IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プレモ,エスアー.の特許一覧

<>
  • 特開-防水式電磁装置とその製造方法 図1
  • 特開-防水式電磁装置とその製造方法 図2
  • 特開-防水式電磁装置とその製造方法 図3A
  • 特開-防水式電磁装置とその製造方法 図3B
  • 特開-防水式電磁装置とその製造方法 図4
  • 特開-防水式電磁装置とその製造方法 図5
  • 特開-防水式電磁装置とその製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063772
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】防水式電磁装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20240502BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20240502BHJP
   H01F 38/08 20060101ALI20240502BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20240502BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20240502BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
H01F37/00 S
H01F30/10 S
H01F38/08 N
H01F27/32 140
H01F41/12 C
H01F41/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023182907
(22)【出願日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】22383032.4
(32)【優先日】2022-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520161894
【氏名又は名称】プレモ,エスアー.
(74)【代理人】
【識別番号】100081053
【弁理士】
【氏名又は名称】三俣 弘文
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス デ ラ フエンテ,ホセ ラモン
(72)【発明者】
【氏名】カネテ カベツァ クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ロハス クエバス,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ナバッロ ペレス,フランシスコ エツェクイエル
【テーマコード(参考)】
5E044
【Fターム(参考)】
5E044AD02
5E044AD06
5E044CA03
5E044CA09
(57)【要約】

【課題】磁気コア10が包囲体40の中心に位置する防水式電磁装置を提供する。
【解決手段】本発明の防水式電磁装置は、コイル20で囲まれた磁気コア10と、コイル20に電気的に接続されたピン31を有する電子回路基板30と、磁気コア10とコイル20と電子回路基板30を囲むように防水方式でオーバーモールド・プロセスで形成された包囲体40とを有する。磁気コア10は複数の突出部11を有し、突出部11は磁気コア10から包囲体40の外面の方向に突出し、外面に接触する。その結果、オーバーモールド・プロセスの間、磁気コア10を包囲体40内の中心に維持する。
【選択図】 図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水式電磁装置において、
*コイル(20)で囲まれた磁気コア(10)と、
*前記コイル(20)に電気的に接続された接続用ピン(以下単に「ピン」と称する)(31)を有する電子回路基板(以下単に「基板」と称する)(30)と、
*前記磁気コア(10)と前記コイル(20)と前記基板(30)を囲むように防水方式でオーバーモールド・プロセスで形成された包囲体(40)と、
を有し、
前記磁気コア(10)は複数の突出部(11)を有し、前記突出部(11)は前記磁気コア(10)から前記包囲体(40)の外面の方向に突出し、その結果、オーバーモールド・プロセスの間、前記磁気コア(10)を前記包囲体(40)の中心に維持する
ことを特徴とする防水式電磁装置。
【請求項2】
前記複数の突出部(11)は、それぞれ前記磁気コア(10)の2つの対向する両側から、互いに反対方向に延びる
