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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063755
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】外用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20240502BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240502BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240502BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P17/14
A61K9/08
A61K9/06
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176320
(22)【出願日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2022171092
(32)【優先日】2022-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 小織
(72)【発明者】
【氏名】田中 大之
(72)【発明者】
【氏名】田川 大期
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 祐也
(72)【発明者】
【氏名】詫間 浩之
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD52
4C076FF17
4C086AA01
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA27
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA92
(57)【要約】
【課題】
本願発明は、くし通りがよく、ミノキシジルの吸収性も良好なミノキシジル含有外用液体医薬組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
すわわち、
1.(a)ミノキシジル、(b)(b1)多価アルコール(但し、1,3-ブチレングリコールを除く)、及び(b2)1,3-ブチレングリコール、(c)ベンジルアルコール、並びに(d)安息香酸を組み合わせた外用液体医薬組成物、又は
2.(a)ミノキシジル、(b)(b3)多価アルコール、(c)ベンジルアルコール、及び(d)安息香酸を組み合わせた外用液体医薬組成物(但し、1,3-ブチレングリコールを含まない)、である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ミノキシジル、
(b)(b1)多価アルコール(但し、1,3-ブチレングリコールを除く)、及び(b2)1,3-ブチレングリコール、
(c)ベンジルアルコール、並びに
(d)安息香酸を含有することを特徴とする外用液体医薬組成物。
【請求項2】
(a)ミノキシジル、
(b)(b3)多価アルコール、
(c)ベンジルアルコール、及び
(d)安息香酸を含有することを特徴とする外用液体医薬組成物(但し、1,3-ブチレングリコールを含まない)。
【請求項3】
リン酸を含まない、請求項1又は2に記載の外用液体医薬組成物。
【請求項4】
(e)粘稠剤を含む、請求項1又は2に記載の外用液体医薬組成物。
【請求項5】
(f)炭素数1~5の低級アルコールを含有する、請求項1又は2に記載の外用液体医薬組成物。
【請求項6】
液剤、ローション剤、トニック剤、又はゲル剤である、請求項1又は2に記載の外用液体医薬組成物。
【請求項7】
0.1~2mLの単回使用容器に収容されてなる、請求項1又は2に記載の外用液体医薬組成物。
【請求項8】
(g)パンテノールを含む、請求項1又は2に記載の外用液体医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミノキシジルを配合した外用液体医薬組成物に関する。
【0002】
ミノキシジルは化学名を6-(1-ピペリジニル)-2、4-ピリミジンジアミン-3-オキサイドと称し、育毛剤としての適応が知られており(特許文献1)、優れた育毛・発毛効果を発揮する薬剤として多数の報告がある。ミノキシジルを配合した育毛剤に求められる基本的な性能は、頭皮からのミノキシジルの吸収性に優れることである(特許文献2)。
一方、ミノキシジル含有ローション剤は、頭部に長期間にわたって毎日使用するものであるため、使用感においても優れたローション剤が求められている。
今までに、ミノキシジルとpH調節剤の両方を含有したローション剤は、くし通りが悪化することが報告されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4139619号明細書
【特許文献2】特開平11-349451号公報
【特許文献3】特開2020-105217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、pH調節剤であるリン酸を配合せずにミノキシジル含有製剤を製造したところ、くし通りが改善することを見出したが、ミノキシジルの吸収性が悪化することを発見した。よって、本願発明は、リン酸を配合しなくても、くし通りがよく、ミノキシジルの吸収性も良好なミノキシジル含有外用液体医薬組成物を提供することを目的とする。
また、本願発明の別の目的は、リン酸を配合しなくても、くし通りがよく、ミノキシジルの吸収性も良好であり、さらにパンテノールの安定性も良好なミノキシジル含有外用液体医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、
1.
(a)ミノキシジル、
(b)(b1)多価アルコール(但し、1,3-ブチレングリコールを除く)、及び(b2)1,3-ブチレングリコール、
(c)ベンジルアルコール、並びに
(d)安息香酸を組み合わせた外用液体医薬組成物、又は
2.
