(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063773
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】装具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/02 20060101AFI20240502BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20240502BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
A61F5/02 K
A41D13/05 131
B25J11/00 Z
A41D13/05 125
A61F5/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023182931
(22)【出願日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2022171457
(32)【優先日】2022-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510201562
【氏名又は名称】ディーエムチェーン協同組合
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】細江 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】▲かせ▼野 英憲
(72)【発明者】
【氏名】福畑 康史
【テーマコード(参考)】
3B211
3C707
4C098
【Fターム(参考)】
3B211AA01
3B211AB01
3B211AC17
3C707HT02
3C707MT03
3C707XK06
3C707XK16
3C707XK24
3C707XK28
3C707XK42
3C707XK75
4C098BB01
4C098BC03
4C098BC09
(57)【要約】
【課題】軽量、簡易な構成で、着用者の持ち上げ動作等を補助し、また、着用者の姿勢保持を助け、着用者の背部・腰部への負担を低減する装具を提供する。
【解決手段】装具100は、着用者の背部及び腰部に当接して被着される本体部1と、伸縮性を有する生地で形成され、一端が本体部1下部の離隔した二点に各々固着されて、当該固着された二点から着用者の背部で交差状に配されて肩部を通って脇下を周回し、他端が本体部1の中央近傍に各々連結される一対の付勢バンド部4と、伸縮性を有する生地で形成され、本体部1下部に固着され、着用者の下肢部で固定される下肢バンド部3とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の背部及び腰部に当接して被着される本体部と、
伸縮性を有する生地で形成され、一端が前記本体部下部の離隔した二点に各々固着されて、当該固着された二点から着用者の背部で交差状に配されて肩部を通って脇下を周回し、他端が前記本体部の中央近傍に各々連結される一対の付勢バンド部と、
伸縮性を有する生地で形成され、前記本体部下部に固着され、着用者の下肢部で固定される下肢バンド部とを備えることを
特徴とする装具。
【請求項2】
請求項1に記載の装具において、
前記本体部が、着用者の腰部に対応する下部両側位置から左右に延出される腰ベルトからなる押圧部分を備え、
当該押圧部分の各左右の腰ベルトが、前記本体部を着用者の腰部に押圧固定することを
特徴とする装具。
【請求項3】
請求項2に記載の装具において、
前記本体部の押圧部分が、当該本体部の左右側端から各左右の腰ベルト上に交差して配設される一対のバンド部を備えることを
特徴とする装具。
【請求項4】
請求項1に記載の装具において、
前記本体部が、着用者の背部及び腰部背面に配設される二重構造の中央部分を有し、
前記中央部分が、二重構造内部であって前記付勢バンド部の着用者側に板状体を備えることを
特徴とする装具。
【請求項5】
請求項1に記載の装具において、
前記下肢バンド部が、着用者の背面側で下肢に沿って配設される伸縮部分と、着用者の下肢に巻回されて固定される巻回部分とを備え、
左右一対の前記伸縮部分の少なくとも一部が、互いに連結されて一体的に形成されることを
特徴とする装具。
【請求項6】
請求項1に記載の装具において、
前記本体部と前記下肢バンド部とが、前記本体部側に配設される受具と、当該受具に対して回動自在に遊嵌される差込具とで連結されることを
特徴とする装具。
【請求項7】
請求項1に記載の装具において、
前記付勢バンド部の他端に固着され、着用者の肩部から脇下近傍を周回して前記本体部の中央近傍に連結される肩ベルト部を備えることを
特徴とする装具。
【請求項8】
請求項7に記載の装具において、
前記本体部と前記肩ベルト部とが、前記本体部側に配設される受具と、当該受具に対して回動自在に遊嵌される差込具とを介して連結されることを
特徴とする装具。
【請求項9】
請求項7に記載の装具において、
前記肩ベルト部が、装着時における左右一対の前記肩ベルト部間の距離を調整して連結する連結部分を備え、
前記連結部分が、上下方向に移動可能であることを
特徴とする装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量、簡易な構成で、着用者の持ち上げ動作等を補助し、また、着用者の姿勢保持を助け、着用者の背部・腰部への負担を低減する装具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身体に装着して、重量物の持ち上げ動作等を補助する等の装具、いわゆるボディースーツ等が知られている。
【0003】
例えば、従来の人体サポート装置は、ベース部と、上体装着部と、脚部装着部と、腰部ベルトと、アクチュエータ収容部と、アクチュエータと、ワイヤと、を備え、上体装着部は、人体サポート装置の上部に位置する一つの部品により構成される上体側フレームであってアクチュエータ収容部を有して左右一対のベース部に直接接続される上体側フレームを有することにより、着用者が体感する重量感を低減して、軽快な装着感を得ることを可能とするものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の人体サポート装置は、調整バルブから弾性チューブに供給される空気量を調整して、着用者を引き起こす方向へのアクチュエータ(人工筋肉)による付勢力を利用して、着用者の腕部及び腰部をサポートするものであるが、その構成は複雑であり、製造コスト、ランニングコストが高くなってしまう。
【0006】
また、複雑な構成からなる装置であることから、重量が大きくなってしまい、着用者の腰部への負担低減は十分なものとはいえない。
また、装具の重量増加は、長時間着用時における着用者の姿勢維持を難しくする、といった課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであり、軽量、簡易な構成で、着用者の持ち上げ動作等を補助し、また、着用者の姿勢保持を助け、着用者の背部・腰部への負担を低減する装具を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、姿勢保持、労働作業時における背部や腰部等への負担軽減、背部痛や腰痛等の緩和、予防等を目的とし、例えば、ボディースーツ、姿勢補助装具、アシストスーツ、サポートジャケット等として使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る装具は、着用者の背部及び腰部に当接して被着される本体部と、伸縮性を有する生地で形成され、一端が本体部下部の離隔した二点に各々固着されて、当該固着された二点から着用者の背部で交差状に配されて肩部を通って脇下を周回し、他端が本体部の中央近傍に各々連結される一対の付勢バンド部と、伸縮性を有する生地で形成され、上記本体部下部に固着され、着用者の下肢部で固定される下肢バンド部とを備える。
【0010】
このように本発明においては、本体部と、着用者の背部で交差状に配されて肩部を通って脇下を周回する付勢バンド部と、着用者の下肢部で固定される下肢バンド部とを備えることから、装具を装着した着用者が、上半身を前傾して下肢を屈曲させた姿勢から重量物を持ち上げる際に、伸長状態である下肢バンド部の本体部側への強い引張力によって、下肢の屈曲状態から直立状態となることを補助するとともに、同様に伸長状態である付勢バンド部の正面側から背面側(本体部側)への強い引張力によって、着用者の上半身の起立を補助しながら、着用者が重量物を持ち上げることが可能となり、着用者の下肢部から腰部、背部及び肩部を介して胸部まで連続するように配設される付勢バンド部と、下肢バンド部とが協同して、着用者の持ち上げ動作等を補助し、着用者の背部・腰部への負担を低減することができる。
【0011】
