特開 2024-6374 細胞培養装置及びそれを備えた細胞培養システム

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024006374

(43)【公開日】2024-01-17

(54)【発明の名称】細胞培養装置及びそれを備えた細胞培養システム

(51)【国際特許分類】

   C12M 3/00 20060101AFI20240110BHJP

   C12M 1/00 20060101ALI20240110BHJP

   C12M 1/02 20060101ALI20240110BHJP

   C12N 5/00 20060101ALN20240110BHJP

【ＦＩ】

C12M3/00 A

C12M1/00 D

C12M1/02 A

C12N5/00

【審査請求】未請求

【請求項の数】7

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022107191

(22)【出願日】2022-07-01

(71)【出願人】

【識別番号】516132301

【氏名又は名称】インテグリカルチャー株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000442

【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】落合 敏郎

(72)【発明者】

【氏名】金山 貴宜

(72)【発明者】

【氏名】川島 一公

【テーマコード（参考）】

4B029

4B065

【Ｆターム（参考）】

4B029AA02

4B029BB11

4B029BB12

4B029CC01

4B029CC02

4B029DB01

4B029GB03

4B029GB04

4B065AA88X

4B065AA90X

4B065BC09

4B065BC18

4B065BC26

4B065BC42

4B065CA41

(57)【要約】

【課題】簡単な構成で細胞の培養を効率化でき、かつ、様々な装置に組み付けて容易にシステム化が可能な細胞培養装置を提供する。
【解決手段】本発明は、細胞を培養する細胞培養装置（１００）であって、培養液（５０）を貯留する培養槽（１）と、培養槽（１）を高さ方向に仕切ると共に、培養液（５０）が通過可能な開口部（２３）を有する棚（２０）と、培養液（５０）を攪拌する攪拌手段（３０）と、を備え、棚（２０）は、細胞が付着する足場（４０）を載置可能であることを特徴とする。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

細胞を培養する細胞培養装置であって、
培養液を貯留する培養槽と、
前記培養槽を高さ方向に仕切ると共に、前記培養液が通過可能な開口部を有する棚と、
前記培養液を攪拌する攪拌手段と、を備え、
前記棚は、前記細胞が付着する足場を載置可能であることを特徴とする細胞培養装置。

【請求項2】

請求項１に記載の細胞培養装置において、
前記培養槽の内周面には、前記棚と係合して、前記棚を前記培養槽の底部から所定の高さ位置に保持する保持部が設けられることを特徴とする細胞培養装置。

【請求項3】

請求項１に記載の細胞培養装置において、
前記棚は、前記培養槽の底部と当接して、前記棚を前記底部から所定の高さ位置に保持する脚部を有することを特徴とする細胞培養装置。

【請求項4】

請求項１に記載の細胞培養装置において、
前記培養槽は、その上部を覆う蓋体を備え、
前記棚は、前記蓋体から吊り下げられて前記培養槽の底部から所定の高さ位置に保持されることを特徴とする細胞培養装置。

【請求項5】

請求項１～４の何れか１項に記載の細胞培養装置において、
前記攪拌手段は、回転により前記培養液を攪拌する攪拌部を有し、
前記攪拌部は、前記培養槽の前記棚で仕切られた空間のうち、前記棚より下方の前記空間に配置されることを特徴とする細胞培養装置。

【請求項6】

請求項１～４の何れか１項に記載の細胞培養装置において、
前記棚に振動を付加する振動手段を備えることを特徴とする細胞培養装置。

【請求項7】

請求項１に記載の細胞培養装置を複数備え、
複数の前記細胞培養装置は環状に接続されて、それぞれの前記細胞培養装置の間を前記培養液が循環可能であることを特徴とする細胞培養システム。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、細胞培養装置及び細胞培養装置を複数接続して成る細胞培養システムに関する。

【背景技術】

【0002】

近年、「持続可能な開発目標（ＳＤＧｓ）」の達成に向け、世界各国で真に持続可能な食料生産システムの開発が行われており、中でも「培養肉」に関する開発が広がりを見せている。また、本技術分野の背景技術として、例えば特許文献１には、第１のチャンバー及び第２のチャンバーを備えた細胞培養装置が記載されている。特許文献１において、第２のチャンバーは、例えばベロー形状で構成されており、第２のチャンバーが体積調整手段により伸縮することで、両チャンバー間を液体及び空気が流通可能な構成となっている。

