(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063774
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】7-ADCA製造のためのデアセトキシセファロスポリンCの高濃度および高純度生産菌株およびこれを利用した製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/31 20060101AFI20240502BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240502BHJP
C07K 14/35 20060101ALI20240502BHJP
C07K 14/195 20060101ALI20240502BHJP
C12P 1/04 20060101ALI20240502BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240502BHJP
C12N 1/14 20060101ALI20240502BHJP
C12N 1/15 20060101ALN20240502BHJP
【FI】
C12N15/31
C12P21/02 C ZNA
C07K14/35
C07K14/195
C12P1/04 Z
C12N15/63 Z
C12N1/14 A
C12N1/15
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023182972
(22)【出願日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】10-2022-0139497
(32)【優先日】2022-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】517167247
【氏名又は名称】アミコージェン・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】14-10 WORASAN-RO 950 BEON-GIL, MUNSAN-EUP, JINJU-SI, GYEONGSANGNAM-DO, 52840, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】朴 哲
(72)【発明者】
【氏名】尹 榮晟
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲ヒョン▼抒
(72)【発明者】
【氏名】崔 宴僖
(72)【発明者】
【氏名】姜 美淑
(72)【発明者】
【氏名】朴 雪梅
(72)【発明者】
【氏名】金 有美
(72)【発明者】
【氏名】李 智秀
(72)【発明者】
【氏名】李 紅仙
(72)【発明者】
【氏名】徐 東一
(72)【発明者】
【氏名】鄭 棟元
(72)【発明者】
【氏名】金 承基
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE20
4B064DA02
4B065AA50Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA34
4B065CA44
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA11
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA15
(57)【要約】
【課題】デアセトキシセファロスポリンC(Deacetoxy cephalosporin C;DAOC)生産性を高め、副産物の生産性を低めることで、目的物質であるDAOCの純度が高い生産菌株の開発。
【解決手段】デアセトキシセファロスポリンC(Deacetoxy cephalosporin C;DAOC)生産能に優れた菌株およびその用途に関するものであって、改善されたDAOC生産能を有する変異菌株およびその7-ADCA(7-Amino deacetoxy cephalosporanic acid)の製造のための用途が提供される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)のCefD蛋白質および
(2)アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)のCefD1蛋白質のC-末端の連続する8乃至12個のアミノ酸を含むC-末端断片、
を含むポリペプチドまたはそれをコードする遺伝子を含むアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株であって、
前記CefD1蛋白質のC-末端断片は、ペルオキシソームターゲッティングシグナル1(peroxisome targeting signal 1;PTS1)を含み、前記CefD蛋白質のC-末端に連結されたものである、
アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株。
【請求項2】
前記CefD蛋白質は、配列番号1で表されるものである、請求項1に記載のアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株。
【請求項3】
前記CefD1蛋白質のC-末端断片は、配列番号2で表されるものである、請求項1に記載のアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株。
【請求項4】
前記ポリペプチドは、配列番号3で表されるものである、請求項1に記載のアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株。
【請求項5】
前記ポリペプチドをコードする遺伝子は、配列番号4で表されるものである、請求項1に記載のアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株。
【請求項6】
下記から選択された一つ以上の変異を追加的に含む、請求項1に記載のアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株:
CefEF遺伝子、CefG遺伝子、またはこれら全ての欠損;および
外来のCefE遺伝子導入。
【請求項7】
前記外来のCefE遺伝子は、マイコバクテリウム・アブセサス(Mycobacterium abscessus)、スフィンゴモナス・ドクドネンシス(Sphingomonas dokdonensis)、アミコラトプシス・ラクタムデュランス(Amycolatopsis lactamdurans)、ゴルドニア・ルブリペルティンクタ(Gordonia rubripertincta)、マイクロバクテリウム・ハイドロカルボノキシダンス(Microbacterium hydrocarbonoxydans)、ナンノシスティス・エクセレンス(Nannocystis exedens)、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas synringae)、およびストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)からなる群より選択された1種以上のCefE遺伝子である、請求項6に記載のアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株。
【請求項8】
受託番号KCTC14989BPである、請求項1に記載のアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株。
【請求項9】
下記から選択された一つ以上の特徴を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株:
非改変菌株と比較して、デアセトキシセファロスポリンC(Deacetoxy cephalosporin C;DAOC)生産増加、
非改変菌株と比較して、デアセチルセファロスポリンC(Deacetyl cephalosporin C;DAC)生産減少、および
非改変菌株と比較して、DAC/DAOC比率(%)減少。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載のアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株を含む、デアセトキシセファロスポリンC(Deacetoxy cephalosporin C;DAOC)生産用組成物。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載のアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株を培養する段階を含む、デアセトキシセファロスポリンC(Deacetoxy cephalosporin C;DAOC)生産方法。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載のアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株、前記変異菌株の培養物、前記培養物の培養培地、および前記培養物または培養培地から分離されたDAOCからなる群より選択された1種以上を含む、7-ADCA(7-Amino deacetoxy cephalosporanic acid)生産用組成物。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載のアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株の培養物、前記培養物の培養培地、または前記培養物または培養培地から分離されたDAOCにCPC(Cephalosporin C)アシラーゼを処理する段階を含む、7-ADCA(7-Amino deacetoxy cephalosporanic acid)生産方法。
【請求項14】
配列番号3で表される、ポリペプチド。
【請求項15】
請求項14に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項16】
配列番号4で表される、請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
配列番号3で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項18】
配列番号3で表されるポリペプチド、
前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター
からなる群より選択された1種以上を含む、改善されたDAOC生産能を有する菌株製造用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、デアセトキシセファロスポリンC(Deacetoxy cephalosporin C;DAOC)生産能に優れた菌株およびその用途に関するものであって、改善されたDAOC生産能を有する変異菌株およびその7-ADCA(7-Amino deacetoxy cephalosporanic acid)の製造のための用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セファロスポリンC(Cephalosporin C、以下、「CPC」)は、ベータ-ラクタム(beta-lactam)系抗生物質として、糸状菌カビであるアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)のような一部の微生物により生産される。CPCは、グラム陰性細菌に対して細胞壁合成阻害を通じて抗生活性を示すが、その程度が非常に微弱であるため、主に半合成セファロスポリン系抗生剤(semi-synthetic cephalosporin antibiotics、以下、「セファロスポリン系抗生剤」)の原料物質を製造することに利用されている。
【0003】
セファロスポリン系抗生剤の原料物質は、主に7-アミノセファロスポラン酸(7-amino cephalosporanic acid、以下、「7-ACA」と略称する)、デアセチル7-アミノセファロスポラン酸(Deacetyl 7-amino cephalosporanic acid、以下、「D-7-ACA」と略称する)、7-アミノデアセトキシセファロスポラン酸(7-Amino deacetoxy cephalosporanic acid、以下、「7-ADCA」と略称する)などに区分することができる。
【0004】
現在、7-ADCAを生産するための産業的生産法としてペニシリンのベータラクタム環であるペナム(penam)環をセファロスポリン系のセフェム(cephem)環に拡張させる化学転換法が使用される。特に、7-ADCAの製造において、前記セフェム環への拡張に関与する化学転換法にトルエンなどの有機溶媒が使用されて多量の有毒廃棄物が発生して環境汚染および廃水処理費用が増加するという大きい短所があった。
【0005】
既存のDAOCを高濃度で生産する組換え菌株の場合、DAOC生産中に生成される副産物であるデアセチルセファロスポリンC(Deacetyl cephalosporin C;DAC)により純度が落ちるという短所があった。
【0006】
したがって、DAOC生産性を高め、副産物の生産性を低めることで、目的物質であるDAOCの純度が高い生産菌株の開発が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10-2194740号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願では、デアセトキシセファロスポリンC(Deacetoxy cephalosporin C;DAOC)生産能に優れた菌株およびその用途が提供される。
【0009】
一例は、新規なDAOC生産菌株を提供する。一例で前記DAOC生産菌株は、ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)由来のアミノトランスフェラーゼが導入されたアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株でありうる。前記アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株は、DAOC生産能を有するものでありうる。
【0010】
他の例は、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)菌株にストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)由来のアミノトランスフェラーゼ遺伝子を導入する段階を含む、DAOC生産能が改善されたアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)菌株の製造方法および/またはアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)菌株のDAOC生産能改善方法を提供する。
【0011】
他の例は、前記アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株を培養する段階を含む、DAOC生産方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願では、改善されたデアセトキシセファロスポリンC(Deacetoxy cephalosporin C;DAOC)生産能を有する変異菌株およびその用途が提供される。前記変異菌株は、DAOC生産能が高いだけでなく、副産物(例えば、デアセチルセファロスポリンC(Deacetyl cephalosporin C;DAC)など)の生産量が少なくてDAOCの純度が高いことを特徴とするものでありうる。