特に、着用者の上半身に位置する付勢バンド部と下半身に位置する下肢バンド部とが本体部下部で連結することにより、重量物を持ち上げる動作では下肢バンド部の引張力で付勢バンド部を補完するとともに、重量物を降ろす動作では付勢バンド部の引張力で下肢バンド部を補完することにより、付勢バンド部及び下肢バンド部相互の引張力を連続的に作用させることができることとなり、より円滑かつ強力にサポートできる。
【0012】
また、装具は、人工筋肉等を必要とせずに、軽量、簡易な構成で着用者の背部・腰部への負担を低減することができる。
【0013】
本発明に係る装具は、必要に応じて、本体部が、着用者の腰部に対応する下部両側位置から左右に延出される腰ベルトからなる押圧部分を備え、当該押圧部分の各左右の腰ベルトが、本体部を着用者の腰部に押圧固定する。
【0014】
このように本発明においては、腰ベルトからなる押圧部分を備えることから、腰ベルトを着用者の腰まわりに巻回して、本体部を着用者の腰部に押圧固定できることとなり、装具の装着に際し、本体部を着用者の背部及び腰部背面の適切な位置に配置させることができる。
【0015】
本発明に係る装具は、必要に応じて、本体部の押圧部分が、当該本体部の左右側端から各左右の腰ベルト上に交差して配設される一対のバンド部を備える。
【0016】
このように本発明においては、体部の左右側端から各左右の腰ベルト上に交差して配設される一対のバンド部を本体部の押圧部分が備えることから、着用者の腰部背面を後方から交差するバンド部で押圧できることとなり、着用者の腰部を支持して、腰部への負担を低減することができる。
【0017】
本発明に係る装具は、必要に応じて、着用者の背部及び腰部背面に配設される二重構造の中央部分を有し、中央部分が、二重構造内部であって付勢バンド部の着用者側に板状体を備える。
【0018】
このように本発明においては、板状体を中央部分の二重構造内部に備えることから、付勢バンド部により板状体を着用者側に向かって押さえて、この板状体によって着用者の背部全体を支持できることとなり、着用者の脊椎から腰部までを支持して腰部への負担を更に低減することができる。
【0019】
本発明に係る装具は、必要に応じて、下肢バンド部が、着用者の背面側で下肢に沿って配設される伸縮部分と、着用者の下肢に巻回されて固定される巻回部分とを備え、左右一対の伸縮部分の少なくとも一部が、互いに連結されて一体的に形成される。
【0020】
このように本発明においては、互いに連結されて一体的に形成される伸縮部分を有することから、着用者が屈曲姿勢をとった際に、本体部に向かって伸縮部分から受ける引張力を本体部下端全体に対して均等にかけることができることとなり、着用者に対して不均一な力をかけて骨格(骨盤)の歪みを引き起こすことがなく、着用者の腰部に無駄な負担をかけることがない。
【0021】
本発明に係る装具は、必要に応じて、本体部と下肢バンド部とが、本体部側に配設される受具と、当該受具に対して回動自在に遊嵌される差込具とで連結される。
【0022】
このように本発明においては、受具と、受具に対して回動自在に遊嵌される差込具とで本体部と下肢バンド部とが連結されることから、下肢バンド部による引張力を下肢バンド部の下腿部での固定(係着)位置の違いなどによって分散させることなく、本体部に直線的に伝えることができることとなり、着用者の腰部への負担を更に低減することができる。
【0023】
本発明に係る装具は、必要に応じて、付勢バンド部の他端に固着され、着用者の肩部から脇下近傍を周回して本体部の中央近傍に連結される肩ベルト部を備える。
【0024】
このように本発明においては、付勢バンド部の他端が肩ベルト部に固着されていることから、装具の装着に際し、肩ベルト部を引っ張ることで付勢バンド部に適度な引張力を掛けた状態とすることができることとなり、フィット性が向上し、より着用者の背部・腰部への負担を低減することができる。
【0025】
本発明に係る装具は、必要に応じて、本体部と肩ベルト部とが、本体部側に配設される受具と、当該受具に対して回動自在に遊嵌される差込具とを介して連結される。
【0026】
このように本発明においては、受具と、受具に対して回動自在に遊嵌される差込具とを介して本体部と肩ベルト部とが連結されることから、着用者の体型にあわせて、より自然な状態で肩ベルト部を着用者に密着させることができることとなり、着用者に負担を掛けることなく、装着性を向上させることができる。
【0027】
本発明に係る装具は、必要に応じて、肩ベルト部が、装着時における左右一対の肩ベルト部間の距離を調整して連結する連結部分を備え、連結部分が、上下方向に移動可能である。
【0028】
このように本発明においては、肩ベルト部が上下方向に移動可能な連結部分で連結されることから、着用者の体型にあわせて、適切な位置で左右一対の肩ベルト部を連結できることとなり、着用者に負担を掛けることなく、装着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る装具の概略構成を示す表面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る装具の概略構成を示す裏面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る装具における本体部内部の概略構成を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る装具の装着時における正面図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る装具の装着時における背面図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る装具を装着した際の動作説明図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る装具の概略構成を示す表面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る装具の他の構成例を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る装具について、
図1ないし
図6を用いて説明する。本実施形態の全体を通して、同じ要素には同じ符号を付している。
本実施形態に係る装具は、例えば、ボディースーツ、姿勢補助装具、アシストスーツ、サポートジャケット等として使用することができる。
【0031】
本実施形態に係る装具100は、着用者の背部及び腰部に当接して被着される本体部1と、本体部1の上部に固着されて、着用者の背部から左右の肩部を介して着用者の正面側に配設され、当該着用者の正面側先端より本体部1の背部左右側縁に固着される一対の肩ベルト部2と、本体部1の下部に固着されて、着用者の下肢部で固定される下肢バンド部3と、一端が本体部1下部の離隔した二点に各々固着されるとともに、他端が肩ベルト部2に各々固着される一対の付勢バンド部4とを備える。
【0032】
本体部1は、着用者の背部及び腰部背面に当接して被着される中央部分11と、中央部分11の下部から左右両側に延出して配設される延出部分12、13を有し、逆T字状に形成される。この中央部分11下部と、着用者の腰部に対応する中央部分11下部の両側位置から左右に延出される延出部分12、13とで、本体部1を着用者の腰部に押圧固定する腰ベルトからなる押圧部分をなす。
このように、腰ベルトからなる押圧部分(中央部分11下部及び延出部分12、13)を備えることから、腰ベルトを着用者の腰まわりに巻回して、本体部1を着用者の腰部に押圧固定できることとなり、装具100の装着に際し、本体部1を着用者の背部及び腰部背面の適切な位置に配置させることができる。
【0033】
中央部分11と延出部分12、13とは、これらを並べた状態で隣接する所定範囲をグログランテープ等の帯材14により本体部1の表面及び裏面となる両側から挟持し、表裏の帯材14の縁端部を縫製することで連結される。着用者に面する裏面側は、滑り止め機能を有する帯材とすることもできる。
【0034】
また、中央部分11において、帯材14よりも中央寄りには、後述する補助バンド部16を遊挿し、バックル等の受具64を保持する、グログランテープ等からなる補助帯15が中央部分11の表側生地に縫着される。
本体部1の外縁部は、中央部分11の上端を除き、バイアステープ等により端処理が施されている。
【0035】
中央部分11は、メッシュ構造の表側(着用状態で外側)生地と裏側(着用状態で内側)生地とを二つ重ねた状態で袋状構造とされ、上述したようにその外縁部に端処理が施されている一方、中央部分11の上端は端処理が施されておらず開口した状態となっている。
【0036】
この袋状構造とされた中央部分11の内部であって付勢バンド部4の着用者側には、伸縮性を有しない板状体17が収容される。