(a)ミノキシジル、
(b)(b3)多価アルコール、
(c)ベンジルアルコール、及び
(d)安息香酸を組み合わせた外用液体医薬組成物(但し、1,3-ブチレングリコールを含まない)は、意外にも、くし通りがよく、ミノキシジルの吸収性も良好となることを見出し、本発明を完成するに至った。
更に検討を進めたところ、上記1.2.にパンテノールを含有せしめた外用液体医薬組成物は、パンテノールの安定性が良好であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)(a)ミノキシジル、
(b)(b1)多価アルコール(但し、1,3-ブチレングリコールを除く)、及び(b2)1,3-ブチレングリコール、
(c)ベンジルアルコール、並びに
(d)安息香酸を含有することを特徴とする外用液体医薬組成物、
(2)(a)ミノキシジル、
(b)(b3)多価アルコール、
(c)ベンジルアルコール、及び
(d)安息香酸を含有することを特徴とする外用液体医薬組成物(但し、1,3-ブチレングリコールを含まない)、
(3)リン酸を含まない、(1)又は(2)に記載の外用液体医薬組成物、
(4)(e)粘稠剤を含む、(1)~(3)のいずれかに記載の外用液体医薬組成物、
(5)(f)炭素数1~5の低級アルコールを含有する、(1)~(4)のいずれかに記載の外用液体医薬組成物、
(6)液剤、ローション剤、トニック剤、又はゲル剤である、(1)~(5)のいずれかに記載の外用液体医薬組成物、
(7)0.1~2mLの単回使用容器に収容されてなる、(1)~(6)のいずれかに記載の外用液体医薬組成物、
(8)(g)パンテノールを含む、(1)~(7)のいずれかに記載の外用液体医薬組成物、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、くし通りがよく、ミノキシジルの吸収性が良好なミノキシジル含有外用液体医薬組成物を提供することが可能になった。また、パンテノールの安定性が良好なミノキシジル含有外用液体医薬組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の外用液体医薬組成物において用いるミノキシジルは、通常医薬品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。また、本発明に用いるミノキシジルの含有量は、外用液体医薬組成物全体に対して、くし通りの課題が大きくなる1w/v%以上である。具体的には1~15w/v%が好ましく、より好ましくは5~10w/v%である。
【0009】
本発明の外用液体医薬組成物中、(b1)多価アルコール(但し、1,3-ブチレングリコールを除く)と(b2)1,3-ブチレングリコールを併用すると、ミノキシジルの吸収性が良好となることを見出した。(b1)多価アルコール(但し、1,3-ブチレングリコールを除く)は、例えば、グリセリン、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられ、通常医薬品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。このうち好ましいのは、グリセリン、プロピレングリコールであり、より好ましいのはグリセリンである。これらを1種又は2種以上組み合わせてもよい。(b1)多価アルコール(但し、1,3-ブチレングリコールを除く)と(b2)1,3-ブチレングリコールの含有量の比率は、本発明の外用液体医薬組成物中好ましくは1:4~4:1、より好ましくは1:3~3:1、より好ましくは1:2~2:1である。
【0010】
本発明の(b1)多価アルコール(但し、1,3-ブチレングリコールを除く)の含有量は、本発明の効果の点から本発明の外用液体医薬組成物中好ましくは1~30w/v%であり、より好ましくは5~15w/v%である。
【0011】
本発明の(b2)1,3-ブチレングリコールは、通常医薬品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。本発明において(b2)1,3-ブチレングリコールの含有量は、本発明の効果の点から本発明の外用液体医薬組成物中好ましくは1~30w/v%であり、より好ましくは5~15w/v%である。
また、(b1)多価アルコール(但し、1,3-ブチレングリコールを除く)と(b2)1,3-ブチレングリコールの合計量は、本発明の外用液体医薬組成物中好ましくは3w/v%以上、より好ましくは5w/v%以上、より好ましくは8w/v%以上、より好ましくは10w/v%以上であり、上限は本発明の効果の点から、べたつきが少なくなるなどの使用感も考慮すると30w/v%以下が好ましい。
