(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063767
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】耐油剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20240502BHJP
D06M 13/355 20060101ALI20240502BHJP
D21H 21/14 20060101ALI20240502BHJP
D21H 19/24 20060101ALI20240502BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C09K3/00 R ZAB
D06M13/355 ZBP
D21H21/14
D21H19/24 Z
B65D65/02 E
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181521
(22)【出願日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2022171693
(32)【優先日】2022-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100224605
【弁理士】
【氏名又は名称】畠中 省伍
(72)【発明者】
【氏名】池内 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】芥 諒
(72)【発明者】
【氏名】相原 麻里奈
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 達記
【テーマコード(参考)】
3E086
4L033
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AA02
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA24
3E086BB74
3E086DA08
4L033AB05
4L033AC04
4L033BA57
4L055AG77
4L055BE08
4L055BF08
4L055EA08
4L055EA10
4L055FA11
4L055GA05
4L055GA48
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基材(例えば、繊維、紙)に耐油性を付与できる新規な耐油剤を提供する。
【解決手段】下記式:
[式中、Y
-はカウンターアニオンであり、Xは直接結合又はn+m価の基であり、Rは炭素数6以上40以下の直鎖状または分岐鎖状の一価の炭化水素基であり、Zは炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、-N(R’)
2(式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はハロゲン原子であり、mは1以上10以下の整数であり、nは1以上3以下の整数であり、pは0以上5以下の整数である。]で表される化合物を含み、-X-R
nは-O-R及び-NHC(=O)-Rを含まない、耐油剤により、基材に耐油性を付与できる新規な耐油剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
[式中、
Y
-はカウンターアニオンであり、
Xは直接結合又はn+m価の基であり、
Rは炭素数6以上40以下の直鎖状または分岐鎖状の一価の炭化水素基であり、
Zは炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、-N(R’)
2(式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はハロゲン原子であり、
mは1以上10以下の整数であり、
nは1以上3以下の整数であり、
pは0以上5以下の整数である。]
で表される化合物を含み、
-X-R
nは-O-R及び-NHC(=O)-Rを含まない、耐油剤。
【請求項2】
Y-は、ハロゲン化物イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、及びカルボン酸イオンからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の耐油剤。
【請求項3】
Xは、直接結合、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)2-、-NR’-、-C(OR’)R’-、-C(OR’)(-)2、-N(-)2、2~4価の炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、2~4価の炭化水素芳香環、及び2~4価のヘテロ環
[式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である。]
からなる群から選択される少なくとも一種以上で構成されるn+m価の基である、請求項1又は2に記載の耐油剤。
【請求項4】
Rの炭素数が12以上である、請求項1又は2に記載の耐油剤。
【請求項5】
前記化合物の融点が40℃以上である、又は融点が存在しない、請求項1又は2に記載の耐油剤。
【請求項6】
前記化合物のn-ヘキサデカン接触角が10°以上である、請求項1又は2に記載の耐油剤。
【請求項7】
液状媒体を含み、
前記耐油剤の粘度が、前記化合物濃度14.8mg/mL、20℃において、5cP以上100cP以下である、請求項1又は2に記載の耐油剤。
【請求項8】
水分散液である、請求項1又は2に記載の耐油剤。
【請求項9】
紙用である、請求項1又は2に記載の耐油剤。
【請求項10】
フッ素化合物を含まない、請求項1又は2に記載の耐油剤。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の耐油剤における前記化合物が付着した、又は請求項1又は2に記載の耐油剤における前記化合物が繊維の有する水酸基に修飾された、繊維製品。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の耐油剤における前記化合物が付着した、又は請求項1又は2に記載の耐油剤における前記化合物が紙の有する水酸基に修飾された、耐油紙。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の耐油剤における前記化合物が付着した、又は請求項1又は2に記載の耐油剤における前記化合物がガラスの有する水酸基に修飾された、ガラス製品。
【請求項14】
食品包装材又は食品容器である、請求項12に記載の耐油紙。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の耐油剤で紙を外添処理又は内添処理する工程を含む、耐油紙の製造方法。
【請求項16】
下記式:
[式中、
Y
-はカウンターアニオンであり、
Rは炭素数6以上40以下の直鎖状または分岐鎖状の一価の炭化水素基であり、
Zは炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、-N(R’)
2(式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はハロゲン原子であり、
pは0以上5以下の整数である。]
で表される化合物。
【請求項17】
下記式:
[式中、
Y
-はカウンターアニオンであり、
Rは炭素数6以上40以下の直鎖状または分岐鎖状の一価の炭化水素基であり、
Zは炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、-N(R’)
2(式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はハロゲン原子であり、
pは0以上5以下の整数である。]
で表される化合物。
【請求項18】
下記式:
[式中、
Y
-はカウンターアニオンであり、
Xは直接結合又はn+m価の基であり、
Rは炭素数6以上40以下の直鎖状または分岐鎖状の一価の炭化水素基であり、
Zは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、-N(R’)
2(式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はハロゲン原子であり、
mは1以上10以下の整数であり、
nは1以上3以下の整数であり、
pは1以上5以下の整数である。]
で表される化合物を含む水分散体であって、
さらに、非フッ素界面活性剤、シリコーン、ワックス、有機酸、及び硬化剤からなる群から選択される少なくとも一種を含む、水分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は耐油剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種基材に撥水性や撥油性等を付与できる材料や方法の研究が進められている。特許文献1は、ピリジニウム化合物とフッ素化合物とを組み合わせて用いることで、繊維基材に撥水性及び撥油性を付与する方法を開示している。特許文献1に記載の発明において、含フッ素化合物が必須成分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基材(例えば、繊維、紙)に耐油性を付与できる新規な耐油剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は以下の態様を含む:
[項1]
下記式:
[式中、
Y
-はカウンターアニオンであり、
Xは直接結合又はn+m価の基であり、
Rは炭素数6以上40以下の直鎖状または分岐鎖状の一価の炭化水素基であり、
Zは炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、-N(R’)
2(式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はハロゲン原子であり、
mは1以上10以下の整数であり、
nは1以上3以下の整数であり、
pは0以上5以下の整数である。]
で表される化合物を含み、
-X-R
nは-O-R及び-NHC(=O)-Rを含まない、耐油剤。
[項2]
Y
-は、ハロゲン化物イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、及びカルボン酸イオンからなる群から選択される少なくとも一種である、項1に記載の耐油剤。
[項3]
Xは、直接結合、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)
2-、-NR’-、-C(OR’)R’-、-C(OR’)(-)
2、-N(-)
2、2~4価の炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、2~4価の炭化水素芳香環、及び2~4価のヘテロ環
[式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である。]
からなる群から選択される少なくとも一種以上で構成されるn+m価の基である、項1又は2に記載の耐油剤。
[項4]
Rの炭素数が12以上である、項1~3のいずれか一項に記載の耐油剤。
[項5]
前記化合物の融点が40℃以上である、又は融点が存在しない、項1~4のいずれか一項に記載の耐油剤。
[項6]
前記化合物のn-ヘキサデカン接触角が10°以上である、項1~5のいずれか一項に記載の耐油剤。
[項7]
液状媒体を含み、
前記耐油剤の粘度が、前記化合物濃度14.8mg/mL、20℃において、5cP以上100cP以下である、項1~6のいずれか一項に記載の耐油剤。
[項8]
水分散液である、項1~7のいずれか一項に記載の耐油剤。
[項9]
紙用である、項1~8のいずれか一項に記載の耐油剤。
[項10]
フッ素化合物を含まない、項1~9のいずれか一項に記載の耐油剤。
[項11]
項1~10のいずれか一項に記載の耐油剤における前記化合物が付着した、又は項1~10のいずれか一項に記載の耐油剤における前記化合物が繊維の水酸基に修飾された、繊維製品。
[項12]
項1~10のいずれか一項に記載の耐油剤における前記化合物が付着した、又は項1~10のいずれか一項に記載の耐油剤における前記化合物が繊維の水酸基に修飾された、耐油紙。
[項13]
項1~10のいずれか一項に記載の耐油剤における前記化合物が付着した、又は項1~10のいずれか一項に記載の耐油剤における前記化合物が繊維の水酸基に修飾された、ガラス製品。
[項14]
食品包装材又は食品容器である、項12に記載の耐油紙。
[項15]
項1~10のいずれか一項に記載の耐油剤で紙を外添処理又は内添処理する工程を含む、耐油紙の製造方法。
[項16]
下記式:
[式中、
Y
-はカウンターアニオンであり、
Rは炭素数6以上40以下の直鎖状または分岐鎖状の一価の炭化水素基であり、
Zは炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、-N(R’)
2(式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はハロゲン原子であり、
pは0以上5以下の整数である。]
で表される化合物。
[項17]
下記式:
[式中、
Y
-はカウンターアニオンであり、
Rは炭素数6以上40以下の直鎖状または分岐鎖状の一価の炭化水素基であり、
Zは炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、-N(R’)
2(式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はハロゲン原子であり、
pは0以上5以下の整数である。]
で表される化合物。
[項18]
下記式:
[式中、
Y
-はカウンターアニオンであり、
Xは直接結合又はn+m価の基であり、
Rは炭素数6以上40以下の直鎖状または分岐鎖状の一価の炭化水素基であり、
Zは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、-N(R’)
2(式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はハロゲン原子であり、
mは1以上10以下の整数であり、
nは1以上3以下の整数であり、
pは1以上5以下の整数である。]
で表される化合物を含む水分散体であって、
さらに、非フッ素界面活性剤、シリコーン、ワックス、有機酸、及び硬化剤からなる群から選択される少なくとも一種を含む、水分散体。
【発明の効果】
【0006】
本開示の耐油剤は、基材(例えば、繊維、紙)に耐油性を付与できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<用語の定義>
本明細書において用いられる場合、「n価の基」とは、n個の結合手を有する基、すなわちn個の結合を形成する基を意味する。また、「n価の有機基」とは、炭素を含有するn価の基を意味する。かかる有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基又はその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端又は分子鎖中に、1つ又はそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。
