(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063674
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】仮設基礎構造体及び仮設基礎構造体の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/32 20060101AFI20240502BHJP
E02D 17/18 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
E02D27/32 Z
E02D17/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171812
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100094547
【弁理士】
【氏名又は名称】岩根 正敏
(72)【発明者】
【氏名】梅野 清登
(72)【発明者】
【氏名】田中 富智夫
(72)【発明者】
【氏名】新田 真一
(72)【発明者】
【氏名】船内 雄紀
【テーマコード(参考)】
2D044
2D046
【Fターム(参考)】
2D044CA08
2D046DA00
(57)【要約】
【課題】解体及び撤去作業を容易に行うことが可能な仮設基礎構造体を提供する。
【解決手段】軽量盛土層3と、その上方に設けられたコンクリート層4とを有し、前記軽量盛土層の最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層10Aが、耳部41を有する合成樹脂シート40を備える複数の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50から構成されていると共に、隣り合う合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部αの上方が合成樹脂シートの耳部によって覆われている仮設基礎構造体1とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量盛土層と、該軽量盛土層の上方に設けられたコンクリート層とを有する仮設基礎構造体であって、前記軽量盛土層が、発泡合成樹脂ブロック層を複数層積層してなる発泡合成樹脂ブロック集合体により構成され、前記発泡合成樹脂ブロック集合体において最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層は、上面視矩形状の発泡合成樹脂ブロックの上面に積層接着され、かつ該発泡合成樹脂ブロックの隣り合う二辺から外方に張り出した耳部を有する合成樹脂シートを備える複数の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックから構成されていると共に、前記複数の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックが隣接して配置され、隣り合う合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部の上方が合成樹脂シートの耳部によって覆われていることを特徴とする、仮設基礎構造体。
【請求項2】
上記複数の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックが、合成樹脂シートの耳部が外方に張り出している側の発泡合成樹脂ブロックの側面と、合成樹脂シートの耳部が外方に張り出していない側の発泡合成樹脂ブロックの側面とを隣接させて配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の仮設基礎構造体。
【請求項3】
上記仮設基礎構造体が、上記軽量盛土層の下方に貯水空間を有する合成樹脂成形体を積層してなる貯水材層をさらに備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の仮設基礎構造体。
【請求項4】
上記合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックの合成樹脂シートの耳部の張り出し長さが、200mm以上400mm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の仮設基礎構造体。
【請求項5】
上記発泡合成樹脂ブロック集合体の最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層の高さが、20mm以上150mm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の仮設基礎構造体。
【請求項6】
上記発泡合成樹脂ブロック集合体の最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層の直下に位置する発泡合成樹脂ブロック層の高さが、20mm以上150mm以下であることを特徴とする、請求項5に記載の仮設基礎構造体。
【請求項7】
上記発泡合成樹脂ブロック集合体を構成する2層以上の発泡合成樹脂ブロック層が、該発泡合成樹脂ブロック層を構成する発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部の位置を上下方向において略一致させた状態で積層されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の仮設基礎構造体。
【請求項8】