【0012】
さらに検討を進めた結果、1,3-ブチレングリコールを配合せずに、他の多価アルコールを配合した場合でも、ミノキシジルの吸収性が良好となることが分かった。
本発明の外用液体医薬組成物に1,3-ブチレングリコールを配合しない場合に配合できる(b3)多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられ、通常医薬品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。このうち好ましいのは、グリセリン、プロピレングリコールであり、より好ましいのはグリセリンである。これらを1種又は2種以上組み合わせてもよい。(b3)多価アルコールの含有量は、本発明の外用液体医薬組成物中好ましくは3w/v%以上、より好ましくは5w/v%以上、より好ましくは8w/v%以上、より好ましくは10w/v%以上であり、上限は本発明の効果の点から、べたつきが少なくなるなどの使用感も考慮すると30w/v%以下が好ましい。
【0013】
本発明の(c)ベンジルアルコールは、通常医薬品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。本発明においてベンジルアルコールの含有量は、本発明の効果の点から本発明の外用液体医薬組成物中好ましくは0.01~10w/v%であり、より好ましくは0.5~5w/v%である。
【0014】
本発明の(d)安息香酸は、通常医薬品に安定(化)剤、緩衝剤、防腐剤、又は保存剤として用いられるものである。本発明において安息香酸の含有量は、本発明の効果の点から本発明の外用液体医薬組成物中好ましくは0.01~5w/v%であり、より好ましくは0.05~1w/v%である。
【0015】
本発明の(e)粘稠剤とは、液体の粘性を高めるために添加する添加物の総称であり、例えば ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体またはペクチン等が挙げられる。粘稠剤の含有量は、製剤中0.01~5w/v%が好ましい。
【0016】
本発明の(f)低級アルコールは、炭素数1~5のものが好ましく、例えばエタノールやイソプロパノールなどが好ましい。低級アルコールは2種以上を組み合わせて使用しても良い。本発明の外用液体医薬組成物中の低級アルコールの含有量は、全製剤中20w/v%以上が好ましく、より好ましくは30w/v%以上であり、更に好ましくは35w/v%以上であり、更に好ましくは50w/v%以上である。上限は80w/v%が好ましい。
【0017】
本発明の(g)パンテノールの含有量は、本発明の効果の点から本発明の外用液体医薬組成物中、好ましくは0.1~3w/v%であり、より好ましくは0.5~1.5w/v%以上であり、更に好ましくは0.8~1.3w/v%である。また、ミノキシジル1質量部に対して0.1~0.3質量部が好ましい。(a)ミノキシジル、(b)(b1)多価アルコール(但し、1,3-ブチレングリコールを除く)、及び(b2)1,3-ブチレングリコール、(c)ベンジルアルコール、並びに(d)安息香酸を含有することを特徴とする外用液体医薬組成物、又は、(a)ミノキシジル、(b)(b3)多価アルコール、(c)ベンジルアルコール、及び(d)安息香酸を含有することを特徴とする外用液体医薬組成物(但し、1,3-ブチレングリコールを含まない)に、パンテノールを配合した外用液体医薬組成物は、パンテノールの安定性が良好である。
【0018】
本発明の外用液体医薬組成物中における水の含有量は、本発明の効果の点から本発明の外用液体医薬組成物中1~75w/w%が好ましく、より好ましくは5~50w/w%であり、更に好ましくは8~30w/w%、最も好ましくは15~30w/w%である。本発明の外用液体医薬組成物中の水の含有量の測定は、カール・フィッシャー法により行うことができる。
【0019】
本発明の外用液体医薬組成物は、本願発明の効果の点からリン酸を含まないことが好ましい。
【0020】
本発明の外用液体医薬組成物は、更に必要により界面活性剤を配合することができる。しかしながら、界面活性剤の添加は、使用感やミノキシジルの皮膚吸収に影響を与える可能性があるため、実質的に界面活性剤を含まないものとすることが好ましい。
本発明の外用液体医薬組成物のpHは、5~8、より好ましくは5~7が好ましい。
【0021】