【0008】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素及び水素を含む基であって、炭化水素から水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、C1-20炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。環状基は鎖状の構造を含んでいてもよい。炭化水素基は、1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0009】
本明細書において、「各出現において独立して」、「互いにそれぞれ独立して」、「それぞれ独立して」又はこれと同様の表現が明示的に記載されているか否かに関わらず、例外である旨の記載がある場合を除き、化学構造中に複数出現し得る用語(記号)が定義される場合、各出現に独立して当該定義が適用される。
【0010】
本明細書において説明される化学構造は、当業者によって化学的に不可能または極めて不安定であると認識される化学構造を包含しないように理解されるべきである。
【0011】
<耐油剤>
本開示における耐油剤は基材(例えば、繊維基材、紙基材)に耐油性を付与するものである。本開示における耐油剤は、耐油剤に代えて、又は耐油剤に加えて、撥剤、撥水剤、撥油剤、及び耐水剤からなる群から選択される少なくとも一としても機能し得る。
【0012】
本開示の耐油剤における有効成分である化合物αはその構造上、液状媒体への分散性に優れ、本開示の耐油剤は性能が安定し得る。
【0013】
従来の有効成分としてポリマー型化合物を用いる耐油剤の場合、分子量分布が広く、不純物成分を比較的多く含む傾向がある。一方で、本願の耐油剤の有効成分は、低分子であり、分子量分布を狭く(単一化)することができ、性能が良好となり得る。
【0014】
本開示における耐油剤は化合物αを含む。本開示における耐油剤は化合物α単独であってもよい。本開示における耐油剤は、化合物α以外に、液状媒体等のその他成分を含んでもよい。
【0015】
本開示における耐油剤は炭素数8以上のフルオロアルキル基を有する化合物、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物、炭素数4以上のフルオロアルキル基を有する化合物、炭素数4以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物、パーフルオロアルキル基を有する化合物、フルオロアルキル基を有する化合物、及びフッ素原子を有する化合物からなる群から選択されるいずれかを有しなくてもよい。本開示における耐油剤は、これらのフッ素化合物を含まなくても、基材に耐油性を付与し得る。
【0016】
本開示における耐油剤は好適には液状媒体とともに分散液(特に水分散液)として利用し得る。耐油剤の粘度は、前記化合物濃度14.8mg/mL、20℃において、1cP以上、5cP以上、10cP以上、30cP以上、50cP以上、75cP以上、又は90cP以上であってよく、好ましくは5cP以上である。耐油剤の粘度は、前記化合物濃度14.8mg/mL、20℃において、500cP以下、300cP以下、200cP以下、100cP以下、75cP以下、50cP以下、30cP以下、又は20cP以下であってよく、好ましくは100cP以下である。
【0017】
〔化合物α〕
本開示における化合物αは、基材に付着して、基材に撥液性を付与し得るものである。
【0018】
化合物αのHD(n-ヘキサデカン)接触角は10°以上、15°以上、25°以上、35°以上、55°以上、55°以上、又は65°以上であってよい。化合物αのHD接触角は100°以下、90°以下、又は75°以下であってよい。化合物αが上記の下限以上のHD接触角を有することにより、基材に良好に撥液性(特に撥油性)を付与し得る。HD接触角とは、化合物αのスピンコート膜に対する静的接触角であって、スピンコート膜上に、2μLのHDを滴下し、着滴1秒後の接触角を測定して得られるものをいう。
【0019】
化合物αの水接触角は35°以上、40°以上、45°以上、50°以上、55°以上、65°以上、75°以上、85°以上、90°以上、又は100°以上であってよい。化合物αの水接触角は160°以下、140°以下、130°以下、120°以下、110°以下、100°以下、又は90°以下であってよい。化合物αが上記の下限以上の水接触角を有することにより、基材に良好に撥液性(特に撥水性)を付与し得る。水接触角とは、化合物αのスピンコート膜に対する静的接触角であって、スピンコート膜上に、2μLの水を滴下し、着滴1秒後の接触角を測定して得られるものをいう。
【0020】
化合物αの融点は30℃以上、40℃以上、60℃以上、80℃以上、100℃以上、又は120℃以上であってよく、好ましくは40℃以上である。化合物αの融点は200℃以下、150℃以下、100℃以下、又は50℃以下であってよい。化合物αは融点が存在しなくてもよい。
【0021】
化合物αの分子量は200以上、300以上、500以上、又は750以上であってよい。化合物αの分子量は3000以下、2500以下、2000以下、1500以下、1000以下、750以下、又は500以下であってよい。
【0022】
本開示における化合物αは炭素数8以上のフルオロアルキル基、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基、炭素数4以上のフルオロアルキル基、炭素数4以上のパーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基、フルオロアルキル基、及びフッ素原子からなる群から選択されるいずれかを有しなくてもよい。化合物αがこれらのフッ素含有基を含まなくても、基材に耐油性を付与し得る。
【0023】
本開示における化合物αは活性水素含有基を有しなくてもよい。活性水素基含有基の例としてはアミノ基(カルボニル基に隣接しないアミノ基、例えば、第一級アミノ基、又は第二級アミノ基)、ヒドロキシ基、及びカルボキシル基が挙げられる。特に本開示における化合物αは耐油性の観点からヒドロキシ基を有しなくてもよい。
【0024】
化合物αは下記式:
[式中、
Y
-はカウンターアニオンであり、
Xは直接結合又はn+m価の基であり、
Rは炭素数6以上40以下の直鎖状または分岐鎖状の一価の炭化水素基であり、
Zは炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、-N(R’)
2(式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はハロゲン原子であり、
mは1以上10以下の整数であり、
nは1以上3以下の整数であり、
pは0以上5以下の整数である。]
で表されてよい。ここで、X-R
nは-O-R及び-NHC(=O)-Rを含まなくてよい。
【0025】
[Y-]
Y-はピリジニウムのカウンターアニオンであり、Y-の例としては、ハロゲン化物イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等、例えば、塩化物イオン)、スルホン酸イオン、リン酸イオン、及びカルボン酸イオンからなる群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0026】
[X]
Xは直接結合又はn+m価の基である。Xは、m個のピリジニウムメチレン基とn個のRとを繋ぐリンカーとして機能する。
【0027】
nは、Xと結合するRの数であり、1以上3以下の整数であってよい。nは1以上、2以上、又は3以上であってよい。nは3以下、2以下、又は1以下であってよく、例えば2以下である。
【0028】
mは、Xと結合するピリジニウムメチレン基の数であり、1以上10以下の整数であってよい。mは1以上、2以上、4以上、又は6以上であってよい。mは9以下、6以下、3以下であってよく、例えば2以下である。
【0029】
Xの分子量は10以上、50以上、100以上、200以上、300以上、500以上、又は750以上であってよい。Xの分子量は3000以下、2500以下、2000以下、1500以下、1000以下、750以下、又は500以下であってよい。
【0030】
Xは脂肪族基(不飽和脂肪族基又は飽和脂肪族基)又は芳香族基であってよい。
【0031】
Xは、アミド基、ウレア基、ウレタン基、及びイミドからなる群から選択される一以上を有していてもよい。そのようなXの例としては、
-O-C(=O)-NR’-、
-NR’-C(=O)-、
-NR’-C(=O)-O-、
-NR’-C(=O)-NR’-
-C(=O)-NR’-
-C(=O)-NR’-C(=O)-
[式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である。]
等を含む基が挙げられる。アミド基、ウレア基、ウレタン基、及びイミドにおけるNR’基が芳香環に隣接していなくてもよい。
【0032】
Xは、直接結合、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)2-、-NR’-、-C(OR’)R’-、-C(OR’)(-)2、-N(-)2、2~4価の炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、2~4価の炭化水素芳香環、及び2~4価のヘテロ環
[式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である。]
からなる群から選択される少なくとも一種以上で構成されるn+m価の基であってよい。
【0033】
Xは、
直接結合、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)2-、-NR’-、-C(OR’)R’-、及び-C(OR’)(-)2、-N(-)2(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である。)からなる群から選択される一以上から構成されるX1と、
2~4価の炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、2~4価の炭化水素芳香環、及び2~4価のヘテロ環からなる群から選択される一以上から構成されるX2と、
からなる群から選択される一以上から構成されるn+m価の基であってよい。なお、本明細書において、Xとして記載している基は、左側がピリジニウムメチレン基、右側がRに結合する。
【0034】
[X1]
X1は非炭化水素のリンカーである。
【0035】
X1は、直接結合若しくは二価以上の基である。X1の価数は2~4、2~3、又は2であってよい。X1は直接結合のみでないことが好ましい。
【0036】
X1の分子量は10以上、50以上、100以上、200以上、300以上、又は500以上であってよい。X1の分子量は2000以下、1500以下、1000以下、750以下、又は500以下であってよい。
【0037】
X1は、直接結合、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)2-、-NR’-、-C(OR’)R’-、-C(OR’)(-)2、-N(-)2(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である。)からなる群から選択される一以上から構成される。X1の例としては、
直接結合、
-O-、
-O-C(=O)-、
-O-C(=O)-O-、
-O-C(=O)-NR’-、
-NR’-、
-NR’-C(=O)-、
-NR’-C(=O)-O-、
-NR’-C(=O)-NR’-、
-C(=O)-、
-C(=O)-O-、
-C(=O)-NR’-、
-C(=O)-NR’-C(=O)-、
-C(=NR’)-、
-S-、
-SO2-、
-SO2NR’-、
-C(OR’)R’-、
-C(OR’)(-)2、
-N(-)2等
[式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である。]
が挙げられる。
【0038】
[X2]
X2は炭化水素又は芳香族のリンカーである。
【0039】
X2は炭化水素基又は非炭化水素基(ヘテロ原子を含む)であってよい。X2は脂肪族又は芳香族であってよい。X2は直鎖状、分岐鎖状、環状であってもよい。
【0040】
X2は、二価以上の基である。X2の価数は例えば、2~4、2~3、又は2であってよい。
【0041】
X2の炭素数は、1以上、2以上、3以上、4以上、6以上、8以上、10以上、12以上、14以上、16以上、又は18以上であってよい。X2の炭素数は40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、又は5以下であってよい。
【0042】
X2は、2~4価の炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、2~4価の炭化水素芳香環、及び2~4価のヘテロ環からなる群から選択される一以上から構成される。
【0043】
2~4価の炭素数1~20の脂肪族炭化水素基は、環状、分岐鎖、又は直鎖の炭化水素基であってよい。2~4価の炭素数1~20の脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和(例えば飽和)の脂肪族炭化水素基であってよい。炭素数1~20の脂肪族炭化水素基の炭素数は1以上、2以上、3以上、4以上、6以上、8以上、又は10以上であってよい。炭素数1~20の脂肪族炭化水素の炭素数は15以下、10以下、又は5以下であってよい。
【0044】
2~4価の炭化水素芳香環の例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン(ナフタセン)、ペンタセン、ピレン、及びコロネン等の炭化水素芳香環から2~4個の水素を取り除いた基が挙げられる。炭化水素芳香環の環構成原子数は3~20、4~16、又は5~12であり、好ましくは5~12である。炭化水素芳香環は、置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、-N(R’)2(式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はハロゲン原子等が挙げられる。炭化水素芳香環の価数は2以上、3以上、又は4であってよく、4以下、3以下、又は2であってよい。
【0045】
2~4価のヘテロ環は、脂肪族基又は芳香族基であってよい。2~4価のヘテロ環の例としては、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリン等から2~4個の水素を取り除いた基が挙げられる。ヘテロ環の環構成原子数は3~20、4~16、又は5~12であり、好ましくは5~12である。ヘテロ環は、置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、-N(R’)2(式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はハロゲン原子等が挙げられる。ヘテロ環の価数は2以上、3以上、又は4であってよく、4以下、3以下、又は2であってよい。Xは、ヘテロ環、特にトリアゾール環を、一以上(例えば1~3個、特に1個)有していてもよい。Xは、炭化水素環(例えば、炭化水素芳香環、特にベンゼン環)を有していなくてもよい。
