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特開2024-63759誘導型位置センサ用の信号処理ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063759
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】誘導型位置センサ用の信号処理ユニット
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
G01D5/20 110E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023179388
(22)【出願日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】22203883
(32)【優先日】2022-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518364964
【氏名又は名称】ルネサス エレクトロニクス アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RENESAS ELECTRONICS AMERICA INC.
【住所又は居所原語表記】1001 Murphy Ranch Road, Milpitas, California 95035, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・ケルンホフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ジャニッシュ
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077FF03
2F077FF16
2F077TT33
2F077TT82
(57)【要約】
【課題】誘導型位置センサ用の信号処理ユニットを提供する。
【解決手段】
誘導型位置センサ(2)は、第1の位置信号(3)および位相シフトされた第2の位置信号(4)、特に正弦波位置信号および余弦波位置信号を供給する。信号処理ユニット(1)は、第1の位置信号(3)の整数周期数および位相シフトされた第2の位置信号(4)の整数周期数を積分するための少なくとも1つの積分器(12)を備える。位置センサ(2)の移動ターゲット(11)の位置は、積分された第1の位置信号(3)および積分された位相シフトされた第2の位置信号(4)から算出される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)であって、前記誘導型位置センサ(2)は、第1の位置信号(3)および位相シフトされた第2の位置信号(4)、特に正弦波位置信号および余弦波位置信号を供給し、前記信号処理ユニット(1)は、
前記第1の位置信号(3)のための第1の入力部(5)、および前記第2の位置信号(4)のための第2の入力部(6)と、
AC励磁信号(8)を前記誘導型位置センサ(2)に供給するための出力部(7)と、
前記AC励磁信号(8)を発生させるための、前記出力部(7)に接続された発振器(9)と、
前記第1の位置信号(3)と前記第2の位置信号(4)から、前記誘導型位置センサ(2)の移動ターゲット(11)の位置を算出するための信号処理部(10)と、
前記第1の位置信号(3)の整数周期数および前記第2の位置信号(4)の整数周期数を積分するための少なくとも1つの積分器(12)と、
を備え、
前記信号処理部(10)は、積分された前記第1の位置信号(3)と積分された前記第2の位置信号(4)から、前記誘導型位置センサ(2)の前記移動ターゲット(11)の位置を算出することを特徴とする、
誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)。
【請求項2】
前記第1の位置信号(3)および位相シフトされた前記第2の位置信号(4)は、アナログ信号であり、
前記第1の位置信号(3)および前記第2の位置信号(4)を、対応する第1のデジタル位置信号および対応する位相シフトされた第2のデジタル位置信号に変換するためのアナログ・デジタル変換器(13)を備える、
請求項1に記載の誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)。
【請求項3】
前記AC励磁信号(8)の振幅を所定の範囲に保つための発振器コントローラ(17)をさらに備える、請求項1または2に記載の誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)。
【請求項4】
前記誘導型位置センサ(2)は、前記AC励磁信号(8)を受信する少なくとも1つの送信コイル(14)と、前記第1の位置信号(3)を供給する第1の受信コイル(15)と、前記第2の位置信号(4)を供給する第2の受信コイル(16)と、を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)。
【請求項5】
前記発振器(9)は、LC発振器、好ましくは電流駆動型または電流制限型のクロスカップリングインバータ回路である、請求項1~4のいずれか1項に記載の誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)。
【請求項6】
前記信号処理ユニット(1)、特に前記信号処理部(10)は、積分された前記第1の位置信号におけるオフセット、および/または積分された位相シフトされた前記第2の位置信号におけるオフセット、および/または積分された前記第1の位置信号と積分された位相シフトされた前記第2の位置信号との間のゲインミスマッチを検出し、検出した前記オフセットを補償するための対応する負の補償信号、および/または前記ゲインミスマッチを補償するためのゲイン較正信号を前記積分器(12)に供給する、請求項1~5のいずれか1項に記載の誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)。
【請求項7】
前記負の補償信号または前記ゲイン較正信号は、デジタル・アナログ変換器(18)によって、デジタル信号からアナログ信号、特に負のアナログ信号に変換される、請求項6に記載の誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)。
【請求項8】
前記信号処理ユニット(1)は、ローパスフィルタリングおよび較正を行う、請求項1~7のいずれか1項に記載の誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)。
【請求項9】
前記第1の入力部(5)および前記第2の入力部(6)は、第1のマルチプレクサ(19)に接続される、請求項1~8のいずれか1項に記載の誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)。
【請求項10】
前記第1の入力部(5)および前記第2の入力部(6)の各々、または前記第1のマルチプレクサ(19)の出力部(20)は、増幅器(21)および/または整流器(22)に接続される、請求項9に記載の誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)。
【請求項11】
前記第1のマルチプレクサ(19)にテスト信号(24)を供給するためのテスト信号発生ユニット(23)を備え、
前記テスト信号(24)は、様々なスケーリング係数を有することができる、
請求項9または10に記載の誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)。
【請求項12】
前記第1のマルチプレクサ(19)は、前記入力部ごとに非反転信号(25)および反転信号(26)を供給する、請求項9~11のいずれか1項に記載の誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)。