本発明の外用液体医薬組成物は、上記した各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要により活性成分や補助成分を加えることができる。本発明の外用液体医薬組成物に添加、配合することが好ましい薬効成分としては、メントール、ビタミンEアセテート、ヒノキチオール、塩酸ピリドキシン、グリチルレチン酸、塩酸ジフェンヒドラミン、パントテニールエチルエーテル、レチノールパルミチン酸エステル、ニコチン酸アミドから成る群より選ばれた1種又は2種以上の成分が挙げられる。これらの添加量には、特に制約はなく、使用感やミノキシジルの安定性又は溶剤系組成等を考慮しながら実験的に定めることができる。
【0022】
本発明の外用医薬組成物においては、上記した成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、一般の外用剤に用いられる種々の活性成分や補助成分を配合することができる。例えば、賦形剤、育毛成分(6-ベンジルアミノプリン、アデノシン、ペンタデカン酸グリセリド、何首鳥等)、血管拡張剤(塩化カルプロニウム、ニコチン酸ベンジル、センブリ抽出液、オタネニンジンエキス、チクセツニンジンチンキ、トウガラシチンキ等)、抗ヒスタミン剤(塩酸イソチペンジル等)、抗炎症剤(グアイアズレン等)、角質溶解剤(サリチル酸等)、殺菌剤(グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、第4級アンモニウム塩、ピロクトンオラミン等)、保湿剤(ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸等)、各種動植物(イチイ、ボタンピ、カンゾウ、オトギリソウ、附子、ビワ、カワラヨモギ、コンフリー、アシタバ、サフラン、サンシシ、ローズマリー、セージ、モッコウ、セイモッコウ、ホップ、プラセンタ、ノコギリヤシ、パンプキンシード等)の抽出物、ビタミン類(アスコルビン酸、硝酸チアミン、シアノコバラミン、ビオチン等)、抗酸化剤(ジブチルヒドロキシトルエン、ピロ亜硫酸ナトリウム、トコフェロール、エデト酸ナトリウム、アスコルビン酸、イソプロピルガレート等)、溶解補助剤(アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、各種植物油、各種動物油、アルキルグリセリルエーテル、炭化水素類等)、pH調節剤(クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸などの有機酸や、塩酸、硫酸などの無機酸)、代謝賦活剤、ゲル化剤、粘着剤、香料、清涼化剤(ハッカ油、カンフル等)、染料等の通常使用される成分を配合することができる。
【0023】
また、本発明の外用液体医薬組成物は、液剤、ローション剤、トニック剤、液剤にゲル化剤で粘性を付与したゲル剤、又は原液と噴射剤で構成されるエアゾール剤が好ましく、より好ましくは液剤、ローション剤、トニック剤である。
【0024】
本発明の外用液体医薬組成物の調製は、常法に従い、上記各成分を含有することにより調製される。
【0025】
かくして得られる本発明の外用液体医薬組成物は、頭髪用剤、睫毛用剤、眉毛用剤等の皮膚適用製剤等として使用することができる。
【0026】
本発明の外用液体医薬組成物を収容する容器は特に限定されず、例えばボトル容器、エアゾール容器、アルミピロー容器(特開2022-19611公報を参照)などが挙げられる。
ボトル容器の材質としては、例えば、PET(ポチエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、ガラスなどが挙がられるが、好ましくはPETである。また、ボトル容器は複数回の使用量が収容される容器でもよいし、1回の使用量が収容される容器でもよい。複数回の使用量が収容される容器の場合、定量抽出型の容器が好ましく、塗布部位の材質はポリエチレン及びポリプロピレンが好ましい。
エアゾール容器としては、エアゾールの内圧に耐える耐圧性と、内容物が洩れない気密性を有していることが必要である。法規で規定される耐圧性能(1.3MPaで変形せず、1.5MPaで破壊されないこと)が維持されていれば、素材は、アルミニウム、ガラス、ブリキ、合成樹脂のいずれであってもよい。ブリキ容器、アルミニウム容器を用いる場合には、腐食防止のために樹脂による表面コートを行うことができるが、汎用性の観点からアルミニウム容器が好ましい。また、本発明のエアゾール剤に用いる容器は、耐圧容器の他、バルブ、ボタン、スパウト、キャップ等が、公知のエアゾール容器と同様に備わっているものが好ましい。