発泡合成樹脂ブロック層を複数層積層してなる発泡合成樹脂ブロック集合体により構成される軽量盛土層と、該軽量盛土層の上方に設けられたコンクリート層とを有する仮設基礎構造体の構築方法であって、前記発泡合成樹脂ブロック集合体において最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層を、上面視矩形状の発泡合成樹脂ブロックの上面に積層接着され、かつ該発泡合成樹脂ブロックの隣り合う2辺から外方に張り出した耳部を有する合成樹脂シートを備える複数の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックにより構成すると共に、前記複数の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックを隣接させて配置して、隣り合う合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部の上方を合成樹脂シートの耳部によって覆った状態とし、前記コンクリート層を、前記合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックにより構築した軽量盛土層の最上部を下型枠として用いてコンクリートを打設することにより形成することを特徴とする、仮設基礎構造体の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設基礎構造体に関するもので、特に、構築した基礎構造体の解体及び撤去作業を容易に行うことが可能な仮設基礎構造体及び仮設基礎構造体の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工事現場や博覧会の会場等では、しばしば短期に解体することを前提とした構造物が構築されることがある。その場合、構造物の基礎部も、短期に撤去されることを前提とした、仮設の基礎構造体(仮設基礎構造体)とすることがある。このような仮設基礎構造体は、所定の設計強度を有することが要求される一方、その解体及び撤去作業が容易であることが当然に好ましい。
【0003】
一方、盛土構造体を構築する場合、軽量性、衝撃緩和性、加工容易性などの特性を活かして合成樹脂発泡体を盛土材として使用する軽量盛土工法、例えば、発泡スチロールブロックを用いたEPS工法が知られている。この軽量盛土工法は、ブロック形状の合成樹脂発泡体を一定規則に従って積み上げて形成していき、その外面部分を例えば土砂などで覆うことによって、軽量盛土構造体を構築するものである。このような軽量盛土構造体は、解体及び撤去作業が容易なものであることから、例えば、特許文献1に開示されているような、 電車の通行の無い夜間の短時間の間において、駅ホーム或いは鉄道の補修・改良工事のために重機を駅ホーム等に乗り入れるための仮設道路の構築に利用されている。
【0004】
この特許文献1に開示された技術は、直方体の底面に鉄道レールを跨ぐ凹溝を有する形状に形成された合成樹脂発泡体製の脚部ブロックと、その上に積層された合成樹脂発泡体製の方形ブロックまたは傾斜ブロックと、その上面を覆う保護板とで構成された仮設道路である。この技術は、合成樹脂発泡体製の軽量な各種ブロックと保護板とによって仮設道路を構築するものであるので、その構築及び撤去作業を容易に行うことが可能なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1等に開示された合成樹脂発泡体を盛土材として使用した仮設構造体において、積み上げた合成樹脂発泡体の上方にコンクリート層を形成したもの、例えば仮設基礎構造体とした場合には、形成したコンクリート層の固化後において該コンクリート層と合成樹脂発泡体とが強固に接着することが生じ、その解体及び撤去作業に支障があるものとなっていた。即ち、解体時においてコンクリート層を破砕すると、強固に接着した合成樹脂発泡材もコンクリートとくっ付いた状態で破砕されることとなり、その分離作業が必要なものとなっていたと共に、破損により合成樹脂発泡体の再利用も困難なものとなっていた。
【0007】
本発明は、上述した背景技術が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的は、構築が容易であり、かつ均質なコンクリート層を形成することができると共に、構造体の解体及び撤去作業を容易に行うことが可能な仮設基礎構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明は、次の[1]~[8]に記載した仮設基礎構造体及び仮設基礎構造体の構築方法とした。
[1]軽量盛土層と、該軽量盛土層の上方に設けられたコンクリート層とを有する仮設基礎構造体であって、前記軽量盛土層が、発泡合成樹脂ブロック層を複数層積層してなる発泡合成樹脂ブロック集合体により構成され、前記発泡合成樹脂ブロック集合体において最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層は、上面視矩形状の発泡合成樹脂ブロックの上面に積層接着され、かつ該発泡合成樹脂ブロックの隣り合う二辺から外方に張り出した耳部を有する合成樹脂シートを備える複数の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックから構成されていると共に、前記複数の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックが隣接して配置され、隣り合う合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部の上方が合成樹脂シートの耳部によって覆われていることを特徴とする、仮設基礎構造体。
[2]上記複数の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックが、合成樹脂シートの耳部が外方に張り出している側の発泡合成樹脂ブロックの側面と、合成樹脂シートの耳部が外方に張り出していない側の発泡合成樹脂ブロックの側面とを隣接させて配置されていることを特徴とする、上記[1]に記載の仮設基礎構造体。
[3]上記仮設基礎構造体が、上記軽量盛土層の下方に貯水空間を有する合成樹脂成形体を積層してなる貯水材層をさらに備えていることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の仮設基礎構造体。
