(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063757
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】チーズ様食品
(51)【国際特許分類】
A23C 20/00 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
A23C20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023178749
(22)【出願日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2022171370
(32)【優先日】2022-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】佐野 文彦
(72)【発明者】
【氏名】砂田 美和
(72)【発明者】
【氏名】石田 光雄
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC03
4B001AC15
4B001BC02
4B001BC07
4B001EC04
4B001EC99
(57)【要約】
【課題】本来のチーズに近い加熱溶融性、シュレッド適性、および糸曳き性を有するとともに、製造や加工に適したチーズ様食品を提供する。
【解決手段】澱粉、油脂、および水分を含み、上記澱粉として酸処理ワキシー種澱粉を含み、上記油脂が前記チーズ様食品全質量に対し30質量%以下である、チーズ様食品
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チーズ様食品であって、
澱粉、油脂、および水分を含み、
前記澱粉として酸処理ワキシー種澱粉を含み、
前記油脂が前記チーズ様食品全質量に対し30質量%以下である、前記チーズ様食品。
【請求項2】
前記酸処理ワキシー種澱粉が、ワキシーコーンスターチの酸処理澱粉である、請求項1に記載のチーズ様食品。
【請求項3】
前記酸処理ワキシー種澱粉が、ワキシータピオカ澱粉またはワキシーライススターチの酸処理澱粉である、請求項1に記載のチーズ様食品。
【請求項4】
前記酸処理ワキシー種澱粉が前記チーズ様食品全質量に対し15質量%以上である、請求項1に記載のチーズ様食品。
【請求項5】
酸処理ワキシー種澱粉のRVA95℃最低粘度が25mPa・s~800mPa・sである、請求項1に記載のチーズ様食品。
【請求項6】
前記澱粉としてさらにヒドロキシプロピル化澱粉を含む、請求項1に記載のチーズ様食品。
【請求項7】
前記ヒドロキシプロピル化澱粉がヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉である、請求項6に記載のチーズ様食品。
【請求項8】
オクテニルコハク酸α化澱粉を含まない、請求項1に記載のチーズ様食品。
【請求項9】
前記油脂がココナッツオイルおよびパーム油から選択される、請求項1に記載のチーズ様食品。
【請求項10】
乳タンパク質の含有量が0.1質量%以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載のチーズ様食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チーズ様食品に関する。
【背景技術】
【0002】
チーズは、乳などを凝固させた凝乳からホエイを部分的に排除し、必要に応じて熟成することで得られるナチュラルチーズと、ナチュラルチーズを粉砕し、加熱溶融し、乳化することで得られるプロセスチーズとに大別される。また、加熱用チーズとして、加熱により溶融し糸曳性が生じるチーズが市販されており、ピザやグラタンに用いられる。
【0003】
近年、チーズの需要は増加傾向にある。特に、健康志向の高まりやコスト削減の観点から、乳脂肪源である原料チーズの使用量の少ない、あるいは原料チーズを使用しない、チーズに類似した食品(以下、チーズ様食品ともいう)の製造が検討されている。チーズ様食品の原料としては、従来から澱粉および油脂が使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、酸処理澱粉を5~20重量%及び、上昇融点が20~50℃である油脂を含有し、蛋白質含量が8重量%以下であり、全油脂含量が20~40重量%であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが500g~2000g/19.6mm2(直径5mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、不動工業株式会社製)であり、200℃で5分間の加熱によりペースト状となる加熱溶融性を有するチップ状の成形チーズ様食品が記載されている。特許文献2には、酸処理澱粉3~20重量%及びSFC(固体脂含量)が10℃で45%以上かつ20℃で20%以上である油脂を15~45重量%含有し、蛋白質含量が10重量%以下であるチーズ様食品が記載されている。特許文献3には、乳由来タンパク質含量が0.1質量%以下であって、酸化デンプンを15~30質量%、ヒドロキシプロピルデンプンを2~8質量%含み、それらの総量は加工食品の総質量の20~35質量%であり、酸化デンプンとヒドロキシプロピルデンプンの含有比が15:1~2:1であり、上昇融点30℃以上の油脂を10~40質量%、及び水を含有し、酸化デンプン総量中のアミロース含量が0.1~23質量%で、実質的に乳由来タンパク質を含有せずとも加熱時に曳糸性を有するチーズ様加工食品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6225616号