【0003】

さらに、特許文献１の細胞培養装置は、第１のチャンバー内に、細胞付着及び生育のための生育基質手段を備えている。この生育基質手段は、第２のチャンバーが伸縮することで、酸素を受け、または培養培地中に浸漬されて、間欠的かつ周期的に、しかし間接的に、薄いガス／生育培地界面を介してガス環境に晒される。こうして、細胞の生育及び細胞生成物の生成が促進される。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特許第４４３０３１７号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、特許文献１に記載の細胞培養装置は、第２のチャンバーを伸縮させるための構造が複雑で大掛かりなため、コストが嵩むなどの課題があり、実用化の観点から見て、改善点が多々ある。

【0006】

本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、その目的は、簡単な構成で細胞の培養を効率化でき、かつ、様々な装置に組み付けて容易にシステム化が可能な細胞培養装置及びそれを備えた細胞培養システムを提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0007】

上記目的を達成するために、本発明の一態様は、細胞を培養する細胞培養装置であって、培養液を貯留する培養槽と、前記培養槽を高さ方向に仕切ると共に、前記培養液が通過可能な開口部を有する棚と、前記培養液を攪拌する攪拌手段と、を備え、前記棚は、前記細胞が付着する足場を載置可能であることを特徴とする。

【発明の効果】

【0008】

本発明によれば、簡単な構成で細胞の培養を効率化できる。さらに、本発明によれば、様々な装置に組付けて容易にシステム化が可能となる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】本発明の実施形態に係る細胞培養装置の縦断面を模式的に示した図。

【図2】本発明の実施形態に係る細胞培養装置の平面を模式的に示した図。

【図3】棚の詳細を示す平面図。

【図4】変形例１に係る細胞培養装置の縦断面を模式的に示した図。

【図5】変形例２に係る細胞培養装置の縦断面を模式的に示した図。

【図6】本発明の実施形態に係る細胞培養システムの構成図。

【発明を実施するための形態】

【0010】

以下、本発明の実施形態について、動物細胞を培養する場合を例に挙げて、図面を参照しながら説明する。

【0011】

（第１実施形態）
図１は、本発明の実施形態に係る細胞培養装置の縦断面を模式的に示した図であり、図２は、本発明の実施形態に係る細胞培養装置の平面を模式的に示した図である。図１及び図２に示すように、本実施形態に係る細胞培養装置１００は、培養槽１と、棚２０と、攪拌手段３０と、を備える。

【0012】

培養槽１は、胴体部３と底部４とにより形成された有底円筒状の容器と、胴体部３の上部を覆う円盤状の蓋体５と、を備える。培養槽１は、その内部に培養液５０を貯留する。培養槽１は、例えばステンレス鋼から成る。胴体部３の上部には径方向の外方に張り出したフランジ２が設けられており、このフランジ２に図示しないＯリング等のシール部材を介して円盤状の蓋体５が取り付けられる。これにより、培養槽１の内部が密閉される。なお、本実施形態において、フランジ２と蓋体５との固定には蝶ねじが用いられているが、固定方法はこれに限定されない。

【0013】

培養槽１の底部４には、ドレンである廃液ノズル８が設けられている。廃液ノズル８の下端部には径方向の外方に張り出したフランジ９が設けられており、このフランジ９に、Ｏリング等のシール部材を介してブラインドフランジ１０が取り付けられている。そのため、常態において、廃液ノズル８は、ブラインドフランジ１０により閉鎖されている。そして、ブラインドフランジ１０を取り外すことで、培養槽１内に貯留された培養液５０が排出される。勿論、ブラインドフランジ１０の代わりに仕切弁等の弁を設け、この弁を開閉することで、培養液５０を排出可能な構成としても良い。

【0014】

培養槽１の胴体部３には、細長い覗き窓７が上下方向に亘って設けられている。この覗き窓７は、例えば透明なガラス板から成り、覗き窓７を介して培養槽１の内部を視認可能である。例えば、使用者は、覗き窓７から培養液５０の液面を確認でき、あるいは、後述する足場４０の状態（動物細胞の成長状態）を目視観察できる。

【0015】

さらに、胴体部３の内周面の下部には、周方向に沿って同じ高さ位置に複数（例えば４つ）の突起（保持部）１２に設けられている。これら突起１２は、後述する棚２０を下方から支持できる程度の大きさで形成されている。つまり、突起１２は、棚２０の上下方向の位置を規制するためのストッパとして機能する。

【0016】

また、胴体部３の外周面の下部には、複数（例えば４つ）のレグ６が設けられている。培養槽１は、これらレグ６によって支持されている。なお、培養槽１が大型の場合には、レグ６の代わりにスカートを用いても良い。

