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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063686
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/04 20060101AFI20240502BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20240502BHJP
   F16H 48/08 20060101ALI20240502BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240502BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
F16H1/04
F16H1/28
F16H48/08
H02K7/116
B60L15/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171848
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】及川 翔太
(72)【発明者】
【氏名】上原 弘樹
【テーマコード(参考)】
3J009
3J027
5H125
5H607
【Fターム(参考)】
3J009EA04
3J009EA21
3J009EA42
3J009FA03
3J027FB02
3J027GA01
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC24
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027HA01
3J027HB07
3J027HB12
3J027HC04
5H125AA01
5H125BA00
5H125BE05
5H125FF01
5H607BB01
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC03
5H607CC09
5H607DD08
5H607DD19
5H607EE31
(57)【要約】
【課題】回転の伝達経路上のギアの支持剛性を確保する。
【解決手段】モータと、前記モータの出力回転を伝達する歯車伝達機構と、前記歯車伝達機構を介して伝達された回転を左右の駆動軸に分配する差動機構と、を有する動力伝達装置であって、前記歯車伝達機構は、前記モータの一方側と他方側に、それぞれ同一のギア比で設けられており、前記差動機構は、前記一方側の歯車伝達機構と前記他方側の歯車伝達機構との間に配置されており、前記一方側の歯車伝達機構を介して伝達される回転と、前記他方側の歯車伝達機構を介して伝達される回転が、前記差動機構に合算して入力される、動力伝達装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの出力回転を伝達する歯車伝達機構と、
前記歯車伝達機構を介して伝達された回転を左右の駆動軸に分配する差動機構と、を有する動力伝達装置であって、
前記歯車伝達機構は、前記モータの一方側と他方側に、それぞれ同一のギア比で設けられており、
前記差動機構は、前記一方側の歯車伝達機構と前記他方側の歯車伝達機構との間に配置されており、
前記一方側の歯車伝達機構を介して伝達される回転と、前記他方側の歯車伝達機構を介して伝達される回転が、前記差動機構に合算して入力される、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記歯車伝達機構は、
前記モータの出力軸と一体に回転する出力ギアと、
前記モータの出力軸と、前記差動機構との間に配置される減速ギアと、
前記差動機構のデフケースと一体に回転するファイナルギアと、を有しており、
前記出力軸の径方向から見て前記減速ギアは、前記モータとオーバーラップしている、
動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記歯車伝達機構は、
前記モータの出力軸と一体に回転する出力ギアと、
前記モータの出力軸と、前記差動機構との間に配置される中間ギアと、
前記差動機構のデフケースと一体に回転するファイナルギアと、を有している、
動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記歯車伝達機構は、
前記モータの出力軸と一体に回転する出力ギアと、
前記差動機構のデフケースと一体に回転するファイナルギアと、を有している、
動力伝達装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4の何れか一項において、
前記デフケースでは、当該デフケースの中心から見て一方側と他方側に、前記ファイナルギアが固定されており、
前記一方側に固定されたファイナルギアと、前記他方側に固定されたファイナルギアは、前記デフケースの中心を挟んで対称に設けられており、
前記デフケースは、前記一方側に固定されたファイナルギアと、前記他方側に固定されたファイナルギアを介して伝達される回転で回転する、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4の何れか一項において、
前記モータと前記歯車伝達機構との間に、遊星歯車機構が設けられており、
前記遊星歯車機構は、
前記モータの回転が入力されるサンギアと、
固定要素に固定されたリングギアと、
前記サンギアと前記リングギアに噛合するピニオンギアを支持するキャリアと、を有しており、
前記モータの出力回転が、前記遊星歯車機構により減速されて、前記キャリアから前記歯車伝達機構に伝達される、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータの出力軸(第1軸)方向の両側に、クラッチ付きの遊星歯車機構が配置された車両用の駆動装置(動力伝達装置)が開示されている。
特許文献2には、モータの出力軸(第1軸)と、カウンタ軸(第2軸)と、差動機構の出力軸(第3軸)とが、平行に配置されたモータユニット(動力伝達装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2014-019263号公報
【特許文献2】特開2021-016257号公報
【0004】
近年、低コスト化などの要請により、モータの外径をより小さくすることが求められている。モータの外径を小さくすると、小型化前と同等の出力を確保するために、モータの軸長が延びる傾向がある。
【0005】
特許文献1の動力伝達装置の場合、モータの出力軸(第1軸)方向の両側に、クラッチ機構付きの遊星歯車機構が配置されている。モータの軸長が延びると、動力伝達装置が軸方向に拡大する。そうすると、車両への搭載性に影響が及ぶ。
【0006】
特許文献2の動力伝達装置の場合、第1軸と第2軸と第3軸が平行に配置されているので、動力伝達装置が軸方向に拡大する程度を抑えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、動力伝達装置を搭載した車両において、悪路などの走破性を向上させるためには、差動機構の中心を、車両の幅方向の中心に近づけて配置することが好ましい。
特許文献2の動力伝達装置では、モータの出力軸の回転が、ギア列を介して差動機構に伝達される。ギア列は、出力軸の軸方向におけるモータの一方側に位置している。そのため、差動機構を車両の幅方向の中心寄りに配置すると、差動機構とギア列とが離れる結果、回転の伝達経路上のギアの支持剛性が不足する可能性がある。