ことを特徴とする請求項1記載の防水式電磁装置。
【請求項3】
前記基板(30)は、前記磁気コア(10)に一部に埋設されている
ことを特徴とする請求項1記載の防水式電磁装置。
【請求項4】
前記ピン(31)は、導電性ケーブル(以下単に「ケーブル」と称する)(50)の導電性露出端部に接続され、
前記ピン(31)と前記導電性露出端部は、前記包囲体(40)に埋設され、
前記ケーブル(50)は、前記包囲体(40)の外側に延びる
ことを特徴とする請求項1記載の防水式電磁装置。
【請求項5】
前記ケーブル(50)は、封止用部分(51)を有し、
前記封止用部分(51)は、前記防水式電磁装置の一端に隣接し、前記包囲体(40)には埋設されず、前記包囲体(40)に埋設さたケーブル(50)の2つの部分の間にあり、
前記各封止用部分(51)は、防水性絶縁シール(以下単に「シール」と称する)(60)で、又はレジン製のシール(60)で覆われている
ことを特徴とする請求項4記載の防水式電磁装置。
【請求項6】
前記封止用部分(51)は、前記包囲体(40)の空洞内に配置され、
前記空洞は、前記シール(60)で充填されている
ことを特徴とする請求項5記載の防水式電磁装置。
【請求項7】
前記突出部(11)の突出先端部(12)は、前記包囲体(40)の外面に達し、前記包囲体(40)の空洞内に収納され、前記シール(60)又はレジン製のシール(60)で覆われている
ことを特徴とする請求項1記載の防水式電磁装置。
【請求項8】
前記包囲体(40)の外面は、長手方向溝(41)を有し、前記長手方向溝(41)は、前記包囲体(40)の全長に沿って延び、前記ケーブル(50)が配置される
ことを特徴とする請求項1記載の防水式電磁装置。
【請求項9】
防水式電磁装置の製造方法において、
(A)コイル(20)で囲まれた磁気コア(10)を生成するステップと、
前記コイル(20)は電子回路基板(以下単に「基板」と称する)(30)の接続用ピン(以下単に「ピン」と称する)(31)に接続されており、
(B)前記磁気コア(10)とコイル(20)と基板(30)を、包囲体用鋳型内に挿入し、前記包囲体用鋳型を閉じるステップと、
(C)包囲体(40)を、前記包囲体用鋳型内に、防水方式のオーバーモールド・プロセスで形成するステップと、
前記包囲体(40)は、前記磁気コア(10)とコイル(20)と基板(30)を囲み、
(D)防水式電磁装置を得るステップと、
(F)前記防水式電磁装置を前記包囲体用鋳型から取り出すステップと
を有し、
前記磁気コア(10)が、自身から突出した複数の突出部(11)を有する状態で、生成され、
前記各突出部(11)は、突出先端部(12)を有し、前記突出先端部(12)は、前記磁気コア(10)が包囲体用鋳型内に導入された時は、前記包囲体用鋳型に接触し、
前記磁気コア(10)は、前記包囲体(40)をオーバーモールド・プロセスで形成する間、前記包囲体(40)の中心に維持される
ことを特徴とする防水式電磁装置の製造方法。
【請求項10】
前記突出先端部(12)は、前記包囲体用鋳型に、前記包囲体用鋳型の内面から突出した中心維持構成で、接触し、
前記中心維持構成は、前記包囲体(40)の外面の空洞を規定し、その結果、前記突出先端部(12)は、前記包囲体(40)の外面の前記空洞と一致する
ことを特徴とする請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
(G)前記突出先端部(12)を、前記シール(60)又はレジン製のシール(60)で覆うステップを更に有し、
前記ステップ(G)は、前記ステップ(B)の前又はステップ(F)の後に行われる
ことを特徴とする請求項9記載の製造方法。
【請求項12】
前記磁気コア(10)を生成する為に、
(X1)基板(30)の一部をコア用鋳型内に挿入し、
(X2)磁気コア(10)をコア用鋳型内で注入成形して生成し、その結果、
(X3)前記基板(30)の一部が前記磁気コア(10)に所定位置で埋設された状態で付属する磁気コア(10)を得る、
前記所定位置は、前記基板(30)が、前記包囲体(40)をオーバーモールド・プロセスの間、前記包囲体用鋳型から離れた位置である
ことを特徴とする請求項9記載の製造方法。
【請求項13】
前記磁気コア(10)を包囲体用鋳型内に挿入するステップ(B)の前に、
前記ピン(31)は、前記ケーブル(50)の露出した導電性露出端部に接続され、その後で、
前記磁気コア(10)と、前記コイル(20)と、前記ケーブル(50)が付属する基板(30)は、包囲体用鋳型内に挿入され、
前記ケーブル(50)は、前記包囲体用鋳型の外側に、包囲体用鋳型のケーブル出口開口を介して延び、オーバーモールド・プロセスで、前記ピン(31)と、前記ケーブル(50)の露出した導電性露出端部と、前記ケーブル(50)の一部を埋設する包囲体(40)を生成する