板状体17は、人の力で湾曲させる程度は可能であるものの、折曲げは困難な程度の強度を有する比較的硬質の薄板材、例えば、合成樹脂(ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン等)製パネル等からなる。この板状体17が中央部分11の袋状構造の内部に収容されることで、着用状態における中央部分11の過度の変形を抑えることができる。
なお、中央部分11をなす生地自体が、容易に折れ曲がらず面形状を維持する適度な硬さ(曲げ耐性)を有して、押圧力を面で分散して着用者の背部に伝えられるものであれば、板状体17を用いない構成とすることもできる。
【0037】
板状体17は、上下方向の中間部分に左右両側から略線状に切欠いた一対の切欠き部分17aを設けられる。この切欠き部分17aで板状体17の上部17bと下部17cとが一部を残し分離することで、板状体下部17cに対する上部の相対的な曲げやねじれが、板状体17をなす薄板材の変形可能な範囲で許容されることとなる。これにより、中央部分11が板状体17で全体形状を維持し、着用状態で中央部分11が板状体17ごと全体的に押されて背部に当接しつつ、板状体17の上部17b又は下部17cが、板状体17のもう一方(下部17c又は上部17b)に対し向きを変えて、中央部分11をより一層、腰部の背面形状に沿わせる状態とすることができるなど、中央部分11を腰部の背面形状に柔軟に対応させて密着させられる。
また、板状体17は、左右の切欠き部分17aとともに、板状体下部17cの下端部中央に凹部分17dを設けた形状とされる。これにより、板状体17が湾曲した場合でも、相対的に他部分より後退した状態にある板状体17下端部の各中央が、凹部分17dを設けない場合のように着用者の背骨部背面側の皮膚部分に局所的な押圧刺激を与える事態は避けられ、着用者に痛みを感じさせずに済む。
【0038】
板状体17の厚さとしては、着用者の背部及び腰部に追従させる、過度の変形を抑える等の観点から、0.5ないし4mmであることが好ましく、0.7ないし3mmであることがより好ましく、1ないし2mmであることが特に好ましい。
板状体17の引張強さとしては、上記と同様の観点から、30ないし50MPaであることが好ましく、32ないし40MPaであることがより好ましい。ここで、引張強さは、JIS K 7127に準じて測定される。引張速度は、200mm/minとする。
板状体17の引張弾性率としては、上記と同様の観点から、600ないし1000MPaであることが好ましく、700ないし950MPaであることがより好ましく、800ないし900MPaであることが特に好ましい。ここで、引張弾性率は、JIS K 7127に準じて測定される。引張速度は、50mm/minとする。
板状体17の総面積は、着用者の背部及び腰部を効果的に押圧する観点から、300ないし1000cm2であることが好ましく、400ないし800cm2であることがより好ましく、500ないし700cm2であることが特に好ましい。
【0039】
また、切欠き部分17aの上下方向の幅としては、着用者の背部及び腰部に追従させる、過度の変形を抑える等の観点から、0.5ないし5mmであることが好ましく、1ないし4mmであることがより好ましく、1.5ないし3mmであることが更に好ましい。
【0040】
このように、板状体17を中央部分11の二重(袋状)構造内部に備えることから、後述する補助バンド部16や付勢バンド部4により板状体17を着用者側に向かって押さえて、この板状体17によって着用者の背部全体を支持できることとなり、着用者の脊椎から腰部までを支持して腰部への負担を更に低減することができる。
【0041】
延出部分12、13は、中央部分11の下部の左右側部に連結して一体化される。中央部分11の上部及び下部は、延出部分12、13の上部及び下部とそれぞれ滑らかに連続する形状として形成される。
【0042】
延出部分12、13は、長手方向に中央部分11寄りに位置し、長手方向に伸縮性を有する伸縮部分12a、13aと、長手方向に中央部分11から離れた側に位置し、伸縮性を有しない非伸縮部分12b、13bとを有する構成である。
【0043】
伸縮部分12a、13aは、少なくとも長手方向に伸縮性を有する構成とされる。伸縮部分12a、13aは、いずれも長手方向については、後述する補助バンド部16の伸縮性より大きい伸縮性を有する。
伸縮部分12a、13aの伸縮率としては、1.3ないし3であることが好ましく、1.5ないし2.5であることがより好ましく、1.7ないし2であることが更に好ましい。伸縮率を1.3ないし3とすることで、腰部の動きに対して無理な力が掛からず、安定した支持固定力を得やすくすることができる。
ここで、伸縮部分12a、13aの伸縮率とは、「巾10.0cmの試験片を用意し、巾方向の全幅をつかみ、引張試験機(EZ-TEST EZ-L、島津製作所製)にセットした後、10cm間隔(L0)に印を付け、5kgの荷重を加え、10秒間保持後の印間の長さ(L1)を、L0で除した値」をいう。
【0044】
延出部分12、13の中央部分11から離れた非伸縮部分12b、13bには、伸縮性を有しないシート状の被係着部分12c、13cを重ね、縫着により一体的に取り付けている。延出部分12、13において、この被係着部分12c、13cが重ねられていない部分が伸縮性をそのまま維持した伸縮部分12a、13aとなる仕組みである。
【0045】
被係着部分12c、13cは、伸縮性を抑制しつつ、通気性に優れた構造の生地としてもよく、この場合、非伸縮部分12b、13bにおいても十分な通気性を確保することができる。
【0046】
延出部分13の先端部分における裏面側には、係着部分13dが縫着され、延出部分12の表面側の被係着部分12cに係着部分13dが係着可能とされる。これにより、本体部1の両端部(延出部分12、13)を重ねて連結し、本体部1を着用者の腰部に巻き付けた着用状態を維持可能とする。
なお、係着部分13dは、延出部分13に取り付けられる構成に限るものではなく、延出部分12の先端部分における裏面側に取り付けて、これを延出部分13の表面側の被係着部分13cに係着させることもできる。
【0047】
また、本体部1は、伸縮性を有する帯状体で形成され、中央部分11の表面側に重ねて配設される補助バンド部16と、帯状体からなり、一端を延出部分12、13に固着される一対の調節バンド部18、19とを備える。
調節バンド部18、19は、補助バンド部16に対し摺動可能に配設される略環状の二つの連結鐶部61、62に遊挿される。
【0048】
補助バンド部16は、長手方向に伸縮性を有する帯状体で形成され、その幅は後述する板状体17の切欠き部分17aの幅よりも大きく形成される。
補助バンド部16は、両端を本体部1の中央部分11両側部の略中間部にそれぞれ固定され、中央部分11の外側に折り曲げ部分16a、16bを位置させるようにして2回折り曲げられ、中央部分11上で1回交差させた状態で、中央部分11に重ねて配設される。
すなわち、補助バンド部16は、二つの折り曲げ部分16a、16bで区切られる三つの区間である、中央部分11に対し斜めに横切って補助バンド部16の他部分と交差する区間である二つの斜行部分16c、16dと、中央部分11に対し左右に横切って補助バンド部16の他部分と交差しない区間である一つの横断部分16eとを有している。
【0049】
補助バンド部16の幅としては、板状体17を押圧する力を確保する等の観点から、3ないし8cmであることが好ましく、3.5ないし6cmであることがより好ましく、4ないし5cmであることが更に好ましい。
また、補助バンド部16の伸縮率としては、上記と同様の観点から、1.3ないし3であることが好ましく、1.5ないし2.5であることがより好ましく、1.8ないし2であることが更に好ましい。
ここで、補助バンド部16の伸縮率とは、「巾5.0cmの試験片を用意し、巾方向の全幅をつかみ、引張試験機(EZ-TEST EZ-L、島津製作所製)にセットした後、10cm間隔(L0)に印を付け、5kgの荷重を加え、10秒間保持後の印間の長さ(L1)を、L0で除した値」をいう。
【0050】
補助バンド部16に対して、中央部分11の両側部には、補助バンド部16の横断部分16eにおける各折り曲げ部分16a、16bの近傍部分をそれぞれ遊挿させる、ベルト通し状の第1の案内部15aがそれぞれ配設され、補助バンド部16が容易にずれないよう保持する仕組みである。
【0051】
第1の案内部15aは、グログランテープ等の細幅の帯材で形成される。詳細には、所定長さの一本の帯材を一部折り返し、中央部分11に縫い付ける補助帯15における補助バンド部16の横断部分16eに重なる箇所とその上側部分に、帯材の折り返し部分を下に向けた配置で重ねて縫着して配設される。
【0052】
第1の案内部15aで位置決めされた補助バンド部16は、斜行部分16c、16dを、その交差部分も含めて、中央部分11内の板状体17における切欠き部分17aで区切られる板状体17の上部17b及び下部17cのうち板状体上部17bと重なるように配置されるとともに、横断部分16eを、板状体17の切欠き部分17aを横切るようにして、板状体17の上部17b及び下部17cと一部で重なるように配置される。そして、中央部分11に対しては、斜行部分16c、16dの交差部分の重なる位置は、中央部分11の中間部となり、横断部分16eの重なる位置は、中央部分11の下部となる。