【請求項13】
前記信号処理部(10)は、多重化および積分された前記第1の位置信号(5)ならびに位相シフトされた前記第2の位置信号(6)に疑似同期化インターリーブサンプリング方式を適用する、請求項9~12のいずれか1項に記載の誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)。
【請求項14】
前記出力部(7)に供給された前記AC励磁信号(8)の振幅を検出するためのピーク検出器(27)と、前記信号処理部(10)の前の第2のマルチプレクサ(28)と、をさらに備え、
前記出力部(7)に供給された前記AC励磁信号(8)は、前記第1のマルチプレクサ(19)にも供給され、
前記信号処理部(10)は、前記第1のマルチプレクサ(19)に供給された処理された前記AC励磁信号(8)の振幅と、前記第2のマルチプレクサ(28)に供給された前記ピーク検出器(27)で検出された振幅とを比較する、
請求項9~13のいずれか1項に記載の誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)。
【請求項15】
前記ピーク検出器(27)は、演算増幅器(29)と、ダイオード(30)と、RCローパスフィルタ(31)と、を備える、請求項14に記載の誘導型位置センサ(2)用の信号処理ユニット(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導型位置センサ用の信号処理ユニットに関する。この誘導型位置センサは、第1の位置信号および位相シフトされた第2の位置信号、特に正弦波(sin)位置信号および余弦波(cos)位置信号を供給する。
【背景技術】
【0002】
多くの用途では、例えばオートバイのスロットル制御など、回転部材のような移動ターゲットの位置フィードバックを必要とする。ほとんどの場合において、追加の位置センサが移動部分に取り付けられて必要な位置情報が生成される。従来技術により、磁気式位置センサや誘導型位置センサが知られている。モータケーブルやバッテリケーブルなどの通電部品、回転するモータパッケージ、モータのステータ、またはモータブレーキのような追加の機器は、磁界を乱す可能性のある磁界を生じさせるので、このような磁界に対する堅牢性を提供するように誘導型位置センサの使用が好ましい。
【0003】
誘導型の線形位置センサまたは角度センサは、導電性(金属製)ターゲットの位置または角度を検出するための磁気誘導の原理に基づく装置である。電磁界と機械的に相互作用するこの原理を用いることで、メカトロニクス、電子モータ、および物体検出など、様々な用途に対応する多種多様なセンサを作製することができる。信頼性が高いこの誘導型感知技術の本質的な利点は、導電性ターゲットに接触することなく位置検出を実施することができることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,853,604号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0101968号明細書
【特許文献3】米国特許第7,045,996号明細書
【特許文献4】米国特許第7,208,945号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0116883号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
誘導型位置センサは、磁石を使用しない技術を実装しており、過電流または誘導結合の物理的原理を利用してコイルセットの上方を移動するターゲットの位置を検出する。コイルセットは、例えば、1つの送信コイルと、2つの受信コイル、特に正弦受信コイルおよび余弦受信コイルとから構成される。例えば、特許文献1にはこのような誘導型センサシステムが記載されている。
【0006】
実用的な実装例において、1つの送信コイルと2つの受信コイルとを含む3つのコイルは、通常、プリント回路基板(PCB)、特に多層PCB上の銅線として設けられる。これらのコイルは、送信コイルが2つの受信コイルに二次電圧を誘導するように配置される。これは、受信コイルの上方にある導電性(金属製)ターゲットの位置に依存している。そのため、誘導型センサは、高周波信号を発生する発振器を備えるか、それに接続されている。この信号は、送信コイルに印加されて、静的な高周波磁界を発生させる。この静的な高周波磁界は、受信コイル、特に正弦受信コイルおよび余弦受信コイルによってピックアップされる。コイルの上方にある導電性ターゲットの位置に応じて、受信コイルによってピックアップされた二次電圧は、振幅が変化する。これにより、この影響を分析することでターゲットの位置を決定することができる。例えば、ターゲットの位置は、正弦波信号の瞬時振幅を余弦波信号の瞬時振幅で割ったものの逆正接によって算出される。この計算は、位置センサに接続された処理ユニット、または位置センサの一部である処理ユニットによって実施される。
【0007】
送信コイルおよび2つの受信コイルのレイアウトは、メカトロニクスのサブシステムの幾何学的寸法および形状に容易に適合させることができる。これにより、この種類の誘導型位置センサでの高い柔軟性および汎用性を得ることができる。
【0008】
受信信号を処理するために、復調器と、ゲイン段と、オフセットとゲインのミスマッチ補償部と、アナログ・デジタル変換器と、何らかの逆正接計算を行うデジタル信号処理ユニットと、を含む複雑な回路が必要である。
【0009】
特許文献2には、可動要素の位置を決定するための誘導型位置センサが記載されている。位置センサは、2つのサブシステムを備える。サブシステムの各々は、2つの送信ユニットと、可動要素上のLC共振回路と、評価ユニットを有する受信コイルと、を有する。個々のサブシステムの処理は、交互に行われる。したがって、1つのサブシステムが動作している場合、他のサブシステムはすべて停止される。LC共振回路を含む可動要素は、2つの送信ユニットの2つの電磁界の重なりによって生成された全電磁界内で回転する。これに応答して、LC共振回路は、電磁界を生成する。これは、受信コイルと評価ユニットによって受信される。
【0010】
特許文献3には、誘導型要素を用いて少なくとも2つの時間的に変化する磁界を生成するステップを含む装置の位置を決定するための方法が記載されている。これらの磁界は、異なる位相を有する。さらに、該方法は、磁界の上方で変調され、装置が発生した信号を検出するステップと、装置からの信号と基準信号との位相差に基づいて装置の位置を決定するステップと、を含む。特許文献2と同様に、ここに記載されている方法は、可動装置上のLC共振回路を必要とする。
【0011】
特許文献4には、励磁巻線と、励磁信号を発生するように動作可能であり、発生した励磁信号を励磁巻線に印加するように配置された信号発生器と、励磁巻線に電磁気的に結合されたセンサ巻線と、信号発生器によって励磁信号が励磁巻線に印加されたときにセンサ巻線で発生した周期的な電気信号を処理して、感知されたパラメータの値を決定するように動作可能な信号処理部と、を備えるセンサが記載されている。励磁信号は、第2の周波数を有する周期的な変調信号によって変調された第1の周波数を有する周期的な搬送波信号を含む。第1の周波数は、第2の周波数よりも大きい。このように、センサは、励磁信号を発生させるため、およびセンサ巻線に誘導された信号を処理するためのデジタル処理技術を使用するのに適している。一実施形態において、センサは、2つの部材の相対位置を検出するために使用される。他の実施形態において、センサは、温度や湿度などの環境要因を検出するために使用される。
【0012】