【0046】
X2の例としては、
-Ali-
-Cy-
-Ali(-)2
-Cy(-)2
(-)2Ali-
(-)2Cy-
(-)2Ali(-)2
(-)2Cy(-)2
-Ali-Cy-
-Cy-Ali-
-Cy-Ali-Cy-
-Ali-Cy-Ali-
[式中、Aliは炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、Cyは炭化水素芳香環またはヘテロ環である。]
等が挙げられる。
【0047】
X2の具体例としては、
-(CH2)p-(pは1~20、例えば1~10である)、
炭素数1~40、例えば1~10の不飽和結合を有する直鎖状の炭化水素基、
炭素数1~40、例えば1~10の枝分かれ構造を有する炭化水素基、
-(CH2)q-Cy-(CH2)r-(q及びrはそれぞれ独立して0~20、例えば1~10であり、Cyは炭化水素芳香環またはヘテロ環である)
等が挙げられる。
【0048】
[Xの例]
Xの例を説明する。なお、下記において、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である。
【0049】
Xの例としては、Xが二価の場合、-X1-、-X1-X2-、-X1-X2-X1-、-X1-X2-X1-X2-、-X2-、-X2-X1-、-X2-X1-X2-、-X2-X1-X2-X1-、等が挙げられる。
【0050】
Xの例としては、Xが三価の場合、-X1(-)2、-X1-X2(-)2、-X1-(X2-)2、-X1-X2-X1(-)2、-X1-X2(-X1-)2、-X1-(X2-X1-)2、-X1-X2-X1-X2(-)2、-X1-X2-X1-(X2-)2、-X1-X2-(X1-X2-)2、-X1-(X2-X1-X2-)2;
(-)2X1-、(-)2X1-X2-、(-X1)2X2-、(-)2X1-X2-X1-、(-X1)2-X2-X1-、(-X1-X2)2-X1-、(-)2X1-X2-X1-X2-、(-X1)2-X2-X1-X2-、(-X1-X2)2-X1-X2-、(-X1-X2-X1)2-X2-;
-X2(-)2、-X2-X1(-)2、-X2-(X1-)2、-X2-X1-X2(-)2、-X2-X1(-X2-)2、-X2-(X1-X2-)2、-X2-X1-X2-X1(-)2、-X2-X1-X2-(X1-)2、-X2-X1-(X2-X1-)2、-X2-(X1-X2-X1-)2;
(-)2X2-、(-)2X2-X1-、(-X2)2X1-、(-)2X2-X1-X2-、(-X2)2-X1-X2-、(-X2-X1)2-X2-、(-)2X2-X1-X2-X1-、(-X2)2-X1-X2-X1-、(-X2-X1)2-X2-X1-、(-X2-X1-X2)2-X1-等が挙げられる。
【0051】
Xの例としては、Xが4価の場合、-X1(-)3、-X1-X2(-)3、-X1-(X2-)3、-X1-X2-X1(-)3、-X1-X2(-X1-)3、-X1-(X2-X1-)3、-X1-X2-X1-X2(-)3、-X1-X2-X1-(X2-)3、-X1-X2-(X1-X2-)3、-X1-(X2-X1-X2-)3;
(-)2X1(-)2、(-)2X1-X2(-)2、(-X1)2X2(-)2、(-)2X1-X2-X1(-)2、(-X1)2-X2-X1(-)2、(-X1-X2)2-X1(-)2、(-)2X1-X2-X1-X2(-)2、(-X1)2-X2-X1-X2(-)2、(-X1-X2)2-X1-X2(-)2、(-X1-X2-X1)2-X2(-)2;
(-)3X1-、(-)3X1-X2-、(-X1)3X2-、(-)3X1-X2-X1-、(-X1)3-X2-X1-、(-X1-X2)3-X1-、(-)3X1-X2-X1-X2-、(-X1)3-X2-X1-X2-、(-X1-X2)3-X1-X2-、(-X1-X2-X1)3-X2-;
-X2(-)3、-X2-X1(-)3、-X2-(X1-)3、-X2-X1-X2(-)3、-X2-X1(-X2-)3、-X2-(X1-X2-)3、-X2-X1-X2-X1(-)3、-X2-X1-X2-(X1-)3、-X2-X1-(X2-X1-)3、-X2-(X1-X2-X1-)3;
(-)2X2(-)2、(-)2X2-X1(-)2、(-X2)2X1(-)2、(-)2X2-X1-X2(-)2、(-X2)2-X1-X2(-)2、(-X2-X1)2-X2(-)2、(-)2X2-X1-X2-X1(-)2、(-X2)2-X1-X2-X1(-)2、(-X2-X1)2-X2-X1(-)2、(-X2-X1-X2)2-X1(-)2;
(-)3X2-、(-)3X2-X1-、(-X2)3X1-、(-)3X2-X1-X2-、(-X2)3-X1-X2-、(-X2-X1)3-X2-、(-)3X2-X1-X2-X1-、(-X2)3-X1-X2-X1-、(-X2-X1)3-X2-X1-、(-X2-X1-X2)3-X1-等が挙げられる。
【0052】
Xの好ましい例としては
-X1-、-X1-X2-、-X1-X2-X1-、-X1-X2(-)2、-(X1)2-X2-(ここで、X2は3価である)、-(X1)2X2(-)2(ここで、X2は4価である)、
-X2-、-X2-X1-、-X2-X1-X2-、-X2-X1(-)2、-(X2)2-X1-(ここで、X1は3価である)、-(X2)2X1(-)2(ここで、X1は4価である)
等が挙げられる。
【0053】
Xは好ましくは、
-X1-、-X1-X2-、-X1-X2-X1-、-X1-X2(-)2、-(X1)2-X2-(ここで、X2は3価である)、-(X1)2X2(-)2(ここで、X2は4価である)、
-X2-、-X2-X1-、-X2-X1-X2-、-X2-X1(-)2、-(X2)2-X1-(ここで、X1は3価である)、又は-(X2)2X1(-)2(ここで、X1は4価である)
[式中、
X1が、各出現において独立して、
直接結合、
-O-、
-O-C(=O)-、
-O-C(=O)-O-、
-O-C(=O)-NR’-、
-NR’-、
-NR’-C(=O)-、
-NR’-C(=O)-O-、
-NR’-C(=O)-NR’-、
-C(=O)-、
-C(=O)-O-、又は
-C(=O)-NR’-
-C(=O)-NR’-C(=O)-
[式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である。]
であり、
X2が炭素数1~10の2~4価の脂肪族炭化水素基、又は2価の芳香族基(例えば2価のフェニル基、2価のトリアゾール基)である。]
で表される基である。これにより、基材に良好に耐油性を付与し得る。
【0054】
Xのさらなる具体例としては、
-O-
-NR’-(C=O)-
-NR’-(C=O)-CH
2-O-(C=O)-
-NR’-(C=O)-CH
2-N(-)(C=O)-
-NR’-(C=O)-Ph-O-
-(C=O)-NR’-
-(C=O)O-
(-)
2C(CH
2O(C=O)NR’-)
2
[式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である。]
等が挙げられる。
【0055】
[R]
Rは、炭素数6以上40以下の直鎖状または分岐鎖状の一価の炭化水素基である。Rは、分岐鎖状又は直鎖状であり、より好ましくは直鎖状である。Rは、飽和又は不飽和であってよい。Rは、飽和の脂肪族炭化水素基(アルキル基)であることが好ましい。
【0056】
Rの炭素数は、6以上、8以上、10以上、12以上、14以上、16以上、又は18以上であってよく、好ましくは10以上、より好ましくは12以上である。Rの炭素数は40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は10以下であってよく、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
【0057】
[Z]
Zはピリジニウム基の環水素を置換する基であり、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、-N(R’)2(式中、R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はハロゲン原子であってよい。
【0058】
pは、ピリジニウム基を修飾するZの数(ピリジニウム基の5個の環水素がいくつ置換されているか)を表し、0以上5以下の整数である。pは0以上、1以上、2以上、又は3以上であってよい。pは5以下、4以下、3以下、2以下、又は1以下であってよく、例えば2以下(例えば1又は0)であってもよい。
【0059】
[化合物αの例]
化合物αの例として、下記式で表される化合物が挙げられる。下記式中、Y-、R、Z及びpの詳細については上述の説明を援用する。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
[化合物αの製造方法]
化合物αの製造方法としては、限定されないが、ピリジンとR基含有アルキルハライドとを反応させる方法、ピリジンとR基含有アルコールとを塩化チオニル等のハロゲン化剤とともに反応させる方法等が挙げられる。ピリジンとR基含有アルコールとを塩化チオニル等のハロゲン化剤とともに反応させる方法はワンポット合成が可能なため、生産性に優れ、工業上有利となり得る。反応条件は当業者であれば、目的の化合物を得るために、当業者が適宜設定し得る。
【0067】
[化合物αの量]
化合物αの量は、耐油剤中、0.01重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上であってよい。化合物αの量は、耐油剤中、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、又は3重量%以下であってよい。
【0068】
〔液状媒体〕
本開示における耐油剤は、液状媒体を含んでもよい。液状媒体は水、有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合物であってよい。耐油剤は分散液又は溶液であってよい。
【0069】
有機溶媒の例は、エステル(例えば、炭素数2~40のエステル、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、炭素数2~40のケトン、具体的には、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン)、アルコール(例えば、炭素数1~40のアルコール、具体的には、イソプロピルアルコール)、芳香族系溶剤(例えば、トルエン及びキシレン)、石油系溶剤(例えば、炭素数5~10のアルカン、具体的には、ナフサ、灯油)である。有機溶媒は水溶性有機溶媒であることが好ましい。水溶性有機溶媒は少なくとも一のヒドロキシ基を有している化合物(例えば、アルコール、グリコール系溶媒等の多価アルコール、多価アルコールのエーテル体(例えばモノエーテル体)等)を含んでいてもよい。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用してもよい。
【0070】
[液状媒体の量]
液状媒体の量は、化合物α1重量部に対して、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、30重量部以上、40重量部以上、又は50重量部以上、100重量部以上、200重量部以上、300重量部以上、500重量部以上、又は1000重量部以上であってよい。液状媒体の量は、化合物α1重量部に対して、3000重量部以下、2000重量部以下、1000重量部以下、500重量部以下、200重量部以下、175重量部以下、150重量部以下、125重量部以下、100重量部以下、80重量部以下、60重量部以下、40重量部以下、20重量部以下、又は10重量部以下であってよい。
【0071】
水の量は、化合物α1重量部に対して、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、30重量部以上、40重量部以上、50重量部以上、100重量部以上、200重量部以上、300重量部以上、500重量部以上、又は1000重量部以上であってよい。水の量は、化合物α1重量部に対して、3000重量部以下、2000重量部以下、1000重量部以下、500重量部以下、200重量部以下、175重量部以下、150重量部以下、125重量部以下、100重量部以下、80重量部以下、60重量部以下、40重量部以下、20重量部以下、又は10重量部以下であってよい。
【0072】
有機溶媒の量は、化合物α1重量部に対して、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、30重量部以上、40重量部以上、50重量部以上、100重量部以上、200重量部以上、300重量部以上、500重量部以上、又は1000重量部以上であってよい。有機溶媒の量は、化合物α1重量部に対して、3000重量部以下、2000重量部以下、1000重量部以下、500重量部以下、200重量部以下、175重量部以下、150重量部以下、125重量部以下、100重量部以下、80重量部以下、60重量部以下、40重量部以下、20重量部以下、又は10重量部以下であってよい。
【0073】
〔界面活性剤〕
耐油剤は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤から選択された一種以上の界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は非フッ素であってもよい。
【0074】
[ノニオン性界面活性剤]
ノニオン性界面活性剤の例としては、エーテル、エステル、エステルエーテル、アルカノールアミド、多価アルコール及びアミンオキシドが挙げられる。
【0075】
エーテルの例は、オキシアルキレン基(好ましくは、ポリオキシエチレン基)を有する化合物である。
【0076】
エステルの例は、アルコールと脂肪酸のエステルである。アルコールの例は、1~6価(特に2~5価)の炭素数1~50(特に炭素数10~30)のアルコール(例えば、脂肪族アルコール)である。脂肪酸の例は、炭素数2~50、特に炭素数5~30の飽和又は不飽和の脂肪酸である。
【0077】
エステルエーテルの例は、アルコールと脂肪酸のエステルに、アルキレンオキシド(特にエチレンオキシド)を付加した化合物である。アルコールの例は、1~6価(特に2~5価)の炭素数1~50(特に炭素数3~30)のアルコール(例えば、脂肪族アルコール)である。脂肪酸の例は、炭素数2~50、特に炭素数5~30の飽和又は不飽和の脂肪酸である。
【0078】
アルカノールアミドの例は、脂肪酸とアルカノールアミンから形成されている。アルカノールアミドは、モノアルカノールアミド又はジアルカノールアミノであってよい。脂肪酸の例は、炭素数2~50、特に炭素数5~30の飽和又は不飽和の脂肪酸である。アルカノールアミンは、1~3のアミノ基及び1~5ヒドロキシル基を有する炭素数2~50、特に5~30のアルカノールであってよい。