そこで、モータの出力軸と、差動機構の出力軸とが、互いに平行に配置された動力伝達装置において、回転の伝達経路上のギアの支持剛性を確保できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、
モータと、
前記モータの出力回転を伝達する歯車伝達機構と、
前記歯車伝達機構を介して伝達された回転を左右の駆動軸に分配する差動機構と、を有する動力伝達装置であって、
前記歯車伝達機構は、前記モータの一方側と他方側に、それぞれ同一のギア比で設けられており、
前記差動機構は、前記一方側の歯車伝達機構と前記他方側の歯車伝達機構との間に配置されており、
前記一方側の歯車伝達機構を介して伝達される回転と、前記他方側の歯車伝達機構を介して伝達される回転が、前記差動機構に合算して入力される、構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明のある態様によれば、回転の伝達経路上のギアの支持剛性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態にかかる動力伝達装置の概略構成図である。
図2図2は、第2実施形態にかかる動力伝達装置の概略構成図である。
図3図3は、第3実施形態にかかる動力伝達装置の概略構成図である。
図4図4は、車両に搭載した状態での各動力伝達装置の対比例を説明する模式図である。
図5図5は、変形例1にかかる動力伝達装置の概略構成図である。
図6図6は、変形例2にかかる動力伝達装置の概略構成図である。
図7図7は、変形例3にかかる動力伝達装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
始めに、本明細書における用語の定義を説明する。
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両前後方向等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0012】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両前後方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0013】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は、第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0014】
以下、本発明の実施形態を、車両Vが備える動力伝達装置に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態にかかる動力伝達装置1の概略構成を説明する図である。
図1に示すように、動力伝達装置1は、モータ2と、歯車伝達機構3(3A、3B)と、差動機構6と、を有する。
歯車伝達機構3は、モータ2の出力回転を差動機構6に伝達する。差動機構6は、歯車伝達機構3を介して伝達された回転を、左右のドライブシャフトDA、DB(駆動軸)に分配する。
【0016】
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、歯車伝達機構3(3A、3B)と、差動機構6と、ドライブシャフトDA、DBと、が設けられている。ドライブシャフトDA、DBは、モータ2の回転軸X1と平行な回転軸X2に沿う向きに設けられている。ドライブシャフトDA、DBの回転軸X2は、車両Vの前後方向における回転軸X1の一方側(車両前方側、または車両後方側)に位置している。
【0017】
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転が、歯車伝達機構3(3A、3B)で減速されたのち、差動機構6に入力される。差動機構6に入力された回転は、ドライブシャフトDA、DBを介して、車両の左右の駆動輪W、Wに伝達される。
【0018】
動力伝達装置1は、モータ2と歯車伝達機構3(3A、3B)と差動機構6を収容するハウジングHSを有する。
ハウジングHSは、サイドカバー12と、本体ケース11と、サイドカバー13とを、回転軸X1方向で接合して形成される。
本体ケース11は、モータ2の回転軸X1と、後記する減速ギア32の回転軸X3と、ドライブシャフトDA、DBの回転軸X2とに跨がる径方向の範囲を持っている。本体ケース11の内部には、モータ2と差動機構6が収容される。
【0019】
本体ケース11は、本体ケース11の内部を、モータ2の収容室Saと、デフケース60等の収容室Sbとに区画する筒壁部110を有している。筒壁部110は、モータ2の外周を全周に亘って囲む円筒状を成している。
筒壁部110の内周には、モータ2のステータ21が固定されている。ステータ21の内側には、モータシャフト20と一体に回転するロータ22が収容されている。
【0020】
モータシャフト20は、筒壁部110の開口を塞ぐカバー部材15、15を回転軸X1方向に貫通している。モータシャフト20の一端20aは、サイドカバー12の円筒状の支持部121に、ベアリングBを介して支持されている。モータシャフト20の他端20bは、サイドカバー13の円筒状の支持部131に、ベアリングBを介して支持されている。
【0021】
カバー部材15、15では、回転軸X1と交差する領域に、モータシャフト20の挿通孔150、150が設けられている。カバー部材15、15は、挿通孔150、150を囲む筒状の支持部151、151を有している。支持部151、151の内周には、モータシャフト20の外周を支持するベアリングB、Bが支持されている。
【0022】
モータシャフト20の一端20a側と他端20b側には、出力ギア31、31がそれぞれ設けられている。出力ギア31、31は、モータシャフト20に外挿された状態で、モータシャフト20に対して相対回転不能に設けられている。
出力ギア31、31は、それぞれ、カバー部材15側の支持部151と、サイドカバー12、13側の支持部121、131の間に位置している。
【0023】
出力ギア31、31は、減速ギア32の大径歯車321に噛合している。
減速ギア32では、軸部320の長手方向の一端側に大径歯車321が位置しており、他端側に小径歯車322が位置している。大径歯車321と小径歯車322は、軸部320に相対回転不能に連結されている。大径歯車321と小径歯車322は、軸部320と一体の部品であっても良い。
減速ギア32は、軸部320を回転軸X3に沿わせた向きで設けられている。回転軸X3は、回転軸X1、X2に対して平行である。
【0024】
軸部320の大径歯車321側の一端は、サイドカバー12、13の支持部122、132に、ベアリングBを介して支持されている。軸部320の小径歯車322側の他端は、前記した筒壁部110に設けた支持部112、112にベアリングBを介して支持されている。
【0025】
回転軸X1の径方向(図1における上下方向)から見て、減速ギア32は、小径歯車322が設けられた他端側が、モータ2および差動機構6(デフケース60)とオーバーラップしている。すなわち、回転軸X1の径方向から見ると、モータ2と、小径歯車322と、デフケース60とが重なる位置関係で配置されている。
【0026】
減速ギア32とモータ2とをオーバーラップさせずに設けると、小径歯車322を、カバー部材15よりも外側(サイドカバー12、13側)に配置することになる。かかる場合、減速ギア32を収容するために、サイドカバー12、13を回転軸X1方向に広げる必要があり、ハウジングHSが回転軸X1方向(図中、左右方向)に大型化する。