特許文献5には、誘導型センサ装置および誘導識別のための方法が記載されている。該装置は、測定範囲に沿って延在する、互いに空間的に異なるように変化する第1の励磁インダクタおよび第2の励磁インダクタを備える。第1の誘導結合要素および第2の誘導結合要素は、2つの励磁インダクタからの信号と受信インダクタとを結合する。誘導結合要素は、第1の共振周波数f1および第2の共振周波数f2を有する共振要素として形成されている。両方の誘導結合要素の位置を迅速且つ正確且つ容易に決定するために、2つの励磁インダクタは、異なる送信信号S1およびS2によって駆動される。送信信号S1およびS2の各々は、時間的に変化する第1の共振周波数f1の近傍の第1の搬送波周波数の信号成分と、時間的に変化する第2の共振周波数f2の近傍の第2の搬送波周波数の信号成分と、を含む。
【0013】
誘導型の線形位置センサにおいて、受信コイルは、導電性ターゲットの線形移動経路に沿って延在しており、導電性ターゲットは、特定の線形延在部を有する。誘導型の円弧形位置センサにおいて、受信コイルは、導電性ターゲットの角度付けられた、特に半径方向の移動経路に沿って延在しており、導電性ターゲットは、特定の角度が付けられた延在部を有する。円弧形位置センサが360°の範囲を取り扱う場合、すなわち移動ターゲットが軸を中心に完全に回転する場合、誘導型回転式位置センサとも呼ばれる。
【0014】
本発明の目的は、誘導型位置センサから供給された位置信号から、移動ターゲットの位置を効率的且つ正確に評価する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、上記目的は、誘導型位置センサ用の信号処理ユニットによって達成される。誘導型位置センサは、第1の位置信号および位相シフトされた第2の位置信号、特に正弦波位置信号および余弦波位置信号を供給する。該ユニットは、
・ 第1の位置信号のための第1の入力部、および位相シフトされた第2の位置信号のための第2の入力部と、
・ AC励磁信号を誘導型位置センサに供給するための出力部と、
・ AC励磁信号を発生するための、出力部に接続された発振器と、
・ 第1の位置信号と位相シフトされた第2の位置信号から、位置センサの移動ターゲットの位置を算出するための信号処理部と、
・ 第1の位置信号の整数周期数および位相シフトされた第2の位置信号の整数周期数を積分するための少なくとも1つの積分器と、
を備える。ここで、信号処理部は、積分された第1の位置信号と積分された位相シフトされた第2の位置信号から、位置センサの移動ターゲットの位置を算出する。
【0016】
従来の回路の実装例は、例えば整流されたAC信号の第1の位置信号および第2の位置信号の振幅を測定するために、ローパスフィルタ、特に抵抗・キャパシタ(RC)ローパスフィルタを使用している。本発明は、第1の位置信号および第2の位置信号、すなわち正弦波信号および余弦波信号の有効な振幅値を評価するために、周波数同期積分方式を用いた新しいアプローチに基づいている。周波数同期積分とは、正弦周期または余弦周期の整数NINTが連続的に積分されることを意味する。積分時間が同程度に短い場合、積分器は、アナログの1次ローパスフィルタのように動作する。正確にNINT周期を積分することで、「アナログ積分器」は、基本波とインダクタ・キャパシタ(LC)発振周波数の倍数で「ゼロ」をもつ「アナログ有限インパルス応答(FIR)フィルタ」になる。これに関して、積分位相の数は、この準アナログローパスFIRフィルタの「ゼロ」の数を定義する。同等の1次RCローパスフィルタが減衰を発生させ、残りの「正弦波リップル」がSN比を制限する。また、本発明による積分器アプローチは、リップルまたはその他の周波数に関連する影響を排除した、NINT個の整流された正弦波位相および余弦波位相の正確な積分された「平均値評価」として理解することもできる。
【0017】
従来技術のRCローパスフィルタと本発明の一般的な積分器能動回路は、回路の実装の手間とサイズに関して同等である。RCローパスフィルタの回路のサイズに関する欠点として、アナログ・デジタル変換器(ADC)の前のアンチエイリアスフィルタの機能性が挙げられる。ADCのサンプリング周波数によっては、高次ローパスフィルタが必要になる。この場合、直列に複数のローパスフィルタ段が必要になる。ローパスフィルタのRC時定数「R*C」が減衰(-3dBのコーナー周波数)を定義するのに対して、積分器の時定数(例えばRC積分器の「1/(Rint*Cint)」)は、ゲイン係数のように作用する。RintおよびCintの値を単純に小さくすれば、高いゲイン値に達することができる。さらに、アナログ積分プロセス全体が「時間経過に伴う」増幅のように機能し、積分周期の数が追加のゲイン係数のように作用する。
【0018】
本発明の変形例によれば、第1の位置信号および第2の位置信号はアナログ信号であり、特に、第1の位置信号が正弦波位置信号であり、位相シフトされた第2の位置信号が余弦波位置信号である。
【0019】
本発明の変形例によれば、信号処理ユニットは、第1の位置信号および位相シフトされた第2の位置信号を、対応する第1のデジタル位置信号および対応する位相シフトされた第2のデジタル位置信号に変換するためのアナログ・デジタル変換器を備える。アナログ・デジタル変換器は、少なくとも1つの積分器の後に配置される。これにより、アナログ・デジタル変換器は、積分された第1の位置信号および積分された位相シフトされた第2の位置信号を変換することができる。したがって、積分された第1の位置信号および積分された位相シフトされた第2の位置信号からの位置センサの移動ターゲットの位置の計算は、デジタル信号処理部(DSP)で実行することができる。さらに、DSPは、デジタル位置信号を本発明による誘導型位置センサを使用するシステムに転送することができる。
【0020】
本発明の変形例において、誘導型位置センサは、AC励磁信号を受信する少なくとも1つの送信コイルと、第1の位置信号を供給する第1の受信コイルと、位相シフトされた第2の位置信号を供給する第2の受信コイルと、を備える。このような誘導型位置センサは、2つの出力コイルを有する変圧器とすることができる。送信コイル(L)は、例えばキャパシタ(C)と相互接続され、発振器(LC発振器)を共振させる。
【0021】
交番磁界は、電圧を受信コイルに誘導する。この誘導方法は、導電性ターゲットを変圧器の上方に導入することで影響を与えることができる。導電性ターゲットは、磁界のショートカットのように作用し、誘導電圧を操作する。この種類の振幅変調は、導電性ターゲットの機械的位置に依存する。このタイプの誘導型センサコイルでは、受信コイルを正弦波および余弦波の形状にレイアウトするのが特徴的である。この洗練されたコイルレイアウトと導電性ターゲットにより、受信コイルにおいて位置に依存した正弦波および余弦波の振幅変調信号が得られる。
【0022】
本発明の変形例によれば、誘導型位置センサの信号処理ユニットは、AC励磁信号の振幅を所定の範囲を保つための発振器コントローラをさらに備える。発振器コントローラは、発振器の振幅を所定の範囲に保つための能動回路である。これにより、振幅レベルが高すぎたり低すぎたりすることによる歪みを回避することができる。例えば、ピーク検出器は、発振振幅VLCOを連続的に監視する。これは、その後、振幅・周波数モニタによって評価される。この振幅・周波数モニタは、プログラマブル電流源の制御値、すなわちILCOpおよびILCOnを算出し、所定の振幅に到達させ、その振幅を一定レベルに保つ。
【0023】
本発明の変形例によれば、少なくとも1つの積分器は、抵抗・キャパシタ(RC)積分器である。したがって、積分プロセスは、それ自体の時定数「1/(Rint*Cint)」(抵抗器およびキャパシタの積分器値)、積分位相の数NINT、およびLC発振器の周波数「TLCO=1/FLCO」自体によって特徴付けられる。最後に、(整流された正弦/余弦周期の積分値を定義する)積分関連係数「2/Π」を考慮する必要がある。
【0024】
本発明の変形例において、信号処理部、特にデジタル信号処理部は、位置センサの移動ターゲットの位置を算出するためのCORDIC/arctanアルゴリズムを実装する。
【0025】