また、アルミピロー容器としては、1回の使用量が収容された包装用材料によって構成されるものが好ましく、当該包装用材料は、外用液体医薬組成物と接する内層及び外用液体医薬組成物と接しない層(外層、中間層等)を含む、二層以上の層を含む多層構造を有するものが好ましい。
【0027】
ボトル容器及びアルミピロー容器において、1回の使用量が収容された容器の容量は、通常0.1mL以上、好ましくは0.5mL以上、より好ましくは0.8mL以上、最も好ましくは0.8mL超であり、通常2mL以下、好ましくは2mL未満、より好ましくは1.5mL以下、最も好ましくは1.2mL以下である。1mL±0.1mLであることが特に好ましい。また、1回の使用量が収容される外用液体医薬組成物の量は特に限定されないが、通常0.1~2mLの範囲内であり、例えば、0.5~2mLであることが好ましく、0.5~1.5mLであることがより好ましく、0.8~1.2mLであることが更に好ましく、1mL±0.1mLであることが特に好ましい。
【0028】
以下に、実施例、比較例、参考例、及び試験例を記載し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら制約されるものではない。
【実施例0029】
(実施例1)
ミノキシジル5g、1,3-ブチレングリコール10g、グリセリン11.8g、エタノール53g、ベンジルアルコール3g、安息香酸0.3g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0030】
(参考例1)
ミノキシジル5g、1,3-ブチレングリコール10g、エタノール60g、リン酸0.5mL、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0031】
(比較例1)
ミノキシジル5g、1,3-ブチレングリコール10g、グリセリン11.8g、エタノール60g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0032】
(比較例2)
ミノキシジル5g、1,3-ブチレングリコール10g、グリセリン11.8g、エタノール53g、ベンジルアルコール3g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0033】
(比較例3)
ミノキシジル5g、1,3-ブチレングリコール10g、グリセリン11.8g、エタノール53g、安息香酸0.3g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0034】
(参考例2)
ミノキシジル5g、1,3-ブチレングリコール10g、エタノール60g、リン酸0.5mL、ジブチルヒドロキシトルエン0.05g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0035】
(実施例2)
ミノキシジル5g、1,3-ブチレングリコール10g、グリセリン11.8g、エタノール53g、ベンジルアルコール1.5g、安息香酸0.3g、ヒドロキシプロピルセルロース0.2g、ジブチルヒドロキシトルエン0.5g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0036】
(比較例4)
ミノキシジル5g、1,3-ブチレングリコール10g、グリセリン11.8g、エタノール53g、安息香酸0.3g、ヒドロキシプロピルセルロース0.2g、ジブチルヒドロキシトルエン0.5g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0037】
(ミノキシジル皮膚透過性評価-1)
実施例1、参考例1、比較例1~比較例3の各試験液について、ユカタンマイクロピッグ背部摘出皮膚を用いた皮膚透過性試験を実施した。試験装置はディフュージョンセルアレイシステム(イントロテック社)の各ウェルにレセプターとして0.1mg/mLストレプトマイシン硫酸塩-リン酸緩衝液を充填し、ユカタンマイクロピッグの背部摘出皮膚(10cm×3cm)を設置した。その後、各セルに、実施例1、参考例1、比較例1~比較例3に記載の各試験液3.9μLを塗布し、32℃200rpmで24時間攪拌した。24時間後、レセプター液全量を回収しレセプター液中のミノキシジル濃度を高速液体クロマトグラフィーにて測定し、24時間後の参考例1に対するミノキシジル皮膚透過比を求めた。
算出した結果は、表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
(くし通り評価)