本実施形態では、回転軸X1の径方向から見て、減速ギア32の小径歯車322側の一部が、モータ2(モータ2の収容室Sa)とオーバーラップするように設けられている。これにより、ハウジングHSの回転軸X1方向への大型化を制限している。
【0027】
小径歯車322は、デフケース60と一体に回転するファイナルギア33に噛合している。
ファイナルギア33は、デフケース60の外周に固定されている。ファイナルギア33は、デフケース60と一体に回転軸X2回りに回転する。
デフケース60は、当該デフケース60の中心に位置するシャフト61を、モータ2の中心線Cに沿わせた向きで設けられている。中心線Cは、モータ2の回転軸X1方向の中心を通ると共に、回転軸X1に直交する直線である。デフケース60とモータ2は、中心線C方向に間隔をあけて、中心線C上で並んでいる。
前記したファイナルギア33、33は、中心線Cを間に挟んで対称となる位置関係で設けられている。
【0028】
回転軸X2方向におけるデフケース60の両側には、支持部601、601が設けられている。支持部601、601は、デフケース60と一体に形成されている。
支持部601、601は、回転軸X2に沿ってデフケース60から離れる方向に延びている。
回転軸X2方向におけるデフケース60の両側には、本体ケース11の側壁部115、115が位置している。回転軸X2方向から見て、側壁部115、115は、デフケース60とオーバーラップしている。
【0029】
側壁部115、115では、回転軸X2と交差する領域に貫通孔116、116が設けられている。側壁部115、115では、中心線C側の面に支持部117、117が設けられている。支持部117、117は、貫通孔116、116を囲む円筒状に形成されている。
支持部117、117の内周には、デフケース60側の支持部601、601が、ベアリングB、Bを介して支持されている。
【0030】
デフケース60の内部では、シャフト61が回転軸X2に直交する向きで設けられている。シャフト61は、デフケース60と一体に回転軸X2回りに回転する。シャフト61には、一対のピニオンメートギア62、62が回転可能に外挿されている。
【0031】
デフケース60の内部では、支持部601、601を挿通したドライブシャフトDA、DBが、シャフト61を間に挟んで対向配置されている。ドライブシャフトDA、DBの先端には、サイドギア65、65が相対回転不能に設けられている。サイドギア65、65は、シャフト61に外挿されたピニオンメートギア62、62が、回転伝達可能に噛合している。
【0032】
本実施形態では、出力ギア31と、減速ギア32と、ファイナルギア33と、から歯車伝達機構3を構成している。
動力伝達装置1では、回転軸X1方向におけるモータ2の一方側(図中、左側)と他方側(図中、右側)に、歯車伝達機構3A、3Bが配置されている。
歯車伝達機構3A、3Bは、中心線Cを間に挟んで対称となる位置関係で設けられている。
【0033】
歯車伝達機構3A、3Bは、同一の構成を有している。歯車伝達機構3A、3Bは、モータ2の出力回転を、同一のギア比で減速して、差動機構6に伝達する。
モータ2の出力回転は、歯車伝達機構3Aと歯車伝達機構3Bとに、均等に分配されて、差動機構6に伝達される。差動機構6のデフケース60には、歯車伝達機構3Aを介して伝達される回転と、歯車伝達機構3Bを介して伝達される回転が、合算されて伝達される。
【0034】
歯車伝達機構が、モータ2の出力回転を差動機構6に伝達する際には、歯車伝達機構を構成する各歯車に、回転の伝達に起因する応力が集中する。
モータ2の一方側にのみ歯車伝達機構を配置する場合には、回転軸X1方向におけるモータ2の一方側から回転が出力されて、回転軸X2方向における一方側から差動機構6(デフケース60)に回転が入力される。
そのため、デフケース60をモータ2の中心線Cに寄せて配置すると、ハウジングHSにおけるデフケース60の支持点と、デフケース60に回転が伝達される作用点とが、回転軸X1方向に離れてしまう。そうすると、回転の伝達に起因する応力が、回転軸X1と回転軸X2を互いに近づける方向に作用すると、回転の伝達経路上の各歯車の噛み合いにずれが生じて、各歯車(ギア)の支持安定性に影響が及ぶ可能性がある。
【0035】
本実施形態では、差動機構6の一方側と他方側に、歯車伝達機構3A、3Bを配置している。そのため、モータ2の出力回転を差動機構6に伝達する際に、各歯車(出力ギア31、大径歯車321、小径歯車322、ファイナルギア33)が受ける応力を、一方側の歯車伝達機構3Aの歯車列と、他方側の歯車伝達機構3Bの歯車列で分配できる。
【0036】
これにより、歯車伝達機構3A、3Bを構成する各歯車(出力ギア31、大径歯車321、小径歯車322、ファイナルギア33)が受ける応力を、ひとつの歯車伝達機構を介して伝達する場合よりも抑えることができる。
そうすると、ハウジングHSにおける各歯車(出力ギア31、大径歯車321、小径歯車322、ファイナルギア33)の支持に要する負荷が低減されるので、ハウジングHSにおける各歯車(出力ギア31、大径歯車321、小径歯車322、ファイナルギア33)の支持安定性が向上する。
【0037】
さらに、ひとつの歯車伝達機構を介して回転を伝達する場合、回転の伝達に起因する応力が、回転軸X1と回転軸X2を互いに近づける方向に作用する結果、回転の伝達経路上の各歯車の噛み合いにずれが生じて、各歯車に偏摩耗が生ずる可能性がある。
上記のように、2つの歯車伝達機構3A、3Bに分配して回転を伝達することにより、回転の伝達経路上に位置する歯車の支持安定性が向上する。これにより。各歯車の噛み合いのズレを抑えることができるので、各歯車の偏摩耗の発生を防止できる。
【0038】
さらに、モータ2の出力回転を差動機構6に伝達する際に、伝達する回転(トルク)が、歯車伝達機構3Aと歯車伝達機構3Bとに分配される。これにより、各歯車(出力ギア31、大径歯車321、小径歯車322、ファイナルギア33)の回転軸(回転軸X1、X2、X3)方向の幅を、ひとつの歯車伝達機構を介して伝達する場合よりも狭く、例えば半分の幅にできる。
そうすると、各歯車(出力ギア31、大径歯車321、小径歯車322、ファイナルギア33)の回転軸(回転軸X1、X2、X3)方向の幅が狭くなることで、サイドカバー12、13の回転軸X1方向の厚みを抑えることができる。これにより、サイドカバー12、13を回転軸X1方向の幅を抑えることができるので、ハウジングHSの回転軸X1方向への大型化を抑制できる。
【0039】
さらに、動力伝達装置1では、デフケース60が、モータ2の中心線C上に位置しており、歯車伝達機構3A、3Bは、中心線Cを間に挟んで対称となる位置関係で設けられている。そのため、動力伝達装置1では、モータ2、出力ギア31、減速ギア32、ファイナルギア33(デフケース60)の支持に係わる要素(支持部121、131、122、132、117、117)が、中心線Cを間に挟んで対称に配置される。
ハウジングHSは、本体ケース11の両側に、略同一形状のサイドカバー12、13が位置しており、中心線Cを挟んで略対称な形状を持つ箱型(略四角構造)を成している。
【0040】
一方、モータ2の一方側に位置するひとつの歯車伝達機構を介して差動機構6に回転を伝達する場合には、ハウジングHSが、中心線を挟んで非対称となる。
この非対称なハウジングに比べて、略対称な形状を持つ本実施形態にかかる動力伝達装置1のハウジングHSは、剛性が高くなる。
