(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063700
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】切り削ぎ手道具
(51)【国際特許分類】
A47J 43/25 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
A47J43/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022182169
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】504115460
【氏名又は名称】藤井 信昭
(72)【発明者】
【氏名】藤井 信昭
【テーマコード(参考)】
4B053
【Fターム(参考)】
4B053AA03
4B053CA03
4B053CD10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】素材と刃面とを擦り合わせる労力を軽減する機構を有し、安全に、素材を残らず、単純で軽快な手動の操作で、すりおろし、スライスしまたは削ぎ切りにする装置を提供すること。
【解決手段】刃つき板7と刃つき板保持枠2と、素材の上部を剣山11で捕捉する素材保持部1と、刃つき板保持枠の摺動軌道を有する刃つき板保持枠支持手段と素材保持部の昇降軌道を有する素材保持部支持手段とを有する架台3と、手動用の取手を有し刃つき板を摺動運動させるための駆動リンク5と、を有する切り削ぎ手道具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃つき板を載せて保持する刃つき板保持枠と、その刃つき板保持枠に直交するように設けた素材の上部を捕捉する素材保持部と、その素材保持部の昇降軌道を有する素材保持部支持手段と前記刃つき板保持枠の摺動軌道を有する刃つき板保持枠支持手段とを有する支持架台と、手動取手により前記刃つき板保持枠を摺動運動させるための駆動手段と、を有する切り削ぎできる切り削ぎ手道具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切り削ぎ手道具に関する。特に、すりおろし器やスライサー等の刃のついた板で固形素材をすりおろし、薄切り又は切り削ぐ手道具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大根等の素材をすりおろし器ですりおろす方法は、必要な大きさに切り取った野菜等の固形素材を手指で力を入れて握りしめることにより素材を支持し、もう一方の手指ですりおろし器の刃のある面を上にして持った状態で、素材とすりおろし器の刃面とを両手に力を入れて擦り合わせる操作を繰り返すことにより、大根等の素材をすりおろすやり方である。
【0003】
このやり方では手で握りしめている大根等の素材が次第に削られて小さくなると、その小さな素材を手指でしっかり保持しづらくなり、必要な擦り合わせ力を発揮できなくなり、且つ、手指とすりおろし器の刃面が次第に接近してきて、それ以上擦り合わせ作業を続けると小さくなって掴みづらくなった素材が手指から脱落して手指が刃面に直接触れて怪我をする危険性が大きくなる。
【0004】
使用者は、もはやそれ以上のおろし作業を進行するのは危険とみて、手指で保持している未処理の素材を残したまま、大根おろし作業を打ち切らざるを得ない。その残された素材は他の使い道がなければ廃棄されることがあり、新鮮な食材が捨てられるという無駄な事態が起こる。
【0005】
このように、従来の方法では、すりおろし作業中、素材を刃つき板の刃面の正しい位置に押し当て、正しい方向で往復させて擦り合わせる力仕事をすべて、手だけでコントロールし、手の力だけで支えねばならない。従来の方法は、使用中に危険性を有し、不慣れな人や握力の少ない人には使いにくい手道具である。
【0006】
従来求められてきたことは、安全かつ軽快な操作で、全素材を、すりおろし、スライスし、または切り削ぐ器具の実現であった。
【0007】
ところで、特許文献1には、素材を押さえ具で押さえながら、押さえ具をおろし金で往復する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のように、素材を上から押さえ具で押さえながら、押さえ具をおろし金上で水平に往復する方法では、力の方向が複数方向なので、素材と刃面とを擦り合わせる労力を軽減することができにくい欠点がある。
【0010】
本発明は、前記従来のやり方の欠点を解決し、大根等の素材及び危険なむき出しの刃に手で触れることが全くない構造を有し、且つ、片手は素材を上から押さえながら、もう片手ですりおろし器等の刃つき板を水平に往復運動させることにより、動作が単純化でき、手動用の手動取手により刃つき板保持枠を摺動運動させるための駆動手段を容易に組み込むことができ、素材と刃面とを擦り合わせる労力を軽減する機構を有し、安全に、素材を残らず、単純で軽快な手動の操作で、すりおろし、スライスしまたは削ぎ切りにする装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために、刃つき板と、その刃つき板を載せて保持する刃つき板保持枠と、その刃つき板保持枠に直交するように設けた素材の上部を捕捉する素材保持部と、その素材保持部の昇降軌道を有する素材保持部支持手段と前記刃つき板保持枠の摺動軌道を有する刃つき板支持手段とを有する架台と、手動用の把手により前記刃つき板保持枠を摺動運動させるための駆動手段と、を有している切り削ぎできる切り削ぎ手道具を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