ことを特徴とする請求項9記載の製造方法。
【請求項14】
前記ケーブル(50)は、前記包囲体用鋳型内に、前記ケーブル(50)の封止用部分(51)を包囲体用鋳型の突出リザーブに一致させるように、配置し、
前記包囲体用鋳型を閉じる時に、前記ケーブル(50)の封止用部分(51)をカバーし、前記封止用部分(51)が、前記包囲体(40)内に埋設されるのを阻止し、前記封止用部分(51)をカバーする突出リザーブは、包囲体用鋳型のケーブル出口開口から所定距離だけ離れており、前記所定距離は、ケーブルの一部が後でオーバーモールドされる距離である
ことを特徴とする請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
前記ステップ(F)の後、
(H)前記ケーブル(50)の封止用部分(51)を、前記シール(60)又はレジン製のシール(60)で覆うステップを有する
ことを特徴とする請求項14記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水式電磁装置に関する。この防水式電磁装置は、電子回路基板の接続ピンに接続されているコイルが巻かれた磁気コアを有する。磁気コアとコイルと電子回路基板はその周りにオーバーモールドで形成される包囲体に埋設されている。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、次の構成の電磁装置を開示する。この電磁装置はコイルが巻かれた磁気コアを有する。磁気コアとコイルは防水形態の包囲体に埋設されている。しかし特許文献1は、オーバーモールド・プロセス中に、磁気コアを鋳型(mold)の中心に維持する方法を開示していない。
【0003】
特許文献2は、類似の電磁装置を開示する。この電磁装置においては、磁気コアとコイルは、鋳型内に導入されたボビンに支持され、オーバーモールド・プロセス中に磁気コアを鋳型の中心に維持している。しかし、この解決方法は、ボビンの製造と配置を必要とする労働集約的である。
【0004】
【特許文献1】EP3089176A1
【特許文献2】US2021376476A1
【特許文献3】US10893623B2(Valeo)
【特許文献4】EP0472199A1
【0005】
特許文献3、4と他の類似文献は、素子要素を鋳型内に、鋳型に組み込まれた格納可能なレバーを用いて、維持する方法を開示する。しかし、この方法は、鋳型の製造・保守の費用を大幅に増加させてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、本発明は請求項1に記載の防水式電磁装置に関する。
【0007】
この電磁装置の一例は、誘導器、アンテナ、近距離アンテナ、変圧器等である。
【0008】
本発明の防水式電磁装置は、既に公知の以下の特徴・構成を有する。
*コイルで囲まれた(即ち、コイルが巻かれた)磁気コアと、
*コイルに電気的に接続された接続ピンを有する電子回路基板と、
*磁気コアとコイルと前記電子回路基板を囲むように防水方式でオーバーモールド・プロセスで形成された包囲体。
【0009】
オーバーモールドには、通常プラスチック材料又は熱可塑性材料が用いられるが、周囲を包囲するシェル(殻)を形成する。このシェルが、内部要素と包囲体の外部とを連通する水路の全てを密閉し、包囲体の中への水の流入を阻止し、防水式電磁装置の構造耐性(衝撃)を増加させている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、更に従来公知ではない方法/構成で、磁気コアから包囲体の外面方向に突出する複数の突出部を有することを提案する。この構成により、オーバーモールド・プロセス中、磁気コアを包囲体(包囲体用鋳型)内の中心に維持する(センタリング)機構を提供する。
【0011】
これによれば、磁気コアは突出部を有する。この突出部は磁気コアから包囲体を貫通して延びる。各突出部は包囲体の外面に達する突出先端部を有する。
【0012】
包囲体の外面はその形体を決定する表面である。この形体は注入される鋳型の形状により決まる。
【0013】
これらの突出部は、磁気コアの反対側の2つの側面/両側から反対方向に延びる。少なくとも3つの突出部が、磁気コアの同一側にあり、磁気コアが鋳型に挿入された時(オーバーモールド・プロセス前)に安定性を与える。その後、磁気コアがこれらの3つの突出部の突出先端部で支持される。
【0014】
磁気コアは長手方向を規定する細長い形状が好ましい。この場合、突出部は長手方向に直交する放射方向/半径方向(即ち、横方向)に延びるのが好ましい。