これにより、回転の伝達経路上の歯車(出力ギア31、減速ギア32、ファイナルギア33)のねじれや傾きに対する剛性が確保される。よって、回転の伝達時に作用する応力により、回転の伝達経路上の歯車(出力ギア31、減速ギア32、ファイナルギア33)に傾ける方向の応力が作用しても、各歯車に、ねじれや傾きが生じる可能性を低減できる。
【0041】
よって、歯車のねじれや傾きに起因する回転の伝達公理の低下や、歯車に生じ得る不具合、例えば偏摩耗の発生を好適に防止できる。
【0042】
以下、本発明のある態様である第1実施形態における動力伝達装置1(装置)の構成例を列挙する。
(1)動力伝達装置1は、
モータ2と、
モータ2の出力回転を伝達する歯車伝達機構3(3A、3B)と、
歯車伝達機構3(3A、3B)を介して伝達された回転を左右のドライブシャフトDA、DB(駆動軸)に分配する差動機構6と、を有する。
歯車伝達機構3(3A、3B)は、モータ2の一方側と他方側に、それぞれ同一のギア比で設けられている。
差動機構6は、一方側の歯車伝達機構3Aと他方側の歯車伝達機構3Bとの間に配置されている。
一方側の歯車伝達機構3Aを介して伝達される回転と、他方側の歯車伝達機構3Bを介して伝達される回転が、差動機構6に合算して入力される。
【0043】
このように構成すると、一方側の歯車伝達機構3Aと他方側の歯車伝達機構3Bとの間で、モータ2の中心と差動機構6の中心を揃えて配置できる。
モータ2の一方側にのみ歯車伝達機構を配置する場合には、差動機構6のデフケース60に回転を伝達するギアに回転の伝達に起因する応力が集中するため、歯車伝達機構3A、3Bを構成する各歯車(出力ギア31、減速ギア32、ファイナルギア33)の支持安定性に影響が及ぶ可能性がある。
差動機構6の一方側と他方側に歯車伝達機構3A、3Bが位置することで、デフケース60に回転を伝達する際に各歯車が受ける応力を、一方側の歯車伝達機構3Aの歯車列と、他方側の歯車伝達機構3Bの歯車列で分配できる。これにより、歯車伝達機構3A、3B各々における歯車の支持安定性が向上する。これにより、回転の伝達経路上の歯車の支持剛性を確保できる。
【0044】
(2)歯車伝達機構3(3A、3B)は、
モータ2のモータシャフト20(モータの出力軸)と一体に回転する出力ギア31と、
モータシャフト20と、差動機構6との間に配置される減速ギア32と、
差動機構6のデフケース60と一体に回転するファイナルギア33と、を有している。
モータシャフト20の回転軸X1の径方向から見て減速ギア32は、モータ2とオーバーラップしている。
【0045】
減速ギア32とモータ2とをオーバーラップさせずに設けると、減速ギア32を、モータ2よりも外側(サイドカバー12、13側に)に配置することになる。かかる場合、減速ギア32を収容するために、サイドカバー12、13を回転軸X1方向に広げる必要があり、ハウジングHSが回転軸X1方向に大型化する。
本実施形態では、回転軸X1の径方向から見て、減速ギア32の小径歯車322側の少なくとも一部が、モータ2とオーバーラップするように設けられている。これにより、ハウジングHSの回転軸X1方向への大型化を抑制できる。さらに、動力伝達装置の車両への搭載性が向上する。
【0046】
(5)デフケース60では、当該デフケース60の中心を通る中心線Cから見て一方側と他方側に、ファイナルギア33、33が固定されている。
一方側に固定されたファイナルギア33と、他方側に固定されたファイナルギア33は、デフケース60の中心を通る中心線Cを挟んで対称に設けられている。
デフケース60は、一方側に固定されたファイナルギア33と、他方側に固定されたファイナルギア33を介して伝達される回転で回転する。
【0047】
差動機構6のデフケース60には、一方側に固定されたファイナルギア33に伝達される回転と、他方側に固定されたファイナルギア33に伝達された回転が、合算されて伝達される。
そのため、歯車伝達機構3A、3Bを構成する各歯車(出力ギア31、大径歯車321、小径歯車322、ファイナルギア33)は、回転軸(回転軸X1、X2、X3)方向の幅を、ひとつの歯車伝達機構を介して伝達する場合よりも狭くできる。
各歯車(出力ギア31、大径歯車321、小径歯車322、ファイナルギア33)の回転軸(回転軸X1、X2、X3)方向の幅が狭くなることで、サイドカバー12、13の回転軸X1方向の厚みを抑えることができる。
これにより、ハウジングHSの回転軸X1方向への大型化を抑制できる。
【0048】
(I)回転軸X1の径方向から見て、デフケース60のハウジングHSにおける支持点である支持部117、117の位置は、出力ギア31のハウジングHSにおける支持部121、131よりも中心線C側に位置する。
回転軸X1の径方向から見て、デフケース60のハウジングHSにおける支持点である支持部117、117の位置は、ハウジングHSにおける減速ギア32の小径歯車322側の支持部112、112と、大径歯車321の支持部122、132との間に位置する。
【0049】
このように構成すると、ドライブシャフトDA、DBにおけるハウジングHSの外側に位置する部位の車幅方向の長さを長くできる。
ドライブシャフトDA、DBの長さが長くなると、デフケース60から駆動輪W、Wまでの距離が長くなり、デフケース60側を支点とした駆動輪W、Wの可動範囲が広くなる。そうすると、車輪のキャンバー角の変化を抑えることができるので、駆動輪W、Wの接地性が向上する結果、悪路の走破性を確保できる。さらに、車両Vの悪路走行時に、車両が揺動したときのドライブシャフトDA、DBの可動範囲が広くなる結果、車両Vの車体を水平に保つことができるので、悪路走行時の乗り心地の確保が期待できる。
【0050】
[第2実施形態]
図2は、第2実施形態にかかる動力伝達装置1Aの概略構成を説明する図である。
第2実施形態にかかる動力伝達装置1Aでは、歯車伝達機構4(4A、4B)の構成が、前記した第1実施形態の歯車伝達機構3(3A、3B)と相違する。
歯車伝達機構4(4A、4B)は、出力ギア41と、中間ギア44と、ファイナルギア43と、から構成される。歯車伝達機構4(4A、4B)は、減速ギア32に代えて、中間ギア44を備えるという点において、前記した第1実施形態の歯車伝達機構3(3A、3B)と相違する。
以下の説明においては、第1実施形態の動力伝達装置1と相違する部分について、主として説明し、その他の部分については必要に応じて説明する。
【0051】
出力ギア41、41は、モータシャフト20の一端20a側と他端20b側に、それぞれ設けられている。出力ギア41、41は、モータシャフト20に対して相対回転不能である。出力ギア41、41は、それぞれ、カバー部材15側の支持部151と、サイドカバー12、13側の支持部121、131の間に位置している。
【0052】
出力ギア41、41は、当該出力ギア41、41よりも大径の中間ギア44に噛合している。
中間ギア44は、軸部320の長手方向の略中央部に相対回転不能に連結されている。中間ギア44は、軸部320と一体の部品であっても良い。
軸部320は、回転軸X3に沿わせた向きで設けられている。軸部320の一方の端部は、本体ケース11側の支持部112にベアリングBを介して支持されている。軸部320の他方の端部は、サイドカバー12、13の支持部122、132に、ベアリングBを介して支持されている。
【0053】
中間ギア44は、当該中間ギア44よりも大径のファイナルギア43に噛合している。
ファイナルギア43は、デフケース60の支持部601の外周に固定されている。ファイナルギア43は、デフケース60と一体に回転する。回転軸X1の径方向(図1における上下方向)から見て、中間ギア44は、出力ギア41およびファイナルギア43と、オーバーラップしている。