【0079】
多価アルコールは、2~5価の炭素数10~30のアルコールであってよい。
アミンオキシドは、アミン(二級アミン又は好ましくは三級アミン)の酸化物(例えば炭素数5~50)であってよい。
【0080】
ノニオン性界面活性剤は、オキシアルキレン基(好ましくはポリオキシエチレン基)を有するノニオン性界面活性剤であることが好ましい。オキシアルキレン基におけるアルキレン基の炭素数は、2~10であることが好ましい。ノニオン性界面活性剤の分子におけるオキシアルキレン基の数は、一般に、2~100であることが好ましい。
ノニオン性界面活性剤は、エーテル、エステル、エステルエーテル、アルカノールアミド、多価アルコール及びアミンオキシドからなる群から選択されており、オキシアルキレン基を有するノニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0081】
ノニオン性界面活性剤は、直鎖状及び/又は分岐状の脂肪族(飽和及び/又は不飽和)基のアルキレンオキシド付加物、直鎖状及び/又は分岐状脂肪酸(飽和及び/又は不飽和)のポリアルキレングリコールエステル、ポリオキシエチレン(POE)/ポリオキシプロピレン(POP)共重合体(ランダム共重合体又はブロック共重合体)、アセチレングリコールのアルキレンオキシド付加物等であってよい。これらの中で、アルキレンオキシド付加部分及びポリアルキレングリコール部分の構造がポリオキシエチレン(POE)又はポリオキシプロピレン(POP)又はPOE/POP共重合体(ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってよい)であるものが好ましい。
また、ノニオン性界面活性剤は、環境上の問題(生分解性、環境ホルモン等)から芳香族基を含まない構造が好ましい。
【0082】
ノニオン性界面活性剤は、式:
R1O-(CH2CH2O)p-(R2O)q-R3
[式中、R1は炭素数1~22のアルキル基又は炭素数2~22のアルケニル基又はアシル基であり、
R2のそれぞれは、独立的に同一又は異なって、炭素数3以上(例えば、3~10)のアルキレン基であり、
R3は水素原子、炭素数1~22のアルキル基又は炭素数2~22のアルケニル基であり、
pは2以上の数であり、
qは0又は1以上の数である。]
で示される化合物であってよい。
【0083】
R1は、炭素数8~20、特に10~18であることが好ましい。R1の好ましい具体例としては、ラウリル基、トリデシル基、オレイル基が挙げられる。
R2の例は、プロピレン基、ブチレン基である。
ノニオン性界面活性剤において、pは3以上の数(例えば、5~200)であってよい。qは、2以上の数(例えば5~200)であってよい。すなわち、-(R2O)q-がポリオキシアルキレン鎖を形成してもよい。
ノニオン性界面活性剤は、中央に親水性のポリオキシエチレン鎖と疎水性のオキシアルキレン鎖(特に、ポリオキシアルキレン鎖)を含有したポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテルであってよい。疎水性のオキシアルキレン鎖としては、オキシプロピレン鎖、オキシブチレン鎖、スチレン鎖等が挙げられるが、中でも、オキシプロピレン鎖が好ましい。
【0084】
ノニオン性界面活性剤の具体例には、エチレンオキシドとヘキシルフェノール、イソオクタチルフェノール、ヘキサデカノール、オレイン酸、アルカン(C12-C16)チオール、ソルビタンモノ脂肪酸(C7-C19)又はアルキル(C12-C18)アミン等との縮合生成物、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン誘導体等が包含される。
【0085】
ポリオキシエチレンブロックの割合がノニオン性界面活性剤(コポリマー)の分子量に対して5~80重量%、例えば30~75重量%、特に40~70重量%であることができる。
ノニオン性界面活性剤の平均分子量は、一般に300~5,000、例えば、500~3,000である。
ノニオン性界面活性剤は、一種単独であってよく、あるいは二種以上の混合物であってもよい。ノニオン界面活性剤は、HLB(親水性疎水性バランス)が15未満(特に5以下)である化合物とHLBが15以上である化合物の混合物であってよい。
【0086】
[カチオン性界面活性剤]
カチオン性界面活性剤は、アミド基を有しない化合物であることが好ましい。
【0087】
カチオン性界面活性剤は、アミン塩、4級アンモニウム塩、オキシエチレン付加型アンモニウム塩であってよい。カチオン性界面活性剤の具体例としては、特に限定されないが、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の4級アンモニウム塩型界面活性剤等が挙げられる。
【0088】
カチオン性界面活性剤の好ましい例は、
R21-N+(-R22)(-R23)(-R24)X-
[式中、R21、R22、R23及びR24は炭素数1~40の炭化水素基、
Xはアニオン性基である。]
の化合物である。
R21、R22、R23及び-R24の具体例は、アルキル基(例えば、メチル基、ブチル基、ステアリル基、パルミチル基)である。Xの具体例は、ハロゲン(例えば、塩素)、酸(例えば、塩酸、酢酸)である。
カチオン性界面活性剤は、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩(アルキルの炭素数4~40)であることが特に好ましい。
【0089】
カチオン性界面活性剤は、アンモニウム塩であることが好ましい。カチオン性界面活性剤は、式:
R1
p-N+R2
qX-
[式中、R1はC12以上(例えばC12~C50)の直鎖状及び/又は分岐状の脂肪族(飽和及び/又は不飽和)基、
R2はH又はC1~4のアルキル基、ベンジル基、ポリオキシエチレン基(オキシエチレン基の数例えば1(特に2、特別には3)~50)
(CH3、C2H5が特に好ましい)、
Xはハロゲン原子(例えば、)、C1~C4の脂肪酸塩基、
pは1又は2、qは2又は3で、p+q=4である。]
で示されるアンモニウム塩であってよい。R1の炭素数は、12~50、例えば12~30であってよい。
【0090】
カチオン性界面活性剤の具体例には、ドデシルトリメチルアンモニウムアセテート、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド、(ドデシルメチルベンジル)トリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロライド、メチルドデシルジ(ヒドロポリオキシエチレン)アンモニウムクロライド、ベンジルドデシルジ(ヒドロポリオキシエチレン)アンモニウムクロライド、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]オレアミド塩酸塩が包含される。
【0091】
[アニオン性界面活性剤]
アニオン性界面活性剤の例としては、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、及びスルホコハク酸エステルが挙げられる。
【0092】
[両性界面活性剤]
両性界面活性剤の例としては、アラニン類、イミダゾリニウムベタイン類、アミドベタイン類、酢酸ベタイン等が挙げられ、具体的には、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0093】
界面活性剤はノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のそれぞれが一種又は2以上の組み合わせであってよい。
【0094】
[界面活性剤の量]
界面活性剤の量は、化合物α100重量部に対して、0.01重量部以上、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であってよい。界面活性剤の量は、化合物α100重量部に対して、500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、5重量部以下、3重量部以下、又は1重量部以下であってよい。
【0095】
〔シリコーン〕
本開示における耐油剤は、シリコーン(ポリオルガノシロキサン)を含んでもよい。シリコーンを含むことで、良好な撥液性に加え、風合いや耐久性を良好に兼ね備え得る。
【0096】
シリコーンとしては、公知のシリコーンを用いることができ、シリコーンの例としては、ポリジメチルシロキサン、変性シリコーン(アミノ変性、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン等)が挙げられる。シリコーンはワックス状の性質を有するシリコーンワックスであってもよい。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用してもよい。
【0097】
シリコーンの重量平均分子量は、1000以上、10000以上、又は50000以上であってよい。シリコーンの重量平均分子量は、500000以下、2500000以下、100000以下、又は50000以下であってよい。
【0098】
[シリコーンの量]
シリコーンの量は、化合物α100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であってよい。シリコーンの量は、化合物α100重量部に対して、500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、又は5重量部以下であってよい。
【0099】
〔ワックス〕
本開示における耐油剤は、ワックスを含んでもよい。ワックスを含むことで、撥液性を良好に基材に付与し得る。
【0100】
ワックスの例としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)、酸化ポリオレフィンワックス、シリコーンワックス、動植物蝋、及び鉱物蝋等が挙げられる。パラフィンワックスが好ましい。ワックスを構成する化合物の具体例は、ノルマルアルカン(例えば、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、トリトリアコンタン、テトラトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサトリアコンタン)、ノルマルアルケン(例えば、1-エイコセン、1-ドコセン、1-トリコセン、1-テトラコセン、1-ペンタコセン、1-ヘキサコセン、1-ヘプタコセン、1-オクタコセン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、トリトリアコンタン、テトラトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサトリアコンタン)である。ワックスを構成する化合物の炭素数は、20~60、例えば、25~45であることが好ましい。ワックスの分子量は、200~2000、例えば250~1500、300~1000であってよい。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用してもよい。
【0101】
ワックスの融点は、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、又は70℃以上であってよく、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上である。ワックスの融点は、JIS K 2235-1991に準拠して測定される。
【0102】
[ワックスの量]
ワックスの量は、化合物α100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であってよい。ワックスの量は、化合物α100重量部に対して、500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、5重量部以下であってよい。
【0103】
〔有機酸〕
耐油剤は有機酸を含んでもよい。有機酸としては、公知のものを用いることができる。有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸等が好ましく挙げられ、特にカルボン酸が好ましい。該カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられ、特にギ酸又は酢酸が好ましい。本開示においては、有機酸は、一種を用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。たとえば、ギ酸と酢酸とを組み合わせて用いてもよい。
【0104】
[有機酸の量]
有機酸の量は、化合物α100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であってよい。有機酸の量は、化合物α100重量部に対して、500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、又は5重量部以下であってよい。耐油剤のpHが、3~10、例えば5~9、特に6~8となるように有機酸の量は調整されてもよい。耐油剤は酸性(pH7以下、例えば6以下)であってもよい。
【0105】
〔硬化剤〕
耐油剤は、硬化剤(活性水素反応性化合物又は活性水素含有化合物)を含んでよい。
【0106】
耐油剤における硬化剤(架橋剤)は化合物αを良好に硬化させ得る。硬化剤は、化合物αの有する活性水素又は活性水素反応性基と反応する活性水素反応性化合物又は活性水素含有化合物であってよい。活性水素反応性化合物の例は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、クロロメチル基含有化合物、カルボキシル基含有化合物及びヒドラジド化合物である。活性水素含有化合物の例は、ヒドロキシル基含有化合物、アミノ基含有化合物及びカルボキシル基含有化合物、ケトン基含有化合物、ヒドラジド化合物及びメラミン化合物である。
【0107】
硬化剤はイソシアネート化合物を含んでよい。イソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物であってよい。ポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物である。ポリイソシアネート化合物は、架橋剤として働く。ポリイソシアネート化合物の例は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。イソシアネート化合物は、ブロックドイソシアネート化合物(例えばブロックドポリイソシアネート化合物であってよい)。ブロックイソシアネート化合物は、イソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でマスクし反応を抑制した化合物である。
【0108】
脂肪族ポリイソシアネートの例は、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエートの脂肪族ジイソシアネート、及びリジンエステルトリイソシアネート、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等である。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