【特許文献2】特許第6287828号
【特許文献3】特許第6190556号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、チーズ様食品として、本来のチーズに近い加熱溶融性、シュレッド適性、および糸曳き性を有するとともに、製造や加工に適したチーズ様食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題の解決のため、従来からチーズ様食品の原料として使用されている澱粉について鋭意検討した結果、酸処理したワキシー種澱粉を使用することにより本来のチーズに近い特性を有するとともに、製造や加工に適した粘度を有するチーズ様食品を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のようなチーズ様食品を提供するものである。
【0008】
<1>チーズ様食品であって、
澱粉、油脂、および水分を含み、
上記澱粉として酸処理ワキシー種澱粉を含み、
上記油脂が上記チーズ様食品全質量に対し30質量%以下である、上記チーズ様食品。
<2>上記酸処理ワキシー種澱粉が、ワキシーコーンスターチの酸処理澱粉である、<1>に記載のチーズ様食品。
<3>前記酸処理ワキシー種澱粉が、ワキシータピオカ澱粉またはワキシーライススターチの酸処理澱粉である、<1>に記載のチーズ様食品。
<4>上記酸処理ワキシー種澱粉が上記チーズ様食品全質量に対し15質量%以上である、<1>~<3>のいずれかに記載のチーズ様食品。
<5>酸処理ワキシー種澱粉のRVA95℃最低粘度が25mPa・s~800mPa・sである、<1>~<4>のいずれかに記載のチーズ様食品。
<6>上記澱粉としてさらにヒドロキシプロピル化澱粉を含む、<1>~<5>のいずれかに記載のチーズ様食品。
<7>上記ヒドロキシプロピル化澱粉がヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉である、<6>に記載のチーズ様食品。
<8>オクテニルコハク酸α化澱粉を含まない、<1>~<7>のいずれかに記載のチーズ様食品。
<9>上記油脂がココナッツオイルおよびパーム油から選択される、<1>~<8>のいずれかに記載のチーズ様食品。
<10>乳タンパク質の含有量が0.1質量%以下である、<1>~<9>のいずれかに記載のチーズ様食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、チーズ様食品として本来のチーズに近い加熱溶融性、シュレッド適性、および糸曳き性を有するとともに、製造や加工に適した粘度を有するチーズ様食品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例2、4、および比較例2~4で用いた酸処理澱粉のRVA粘度グラフを示す図である。
【
図2】実施例2、10、11、および比較例5で用いた酸処理澱粉のRVA粘度グラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において澱粉はスターチということもある。
【0012】
<チーズ様食品>
本発明は、チーズ様食品にかかるものである。チーズ様食品は、イミテーションチーズ、アナログチーズ、チーズレプリカなどと称されることもある。チーズ様食品はチーズの代用品として使用することができる。本明細書において、チーズ様食品とは、脂肪源である原料チーズの含有量が少ないか、または原料チーズを実質的に含んでいない、乳チーズに似せた類似食品を意味する。原料チーズとは、チーズ様食品の原料として添加されるチーズである。ここで、チーズは、乳(牛乳、羊乳、山羊乳など)を凝固させた凝乳からホエイを部分的に排除し、必要に応じて熟成することで得られるナチュラルチーズ、またはナチュラルチーズを粉砕し、加熱溶融し、乳化することで得られるプロセスチーズである。本発明のチーズ様食品は原料としてチーズを配合せずに製造されるチーズ様食品とすることができる。本発明のチーズ様食品は、原料チーズの含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、原料チーズの含有量が0.05質量%以下であることがより好ましい。
【0013】