【0053】
補助バンド部16は、中央部分11の各側部中間部において、帯材14と中央部分11の表側生地との間に補助バンド部16の両端を挟み込んで縫い付けられて、中央部分11に固定される。
【0054】
このように、補助バンド部16の横断部分16eを第1の案内部15aに通して保持し、補助バンド部16の折り曲げ部分16a、16bが中央部分11外側の第1の案内部15a近傍に位置するように設定していることで、補助バンド部16では、後述する各調節バンド部18、19から各連結鐶部61、62を介して引張荷重が付加されていない装着前状態から、装具100装着時に着用者が各調節バンド部18、19他端を前方に引っ張る場合に、補助バンド部16の伸長方向が特定されて、補助バンド部16の伸び初めの抵抗を小さくすることができ、着用者は円滑に各調節バンド部18、19を動かせる。
【0055】
連結鐶部61、62は、細長い略環状部分を有し、補助バンド部16を内側に遊挿させて、補助バンド部16に対し相対移動可能に配設される構成である。
【0056】
詳細には、各連結鐶部61、62は、例えば合成樹脂製のいわゆる日の字鐶(カン)として形成されるものであり、補助バンド部16を通す孔と調節バンド部18、19を通す孔がそれぞれ設けられる。
【0057】
連結鐶部61は、補助バンド部16の幅及び厚みに対応してこの補助バンド部16を通す貫通孔である第1の長孔61aと、調節バンド部18の幅及び厚みに対応して調節バンド部18を通す貫通孔である第2の長孔61bとを、並列に設けられる。
【0058】
ここで、補助バンド部16並びに調節バンド部18の幅及び厚みに対応した貫通孔とは、各バンド部(補助バンド部16、調節バンド部18)に対する連結鐶部61の摺接しながらの相対移動に影響がなく、かつ貫通孔(長孔61a、61b)内で、各バンド部自体がねじれない程度の大きさの孔、を意味する。
【0059】
例えば、第1の長孔61aの長さを補助バンド部16の幅と略同一にするとともに、第2の長孔61bの長さを調節バンド部18の幅と略同一にすることにより、補助バンド部16及び調節バンド部18から連結鐶部61に生じる合力を均衡させることができ、また、長孔61a、61bの幅を補助バンド部16や調節バンド部18のそれぞれの厚みに対して1.5倍ないし2.0倍にすることにより、補助バンド部16及び調節バンド部18のねじれの発生を防止することができる。このように各バンド部に対し長孔61a、61bの幅及び長さを適切に設定することにより、装具100の装着時に、調節バンド部18の他端を動かす方向が、調節バンド部18の一端のある向きに対し上下にずれた場合にも、補助バンド部16及び調節バンド部18をねじれた状態とすることなく、調節バンド部18を引っ張ることができる。
【0060】
また、連結鐶部62は、上記連結鐶部61と同様に、補助バンド部16の幅及び厚みに対応してこの補助バンド部16を通す貫通孔である第1の長孔62aと、調節バンド部19の幅及び厚みに対応してこの調節バンド部19を通す貫通孔である第2の長孔62bとを、並列に設けられる。
【0061】
調節バンド部18、19は、補助バンド部16より伸縮性が小さい帯状体からなり、それぞれ連結鐶部61、62に遊挿され、一端を本体部1の延出部分12、13に固定され、他端に係着部分18a、19aを取り付けられる構成である。
【0062】
調節バンド部18は、例えば、ポリプロピレン糸及びポリエステル糸で織成されるいわゆるPPテープ等のような、平帯状に形成され、その一端を本体部1の左側の延出部分12の非伸縮部分12bに固定され、補助バンド部16の折り曲げ部分16a上にある連結鐶部61の第2の長孔61bに遊挿され、補助バンド部16の折り曲げ部分16aに相対向して折り曲げられて、他端の係着部分18aのある面を本体部1の延出部分12表面に向けた状態とされる。
調節バンド部18の一端の固定は、例えば、本体部1の延出部分12をなす非伸縮部分12bに対応する生地部分と被係着部分12cとの間に、調節バンド部18の一端を挟み込んだ上で、非伸縮部分12bに対応する生地部分と被係着部分12cとを縫い付けることで、非伸縮部分12bをなす被係着部分12cに一端を縫い付けた状態を得るようにして行うことができる。
【0063】
そして、調節バンド部18は、その他端に縫着等により取り付けられた係着部分18aを、延出部分12の伸縮部分12a以外、具体的には本体部1の延出部分12における非伸縮部分12bに設けられた被係着部分12cと係着可能とされる。
【0064】
また、調節バンド部18の他端は、係着部分18aを重ねて取り付けられることで、その厚みを大きくされており、連結鐶部61の第2の長孔61bから調節バンド部18を抜けにくくするとともに、着用者が調節バンド部18の他端を把持しやすく、容易に取り扱えることができる。
【0065】
調節バンド部19は、上記調節バンド部18と同様の構成とされ、平帯状に形成され、その一端を本体部1の延出部分13の非伸縮部分13bに固定され、補助バンド部16の折り曲げ部分16b上にある連結鐶部62の第2の長孔62bに遊挿され、補助バンド部16の折り曲げ部分16bに相対向して折り曲げられて、他端の係着部分19aのある面を本体部1の左側の延出部分13表面に向けた状態とされる。
そして、調節バンド部19は、その他端に縫着等により取り付けられた係着部分19aを、延出部分13の伸縮部分13a以外、具体的には本体部1の左側の延出部分13における非伸縮部分13bに設けられた被係着部分13cと係着可能とされる。
【0066】
各調節バンド部18、19の他端の係着部分18a、19aには、例えば面ファスナーのフック面を用いる。この係着部分18a、19aと対をなして18a、19aを係着可能とする延出部分12、13の被係着部分12c、13cには、例えば、面ファスナーのループ面が用いられる。
【0067】
被係着部分12c、13cとしては、例えばダブルラッセル編地等の表面に多数のループ構造を有した生地を用いることができ、多数のループを有することで、面ファスナーのフック面とされた調節バンド部18、19他端の係着部分18a、19aを無理なく係着させられる。
【0068】
なお、調節バンド部18、19の他端の係着部分18a、19aや、延出部分13の他端部裏面側の係着部分13d、及び、これらを係着させる延出部分12、13他端部表面側の被係着部分12c、13cについては、面ファスナーのフック面、ループ面に限られるものではなく、重なる二つの部位を係着させられるものであれば、他の係着部分と被係着部分の組合せ、例えば、線ファスナー(ジッパー、チャック)、ボタンとボタン穴、ホック(ドットボタン、スナップ)、前カン、尾錠、紐とスピンドルストッパーなどを用いてもかまわない。
【0069】
このように、略帯状の本体部1に重ねて配設され、複数回の折り曲げで斜行部分16c、16dと横断部分16eを生じさせた補助バンド部16に対し、この補助バンド部16の折り曲げ部分16a、16bに連結鐶部61、62を介して調節バンド部18、19を連結して、この調節バンド部18、19で補助バンド部16を前方に引っ張る装具100の装着状態では、調節バンド部18、19と補助バンド部16とが緊張状態となって、補助バンド部16における斜行部分16c、16dの交差部分と横断部分16eで、本体部1の中央部分11をそれぞれ押圧することから、腰部背面側の上下方向各部で異なる立体的形状に対応させて、補助バンド部16の斜行部分16c、16d交差部分と横断部分16eとで中央部分11を押して、中央部分11の形態を腰部背面形状に追随させられ、中央部分11を着用者の腰部背面側に適切に当接させて腰椎全体を確実に支持でき、腰部の負担を抑えることができる。
また、中央部分11上に重ねて配置される補助バンド部16を一つの帯状体のみで形成することで、装具100の構造を簡略化でき、製造コストを抑えることができる。
【0070】
加えて、補助バンド部16各部が、固定される両端以外、中央部分11に対し浮動状態にあることで、各調節バンド部18、19の引張りで生じた張力が補助バンド部16の左右両側に共通に加わって互いに締め付け合う状態が得られ、補助バンド部16で腰部周りを確実に締め付けて支持できるとともに、調節バンド部18、19による張力の付加が左右で多少異なっても共通する補助バンド部16で力が均等化されることで無理なく支持でき、仮に補助バンド部16を背部に固定した場合のように、固定箇所を挟んだ両側ごとに個別に伸縮して張力が不均衡となる状態を回避できる。
【0071】
また、本体部1の左右側端から各左右の腰ベルト上に交差して配設される一対のバンド部(斜行部分16c及び調節バンド部18と、斜行部分16dと調節バンド部19)を本体部1の押圧部分が備えることから、後方から着用者の腰部背面を交差するバンド部で押圧できることとなり、着用者の腰部を支持して、腰部への負担を低減することができる。
【0072】