【0013】
用語の定義
本明細書において、ポリヌクレオチド(「遺伝子または核酸分子」と互換可能に使用される)またはポリペプチド(「蛋白質または酵素」と互換可能に使用される)が「特定の核酸配列またはアミノ酸配列を含む」または「特定の核酸配列またはアミノ酸配列から(必須で)なる」または「特定の核酸配列またはアミノ酸配列で表示される」とは、前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列を必須で有することを意味し得、前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの本来の機能および/または目的とする機能を維持する範囲で前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列に変異(欠失、置換、改変、および/または付加)が加えられた「実質的に同等な配列」を含むもの(または前記変異を排除しないもの)と解釈され得る。
【0014】
一例において、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが「特定の核酸配列またはアミノ酸配列を含む」または「特定の核酸配列またはアミノ酸配列から(必須で)なるまたは表示される」とは、前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが
(i)前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列を必須で含むか、または
(ii)前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、または99.9%以上(場合により100%が除外され得る)の同一性(identity)を有するアミノ酸配列からなるかまたはこれを必須で含み、前記特定の配列の元来の機能および/または目的とする機能を維持することを意味し得る。一例において、目的とする機能は、宿主細胞にDAOC生産能を付与したり宿主細胞のDAOC生産能を増加させるもの、および/またはDAOC生産時の副産物を減少させるものでありうる。
【0015】
本明細書において、用語「配列同一性(sequence identity)」は、与えられた核酸配列またはアミノ酸配列と一致する程度を意味し、百分率(%)で表示され得る。核酸配列に対する同一性の場合、例えば、文献によるアルゴリズムBLAST(参照:KarlinおよびAltschul, Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873, 1993)またはPearsonによるFASTA(参照:Methods Enzymol., 183, 63, 1990)などを使用して決定することができる。このようなアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(参照:http://www.ncbi.nlm.nih.gov)。
【0016】
本明細書において、 用語「約(about)」は、後に出る数値と同等または類似の範囲の数値を全て含むための表現であり、後に出る数値を基準に、±10、±9、±8、±7、±6、±5、±4、±3、±2、±1、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1、±0.05、または±0.01の範囲を含むものと解釈され得るが、これに制限されるのではない。
【0017】
アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)は、セファロスポリン合成経路を有しており、最終産物はCPC(Cephalosporin C)である。CPCは、前駆体である L-2-アミノアジピン(L-2-aminoadipate)、L-システイン(L-cysteine)、L-バリン(L-valine)からN-[(5S)-5-アミノ-5-カルボキシルペンタノイル]-L-システイニル-D-バリン(N-[(5S)-5-amino-5-carboxylpentanoyl]-L-cysteinyl-D-valine)を経てイソペニシリンN(isopenicillin N)、ペニシリンN(penicillin N)に転換され、その後、CefEF遺伝子がコードする拡張酵素(エキスパンダーゼ(expandase)、またはDAOCシンターゼ(synthase))の触媒を受けてペナム(penam)環がセフェム(cephem)環に変換されてセファロスポリン系前駆体であるDAOCとなる。
【0018】
デアセトキシセファロスポリンC(Deacetoxy cephalosporin C;DAOC)は、次の化学式1で表され得、セファロスポリン系抗生剤の中間体である7-ADCA(7-Amino deacetoxy cephalosporanic acid;化学式2)の前駆物質である。
【化1】
【化2】
【0019】
本明細書において、用語「DAOC」は、DAOC(Deacetoxy cephalosporin C)および/またはその薬学的に許容可能な塩を意味するものと解釈され得る。また、用語「ADCA」は、ADCA(7-Amino deacetoxy cephalosporanic acid)および/またはその薬学的に許容可能な塩を意味するものと解釈される。
【0020】
本明細書において、改善されたDAOC生産能は、DAOC生産増加、DAOC生産中に生成される副産物であるデアセチルセファロスポリンC(Deacetyl cephalosporin C;DAC)生産減少、DAC/DAOC比率(%)減少などからなる群より選択された一つ以上を意味するものでありうる。
【0021】
本明細書において、「微生物の培養物」という表現は、微生物を培地で培養して得られるものを意味し得る。培養物の状態には制限がない。例えば、培養物は、液体培養物および/または固体培養物でありうるが、これに制限されない。
【0022】
本明細書において、「培養培地(cultured medium)」は、微生物の培養物から得るか、微生物を培地で培養した後に得ることができる。前記培養培地は、培養された微生物により生産および/または分泌される物質を含むことができる。一具体例で、前記培養培地は、培養物から微生物が除去された無細胞培養物を含むことができるが、これに制限されない。
【0023】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0024】
一例は、新規なデアセトキシセファロスポリンC(Deacetoxy cephalosporin C;DAOC)生産菌株を提供する。
【0025】
一例において、前記DAOC生産菌株は、ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)由来のアミノトランスフェラーゼまたはそれをコードする遺伝子を含むアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株でありうる。前記DAOC生産菌株は、非改変菌株と比較して改善されたDAOC生産能を有するものでありうる。本明細書で「改善されたまたは優れたDAOC生産能」は、高いDAOC生産量および/または高いDAOC純度(低い副産物生産量)を意味するものでありうる。したがって、前記DAOC生産菌株は、非改変菌株と比較して、DAOC生産量が多いおよび/またはDACのような副産物の生産量が少ないため、DAOCの純度が高いことを特徴とするものでありうる。
【0026】