本発明の変形例によれば、発振器は、インダクタ・キャパシタ(LC)発振器であり、好ましくは電流駆動型または電流制限型のクロスカップリングインバータ回路である。LCタンクは、「発振電流ILCO」に比例する発振エネルギーを格納する。特性インピーダンスZLCOは、電流ILCOに基づいて、理想的な場合のこの共振回路の電圧振幅VLCOを定義している。
【0026】
【数1】
【0027】
実際の用途において、共振回路は、寄生抵抗要素によって減衰される。これらの損失を補償し、振幅を一定に保つために、クロスカップリング電流制御型のインバータの能動発振回路が必要になる。
【0028】
本発明の変形例によれば、信号処理ユニット、特に信号処理部は、積分された第1の位置信号におけるオフセット、および/または積分された位相シフトされた第2の位置信号におけるオフセット、および/または積分された第1の位置信号と積分された位相シフトされた第2の位置信号との間のゲインミスマッチを検出し、検出したオフセットを補償するための対応する負の補償信号、および/またはゲインミスマッチを補償するためのゲイン較正信号を積分器に供給する。これにより、オフセット電圧および/またはゲインミスマッチが、積分器の出力範囲および任意のアナログ・デジタル変換器の入力範囲をそれぞれ劣化させないようにすることができる。積分された第1の位置信号および/または位相シフトされた第2の位置信号におけるオフセットおよび/またはゲインミスマッチは、例えば、オフセット&ゲイン誤差検出ユニットによって検出される。オフセットおよびゲインミスマッチの検出と補償は、信号処理ユニットのアナログ信号処理に基づいており、第1の位置信号および第2の位置信号のピーク値、すなわち最大振幅および最小振幅を比較するために比較器のようなものである。代替的に、負の補償信号またはゲイン較正信号は、デジタル・アナログ変換器によってデジタル信号からアナログ信号、特に負のアナログ信号に変換される。負のデジタル補償信号またはゲイン較正信号は、例えば、任意のデジタル信号処理部が発生させる。
【0029】
本発明の変形例において、信号処理ユニットは、ローパスフィルタリングおよび較正を行う。ローパスフィルタリングではさらなるノイズ低減が行われ、較正は、積分された第1の位置信号と積分された位相シフトされた第2の位置信号との間のゲインミスマッチを補償するために行われる。
【0030】
本発明の特に好ましい変形例によれば、第1の入力部および第2の入力部は、第1のマルチプレクサに接続される。したがって、マルチプレクサは、第1の入力部の第1の位置信号と第2の入力部の位相シフトされた第2の位置信号との間を多重化するため、ならびに第1の位置信号および位相シフトされた第2の位置信号を選択的に信号処理部に転送するために使用される。したがって、信号処理部は、第1の位置信号と位相シフトされた第2の位置信号とを順次処理する。これにより、第1の位置信号および位相シフトされた第2の位置信号を処理することができる信号処理部が1つで済むので、本発明による信号処理ユニットを実現するための回路に必要な空間を削減することができる。マルチプレクサに必要な空間は、信号処理部に必要な空間よりも大幅に小さい。
【0031】
本発明の変形例によれば、第1の入力部および第2の入力部の各々は、増幅器および/または整流器に接続される。代替的に、第1のマルチプレクサの出力部は、増幅器および/または整流器に接続される。増幅器および/または整流器は、第1の位置信号および/または位相シフトされた第2の位置信号を前処理する。第1の代替例において、第1の位置信号および位相シフトされた第2の位置信号は、第1の入力部および第2の入力部に接続された別個の増幅器および/または整流器によって前処理される。これには、前処理を第1の位置信号および位相シフトされた第2の位置信号に対してそれぞれ特別に調整することができるという利点がある。第2の代替例において、第1の位置信号および位相シフトされた第2の位置信号は、同一の増幅器および/または整流器によって順次前処理される。これにより、必要な回路サイズが低減される。
【0032】
本発明の変形例において、信号処理ユニットは、テスト信号を第1のマルチプレクサに供給するためのテスト信号発生ユニットを備える。ここで、テスト信号は、様々なスケーリング係数を有することができる。テスト信号発生ユニットおよびマルチプレクサを使用することで、発生したテスト信号を信号処理部に適用することができる。信号処理部は、他の位置信号と同様にテスト信号を処理し、この処理結果と、適用されたテスト信号について既知の予想される結果とを比較することができる。このように、信号処理部の機能を確認することができる。異なるスケーリングを含むテスト信号を使用することで、異なる位置信号、特に振幅および/または周波数が異なる位置信号に対して信号処理部をテストすることができる。
【0033】
本発明の変形例によれば、第1のマルチプレクサは、入力部ごとに非反転信号および反転信号を供給する。
【0034】
本発明の好ましい変形例によれば、信号処理部は、多重化および積分された第1の位置信号および位相シフトされた第2の位置信号に疑似同期化インターリーブサンプリング方式を適用する。疑似同期化インターリーブサンプリング方式に従って、信号処理部は、単一の多重化された第1の位置信号および位相シフトされた第2の位置信号を使用して、積分された第1の位置信号および積分された位相シフトされた第2の位置信号から位置センサの移動ターゲットの位置を算出する。第1の位置信号(正弦波信号)および位相シフトされた第2の位置信号(余弦波信号)は、交互に整数周期にわたって積分される。特に好ましい変形例において、第1の位置信号および位相シフトされた第2の位置信号の極性は、連続測定中にスワッピングされる。このスワッピングは、例えば、マルチプレクサの非反転出力または反転出力を、対応する入力信号に使用することで実現される。第1の位置信号および位相シフトされた第2の位置信号におけるこのスワッピングまたはチョッピング技術によって、回路のあらゆるオフセットが取り除かれ、ノイズ(主に低周波ノイズおよび1/fノイズ)が低減される。
【0035】
実施例における疑似同期化インターリーブサンプリング方式は、第1の位置信号および位相シフトされた第2の位置信号の以下の例示的な測定に基づいている:
1.正極性をもつ第1の位置信号(tn-3
2.正極性をもつ位相シフトされた第2の位置信号(tn-2
3.負極性をもつ位相シフトされた第2の位置信号(tn-1
4.負極性をもつ第1の位置信号(t
5.正極性をもつ第1の位置信号(tn+1
6.正極性をもつ位相シフトされた第2の位置信号(tn-2
7.以下同様。
【0036】
これらの測定値から、以下の平均値が算出される:
a.時間tに対する第1の位置信号の平均値=(tn-3における第1の位置信号)-(tにおける第1の位置信号)
b.時間tに対する位相シフトされた第2の位置信号の平均値=(tn-2における位相シフトされた第2の位置信号)-(tn-1における位相シフトされた第2の位置信号)
c.時間tm+1に対する第1の位置信号の平均値=(tn+1における第1の位置信号)-(tにおける第1の位置信号)
d.時間tm+1に対する位相シフトされた第2の位置信号の平均値=(tn+2における位相シフトされた第2の位置信号)-(tn-1における位相シフトされた第2の位置信号)
e.以下同様。
【0037】
したがって、時間t、tm+1などについて、第1の位置信号の平均値および位相シフトされた第2の位置信号の平均値が算出される。これらは、その後、信号処理部によって使用されて、位置センサの移動ターゲットの位置が算出される。したがって、第1の位置信号および位相シフトされた第2の位置信号がマルチプレクサによって順次処理されるが、位置計算は、同じ時点、すなわち時間t、tm+1などにおける第1の位置信号の平均値と位相シフトされた第2の位置信号の平均値に基づいて行われる。これは、疑似同期化と呼ばれる。
【0038】
好ましくは、第1のマルチプレクサのサンプリング周波数は、位置センサの信号周波数よりも高く、特に少なくとも16倍高く、より好ましくは少なくとも32倍高い。