肩ベルト部2は、着用者の背面側から正面側胸部近傍にかけて、左右両肩に配設される肩掛け部分21、22を備え、肩掛け部分21、22は、伸縮性を有する表側(着用状態で外側)生地と主にメッシュ構造の裏側(着用状態で内側)生地とを二つ重ねた状態で袋状構造の帯状体とされ、その外縁部に端処理が施されている。
【0073】
肩掛け部分21、22の一端は、本体部1における中央部分11の裏側生地上部に縫着される。
詳細には、肩掛け部分21、22の裏側生地は、一端側において表側生地が折り返されており、この折り返された表側生地とメッシュ構造の生地とが帯材で連結されて構成され、一端側のメッシュ構造のない部位、すなわち、表裏面が伸縮性を有する生地で構成される部位において中央部分11の裏側上部において縫着される。
【0074】
肩掛け部分21、22の他端には、グログランテープ等の帯材23、24が縫着され、それぞれ補助帯15上部に縫着された長さ調整部5に係着される。
【0075】
長さ調整部5は、本体部1における中央部分11の左部に配置される補助帯15に固着されている左調整部分51と、本体部1における中央部分11の右部に配置される補助帯15に固着されている右調整部分52とを備える。
【0076】
左調整部分51は、分岐部53と、分岐部53及び本体部1の中央部分11間の距離を調整する第1調整部分54と、分岐部53及び肩ベルト部2間の距離を調整する第2調整部分55と、肩掛け部分21、22間の距離を調整する連結部分56とを備える。
【0077】
右調整部分52は、分岐部53と、分岐部53及び本体部1の中央部分11間の距離を調整する第1調整部分54と、分岐部53及び肩ベルト部2間の距離を調整する第2調整部分55と、肩掛け部分21、22間の距離を調整する連結部分57とを備える。
【0078】
分岐部53は、略六角形状に形成され、第1調整部分54が遊挿される長孔53aと、第2調整部分55が遊挿される長孔53bと、連結部分56又は連結部分57が遊挿される長孔53cとを備える。長孔53a、53b、53cは、着用者の立体的な装着性を考慮して、長孔53b、53cが長孔53aに対してハの字状に傾斜するように設けられている。
【0079】
第1調整部分54は、分岐部53及び本体部1の中央部分11間の距離を調整可能とするものであり、従来公知のアジャスター付きベルトで構成される。第1調整部分54は、日の字鐶として形成される連結鐶部54aと、分岐部53及び連結鐶部54aに対して摺動可能とされ、一端が補助帯15上部に縫着され、他端が連結鐶部54aに保持される帯材54bとを備える。帯材54bは、他端が生地を折り返されて輪状に形成され、この輪状部位が連結鐶部54aに遊嵌されて保持されている。帯材54bは、他端側から一端側に向かって、他端の遊嵌部位から分岐部53の長孔53aに挿通されて折り返され、更に連結鐶部54aに挿通されて補助帯15に固着される。
【0080】
第2調整部分55は、分岐部53及び肩ベルト部2間の距離を調整可能とするものであり、従来公知のアジャスター付きベルトで構成される。第2調整部分55は、日の字鐶として形成される連結鐶部55aと、両端の生地が折り返されて輪状に形成され、この輪状部位にて連結鐶部55aに遊嵌されて保持されるとともに、分岐部53の長孔53cに遊嵌されて保持される帯材55bとを備える。また、連結鐶部55aには、肩掛け部分21、22の帯材23、24がそれぞれ遊挿される。
【0081】
左調整部分51の連結部分56は、バックル等を構成する差込具56aと、摺動可能に差込具56aに遊挿され、他端が生地を折り返されて輪状に形成され、この輪状部位が分岐部53の長孔53bに遊嵌されて保持される帯材56bとを備える。
【0082】
右調整部分52の連結部分57は、差込具56aが差し込まれて、左調整部分51の連結部分56と右調整部分52の連結部分57とを連結する受具57aと、両端の生地が折り返されて輪状に形成され、この輪状部位にて受具57aに遊嵌されるとともに、分岐部53の長孔53bに遊嵌されて保持される帯材57bとを備える。
【0083】
下肢バンド部3は、着用者の左足に配設される左足固定部分31と、着用者の右足に配設される右足固定部分32とを備える。下肢バンド部3は、上下方向において、後述する付勢バンド部4と一部重複する位置に配されている。
【0084】
左足固定部分31は、着用者の背面側で左大腿部に沿って配設される伸縮部分31aと、着用者の左下腿部上部(膝部下方)に巻回されて固定される巻回部分31bとを備える。
【0085】
伸縮部分31aは、長手方向(上下方向)に伸縮性を有する生地で形成される。
【0086】
伸縮部分31aの一端は、生地を折り返されて輪状に形成されて、この輪状部位が差込具63に遊挿されて保持される。差込具63は、本体部1における中央部分11の補助帯15において、第1の案内部15a下方に形成されたベルト通し状の第2の案内部15bに遊挿されて保持される受具64に回動自在に遊嵌されている。
【0087】
第1の案内部15a及び第2の案内部15bは、グログランテープ等の細幅の帯材で形成され、所定長さの一本の帯材の両端部を折り返し、この帯材の折り返し部分を下に向けた配置で折り返し部分を補助帯15に重ねて縫着するとともに、その中間部分も補助帯15に縫着することにより形成される。
【0088】
伸縮部分31aの他端は、生地が二つに分断され、それぞれ巻回部分31bの両端に縫着される。
【0089】
巻回部分31bは、長手方向(横方向)に伸縮性を有する生地で形成され、裏面側(着用者側)に多数のループ構造を有する被係着部分31cと、巻回部分31bの一端側表面に縫着され、被係着部分31cから一部が延出するように配設された係着部分31dとを備える。被係着部分31cは、裏面側に多数のループ構造を有して、面ファスナーのループ面とされ、この被係着部分31cに係着可能とされる係着部分31dは、面ファスナーのフック面とされて構成される。
【0090】
伸縮部分31aの他端の一方は、巻回部分31bの表面側において、被係着部分31cと係着部分31dとで挟持された状態で、係着部分31dを被係着部分31cに縫着することで固定される。また、伸縮部分31aの他端の他方は、巻回部分31bの表面側において、被係着部分31cに係着される。
【0091】
このように、二つに分かれた伸縮部分31aの他端は、巻回部分31bが着用者の下腿部に巻回された際に下腿部前方に位置することとなり、着用者の下肢部の屈曲動作により伸縮部分31aに強い引張力が生じた場合であっても巻回部分31bの生地の捲れなどを引き起こすことがなく、巻回部分31bと下腿部とが一体的に伸縮部分31aのアンカーとして機能し、伸縮部分31aの引張力を安定して支持することができる。
【0092】
右足固定部分32は、左足固定部分31と同様に構成され、着用者の背面側で右大腿部に沿って配設される伸縮部分32aと、着用者の右下腿部上部(膝部下方)に巻回されて固定される巻回部分32bとを備える。
伸縮部分32aの一端は、差込具63に遊挿されて保持され、この差込具63は、受具64に回動自在に遊嵌されている。
伸縮部分32aの他端は、生地が二つに分断され、それぞれ巻回部分32bの両端に縫着される。
【0093】
巻回部分32bは、長手方向(横方向)に伸縮性を有する生地で形成され、裏面側(着用者側)に多数のループ構造を有する被係着部分32cと、巻回部分32bの一端側表面に縫着され、被係着部分32cから一部が延出するように配設された係着部分32dとを備える。
【0094】
左足固定部分31の伸縮部分31aと右足固定部分32の伸縮部分32aとの対向する少なくとも一部は、連結部分33を介して、互いに連結されて一体的に形成される。
連結部分33は、伸縮部分31a、32aと同一生地で連続して形成されるが、連結部分33を別途準備し、伸縮部分31a、32aに縫製して連結させてもよい。
【0095】
このように、受具64と、受具64に対して回動自在に遊嵌される差込具63とで本体部1と下肢バンド部3とが連結されることから、下肢バンド部3による引張力を下肢バンド部3の下腿部での固定(係着)位置の違いなどによって分散させることなく、本体部1に直線的に伝えることができることとなり、着用者の腰部への負担を更に低減することができる。
【0096】
また、互いに連結されて一体的に形成される伸縮部分31a、32aを有することから、着用者が屈曲姿勢をとった際に、本体部1に向かって伸縮部分31a、32aから受ける引張力を本体部1下端全体に対して均等にかけることができることとなり、着用者に対して不均一な力をかけて骨格(骨盤)の歪みを引き起こすことがなく、着用者の腰部に無駄な負担をかけることがない。
【0097】
なお、左足固定部分31及び右足固定部分32は、連結部分33によって伸縮部分31a、32aを一体的に連結させる必要はなく、それぞれ別体として構成することもできる。
【0098】
また、左足固定部分31及び右足固定部分32は、巻回部分31b、32b上方に配設され、伸縮部分31a、32aに固着されている巻回部分をそれぞれ有していてもよい。これら巻回部分は、着用者の大腿部に巻回されて、面ファスナー(フック面、ループ面)等の係着手段により係着されて、着用者の大腿部に固定される。