本発明のチーズ様食品は乳タンパク質を含んでいても含んでいなくてもよいが、含まないものであることが好ましい。具体的には、本発明のチーズ様食品の全質量に対して乳タンパク質の含有量は0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることが好ましい。乳タンパク質には、原料チーズ由来の乳タンパク質およびそれ以外の乳タンパク質が含まれる。原料チーズ由来の乳タンパク質以外の乳タンパク質としては、例えば、脱脂粉乳やスキムミルク、ホエーパウダーなどに含まれている乳タンパク質、MPC(乳タンパク質濃縮物)、マイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)、およびレンネットカゼインなどが挙げられる。乳タンパク質を含まないものとし、さらに任意成分として他の動物に由来する成分を加えないことにより、本発明のチーズ様食品はビーガン仕様のチーズ様食品とすることができる。ここで、「ビーガン」は動物性食品を一切摂取しない完全菜食主義者のことを意味する。
【0014】
本発明のチーズ様食品は澱粉、油脂、および水分を含む。
【0015】
<澱粉>
[酸処理ワキシー種澱粉]
本発明のチーズ様食品は澱粉として、少なくとも酸処理ワキシー種澱粉を含む。
ワキシー種とはもち種とも称され、ワキシー種澱粉はもちもちとした食感を与える澱粉である。通常の澱粉はアミロースとアミロペクチンとからなるが、ワキシー種澱粉は約100%アミロペクチンからなる。
【0016】
本発明で用いられるワキシー種澱粉は、例えば、トウモロコシ、キャッサバ、米、または馬鈴薯等に由来する澱粉であればよく、入手が容易であるという観点から、トウモロコシ、キャッサバ、または米に由来する澱粉であることが好ましく、トウモロコシ由来の澱粉であることがより好ましい。すなわち、ワキシー種澱粉は、ワキシーコーンスターチ、ワキシータピオカ澱粉、またはワキシーライススターチが好ましく、ワキシーコーンスターチがより好ましい。
なお、本明細書では、トウモロコシ由来の澱粉をコーンスターチ、キャッサバ由来の根茎からとれる澱粉をタピオカ澱粉、米に由来する澱粉をライススターチ、馬鈴薯等に由来する澱粉をポテトスターチということがある。
【0017】
酸処理澱粉は、酸変性澱粉とも呼ばれ、原料澱粉に酸処理を行なって得られる加工澱粉である。
例えば、酸処理は、原料澱粉を酸性水溶液に浸漬することにより行うことができる。酸性水溶液は塩酸水溶液または硫酸水溶液であることが好ましい。具体的には、酸処理澱粉は、原料澱粉を酸性水溶液に糊化温度以下で浸漬した後、中和、水洗、ろ過、乾燥などの工程を経て製造することができる。
【0018】
なお、加工澱粉として広く用いられるものに酸化澱粉がある。これは次亜塩素酸ナトリウム等の「酸化剤」を用いて澱粉を酸化処理するもので、酸化処理によってカルボキシル基やカルボニル基が生成するものである。従って、上述した、澱粉を酸性水溶液に浸漬する酸処理(酸変性)とは異なる加工方法である。
【0019】
澱粉の酸変性度は、粘度を指標として比較することができる。粘度の数値が大きいほど酸変性度が低い。
【0020】
本発明のチーズ様食品に含まれる酸処理ワキシー種澱粉の粘度はRVA95℃最低粘度として、10~1000mPa・sであることが好ましい。10mPa・s以上であることによりチーズ様食品がシュレッド可能となりやすい。また、1000mPa・s以下であることにより、チーズ様食品がチーズらしくなり、例えばオーブン加熱時に餅の様に膨らんでしまうことを防止できる。酸処理ワキシー種澱粉のRVA95℃最低粘度は25~800mPa・sであることがより好ましく、40~500mPa・sであることがさらに好ましい。
【0021】
澱粉のRVA95℃最低粘度とは、絶乾固形分濃度30質量%の澱粉のスラリーについて、25℃で測定を開始し、ラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)にて回転数160rpmで25℃を1分保持し、+10℃/分で95℃に昇温し、95℃で20分保持し、その後-10℃/分で50℃まで温度を下げ、50℃で30分保持したときの、95℃での最低粘度である。ラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)としては、例えば、Perten Instruments社製のRVA4500を用いることができる
【0022】
酸処理ワキシー種澱粉としては市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、やわた9(王子コーンスターチ株式会社製)などが挙げられる。
【0023】