上述したように本発明の切り削ぎ手道具は、人が素手で刃物を扱うやり難い手作業を誰でも安全に楽に操作できるシンプルな部品構成の調理用具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】刃つき板の一例を搭載した状態の、本発明の実施の形態を示す切り削ぎ手道具の外観図である。
【
図2】刃つき板を搭載していない状態の、本発明の実施の形態を示す切り削ぎ手道具の外観図である。
【
図4】本発明の実施の形態を示す刃つき板保持枠の外観図である。
【
図5】刃つき板の一例を搭載した状態の、本発明の実施の形態を示す刃つき板保持枠の外観図である。
【
図6】刃つき板保持枠へ力を伝達するための本発明の実施の形態を示す連結金具の外観図である。
【
図7】刃つき板持枠を往復運動させるための本発明の実施の形態を示す駆動リンクの外観図である。
【
図8】本発明の実施の形態を示す素材保持部の外観図である。
【
図9】本発明の実施の形態を示す素材保持部と刃つき板保持枠とを載せる架台の外観図である。
【
図10】本発明の実施の形態を示す切り削ぎ手道具の正面図である。
【
図11】本発明の実施の形態を示す切り削ぎ手道具の構成要素の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明でスライサーとは、長方形の板の長手方向の中ほどに1箇所に段差を設け、前記段差が段差のすき間を有し、一方の床面が他の床面よりも段差の間隔だけ低い床であって、前記高い方の床面の段差の縁に水平刃を低い方の床方向に向けて設けた水平刃付き床板である。この場合、スライスされたものが前記段差のすき間から板の下に出てくる。
【0015】
本発明ですりおろし器とは、長方形の板の表面に、多数の棘を棘先を上向きに林立させたおろし刃を設けた個所と、すりおろされたものが板の下に抜けるための穴を開けた個所とを、それぞれ複数設けた刃つき床板である。この場合、おろされたものは前記穴から板の下に出てくる。
【0016】
本発明の説明では、すりおろし器、スライサー等素材表面を切り取る又は削り取ることにより細かい小片を得る機能を切り削ぎ機能と総称することとし、また、おろし刃やスライス刃を切り削ぎ刃と総称することとする。
【0017】
本発明に使用される刃つき板は、切り削ぎができる刃を有する切り削ぎ加工用の板で、下記の板保持枠に保持できるような寸法であれば限定なく、市販品が利用できる。
本発明の板保持枠とは、その刃つき板を載せて保持することができる刃つき板保持手段である。
本発明の素材保持部とは、前記刃つき板保持枠に直交するように設けた、素材の上部を捕捉して保持する素材保持手段である。
本発明の架台とは、その素材保持部の昇降軌道を有する素材保持部支持手段と前記刃つき板保持枠の摺動軌道を有する刃つき板保持枠支持手段とを有する、素材保持部と刃つき板保持枠の支持手段である。
本発明の駆動手段とは、手動用の取手により前記刃つき板保持枠を摺動運動させるための駆動手段である。
【0018】
本発明は上記目的を達成するために、刃つき板と刃つき板保持枠と、素材の上部を剣山で捕捉する素材保持部と、刃つき板の摺動軌道を有する刃つき板支持手段と素材保持部の昇降軌道を有する素材保持部支持手段とを有する架台と、手動の把手を有し刃つき板を摺動運動させるための駆動手段と、を有する切り削ぎできる切り削ぎ手道具を構成している。
【0019】
本発明は、上記構成によって、素材および刃つき板に手を触れることなく、単に手を素材保持部にのせてもう一方の手で取手を操作するだけで、素材表面と削ぎ切り刃とを密着させ強く擦り合わせることを実現し、安全かつ楽々とすりおろしやスライスを得る手道具である。
【0020】
上記の構成要素の一つである素材保持部は、下向きの剣山と支持脚とを有しており、前記剣山により素材を突き刺して保持する。
【0021】
以下に、本発明の構成要素の動作を説明する。
【0022】
まず、素材を刃つき板の板面上に置き、素材保持部を手で押し下げることにより剣山で素材の上部を突き刺し保持する。
【0023】
次に、手を前記材料保持部の上に乗せ、もう一方の手で取手を上下に動かす操作を繰り返して、前記駆動手段により刃つき板を軌道上で往復移動させることにより、すりおろし或いはスライスされたものがすりおろし器或いはスライサーの板面のすき間又は穴から出てくる。
【0024】
上記のように、手を素材保持部の上に乗せ、もう一方の手で取手を上下に往復移動操作するだけで、すりおろし或いはスライスされたものを得ることを実現している。
【0025】