このように、巻回部分31b、32bに加えて、当該巻回部分31b、32b上方に、着用者の大腿部に巻回されて固定される巻回部分を左足固定部分31及び右足固定部分32がそれぞれ有していることから、左足固定部分31及び右足固定部分32を着用者の下肢部に対して膝関節の上下2点で固定できることとなり、着用者の膝関節の屈曲動作を阻害しないことに加え、伸縮部分31a、32aの周方向へのズレを抑え、下肢バンド部3の引張力を分散させることなく、この引張力を重量物の持ち上げ動作等に寄与させることができる。
【0099】
付勢バンド部4は、本体部1における中央部分11の右下から、本体部1の上部開口部分を抜けて、着用者の左肩に配設される第1付勢バンド部分41と、本体部1における中央部分11の左下から、第1付勢バンド部分41と交差するようにして本体部1の上部開口部分を抜けて、着用者の右肩に配設される第2付勢バンド部分42とを備える。
【0100】
第1付勢バンド部分41は、伸縮性を有する帯状体で形成され、一端が中央部分11の表側生地と裏側生地とで挟持された状態で端処理を施されることによって中央部分11右下端部に固着される。第1付勢バンド部分41は、中央部分11右下端部に固着された一端側から表側生地と板状体17との間を通って肩ベルト部2の肩掛け部分21側に引き出される。第1付勢バンド部分41の他端は、肩掛け部分21の帯材23と重複しない位置であって、着用者が装具100を装着した際に第1付勢バンド部分41の他端が正面側に配されるような位置で、肩掛け部分21に縫着される。
【0101】
第2付勢バンド部分42は、伸縮性を有する帯状体で形成され、一端が中央部分11の表側生地と裏側生地とで挟持された状態で端処理を施されることによって中央部分11左下端部に固着される。第2付勢バンド部分42が、表側生地と板状体17との間を通って肩ベルト部2の肩掛け部分22側に引き出されることにより、第1付勢バンド部分41と第2付勢バンド部分42とは、板状体17を押圧できる位置でX字状に配置されることとなる。すなわち、板状体17は、その上下においてX字状に交差して配される補助バンド部16及び付勢バンド部4で押圧されることとなる。
第2付勢バンド部分42の他端は、肩掛け部分22の帯材24と重複しない位置であって、着用者が装具100を装着した際に第2付勢バンド部分42の他端が正面側に配されるような位置で、肩掛け部分22に縫着される。
【0102】
第1付勢バンド部分41及び第2付勢バンド部分42の幅としては、板状体17を押圧する力を確保する等の観点から、2ないし8cmであることが好ましく、3ないし6cmであることがより好ましく、3.5ないし4.5cmであることが更に好ましい。
第1付勢バンド部分41及び第2付勢バンド部分42の伸縮率としては、着用者の動作時における上半身の起立を補助する等の観点から、1.15ないし4であることが好ましく、1.4ないし3であることがより好ましく、1.7ないし2であることが更に好ましい。
ここで、第1付勢バンド部分41及び第2付勢バンド部分42の伸縮率とは、「巾3.8cmの試験片を用意し、巾方向の全幅をつかみ、引張試験機(EZ-TEST EZ-L、島津製作所製)にセットした後、10cm間隔(L0)に印を付け、5kgの荷重を加え、10秒間保持後の印間の長さ(L1)を、L0で除した値」をいう。
【0103】
第1付勢バンド部分41及び第2付勢バンド部分42は、上述したように、その両端のみが本体部1又は肩ベルト部2に縫着されて固定されており、中間部分は着用者の姿勢に応じて左右方向に自在に移動可能とされている。
【0104】
このように、第1付勢バンド部分41と第2付勢バンド部分42とがX字状に配置されることから、着用者の上半身の捻り動作を第1付勢バンド部分41又は第2付勢バンド部分42の引張力により元の位置へ戻すように補助的に働くこととなり、着用者の腰部への負担を低減することができる。
【0105】
すなわち、本実施形態に係る装具100は、着用者の背部において、補助バンド部16の斜行部分16c、16dと付勢バンド部4とをX字状に配設することにより、装具100を着用者が装着した際に棘筋、最長筋、腸肋筋からなる脊柱起立筋群を保護し、重量物を持ち上げる際に脊柱起立筋群にかかる負荷を低減することができる。
【0106】
また、X字状に配設される補助バンド部16の斜行部分16c、16d及び付勢バンド部4と、伸縮性を有する補助バンド部16の横断部分16e上部とで板状体上部17bを押圧し、切欠き部分17aを挟んで、伸縮性を有する補助バンド部16の横断部分16e下部で板状体下部17cを押圧することにより、板状体17の下部17cに対する上部17bの相対的な曲げやねじれを阻害することなく、板状体17全体を支持しながら板状体17を着用者背部へ押圧し、より効果的に着用者の脊柱起立筋群を保護できることなり、重量物を持ち上げる際には、着用者の姿勢を矯正しながら、重量物の持ち上げ動作を補助し、腰部への負担を低減することができるものである。
【0107】
さらに、板状体17の左右の切欠き部分17aを横切って配設される補助バンド部16の横断部分16eは、左右の切欠き部分17aの中間点(板状体上部17bと板状体下部17cとの連結部分)である支持点17eにおいて、板状体17を支持・押圧する。この支持点17eを支点として、板状体上部17b及び板状体下部17cは、支持点17eでの横断部分16eによる押圧方向とは反対方向に反るような力を受ける。特に、板状体上部17bの押圧方向とは反対方向に受ける力は、重量物の持ち上げ動作時における着用者の上半身の起立を補助的にサポートすることができる。
また、板状体17は、上述した支持点17eの他に、板状体上部17bの左右上端(支持点17f)、左右側端(支持点17g)及び左右下端(支持点17h)をそれぞれ付勢バンド部4の中間部分、補助バンド部16両端近傍及び補助バンド部16の折り曲げ部分16a、16b近傍で支持されるとともに、板状体下部17cの左右下端(支持点17i)を付勢バンド部4下端で支持され、板状体17全体を支持点17eないし17iの9か所で支持されて着用者の背部に押圧されることとなる。
【0108】
次に、上記構成に基づく装具100の装着方法について説明する。前提として、長さ調整部5において、長さ調整部5における差込具56aと受具57aとの連結は解かれ、第1調整部分54の長さ(分岐部53及び本体部1の中央部分11間の距離)及び第2調整部分55の長さ(分岐部53及び肩ベルト部2間の距離)は、中央部分11、肩ベルト部2、第1調整部分54、分岐部53及び第2調整部分55で形成される開口部分に着用者が腕部を容易に挿通させることができる程度に緩められた状態にあるものとする。また、調節バンド部18の係着部分18aと本体部1の延出部分12の被係着部分12cとの係着が解かれるとともに、調節バンド部19の係着部分19aと本体部1の延出部分13の被係着部分13cとの係着が解かれた状態にあるものとする。さらに、下肢バンド部3の巻回部分31bにおける被係着部分31cと係着部分31dとの係着は解かれた状態にあるものとする。
【0109】
装具100の装着にあたり、着用者は、まず、本体部1の中央部分11、肩ベルト部2、第1調整部分54、分岐部53及び第2調整部分55で形成される左右の開口部分に左右腕部をそれぞれ挿通し、装具100を両肩で保持した状態とする。
【0110】
次に、着用者は、本体部1の中央部分11下部を着用者の腰部背面側に当接させ、延出部分12を左手で把持し、延出部分12を着用者の正面側に動かした後、正面側にて延出部分12を斜め下に向けて最大限伸ばしながら着用者の腰部に巻回させて、左手でそのまま保持する。
続けて、延出部分13を右手で把持し、延出部分13を着用者の正面側に動かした後、正面側にて延出部分13を斜め下に向けて最大限伸ばしながら着用者の腰部に巻回させて、延出部分13端部の係着部分13dを、左手で保持した左側の延出部分12表面の被係着部分12cに係着させ、本体部1を腰周りに仮固定した状態とする。
【0111】
本体部1両端を正しい向きで着用者の腰部に巻回させ、係着部分13dと被係着部分12cにより係着させると、本体部1は着用者の前側でも連続した配置状態となり、正面から見て末広がりの形状をなす。この配置状態では、左右の延出部分12、13の伸縮方向が前腹部から側腹部にかけて斜め上方に向かい、延出部分12、13の前部で腹部を下方から押し上げて腹腔の圧力を効率よく高めることが可能となる。
【0112】
本体部1の仮固定の段階では、補助バンド部16は、調節バンド部18(連結鐶部61)及び調節バンド部19(連結鐶部62)からの引張荷重を受けていないため、弛緩状態であり、中央部分11を押圧した状態となっていない。
ただし、中央部分11は、その内部の板状体17で本体部1の短手方向(横方向)の伸縮性を抑制されることで、前方に位置する延出部分12、13の非伸縮部分12b、13bとともに、本体部1の短手方向に伸縮可能な延出部分12、13の伸縮部分12a、13aに対し、アンカーとして機能している。