【0015】
本発明の一実施例によれば、電子回路基板が磁気コア内に一部埋設されており、オーバーモールド・プロセスの間、電子回路基板を支持する。磁気コアは、電子回路基板を包囲体用鋳型の表面から、オーバーモールド・プロセスの間、離して維持する。
【0016】
電子回路基板の接続ピンは、導電性ケーブル(以下単に「ケーブル」と称する)の露出した導電性端部に接続される。接続ピンと導電性端部も包囲体内に埋設され、ケーブルは包囲体の外に延びる。かくして、電磁装置の信号は、ケーブルを介して通信され、ケーブルとコイルの間の接続は、防水式であり、防水耐性が増加する。
【0017】
本発明の第2の態様である請求項9によれば、本発明は、防水式電磁装置の製造方法を提供する。
【0018】
本発明の方法は、以下のステップを有する。これは従来公知である。
(A)コイルで囲まれた(コイルが巻かれた)磁気コアを生成するステップと、
前記コイルは電子回路基板の接続ピンに接続されており、
(B)磁気コアとコイルと電子回路基板を、包囲体用鋳型内に挿入し、包囲体用鋳型を閉じるステップと、
(C)包囲体用鋳型内に包囲体を、防水方式でオーバーモールド・プロセスで形成するステップと、
包囲体は、磁気コアとコイルと電子回路基板を包囲しており、
(D)防水式電磁装置を得る(製造する)ステップと、
(F)防水式電磁装置を包囲体用鋳型から取り出すステップ。
【0019】
本発明の方法は、以下を含む。これは従来公知ではない。
磁気コアが、自身から横方向に突出した複数の突出部を有した状態で、生成される。各突出部は突出先端部を有する。突出先端部は、磁気コアが包囲体用鋳型内に導入された時は、包囲体用鋳型に接触する。かくして、磁気コアが、包囲体用鋳型の中心に、包囲体をオーバーモールド・プロセスで形成する間、維持される。
【0020】
これによれば、磁気コアは突出部を有する。この突出部は、磁気コアから離れる方向に磁気コアから延びる。各突出部はその遠端部に突出先端部を規定する。
【0021】
磁気コア、コイル及び電子回路基板が、包囲体用鋳型内に導入されると、突出先端部は包囲体用鋳型の内面と接触する。その結果、オーバーモールド・プロセスの間、磁気コアの残りの部分とそれに付属する他の要素は、包囲体用鋳型の内面から離れ、包囲体用鋳型の中心に維持される。
【0022】
その後、包囲体用鋳型が閉じられると、包囲体を構成する溶融した材料成分が、包囲体用鋳型内に注入され、その中にある要素を完全に(但し突出先端部は除く)包囲する。突出先端部は、形成された包囲体の外面と所定の点で一致している。所定の点とは突出先端部が鋳型の内面と接触している点である。
【0023】
磁気コアを絶縁する為に、突出先端部を水密方式で絶縁シールで、或いはレジン製の絶縁シールで覆ってもよい。これは、磁気コアを包囲体用鋳型に挿入する前、又は電磁装置を鋳型から取り出した後で行うことができる。
【0024】
好ましくは、本発明の磁気コアは注入成形された磁気コアである。例えば、硬化磁気充填材粒子を含有するポリマー・マトリックスを含む合成材料製である。
【0025】
本発明の方法の一実施例によれば、磁気コアを生成する為に、
電子回路基板の一部がコア用鋳型内に挿入される。
磁気コアは、コア用鋳型内でモールド(材料を注入成形)することで、生成される。
所定の位置に部分的に埋設された電子回路基板が付属する磁気コアを得る。
所定の位置とは、包囲体をオーバーモールド・プロセスで製造する間、電子回路基板が包囲体用鋳型から離れている位置である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の防水式電磁装置の斜視図。同図には包囲体40とこの包囲体40から延びるケーブルが図示されている。ケーブルの先端部の電気コネクタは包囲体40から離れている。
図2】長手方向の溝に沿って配置されたケーブルを有する防水式電磁装置の斜視図。
図3A】磁気コアの突出部11を有する本発明の防水式電磁装置の横方向断面図。
図3B】包囲体40から延びるケーブル50を有する本発明の防水式電磁装置の長手方向断面図。
図4図2と同一実施例の上面図。
図5図2の防水式電磁装置で包囲体を除いた状態の斜視図。
図6図5の防水式電磁装置を裏から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施例によれば、本発明の防水式電磁装置は、磁気コア10と、電子回路基板30と、それらを包囲する包囲体40を有する。磁気コア10はその周囲がコイル20で包囲されている(コイル20が巻かれている)。電子回路基板30は、コイル20に電気的に接続された接続ピン31を有する。包囲体40は、磁気コア10と、コイル20と、電子回路基板30の周囲に防水方式でオーバーモールド・プロセスで成形されている。