【0039】
本発明の変形例において、信号処理ユニットは、出力部に供給されるAC励磁信号の振幅を検出するためのピーク検出器と、信号処理部の前の第2のマルチプレクサと、をさらに備える。ここで、出力部に供給されるAC励磁信号は、第1のマルチプレクサにも供給される。信号処理部は、第1のマルチプレクサに供給された処理されたAC励磁信号の振幅と、第2のマルチプレクサに供給されたピーク検出器で検出された振幅とを比較する。本変形例において、励磁信号が第1のマルチプレクサおよびピーク検出器に供給される。第1のマルチプレクサが励磁信号を出力信号として選択した場合、信号処理ユニットは、この信号の振幅を決定することができる。さらに、励磁信号の振幅は、独立したピーク検出器によって検出される。第2のマルチプレクサは、信号処理ユニットで算出された振幅とピーク検出器で検出された振幅とを信号処理部に順次転送するために使用される。信号処理部は、これら2つの振幅を比較して、さらなる診断機能を提供することができる。
【0040】
本発明の変形例によれば、ピーク検出器は、出力部においてダイオードとRCローパスフィルタとを有する演算増幅器を備える。
【0041】
従来技術および本発明によれば、移動ターゲットは、あらゆる種類の導電性材料、特にアルミニウム、鋼などの金属、またはプリント銅層を有するプリント回路基板であり得る。通常、誘導型位置センサは、金属製ターゲットを備える。
【図面の簡単な説明】
【0042】
以下、図に示す実施形態を参照して本発明をさらに説明する。
図1】誘導型位置センサの模式的な回路図(a)および線形の誘導型位置センサのレイアウト(b)を示す図である。
図2】誘導型位置センサの一般的な信号処理ブロック図である。
図3】誘導型位置センサのブロック図である。
図4】本発明による信号処理ユニットを備える誘導型位置センサの第1の実施形態の詳細を示すブロック図である。
図5】RC積分器の回路図である。
図6】本発明による信号処理ユニットを備える誘導型位置センサの第2の実施形態の詳細を示すブロック図である。
図7】ピーク検出器の回路図である。
図8】本発明による完全な誘導型位置センサのインターフェース回路のアーキテクチャの詳細を示す図である。
図9図8に示すアーキテクチャの詳細のアナログフロントエンド回路の詳細を示す図である。
図10】本発明による信号処理ユニットによって実現される疑似同期化インターリーブサンプリング方式を示す図である。
図11】積分および変換プロセスの詳細を示す図である。
図12】ADCスケジューリングのための信号フローの模式図である。
図13】正弦波および余弦波チャネルのためのデジタル後処理法のアーキテクチャを示す図である。
図14】本発明におけるこの種類の振幅測定のための基本的なアナログ信号積分フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1(a)は、誘導型位置センサ2の模式的な回路図である。誘導型位置センサ2は、金属製ターゲットのような移動ターゲット11を検出するための磁気誘導の原理に基づく装置である。電磁界と機械的に相互作用するこの原理を用いることで、メカトロニクス、電子モータ、および物体検出など、様々な用途に対応する多種多様なセンサを作製することができる。信頼性が高いこの誘導型感知技術の本質的な利点は、移動ターゲット11に接触することなく位置検出を実施することができることである。
【0044】
主に、このタイプの誘導型位置センサ2は、2つの出力コイル、すなわち第1の受信コイル15および第2の受信コイル16を有する変圧器とすることができる。模式的な回路図が図1(a)に示されている。送信コイルまたは励磁コイル14は、キャパシタ33に相互接続され、発振器9(LC発振器)を共振させる。交番磁界は、電流(電圧)を受信コイル15および16に誘導する。この誘導方法は、導電性ターゲット(移動ターゲット)11を変圧器の上方に導入することで影響を与えることができる。導電性ターゲット11は、磁界のショートカットのように作用し、誘導電流を操作する。この種類の振幅変調は、導電性ターゲット11の機械的位置に依存する。
【0045】
図1(b)は、線形の誘導型位置センサ2のレイアウトを示している。このタイプの誘導型センサコイルでは、受信コイル15および16を正弦波および余弦波の形状にレイアウトするのが特徴的である。この洗練されたコイルレイアウトと導電性ターゲット11により、受信コイル15および16において位置に依存した正弦波および余弦波の振幅変調信号が得られる。
【0046】
送信コイル14ならびに受信コイル15および16のレイアウトは、メカトロニクスのサブシステムの幾何学的寸法および形状に容易に適合させることができる。これにより、この位置感知法での高い柔軟性および汎用性を得ることができる。コイル14,15および16は、標準化された多層プリント回路基板(PCB)を使用することで、コスト効率よく作製され得る。この位置感知アプローチの課題は、堅牢で正確なセンサ・信号評価技術である。本発明が提案する信号処理ユニット1は、誘導型位置センサシステムの効率的で正確な電子的成果を提供する。
【0047】
図2は、誘導型位置センサ2の一般的な信号処理ブロック図である。誘導型センサ要素は、一次巻線としての励磁コイル14と、二次巻線としての2つの受信コイル15および16とを有する変圧器とすることができる。導電性ターゲット11は、受信コイル15および16へのAC信号結合に影響を与え、位置に応じた振幅変調を受信コイル15および16にもたらす。送信コイル14の一次巻線内のAC励磁信号8は、送信コイル14のコイル誘導性と、並列のキャパシタ33とから構成される共振発振器(LCO)9で発生する。並列の抵抗器34は、いくつかの寄生要素の電気的損失を示す。発振は、主に振幅を所定の範囲で一定に保つために発振器コントローラ17によって制御される。受信コイル15および16は、主に振幅レベルを測定する機能を有する、いわゆるアナログフロントエンド回路(AFE)35に接続される。AFEは、入力マルチプレクサ19と、増幅器21と、整流器22と、を備えることができる。振幅値は、その後、好ましくはアナログ・デジタル変換器(ADC)13によってデジタル数値に変換される。最後に、信号処理部10、特にデジタル信号処理部(DSP)は、デジタルローパスフィルタリングおよび較正を用いて位置を算出する。
【0048】
図3は、誘導型位置センサ2のブロック図である。誘導型位置センサ2に不可欠なのは、センサ信号を励振するための共振LCO9である。LCO9は、励磁コイル14とキャパシタ33とを備える。LC発振器の周波数は安定しておらず、温度やその他の電気的または機械的な影響によって変化する可能性がある。振幅レベルが高すぎたり低すぎたりした場合の歪みを回避するために、LC発振を特定の範囲で駆動する発振器コントローラ17が必要である。発振器コントローラ17は、LCO9に内蔵されるか(図2)、そこに接続される(図3)。
【0049】
また、励磁コイル14ならびに受信コイル15および16の間の結合係数(平面受信コイルの誘導)は、広い範囲で変化し得る。この振幅低減の影響は、ADC13の入力範囲に対して第1の位置信号3および第2の位置信号4の受信振幅信号を適切に保つために、ゲイン&オフセットコントローラ37によって補償される。反復アルゴリズムは、自動ゲインと範囲制御のように機能する。デジタル部分は、安定した高周波発振器(HFO)38で動作し、3つの複雑なプロセスを並行して実行する。まず、信号処理部10は、ローパスフィルタリング(ノイズ低減)と位置計算のための信号処理アルゴリズムを実行する。次に、有限状態機械が重要なプロセスおよびセンサのパラメータを制御する。最後に、測定および処理されたセンサデータが通信インターフェース39に供給される。
【0050】
コイルセンサは、共振周波数FLCOおよび品質QLCOによって特徴付けられる。
【0051】
【数2】
【0052】