[4]上記合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックの合成樹脂シートの耳部の張り出し長さが、200mm以上400mm以下であることを特徴とする、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の仮設基礎構造体。
[5]上記発泡合成樹脂ブロック集合体の最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層の高さが、20mm以上150mm以下であることを特徴とする、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の仮設基礎構造体。
[6]上記発泡合成樹脂ブロック集合体の最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層の直下に位置する発泡合成樹脂ブロック層の高さが、20mm以上150mm以下であることを特徴とする、上記[5]に記載の仮設基礎構造体。
[7]上記発泡合成樹脂ブロック集合体を構成する2層以上の発泡合成樹脂ブロック層が、該発泡合成樹脂ブロック層を構成する発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部の位置を上下方向において略一致させた状態で積層されていることを特徴とする、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の仮設基礎構造体。
[8]発泡合成樹脂ブロック層を複数層積層してなる発泡合成樹脂ブロック集合体により構成される軽量盛土層と、該軽量盛土層の上方に設けられたコンクリート層とを有する仮設基礎構造体の構築方法であって、前記発泡合成樹脂ブロック集合体において最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層を、上面視矩形状の発泡合成樹脂ブロックの上面に積層接着され、かつ該発泡合成樹脂ブロックの隣り合う2辺から外方に張り出した耳部を有する合成樹脂シートを備える複数の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックにより構成すると共に、前記複数の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックを隣接させて配置して、隣り合う合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部の上方を合成樹脂シートの耳部によって覆った状態とし、前記コンクリート層を、前記合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックにより構築した軽量盛土層の最上部を下型枠として用いてコンクリートを打設することにより形成することを特徴とする、仮設基礎構造体の構築方法。
【発明の効果】
【0009】
上記した本発明にかかる仮設基礎構造体及び仮設基礎構造体の構築方法によれば、特定の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックを用いて、軽量盛土層である発泡合成樹脂ブロック集合体の最上部の発泡合成樹脂ブロック層を形成した仮設基礎構造体とすることで、軽量盛土層の上方に設けられたコンクリート層が、発泡合成樹脂ブロック集合体に過度に接着することを抑制できるものとなる。また、最上部の発泡合成樹脂ブロック層の隣接する発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部の上方は合成樹脂シートによって覆われた状態で形成されているので、発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部にコンクリートが侵入しにくいものとなる。これらにより、軽量盛土層である発泡合成樹脂ブロック集合体の上方に形成されたコンクリート層を、容易に撤去しやすいものとなる。
また、予め合成樹脂シートが積層接着された合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックを用いることで、構築時における合成樹脂シートのめくれ、合成樹脂シートのシワの発生、合成樹脂シートと発泡合成樹脂ブロックとの間への空気だまりの発生等を抑制することができ、コンクリート層の撤去を容易とするための最上部の発泡合成樹脂ブロック層を効率的に施工できるものとなると共に、厚み等が均質なコンクリート層を安定して形成することができるものとなる。
さらに、上記したようにコンクリート層が発泡合成樹脂ブロック集合体に過度に接着していない構造体を形成できるので、コンクリート層の撤去時において発泡合成樹脂ブロックに破損等が生じにくいものとなり、一度利用された発泡合成樹脂ブロックを再利用しやすいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る仮設基礎構造体の一例を概念的に示した縦断面図である。
【
図2】本発明において用いる合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックの一例を示した図であって、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【
図3】
図2に示した合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックを使用して発泡合成樹脂ブロック集合体の最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層を構築する過程を示した概念的な側面図である。
【
図4】
図2に示した合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックを使用して構築した発泡合成樹脂ブロック集合体の最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層を示した図であって、(a)は斜視図、(b)は要部拡大縦断面図である。