【0017】

蓋体５について説明する。図２に示すように、周方向に沿って複数（例えば８つ）の取付穴５ａ～５ｈが設けられている。これら取付穴５ａ～５ｇには、各種センサや管類などが取り付けられている。図１に示すように、例えば取付穴５ａには、培養液５０の成分、温度、ｐｈ、タンパク質含有量などの所望の物理量を検出するためのセンサ１５が取り付けられる。また、取付穴５ｅには、培養液５０を供給するための培養液供給管１６が取り付けられる。

【0018】

これら取付穴５ａ～５ｇには、センサ１５、培養液供給管１６の他、例えば、サンプリング管、動物細胞供給管、通気プラグ、アルカリ供給管、酸素供給管などの管類や、培養液５０の状態を検出する各種センサなど、動物細胞を培養するために必要なセンサや管類を任意に取り付けることができる。また、蓋体５の中央部には、後述する攪拌手段３０のモータ３１が固定されている。

【0019】

次に、棚２０について説明する。棚２０は、後述する足場４０を載置可能な円盤状の部材である。棚２０は、４つの突起１２に支持されており、培養槽１の底部４から所定の高さ位置に保持されると共に、培養槽１の空間を高さ方向（上下方向）に２つに仕切る。なお、所定の高さ位置は、培養槽１の容積や培養液５０の量等を考慮して適宜決定できるが、概ね、培養槽１の底部４から胴体部３の長さの１／３程度の高さ位置であるのが実用上、好ましい。

【0020】

図３は、棚２０の詳細を示す平面図である。図３に示すように、棚２０は、外枠を形成するリング２１と、例えばステンレス鋼の線材を格子状に編んで形成された金網２２と、を備える。金網２２は、培養液５０を通過可能なサイズの多数の網目（開口部）２３を有している。金網２２のメッシュサイズ（つまり、網目の大きさ）は、足場４０の形状、足場４０に付着する動物細胞の大きさ、培養液５０の粘度や比重等に基づいて適宜決定される。本実施形態では、例えば１００～１５０メッシュ（１インチ辺りの網目の数が１００～１５０個）の金網２２が用いられている。

【0021】

また、金網２２には、後述する攪拌手段３０の回転軸３２を挿通可能な中心穴２５、センサ１５や培養液供給管１６などを挿通可能な小穴２４ａ～２４ｄが設けられている。

【0022】

棚２０には足場４０が載置される。足場４０は、動物細胞が付着するためのものであり、三次元多孔性の構造体から成る。本実施形態において、足場４０は食用である。足場４０は、例えば、テクスチャ加工タンパク質及び多糖類を含む。ここで、食用とは、体内に安全に摂取され得る組成物を指す。

【0023】

ここで、本実施形態に係る培養槽１と棚２０は、培養におけるコンタミ発生を防止するために、ガラスまたはステンレスの材質を用いことが好ましく、これにより後述する殺菌工程において装置を一体で殺菌することができる。

【0024】

次に、攪拌手段３０について説明する。攪拌手段３０は、培養液５０を攪拌するためのものであって、図１に示すように、駆動源であるモータ３１と、回転軸３２と、攪拌翼（攪拌部）３３と、を備える。即ち、本実施形態では、プロペラ式の攪拌手段３０が用いられている。

【0025】

モータ３１は、蓋体５に固定されている。モータ３１の出力軸と回転軸３２とは、図示しないカップリングを介して接続されている。回転軸３２の先端には、複数（例えば３つ）の攪拌翼３３が設けられている。モータ３１が回転すると、モータ３１の回転に従動して回転軸３２が回転し、３つの攪拌翼３３が回転軸３２を中心に水平方向に回転する。こうして、培養液５０が攪拌される。

【0026】

ここで、攪拌翼３３は、棚２０と底部４との間の空間に配置されている。そのため、攪拌翼３３が回転すると、培養槽１の下部側から徐々に培養液５０が攪拌されることとなる。なお、本実施形態において、モータ３１は正逆回転可能であり、図示しないコントローラからの制御信号に基づいて、所定の周期、かつ、所定の回転速度で正転または逆転する。勿論、モータ３１の回転方向は一方向であっても良い。

【0027】

（使用方法）
次に、細胞培養装置１００の使用方法について説明する。まず、培養槽１と、棚２０と、攪拌手段３０を一体とした状態で、１２０℃で３０分間加熱することで、細胞培養装置１００内の殺菌を行い、コンタミを除去する。