一具体例で、前記ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)由来のアミノトランスフェラーゼは、aminotransferase class V-fold PLP-dependent enzyme(CefD;GenBank Accession No. WP_003952494.1;398aa;配列番号1)でありうるが、これに制限されるのではない。
【0027】
他の例で、前記ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)由来のアミノトランスフェラーゼは、宿主細胞であるアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)でイソペニシリンN(isopenicillin N)をペニシリンN(penicillin N)に変換する酵素、例えば、イソペニシリンN-CoA-シンセターゼ(isopenicillin N-CoA-synthetase;CefD1;GenBank Accession No. CAD45625.1;609aa)のC-末端断片を追加的に含むことができる。前記C-末端断片は、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)のイソペニシリンN-CoA-シンセターゼのC-末端の3乃至30個、3乃至20個、3乃至15個、3乃至12個、3乃至10個、5乃至30個、5乃至20個、5乃至15個、5乃至12個、5乃至10個、8乃至30個、8乃至20個、8乃至15個、8乃至12個、または8乃至10個の連続するアミノ酸を含むものであり得、前記連続するアミノ酸は、ペルオキシソームターゲッティングシグナル1(peroxisome targeting signal 1;PTS1)である3個のアミノ酸(C末端の3個のアミノ酸;PRL)を含むものでありうる。一具体例で、前記PTS1を含むC-末端断片は、配列番号2(SGQSAARPRL)を含むものでありうるが、これに制限されるのではない。前記PTS1を含むC-末端断片は、前記ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)由来のアミノトランスフェラーゼのC-末端に連結されたものでありうる。
【0028】
前記ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)由来のアミノトランスフェラーゼおよびPTS1を含むC-末端断片を含むポリペプチドは、配列番号3で表され得るが、これに制限されるのではない。
【0029】
一具体例で、前記アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株は、宿主細胞としてのアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)にストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)由来のアミノトランスフェラーゼおよびPTS1を含むC-末端断片を含むポリペプチド(例えば、配列番号3のアミノ酸配列)をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを導入させた形質転換体でありうる。前記形質転換体において、前記導入されたポリヌクレオチドの存在形態には特別な制限がない。例えば、前記ポリヌクレオチドは、宿主細胞のゲノムまたは染色体内に挿入(integration)されるか、ゲノムおよび/または染色体外部で独自に複製および/または発現されるものでありうるが、これに制限されるのではない。前記核酸配列は、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)に最適化したコドンを含むものであり得、一具体例において配列番号4で表され得るが、これに制限されるのではない。前記組換えベクターは、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)内で発現可能な発現ベクターでありうる。
【0030】
前記宿主細胞としてのアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)は、セファロスポリン系抗生剤の原料物質のうちの一つである7-ADCAの前駆体であるデアセトキシセファロスポリンC(Deacetoxy cephalosporin C;DAOC)生産能を有する微生物であり、野生型菌株または変異型菌株でありうる。前記宿主細胞としての変異型菌株は、DAOC生産能を増加させるための変異が導入されたアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)菌株でありうる。
【0031】
一例において、前記DAOC生産能を増加させるための変異は、下記から選択された一つ以上でありうるが、これに制限されるのではない:
CefEFおよび/またはCefG遺伝子の欠損;および
外来のCefE遺伝子導入。
【0032】
前記外来のCefE遺伝子は、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)以外の多様な微生物由来のCefE遺伝子を意味するものであり、例えば、アミコラトプシス・ラクタムデュランス(Amycolatopsis lactamdurans)、ゴルドニア・ルブリペルティンクタ(Gordonia rubripertincta)、マイコバクテリウム・アブセサス(Mycobacterium abscessus)、マイクロバクテリウム・ハイドロカルボノキシダンス(Microbacterium hydrocarbonoxydans)、ナンノシスティス・エクセレンス(Nannocystis exedens)、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas synringae)、ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)、スフィンゴモナス・ドクドネンシス(Sphingomonas dokdonensis)などからなる群より選択された1種以上(例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、または9種)の微生物のCefE遺伝子でありうるが、これに制限されるのではない。
【0033】
一例において、前記アミコラトプシス・ラクタムデュランス(Amycolatopsis lactamdurans)由来のCefE遺伝子はGenBank Accession No. NID Z13974.1、ゴルドニア・ルブリペルティンクタ(Gordonia rubripertincta)由来のCefE遺伝子はGenBank Accession No. NID CP022580.1、マイコバクテリウム・アブセサス(Mycobacterium abscessus)由来のCefE遺伝子はGenBank Accession No. NID FVPM01000026.1、マイクロバクテリウム・ハイドロカルボノキシダンス(Microbacterium hydrocarbonoxydans)由来のCefE遺伝子はGenBank Accession No. NID JYJB01000010.1、ナンノシスティス・エクセレンス(Nannocystis exedens)由来のCefE遺伝子はGenBank Accession No. NID FOMX01000018.1、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas synringae)由来の遺伝子はGenBank Accession No. NID AOJT01001469.1、ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)由来の遺伝子はGenBank Accession No. NID DS570624.1、スフィンゴモナス・ドクドネンシス(Sphingomonas dokdonensis)由来のCefE遺伝子はGenBank Accession No. NID NBBI01000005.1の核酸配列を含むものでありうるが、これに制限されるのではない。