【
図5】貯水材層を形成する貯水空間を有する合成樹脂成形体の積層体の一例を示した斜視図である。
【
図6】
図5に示した積層体の要部拡大縦断面図である。
【
図7】貯水材層を形成する貯水空間を有する合成樹脂成形体の積層体の他例を示した斜視図である。
【
図8】
図7に示した積層体の要部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る仮設基礎構造体及び仮設基礎構造体の構築方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
本発明の仮設基礎構造体は、軽量盛土層と、該軽量盛土層の上方に設けられたコンクリート層とを有するものである。また、軟弱地盤上に形成する場合等においては、必要に応じて、上記軽量盛土層の下方に貯水空間を有する合成樹脂成形体を積層してなる貯水材層をさらに備えるものである。
図1は、軟弱地盤上に形成された本発明に係る仮設基礎構造体の一例を概念的に示した縦断面図である。該図面に示された仮設基礎構造体1は、軟弱地盤上に設けられた貯水材層2と、該貯水材層2の上方に設けられた軽量盛土層3と、該軽量盛土層3の上方に設けられたコンクリート層4とから構成されている。
【0013】
上記軽量盛土層3は、発泡合成樹脂ブロック層10を複数層積層してなる発泡合成樹脂ブロック集合体20により構成されている。また、前記発泡合成樹脂ブロック集合体20において最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層10Aは、
図2に示したように、上面視矩形状の発泡合成樹脂ブロック30の上面に積層接着され、かつ該発泡合成樹脂ブロックの隣り合う二辺から外方に張り出した耳部41を有する合成樹脂シート40を備える合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50から構成されている。なお、合成樹脂シート40は、通常、上面視矩形状の合成樹脂シートであるが、所期の目的を達成できる範囲であれば、上面視において、完全な矩形でなくともよく、また、例えば発泡合成樹脂ブロックの隣り合う二辺から外方に張り出した耳部41の角部を切欠いたものであってもよい。
本発明の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50は、該発泡合成樹脂ブロックの少なくとも隣り合う二辺から外方に張り出した耳部41を有していればよく、所期の目的を達成できる範囲で、上記二辺以外の辺から合成樹脂シートが外方に張り出していてもよい。この場合、上記二辺以外の辺から外方に張り出した部分は、例えば発泡合成樹脂ブロック間の隙間に入れてもよい。軽量盛土層の上方を比較的平坦にしやすく、良好なコンクリート層を形成しやすい観点からは、合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50における合成樹脂シート40は、実質的に該発泡合成樹脂ブロックの隣り合う二辺のみから外方に張り出していることが好ましい。
【0014】
上記合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50を構成する発泡合成樹脂ブロック30としては、一般的に軽量盛土材として使用されている公知の基材樹脂からなるものを広く用いることができ、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂を発泡させたブロックを用いることができる。これらの中でも、耐水性に優れ、低密度でも強度が高いという観点から、発泡ポリスチレン系樹脂ブロックが好適に使用される。また、発泡合成樹脂ブロックとしては、押出発泡体、発泡粒子の型内成形体のいずれも使用することができる。施工性を高める観点から、発泡合成樹脂ブロックは直方体状であることが好ましい。また、発泡合成樹脂ブロックの体積は、概ね0.05m3以上1m3以下であることが好ましく、0.06m3以上0.6m3以下であることがより好ましい。
なお、発泡合成樹脂ブロックは、複数の発泡体が接着されて一体化された発泡体のブロックであってもよい。本発明において該合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50を用いて構築する発泡合成樹脂ブロック集合体20の最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層10Aは、後述するようにその厚さが比較的薄いものが好ましいため、発泡合成樹脂ブロック30としては、押出発泡体を用いることが好ましい。
【0015】
上記発泡合成樹脂ブロック30の密度は、10~100kg/m3であることが好ましく、15~80kg/m3であることがより好ましく、20~50kg/m3であることが特に好ましい。発泡合成樹脂ブロックの密度が上記範囲を満足すると、軽量性に優れるとともに強度に優れるため好ましい。なお、上記密度は、発泡合成樹脂ブロックの重量[kg]をその体積[m3]で除して得るものとする。
【0016】
また、上記発泡合成樹脂ブロック30の独立気泡率は、優れた機械的強度等の物性を得る観点から、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましくは、90%以上であることが特に好ましい。なお、発泡合成樹脂ブロックの独立気泡率は、該ブロックから成形スキン層を除いて25×25×30mmの測定用サンプルを切り出し、該サンプルを大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて1日間静置後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じ、東芝・ベックマン株式会社製空気比較式比重計930型により測定される。なお、該ブロックから所定の寸法を有する測定用サンプルを切り出せない場合には、複数の測定用サンプルを切り出し、複数の測定用サンプルを重ねること等により所定の寸法となるようにして、測定を行っても良い。