【0028】

次いで蓋体５を開けて、棚２０に多数の足場４０を載置した後、蓋体５を閉めて培養槽１を密閉状態にする。次いで、図示しないポンプを駆動して、培養液５０の液面が所定の位置に到達するまで、培養液５０を培養液供給管１６から培養槽１に供給する。そして、コントローラに予め記憶されたプログラムに従い、コントローラが攪拌手段３０のモータ３１を定期的に駆動する。こうして、培養液５０が攪拌され、動物細胞の培養が促進される。即ち、足場４０に多数の動物細胞が効率良く増殖する。

【0029】

以上説明した本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。

【0030】

即ち、本実施形態に係る細胞培養装置１００は、培養液５０を貯留する培養槽１と、培養槽１内に設けられた棚２０と、培養液５０を攪拌する攪拌手段３０と、を備えるだけの簡単な構成である。そのため、低コストで細胞培養装置１００を製造できる。つまり、低コストで動物細胞の培養効率が向上する。これにより、効率良く動物細胞が増殖すると共に培養上清を得ることができる。また、細胞培養装置１００自体の構成が簡単であるため、様々な装置に組み付けて容易に動物細胞の培養システムを構築できる。

【0031】

しかも、棚２０に足場４０を載置することで、動物細胞が足場４０に付着し易く、培養効率が高い。また、攪拌手段３０の攪拌翼３３は、棚２０の下方の空間に設けられているため、攪拌翼３３の回転による足場４０への影響を最小限に抑えることができる。

【0032】

この点について詳細に説明すると、攪拌翼３３が回転すると渦流が発生する。この渦流は、棚２０よりも下方の位置で発生し、棚２０（金網２２）の網目２３によって緩衝され、緩やかな流れとなって足場４０に向かう。そのため、足場４０に付着している動物細胞が剥離するのを防止できる。しかも、棚２０の下方で発生した培養液５０の渦流が、金網２２で緩衝されて緩やかに上昇するため、培養液５０に含まれる栄養素を足場４０に付着した動物細胞に万遍なく供給することができる。

【0033】

その結果、本実施形態によれば、培養肉の製造期間を大幅に短縮でき、ひいては、持続可能な開発目標（ＳＤＧｓ）の達成にも貢献する。

【0034】

なお、攪拌翼３３が棚２０の上方に位置している場合であっても、動物細胞の培養は十分促進されるものの、どうしても足場４０の上方で渦流が発生するため、攪拌翼３３が棚２０の下方に位置する場合と比べると、足場４０への動物細胞の付着効果は低くなる。よって、攪拌翼３３の位置は、棚２０の下方の方がより好ましい。また、攪拌手段３０が上下２つの攪拌翼３３を備え、一方の攪拌翼３３を棚２０の上方の空間に、他方の攪拌翼３３を下方の空間に、それぞれ配置する構成としても良い。

【0035】

また、本実施形態では覗き窓７を設けているため、培養槽１内の状態を容易に目視観察でき、使い勝手が良い。

【0036】

（変形例１）
次に、第１実施形態の変形例１について説明する。図４は、変形例１に係る細胞培養装置の縦断面を模式的に示した図である。図４に示すように、変形例１に係る細胞培養装置１００－１は、棚２０に複数（例えば４つ）の脚部２７を設けた点に特徴がある。この構成によれば、棚２０は培養槽１の底部４に４つの脚部２７によって自立した状態で所定の高さ位置に保持される。そのため、第１実施形態に示す突起１２が不要であり、培養槽１の構成を簡素化できる利点がある。また、棚２０の高さ位置を脚部２７によって任意に決めることができるため、棚２０の高さ位置の変更が容易となり、使い勝手が良い。

【0037】

（変形例２）
図５は、変形例２に係る細胞培養装置の縦断面を模式的に示した図である。図５に示すように、変形例２に係る細胞培養装置１００－２では、棚２０が吊下げ部材の一例であるチェーン６０を介して蓋体５に吊り下げられて、底部４から所定の高さ位置に保持された構成となっている点に特徴がある。この構成によれば、蓋体５を持ち上げれば、棚２０も一体的に引き上げられるため、棚２０の取出しが容易である。なお、棚２０を蓋体５に吊り下げる部材は、チェーンの他に、線状、紐状、棒状の部材などあらゆる吊下げ部材を用いることができる。

【0038】

（第２実施形態）
次に、本発明の実施形態に係る細胞培養システムについて説明する。図６は、本発明の実施形態に係る細胞培養システムの構成図である。図６に示す細胞培養システムは、例えば３つの細胞培養装置１００，２００，３００が、流路Ｌ１～Ｌ４を介して環状に接続して形成される。ここで、流路Ｌ１～Ｌ４は例えば管またはホースである。