【0028】
通常、コイル20は磁気コア10のX軸の周囲に巻回されている1本のコイルである。別の場合は、コイル20は磁気コア10の直交するX,Y軸の周囲に巻回されている2本のコイルである。更に別の場合は、コイル20は磁気コア10の直交するX,Y,Z軸の周囲に巻回されている3本のコイルである。
【0029】
本発明の磁気コア10は、複数の突出部11を有する。これら突出部11は、磁気コア10から包囲体40の外部表面方向に突出している。その結果、磁気コア10の包囲体40内でのセンタリング(中心維持構成)が、オーバーモールド・プロセスの間、提供できる。
【0030】
好ましくは、電子回路基板30は磁気コア10内に一部埋設されている。その結果、包囲体40のオーバーモールド・プロセスによる成形の間、電子回路基板30は磁気コア10に取り付けられている。磁気コア10は、包囲体40のオーバーモールド・プロセスの間電子回路基板30を所定の位置に維持する。
【0031】
電子回路基板30の接続用ピン31は、ケーブル50の露出した導電性露出端部に接続されている。この場合、接続用ピン31と導電性露出端部は、包囲体40内に埋設される。ケーブル50の一部は、包囲体40の外側に延びる。この特徴により、適正な信号の送受信と防水構成が、ケーブル50と接続用ピン31の間の接続部分で可能となる。
【0032】
本発明の一実施例によれば、各ケーブル50は包囲体40の埋設されていない封止用部分51を有する。封止用部分51は包囲体40に埋設されたケーブルの2つの端部の間にある。各封止用部分51は、防水性絶縁シール60で、又はレジン製の防水性絶縁シール60でカバーされる。かくして更なる防水性封止構成が提供できる。
【0033】
好ましくは、ケーブル50の封止用部分51は包囲体40の空洞内に配置される。この空洞は後で防水性絶縁シール60で充填される。
【0034】
この特徴を有する実施例を図3Bに示す。同図において、空洞は底付き孔(即ち貫通孔ではない)である。この底付き孔の内側表面は、包囲体40の2つの向かい合った面を規定する。各ケーブル50は、この向かい合った面の両方を通過し、この通過部分が、向かい合った面の間のケーブル50の封止用部分51を規定する。防水性絶縁シール60が封止用部分51を囲む底付き孔を完全に充填する。
【0035】
他の実施例によれば、空洞は貫通孔でもよい。
【0036】
各突出部11は、磁気コア10の先端に、突出先端部12を有する。
【0037】
一実施例によれば、包囲体40の外面は、空洞を規定する凹部を有する。選択的事項として、突出先端部12のあるものは、この凹部で包囲体40の外面に達する。その結果、突出先端部12は空洞内に収納される。その後、突出先端部12は、防水性絶縁シール60又はレジン製の防水性絶縁シール60で覆われる。
【0038】
図3Aの上側部分に示すように、突出先端部12が空洞内に収納される場合は、防水性絶縁シール60が、空洞を充填し、空洞を囲む包囲体40の外面と面一になり、平坦な包囲体40を提供する。
【0039】
図3Aの下側部分に示すように、他の実施例によれば、突出先端部12が包囲体40の外面と面一である。この場合、防水性絶縁シール60は、包囲体40の上面に形成され、バルジ(bulge)即ち半球状の突出部を形成する。包囲体40の上側と下側の両方は、同一構成を有するのが好ましい。
【0040】
選択的事項として、包囲体40の外面は長手方向溝41を有してもよい。長手方向溝41は、包囲体40の全長に渡って延びる。これはケールの配線用である。
【0041】
本発明は上記した防水式電磁装置或いは電磁装置の製造方法を提供する。
【0042】
本発明の防水式電磁装置の製造方法は、以下のステップ(A)~(D)を有する。
(A)コイル20で囲まれた磁気コア10を生成するステップと、
コイル20は電子回路基板30の接続用ピン31に接続されている。
(B)磁気コア10とコイル20と電子回路基板30を、包囲体用鋳型内に挿入し、この包囲体用鋳型を閉じるステップと、
(C)包囲体40を、包囲体用鋳型内で防水方式のオーバーモールド・プロセスで形成するステップと、
包囲体40は、磁気コア10とコイル20と電子回路基板30を包囲する。
(D)防水式電磁装置を得るステップ。
そして、防水式電磁装置を前記包囲体用鋳型から取り出す。
【0043】
本発明の方法は、更に磁気コア10を生成することを含む。磁気コア10は自身から半径(横)方向に突出する複数の突出部11を有する。各突出部11は突出先端部12を有する。突出先端部12は、磁気コア10が包囲体用鋳型内に導入された時に、包囲体用鋳型の内面に接触する。かくして、包囲体40のオーバーモールド・プロセスの間、磁気コア10は包囲体用鋳型の中心に維持(centering)される。