【0054】
デフケース60は、当該デフケース60の中心に位置するシャフト61を、モータ2の中心線Cに沿わせた向きで設けられている。デフケース60とモータ2は、中心線C方向に間隔をあけて、中心線C上で並んでいる。
前記したファイナルギア33、33は、中心線Cを間に挟んで対称となる位置関係で設けられている。
【0055】
回転軸X2方向におけるデフケース60の両側には、円筒状の支持部601、601が設けられている。支持部601、601は、デフケース60と一体に形成されている。
支持部601、601は、回転軸X2に沿ってデフケース60から離れる方向に延びている。サイドカバー12、13では、回転軸X2と交差する領域に貫通孔120、130が設けられている。サイドカバー12、13では、中心線C側の面に支持部123、133が設けられている。支持部123、133は、貫通孔120、130を囲む円筒状に形成されている。
支持部123、133の内周には、デフケース60側の支持部601、601が、ベアリングB、Bを介して支持されている。
【0056】
動力伝達装置1Aでは、回転軸X1方向におけるモータ2の一方側(図中、左側)と他方側(図中、右側)に、歯車伝達機構4A、4Bが配置されている。
歯車伝達機構4A、4Bは、中心線Cを間に挟んで対称となる位置関係で設けられている。
【0057】
歯車伝達機構4A、4Bは、同一の構成を有している。歯車伝達機構4A、4Bは、モータ2の出力回転を、同一のギア比で減速して、差動機構6に伝達する。
モータ2の出力回転は、歯車伝達機構4Aと歯車伝達機構4Bとに、均等に分配されて、差動機構6に伝達される。差動機構6のデフケース60には、歯車伝達機構4Aを介して伝達される回転と、歯車伝達機構4Bを介して伝達される回転が、合算されて伝達される。
【0058】
歯車伝達機構が、モータ2の出力回転を差動機構6に伝達する際には、歯車伝達機構を構成する各歯車に、回転の伝達に起因する応力が集中する。
モータ2の一方側にのみ歯車伝達機構を配置する場合には、回転軸X1方向におけるモータ2の一方側から回転が出力されて、回転軸X2方向における一方側から差動機構6(デフケース60)に回転が入力される。
そのため、デフケース60をモータ2の中心線Cに寄せて配置すると、ハウジングHSにおけるデフケース60の支持点と、デフケース60に回転が伝達される作用点とが、回転軸X1方向に離れる結果、歯車(ギア)の支持安定性に影響が及ぶ可能性がある。
【0059】
本実施形態では、差動機構6の一方側と他方側に、歯車伝達機構4A、4Bを配置している。そのため、モータ2の出力回転を差動機構6に伝達する際に、各歯車(出力ギア41、中間ギア44、ファイナルギア33)が受ける応力を、一方側の歯車伝達機構4Aの歯車列と、他方側の歯車伝達機構4Bの歯車列で分配できる。
【0060】
これにより、歯車伝達機構4A、4Bを構成する各歯車(出力ギア41、中間ギア44、ファイナルギア43)が受ける応力を、ひとつの歯車伝達機構を介して伝達する場合よりも抑えることができる。
そうすると、ハウジングHSにおける各歯車(出力ギア41、中間ギア44、ファイナルギア43)の支持に要する負荷が低減されるので、ハウジングHSにおける各歯車(出力ギア41、中間ギア44、ファイナルギア43)の支持安定性が向上する。
【0061】
さらに、モータ2の出力回転を差動機構6に伝達する際に、伝達する回転(トルク)が、歯車伝達機構4Aと歯車伝達機構4Bとに分配される。これにより、各歯車(出力ギア41、中間ギア44、ファイナルギア43)の回転軸(回転軸X1、X2、X3)方向の幅を、ひとつの歯車伝達機構を介して伝達する場合よりも狭くできる。
そうすると、各歯車(出力ギア41、中間ギア44、ファイナルギア43)の回転軸(回転軸X1、X2、X3)方向の幅が狭くなることで、サイドカバー12、13の回転軸X1方向の厚みを抑えることができる。これにより、サイドカバー12、13を回転軸X1方向の幅を抑えることができるので、ハウジングHSの回転軸X1方向への大型化を抑制できる。
【0062】
さらに、動力伝達装置1では、デフケース60が、モータ2の中心線C上に位置しており、歯車伝達機構4A、4Bは、中心線Cを間に挟んで対称となる位置関係で設けられている。そのため、動力伝達装置1では、モータ2、出力ギア41、中間ギア44、ファイナルギア43(デフケース60)の支持に係わる要素(支持部121、131、122、132、123、133)が、中心線Cを間に挟んで対称に配置される。
ハウジングHSは、本体ケース11の両側に、略同一形状のサイドカバー12、13が位置しており、中心線Cを挟んで略対称な形状を持つ箱型を成している。
【0063】
一方、モータ2の一方側に位置するひとつの歯車伝達機構を介して差動機構6に回転を伝達する場合には、ハウジングHSが、中心線を挟んで非対称となる。
この非対称な形状を持つハウジングに比べて、略対称な形状を持つ本実施形態にかかる動力伝達装置1AのハウジングHSは、剛性が高くなる。これにより、回転の伝達経路上のギア(出力ギア41、中間ギア44、ファイナルギア43)の支持剛性が確保されて、支持安定性が高められる。
このように、歯車伝達機構4(4A、4B)を採用することによっても、前記した第1実施形態の場合と同様の作用・効果が奏される。
【0064】
以下に、本発明のある態様である第2実施形態における動力伝達装置1Aの構成例を列挙する。
(1)動力伝達装置1Aは、
モータ2と、
モータ2の出力回転を伝達する歯車伝達機構4(4A、4B)と、
歯車伝達機構4(4A、4B)を介して伝達された回転を左右のドライブシャフトDA、DB(駆動軸)に分配する差動機構6と、を有する。
歯車伝達機構4(4A、4B)は、モータ2の一方側と他方側に、それぞれ同一のギア比で設けられている。
差動機構6は、一方側の歯車伝達機構4Aと他方側の歯車伝達機構4Bとの間に配置されている。
一方側の歯車伝達機構4Aを介して伝達される回転と、他方側の歯車伝達機構4Bを介して伝達される回転が、差動機構に合算して入力される。
【0065】
このように構成すると、一方側の歯車伝達機構4Aと他方側の歯車伝達機構4Bとの間で、モータ2の中心と差動機構6の中心を揃えて配置できる。
モータ2の一方側にのみ歯車伝達機構を配置する場合には、差動機構6のデフケース60に回転を伝達するギアに回転の伝達に起因する応力が集中するため、ギアの支持安定性に影響が及ぶ可能性がある。
差動機構6の一方側と他方側に歯車伝達機構4A、4Bが位置することで、デフケース60に回転を伝達する際にギアが受ける応力を、一方側の歯車伝達機構4Aのギア列と、他方側の歯車伝達機構4Bのギア列で分配できるので、ギアの支持安定性が向上する。これにより、回転の伝達経路上のギアの支持剛性を確保できる。
【0066】
(3)歯車伝達機構4(4A、4B)は、
モータ2のモータシャフト20(モータの出力軸)と一体に回転する出力ギア41と、
モータシャフト20と、差動機構6との間に配置される中間ギア44と、
差動機構6のデフケース60と一体に回転するファイナルギア43と、を有している。
【0067】
このように構成すると、モータ2の回転をデフケース60に伝達する際に、歯車伝達機構4(4A、4B)の各歯車(出力ギア41、中間ギア44、ファイナルギア43)が受ける応力を、一方側の歯車伝達機構4Aのギア列と、他方側の歯車伝達機構4Bのギア列で分配できる。
これにより、各歯車(出力ギア41、中間ギア44、ファイナルギア43)のハウジングHSにおける支持安定性を確保できる。
【0068】