【0109】
脂環族ポリイソシアネートの例は、脂環族ジイソシアネート及び脂環族トリイソシアネート等である。脂環族ポリイソシアネートの具体例は、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサンである。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
【0110】
芳香脂肪族ポリイソシアネートの例は、芳香脂肪族ジイソシアネート及び芳香脂肪族トリイソシアネートである。芳香脂肪族ポリイソシアネートの具体例は、1,3-若しくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(テトラメチルキシリレンジイソシアネート)若しくはその混合物、1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼンである。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
【0111】
芳香族ポリイソシアネートの例は、芳香族ジイソシアネート、芳香族トリイソシアネート、芳香族テトライソシアネートである。芳香族ポリイソシアネートの具体例は、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4’-又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート若しくはその混合物、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、及び4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等である。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
【0112】
ポリイソシアネートの誘導体は、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン等の各種誘導体を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
【0113】
これらポリイソシアネートは、一種又は二種以上を組合せて使用することができる。
ポリイソシアネート化合物として、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でブロックした化合物であるブロック化ポリイソシアネート化合物(ブロックイソシアネート)を使用することが好ましい。溶液中でも比較的安定であり、耐油剤と同じ溶液中でも使用可能である等の理由からブロック化ポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。
【0114】
ブロック剤は、遊離のイソシアネート基を封鎖するものである。ブロック化ポリイソシアネート化合物は、例えば、100℃以上、例えば130℃以上に加熱することにより、イソシアネート基が再生し、ヒドロキシル基と容易に反応することができる。ブロック剤の例は、フェノール系化合物、ラクタム系化合物、脂肪族アルコール系化合物、オキシム系化合物等である。ポリイソシアネート化合物は、単独で又は二種以上を組合せて使用することができる。
【0115】
エポキシ化合物は、エポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物の例は、ポリオキシアルキレン基を有するエポキシ化合物、例えば、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル及びポリプロピレングリコ-ルジグリシジルエ-テル;並びにソルビトールポリグリシジルエーテル等である。
クロロメチル基含有化合物はクロロメチル基を有する化合物である。クロロメチル基含有化合物の例は、クロロメチルポリスチレン等である。
カルボキシル基含有化合物はカルボキシル基を有する化合物である。カルボキシル基含有化合物の例は、(ポリ)アクリル酸、(ポリ)メタクリル酸等である。
【0116】
ケトン基含有化合物の具体例としては、(ポリ)ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
ヒドラジド化合物の具体例としては、ヒドラジン、カルボヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド等が挙げられる。
メラミン化合物の具体例としては、メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂等が挙げられる。
【0117】
[硬化剤の量]
硬化剤の量は、化合物α100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、又は20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であってよい。硬化剤の量は、化合物α100重量部に対して、500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、5重量部以下であってよい。
【0118】
〔他の成分〕
耐油剤は、上記成分以外の他の成分を含んでよい。他の成分の例としては、多糖類、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり向上剤、凝結剤、バインダー樹脂、スリップ防止剤、サイズ剤、紙力増強剤、充填剤、帯電防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、消臭剤、香料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
前記の成分以外に、その他成分として、その他の撥水及び/又は撥油剤、分散剤、風合い調整剤、柔軟剤、難燃剤、塗料定着剤、防シワ剤、乾燥速度調整剤、架橋剤、造膜助剤、相溶化剤、凍結防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、防虫剤、消泡剤、縮み防止剤、洗濯じわ防止剤、形状保持剤、ドレープ性保持剤、アイロン性向上剤、増白剤、白化剤、布地柔軟化クレイ、ポリビニルピロリドン等の移染防止剤、高分子分散剤、汚れ剥離剤、スカム分散剤、4,4-ビス(2-スルホスチリル)ビフェニルジナトリウム(チバスペシャルティケミカルズ製チノパールCBS-X)等の蛍光増白剤、染料固定剤、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン等の退色防止剤、染み抜き剤、繊維表面改質剤としてセルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ケラチナーゼ等の酵素、抑泡剤、水分吸放出性等絹の風合い・機能を付与できるものとしてシルクプロテインパウダー、それらの表面改質物又は乳化分散液(例えばK-50、K-30、K-10、A-705、S-702、L-710、FPシリーズ(出光石油化学)、加水分解シルク液(上毛)、シルクゲンGソルブルS(一丸ファルコス))、汚染防止剤(例えばアルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンイソフタレート単位とポリオキシアルキレン単位からなる非イオン性高分子化合物(例えば互応化学工業製FR627)、クラリアントジャパン製SRC-1等)等を配合することができる。これらは単独で使用してもよく、また二以上を併用して使用してもよい。
【0119】
[多糖類]
多糖類の例としては、澱粉、キサンタンガム、カラヤガム、ウェランガム、グアーガム、ペクチン、タマリンドガム、カラギーナン、キトサン、アラビアガム、ローカストビーンガム、セルロース、アルギン酸、寒天、デキストラン、及びプルラン等が挙げられる。多糖類は、置換されている変性多糖類であってよく、特に、水酸基やカチオン性基を導入した変性多糖類であってよい。
【0120】
[紙力増強剤、凝集剤、歩留まり向上剤又は凝結剤]
紙力増強剤、凝集剤、歩留まり向上剤又は凝結剤の例としては、スチレン系重合体(スチレン/マレイン酸系重合体、スチレン/アクリル酸系重合体)、尿素‐ホルムアルデヒド重合体、ポリエチレンイミン、メラミン‐ホルムアルデヒド重合体、ポリアミドアミン‐エピクロルヒドリン重合体、ポリアクリルアミド系重合体、ポリアミン系重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、アルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体、及びオレフィン/無水マレイン酸重合体等が挙げられる
【0121】
[サイズ剤]
サイズ剤の例としては、セルロース反応性サイズ剤、例えばロジン系石鹸などのロジン系サイズ剤、ロジン系乳濁液/分散液、セルロース反応性サイズ剤、例えばアルキルおよびアルケニルコハク酸無水物(ASA)などの酸無水物の乳濁液/分散液、アルケニルおよびアルキルケテン二量体(AKD)および多量体、ならびにエチレン性不飽和モノマーのアニオン性、カチオン性および両性のポリマー、例えばスチレンとアクリレートとの共重合体が挙げられる。
【0122】
[帯電防止剤]
帯電防止剤の例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1、第2、第3アミノ基等のカチオン性官能基を有すカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アルキルベタイン及びその誘導体、イミダゾリン及びその誘導体、アラニン及びその誘導体等の両性型帯電防止剤、アミノアルコール及びその誘導体、グリセリン及びその誘導体、ポリエチレングリコール及びその誘導体等のノニオン型帯電防止剤等が挙げられる。これらのカチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合若しくは共重合して得られたイオン導電性重合体であってもよい。これらは単独で使用してもよく、また二以上を併用してもよい。
【0123】
[防腐剤]
防腐剤は、主に、防腐力、殺菌力を強化し、長期保存中の防腐性を保つために用いられ得る。防腐剤としては、例えば、イソチアゾロン系有機硫黄化合物、ベンズイソチアゾロン系有機硫黄化合物、安息香酸類、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
【0124】
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤は、紫外線を防御する効果のある薬剤であり、紫外線を吸収し、赤外線や可視光線等に変換して放出する成分である。紫外線吸収剤としては、例えば、アミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾール系化合物、4-t-ブチル-4'-メトキシベンゾイルメタン等が挙げられる。
【0125】
[抗菌剤]
抗菌剤は、繊維上での菌の増殖を抑え、さらには微生物の分解物由来の嫌なにおいの発生を抑える効果を有する成分である。抗菌剤としては、例えば、四級アンモニウム塩等のカチオン性殺菌剤、ビス-(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩、8-オキシキノリン、ポリリジン等が挙げられる。
【0126】
[消臭剤]
消臭剤としては、クラスターデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、モノアセチル-β-シクロデキストリン、アシルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、アミノカルボン酸系金属錯体(国際公開第2012/090580号記載のメチルグリシンジ酢酸3ナトリウムの亜鉛錯体)等が挙げられる。
【0127】
[他の成分の量]
他の成分の各量又は総量は、化合物α100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であってよい。他の成分の各量又は総量は、化合物α100重量部に対して、500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、又は5重量部以下であってよい。
【0128】
<処理された繊維製品又は紙製品の製造方法>
本開示における耐油剤で処理された製品の製造方法は、上述した耐油剤で基材を処理する処理工程を含む。
【0129】
「処理」とは、耐油剤を、浸漬、噴霧、塗布等により基材に適用することを意味する。処理により、耐油剤の有効成分である化合物αが基材の内部及び/又は表面に付着する。ここで、付着とは物理的な付着又は化学的な付着であってもよく、例えば、化合物αが基材(繊維、紙、ガラス等)の有する水酸基に物理的又は(反応して)化学的に修飾されていてもよい。
【0130】
[基材]
本開示における耐油剤で処理される基材は限定されないが、好適には繊維製品又は紙製品である。
【0131】
繊維製品の基材の例としては、綿、麻、羊毛、絹等の動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維等の無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。繊維製品には、織物、編物及び不織布、衣料品形態(例えば撥水性衣服、例えば雨合羽)の布及びカーペットが含まれるが、布とする前の状態の繊維、糸、中間繊維製品(例えば、スライバー又は粗糸等)に対して、処理がなされてもよい。
【0132】
紙製品の基材の例としては、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプ等の晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙等の古紙パルプ等からなる紙、紙でできた容器、紙でできた成形体等が挙げられる。紙製品の具体例としては、食品包装材、食品容器、石膏ボード原紙、コート原紙、中質紙、一般ライナー及び中芯、中性純白ロール紙、中性ライナー、防錆ライナー及び金属合紙、クラフト紙、中性印刷筆記用紙、中性コート原紙、中性PPC用紙、中性感熱用紙、中性感圧原紙、中性インクジェット用紙及び中性情報用紙、モールド紙(モールド容器)等が挙げられ、好適な例としては食品包装材及び食品容器が挙げられる。
【0133】
本開示の耐油剤で処理される基材としては、繊維製品又は紙製品に限られず、他にも、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、燃料電池の部品(例えば、ガス拡散電極及びガス拡散支持体)、ガラス、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属及び酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、及びプラスター等を挙げることができる。
【0134】