図4は、本発明による信号処理ユニット1を備える誘導型位置センサ2の第1の実施形態の詳細を示すブロック図である。
【0053】
本発明による信号処理ユニット1は、誘導型位置センサ2用のものである。ここで、誘導型位置センサ2は、第1の位置信号3および第2の位置信号4、特に正弦波位置信号および余弦波位置信号を供給する。本発明の信号処理ユニット1は、
・ 第1の位置信号3のための第1の入力部5、および第2の位置信号4のための第2の入力部6と、
・ AC励磁信号8を誘導型位置センサ2に供給するための出力部7と、
・ AC励磁信号8を発生するための、出力部7に接続された発振器9と、
・ 第1の位置信号3と第2の位置信号4から、誘導型位置センサ2の移動ターゲット11の位置を算出するための信号処理部10と、
・ 第1の位置信号3の整数周期数および第2の位置信号4の整数周期数を積分するための少なくとも1つの積分器12と、
を備える。
【0054】
信号処理部10は、積分された第1の位置信号3と積分された第2の位置信号4から、誘導型位置センサ2の移動ターゲット11の位置を算出する。
【0055】
第1の入力部5および第2の入力部6は、ESD保護・EMCフィルタ39によって保護され得る。
【0056】
第1の位置信号3および第2の位置信号4は、アナログ信号である。信号処理ユニット1は、第1の位置信号3および第2の位置信号4を対応する第1のデジタル位置信号および対応する第2のデジタル位置信号に変換するためのアナログ・デジタル変換器(ADC)13を備える。ADC13は、積分器12の後、且つ信号処理部10の前に配置される。したがって、アナログ・デジタル変換器は、積分された第1の位置信号3および積分された第2の位置信号4を変換する。信号処理部10は、デジタル信号処理部(DSP)である。信号処理部10は、誘導型位置センサ2の移動ターゲット11の位置を算出するためのCORDIC/arctanアルゴリズムを実装する。
【0057】
例えば図3の左側に詳細に示すように、誘導型位置センサ2は、AC励磁信号8を受信する少なくとも1つの送信コイル14と、第1の位置信号3を供給する第1の受信コイル15と、第2の位置信号4を供給する第2の受信コイル16と、を備える。図4では、これらの詳細をボックスで置き換えているが、一般的には図3に示すように実装することができる。
【0058】
LCO9は、LC発振器であり、好ましくは電流駆動型または電流制限型のクロスカップリングインバータ回路である。LCO9は、送信コイル14と、キャパシタ33と、いくつかの寄生要素の電気的損失を示す抵抗器34と、を備える。
【0059】
本発明は、第1の位置信号3および第2の位置信号4の有効な振幅値を評価するために、周波数同期積分方式を用いた新しいアプローチに基づいている。周波数同期積分とは、周期の整数NINTが連続的に積分されることを意味する。積分時間が同程度に短い場合、積分器12はアナログの1次ローパスフィルタのように動作する。正確にNINTの周期を積分することで、「アナログ積分器」12は、基本波とLC発振周波数の倍数で「ゼロ」をもつ「アナログFIRフィルタ」になる。これに関して、積分周期の数は、この準アナログローパスFIRフィルタの「ゼロ」の数を定義する。同等の1次RCローパスフィルタが減衰を発生させ、残りの「正弦波リップル」がSN比を制限する。積分器12のアプローチは、リップルまたはその他の周波数に関連する影響を排除した、NINT個の整流された周期の正確な積分された「平均値評価」として理解することもできる。
【0060】
従来技術で知られているRCローパスフィルタのアプローチと本発明による積分器12のアプローチは、回路の実装の手間とサイズに関して同等である。RCローパスフィルタの回路のサイズに関する欠点として、ADC13の前のアンチエイリアスフィルタの機能性が挙げられる。ADC13のサンプリング周波数によっては、高次ローパスフィルタリングが必要になる。この場合、直列に複数のローパスフィルタ段が必要になる。ローパスフィルタのRC時定数「R*C」が減衰(-3dBのコーナー周波数)を定義するのに対して、積分器12の時定数「1/Rint*Cint」は、ゲイン係数のように作用する。RintおよびCintの値を単純に小さくすれば、高いゲイン値に達することができる。さらに、アナログ積分プロセス全体が「時間経過に伴う」増幅のように機能し、積分周期の数NINTが追加のゲイン係数のように作用する。
【0061】
図4に示す実施形態によれば、第1の入力部5および第2の入力部6は、第1のマルチプレクサ19に接続される。信号処理部10は、多重化および積分された第1の位置信号5および位相シフトされた第2の位置信号6に疑似同期化インターリーブサンプリング方式を適用する。
【0062】
図5は、RC積分器12の詳細な回路図である。RC積分器12の入力部44は、抵抗器41の第1の端子に接続される。抵抗器41の第2の端子は、RC積分器12の演算増幅器40の反転入力部に接続される。演算増幅器40の非反転入力部は、接地に接続される。
【0063】
キャパシタ42は、演算増幅器40の反転入力部と演算増幅器40の出力部との間に配置される。スイッチ43は、キャパシタ42と並列に配置される。スイッチ43は、積分器の初期状態をゼロボルトに設定するために、すなわちキャパシタ42を放電するために必要となる。
【0064】
図6は、本発明による信号処理ユニットを備える誘導型位置センサの第2の実施形態の詳細を示すブロック図である。図6に示す第2の実施形態は、出力部7に供給されるAC励磁信号8の振幅を検出するためのピーク検出器27と、信号処理部10の前の第2のマルチプレクサ28とをさらに備える点で、図4に示す第1の実施形態とは異なる。出力部7に供給されるAC励磁信号8は、第1のマルチプレクサ19にも供給される。信号処理部10は、第1のマルチプレクサ19に供給された処理されたAC励磁信号8の振幅と、第2のマルチプレクサ28に供給されたピーク検出器27で検出された振幅とを比較する。
【0065】
図7は、図6に示す第2の実施形態のピーク検出器27の回路図である。ピーク検出器27の入力部は、演算増幅器29の反転入力部に接続される。演算増幅器の非反転入力部は、接地に接続される。演算増幅器の出力部は、ダイオード30のアノードに接続される。ダイオード30のカソードは、ピーク検出器の出力部47に接続される。さらに、ダイオード30のカソードは、フィードバックループとして演算増幅器29の反転入力部に接続される。RCローパスフィルタ31は、ピーク検出器27の出力部47と接地との間に接続される。
【0066】
車載センサアプリケーションにとって重要な点は、主に機能安全要件をサポートするための診断機能である。診断機能を強化したアナログ信号経路を図5に示す。基本的なアプローチは、振幅を測定するためにLC発振器信号をAFE35に直接供給することである。並行して、比較および整合性のために振幅信号が連続的に供給されるように、ピーク検出器27が実装される。図6に詳細に示すピーク検出器27は、冗長ハードウェア実装を示し、演算増幅器29と、ダイオード30と、RCローパスフィルタ31と、から構成される。これらの機能強化により、AC励磁信号8に対してハードウェア的に異なる2つの振幅測定アプローチが利用可能になる。AFE35は、(実効値に似た)積分された振幅値を決定し、ピーク検出器27は、正の位相および負の位相の振幅ピーク値を直接供給する。これらの測定値が等しいかどうかの比較は、信号処理部10で行われる。
【0067】
図8は、本発明による誘導型位置センサ2のインターフェース回路のアーキテクチャの詳細を示す図である。図9は、図8に示すアーキテクチャの詳細のAFE35の詳細を示す図である。
【0068】