(5)デフケース60では、当該デフケース60の中心を通る中心線Cから見て一方側と他方側に、ファイナルギア43、43が固定されている。
一方側に固定されたファイナルギア43と、他方側に固定されたファイナルギア43は、デフケース60の中心を通る中心線Cを挟んで対称に設けられている。
デフケース60は、一方側に固定されたファイナルギア43と、他方側に固定されたファイナルギア43を介して伝達される回転で回転する。
【0069】
このように構成すると、各歯車(出力ギア41、中間ギア44、ファイナルギア43)が受ける応力が抑えられるので、各歯車の厚みを薄くできる。
これにより、モータシャフト20の回転軸X1の径方向から見て中間ギア44と、出力ギア41と、ファイナルギア43と、がオーバーラップして配置されることで、これらを収容するサイドカバー12、13の回転軸X1方向の厚みを抑えることができる。よって、ハウジングHSの回転軸X1方向への大型化を抑制できる。
【0070】
[第3実施形態]
図3は、第3実施形態にかかる動力伝達装置1Bの概略構成を説明する図である。
第3実施形態にかかる動力伝達装置1Bでは、歯車伝達機構5(5A、5B)の構成が、前記した第1実施形態の歯車伝達機構3(3A、3B)や、第2実施形態の歯車伝達機構4(4A、4B)と相違する。
歯車伝達機構5(5A、5B)は、出力ギア51と、ファイナルギア53と、から構成される。歯車伝達機構5(5A、5B)は、減速ギア32や中間ギア44に相当するギアを備えていないという点において、前記した歯車伝達機構3(3A、3B)や、歯車伝達機構4(4A、4B)と相違する。
以下の説明においては、第1実施形態の動力伝達装置1と相違する部分について、主として説明し、その他の部分については必要に応じて説明する。
【0071】
動力伝達装置1Bでは、回転軸X1方向におけるモータ2の一方側(図中、左側)と他方側(図中、右側)に、歯車伝達機構5A、5Bが配置されている。
歯車伝達機構5A、5Bは、中心線Cを間に挟んで対称となる位置関係で設けられている。
【0072】
歯車伝達機構5A、5Bは、同一の構成を有している。歯車伝達機構5A、5Bは、モータ2の出力回転を、同一のギア比で減速して、差動機構6に伝達する。
モータ2の出力回転は、歯車伝達機構5Aと歯車伝達機構5Bとに、均等に分配されて、差動機構6に伝達される。差動機構6のデフケース60には、歯車伝達機構5Aを介して伝達される回転と、歯車伝達機構5Bを介して伝達される回転が、合算されて伝達される。
【0073】
歯車伝達機構が、モータ2の出力回転を差動機構6に伝達する際には、歯車伝達機構を構成する各歯車に、回転の伝達に起因する応力が集中する。
【0074】
本実施形態では、差動機構6の一方側と他方側に、歯車伝達機構5A、5Bを配置している。そのため、モータ2の出力回転を差動機構6に伝達する際に、各歯車(出力ギア51、ファイナルギア53)が受ける応力を、一方側の歯車伝達機構5Aの歯車列と、他方側の歯車伝達機構5Bの歯車列で分配できる。
【0075】
これにより、歯車伝達機構5A、5Bを構成する各歯車(出力ギア51、ファイナルギア53)が受ける応力を、ひとつの歯車伝達機構を介して伝達する場合よりも抑えることができる。
そうすると、ハウジングHSにおける各歯車(出力ギア51、ファイナルギア53)の支持に要する負荷が低減されるので、ハウジングHSにおける各歯車(出力ギア51、ファイナルギア53)の支持安定性が向上する。
【0076】
さらに、モータ2の出力回転を差動機構6に伝達する際に、伝達する回転(トルク)が、歯車伝達機構5Aと歯車伝達機構4Bとに分配される。これにより、各歯車(出力ギア51、ファイナルギア53)の回転軸(回転軸X1、X2)方向の幅を、ひとつの歯車伝達機構を介して伝達する場合よりも狭くできる。
そうすると、各歯車(出力ギア51、ファイナルギア53)の回転軸(回転軸X1、X2)方向の幅が狭くなることで、サイドカバー12、13の回転軸X1方向の厚みを抑えることができる。これにより、サイドカバー12、13を回転軸X1方向の幅を抑えることができるので、ハウジングHSの回転軸X1方向への大型化を抑制できる。
【0077】
さらに、動力伝達装置1Bでは、モータ2、出力ギア51、ファイナルギア53(デフケース60)の支持に係わる要素(支持部121、131、122、132、123、133)が、中心線Cを間に挟んで対称に配置される。
ハウジングHSは、本体ケース11の両側に、略同一形状のサイドカバー12、13が位置しており、中心線Cを挟んで略対称な形状を持つ箱型を成している。
そうすると、非対称な形状を持つハウジングに比べて、略対称な形状を持つ本実施形態にかかる動力伝達装置1BのハウジングHSは、剛性が高くなる。これにより、回転の伝達経路上のギア(出力ギア51、ファイナルギア53)の支持剛性が確保されて、支持剛性が高められる。
歯車伝達機構5(5A、5B)を採用することによっても、前記した第1実施形態の場合と同様の作用・効果が奏される。
【0078】
以下に、本発明のある態様である第3実施形態における動力伝達装置1Bの構成例を列挙する。
(1)動力伝達装置1Bは、
モータ2と、
モータ2の出力回転を伝達する歯車伝達機構5(5A、5B)と、
歯車伝達機構5(5A、5B)を介して伝達された回転を左右のドライブシャフトDA,DB(駆動軸)に分配する差動機構6と、を有する。
歯車伝達機構5(5A、5B)は、モータ2の一方側と他方側に、それぞれ同一のギア比で設けられている。
差動機構6は、一方側の歯車伝達機構5Aと他方側の歯車伝達機構5Bとの間に配置されている。
一方側の歯車伝達機構5Aを介して伝達される回転と、他方側の歯車伝達機構5Bを介して伝達される回転が、差動機構6に合算して入力される。
【0079】
このように構成すると、一方側の歯車伝達機構5Aと他方側の歯車伝達機構5Bとの間で、モータ2の中心と差動機構6の中心を揃えて配置できる。
モータ2の一方側にのみ歯車伝達機構を配置する場合には、差動機構6のデフケース60に回転を伝達するギアに回転の伝達に起因する応力が集中するため、ギアの支持安定性に影響が及ぶ可能性がある。
差動機構6の一方側と他方側に歯車伝達機構5A、5Bが位置することで、デフケース60に回転を伝達する際にギアが受ける応力を、一方側の歯車伝達機構5Aのギア列と、他方側の歯車伝達機構5Bのギア列で分配できるので、ギアの支持安定性が向上する。これにより、回転の伝達経路上のギアの支持剛性を確保できる。
【0080】
(4)歯車伝達機構5(5A、5B)は、
モータ2のモータシャフト20(モータの出力軸)と一体に回転する出力ギア51と、
差動機構6のデフケース60と一体に回転するファイナルギア53と、を有している。
【0081】
このように構成すると、モータ2の回転をデフケース60に伝達する際に、歯車伝達機構5(5A、5B)の各歯車(出力ギア51、ファイナルギア53)が受ける応力を、一方側の歯車伝達機構5Aのギア列と、他方側の歯車伝達機構5Bのギア列で分配できる。
これにより、各歯車(出力ギア51、ファイナルギア53)のハウジングHSにおける支持安定性を確保できる。
【0082】
(5)デフケース60では、当該デフケース60の中心を通る中心線Cから見て一方側と他方側に、ファイナルギア53、53が固定されている。
一方側に固定されたファイナルギア53と、他方側に固定されたファイナルギア53は、デフケース60の中心を通る中心線Cを挟んで対称に設けられている。
デフケース60は、一方側に固定されたファイナルギア53と、他方側に固定されたファイナルギア53を介して伝達される回転で回転する。
【0083】
このように構成すると、各歯車(出力ギア51、ファイナルギア53)が受ける応力が抑えられるので、各歯車の厚みを薄くできる。