【0017】
上記合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50を構成する合成樹脂シート40としては、止水性、柔軟性等を有するものであれば広く使用することができる。例えば、基材樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル及びポリウレタン等が挙げられ、これらの樹脂を単独で用いたシートでもよいし、二種以上の樹脂の組合せ組成物を用いたシートでもよい。これらの中でも、実用性を考慮した場合、ポリエチレンシート、ポリ塩化ビニルシートが好ましく用いられる。合成樹脂シート40の厚さは、合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックの施工性を高めつつ、合成樹脂シートの強度を確保する観点から、0.05mm以上3mm以下であることが好ましく、0.08mm以上2mm以下であることがより好ましく、0.1mm以上1mm以下であることが更に好ましい。また、合成樹脂シート40は、無発泡のものであることが好ましい。
【0018】
上記した発泡合成樹脂ブロック30と合成樹脂シート40との積層接着には、熱融着、接着剤、粘着剤等の従来公知の積層手段を採用することができる。なお、接着剤、粘着剤を用いる場合、発泡合成樹脂ブロック30、合成樹脂シート40を侵さないものを選択して用いることはいうまでもなく、例えば、接着剤としては、酢酸ビニル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、エチレン・酢酸ビニル系接着剤等を用いることができ、粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を用いることができる。
【0019】
合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50は、合成樹脂シート40の耳部41の張り出し長さが200mm以上400mm以下であることが好ましく、230mm以上350mm以下であることがより好ましい。耳部の張り出し長さを上記範囲とすることで、合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックの施工性を良好にしつつ、隣り合う発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部上方を十分に覆うことができ、コンクリートの該目地部への侵入を安定して抑制することができる。
【0020】
上記した合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50は、
図3、
図4に示したように、複数の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50が隣接して配置され、隣り合う合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50,50間の縦目地部αの上方が合成樹脂シート40の耳部41によって覆われた状態で、発泡合成樹脂ブロック集合体20において最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層10Aが構築されている。この際、
図3、
図4に示したように、合成樹脂シート40の耳部41が外方に張り出している側の発泡合成樹脂ブロック30の側面と、合成樹脂シート40の耳部41が外方に張り出していない側の発泡合成樹脂ブロック30の側面とを隣接させて配置され、隣り合う合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50,50間の縦目地部αの上方が合成樹脂シート40の耳部41によって覆われた状態で、発泡合成樹脂ブロック集合体20において最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層10Aが構築されていることがより好ましい。なお、本発明の所期の目的を達成できる範囲であれば、隣り合う合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50,50間の縦目地部αの上方の一部が合成樹脂シート40の耳部41によって覆われていない部分があってもよい。
合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50は、最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層10Aの構築のみならず、その下層の構築においても必要に応じて用いることができる。
【0021】
図1に図示した仮設基礎構造体1にあっては、発泡合成樹脂ブロック集合体20の最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層10Aのみが上記合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50により構築され、その下層である発泡合成樹脂ブロック層10B,10C・・・は、合成樹脂シートが積層接着されていない発泡合成樹脂ブロック60を積層することにより構築されている。
【0022】
上記下層を形成する発泡合成樹脂ブロック60としては、従来より一般的に軽量盛土材として使用されているものを広く利用することができる。具体的には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂を発泡させたブロックを用いることができる。但し、耐水性に優れ、低密度でも強度が高いという観点から、発泡ポリスチレン系樹脂ブロックが好ましい。また、施工性を高める観点から、発泡合成樹脂ブロック60は、直方体状であることが好ましく、その体積は概ね0.05m3以上2m3以下であることが好ましく、0.06m3以上1.5m3以下であることがより好ましい。また、発泡合成樹脂ブロック60の密度は、10~100kg/m3であることが好ましく、独立気泡率は、80%以上であることが好ましい。なお、発泡合成樹脂ブロック60を積み重ねる際には、積み上げた上下の発泡合成樹脂ブロックにピン(図示せず)を挿通させ、上下の発泡合成樹脂ブロックを互いに結合させることは好ましい。また、緊結具(図示せず)を用いて、水平方向に隣接する発泡合成樹脂ブロック同士を結合させることも好ましい。