【0113】
次に、着用者は、調節バンド部18の他端を左手で、また、調節バンド部19の他端を右手でそれぞれ把持して、調節バンド部18、19を正面側に押し出すようにして引張する。
このとき、連結鐶部61は、調節バンド部18の他端の動きに追従して、調節バンド部18上を滑って相対移動しながら中央部分11に対し前方に移動し、また、伸縮性を有する補助バンド部16の左側は、この連結鐶部61の動きに追従して前方に伸長する。
同様に、連結鐶部62は、調節バンド部19の他端の動きに追従して、調節バンド部19上を滑って相対移動しながら中央部分11に対し前方に移動し、また、伸縮性を有する補助バンド部16の右側は、この連結鐶部62の動きに追従して伸長する。
【0114】
そして、着用者は、腰部に対する所望の締め付け感が得られた段階で、調節バンド部18の係着部分18aを本体部1の延出部分12の被係着部分12cに係着させるとともに、調節バンド部19の係着部分19aを本体部1の延出部分13の被係着部分13cに係着させる。
【0115】
次に、着用者は、連結部分56の差込具56aを連結部分57の受具57aに挿し込むことで差込具56aと受具57aとを連結し、連結部分56における帯材56bの一端を左調整部分51の分岐部53側に引張し、肩掛け部分21、22間の長さを調整する。
続けて、第1調整部分54で分岐部53及び本体部1の中央部分11間の長さを調整し、本体部1の中央部分11(板状体17)を着用者の背部及び腰部との間に隙間がないように当接させる。
さらに、第2調整部分55で肩ベルト部2及び分岐部53間の長さを調整して、付勢バンド部4を伸長状態とする。
各部間の長さは、再度、微調整してもよい。
【0116】
最後に、下肢バンド部3の巻回部分31b、32bの両端を両手でそれぞれ把持し、伸縮部分31a、32aを着用者の大腿部背面側に沿って伸長させた状態で巻回部分31b、32bを下腿部上部まで下げ、下腿部上部にて巻回部分31b、32bを巻回させて、係着部分31d、32dを被係着部分31c、31cに係着させることにより、装具100の装着を完了する。
【0117】
次に、上記構成に基づく装具100の動作について、装具100を装着した着用者が重量物を持ち上げる場合を例にとって、
図7を用いて説明する。
【0118】
まず、装具100を装着した着用者が重量物Mを持ち上げるために、前傾姿勢をとり下肢部を屈曲させると、下肢バンド部3及び付勢バンド部4にはより強い引張力が働く(
図7左図参照)。
【0119】
詳細には、下肢部を屈曲させることにより下肢バンド部3の伸縮部分31a、32aが引き延ばされて、引張方向Aで示されるように、本体部1と下肢バンド部3とを連結している差込具63に向かって、直立状態よりも強い引張力が生じている。
一方、付勢バンド部4は、着用者が前傾姿勢をとることにより、引張方向Bで示されるように、着用者の正面側胸部近傍から肩部を介して、付勢バンド部4の一端が縫着されている本体部1の下端部に向かって引き延ばされて、直立状態よりも強い引張力が生じている。
【0120】
下肢バンド部3による引張方向Aへの引張力は、下肢バンド部3の巻回部分31b、32bが巻回される下腿部上部が後方(背面側)に押し出すように働き、これに付随して、着用者の腰部を上方へ起こしつつ、前方へ押し出す(押出方向C)ように作用する(
図7中央図参照)。
【0121】
一方で、付勢バンド部4による引張方向Bへの引張力は、前傾姿勢となった上半身を後方(背面側)に押し上げるように働き、これに付随して、下肢バンド部3と同様に押出方向Cに向かって着用者の腰部を押し出すように作用する(
図7中央図参照)。
【0122】
この腰部の押出方向Cへの押し出し効果は、下肢バンド部3(の上端)と付勢バンド部4(の下端)とが上下方向において重複するような位置で配置されていることで、より効果的に作用する。
【0123】
さらに、本実施形態に係る装具100は、本体部1の中央部分11内部に着用者の背部及び腰部全体を覆うようにして、一定程度の強度を有する板状体17が収容され、この板状体17全体を交差した付勢バンド部4及び補助バンド部16の斜行部分16c、16dと補助バンド部16の横断部分16eとで支持するように構成されているため、押出方向Cへの腰部の押し出しを助勢している。加えて、当該構成により、着用者が前傾姿勢となった際に、脊椎の過度の湾曲を抑え、腰部への負担を低減することにも寄与している。
【0124】
以上のようにして、着用者は、下肢バンド部3及び付勢バンド部4により、引張方向A、Bへの引張力、押出方向Cへの腰部への押し出し作用を直立状態となるまで受けながら、腰部への負担を低減しつつ重量物Mを持ち上げることができる(
図7右図参照)。
【0125】
以上のように、本実施形態に係る装具100は、本体部1と、着用者の背部で交差状に配されて肩部を通って脇下を周回する付勢バンド部4と、着用者の下肢部で固定される下肢バンド部3とを備えることから、装具100を装着した着用者が、上半身を前傾して下肢部を屈曲させた姿勢から重量物を持ち上げる際に、伸長状態である下肢バンド部3の本体部1側への強い引張力によって、下肢部の屈曲状態から直立状態となることを補助するとともに、同様に伸長状態である付勢バンド部4の正面側から背面側(本体部1側)への強い引張力によって、着用者の上半身の起立を補助しながら、着用者が重量物を持ち上げることが可能となり、着用者の下肢部から腰部、背部及び肩部を介して胸部まで連続するように配設される付勢バンド部4と、下肢バンド部3とが協同して、着用者の持ち上げ動作等を補助し、着用者の背部・腰部への負担を低減することができる。
【0126】
特に、着用者の上半身に位置する付勢バンド部4と下半身に位置する下肢バンド部3とが本体部1下部で連結することにより、重量物Mを持ち上げる動作では下肢バンド部3の引張力で付勢バンド部4を補完するとともに、重量物Mを降ろす動作では付勢バンド部4の引張力で下肢バンド部3を補完することにより、付勢バンド部4及び下肢バンド部3相互の引張力を連続的に作用させることができることとなり、より円滑かつ強力にサポートできる。
【0127】
また、装具100は、人工筋肉等を必要とせずに、軽量、簡易な構成で着用者の背部・腰部への負担を低減することができる。
【0128】
さらに、椅子などへの着座時において、付勢バンド部4の引張力によって、着用者の脊椎が過度に湾曲(いわゆる猫背)することを抑制することができる。
【0129】
(本発明の第2の実施形態)
上記第1の実施形態に係る装具においては、肩ベルト部が本体部における中央部分に縫着される構成としたが、これに限らず、
図8に示すように、付勢ベルト部の他端に縫着される構成とすることもできる。
【0130】
本実施形態に係る装具200は、着用者の背部及び腰部に当接して被着される本体部1と、一端が本体部1下部の離隔した二点に各々固着される一対の付勢バンド部4と、付勢バンド部4の他端に固着され、着用者の肩部から脇下近傍を周回して本体部1の中央近傍に連結される肩ベルト部102と、本体部1の下部に固着されて、着用者の下肢部で固定される下肢バンド部3とを備える。
以下では、上記第1の実施形態に係る装具100の肩ベルト部2と異なる構成である肩ベルト部102について主に説明し、同様の構成である本体部1、下肢バンド部3及び付勢バンド部4については、その詳細な説明を省略する。
【0131】
肩ベルト部102は、着用者の背面側から正面側胸部近傍にかけて、左右両肩に配設される肩掛け部分121、122を備え、肩掛け部分121、122は、伸縮性を有する表側(着用状態で外側)生地と主にメッシュ構造の裏側(着用状態で内側)生地とを二つ重ねた状態で袋状構造の帯状体とされ、その外縁部に端処理が施されている。
【0132】
肩掛け部分121、122の一端は、その表面側(着用者とは反対側)において、本体部1の袋状構造とされた中央部分11の内側から延出した第1付勢バンド部分41、第2付勢バンド部分42の他端にそれぞれ固着される。
詳細には、肩掛け部分121、122は、表側生地とメッシュ構造の裏側生地とを二つ重ねた状態とされ、その外縁部に端処理が施された構成とされており、第1付勢バンド部分41及び第2付勢バンド部分42は、肩掛け部分121、122の一端側にて、肩掛け部分121、122と、両端が肩掛け部分121、122の表側生地に縫着され、伸縮性を有する支持部分125との間に挿通されて、表側生地に縫着されている。
【0133】
肩掛け部分121の他端には、第3調整部分126が形成される。第3調整部分126は、肩ベルト部102及び本体部1間の距離を調整可能とするものであり、従来公知のアジャスター付きベルトで構成される。
第3調整部分126は、目の字状の鐶として形成される連結鐶部126aと、一端の生地が折り返されて輪状に形成され、この輪状部位にて連結鐶部126aに遊嵌されて保持され、他端が表側生地に縫着される帯材126bとを備える。帯材126bは、グログランテープ等で構成することができる。