上記素材保持部は長い支持脚を有しており、架台に設けた支持脚ガイドに緩く差し込まれているので、剣山に保持された素材が切り削ぎ刃によって次第に切り削がれて目減りしていくと、素材保持部の長い支持脚が支持脚ガイド中に収納され下がっていき、素材保持部全体が下降していく。
【0026】
素材保持部全体の下降が進行することにより剣山の剣先が刃つき板の切り削ぎ刃の刃先に至近になると、前記支持脚の付け根が支持脚ガイド入口に突き当たってそれ以上の材料保持部の下降に歯止めが掛かり下降が安全に止まる。これにより、剣山で捕捉されているわずかな素材以外を残らず、すりおろしやスライスに切り削ぐことが可能となる。
【0027】
以上のように、本発明は、素材を切り削ぐまでの工程で人が安全に作業ができる切り削ぎ手道具を実現することにより、従来のやり方の欠点を解決した道具を提供する目的を達成している。
【実施例0028】
以下、本発明の実施例を
図1~
図11に基づいて説明する。
【0029】
図においては、1は素材保持部、2は刃つき板保持枠、3は架台、4は連結金具、5は駆動リンク、6は手動把手、7は刃つき板、8は切り削ぎ刃、9はすき間、10は支持脚、11は下向きの剣山、12は支持脚ガイド、13は回転ローラー、14は支点シャフト、15は支点穴、16は回転ローラーの軸、17は回転ローラー軸受け、18は抜き止めワッシャとスナップピン、19は取付けフック、20は受動ピン、21は駆動長穴である。
【0030】
まず、本発明の実施の形態を示す切り削ぎ手道具の組み立て方を説明する。
【0031】
先ず、刃つき板7を刃つき板保持枠2に搭載し、架台3の回転ローラー軸受け17に回転ローラーの軸16をのせ、前記架台3の回転ローラー13の上に、刃つき板7を搭載した前記保持枠2を乗せ、素材保持部1の支持脚10を架台3の支持脚ガイド12に差し込む。
【0032】
次に、連結金具4の両端にある取付けフック10を刃つき板保持枠2の枠の両端にそれぞれ引っ掛けて連結金具4を保持枠2に連結する。
【0033】
次に、駆動リンク5の駆動長穴21に前記連結金具4の受動ピン20を通して前記受動ピン20の軸に抜け止めワッシャとスナップピン18を嵌め、且つ前記駆動リンクの支点穴15に前記架台3の支点シャフト14を通して前記支点シャフト14の軸に抜け止めワッシャとスナップピン13を嵌めて、本発明の実施の形態を示す切り削ぎ手道具の組立を完了する。
【0034】
【0035】
最初に、素材を刃つき板7の板面上に置き、素材保持部1を手で押し下げることにより素材保持部1の下向き剣山11が素材の上部を突き刺し保持する。
【0036】
次に、手を前記素材保持部2に乗せ、もう一方の手で駆動リンク5の、
図11ではA点の位置にある、取手6を押し下げる操作をすると、駆動リンク5全体が架台3の支点シャフト14を中心として時計回りに回転するので駆動リンク5の駆動長穴21も時計回りに円弧軌道を描いて移動する。前記駆動長穴21が移動すると、受動ピン20が右方向に押されて長穴の中をスライドして移動し、それによって連結金具4全体が右方向に水平移動して、連結金具4の取付けフック19で連結された刃つき板保持枠2が架台3の回転ローラー13上の軌道を右方向に水平に移動する。この時、刃つき板保持枠2に搭載された刃つき板7の切り削ぎ刃8が、前記素材保持部1により保持されている素材表面を切り削ぎ、すりおろし或いはスライスされたものが板面のすき間7又は穴から下へ出て受皿に得られる。この移動は、刃つき板を搭載した保持枠が軌道の右端すなわち受動ピンが
図11のb点に到達した時に停止し、駆動リンクの手動用の取手6は、
図11のB点の位置に到達する。また、刃つき板保持枠2の右端は
図11のロ点に達する。
【0037】
次に、駆動リンク5の、
図11ではB点の位置にある取手6を引き上げる操作をすると、駆動リンク5全体が架台3の支点シャフト14を中心として反時計回りに回転するので、駆動リンク5の駆動長穴21も反時計回りに円弧軌道を描いて移動する。前記駆動長穴21が移動すると、受動ピン20が押されて長穴の中をスライドして左方向に移動し、それによって連結金具4全体が左方向に移動して、連結金具4の取付けフック19で連結された刃つき板保持枠2が架台3の回転ローラー13上の軌道を左方向に水平に移動する。この移動は、刃つき板保持枠2が軌道の左端、すなわち受動ピンが
図11、
図12のa点に到達したときに停止し、駆動リンクの手動用の取手6は
図11図のA点の位置に戻る。また、刃つき板保持枠2の右端は
図11のイ点に戻る。
【0038】
このようにして、手動用の取手6をA点-B点間で往復移動を繰り返すことにより刃つき板保持枠2がイ点-ロ点間で往復運動するので、素材が、刃つき板7によって繰返し切り削がれて、次第に少なくなっていくと、支持脚10が支持脚ガイド12の昇降軌道に収納されていき素材保持部1全体が下降していき、下向きの剣山11の剣先が刃つき板7の切り削ぎ刃3の刃先に至近になったとき、支持脚10の根元が前記支持脚ガイド12の入口の縁に突き当るので、それ以上の素材保持部1の下降が止まる。
【0039】
上記のように、素材を保持した素材保持部1の上を手でおさえ、もう一方の手で取手6を掴んで単に上下に往復移動させることにより、素材を無駄なく、すりおろしあるいはスライスし、切り削ぐことを安全かつ軽減された手労働で実現している。