これにより、モータシャフト20の回転軸X1の径方向から見て出力ギア51と、ファイナルギア53と、がオーバーラップして配置されることで、これらを収容するサイドカバー12、13の回転軸X1方向の厚みを抑えることができる。よって、ハウジングHSの回転軸X1方向への大型化を抑制できる。
【0084】
図4は、車両Vに搭載した状態での動力伝達装置1、1A、1Bの歯車伝達機構3、4、5の対比例を説明する模式図である。
図4の(a)は、動力伝達装置1が備える歯車伝達機構3を、回転軸X1と回転軸X3との軸間距離D3が最大となるようにして、車両Vに搭載した状態を模式的に示した図である。
図4の(b)は、動力伝達装置1Aが備える歯車伝達機構4を、回転軸X1と回転軸X3との軸間距離D4が最大となるようにして、車両Vに搭載した状態を模式的に示した図である。
図4の(c)は、動力伝達装置1Bが備える歯車伝達機構5を、回転軸X1と回転軸X2との軸間距離D5が最大となるようにして、車両Vに搭載した状態を模式的に示した図である。
【0085】
図1および図2に示すように、動力伝達装置1、1Aは、それぞれ3軸タイプの動力伝達装置である。
歯車伝達機構3の構成要素(出力ギア31、減速ギア32、ファイナルギア33)を、各構成要素の回転軸X1、X3、X2が、直線Lm上で並ぶように配置すると、このときの軸間距離D1が最大となる(図4の(a)参照)。
歯車伝達機構4の構成要素(出力ギア41、中間ギア44、ファイナルギア43)を、各構成要素の回転軸X1、X3、X2が、直線Lm上で並ぶように配置すると、このときの軸間距離D4が最大となる(図4の(b)参照)。
動力伝達装置1Bの歯車伝達機構5の構成要素(出力ギア51、ファイナルギア53)を、各構成要素の回転軸X1、X2が、直線Lm上で並ぶように配置すると、このときの軸間距離D5が最大となる(図4の(c)参照)
【0086】
駆動輪W、Wに連結されたドライブシャフトDA、DBは、車両Vの下部に配置される。一方、モータ2は、路面GD上にある障害物との干渉を避けるために、路面GDから上方に離して配置することが好ましい。
ここで、歯車伝達機構3、4(図4の(a)、(b))のほうが、歯車伝達機構5(図4の(c))よりも、モータ2を路面GDから離して配置できる。よって、路面GDからモータ2の下辺までの高さh3、h4、h5は、歯車伝達機構3、4の場合の高さh3、h4のほうが、歯車伝達機構5の場合の高さh5よりも高くできる(h5>h3、h4)。
これにより、歯車伝達機構3、4のほうが歯車伝達機構5よりも、車両Vの走行時に、路面GD上にある障害物や、駆動輪Wが跳ね上げた石などの干渉物が、衝突する可能性を低くできる。さらに、冠水した道路を走行する際に、ハウジングHSにおけるモータ2が収容される部位が水没する可能性を低減できる。
【0087】
一方、歯車伝達機構5は、歯車伝達機構3や歯車伝達機構4よりも軸間距離D5が短いので、路面GDからの高さは低くなるものの、回転軸の総数が2つであり、回転軸が1つ分少ないので、ハウジングHSの大きさ、特に車両前後方向の大きさを抑えることができる。
【0088】
このように、歯車伝達機構3(3A、3B)を採用した動力伝達装置1では、回転軸X1と回転軸X2との軸間距離を確保できるので、モータ2の路面からの高さを確保できる。
動力伝達装置1では、ハウジングHSの回転軸X1方向への大型化を抑制できるので、車両Vへの搭載性が向上する。また、車両Vの幅方向の中心と、モータ2の中心線Cとを合わせて配置することで、車両Vの幅方向の中心に、重量物であるモータ2やインバータ(図示せず)を配置できる。
さらに、動力伝達装置1で、ドライブシャフトDA、DBにおけるハウジングHSの外部に位置する領域の長さを確保できるので、デフケース60から駆動輪W、Wまでの距離が長くなる。これにより、デフケース60側を支点とした駆動輪W、Wの可動範囲が広くなる結果、車輪のキャンバー角の変化を抑えることができるので、駆動輪W、Wの接地性が向上するし、悪路の走破性を確保できる。
【0089】
歯車伝達機構4(4A、4B)を採用した動力伝達装置1Aでは、回転軸X1と回転軸X2との軸間距離を確保できるので、モータ2の路面からの高さを確保できる。
動力伝達装置1Aでは、Highギア比の設定が可能である。よって、モータの低回転のものに置き換えることで、モータシャフト20の回転軸X1方向の長さを短くできる。これにより、ハウジングHSの回転軸X1方向への大型化を抑制できるので、車両Vへの搭載性が向上する。また、車両Vの幅方向の中心と、モータ2の中心線Cとを合わせて配置することで、車両Vの幅方向の中心に、重量物であるモータ2やインバータ(図示せず)を配置できる。
【0090】
歯車伝達機構5(5A、5B)を採用した動力伝達装置1Bでは、回転軸X1と回転軸X2を近づけて配置できるので、ハウジングHSの車両前後方向への大型化を抑制できる。
動力伝達装置1Aでは、Highギア比の設定が可能である。よって、モータの低回転のものに置き換えることで、モータシャフト20の回転軸X1方向の長さを短くできる。これにより、ハウジングHSの回転軸X1方向への大型化を抑制できるので、車両Vへの搭載性が向上する。また、車両Vの幅方向の中心と、モータ2の中心線Cとを合わせて配置することで、車両Vの幅方向の中心に、重量物であるモータ2やインバータ(図示せず)を配置できる。
【0091】
[変形例1]
図5は、変形例1にかかる動力伝達装置1Cの概略構成を説明する図である。
変形例1にかかる動力伝達装置1Cでは、モータ2と、歯車伝達機構3(3A、3B)との間に、遊星歯車機構7が設けられているという点において、前記した第1実施形態にかかる動力伝達装置1と相違する。
【0092】
遊星歯車機構7は、サンギア71と、ピニオンギア72と、リングギア73と、キャリア74と、を有するシングルピニオン型の遊星歯車である。遊星歯車機構7は、カバー部材15と出力ギア31との間に配置されている。
回転軸X1方向から見ると、遊星歯車機構7は、モータ2および出力ギア31とオーバーラップしている。
【0093】
サンギア71は、モータシャフト20と同心に配置されている。サンギア71は、モータシャフト20に連結されている。サンギア71には、モータ2の出力が入力される。
サンギア71の外周には、ピニオンギア72が噛合している。遊星歯車機構7では、ピニオンギア72が、回転軸X1周りの周方向に間隔を開けて複数設けられている。ピニオンギア72の各々は、ピニオン軸75で回転可能に支持されている。
ピニオン軸75は、長手方向の一端と他端が、キャリア74の側板部741、742で、それぞれ支持されている。
側板部741、742は、回転軸X1方向に間隔を開けて設けられている。側板部741、742は、互いに平行に配置されている。側板部741は、カバー部材15側に位置している。側板部741の内周には、モータシャフト20の外周を支持するベアリングBが配置されている。
【0094】
側板部742は、サンギア71の側方を外径側から内径側に横切る範囲に設けられている。側板部742の内径側は、出力ギア31側の軸部30に、回転伝達可能に連結されている。
ピニオンギア72の各々は、リングギア73の内周に噛合している。リングギア73は、サイドカバー12、13の内周に固定されている。
【0095】
遊星歯車機構7では、モータ2の出力回転が、サンギア71に入力される。サンギア71に入力された回転は、リングギア73の回転が規制されているので、ピニオンギア72を介してキャリア74から出力される。