基材がガラスである場合、製造されるガラス製品は光学部材であってよい。ガラス基材の表面(最外層)に何らかの層(または膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層および多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti2O3、Ti2O5、Al2O3、Ta2O5、CeO2、MgO、Y2O3、SnO2、MgF2、WO3などが挙げられる。これらの無機物は、単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiO2および/またはSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I-CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、および液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0135】
[処理方法]
本開示の耐油剤は、処理剤(特に表面処理剤)として、従来既知の方法により基材に適用することができる。処理の方法としては、本開示における耐油剤を、必要により有機溶媒又は水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布等のような既知の方法により、基材の内部及び/又は表面に付着させ、乾燥する方法であってよい。乾燥後、耐油剤における固形成分が付着した繊維製品が得られる。また、必要ならば、適当な架橋剤と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。本開示の耐油剤に、必要により、さらに、撥水及び/又は撥油剤、スリップ防止剤、帯電防止剤、風合い調整剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、塗料定着剤、防シワ剤、乾燥速度調整剤、架橋剤、造膜助剤、相溶化剤、凍結防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、防虫剤、消泡剤等の各種添加剤とを併用することも可能である。各種添加剤の例としては、上述の撥水剤組成物における「他の成分」で説明したものと同様であってよい。基材と接触させる処理剤における耐油剤の濃度は、用途によって適宜変更されてよいが、0.01~10重量%、例えば0.05~5重量%であってよい。
【0136】
耐油剤は、基材を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって基材に適用することができる。基材を耐油剤に浸してよく、あるいは、基材に溶液を付着又は噴霧してよい。処理された基材は、撥液性を発現させるために、好ましくは、加熱により乾燥及びキュアリングが行われる。加熱温度は例えば100℃~200℃、100℃~170℃又は100℃~120℃であってよい。本開示において低温加熱(例えば、100℃~140℃)であっても良好な性能が得られる。本開示において加熱時間は5秒~60分であってよく、例えば30秒~3分であってよい。繊維製品が紙であるときには、紙に塗工してよく、あるいは、紙に溶液を付着又は噴霧してよく、あるいは、抄造前のパルプスラリーと混合して処理してもよい。処理は外添処理であっても、内添処理であってもよい。あるいは、耐油剤はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用又はドライクリーニング法等において繊維製品に適用してよい。
【0137】
[紙の処理]
紙基材としては、紙、紙でできた容器、紙でできた成形体(例えばパルプモールド)などが挙げられる。
【0138】
紙は、従来既知の抄造方法によって製造できる。抄造前のパルプスラリーに耐油剤を添加する内添処理方法、又は抄造後の紙に耐油剤を適用する外添処理方法を用いることができる。
【0139】
内添処理方法は抄造前のパルプスラリーに耐油剤を添加する処理方法を意味してよい。内添処理方法として、パルプスラリーに耐油剤を添加して攪拌混合する工程と、当該工程で調製したパルプ組成物を所定形状の網状体を介して吸引脱水してパルプ組成物を堆積さてパルプモールド中間体を形成する工程と、当該パルプモールド中間体を加温された成形型によって成型乾燥することで、紙、紙でできた容器、紙でできた成形体を得る工程の一以上を含んでもよいが、この限りではない。処理された紙は、室温又は高温での簡単な乾燥後に、任意に、紙の性質に依存して熱処理を施してもよい。熱処理の温度は150℃以上、180℃以上、又は210℃以上であってよく、300℃以下、250℃以下、又は200℃以下であってよく、特に80℃~180℃であってよい。斯かる温度範囲で熱処理を行うことにより、優れた耐油性及び耐水性等を示し得る。
【0140】
外添処理方法のサイズプレスは、塗布方式によって以下のように分けることも可能である。
1つの塗布方式は、2本のゴムロールの間に紙を通して形成されるニップ部に塗布液(サイズ液)を供給し、ポンドと呼ばれる塗液溜りを作り、この塗液溜りに紙を通して紙の両面にサイズ液を塗布する、いわゆるポンド式ツーロールサイズプレスである。他の塗布方式は、サイズ液を表面転写型により塗布するゲートロール型、及び、ロッドメタリングサイズプレスである。ポンド式ツーロールサイズプレスにおいてサイズ液は紙の内部まで浸透しやすく、表面転写型においてサイズ液成分は紙の表面に留まりやすい。表面転写型は、ポンド式ツーロールサイズプレスと比べて、塗布層が紙の表面に留まりやすく、表面に形成される塗布層がポンド式ツーロールサイズプレスより多い。本開示では、前者のポンド式2ロールサイズプレスを用いた場合でも紙に性能を付与できる。このように処理された紙は、室温又は高温での簡単な乾燥後に、任意に、紙の性質に依存して300℃まで、例えば200℃まで、特に80℃~180℃の温度範囲をとり得る熱処理を伴うことで、優れた耐油性及び耐水性等を示し得る。
【0141】
本開示は、石膏ボード原紙、コート原紙、中質紙、一般ライナー及び中芯、中性純白ロール紙、中性ライナー、防錆ライナー及び金属合紙、クラフト紙などにおいて使用することができる。また、中性印刷筆記用紙、中性コート原紙、中性PPC用紙、中性感熱用紙、中性感圧原紙、中性インクジェット用紙及び中性情報用紙においても用いることができる。
【0142】
パルプ原料としては、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプ等の
晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙等の古紙パルプのいずれも使用することができる。また、上記パルプ原料と石綿、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール等の合成繊維との混合物も使用することができる。
【0143】
サイズ剤を加えて、紙の耐水性を向上させることができる。サイズ剤の例は、カチオン性サイズ剤、アニオン性サイズ剤、ロジン系サイズ剤(例えば、酸性ロジン系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤)である。サイズ剤の量は、パルプに対して0.01~5重量%であってよい。
【0144】
紙には必要に応じて、通常使用される程度の製紙用薬剤として、澱粉、変性澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリアミドポリアミン-エピクロルヒドリン樹脂等の紙力増強剤、凝集剤、定着剤、歩留り向上剤、染料、蛍光染料、スライムコントロール剤、消泡剤等の紙の製造で使用される添加剤を使用することができる。澱粉又は変性澱粉を用いることが好ましい。必要により、澱粉、ポリビニルアルコール、染料、コーティングカラー、防滑剤等を用いて、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、キャレンダー等によって、耐油剤を紙に塗布することができる。
【0145】
外添においては、塗布層に含まれる撥液性化合物の量が0.01~2.0g/m2、特に0.1~1.0g/m2であることが好ましい。塗布層は、耐油剤と澱粉及び/又は変性澱粉によって形成されてもよい。塗布層における紙用耐油剤の固形分量は2g/m2以下であることが好ましい。
内添においては、紙を形成するパルプ100重量部に対して、耐油剤の量が0.01~50重量部又は0.01~30重量部、例えば0.01~10重量部、特に0.2~5.0重量部となるように、耐油剤をパルプと混合することが好ましい。
【0146】
外添において、ロールとロールの間に処理液をため、任意のロールスピードとニップ圧で、ロール間の処理液に原紙を通す、いわゆるポンド式2ロールサイズプレス処理を用いても紙に耐油性を付与することができる。
【0147】
外添処理において、紙基材はサイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤などの添加剤を含んでよい。添加剤はノニオン性、カチオン性、アニオン性又は両性であってよい。添加剤のイオン電荷密度は-10000~10000 μeq/g、好ましくは-4000~8000 μeq/gであり、より好ましくは-1000~7000 μeq/gであってよい。サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤などの添加剤(固形分又は活性成分)は、パルプに対して、一般に、0.1~10重量%(例えば、0.2~5.0重量%)の量で使用できる。カチオン性の添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤)を含む紙基材の場合は、耐油剤はアニオン性であることが好ましい。
【0148】
内添処理において、パルプ濃度が0.5~5.0重量%(例えば、2.5~4.0重量%)であるパルプスラリーを抄紙することが好ましい。パルプスラリーに添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤など)及び撥液性化合物を添加することができる。添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤など)の例は、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、スチレン系重合体(スチレン/マレイン酸系重合体、スチレン/アクリル酸系重合体)、尿素-ホルムアルデヒド重合体、ポリエチレンイミン、メラミン-ホルムアルデヒド重合体、ポリアミドアミン-エピクロルヒドリン重合体、ポリアクリルアミド系重合体、ポリアミン系重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、アルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体、オレフィン/無水マレイン酸重合体である。
【0149】
[繊維製品の前処理/処理]
繊維製品は、本開示の耐油剤で処理する前に前処理されていてもよい。繊維製品の前処理を行うことで、耐油剤で処理後の繊維製品に優れた堅牢性を付与し得る。
【0150】
繊維製品の前処理の例は、反応性第四級アンモニウム塩との反応等によるカチオン化処理、スルホン化、カルボキシル化、リン酸化等のアニオン化処理、アニオン化処理後のアセチル化処理、ベンゾイル化処理、カルボキシメチル化処理、グラフト化処理、タンニン酸処理、高分子コーティング処理等が挙げられる。
【0151】
繊維製品を前処理する方法としては、限定されないが、従来既知の方法により繊維製品を前処理することができる。前処理液を必要により有機溶媒又は水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布等のような既知の方法により、繊維製品の内部及び/又は表面に付着させ、乾燥する方法であってよい。求める処理の程度に応じて前処理液のpH及び温度等が調整されてよい。繊維製品を前処理する方法の一例として、繊維製品を炭化水素系撥水剤で前処理する方法について詳述する。
【0152】
繊維製品の前処理方法は、繊維に-SO3M1(式中、M1は一価のカチオンを示す)で示される1価の基、-COOM2(式中、M2は一価のカチオンを示す)で示される1価の基、及び-O-P(O)(OX1)(OX2)(式中、X1及びX2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~22のアルキル基を示す)で示される1価の基からなる群より選ばれる一以上の官能基(以下、「特定官能基」という場合もある)を付与する工程を備えてもよい。
【0153】
M1としては、H、K、Na又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンが挙げられる。M2としては、H、K、Na又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンが挙げられる。X1又はX2がアルキル基である場合、炭素数1~22のアルキル基であることが好ましく、炭素数4~12のアルキル基であることがより好ましい。
【0154】
上記特定官能基を含む繊維(以下、「官能基含有繊維」という場合もある)は、例えば、以下の方法により用意することができる。
(i)繊維材料に、上記特定官能基を有する化合物を付着させる。なお、化合物の付着は、上記特定官能基が十分な量で残される範囲で化合物の一部と繊維の一部とが化学的に結合している状態であってもよい。
(ii)繊維を構成する材料に上記特定官能基が直接導入されている繊維を用意する。
【0155】
(i)の場合、例えば、繊維材料を、上記特定官能基を有する化合物の一種以上が含まれる前処理液で処理する官能基導入工程により、官能基含有繊維を得ることができる。
【0156】
耐油剤は、繊維製品を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって繊維状基材(例えば、上述の前処理がなされていてよい繊維製品)に適用することができる。繊維製品が布であるときには、布を溶液に浸してよくあるいは、布に溶液を付着または噴霧してよい。処理された繊維製品は、撥液性(撥水性及び/又は撥油性) を発現させるために、乾燥され、好ましくは、例えば、80℃~200℃で加熱される。あるいは、耐油剤はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用またはドライクリーニング法などにおいて繊維製品に適用してよい。
【0157】
処理される繊維製品は、典型的には、布であり、これには、織物、編物および不織布、衣料品形態の布およびカーペットが含まれるが、繊維または糸または中間繊維製品(例えば、スライバーまたは粗糸など)であってもよい。繊維製品材料は、天然繊維 (例えば、綿または羊毛など)、化学繊維(例えば、ビスコースレーヨンまたはレオセルなど)、または、合成繊維(例えば、ポリエステル、ポリアミドまたはアクリル繊維など)であってよく、あるいは、繊維の混合物 (例えば、天然繊維および合成繊維の混合物など)であってよい。また、本開示の方法は一般に、繊維製品を疎水性および撥水性にする。あるいは、繊維状基材は皮革であってよい。製造重合体を、皮革を疎水性および疎油性にするために、皮革加工の様々な段階で、例えば、皮革の湿潤加工の期間中に、または、皮革の仕上げの期間中に、水溶液または水性乳化物から皮革に適用してよい。
