイオセンサ50は、先端が必ず面取り12aに当接する。面取り12aは、滑らかに挿入口12に繋がっている傾斜面であり、この面取り12aに沿って、バイオセンサ50を開口部22より下方に位置している挿入口12に容易に挿入させることができる。
【0026】
図9に示すように、第二誘導部25から開口部22まで水平に進んできたバイオセンサ50の先端は、面取り12aに当接した状態でさらに押しつけられると、先端が下方へ屈曲して、下方にある挿入口12に案内される。さらに挿入し続けると、バイオセンサ50の先端は挿入口12を経過しバイオセンサ収容部14の奥へ進入し、端子15を上方へ押し上げる。この状態に至るとバイオセンサ50の挿入は完了する。この状態で、バイオセンサ50は、開口部22と挿入口12との高さの違いで、わずかに屈曲している。そのため、バイオセンサ50の上流側にある点着部51と、下流側にある電極部52とは、上下方向において、違う高さを有するようになる。
【0027】
このとき、
図9に示すように、挿入口12に挿入された状態のバイオセンサ50の下面は、誘導部23の各背面側リブ23aの上端縁(すなわち、開口部22の背面側下縁22b)に当接し、かつ、バイオセンサ50の上面は、保護カバー20の開口部22の正面側上縁22aに当接している。可撓性のあるバイオセンサ50が屈曲されることで、各当接部分において、屈曲を復元しようとする力によってより緊密に当接することになる。なお、バイオセンサ50の下面と複数本の背面側リブ23aとの当接により、バイオセンサ50の下面と、各背面側リブ23aの間にある隙間23bとの間に空隙が生ずることもある。
【0028】
また、開口部22の左右方向の幅はバイオセンサ50の幅よりある程度長くなるように形成されている。これにより、バイオセンサ50が、保護カバー20の装着された測定装置10に挿入されている状態では、開口部22の左右の辺縁と、バイオセンサ50の左右の辺縁との間にそれぞれ若干の間隙が生じている。さらに、誘導部23を形成する複数本の背面側リブ23aは、挿入口12に挿入された状態のバイオセンサ50の下面側と交差する位置にある。
【0029】
以上の構成に基づき、余剰の液体検体がバイオセンサ50に点着された場合は以下のとおりとなる。なお、本実施形態における余剰の液体検体とは、測定に必要となる量を超えた分の液体検体のことをいう。
【0030】
上述したように、開口部22の正面側上縁22aにバイオセンサ50の上面が当接することで、バイオセンサ50の点着部51に点着された余剰の液体検体がバイオセンサ50の上面を伝い流れても、この当接部分(以下、「第一当接部」と称する。)によってある程度、保護カバー20の内部への進入が阻まれる。また、余剰の液体検体の量によっては、表面張力によりそのままこの第一当接部に止まることもある。なお、余剰の液体検体がこの第一当接部まで流れてくる可能性はそもそも余り高くはなく、多くの場合は重力によりバイオセンサ50の下面に伝い流れる。
【0031】
余剰の液体検体がバイオセンサ50の下面を流れてきた場合は、バイオセンサ50の下面と各隙間23bとで形成されている間隙に至り、毛細管力により隙間23bに吸引されることがある。余剰の液体検体の量によっては、そのまま隙間23bに収容されることもある。しかし、余剰の液体検体が大量の場合は、フランジ29まで流れ、表面張力によりそこで滞留することもある。また、余剰の液体検体は、バイオセンサ50の上面や下面を伝わって流れる際に、バイオセンサ50の両側まで伝い流れてくることもある。バイオセンサ50の両側を伝い流れてきた液体検体は、開口部22の左右壁とバイオセンサ50との間にある間隙を通し、斜行誘導部28まで誘導されることもある。ここで、誘導部23及び斜行誘導部28は、下方にあるフランジ29と離隔しているので、誘導部23及び斜行誘導部28に収容しきれない分の余剰の液体検体があったとしても、前記した液体溜まり24に滞留できる。
【0032】
換言すると、保護カバー20の背面側へ余剰の液体検体60が浸入してきた場合、
図10の背面図に示すように、余剰の液体検体60の量にもよるが、誘導部23、第三誘導部26、斜行誘導部28で捕捉されることがある。また、誘導部23、第三誘導部26、斜行誘導部28で吸収しきれない分は液体溜まり24に捕捉される。さらには、保護カバー20の背面側20bと誘導部23は、測定装置10の挿入口12及び筐体101の外面とは互いに離隔しているため(
図9参照)、誘導部23、第三誘導部26及び液体溜まり24で捕捉された余剰の液体検体60は、挿入口12及び筐体101に至ることはない。
【0033】
なお、
図11の正面図に示すように、保護カバー20の正面側でも、第二誘導部25である程度の余剰の液体検体60を捕捉することができる。
【0034】
また、誘導部23、第二誘導部25、第三誘導部26及び斜行誘導部28は、前記したようなリブとリブ同士の間の隙間に構成されるだけではなく、液体状の検体を吸収できる繊維質の物質を該当する位置に装着することによっても構成することが可能である。
【0035】
上記の実施形態に示すように、本開示の測定装置10には保護カバー20が着脱自在に装着されるので、保護カバー20が検体で汚損したような場合は新しい保護カバー20を改めて装着することも、また、清掃してから改めて装着することもできる。
【0036】
上記実施形態では、保護カバー20は、開口部22が測定装置10の挿入口12に対して、上下方向において上側に位置するように、測定装置10の端部に装着される態様を説明した。しかし、保護カバー20は、測定装置10に自由に着脱可能なオプション品である。よって、上述の態様以外にも、開口部22が挿入口12より下側に位置するような態様としてもよい。また、開口部22と挿入口12とは、それぞれの下縁が面一になるように形成されていてもよい。さらに、保護カバー20における各誘導部の液体検体への毛細管力による誘導と液体の装置侵入防止機能が発揮できれば、保護カバー20のその余の使用形態については限定されない。また、上述の態様のように、保護カバー20を測定装置10に嵌合させて装着する場合、嵌合の角度及び嵌合位置を調整することで、開口部22と挿入口12との位置関係を適宜設定することが可能であり、特定の位置関係には限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、血糖測定装置を始めとする、血液、尿などの液体状の検体を測定するための測定装置に装着される保護カバーとして利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 測定装置 12 挿入口 12a 面取り
13 表示部 14 バイオセンサ収容部 15 端子
20 保護カバー 20a 正面側 20b 背面側
21 サイドガード 22 開口部 22a 正面側上縁
22b 背面側下縁 23 誘導部 23a 背面側リブ
23b 隙間 24 液体溜まり 25 第二誘導部
25a 正面側リブ 25b 隙間 26 第三誘導部
26a 上方リブ 28 斜行誘導部 28a 斜行リブ
28b 隙間 29 フランジ
50 バイオセンサ 51 点着部 52 電極部
60 余剰の液体検体
101 筐体 102測定器