【0023】
上記した合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50、また発泡合成樹脂ブロック60を用いて構築された軽量盛土層3である発泡合成樹脂ブロック集合体20は、最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層10Aの高さが、20mm以上150mm以下であることが好ましく、最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層10Aと、該発泡合成樹脂ブロック層10Aの直下に位置する発泡合成樹脂ブロック層10Bの高さが、それぞれ20mm以上150mm以下であることがより好ましい。このように軽量盛土層3の上方層10A、10Bを構成する発泡合成樹脂ブロック50,60を比較的厚みの薄いもので構築することにより、その上方に形成された後に詳述するコンクリート層4の撤去時において、発泡合成樹脂ブロック集合体の上層部に破損が生じた場合であっても、再利用が困難な発泡合成樹脂ブロックの容積量を低減でき、再利用できる発泡合成樹脂ブロック量を増やすことができる。かかる観点から、最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層10A及びその直下に位置する発泡合成樹脂ブロック層10Bの高さが、それぞれ25mm以上120mm以下であることがより好ましく、それぞれ30mm以上80mm以下であることがより好ましい。
【0024】
また、発泡合成樹脂ブロック集合体20を構成する各発泡合成樹脂ブロック層10A,10B・・・・は、各層を構成する発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部の位置を上下方向においてずらすようにして積み重ねてもよいが、構築及び撤去作業の容易性から、
図1に示したように、発泡合成樹脂ブロック集合体20を構成する2層以上の(図示においては全層の)発泡合成樹脂ブロック層が、該発泡合成樹脂ブロック層を構成する発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部αの位置を上下方向において略一致させた状態で積層されていることが好ましい。なお、通常、発泡合成樹脂ブロック集合体の上下方向において、積層した発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部の位置が一致したものとすると、流路となる隙間が単純なものとなって発泡合成樹脂ブロック集合体中にコンクリ―ト等の流動物が侵入しやすくなるが、本発明においては、特定の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50を用いて発泡合成樹脂ブロック集合体20の少なくとも最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層10Aを構成しているため、発泡合成樹脂ブロック集合体中へのコンクリ―ト等の侵入を抑制することができる。
かかる観点から、発泡合成樹脂ブロック集合体20を構成する発泡合成樹脂ブロック層の全層数に対する、発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部の位置を上下方向において略一致させた状態で積層されている発泡合成樹脂ブロック層の層数の割合が、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
【0025】
上記発泡合成樹脂ブロック集合体20からなる軽量盛土層3の上方には、コンクリート層4が形成されている。このコンクリート層4は、その上に形成される構造物等の基礎部となり、構造物から加わる荷重を受け止めると共に、軽量盛土層3を保護する作用を果たす。コンクリート層4は、軽量盛土層3の最上部、より具体的には、軽量盛土層3の最上部に位置する合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50により構築された発泡合成樹脂ブロック層10Aを下型枠とし、必要に応じて配筋が施され、コンクリートを打設することで形成される。この際、下型枠として利用される軽量盛土層3の最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層10Aは、合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50により構築されていると共に、隣り合う合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50,50間の縦目地部αの上方が合成樹脂シート40の耳部41によって覆われた状態で構築されているので、コンクリートが発泡合成樹脂ブロック集合体に過度に接着することを抑制でき、またコンクリートが縦目地部に侵入しにくいものとなる。コンクリート層4の厚さは、その上に形成される構造物によって適宜設計されるが、概ね100mm以上400mm以下の厚さで形成される。
【0026】
仮設基礎構造体1を軟弱地盤上に形成する場合等においては、必要に応じて、上記軽量盛土層3の下方に貯水空間71を有する合成樹脂成形体70を積層してなる貯水材層2が形成されている。この貯水材層2を、貯水空間71を有する合成樹脂成形体70を積層することにより形成したものとすることにより、その構築及び撤去作業を容易なものとすることができる。貯水材層2の形成に用いられる貯水空間71を有する合成樹脂成形体70としては、例えば、特開2001-279673号公報、特開2002-38486号公報等に記載された、外部と連通する多数の水溜室が区画形成された発泡合成樹脂成形体の積層体(