【0034】
一具体例で、前記外来のCefE遺伝子は、マイコバクテリウム・アブセサス(Mycobacterium abscessus)のCefE遺伝子(配列番号5)、スフィンゴモナス・ドクドネンシス(Sphingomonas dokdonensis)のCefE遺伝子(配列番号6)、またはこれらの組み合わせでありうるが、これに制限されるのではない。
【0035】
他の例で、本明細書で提供されるアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株は、前述したように配列番号3のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターの導入による変異に加えて、下記から選択された一つ以上の変異を追加的に含むものでありうる:
CefEFおよび/またはCefG遺伝子の欠損;および
外来のCefE遺伝子導入。
【0036】
前記外来のCefE遺伝子は、前述したとおりである。
【0037】
本明細書で「遺伝子の欠損」は、菌株の染色体配列で確認されるCefEFおよび/またはCefGのそれぞれの遺伝子配列の一部または全部(つまり、開始コドンから終止コドンまで)を除去することを意味し得るが、これに制限されるのではない。
【0038】
一具体例で、前記アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株は、受託番号KCTC 14989BPが付与された菌株でありうるが、これに制限されるのではない。
【0039】
本明細書で提供されるアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株は、DAOC生産能を有するものでありうる。前記アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株は、非改変菌株と比較して、改善されたDAOC生産能(DAOC生産増加および/またはDAOC純度増加(例、DAC生産減少(例えば、DAC/DAOC比率(%)減少)))および/または増加された7-ADCA生性能を有するものでありうる。前記非改変菌株は、野生型アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)菌株または前述した変異、例えば、配列番号3のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターによる変異が導入されていないアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)菌株を意味するものでありうる。
【0040】
他の例は、前記アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株および/または前記菌株の培養物または培養培地を含む、DAOCおよび/または7-ADCAの生産用組成物を提供する。
【0041】
他の例は、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)菌株にストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)由来のアミノトランスフェラーゼおよびPTS1を含むC-末端断片を含むポリペプチド(例えば、配列番号3のアミノ酸配列)をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを導入する段階を含む、DAOC生産能が改善されたアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)菌株の製造方法および/またはアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)菌株のDAOC生産能改善方法を提供する。前記製造されたアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)菌株は、ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)由来のアミノトランスフェラーゼおよびPTS1を含むC-末端断片を含むポリペプチド(例えば、配列番号3のアミノ酸配列)をコードする核酸配列が導入されていないアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)菌株と比較して改善されたDAOC生産能を有する。
【0042】
前記方法は、前記ポリヌクレオチドを導入する段階の前、後、または同時に、下記から選択された一つ以上の段階を追加的に含むことができる:
CefEFおよび/またはCefG遺伝子の欠損;および
外来のCefE遺伝子導入。
【0043】
前記外来のCefE遺伝子は、前述したとおりである。
【0044】
他の例は、前記アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株を培養する段階を含む、デアセトキシセファロスポリンC(Deacetoxy cephalosporin C;DAOC)の生産方法を提供する。前記培養する段階は、DAOC生産が可能な培地および/または条件で行われるものでありうる。前記方法は、前記培養する段階の後に、前記培養物または培養培地からDAOCを回収(または分離)する段階を追加的に含むことができる。
【0045】
本明細書で提供されるアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株は、改善されたDAOC生産能を有する。一例において、前記アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株は、非改変菌株と比較して、DAOC生産能が3%以上、5%以上、7%以上、10%以上、12%以上、または15%以上増加したものでありうる。
【0046】
他の例で、前記アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株は、
DAC/DAOC(%)が10%以下、9.5%以下、9%以下、8.5%以下、8%以下、7.5%以下、7%以下、6.5%以下、6%以下、5.5%以下、5%以下、4.5%以下、4%以下、3.9%以下、3.8%以下、3.7%以下、3.6%以下、または3.5%以下であるか、および/または
DAC/DAOC(%)が非改変菌株のDAC/DAOC(%)(100%)の90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、39%以下、38%以下、37%以下、36%以下、または35%以下であるものでありうるが、これに制限されるのではない。
【0047】
他の例は、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株、前記変異菌株の培養物、前記培養物の培養培地、および前記培養物および/または培養培地から回収(分離、精製)されたDAOCからなる群より選択された1種以上を含む7-ADCA(7-Amino deacetoxy cephalosporanic acid)生産用組成物を提供する。
【0048】
他の例は、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株、前記変異菌株の培養物、前記培養物の培養培地、および前記培養物および/または培養培地から回収(分離、精製)されたDAOCからなる群より選択された1種以上を含む組成物の7-ADCA(7-Amino deacetoxy cephalosporanic acid)の生産のための用途を提供する。