本発明のチーズ様食品における酸処理ワキシー種澱粉の含有量(絶乾状態の澱粉の含有量)は、チーズ様食品の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、13質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、18質量%以上であることが特に好ましく、20質量%以上が最も好ましい。また、酸処理ワキシー種澱粉の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、32質量%以下であることが特に好ましく、30質量%以下であることが最も好ましい。また、20~30質量%の範囲が最も好ましい。酸処理ワキシー種澱粉の含有量を上記範囲内とすることにより、チーズ様食品としての製造時の好ましい粘度や好ましいシュレッド適性などを得ることができる。
【0024】
[ヒドロキシプロピル化澱粉]
本発明のチーズ様食品はヒドロキシプロピル化澱粉を含むことが好ましい。ヒドロキシプロピル化澱粉は、ヒドロキシプロピル基を有する澱粉であり、原料澱粉を酸化プロピレンでエーテル化することで得ることができる。ヒドロキシプロピル化澱粉は、ヒドロキシプロピル基が導入されていることにより未処理澱粉より親水性が増大し、老化耐性に優れている。本発明のチーズ様食品はヒドロキシプロピル化澱粉を含むことにより、優れた糸曳き性を達成することができる。糸曳き性が良好なチーズ様食品は、加熱溶融した際の伸びが良く、独特の粘性や弾性を発現するものである。具体的には、加熱直後のチーズ様食品を爪楊枝等ですくい上げた場合の伸びが良好である場合に、糸曳き性に優れていると言える。例えば、加熱して溶融したチーズ様食品を爪楊枝ですくい上げて、3mm以上の長さの糸曳き性が見られた場合に、糸曳き性に優れていると判定できる。
【0025】
ヒドロキシプロピル化澱粉の澱粉種は特に限定されず、例えば、キャッサバ、馬鈴薯、トウモロコシ由来の澱粉等を使用することができる。なお、トウモロコシ由来の澱粉としては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ等が挙げられる。中でも、ヒドロキシプロピル化澱粉は、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉(キャッサバ由来)であることが好ましい。なお、ヒドロキシプロピル化澱粉には、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉も含まれる。
【0026】
なお、ヒドロキシプロピル化澱粉がヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉である場合、リン酸架橋度が高いほど食感が硬くなる傾向が見られ、リン酸架橋度が低いほど食感が柔らかくなる傾向が見られる。このため、チーズ様食品の種類や求められる食感に応じて澱粉のリン酸架橋度を調整することも好ましい。
【0027】
ヒドロキシプロピル化澱粉の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、ヒドロキシプロピル化澱粉の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。ヒドロキシプロピル化澱粉の含有量を上記範囲内とすることにより、チーズ様食品の糸曳き性を高めることができ、またチーズ様食品の食感をより高めることができる。
【0028】
ヒドロキシプロピル化澱粉におけるヒドロキシプロピル化の程度(以下「HP化度」という)は、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)が定めるニンヒドリン試液を使用する方法で測定することができる。本発明においては、1.5~7.0のHP化度のヒドロキシプロピル化澱粉を用いることが好ましく、2.0~7.0のHP化度のヒドロキシプロピル化澱粉を用いることがより好ましい。
【0029】
ヒドロキシプロピル化澱粉の詳細については特開2020-202820号公報の段落0035~0044の記載を参照することができる。
【0030】
ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉としては、市販品を用いることができ、例えば、いかるが100、ミクロリス52、ファインテックスS-1、ひこぼし300(いずれも王子コーンスターチ株式会社製)等を用いることができる。
【0031】
[オクテニルコハク酸α化澱粉]
本発明のチーズ様食品は、オクテニルコハク酸α化澱粉を含んでいてもよい。オクテニルコハク酸α化澱粉は乳化剤として機能することができ、油脂と水分とを乳化させる。
【0032】
オクテニルコハク酸α化澱粉のオクテニルコハク酸含量はオクテニルコハク酸α化澱粉の質量に対して1~5質量%、好ましくは2~3質量%であればよい。オクテニルコハク酸基の含量は、食品添加物法第11条1項(H20.10.1厚生労働省告示485号)に準拠した測定方法で測定することができる。オクテニルコハク酸α化澱粉は、馬鈴薯澱粉の加工澱粉であることが好ましい。また、10質量%で水に溶解したときの粘度が液温50℃のとき300~700mPa・s、好ましくは400~500mPa・sであるものを使用することができる。オクテニルコハク酸α化澱粉としては市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、トレコメックス12-02(王子コーンスターチ株式会社製)を用いることができる。