図5、
図6参照)、或いは、特開2006-266022号公報、特開2009-024447号公報等に記載された、波形状に折曲成形された非発泡合成樹脂成形体を直角に交差させながら積み上げた積層体(
図7、
図8参照)等の合成樹脂製の成形体を好ましく用いることができるが、これらに限らず、従来公知のものを広く用いることができる。
【0027】
上記貯水材層2を形成するにあたり、例えば、地面を掘削することにより設けられた穴部に砕石や敷砂、掘削土等を敷き込んだ後転圧し、その上に透水シートを施工し、その上方に上記した貯水空間71を有する成形体70を積層して形成することができる。貯水材層2の厚さは、構築する現場の状況、また広さ等を考慮して適宜設計される。
【0028】
上記の貯水材層2を形成した仮設基礎構造体1では、地下水が地表面まで上昇することがあっても、地下水は貯水材層2の貯水空間71内に入り込むことから、貯水材層2が浮力を受けることはほとんどないか、あるとしてもごくわずかなものに低減され、その上に積み上げた発泡合成樹脂ブロック50,60からなる軽量盛土層3が不安定となることを抑制できる。また、貯水材層2を軽量盛土層3の下方に形成したものとした場合においても、軽量盛土層3は、上記したように最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層10Aが合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50により構築されていると共に、隣り合う合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50,50間の縦目地部αの上方が合成樹脂シート40の耳部41によって覆われた状態で構築されているので、仮設基礎構造体1の構築にあたって該軽量盛土層3の上方にコンクリートを打設しても、コンクリートが貯水空間71に侵入することを抑制でき、上記した貯水材層2の機能を十分に果たし得るものに形成することができる。
【0029】
上記した本発明に係る仮設基礎構造体及び仮設基礎構造体の構築方法によれば、特定の合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50を用いて、軽量盛土層3である発泡合成樹脂ブロック集合体20の最上部の発泡合成樹脂ブロック層10Aを形成した仮設基礎構造体1とすることで、軽量盛土層3の上方に設けられたコンクリート層4が、発泡合成樹脂ブロック集合体20に過度に接着することを抑制できるものとなる。また、最上部の発泡合成樹脂ブロック層10Aの隣接する発泡合成樹脂ブロック50,50間の縦目地部αの上方は合成樹脂シート40の耳部41によって覆われているので、発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部にコンクリートが侵入しにくいものとなる。これらにより、軽量盛土層3である発泡合成樹脂ブロック集合体20の上方に形成されたコンクリート層4を、容易に撤去しやすいものとなる。
また、予め合成樹脂シート40が積層接着された合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック50を用いることで、例えば、軽量盛土層を構築した後に、合成樹脂シートを積層する場合に比べて、構築時における合成樹脂シートのめくれ、合成樹脂シートのシワの発生、合成樹脂シートと発泡合成樹脂ブロックとの間への空気だまりの発生等を抑制することができ、コンクリート層4の撤去を容易とするための最上部の発泡合成樹脂ブロック層10Aを効率的に施工できるものとなると共に、厚み等が均質なコンクリート層4を安定して形成することができるものとなる。
さらに、上記したようにコンクリート層4が発泡合成樹脂ブロック集合体20に過度に接着していない構造体を形成できるので、コンクリート層4の撤去時において発泡合成樹脂ブロック50,60に破損等が生じにくいものとなり、一度利用された発泡合成樹脂ブロックを再利用しやすいものとなる。
【0030】
以上、本発明に係る仮設基礎構造体及び仮設基礎構造体の構築方法の実施形態を説明したが、本発明は、既述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、種々の変形及び変更が可能であることは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る仮設基礎構造体は、構築が容易であり、かつ均質なコンクリート層を形成することでできると共に、その解体及び撤去作業を容易に行うことが可能なものとなるので、工事現場や博覧会の会場等において短期に解体することを前提とした構造物の基礎として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 仮設基礎構造体
2 貯水材層
3 軽量盛土層
4 コンクリート層
10 発泡合成樹脂ブロック層
10A 最上部に位置する発泡合成樹脂ブロック層
10B 第2層目の発泡合成樹脂ブロック層
10C 第3層目以降の発泡合成樹脂ブロック層
20 発泡合成樹脂ブロック集合体
30 合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックを構成する発泡合成樹脂ブロック
40 合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロックを構成する合成樹脂シート
41 合成樹脂シートの耳部
50 合成樹脂シート積層発泡合成樹脂ブロック
60 合成樹脂シートが積層接着されていない発泡合成樹脂ブロック
70 合成樹脂製成形体
71 貯水空間
α 発泡合成樹脂ブロック層の隣接する発泡合成樹脂ブロック間の縦目地部