【0049】
他の例は、
前記アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株の培養物、培養培地またはこれから回収(分離、精製)されたDAOCにCPC(Cephalosporin C)アシラーゼを処理する段階、
を含む7-ADCA(7-Amino deacetoxy cephalosporanic acid)の生産方法を提供する。
【0050】
前記方法は、CPCアシラーゼを処理する段階の前に、前記アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株を培養する段階を追加的に含むことができる。前記培養する段階は、前述したとおりであり、培養物または培養培地からDAOCを回収する段階を追加的に含むことができる。
【0051】
前記DAOC培養液にCPCアシラーゼを処理する段階は、CPCアシラーゼを利用した転換反応を通じて7-ADCAを製造する段階である。前記CPCアシラーゼを利用した転換反応は、通常、振盪培養または回転機による回転のような呼気性条件下で行われ得る。一具体例で、転換反応は、5乃至30℃の温度条件および/または1分乃至300分、例えば、1分乃至120分間の時間条件下で行われ得るが、これに制限されるのではない。反応pHは、3.0乃至9.0の範囲で維持することができ、無機または有機酸、アルカリ溶液、尿素、カルシウムカーボネート、アンモニアなどで適切に調節することができる。
【0052】
前記7-ADCA生産方法は、前記CPCアシラーゼを処理する段階の後に反応液から7-ADCAを回収(分離、収穫、精製または収集)する段階を追加的に含むことができる。具体的に、7-ADCAの回収は、遠心分離、ろ過、抽出、噴霧、乾燥、蒸発、沈澱、結晶化、電気泳動、分別溶解(例えば硫酸アンモニウム沈澱)、クロマトグラフィー(例えばイオン交換、親和性、疎水性およびサイズ排除)などの方法で行われ得るが、これに制限されるのではない。
【0053】
他の例は、ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)由来のアミノトランスフェラーゼ(例えば、配列番号1)およびPTS1を含むC-末端断片を含むポリペプチド(例えば、配列番号3のアミノ酸配列)を提供する。
【0054】
他の例は、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。前記ポリヌクレオチドは、配列番号4の核酸配列を含むものでありうる。
【0055】
他の例は、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0056】
他の例は、
ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)由来のアミノトランスフェラーゼ(例えば、配列番号1)およびPTS1を含むC-末端断片を含むポリペプチド(例えば、配列番号3のアミノ酸配列)、
前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、配列番号4)、および
前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター(発現ベクター)
からなる群より選択された1種以上のDAOC生産菌株の製造および/またはDAOC生産能の改善のための用途を提供する。
【0057】
より具体的に、
ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)由来のアミノトランスフェラーゼ(例えば、配列番号1)およびPTS1を含むC-末端断片を含むポリペプチド(例えば、配列番号3のアミノ酸配列)、
前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、配列番号4)、および
前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター(発現ベクター)
からなる群より選択された1種以上を含むDAOC生産菌株の製造および/またはDAOC生産能改善のための組成物を提供する。
【0058】
前記DAOC生産菌株は、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)であり得、前記DAOC生産能の改善は、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)のDAOC生産能の改善でありうる。
【0059】
本明細書に記載された核酸配列は、コドンの縮重性(degeneracy)により目的とするポリペプチドを発現させようとする微生物、例えば、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)で好まれるコドンを考慮して、コーディング領域から発現する蛋白質のアミノ酸配列および/または機能を変化させない範囲内でコーディング領域に多様な改変が行われ得る。
【0060】
前記ポリヌクレオチドまたはベクターの導入は、公知の形質転換方法を当業者が適切に選択して行うことができる。本明細書において、用語「形質転換」は、標的蛋白質(外来蛋白質)をコードする核酸分子を含むベクターを宿主細胞内に導入して宿主細胞内で前記核酸分子がコードする蛋白質が発現することができるようにすることを意味する。形質転換された核酸分子は、宿主細胞内で発現さえできれば、宿主細胞の染色体内に挿入されるおよび/または染色体外に位置することができる。また、前記核酸分子は、標的蛋白質をコードするDNAおよび/またはRNAを含む。前記核酸分子は、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、その導入される形態は制限がない。例えば、前記核酸分子は、独自に発現するのに必要な全ての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入され得る。前記発現カセットは、通常、前記核酸分子に作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結信号、リボソーム結合部位および/または翻訳終結信号などの発現調節要素を含むことができる。前記発現カセットは、自己複製が可能な発現ベクターの形態でありうる。また、前記核酸分子は、それ自体の形態で宿主細胞のゲノムに導入されて宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されるものであり得る。前記で用語「作動可能に連結」されるものとは、発現調節要素が目的蛋白質(外来蛋白質)をコードする核酸分子の転写調節(例、転写開始)を行うことができるように発現調節要素(例、プロモーター)と核酸分子が機能的に連結されていることを意味し得る。作動可能な連結は、当業界における公知の遺伝子組換え技術を利用して行うことができ、例えば、通常の部位特異的DNA切断および連結により行われ得るが、これに制限されない。
【0061】
前記ポリヌクレオチドを宿主細胞に形質転換(導入)する方法は、核酸分子を細胞(微生物)内に導入する如何なる方法でも遂行可能であり、宿主細胞により当該分野で公知の形質転換技術を適切に選択して行うことができる。前記公知の形質転換方法としてエレクトロポレーション法(electroporation)、リン酸カルシウム(CaPO4)沈澱法、塩化カルシウム(CaCl2)沈澱法、マイクロインジェクション法(microinjection)、ポリエチレングリコール(PEG)沈澱法(polyethylene glycol-mediated uptake)、DEAE-デキストラン法、陽イオンリポゾーム法、リポフェクション(lipofection)、酢酸リチウム-DMSO法、ヒートショク(heat shock)法、パーティクル・ガン法(particle gun bombardment)、シリコン炭化物ウィスカー(Silicon carbide whiskers)、超音波処理(sonication)などが例示され得るが、これに制限されるのではない。