【0033】
本発明のチーズ様食品は、酸処理ワキシー種澱粉を含むことにより、特に好ましくは、酸処理ワキシー種澱粉をチーズ様食品全質量に対して20~30質量%の量で含むことにより、乳化剤として機能するオクテニルコハク酸α化澱粉を含まなくても、原料チーズや乳タンパク質が添加されていない組成において油脂が分離することなく、オーブンなどで加熱した際にとろっととろける加熱溶融性を与えることができる。本発明のチーズ様食品におけるオクテニルコハク酸α化澱粉の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して0質量%以上5.0質量%以下であればよく、0質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、0質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明のチーズ様食品は、オクテニルコハク酸α化澱粉を含まないことが特に好ましい。
【0034】
<油脂>
本発明のチーズ様食品は油脂を含む。ここで、油脂は食用油脂であり、食用油脂としては、動物性油脂や植物性油脂、加工油脂が挙げられる。中でも、油脂は植物性油脂であることが好ましい。特に本発明のチーズ様食品をビーガン仕様の製品とする場合において、油脂として植物性油脂を用いることにより、動物性由来成分を含まないチーズ様食品とすることができる。
【0035】
油脂の上昇融点は、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。また、油脂の上昇融点は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましい。上昇融点が50℃以下の油脂を用いることで加熱時の溶融性を有するチーズ様食品が得られやすくなる。また、上昇融点が10℃以上の油脂を用いることでシュレッド適性を有するチーズ様食品が得られやすくなる。
【0036】
油脂としては、例えば、ココナッツオイル、パーム油、バターオイル、菜種油、オリーブオイル、ゴマ油、ショートニング等を挙げることができる。中でも、油脂は、ココナッツオイル、パーム油およびバターオイルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましいが、ココナッツオイルおよびパーム油からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0037】
油脂の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、30質量%以下である。本発明のチーズ様食品は、酸処理ワキシー種澱粉を含むことにより、特に好ましくは、酸処理ワキシー種澱粉をチーズ様食品全質量に対して20~30質量%の量で含むことにより、30質量%以下の油脂の含有量でも、十分に高いチーズ様食品の食感と糸曳性を有する。油脂の含有量が30質量%以下であるチーズ様食品はカロリーを抑えられており、より消費者の健康志向に沿った製品となりうる。油脂の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。また、油脂の含有量は、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがさらに好ましい。
【0038】
<水分>
本発明のチーズ様食品は、水分を含む。チーズ様食品が含み得る水分としては、例えば、水、豆乳、牛乳等を挙げることができる。特に本発明のチーズ様食品をビーガン仕様の製品とする場合において、水分として豆乳または水を使用することにより、動物性由来成分を含まないチーズ様食品とすることができる。なお、チーズ様食品中における水分は、添加される水等に由来する水分のみでなく、澱粉および任意成分に含まれる水分にも由来しうる。水分の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、53質量%以上であることがさらに好ましい。また、水分の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、70質量%以下であることが好ましく、66質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
本発明のチーズ様食品の固形分は60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、47質量%以下であることがさらに好ましい。また、固形分は、チーズ様食品の全質量に対して、30質量%以上であることが好ましく、34質量%以上であることがより好ましく、35質量%以上であることがさらに好ましく、36質量%以上であることが特に好ましい。
【0040】
<任意成分>