AFE35は、差動回路で実装される。これにより、主に歪みと電源ノイズに関する耐性が向上する。プログラマブルゲイン抵抗器ネットワークを含む低ノイズ計装増幅器21は、EMCフィルタ39を介してセンサコイル15および16に直接接続される。整流器22は、基本的にCMOS送信ゲートスイッチであるミキサを使用して実装される。これは、位相遅延されたLCOクロック信号と増幅器21の出力部との乗算を実現する。アナログ信号処理経路の最終段は、積分器12である。これは、広い範囲の積分時定数に達するように、プログラマブル抵抗器「RINT」およびキャパシタ「CINT」のアレイから構成される。さらに、差分出力値をゼロに強制する積分器12の「リセット」機能を実現するようにスイッチングネットワークが実装される。AFE35は、積分器段でのアナログオフセット補償を含む。
【0069】
センサコイル15および16は、励磁コイル14から直接リード線へのクロスフィードまたはクロストーク、あるいはコイルレイアウトの他の非線形性の影響を受ける。これは、LC発振器のレイアウトに依存する振幅VOFFS sinおよびVOFFS cosをそれぞれ推測することで考慮される。また、異なるコイル結合(減衰)係数CATT sinおよびCATT cosによるゲインミスマッチが考慮される。受信コイル信号Ssin(t)およびScos(t)の整流後、この結合効果は、静的なオフセット電圧
【0070】
【数3】
【0071】
および
【0072】
【数4】
【0073】
のように示され、生のセンサ信号3および4に加えて積分される。特に小さなコイルレイアウトの場合、これらのオフセット振幅は、生のセンサ信号3および4のサイズに達することができる。これらのオフセットの補償は、積分器12への追加の入力経路として相補的な負の電圧を追加することで行われる。デジタル部分(較正値)によって制御されるデジタル・アナログ変換器(DAC)18は、これらの電圧VDAC sinおよびVDAC cosを発生させる。これにより、オフセット電圧が積分器12の出力範囲およびADC13の入力範囲を劣化させないことを保証することができる。
【0074】
【数5】
【0075】
マルチプレクサ19は、AFE35の差動入力チャネルを定義し、有限状態機械(FSM)シーケンサモジュールによって制御される。これは、低抵抗のCMOS送信ゲートスイッチから構成される。マルチプレクサ19の入力部は、誘導型位置センサ2の第1の受信コイル15(正弦波コイル)および第2の受信コイル16(余弦波コイル)に直接接続される。テスト信号発生ユニット23に接続された「テスト・イン」チャネルは、診断のために実装される。LCO9のスケーリングされた電圧は、完全なAFE35およびADC13の経路の自己テストのためにここで生成される。増幅器21の設定と積分器12の時定数を検証するために、特定の様々なスケーリング係数が必要である。さらに、このマルチプレクサ19は、入力部ごとに反転および非反転信号を供給する。
【0076】
LC発振器9は、主に電流駆動型または電流制限型のクロスカップリングインバータ回路である。LCタンクは、「発振電流ILCO」に比例する発振エネルギーを格納する。特性インピーダンスZLCOは、電流ILCOに基づいて、理想的な場合のこの共振回路の電圧振幅VLCOを定義している。
【0077】
【数6】
【0078】
実際の用途において、共振回路は、寄生抵抗要素によって減衰される。これらの損失を補償し、振幅を一定する保つために、クロスカップリング電流制御型のインバータの能動発振回路が必要になる。ピーク検出器27は、発振振幅VLCOを連続的に監視し、これは、振幅・周波数モニタとも呼ばれる発振器コントローラ17によって評価される。発振器コントローラ17は、プログラマブルCMOS電流源ILCOpおよびILCOnに対する制御値を計算し、所定の振幅に到達させ、その振幅を一定レベルに保つ。
【0079】
LC発振の正弦波信号は、センサコイル15および16、EMCフィルタ39、および入力マルチプレクサ19におけるいくつかの寄生効果のために位相遅延される。主に整流中の歪みを回避するために、位相遅延モジュール48が位相同期クロック信号を整流器22に供給する。
【0080】
まず、周波数モニタ17は、LC発振器9とデジタル発振器38との周波数比を評価する(周波数カウンタの原理)。共振周波数は、外付けの構成要素によって事前に定義され、2MHz~6MHzの範囲にあると仮定される。共振周波数がこの範囲外の場合、センサインターフェースの動作が停止する。周波数のほかに、LC発振器の振幅も監視される。振幅が大きくなりすぎた場合、歪みの影響でセンサの性能が劣化する可能性がある。振幅が小さすぎる場合、センサの位置検出のための信号品質は、ノイズの増加および分解能の低減による影響を受ける。さらに、このモジュールは、振幅を所定の範囲に保つレベル制御処理部(PID制御)を含む。
【0081】
デジタル発振器38は、オンチップの緩和発振器であり、温度が補償され、ATEテスト中に較正される。発生したクロック信号は、3%の正確な時間ベースとして扱うことができる。
【0082】
FSMシーケンサ49は、測定制御サブシステムであり、LC発振器9と同期して動作する。その基本的な動作は、積分サイクルのシーケンス、リセット位相、マルチプレクサチャネルの設定、およびサンプル変換スキームを管理することである。
【0083】
図8には、信号処理部10および信号処理ユニットコントローラ36が単一のモジュールとして示されている。このモジュールは、ADCサンプル値をフィルタリングするためのデジタル信号処理部と、位置または角度を計算するためのCORDICアルゴリズムと、測定サイクルを制御するためのパラメータセットと、いくつかの測定値を分析および診断するためのいくつかの機能と、を備える。
【0084】
図10は、本発明による信号処理ユニットによって実現される疑似同期化インターリーブサンプリング方式を示している。本発明にとって重要な点は、測定の時間的連続性と平均値の計算である。この測定アプローチは、単一の多重化されたアナログ経路からの値を利用する。さらに、チャネル多重化によって引き起こされたサンプリング遅延を補償する。正弦波チャネル(第1の位置信号3)および余弦波チャネル(第2の位置信号4)は、マルチプレクサ19を使用して交互に測定され、その間に極性が「スワッピング」される。入力チャネル(センサコイル15,16)におけるこのスワッピングまたはチョッピング技術によって、回路のオフセットが取り除かれ、ノイズ(主に低周波ノイズおよび1/fノイズ)が低減される。
【0085】
図10は、インターリーブサンプリング方式を示している。円は新しく算出された平均値の時点tを定義している。この処理により、正弦波チャネルおよび余弦波チャネルで等しい、2.5ADC変換ステップの測定値の遅延が発生する。
【0086】
インターリーブサンプリング方式は、4つの連続した変換ステップで処理され得る:
1.時間ステップtn-3における正極性をもつ正弦波チャネル:
SIN[tn-3]
2.時間ステップtn-2における正極性をもつ余弦波チャネル:
COS[tn-2]
3.時間ステップtn-1における負極性をもつ余弦波チャネル:
COS[tn-1]
4.時間ステップtにおける負極性をもつ正弦波チャネル:
SIN[tn]
5.時間ステップtn+1における正極性をもつ正弦波チャネル:
SIN[tn+1]
6.時間ステップtn+2における正極性をもつ余弦波チャネル:
COS[tn+2]
7.以下同様。
【0087】
4つの値A SIN,A COS,A COS,A SINを捕捉した後に、以下の式で平均値の計算が実行される。以下の平均値の計算には、2つの新しいサンプル(例えば上記のステップ5および6)が十分である:
【0088】
【数7】
【0089】
この方式を用いることで、ADCのサンプリングレートと比べて、チャネルのスループットレートを半分にすることができる。疑似同期化とは、チャネルと極性が互いに遅れてサンプリングされたとしても、サンプリング周波数が位置センサ自体の信号周波数の約32倍(またはそれ以上)であれば、正弦波の値
【0090】
【数8】
【0091】
および余弦波の値
【0092】
【数9】
【0093】
のサンプリング時点は(ほぼ)同じであることを意味する。
【0094】