【0044】
好ましくは、包囲体用鋳型は、突出先端部12に合わせた、内側に突出した中心維持構成(protruding centering configuration)を有する。中心維持構成は、包囲体用鋳型の内面から内側に突出している。中心維持構成は、包囲体用鋳型内でオーバーモールド成形されると、包囲体40の外面の空洞を形成する。
【0045】
この場合、突出先端部12は、包囲体用鋳型内に挿入された時、中心維持構成の所で、包囲体用鋳型と接触する。その結果、オーバーモールド・プロセスの後、突出先端部12は、空洞内の包囲体40外面と一致する。
【0046】
突出先端部12を、防水性絶縁シール60(例えば、レジン製)で覆ってもよい。これは、磁気コア10を包囲体用鋳型内に挿入する前、又は防水式電磁装置を包囲体用鋳型から取り出した後に、行うことができる。
【0047】
突出先端部12が空洞で包囲体40の外面と一致している時に、防水性絶縁シール60で空洞を充填する。その結果、形成された防水式電磁装置と面一で平滑な外面が得られる。
【0048】
本発明の一実施例によれば、磁気コア10を生成する為に、
(X1)電子回路基板30の一部をコア用鋳型内に挿入する。
(X2)磁気コア10を、コア用鋳型内で鋳造して、形成する。その結果、
(X3)電子回路基板30の一部が埋設された状態で有する磁気コア10が得られる。
電子回路基板30の磁気コア10に対する位置関係は、磁気コア10が支持する電子回路基板30が、包囲体40のオーバーモールド・プロセスの間、包囲体用鋳型の内面から離れているような位置である。
【0049】
好ましくは、磁気コア10を包囲体用鋳型内に挿入する前に、接続用ピン31はケーブル50の露出した導電性端部に溶接で接続される。その後、磁気コア10と、コイル20と、ケーブル50が付属する電子回路基板30は、包囲体用鋳型内に挿入される。ケーブル50は、包囲体用鋳型の外側に包囲体用鋳型のケーブル出口開口を介して、延びる。その後オーバーモールド・プロセスで、次の構成の包囲体40を生成する。この包囲体40は、接続用ピン31と、ケーブル50の露出した導電性端部と、ケーブル50の一部を埋設即ち収納する。ケーブル50の一部は、包囲体用鋳型内で、接続用ピン31と包囲体用鋳型のケーブル出口開口の間にある。これにより、ケーブル50と接続用ピン31との間の接続の適正な水密機能が確保できる。
【0050】
好ましくは、包囲体用鋳型は、突出したリザーブ(reserve)を有する。このリザーブは、包囲体用鋳型を閉じた時に、包囲体用鋳型内にあるケーブル50の封止用部分51をカバーし、封止用部分51が包囲体40内に埋設されるのを阻止する。このリザーブは、包囲体用鋳型のケーブル出口開口から所定距離だけ離れている。この所定距離は、ケーブルの一部が後でオーバーモールドされる。
【0051】
この場合、ケーブル50は、封止用部分51が包囲体用鋳型の相補的に突出したリザーブに一致するよう、包囲体用鋳型内に配置される。その結果、封止用部分51は、露出し、包囲体40に埋設されたケーブル50の2つの部分の間にあるように、包囲体40が生成される。
【0052】
防水式電磁装置を包囲体用鋳型から取り出した後、封止用部分51をシール60又はレジン製のシール60で覆う。これでケーブル50の防水機能が向上する。
【0053】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するためのものではない(特許法施行規則24条の4及び様式29の2の「備考」14のロ)。また同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。「少なくとも1つ或いは複数」、「と/又は」は、それらの内の1つに限定されない。例えば「A,B,Cの内の少なくとも1つ」は「A」、「B」、「C」単独のみならず「A,B或いはB,C更には又A,B,C」のように複数のもの、AとBの組合せAとBとCの組合せでもよい。「A,Bと/又はC」は、A,B,C単独のみならず、AとBの2つ、或いはAとBとCの全部を含んでもよい。本明細書において「Aを含む」「Aを有する」は、A以外のものを含んでもよい。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0054】
10:磁気コア
11:突出部
12:突出先端部
20:コイル
30:電子回路基板
31:接続用ピン
40:包囲体
41:長手方向溝 空洞、凹部
50;ケーブル
51:封止用部分
60:防水性絶縁シール
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6