本発明のチーズ様食品は、上述した成分以外に他の任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、通常のチーズが含み得るものを挙げることができる。
【0041】
任意成分としては、例えば、食塩、砂糖、乳化剤、風味付けパウダー、調味料、酸味料、甘味料、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、着色料、保存料、香料、機能性素材等を挙げることができる。中でも、本発明のチーズ様食品は、食塩、酸味料、調味料および着色料から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0042】
風味付けパウダーとしては、チーズフレーバーが好ましい。その他、例えば、果実風味パウダー、ココアパウダー、抹茶パウダー、カレーパウダーなどを挙げることができる。調味料としては、例えば、香辛料、ハーブ、コンソメ、ココナッツミルク等を挙げることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、酢酸、乳酸、グルコン酸等を挙げることができる。甘味料としては、例えば、糖類、糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等を挙げることができる。香料としては、例えば、バニラエッセンス、バター風香料等を挙げることができる。機能性素材としては、例えば、セラミド、アマニ、ポリフェノール、キシリトール、または難消化性デキストリン等を挙げることができる。
【0043】
本発明のチーズ様食品中における任意成分の総含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることさらに好ましい。
【0044】
<チーズ様食品の特性>
本発明のチーズ様食品は酸処理ワキシー種澱粉を含むことにより、原料チーズを含まなくても、チーズにより近い食感を呈することができる。チーズにより近い食感は、舌触りで判断でき、より滑らかであり、ざらつき感が少ない場合において、チーズにより近い食感であると言える。また、本発明のチーズ様食品は、酸処理ワキシー種澱粉を含むことにより、上述のように優れた加熱溶融性を有しており、加熱により容易に溶融し、溶融後も滑らかな舌触りを発現する。したがって、本発明のチーズ様食品は加熱用の製品に適したチーズ様食品として提供することができる。さらに、本発明のチーズ様食品においては、原料チーズが添加されていないため、チーズ様食品における原料コストを低減することができる。また、動物性脂肪の摂取を控えたい消費者などのニーズに応えることもできる。
【0045】
また、本発明のチーズ様食品は、優れたシュレッド適性を有し、ブロック状に製造されたチーズ様食品をシュレッドして(切断するかまたは削って)、シュレッドタイプのチーズ様食品とする場合に適した性質を有する。すなわち、シュレッド時の温度(低温時:5℃~10℃)の保形性が向上している。具体的には、チーズ様食品を短冊状にカット(切断)でき、かつ、カットされたチーズ様食品同士が付着せずに存在できる場合に、チーズ様食品は優れたシュレッド適性を有していると判定できる。
【0046】
チーズ様食品の硬さは澱粉含有量で調整することができる。
また、チーズ様食品の硬さは、使用する加工澱粉の種類・加工度等によっても調整することができる。一般に、加工澱粉の糊化後の粘度が高いほど得られるチーズ様食品が硬くなる傾向にあるが、製造時に粘度が高いと配管での送液や容器への充填が困難となる。本発明のチーズ様食品は酸処理ワキシー種澱粉を含むことにより、製造時の粘度を低く抑え、且つシュレッドに適した硬さを得ることができる。使用する加工澱粉の糊化後の粘度は、所定濃度で当該澱粉のスラリーを作り、α澱粉は冷水に溶解し、β澱粉は加熱糊化させた後所定の濃度に調整し、所定の液温に調整してから、B型粘度計を用いて測定することができる。
【0047】
[チーズ様食品の形態]
チーズ様食品の形態は特に限定されるものではないが、例えば、シュレッドタイプチーズ様食品、ブロックチーズ様食品、クリームチーズ様食品、スプレッドチーズ様食品、モッツァレラチーズ様食品、チーズソース様食品、粉チーズ様食品等を挙げることができる。
【0048】
<チーズ様食品の製造方法>
チーズ様食品は、慣用の方法を用いて製造することができる。例えば、酸処理ワキシー種澱粉と、油脂と、水分等とを加熱混合する工程、および加熱混合物を冷却する工程を含むことが好ましい。加熱混合する工程では、油脂と水分とを乳化させることができる。各成分は全て同時に混合してもよく、一部を混合撹拌してから他の成分を加えてさらに撹拌してもよい。
【0049】
加熱混合する工程では、加熱温度は、70~100℃であることが好ましい。また、加熱混合の間、必要により脱気を行ってもよい。加熱混合物を冷却する工程では、加熱混合物は、例えば、1~10℃に冷却される。なお、冷却時間は1時間以上であることが好ましく、10時間以上であることがより好ましい。
【0050】