アナログ積分位相は、NINT(整数)個の位相の積分を正確に行うために、共振LC発振器9と同期して動作する必要がある。この積分位相の後に、アナログ積分回路12のリセットが発振位相全体に対して行われる。さらに、このリセット位相は、演算増幅器固有のオフセットキャンセルに使用される。積分および変換プロセスの詳細が図11に示されている。本発明の重要な成果は、LC発振に基づく積分と、デジタルクロックで実行されるアナログ・デジタル変換プロセスとの間に、高度な同期手順を実現することである。この種類の同期を実現するために、入力電圧を捕捉するための非同期型サンプル&ホールド段を有するSAR・ADCが実現される。デジタルクロックの周波数は、LCOの周波数よりも最低10倍高いと推定される。
【0095】
図12の信号フローに基づく詳細な説明は次の通りである。ADCのサンプリング位相は、積分位相の最後から2番目のLCO周期でアクティブになる(M.1)。これにより、サンプリング期間が最後の積分サイクルよりも若干長くなる(M.2)。ADCのサンプリング位相は、積分器リセット位相として配置されたLCOクロックの正エッジで正確に閉じられる(M.3)。ADCのサンプリング位相が閉じられた後に、アナログで捕捉された値は、短い時間の「同期」ウィンドウ(M.6)の間格納される。次のアナログ・デジタル変換位相(SAR原理)は、デジタルクロックに同期して開始される(M.7)。
【0096】
提案する信号処理アーキテクチャの重要な強化点は、診断目的で複数のアナログチャネルをサンプリングできることである。最新のミックスドシグナル技術で実現されたSAR・ADCは、14ビットの精度で数MS/sの変換レートを提供し、本発明の要件に最適に適合する。図12は、このADCスケジューリングの模式的な信号フローを示している。LC発振器のプログラマブルな周期数NINT(K.2)に基づいて、積分プロセスの持続時間は(K.1)によって表される。プログラマブルな「積分器リセット」位相(K.3)は、本実施例において正確に1LCO周期である。これにより、測定の繰り返し時間TINTPが発生する(E.15)。ADC変換時間TADCが積分プロセスの持続時間TINTPよりも大幅に短い場合、中間変換を適用することができる。次の条件
【0097】
【数10】
【0098】
が有効であれば、積分プロセス中に2回のADC変換を行うことができる。網掛け部分は、SAR・ADCのためのサンプリング位相を示している。コイルチャネル変換は、積分器リセット位相と同期して開始される。その後、診断変換が実行される。
【0099】
【数11】
【0100】
本発明は、誘導型センサインターフェース回路のための洗練されたアナログおよびデジタル信号処理経路を備える。正弦波および余弦波チャネルのためのデジタル後処理方法のアーキテクチャが図13に示されている。図8に示す「制御&DSP&診断」ブロックは、このデジタル処理構造を含む。
【0101】
図10に示すように、第1の処理段段では、チャネル逆多重化と疑似同期化とを組み合わせて実行し、生のサンプル値SSIN[tm],SCOS[tm]が提供される。プログラマブル1次IIRローパスフィルタは、位置計算精度を向上させるノイズ低減に利用することができる。1次IIRローパスフィルタは、以下によって定義される:
【0102】
【数12】
【0103】
センサの精度を最も低減させるのは、オフセットと振幅のミスマッチである。「オフセット&ゲイン誤差検出」ブロックは、動作中の各正弦波チャネルおよび余弦波チャネルの最小値と最大値を監視している。これらの「ピーク」値に基づいて、センサのオフセットOSINおよびOCOSとゲインミスマッチGERRを算出することができる。さらに、オフセットとゲインの補正値は、外部較正の実行で決定され、専用の較正レジスタに格納され得る。次の処理段において、センサ値は以下のように補正される。
【0104】
【数13】
【0105】
最後に、位置または角度が典型的なCORDICアルゴリズムで計算される。
【0106】
【数14】
【0107】
以下、本発明のゲインおよびオフセットの補正方法を詳細に説明する。これは、回転式センサの場合は自動で行うことができる。図8および図9に示すように、算出されたセンサのオフセットOSINおよびOCOS値は、アナログ補償値、DAC電圧相当値COFFS sin(VDAC sin)およびCOFFS cos(VDAC cos)、ならびに上述したデジタル値に分割されて、高精度な位置計算に適用される。VDACの分解能には限界があるので、オフセットを完全に除去することはできない。これらの値によるアナログオフセット補償を提供することで、あたらしい測定および算出されたセンサのオフセット値OSINおよびOCOSをその量だけ先に低減させることができる。全体的なオフセットおよびゲインの補償手順は、以下の3つの連続したステップに細分化される:
・ 第1の反復:DACを使用したアナログオフセット補償、
・ 第2の反復:PGAおよび積分器の時定数を使用したアナログゲイン適応、および
・ 第3の反復:残りのオフセットOSINおよびOCOS、ならびにゲインミスマッチGERRのデジタル計算。
【0108】
デジタルオフセットまたはデジタルピーク振幅値が所定の限界値から逸脱している場合、上述した3ステップの反復プロセスを再度実行する必要がある。
【0109】
図14は、本発明における振幅測定のための基本的なアナログ信号積分フローを示している。主に、測定手順は、NINTのサイクル積分周期とそれに続く積分器リセット位相のシーケンスである。このシーケンスは、LC発振器の周波数と位相に同期して実行される。図14(2)は、入力マルチプレクサ19後のコイル信号を示している。本実施例において、反転コイル信号および非反転コイル信号が示される。積分器リセット位相は、入力マルチプレクサ19の切り替えとコイル信号の整定に用いられる。図14(3)には、整流されたコイル信号が示されている。図14(4)には、コイル信号の積分プロセスが示されている。リセット位相の後、信号積分が開始され、最終的に変換のためにサンプル&ホールド段(図4)に取り込まれる。SAR・ADCにおける信号積分およびアナログ・デジタル変換は、並行して実行されるプロセスである。
【符号の説明】
【0110】
1:信号処理ユニット
2:誘導型位置センサ
3:第1の位置信号
4:第2の位置信号
5:第1の入力部(信号処理ユニット)
6:第2の入力部(信号処理ユニット)
7:出力部(信号処理ユニット)
8:励磁信号
9:発振器(LCO)
10:信号処理部
11:導電性ターゲット(移動ターゲット)
12:積分器(RC積分器)
13:アナログ・デジタル変換器(ADC)
14:送信コイル(励磁コイル)
15:第1の受信コイル(センサコイル)
16:第2の受信コイル(センサコイル)
17:発振器コントローラ(振幅&周波数モニタ)
18:デジタル・アナログ変換器(DAC)
19:第1のマルチプレクサ(入力マルチプレクサ)
20:出力部(第1のマルチプレクサ)
21:増幅器
22:整流器
23:テスト信号発生ユニット
24:テスト信号
25:非反転信号(第1のマルチプレクサ)
26:反転信号(マルチプレクサ)
27:ピーク検出器
28:第2のマルチプレクサ
29:演算増幅器(ピーク検出器)
30:ダイオード(ピーク検出器)
31:RCローパスフィルタ(ピーク検出器)
33:キャパシタ(励磁コイル)
34:抵抗器(励磁コイル)
35:アナログフロントエンド回路(AFE)
36:コントローラ(信号処理ユニット)
37:ゲイン&オフセットコントローラ
38:高周波発振器(HFO)(デジタル発振器)
39:ESD保護・EMCフィルタ
40:演算増幅器(RC積分器)
41:抵抗器(RC積分器)
42:キャパシタ(RC積分器)
43:スイッチ(RC積分器)
44:入力部(RC積分器)
45:出力部
46:入力部(ピーク検出器)
47:出力部(ピーク検出器)
48:位相遅延モジュール
49:FSMシーケンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【外国語明細書】