実施例1、参考例1、及び比較例1の各試験液について、毛束サンプル(中国人毛、ビューラックス社)を用いたくし通り評価を実施した。乾燥した毛束に、製剤を0.1mL/20cm2(4cm×5cm)で塗布し、製剤塗布から約24時間風乾後に、RZ-2型 フォースゲージを用いて、くし通り(最大荷重)を評価した。
算出した結果は、表2に示す。
【0040】
【表2】
リン酸を配合したミノキシジル含有製剤(参考例1)は、皮膚透過性は良いものの、くし通りが悪かった。参考例1からリン酸を除きグリセリンを配合した比較例1では、くし通りは改善したもののミノキシジルの皮膚透過量が低かった。
本願発明のベンジルアルコールと安息香酸を配合した実施例1では、皮膚透過量が参考例1と同程度まで改善した。安息香酸を含まない比較例2、ベンジルアルコールを含まない比較例3ではミノキシジルの皮膚透過量が低かった。
【0041】
(ミノキシジル皮膚透過性評価-2)
実施例2、参考例2、比較例4の各試験液について、ユカタンマイクロピッグ背部摘出皮膚を用いた皮膚透過性試験を実施した。試験装置はディフュージョンセルアレイシステム(イントロテック社)の各ウェルにレセプターとして0.1mg/mLストレプトマイシン硫酸塩-リン酸緩衝液を充填し、ユカタンマイクロピッグの背部摘出皮膚(10cm×3cm)を設置した。その後、各セルに、実施例2、参考例2、比較例4に記載の各試験液3.9μLを塗布し、32℃200rpmで24時間攪拌した。24時間後、レセプター液全量を回収しレセプター液中のミノキシジル濃度を高速液体クロマトグラフィーにて測定し、24時間後の参考例2に対するミノキシジル皮膚透過比を求めた。
算出した結果は、表3に示す。
【0042】
【表3】
参考例2に対してリン酸を除きグリセリン及び安息香酸を配合した比較例4では、皮膚透過比が低かった。ベンジルアルコールと安息香酸を配合した実施例2では皮膚透過量が参考例2と同程度以上まで改善した。
【0043】
(実施例3)
ミノキシジル5g、1,3-ブチレングリコール10g、グリセリン11.8g、エタノール53g、ベンジルアルコール1.5g、安息香酸0.5g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0044】
(実施例4)
ミノキシジル7.5g、1,3-ブチレングリコール10g、グリセリン11.8g、エタノール53g、ベンジルアルコール1.5g、安息香酸0.5g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0045】
(実施例5)
ミノキシジル5g、1,3-ブチレングリコール10g、プロピレングリコール10g、エタノール53g、ベンジルアルコール3g、安息香酸0.3g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0046】
(実施例6)
ミノキシジル5g、1,3-ブチレングリコール10g、ジプロピレングリコール10g、エタノール53g、ベンジルアルコール3g、安息香酸0.3g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0047】
(実施例7)
ミノキシジル5g、グリセリン21.8g、エタノール53g、ベンジルアルコール3g、安息香酸0.3g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0048】
(参考例3)
ミノキシジル5g、1,3-ブチレングリコール10g、エタノール60g、リン酸0.5mL、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0049】
(比較例5)
ミノキシジル5g、1,3-ブチレングリコール10g、グリセリン11.8g、エタノール53g、ベンジルアルコール1.5g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0050】
(比較例6)
ミノキシジル5g、1,3-ブチレングリコール10g、グリセリン11.8g、エタノール53g、安息香酸0.5g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0051】
(比較例7)
ミノキシジル5g、1,3-ブチレングリコール20g、エタノール53g、ベンジルアルコール3g、安息香酸0.3g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0052】
(ミノキシジル皮膚透過性評価-3)