前記したように、キャリア74は、出力ギア31の軸部30に連結されているのでモータ2の出力回転は、遊星歯車機構7で減速されたのち、歯車伝達機構3(3A、3B)の出力ギア31に伝達される。
なお、回転軸X1方向から見て、遊星歯車機構7は、モータ2とオーバーラップしている。遊星歯車機構7は、モータ2の直径(外径)の範囲内に収まる大きさである。また、遊星歯車機構7は、クラッチを備えていないので、クラッチを備える遊星歯車機構に比べて、回転軸X1方向の大きさを抑えられている。
【0096】
以下に、変形例1にかかる動力伝達装置1Cの構成例を列挙する。
(6)動力伝達装置1Cでは、
モータ2と歯車伝達機構3(3A、3B)との間に、遊星歯車機構7が設けられている。
遊星歯車機構7は、
モータ2の出力回転が入力されるサンギア71と、
サイドカバー12、13(固定要素)に固定されたリングギア73と、
サンギア71とリングギア73に噛合するピニオンギア72を支持するキャリア74と、を有する。
モータ2の出力回転が、遊星歯車機構7により減速されて、キャリア74から歯車伝達機構3(3A、3B)に伝達される。
【0097】
このように構成すると、モータ2と歯車伝達機構3(3A、3B)との間に遊星歯車機構7が介在することで、モータ2の出力回転を、遊星歯車機構7と、歯車伝達機構3(3A、3B)で減速して、差動機構6に伝達できる。よって、モータ2の出力回転の減速比をより大きくすることができる。
遊星歯車機構7は、サンギア71から回転が入力されて、キャリア74から回転が出力される。遊星歯車機構7の減速比が最大となるようにしている。さらに、遊星歯車機構7は、クラッチを備えていないので、クラッチを備える遊星歯車機構に比べて、回転軸X1方向の大きさを抑えることができる。
【0098】
さらに、遊星歯車機構7を介在させることで、モータ2の出力回転を、より減速できる(Lowギア化)できる。これにより、動力伝達装置が駆動輪W、Wに伝える駆動力を向上できる。また、モータ2をより小型化して、出力回転を高回転化しても、モータ2の出力回転を減速できる。モータ2の小型化により、動力伝達装置の車両前後方向の大きさの抑制や、作製コストの低減が期待できる。
【0099】
[変形例2]
図6は、変形例2にかかる動力伝達装置1Dの概略構成を説明する図である。
変形例2にかかる動力伝達装置1Dでは、モータ2と、歯車伝達機構4(4A、4B)との間に、遊星歯車機構7が設けられているという点において、前記した第2実施形態にかかる動力伝達装置1Aと相違する。
【0100】
遊星歯車機構7の構成は、前記した変形例1の遊星歯車機構7と同じである。
遊星歯車機構7は、サンギア71と、ピニオンギア72と、リングギア73と、キャリア74と、を有するシングルピニオン型の遊星歯車である。遊星歯車機構7は、カバー部材15と出力ギア41との間に配置されている。
回転軸X1方向から見ると、遊星歯車機構7は、モータ2および出力ギア41とオーバーラップしている。
【0101】
遊星歯車機構7では、モータ2の出力回転が、サンギア71に入力される。サンギア71に入力された回転は、リングギア73の回転が規制されているので、ピニオンギア72を介してキャリア74から出力される。
前記したように、キャリア74は、出力ギア41の軸部40に連結されているのでモータ2の出力回転は、遊星歯車機構7で減速されたのち、歯車伝達機構4(4A、4B)に伝達される。
【0102】
以下に、変形例2にかかる動力伝達装置1Dの構成例を列挙する。
(6)動力伝達装置1Dでは、
モータ2と歯車伝達機構4(4A、4B)との間に、遊星歯車機構7が設けられている。
遊星歯車機構7は、
モータ2の出力回転が入力されるサンギア71と、
サイドカバー12、13(固定要素)に固定されたリングギア73と、
サンギア71とリングギア73に噛合するピニオンギア72を支持するキャリア74と、を有する。
モータ2の出力回転が、遊星歯車機構7により減速されて、キャリア74から歯車伝達機構4(4A、4B)に伝達される。
【0103】
このように構成すると、モータ2と歯車伝達機構4(4A、4B)との間に遊星歯車機構7が介在することで、モータ2の出力回転を、遊星歯車機構7と、歯車伝達機構4(4A、4B)で減速して、差動機構6に伝達される。モータ2の出力回転の減速比をより大きくすることができる。
遊星歯車機構7は、クラッチを備えていないので、クラッチを備える遊星歯車機構に比べて、回転軸X1方向の大きさを抑えることができる。
【0104】
[変形例3]
図7は、変形例3にかかる動力伝達装置1Eの概略構成を説明する図である。
変形例2にかかる動力伝達装置1Eでは、モータ2と、歯車伝達機構5(5A、5B)との間に、遊星歯車機構7が設けられているという点において、前記した第3実施形態にかかる動力伝達装置1Bと相違する。
【0105】
遊星歯車機構7の構成は、前記した変形例1および変形例2の遊星歯車機構7と同じである。
遊星歯車機構7は、サンギア71と、ピニオンギア72と、リングギア73と、キャリア74と、を有するシングルピニオン型の遊星歯車である。遊星歯車機構7は、カバー部材15と出力ギア51との間に配置されている。
回転軸X1方向から見ると、遊星歯車機構7は、モータ2および出力ギア51とオーバーラップしている。
【0106】
遊星歯車機構7では、モータ2の出力回転が、サンギア71に入力される。サンギア71に入力された回転は、リングギア73の回転が規制されているので、ピニオンギア72を介してキャリア74から出力される。
前記したように、キャリア74は、出力ギア51の軸部50に連結されているのでモータ2の出力回転は、遊星歯車機構7で減速されたのち、歯車伝達機構5(5A、5B)に伝達される。
【0107】
以下に、変形例2にかかる動力伝達装置1Eの構成例を列挙する。
(6)動力伝達装置1Eでは、
モータ2と歯車伝達機構5(5A、5B)との間に、遊星歯車機構7が設けられている。
遊星歯車機構7は、
モータ2の出力回転が入力されるサンギア71と、
サイドカバー12、13(固定要素)に固定されたリングギア73と、
サンギア71とリングギア73に噛合するピニオンギア72を支持するキャリア74と、を有する。
モータ2の出力回転が、遊星歯車機構7により減速されて、キャリア74から歯車伝達機構5(5A、5B)に伝達される。
【0108】
このように構成すると、モータ2と歯車伝達機構5(5A、5B)との間に遊星歯車機構7が介在することで、モータ2の出力回転を、遊星歯車機構7と、歯車伝達機構5(5A、5B)で減速して、差動機構6に伝達できる。よって、モータ2の出力回転の減速比をより大きくすることができる。
遊星歯車機構7は、クラッチを備えていないので、クラッチを備える遊星歯車機構に比べて、回転軸X1方向の大きさを抑えることができる。
【0109】
前記した実施形態および変形例では、本発明のある態様における車両に搭載される動力伝達装置の例を説明した。本発明は、これらの態様にのみ限定されない。また、本発明は、車両以外にも適用することができる。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0111】
1、1A、1B、1C、1D、1E :動力伝達装置
2 :モータ
3、3A、3B、4、4A、4B、5、5A、5B:歯車伝達機構
31、41、51 :出力ギア
32 :減速ギア
33、43、53 :ファイナルギア
44 :中間ギア
6 :差動機構
60 :デフケース
7 :遊星歯車機構
71 :サンギア
72 :ピニオンギア
73 :リングギア
74 :キャリア
C :中心線(中心)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7