【0062】
本明細書において、用語「ベクター」は、適切な宿主内で目的蛋白質を発現させることができるように適切な調節配列に作動可能に連結された前記目的蛋白質をコードする核酸分子の塩基配列を含有するDNA製造物を意味する。前記調節配列は、転写を開始できるプロモーター、転写を調節するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、および/または転写および/または解読の終結を調節する配列を含むことができる。ベクターは、適当な宿主微生物内に形質転換された後、宿主微生物のゲノムと関係なく発現したり、宿主微生物のゲノム内に組み込まれ得る。
【0063】
本明細書で使用可能なベクターは、宿主細胞内で複製可能なものであれば特に限定されず、通常使用される全てのベクターの中から選択され得る。通常使用されるベクターの例としては、天然状態または組換えられた状態のプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージなどが挙げられる。例えば、前記ベクターとして、ファージベクターまたはコスミドベクターとしてはpWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、およびCharon21Aなどを使用することができ、プラスミドベクターとしてはpBC系(例、pBC-KS(+))、pBR系(例、pBR322、pBR325)、pUC系(例、pUC118およびpUC119)、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系、pET系(例、pET-22b(+))、バチルスサブチリス由来プラスミド(例、pUB110、pTP5)などを使用することができるが、これに制限されない。
【0064】
前記ベクターは、前記染色体内挿入の有無を確認するための選別マーカー(selection marker)を追加的に含むことができる。前記選別マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選別、つまり、前記ポリヌクレオチドの挿入有無を確認するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面蛋白質の発現のような選択可能表現型を付与する遺伝子の中から選択して使用することができる。選択剤(selective agent)が処理された環境では選別マーカーを発現する細胞だけが生存したり他の表現形質を示すため、形質転換された細胞を選別することができる。
【発明の効果】
【0065】
本明細書では、CefD核酸配列およびPTS1核酸配列とのハイブリッド(hybrid)を最初に行っており、前記CefD-PTS1融合遺伝子をアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)に導入することにより、CefD1、CefD2、チオエステラーゼ(thioesterase)が作用する段階を一段階に縮小して代謝経路を最適化し、DAOC生産過程で不純物であるDACの含有量を画期的に減少させ、目的産物であるDAOC生産能を有意水準に増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図2】一実施例による変異菌株のDAOC生産量(g/L)とDAOC生産過程の不純物であるDACの比率(DAC/DAOC、%)を示すグラフである。
【
図3】一実施例による変異菌株の培養期間に応じたDAOC生産量(g/L)を示すグラフである。
【
図4】一実施例による変異菌株の培養期間に応じたDAOCとDAOC生産過程の不純物であるDACとの比率(DAC/DAOC、%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これは例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を制限しようとするものではない。下記に記載された実施例は、発明の本質的な要旨を逸脱しない範囲で変形可能であることは当業者に自明である。
【0068】
実施例1:D7px導入菌株の作製
【0069】
1.1.親菌株の準備
D7px導入のための親菌株として、デアセトキシセファロスポリンC(DAOC)生産アクレモニウム・クリソゲナム菌株を大韓民国登録特許第10-2194740号(本明細書に参照として含まれる)に記載された実施例を参照して準備した。
【0070】
これを簡略に説明すれば、まず、CefEFおよびCefG遺伝子が欠損されたCPC高生産性アクレモニウム・クリソゲナム菌株(寄託番号:KCTC 13922BP)にマイコバクテリウム・アブセサス(Mycobacterium abscessus)のCefE3(genbank PID SKX81615.1)コードDNA(配列番号5)が導入された菌株(3-7菌注)およびスフィンゴモナス・ドクドネンシス(Sphingomonas dokdonensis)のCefE8(genbank PID OWK28829.1)コードDNA(配列番号6)が導入された菌株(8-60菌株)を準備した。大韓民国登録特許第10-2194740号に記載された「形質転換試験法」により、前記準備された3-7菌株および8-60菌株の原形質体を作製し、前記作製した原形質体を計数した後、それぞれの菌株に対して1×107個の原形質体に60%(w/v)PEG溶液250μLを入れて混合した後、氷で40分放置した。その後、60%PEG溶液2.5mLをさらに入れて混合した後、常温で40分放置した後、抗生剤を含有するLB-sucrose平板培地に塗抹した。平板培地は28℃で14日間コロニーが形成される時まで培養した。
【0071】
前記のように得られた菌株に対して、配列番号7(5’-cgcttgagca gacatcacca tgacggacat cggtgaac-3’)と配列番号8(5’-gctaagcttt tatcagccga cggttatggc-3’)のプライマーを利用してCefE3の存在有無を、配列番号9(5’-cgcttgagca gacatcacca tgcatcgcgc gggcggc-3’)と配列番号10(5’-gctaagcttt tatcacttct tgatgagac-3’)のプライマーを利用してCefE8の存在有無をそれぞれ確認して、マイコバクテリウム・アブセサス(Mycobacterium abscessus)のCefE3とスフィンゴモナス・ドクドネンシス(Sphingomonas dokdonensis)のCefE8が全て導入された融合菌株(E3-E8と命名)が得られたことを確認した。
【0072】
1.2.D7px遺伝子合成およびクローニング
セファスポリン抗生剤生産放線菌であるストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)のCefD蛋白質配列を基盤としてアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)で最適化したコドンに変えて再合成した遺伝子配列(以下、「D7」と命名)および前記アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)のCefD1蛋白質C-末端に存在する連続する10個のアミノ酸部位(peroxisome targeting signal 1(PTS1)であるアミノ酸3個を含む)コーディング配列を準備した。前記D7配列の3’末端(C-末端コドン該当)に前記PTS1配列を含むCefD1の10個のアミノ酸(配列番号2)部位コーディング配列を連結して、これをD7px(アミノ酸配列:配列番号3;DNA配列:配列番号4)と命名した。