【0158】
「処理」とは、耐油剤を、浸漬、噴霧塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、耐油剤の有効成分が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
【0159】
繊維材料の素材としては、特に制限はなく、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ポリアミド(ナイロン等)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン等の合成繊維及びこれらの複合繊維、混紡繊維等が挙げられる。繊維材料の形態は繊維(トウ、スライバー等)、糸、編物(交編を含む)、織物(交織を含む)、不織布等のいずれの形態であってもよい。
【0160】
本実施形態においては、得られる繊維製品の撥水性が良好になる観点から、ポリアミド及びポリエステルを素材として含む繊維材料を用いることが好ましく、特に、ナイロン6、ナイロン6,6等のナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチルテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、及びこれらが含まれる混合繊維を用いることが好ましい。
【0161】
上記-SO3M1を有する化合物としては、フェノール系高分子を用いることができる。このようなフェノール系高分子としては、例えば、下記一般式で表される化合物を少なくとも一種含むものが挙げられる。
【0162】
[式中、X
2は-SO
3M
3(式中、M
3は1価のカチオンを示す)又は下記一般式で表される基を表し、nは20~3000の整数である。]
【0163】
【0164】
上記M3としては、H、K、Na又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンが挙げられる。
【0165】
上記M4としては、H、K、Na又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンが挙げられる。
【0166】
上記一般式で表される化合物は、例えば、フェノールスルホン酸のホルマリン縮合物、スルホン化ビスフェノールSのホルマリン縮合物であってもよい。
【0167】
上記-COOM2を有する化合物としては、ポリカルボン酸系ポリマーが挙げられる。
【0168】
ポリカルボン酸系ポリマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等をモノマーとして用いて従来公知のラジカル重合法で合成したポリマー、又は、市販されているものを使用することができる。
【0169】
ポリカルボン酸系ポリマーの製造方法としては、例えば、上記モノマー及び/又はその塩の水溶液にラジカル重合開始剤を添加して、30~150℃で2~5時間加熱反応させる方法が挙げられる。このとき、上記モノマー及び/又はその塩の水溶液に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類やアセトン等の水性溶剤を添加してもよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過硫酸塩と重亜硫酸ナトリウム等の組み合わせによるレドックス系重合開始剤、過酸化水素、水溶性アゾ系重合開始剤等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は単独で使用してもよく、又は二以上を併用してもよい。さらに、ラジカル重合の際には、重合度を調整する目的で連鎖移動剤(例えば、チオグリコール酸オクチル)を添加してもよい。
【0170】
ラジカル重合には、上記モノマーのほかに共重合可能なモノマーを使用することができる。共重合可能なモノマーとしては、エチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系モノマー、アクリルアミド、アクリレート類、メタクリレート類等が挙げられる。アクリレート類及びメタクリレート類は、ヒドロキシル基等の置換基を有していてもよい炭素数1~3の炭化水素基を有するものが好ましい。このようなアクリレート類又はメタクリレート類としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート等が挙げられる。これらの共重合可能なモノマーは、単独で使用してもよく、又は二以上を併用してもよい。
【0171】
ポリカルボン酸系ポリマー中のカルボキシル基はフリーであっても、アルカリ金属やアミン系化合物等によって中和されていてもよい。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられ、アミン系化合物としてはアンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0172】
ポリカルボン酸系ポリマーの重量平均分子量は、得られる繊維製品の撥水性が良好となる観点から、1000~20000が好ましく、3000~15000がより好ましい。
【0173】
ポリカルボン酸系ポリマーは、「ネオクリスタル770」(日華化学株式会社製、商品名)、「セロポールPC-300」(三洋化成工業株式会社製、商品名)等の市販品を用いることができる。
【0174】
上記-O-P(O)(OX
1)(OX
2)を有する化合物としては、例えば、下記一般式で表されるリン酸エステル化合物が挙げられる。
[式中、X
1又はX
2は上記と同義であり、X
3は炭素数1~22のアルキル基を示す。]
【0175】
上記リン酸エステル化合物としては、アルキルエステル部分が、炭素数1~22のアルキル基であるリン酸モノエステル、ジエステル及びトリエステル、並びにこれらの混合物を用いることができる。
【0176】
得られる繊維製品の撥水性が良好となる観点から、ラウリルリン酸エステル、デシルリン酸エステルを用いることが好ましい。
【0177】
リン酸エステル化合物は、例えば、「フォスファノールML-200」(東邦化学工業株式会社製、商品名)等の市販品を用いることができる。
【0178】
上記特定官能基を有する化合物の一種以上が含まれる前処理液は、例えば、上述した化合物の水溶液とすることができる。また、前処理液には、酸、アルカリ、界面活性剤、キレート剤等を含有させてもよい。
【0179】
繊維材料を上記前処理液で処理する方法としては、例えば、パディング処理、浸漬処理、スプレー処理、コーティング処理が挙げられる。パディング処理としては、例えば、繊維染色加工辞典(昭和38年、日刊工業新聞社発行)の396~397頁や色染化学III(1975年、実教出版株式会社発行)の256~260頁に記載のパディング装置を用いた方法が挙げられる。コーティング処理としては、例えば、染色仕上機器総覧(昭和56年、繊維社発行)の473~477頁に記載のコーティング機を用いる方法が挙げられる。浸漬処理としては、例えば、染色仕上機器総覧(昭和56年、繊維社発行)の196~247頁に記載のバッチ式染色機を用いる方法が挙げられ、液流染色機、気流染色機、ドラム染色機、ウインス染色機、ワッシャー染色機、チーズ染色機等を用いることができる。スプレー処理としては、例えば、圧搾空気で処理液を霧状にして吹き付けるエアースプレーや、液圧霧化方式のエアースプレーを用いた方法が挙げられる。このときの処理液の濃度や付与後の熱処理等の処理条件は、その目的や性能等の諸条件を考慮して、適宜調整することができる。また、前処理液が水を含有する場合は、繊維材料に付着させた後に水を除去するために乾燥させることが好ましい。乾燥方法としては、特に制限はなく、乾熱法、湿熱法のいずれであってもよい。乾燥温度も特に制限されないが、例えば、室温~200℃で10秒~数日間乾燥させればよい。必要に応じて、乾燥後に100~180℃の温度で10秒~5分間程度加熱処理してもよい。
【0180】
なお、繊維材料が染色されるものである場合、前処理液による処理は、染色前でも、染色と同浴で行ってもよいが、還元ソーピングを行う場合は、その過程で吸着した上記特定官能基を有する化合物(例えば、フェノール系高分子化合物等)が、脱落してしまうおそれがあるので、染色後の還元ソーピング後に行うことが好ましい。
【0181】
浸漬処理における処理温度は、60~130℃とすることができる。処理時間は、5~60分とすることができる。
【0182】
前処理液による官能基導入工程は、上記特定官能基を有する化合物の付着量が、繊維材料100重量部に対し、1.0~7.0重量部になる量で処理することが好ましい。この範囲内であると、耐久撥水性及び風合いを高水準で両立させることができる。
【0183】
前処理液は、pHを3~5に調整することが好ましい。pH調整は、酢酸、リンゴ酸等のpH調整剤を用いることができる。
【0184】
前処理液には、上記特定官能基を有する化合物を塩析効果により有効に繊維材料に吸着させるために塩を併用することもできる。使用できる塩としては、例えば、塩化ナトリウ
ム、炭酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0185】
前処理液による官能基導入工程では、過剰に処理された上記特定官能基を有する化合物を除去することが好ましい。除去方法としては、水洗による方法が挙げられる。十分な除去を行うことにより、後段の撥水加工において撥水性の発現が阻害されることを抑制することができ、加えて、得られる繊維製品の風合が良好となる。また、得られる官能基含有繊維は、炭化水素系撥水剤に接触させる前に、十分乾燥させておくことが好ましい。
【0186】
(ii)繊維を構成する材料に上記特定官能基が直接導入されている繊維としては、例えば、カチオン可染ポリエステル(CD-PET)が挙げられる。
【0187】
官能基含有繊維は、得られる繊維製品の撥水性が良好となる観点から、表面のゼータ電位が-100~-0.1mVであることが好ましく、-50~-1mVであることがより好ましい。繊維の表面のゼータ電位は、例えば、ゼータ電位・粒径測定システムELSZ-1000ZS(大塚電子株式会社製)にて測定することができる。
【0188】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例0189】
以下、実施例を挙げて本開示を詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0190】
<試験方法>
試験の手順は次のとおりである。
【0191】
[処理紙の作製]
耐水性(Cobb値)52g/m2、坪量45g/m2、密度0.60g/m3の薄紙に対して、14.9mg/cm3の化合物の溶液をギャップを0milの設定したベーカー式アプリケータ―で3回塗工後、140℃で1分アニールすることで、処理紙を作成した。塗工液の溶液調整にはクロロホルムを用いた。化合物がクロロホルムに不溶の場合は、トルエン、アセトンなどの有機溶媒を用いた。
【0192】
[KIT試験(耐油性)]
3Mキットテスト(TAPPI T-559cm-02)により測定した。3Mキットテスト法は、ヒマシ油、トルエン、ヘプタンが配合された試験油を処理紙の表面におき、15 秒後に試験油を拭った際、処理紙への油染みの有無により評価する。キット番号1~6の試験油にて試験を実施し、染みが見られなかった最大のキット番号を耐油性の評価結果とした。
【0193】
[コーン油耐性試験(耐油性)]
コーン油を処理紙の表面におき、15秒後に試験油を拭った際、処理紙への油染みの有無により評価する。
染みがない場合を〇、染みが見られるときを×とする。
【0194】
[HD接触角]
化合物αの固形分濃度1.0%の溶液(または分散液)を、シリコンウェハー上に2500rpm、25秒の条件でスピンコートし、平滑なスピンコート膜を得た。これを140℃で1分間加熱することで、化合物処理したシリコンウェハーを作製した。溶媒または分散媒にはクロロホルムを用いた。化合物処理したシリコンウェハー上に、2μLのHD(ヘキサデカン)を滴下し、着滴1秒後の静的接触角を化合物αのHD接触角とした。
【0195】
[撥水性試験]
化合物αの固形分濃度16.8mg/mLの処理液を、クロロホルムを溶媒として調製し、布をこの処理液に浸してからマングルに通し、熱処理した試験布で撥水性を評価した。JIS-L-1092(AATCC-22)のスプレー法に準じて処理布の撥水性を評価した。下記に記載する表に示されるように撥水性No.によって表す。点数が大きいほど撥水性が良好なことを示す。
【0196】
[モールドの作製]
自動モールド成型機を使用し、モールドを成型した。下部には、多数の吸引孔を設けた金属製のパルプモールド成形型の上に網状体を配置したもの、上部には、金属製の槽を配置させ、上部の金属槽にパルプスラリーを入れた。パルプモールド成形型の網状体が配置された側と反対側から、真空ポンプにより0.1~1MPaでパルプ含有水性組成物をパルプモールド成形型および網状体を介して吸引・脱水し、パルプ含有水性組成物に含まれる固形分(パルプ等)を網状体の上に堆積させて、パルプモールド中間体を得た。次に、得られたパルプモールド中間体を、60~200℃に加温された金属製のオスメス成形型で上下から、0.1~1MPaの圧力下で乾燥させる。これにより、容器の形状に成形されたパルプモールド製品を製造した。
【0197】
[モールド試験 実用耐油試験]
モールドに65℃のコーン油100mlを注ぎ、室温で45分放置した後に、コーン油をモールドから取り出し、モールドの油染みの度合いを評価した。染み込みの程度により、以下のように評価数値を設定した。
5:内側に染み無
4:内側に染み有。裏側に染み無。
3:内側に染み有。裏側にわずかに染み出しあり。
2:内側に染み有。裏への染み出しが面積の50%未満。
1:内側に染み有。裏への染み出しが面積の50%以上100%未満。
0:裏側全体に染み出し。
【0198】
[モールド試験 実用耐水試験]
モールドに100℃の水100mlを注ぎ、室温で30分放置した後に、水をモールドから取り出し、モールドの染みの度合いを評価した。染み込みの程度により、以下のように評価数値を設定した。
5:内側に染み無
4:内側に染み有。裏側に染み無。
3:内側に染み有。裏側にわずかに染み出しあり。
2:内側に染み有。裏への染み出しが面積の50%未満。
1:内側に染み有。裏への染み出しが面積の50%以上100%未満。
0:裏側全体に染み出し。
【0199】
<化合物の合成>
試験に用いた化合物は下記の方法により合成した。
【0200】
[化合物2]
【0201】
オクタデカノール(東京化成品)8.00gを脱水テトラヒドロフラン(富士フィルム和光純薬品)65.0mLに溶解後、氷浴で冷やした。10分後、トリエチルアミン4.53mL、2-クロロ酢酸クロリド(富士フィルム和光純薬品)2.82mLの順に添加し、一晩撹拌した。翌日、反応溶液をろ過し、ろ液を濃縮後、残渣をメタノール中で10分攪拌後、冷蔵保存した。3時間後、固体をろ過して乾燥させることで以下に示す化合物1を9.36g得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 0.87 (t, 3 H), 1.24-1.68 (m, 32 H), 4.04 (s, 2 H), 4.17 (t, 2 H).