実施例3~実施例7、参考例3、比較例5~比較例7の各試験液について、ユカタンマイクロピッグ背部摘出皮膚を用いた皮膚透過性試験を実施した。試験装置はディフュージョンセルアレイシステム(イントロテック社)の各ウェルにレセプターとして0.1mg/mLストレプトマイシン硫酸塩-リン酸緩衝液を充填し、ユカタンマイクロピッグの背部摘出皮膚(10cm×3cm)を設置した。その後、各セルに、実施例3~実施例7、参考例3、比較例5~比較例7に記載の各試験液3.9μLを塗布し、32℃200rpmで24時間攪拌した。24時間後、レセプター液全量を回収しレセプター液中のミノキシジル濃度を高速液体クロマトグラフィーにて測定し、24時間後の参考例3に対するミノキシジル皮膚透過比を求めた。
算出した結果は、表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
(くし通り評価)
実施例3~実施例7、参考例3、比較例5~比較例7の各試験液について、毛束サンプル(中国人毛、ビューラックス社)を用いたくし通り評価を実施した。乾燥した毛束に、製剤を0.1mL/20cm2(4cm×5cm)で塗布し、製剤塗布から約24時間風乾後に、RZ-2型 フォースゲージを用いて、くし通り(最大荷重)を評価した。
算出した結果は、表5に示す。
【0055】
【表5】
【0056】
リン酸を配合したミノキシジル含有製剤(参考例3)は、皮膚透過性は良いものの、くし通りが悪かった。
本願発明のベンジルアルコールと安息香酸を配合した実施例3及び実施例4では、皮膚透過量が参考例3と同程度まで改善した。安息香酸を含まない比較例5、ベンジルアルコールを含まない比較例6ではミノキシジルの皮膚透過量が低かった。
また、本願発明のベンジルアルコール、安息香酸、1,3-ブチレングリコール及びプロピレングリコールを配合した実施例5及びベンジルアルコール、安息香酸、1,3-ブチレングリコール及びジプロピレングリコールを配合した実施例6では、皮膚透過量が参考例3と同程度まで改善した。ベンジルアルコール、安息香酸、グリセリンを配合し、1,3-ブチレングリコールを含まない実施例7についても皮膚透過量が参考例3と同程度まで改善した。一方、ベンジルアルコール、安息香酸、1,3-ブチレングリコールを配合した比較例7ではミノキシジルの皮膚透過量が低かった。
【0057】
(実施例8)
ミノキシジル5g、パンテノール1g、1,3-ブチレングリコール10g、グリセリン11.8g、エタノール53g、ベンジルアルコール3g、安息香酸0.3g、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0058】
(比較例8)
ミノキシジル5g、パンテノール1g、1,3-ブチレングリコール10g、エタノール60g、リン酸0.5mL、精製水で全量を100mLとし、撹拌溶解して外用液体医薬組成物を得た。
【0059】
(パンテノール含量の評価)
実施例8及び比較例8に関し、試験開始時及び65℃条件下14日経過後のパンテノール含量をHPLCにより測定した。下記の式に従い、パンテノールの含有量を算出した。その結果を表6に示す。
パンテノール含量(%)=(65℃条件下14日経過後のパンテノール含量/試験開始時のパンテノール含量)×100
【0060】
【表6】
【0061】
比較例8ではパンテノールの含有量が90%を下回り、商品性に問題があると判断された。一方、実施例8の製剤はパンテノールの含量が低下せず、商品性に問題ないと判断された。
【0062】
製剤例
以下表7に、処方例-1~処方例-13を示す。これらは表7に示した各容器に適量収容することができる。
【0063】
【表7】
容器A:ボトル容器(材質:ポリエチレンテレフタレート、容量60mL)、計量注出型塗布部位(材質、ポリエチレン及びポリプロピレン)、複数回使用型
容器B:ボトル容器(材質:ポリプロピレン、容量60mL)、計量注出型塗布部位(材質、ポリエチレン及びポリプロピレン)、複数回使用型
容器C:アルミピロー容器(積層フィルム,最内層材質:ポリエチレン、容量1mL)、単回使用型
容器D:アルミピロー容器(積層フィルム,最内層材質:ポリエチレンテレフタレート、容量1mL)、単回使用型
容器E:アルミピロー容器(積層フィルム,最内層材質:環状ポリオレフィン、容量1mL)、単回使用型
容器F:ボトル容器(材質:ポリエチレンテレフタレート、容量1mL)、キャップ(材質、ポリプロピレン)、単回使用型
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明により、くし通りがよく、ミノキシジルの吸収性が良好なミノキシジル含有外用液体医薬組成物を提供することが可能になった。