例えば、工業的製造時には、80℃程度で製造されたチーズ様食品は加熱終了後ポンプ等で流送され、パッキングされる。チーズ様食品は、流送可能な粘度を有するとともに、流送工程で温度が低下しても、パッキングに必要な粘度を維持していることが好ましい。具体的には、加熱混合後の80℃のチーズ様食品の粘度(出来上がり80℃粘度)は、500mPa・s以上であることが好ましく、1500mPa・s以上であることがより好ましい。また、20000mPa・s以下であることが好ましく、15000mPa・s以下であることがより好ましく、13000mPa・s以下であることがさらに好ましい。加熱混合後の60℃のチーズ様食品の粘度(出来上がり60℃粘度)は、1000mPa・s以上であることが好ましく、2000mPa・s以上であることがより好ましい。また、20000mPa・s以下であることが好ましく、16000mPa・s以下であることがより好ましく、12000mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、「60℃測定粘度÷80℃測定粘度」は3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。
【0051】
なお、加熱混合後の80℃または60℃のチーズ様食品の粘度はB型粘度計で測定することができる、B型粘度計としては、例えば、BrookfieldViscometer DV2T型(英弘精機株式会社製)を使用することができる。
【0052】
加熱混合する工程では、原料混合物を撹拌することが好ましい。この際の撹拌条件は、緩やかな条件であることが好ましい。
例えば、300~2000rpmの回転数で撹拌を行うことが好ましく、500~1000rpmの回転数で撹拌を行うことがより好ましい。これにより、より口当たりがよく、風味や食感に優れたチーズ様食品が得られる。
【0053】
加熱混合する工程の前には、原料混合物のpHを調整する工程を設けてもよい。原料混合物のpHは4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。また、原料混合物のpHは8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましい。
【0054】
加熱混合物を冷却する工程の後には、チーズ様食品を所望の製品形態に合わせた形状に加工する工程を設けてもよい。例えば、チーズ様食品を所望の形状となるようにカットしたり、シュレッドしたりする工程を設けることができる。チーズ様食品のカットやシュレッドは、上記の冷却する工程の後、例えばブロック状に成形し、冷蔵庫でエージングした後に行なうことが好ましい。
【実施例0055】
以下に製造例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の製造例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0056】
なお、実施例において、澱粉について固形分濃度を示すとき、絶乾状態の澱粉の質量%を意味する。したがって、実施例において%濃度を示す澱粉については別途少量について加熱乾燥を行い、その前後の質量から水分量を算出したうえで、この水分量を考慮してスラリーを用意した。
【0057】
<酸処理澱粉の製造>
以下の手順で、実施例1~11および比較例1~5のチーズ様食品の製造に使用する酸処理澱粉を製造した。
1.表1に記載の原料澱粉を蒸留水に溶解させ固形分濃度が37質量%になるようスラリーを調製する(エンドウ豆澱粉のみ30質量%)。
2.スラリーを撹拌し、50℃または53℃に加熱する。
3.表1に記載の量の10%塩酸を添加する。なお、塩酸は36%濃塩酸を10%に希釈して添加する。
4.表1に記載の時間反応させる。
5.反応終了後、10%水酸化カルシウムを添加し、pH2.5~3.0に調整する。
6.冷却しながらpHが安定するまで約30分間撹拌する。
7.ブフナー漏斗にNo.1ろ紙をセットし、吸引ろ過する。
8.水面に澱粉が現れたら、スラリー量の1倍量の蒸留水を流し入れる。
9.再度水面に澱粉が現れたら、スラリー量の1倍量の蒸留水を流し入れる。
10.ろ液が排出されなくなるまで吸引ろ過する。
11.棚段乾燥機にて70℃で水分約12質量%になるように乾燥する。なお、澱粉には平衡水分が存在し、コーンスターチは約12質量%、タピオカは約13質量%、馬鈴薯澱粉は約16質量%である。なお、平衡水分は室温で湿度約50%の空気中に澱粉を長期間放置し、澱粉中の水分量が平衡状態に達した時の水分含有量である。水分が12質量%程度であれば数日間は同じ水分を維持できることから、本実施例の酸処理澱粉では全て約12質量%に調整した。
【0058】