【0134】
この連結鐶部126aには、本体部1の帯材14上部に縫着された第4調整部分151の帯材151dがそれぞれ遊挿される。
【0135】
第4調整部分151は、受具151aと、当該受具151aに回動自在に遊嵌される差込具151bと、一端が本体部1の帯材14上部に縫着され、他端が生地を折り返されて輪状に形成され、この輪状部位が受具151aに遊挿されて保持される帯材151cと、一端が生地を折り返されて輪状に形成され、この輪状部位が差込具151bに遊挿されて保持される帯材151dとを備え、この帯材151dが第3調整部分126の連結鐶部126aに遊挿されることとなる。帯材151c、151dは、グログランテープ等で構成することができる。
【0136】
このように、受具151aと、受具151aに対して回動自在に遊嵌される差込具151bとを介して本体部1と肩ベルト部102とが連結されることから、着用者の体型にあわせて、より自然な状態で肩ベルト部102を着用者に密着させることができることとなり、着用者に負担を掛けることなく、装着性を向上させることができる。
【0137】
肩掛け部分121の他端側裏側生地には、連結部分127が縫着されている。連結部分127は、バックル等を構成する差込具127aと、一端が差込具127aに摺動可能に遊挿され、他端が肩掛け部分121の他端側裏側生地に縫着される帯材127bとを備える。帯材127bは、グログランテープ等で構成することができる。
また、肩掛け部分122の他端側裏側生地には、連結部分128が縫着されている。連結部分128は、肩掛け部分121の連結部分127における差込具127aが差し込まれて、肩掛け部分121の連結部分127と肩掛け部分122の連結部分128とを連結し、肩掛け部分121、122間の距離を調整する受具128aと、一端の生地が折り返されて輪状に形成され、この輪状部位にて受具128aに遊嵌され、他端が肩掛け部分122の他端側裏側生地に縫着される帯材128bとを備える。帯材128bは、グログランテープ等で構成することができる。
【0138】
なお、肩掛け部分121、122間の距離を調整する連結部分127及び連結部分128は、装具200装着時における上下方向の位置を変更可能に構成することもできる。
具体的には、
図9に示すように、肩掛け部分121は、付勢バンド部4(第1付勢バンド部分41)の他端と第3調整部分126(帯材126b)の他端とを繋ぐようにして配設された帯材129を有する。帯材129は、その両端のみが肩掛け部分121に縫着され、中間部分において連結部分130を保持している。帯材129は、グログランテープ等で構成することができる。
【0139】
連結部分130は、バックル等を構成する差込具130aと、一端が差込具130aに摺動可能に遊挿され、他端が生地を折り返されて輪状に形成された帯材130bと、帯材130bの輪状部位が遊嵌されて帯材130bを保持するとともに、帯材129が遊挿されて帯材129に沿って上下方向に移動可能な連結鐶部130cとを備える。帯材130bは、グログランテープ等で構成することができる。
【0140】
同様に、肩掛け部分122は、両端のみが肩掛け部分122に縫着された帯材129を有し、中間部分において連結部分131を保持している。
連結部分131は、バックル等を構成する受具131aと、一端の生地が折り返されて輪状に形成され、この輪状部位にて受具131aに遊嵌され、他端が生地を折り返されて輪状に形成された帯材131bと、帯材131bの輪状部位が遊嵌されて帯材131bを保持するとともに、帯材129が遊挿されて帯材129に沿って上下方向に移動可能な連結鐶部131cとを備える。帯材131bは、グログランテープ等で構成することができる。
【0141】
このように、肩ベルト部102が上下方向に移動可能な連結部分130、131で連結されることから、着用者の体型にあわせて、適切な位置で左右一対の肩ベルト部102を連結できることとなり、着用者に負担を掛けることなく、装着性を向上させることができる。
【0142】
次に、上記構成に基づく装具200の装着方法について説明する。前提として、連結部分127の差込具127aと連結部分128の受具128aとの連結は解かれた状態とされているとともに、第3調整部分126の連結鐶部126aには第4調整部分151の帯材151dが仮止めされ、本体部1の中央部分11、付勢バンド部4、肩ベルト部102及び連結部分127、128で形成される開口部分に着用者が腕部を容易に挿通させることができる程度に緩められた状態にあるものとする。さらに、下肢バンド部3の巻回部分31bにおける被係着部分31cと係着部分31dとの係着は解かれた状態にあるものとする。
【0143】
装具200の装着にあたり、着用者は、まず、本体部1の中央部分11、付勢バンド部4、肩ベルト部102及び連結部分127、128で形成される左右の開口部分に左右腕部をそれぞれ挿通し、装具200を両肩で保持した状態とする。
【0144】
次に、着用者は、上記第1の実施形態と同様に、本体部1の延出部分12、13を着用者の腰部に巻回させて互いに係着させ、本体部1を腰周りに仮固定した状態とする。
その状態で、調節バンド部18、19を正面側に押し出すようにして引張し、腰部に対する所望の締め付け感が得られた段階で、調節バンド部18、19を延出部分12、13にそれぞれ係着させる。
【0145】
次に、着用者は、連結部分127の差込具127aを連結部分128の受具128aに挿し込むことで差込具127aと受具128aとを連結し、連結部分127における帯材127bの一端を肩掛け部分121側に引張し、肩掛け部分121、122間の長さを調整する。
続けて、第3調整部分126の連結鐶部126aに遊挿された第4調整部分151の帯材151dを下方向に引張して付勢バンド部4を伸長状態とし、本体部1の中央部分11(板状体17)を着用者の背部及び腰部との間に隙間がないように当接させる。
各部間の長さは、再度、微調整してもよい。
【0146】
最後に、上記第1の実施形態と同様に、下肢バンド部3の巻回部分31b、32bを着用者の下腿部上部に巻回、係着させることにより、装具200の装着を完了する。
【0147】
以上のように、本実施形態に係る装具200は、付勢バンド部4の他端が肩ベルト部102に固着されていることから、装具200の装着に際し、肩ベルト部102を引っ張ることで付勢バンド部4に適度な引張力を掛けた状態とすることができることとなり、フィット性が向上し、より着用者の背部・腰部への負担を低減することができる。
【0148】
(本発明の他の実施形態)
上記第1及び第2の実施形態に係る装具100、200においては、補助バンド部16及び調節バンド部18、19を有する構成としたが、これに限らず、これら補助バンド部16及び調節バンド部18、19を省略することもできる。
また、装具100、200は、延出部分12、13を省略することもできる。
【符号の説明】
【0149】
1 本体部
2 肩ベルト部
3 下肢バンド部
4 付勢バンド部
5 長さ調整部
11 中央部分
12 延出部分
12a 伸縮部分
12b 非伸縮部分
12c 被係着部分
13 延出部分
13a 伸縮部分
13b 非伸縮部分
13c 被係着部分
13d 係着部分
14 帯材
15 補助帯
15a 第1の案内部
15b 第2の案内部
16 補助バンド部
16a、16b 折り曲げ部分
16c、16d 斜行部分
16e 横断部分
17 板状体
17a 切欠き部分
17b 板状体上部
17c 板状体下部
17d 凹部分
17e~17i 支持点
18 調節バンド部
18a 係着部分
19 調節バンド部
19a 係着部分
21、22 肩掛け部分
23、24 帯材
31 左足固定部分
31a 伸縮部分
31b 巻回部分
31c 被係着部分
31d 係着部分
32 右足固定部分
32a 伸縮部分
32b 巻回部分
32c 被係着部分
32d 係着部分
33 連結部分
41 第1付勢バンド部分
42 第2付勢バンド部分
51 左調整部分
52 右調整部分
53 分岐部
53a、53b、53c 長孔
54 第1調整部分
54a 連結鐶部
54b 帯材
55 第2調整部分
55a 連結鐶部
55b 帯材
56 連結部分
56a 差込具
56b 帯材
57 連結部分
57a 受具
57b 帯材
61 連結鐶部
61a 第1の長孔
61b 第2の長孔
62 連結鐶部
62a 第1の長孔
62b 第2の長孔
63 差込具
64 受具
100 装具
102 肩ベルト部
121、122 肩掛け部分
125 支持部分
126 第3調整部分
126a 連結鐶部
126b 帯材
127 連結部分
127a 差込具
127b 帯材
128 連結部分
128a 受具
128b 帯材
129 帯材
130 連結部分
130a 差込具
130b 帯材
130c 連結鐶部
131 連結部分
131a 受具
131b 帯材
131c 連結鐶部
151 第4調整部分
151a 受具
151b 差込具
151c 帯材
151d 帯材
200 装具
A、B 引張方向
C 押出方向
M 重量物