【0039】

流路Ｌ３と流路Ｌ４との間にはポンプ６５が設けられている。ポンプ６５は、コントローラ７０と電気配線Ｅ４を介して接続されている。コントローラ７０からの制御指令に基づいてポンプ６５が駆動されると、流路Ｌ１～Ｌ４内を培養液が循環する。

【0040】

細胞培養装置１００と、細胞培養装置２００，３００とは構成自体は同じであるが、互いに異なる動物細胞が供給されている点が異なる。例えば、細胞培養装置１００には胎盤細胞が、細胞培養装置２００には肝臓細胞が、細胞培養装置３００には筋芽細胞が、それぞれ供給されている。なお、細胞培養装置１００，２００，３００のそれぞれに全て同じ動物細胞を供給しても良し、細胞培養装置１００，２００，３００の一部にのみ異なる動物細胞を供給しても良い。

【0041】

コントローラ７０は、ＣＰＵや記憶装置であるＲＯＭ及びＲＡＭ、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。ＲＯＭには制御プログラムが格納されており、ＣＰＵが制御プログラムを読み出して、種々の処理を実行する。細胞培養装置１００，２００，３００にそれぞれ取り付けられた各種センサは、コントローラ７０と電気配線Ｅ１～Ｅ３を介して電気的に接続される。コントローラ７０は、入力されたセンサデータに基づいて、例えばポンプ６５の回転速度や駆動時間等の演算を行い、ポンプ６５に制御指令を出力する。このように、コントローラ７０は、培養液の循環流量を制御する制御手段として機能する。

【0042】

この細胞培養システムによれば、特に異なる種類の動物細胞を効率良く培養できると共に有効成分が豊富な培養上清を得ることができる。

【0043】

なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。

【0044】

例えば、本発明は、動物由来の細胞以外の細胞（例えば植物由来の細胞など）を培養するための装置としても適用可能である。また、培養槽１が小型の場合には、攪拌手段３０として、例えば、マグネチックスターラーを用いても良い。この場合、構造を簡素化できる利点がある。

【0045】

また、棚２０は、金網２２の代わりに、多数の穴を設けたパンチングプレートを用いても良い。この場合の穴の大きさは、例えば直径１００ミクロン程度にすると良い。また、穴の形状は任意である。例えば、丸穴、角穴、長穴であって良い。また、スリットが多数設けられたプレートを棚２０として用いても良い。なお、複数の棚２０を培養槽１内に多段で設けても良い。この場合、各棚２０は、互いに異なる網目２３の大きさ（即ち、異なるメッシュサイズ）または穴径であっても良い。

【0046】

さらに、動物細胞をより効率良く培養するために、棚２０に直接的または間接的に微振動を付加する振動手段を設けるようにしても良い。ここで、微振動とは、足場４０に付着した動物細胞が剥離しない程度で、かつ動物細胞にストレスを与えない程度の弱い振動のことを指す。具体的な構成として、図６に示すように、棚２０に振動モータ８０を取り付け、コントローラ７０からの制御指令によって振動モータ８０を定期的に駆動する。こうすれば、多数の足場４０に振動が伝達され、足場４０と足場４０との間に滞留している培養液５０が流動的となるため、動物細胞に栄養素が行き渡りやすくなる。

【0047】

また、取付穴５ａ～５ｈから長尺棒８１を挿入し、長尺棒８１の先端部を棚２０に当接させる。そして、長尺棒８１に振動モータ８０からの振動を伝達して、間接的に棚２０に微振動を付加する構成としても良い。あるいは、棚２０を面内方向に僅かに揺動させる（スライドさせる）手段を設けても良い。

【符号の説明】

【0048】

１ 培養槽
２ フランジ
３ 胴体部
４ 底部
５ 蓋体
５ａ～５ｈ 取付穴
６ レグ
７ 覗き窓
８ 廃液ノズル
９ フランジ
１０ ブラインドフランジ
１２ 突起（保持部）
１５ センサ
１６ 培養液供給管
２０ 棚
２１ リング
２２ 金網
２３ 網目（開口部）
２４ａ～ｄ 小穴
２５ 中心穴
２７ 脚部
３０ 攪拌手段
３１ モータ
３２ 回転軸
３３ 攪拌翼（攪拌部）
４０ 足場
５０ 培養液
６０ チェーン
６５ ポンプ
７０ コントローラ
８０ 振動モータ（振動手段）
８１ 長尺棒
１００，２００，３００ 細胞培養装置
Ｅ１～Ｅ４ 電気配線
Ｌ１～Ｌ４ 流路

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】