製造した酸処理澱粉のRVA95℃最低粘度と50℃最終粘度を以下の手順で測定した。絶乾状態で9.0gとなる質量の澱粉をRVA測定用アルミカップに量りとり、蒸留水を加えて全質量が30.0gとなるようにして固形分濃度30質量%の澱粉のスラリーを作製し、25℃で測定を開始した。ラピッド・ビスコ・アナライザー(Perten Instruments社製のRVA4500)にて回転数160rpmで25℃を1分保持し、+10℃/分で95℃に昇温し、95℃で20分保持し、その後-10℃/分で50℃まで温度を下げ、50℃で30分保持したときの、95℃での最低粘度をRVA95℃最低粘度とし、50℃での最終粘度を50℃最終粘度とした。結果を表1に示す。また、実施例2、4および比較例2~4のチーズ様食品の製造に使用した酸処理澱粉のRVA粘度グラフを
図1、実施例2、10、11および比較例5のチーズ様食品の製造に使用した酸処理澱粉のRVA粘度グラフを
図2に示す。
【0059】
【0060】
実施例6、7では実施例3と同じ酸処理澱粉を用いた。実施例8、9では実施例5と同じ酸処理澱粉を用いた。
【0061】
<チーズ様食品(シュレッドタイプ)の製造>
以下の手順で実施例1~11および比較例1~5のチーズ様食品を製造した。材料としては、表2に記載の量(質量%)で、上記で製造した酸処理澱粉(絶乾状態の量)、ヒドロキシプロピル化澱粉(絶乾状態の量)、豆乳または水、食塩、パーム油、色素(クチナシ色素)、香料を使用した。ヒドロキシプロピル化澱粉としては王子コーンスターチ株式会社製のいかるが100(水分約12質量%)、豆乳としてはキッコーマン株式会社製の「おいしい無調整豆乳」を用いた。パーム油は加熱し液状にして使用した。また、実施例9ではオクテニルコハク酸α化澱粉を追加した。
【0062】
[手順]
1.全ての材料をステファン混合器に投入する。
2.加熱せず750rpmで撹拌し、材料を混合する。
3.加熱を開始し、85℃になるまで750rpmで撹拌する。
4.85℃に到達したら85℃を維持して3分間750rpmで撹拌し、その後、撹拌を止める。
5.サンプルを豆腐型容器に流し入れる。
6.粗熱を取って冷蔵庫に入れる。
7.冷蔵庫で3日間冷蔵し、冷やし固める。(冷蔵3日間では固まらない場合は引き続き冷蔵保管後評価する。)
【0063】
<チーズ様食品の評価>
実施例1~11および比較例1~5のチーズ様食品について、以下の方法で評価した。
[粘度]
出来上がり80℃測定粘度と出来上がり60℃測定粘度とをBrookfieldViscometer DV2T型(英弘精機株式会社)を用いて測定した。13.5mlのチーズ様食品を25rpmで撹拌し、3分後の粘度を測定した。
【0064】
[シュレッド適性]
冷蔵後、パール金属社製 ベジクラ にんじんしりしり・大根千切り器C-288を使用し、短冊状にカットし、以下の基準で評価した。
A:短冊状になり、互いに付着しない
B:短冊状になるが、互いに付着する、または脆く折れやすい
C:脆い、または柔らかく、短冊状にならない
【0065】
[加熱溶融性]
10mm角のダイス状にカットしたチーズ様食品をアルミホイルの上に置き、800ワットのオーブントースター(KTG-0800 タイガー社製)で3分間加熱し、加熱後すぐにチーズの高さを測定し、加熱溶融性の評価を以下の評価基準で行った。
A:カットしたチーズ様食品が溶融し、溶解前10mmの高さが5mm以下になる。
B:カットしたチーズ様食品が少し溶融するが、溶解前10mmの高さが5mmよりも高い。
C:カットしたチーズ様食品が溶融せず、元の形状を留めている。
【0066】
[糸曳性]
上記と同様の方法で加熱溶融を行ったチーズ様食品を、直径1mmの爪楊枝で引き上げ、糸曳性を以下の評価基準で評価した。
A:3mm以上糸を引くように伸びる。
B:糸を引くが糸の長さが3mm未満である。
C:糸引きがなく伸びない。
【0067】
結果を表2に示す。なお、表中、各成分、固形分、およびタンパク質含有量について記載されている数値は、質量%である。
【表2】
【0068】
実施例1~11のチーズ様食品はいずれも豆腐型容器に流し入れて製造することができたが、実施例9のチーズ様食品は粘度が高く豆腐型容器に流し入れるのに長い時間を要した。比較例1~3はいずれも豆腐容器に流し入れることができたが、実製造時には配管での送液が困難となることが予想された。実施例8はチーズの硬さが足りず(チーズが柔らかく)、チーズ同士が付着してしまった。実施例6は実施例3の豆乳の代わりに水を用いたものであるが、実施例3よりも出来上がり粘度が低く、チーズの硬さも足りなかった。原因として固形分(%)が低くなったことが考えられる。豆乳にはタンパク以外に脂質や炭水化物等が含まれているため、タンパク含有量によるチーズ硬さへの影響は確認できなかった。実施例7は実施例6の水を減らし澱粉を増やしたものに該当するが、チーズの硬さが増して良好なシュレッド適性が得られた。比較例4のチーズ様食品は冷蔵しても固まらなかった。比較例5および実施例10のチーズ様食品は糸曳性が良好であり、特に実施例10のチーズ様食品は比較例5および他の実施例と比較しても長く伸びた。このことから、酸処理ワキシーライススターチはモッツァレラチーズのような伸びる性状を求める食品の製造材料に適していることが示唆された。一方、実施例10のチーズ様食品は冷蔵開始後に良好なシュレッド適性が得られる硬さになるまで9日を要した。