【0202】
化合物1 4.23gを脱水テトラヒドロフラン(富士フィルム和光純薬品)20.0mLに溶解後、脱水ピリジン(富士フィルム和光純薬品)2.95mLを添加し、オイルバス温度50℃で一晩撹拌した。翌日、反応溶液を冷蔵保存した。3時間後、固体をろ過して乾燥させることで以下に示す化合物2を1.51g得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 0.87 (t, 3 H), 1.24-1.68 (m, 32 H), 4.04 (s, 2 H), 4.21 (t, 2 H), 6.33 (s, 1 H), 8.04 (t, 2 H), 8.47 (t, 1 H), 9.43 (d, 2 H).
【0203】
[化合物3]
以下に示す化合物3をJournal of Chemical Research (2013), 37(4), 205-207を参照して合成した。
【0204】
[化合物6]
まず、ChemMedChem (2016), 11(21), 2367-2371を参照して、以下に示す化合物4を合成した。
【0205】
化合物4 5g、プロパルギルアルコール(富士フィルム和光純薬品)1.3mL、硫酸銅5水和物(富士フィルム和光純薬品)0.85g、L-アスコルビン酸ナトリウム(富士フィルム和光純薬品)1.34g、テトラブチルアンモニウムアイオダイド(富士フィルム和光純薬品)0.625gをテトラヒドロフラン(富士フィルム和光純薬品)20.0mL、水20.0mLの混合溶媒に溶解後、一晩撹拌した。翌日、反応溶液をろ過後、固体を水、メタノールで洗浄した。洗浄後、固体を乾燥させることで以下に示す化合物5を5.95g得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 0.87 (t, 3 H), 1.24-1.68 (m, 32 H), 4.33 (t, 2 H), 4.78 (t, 2 H), 7.50 (s, 1 H).
【0206】
続いて、化合物5 2.5gを脱水ピリジン(富士フィルム和光純薬品)10.0mLに溶解後、塩化チオニル(富士フィルム和光純薬品)1.03mLを添加し、オイルバス温度80℃で一晩撹拌した。翌日、室温まで冷却後、反応溶液にメタノールを20.0mLを加えて5分攪拌した。5分後、固体をろ過して乾燥させることで以下に示す化合物6を2.29g得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 0.86 (t, 3 H), 1.24-1.68 (m, 32 H), 4.32 (t, 2 H), 6.39 (s, 1 H), 8.04 (t, 2 H), 8.38 (t, 1 H), 8.72 (s, 1 H), 9.73 (d, 2 H).
【0207】
[化合物8]
ステアリン酸(東京化成品)10.0g、4、4-ジメチルアミノピリジン(富士フィルム和光純薬品)0.429g、グリシンアミド塩酸塩(富士フィルム和光純薬品)5.05gを脱水ジメチルホルムアミド(富士フィルム和光純薬品)100.0mLに溶解後、トリエチルアミン6.37mL、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(東京化成品)8.76gの順に添加し、オイルバス温度100℃で一晩撹拌した。翌日、反応溶液を40℃まで冷却後、メタノール50mLを加えてろ過し、固体をメタノール、ジエチルエーテルで洗浄した、洗浄後、固体を乾燥させることで以下に示す化合物7を7.35 g得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 0.87 (t, 3 H), 1.24-1.30 (m, 30 H), 2.23 (t, 2 H), 3.94 (d, 2 H).
【0208】
化合物7 8.5g、ピリジン塩酸塩(富士フィルム和光純薬品)4.61g、パラホルムアルデヒド(富士フィルム和光純薬品)1.05gを脱水ピリジン(富士フィルム和光純薬品)90.0mLに溶解後、オイルバス温度85℃で一晩撹拌した。翌日、反応溶液を室温まで冷却後、固体をろ過し、固体をピリジン、アセトンで洗浄した。洗浄後、固体を乾燥させることで以下に示す化合物8を6.76g得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 0.87 (t, 3 H), 1.24-1.30 (m, 30 H), 2.39 (t, 2 H), 3.99 (d, 2 H), 6.00 (d, 2 H), 8.02 (t, 2 H), 8.45 (t, 1 H), 9.45 (d, 2 H), 10.72 (m, 1 H).
【0209】
[化合物10]
ステアリン酸(東京化成品)10.0g、4-アミノベンズアミド(富士フィルム和光純薬品)6.7g、4、4-ジメチルアミノピリジン(富士フィルム和光純薬品)0.429gを脱水ジメチルホルムアミド(富士フィルム和光純薬品)100.0mLに溶解後、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(東京化成品)8.76gの順に添加し、オイルバス温度100℃で一晩撹拌した。翌日、反応溶液を40℃まで冷却後、メタノール50mLを加えてろ過し、固体を水、メタノール、ジエチルエーテルで洗浄した、洗浄後、固体を乾燥させることで下式に示す化合物9を10.59g得た。
【0210】
化合物9 7.5g、ピリジン塩酸塩(富士フィルム和光純薬品)3.01g、パラホルムアルデヒド(富士フィルム和光純薬品)0.81gを脱水ピリジン(富士フィルム和光純薬品)90.0mLに溶解後、オイルバス温度83℃で一晩撹拌した。翌日、反応溶液を50℃まで冷却後、固体をろ過し、固体をピリジン、メタノールで洗浄した。洗浄後、固体を乾燥させることで以下に示す化合物10を5.60g得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 0.87 (t, 3 H), 1.24-1.70 (m, 30 H), 2.36 (t, 2 H), 6.22 (s, 2 H), 7.63 (m, 2 H), 8.00-8.11 (m, 4 H), 8.40 (t, 1 H), 9.73 (d, 2 H), 11.05 (br s, 1 H).
【0211】
[化合物12]
まず、ステアリン酸(東京化成品)10.0g、2-クロロアセトアミド(富士フィルム和光純薬品)7.4g、炭酸カリウム(富士フィルム和光純薬品)7.0gを脱水ジメチルホルムアミド(富士フィルム和光純薬品)60.0mLに溶解後、オイルバス温度100℃で一晩撹拌した。翌日、反応溶液を40℃まで冷却後、水50mLを加えてろ過し、固体を1N塩酸、水、アセトン、ジエチルエーテルで洗浄した、洗浄後、固体を乾燥させることで以下に示す化合物11を6.93g得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 0.87 (t, 3 H), 1.24-1.70 (m, 30 H), 2.40 (t, 2 H), 3.94 (d, 2 H), 4.59 (s, 2 H), 5.75 (br s, 1 H), 6.06 (br s, 1 H).
【0212】
続いて、化合物11 11.05g、ピリジン塩酸塩(富士フィルム和光純薬品)5.38g、パラホルムアルデヒド(富士フィルム和光純薬品)1.28gを脱水ピリジン(富士フィルム和光純薬品)70.0mLに溶解後、オイルバス温度83℃で一晩撹拌した。翌日、反応溶液を室温まで冷却後、固体をろ過し、固体をメタノール、アセトンで洗浄した。洗浄後、固体を乾燥させることで以下に示す化合物12を5.11g得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 0.87 (t, 3 H), 1.24-1.70 (m, 30 H), 2.57 (t, 2 H), 4.63 (s, 2 H), 6.14 (s, 2 H), 8.02 (t, 2 H), 8.44 (t, 1 H), 9.56 (d, 2 H), 10.64 (br s, 1 H).
【0213】
[化合物13]
以下に示す化合物13をJournal of Organic Chemistry (1951), 16, 1111-16を参照して合成した。
【0214】
<試験結果>
KIT試験、コーン油耐性試験、HD接触角の評価結果を表1に示す。
【0215】
【0216】
モールド試験の結果を表2に示す。モールドの作製は下記の方法により行った。
化合物8乳鉢で粉砕し、粉末化した。この粉末1gに対して、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル 0.1gと水8.9gを加え、ミックスローターで6時間混合した。ホモジナイザーで10000rpmの条件で20分攪拌することで、化合物8の水分散組成物を得た。続いて、化合物8の水分散組成物を、固形分換算でパルプに対して5wt%の比率になるように濃度0.5wt%のパルプスラリーに添加し、パルプ含有水性組成物を調整した。パルプ含有水性組成物を自動モールド成型機に投入し、モールドを作製した。
【0217】
化合物13を乳鉢で粉砕し、粉末化した。この粉末1gに対して、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル 0.1gと水8.9gを加え、ミックスローターで6時間混合した。ホモジナイザーで10000rpmの条件で20分攪拌することで、化合物13の水分散組成物を得た。続いて、化合物13の水分散組成物を、固形分換算でパルプに対して10wt%の比率になるように濃度0.5wt%のパルプスラリーに添加し、パルプ含有水性組成物を調整した。パルプ含有水性組成物を自動モールド成型機に投入し、モールドを作製した。
【0218】
【0219】
撥水性試験の結果を表3に示す。化合物3のPET繊維(PET布)に対する撥水性試験を実施した。処理後のPET繊維に対する化合物3の付着率は2.1wt%であった。
【0220】