【0073】
D7pxを作製するために、配列分析を通じてストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)のCefDのアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)での発現が最適化することができるコドン配列を見出し、前記CefDのCefD1配列およびPTS1配列とのハイブリッド(hybrid)を最初に行った。アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)にD7pxの導入を通じてCefD1、CefD2、チオエステラーゼ(thioesterase)が作用する段階を一段階に縮小して代謝経路を最適化し、DAOC生産過程で不純物であるDACの含有量を画期的に減らし、目的産物であるDAOCも有意水準に増加することを確認した。
【0074】
D7pxの遺伝子配列とこれによりコードされる蛋白質配列は次のとおりである。
【0075】
D7アミノ酸配列(398aa)(配列番号1)
MAVADWEEAR GRMLLDPTVV NLNTGSGGPL PRSAFERVTG FRAHLAAEPM DFLLREVPAL
LWQARESLAR LIGGDPLRLA LATNVTAAVN LVASSLRLEA PGEILLSDDE YTPMRWCWER
VARRHGLELR TFRLPELPSD PAEITAAAVA AMGPRTRLFF FSHVVSTTGL ILPAAELCEE
ARARGITTVV DGAHAPGFLD LDLSRIPCDF YAGSGHKWLL APTGVGFLHL APGRLEELEP
TQVSWAYEPP EGSGPPAARD RFGSTPGLRR LECEGTRDIC PWLATPESID FQAELGPGAI
RARRRELTDH ARRLLADRPG RTLLTPDSPE LSGGMVAYRL PPGTDAAELR RGLWERFRIE
AAVAEQPPGP VLRISANFYT TEEEIDRLAD ALDALTGE
【0076】
PTS1配列を含むCefD1の10個のアミノ酸部位のアミノ酸配列(10aa)(配列番号2)
SGQSAARPRL
【0077】
D7pxアミノ酸配列(408aa)(配列番号3)
MAVADWEEAR GRMLLDPTVV NLNTGSGGPL PRSAFERVTG FRAHLAAEPM DFLLREVPAL
LWQARESLAR LIGGDPLRLA LATNVTAAVN LVASSLRLEA PGEILLSDDE YTPMRWCWER
VARRHGLELR TFRLPELPSD PAEITAAAVA AMGPRTRLFF FSHVVSTTGL ILPAAELCEE
ARARGITTVV DGAHAPGFLD LDLSRIPCDF YAGSGHKWLL APTGVGFLHL APGRLEELEP
TQVSWAYEPP EGSGPPAARD RFGSTPGLRR LECEGTRDIC PWLATPESID FQAELGPGAI
RARRRELTDH ARRLLADRPG RTLLTPDSPE LSGGMVAYRL PPGTDAAELR RGLWERFRIE
AAVAEQPPGP VLRISANFYT TEEEIDRLAD ALDALTGESG QSAARPRL
【0078】
D7pxコードDNA配列(配列番号4)
atggccgttg cggactggga ggaggcgcgc ggccgcatgc tcctggatcc caccgttgtc 60
aatctaaaca cggggtcggg aggcccgctc cccaggtccg ccttcgagag ggtcacaggt 120
ttccgtgccc acctggccgc ggagccgatg gacttcctgc ttcgcgaggt gcctgctctt 180
ctctggcagg ccagggagag cctcgcccgc ctgatcggtg gcgatccctt gcggctcgcc 240
ctggcgacca atgtcacggc agccgtgaat ctggtcgcca gttcgctgcg tctcgaggca 300
ccgggtgaga ttcttctgtc ggacgacgaa tacacaccca tgagatggtg ctgggagcgc 360
gtggcccgta ggcatggctt ggagctccgc acattccgcc tgccagagct gccaagcgat 420
ccggctgaaa tcactgcagc cgcagttgct gcaatgggac cgcggacgcg actctttttc 480
ttctcccacg tcgtttcgac cacgggtctc atactccccg ctgcggagct ctgcgaagag 540
gcccgagccc gtggcatcac gacggtcgtc gatggcgccc atgcccctgg ttttctggat 600
ctcgacctca gccgtatccc gtgcgacttt tacgccggtt ccggtcataa gtggctcctg 660
gcacccactg gcgttggctt cctccacttg gcgccgggcc gcctagagga actcgagcct 720
acacaggtct catgggccta cgagcctcca gagggctcgg gccctccggc ggcgcgagac 780
cggtttggga gtaccccggg cctgcggagg ctcgagtgcg agggcacgcg agatatctgc 840
ccctggctcg ccacccccga aagtatcgac ttccaagcag agctaggtcc cggggctatc 900
cgtgcgcgtc gtcgcgagct gaccgaccat gcgcggcgcc tgctcgccga ccgtcctggg 960
aggaccctcc ttactcctga ctcgccggag ctctcaggcg gaatggttgc ttacaggttg 1020
ccacccggca ccgacgcagc cgagctgcgc cgtggcctgt gggagcgatt tcgcatcgag 1080
gccgccgtcg ccgaacagcc gccgggcccc gtgctacgca tctccgcgaa tttctatacc 1140
accgaggagg agattgatcg actcgccgac gccctcgacg cccttacggg agagtccggc 1200
cagtcggcgg ctcggccaag actctaatga 1230
【0079】
前記D7px遺伝子のクローニングを実施する時、PCR法を利用した遺伝子増幅はDNA polymeraseの購入時に同封されたマニュアルに従い、一般にDNAポリメラーゼ(DNA polymerase)はPfu-X polymerase(Solgent、大韓民国)を使用した。制限酵素、T4 DNA ligase、Klenow fragmentはNEB(米国)で購入して同封されたマニュアルに従った。Plasmid DNA精製、PCR産物(PCR product)精製、アガロースゲル(Agarose gel)からDNA抽出などのためにQIAprep Spin Miniprep Kit、QIAquick PCR Purification Kit、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen、オランダ)を使用した。
【0080】
クローニングのための大腸菌DH5alpha(Thermo Fisher)の形質転換は、コンピテントセル(competent cell)を利用したヒートショック(heat shock)方法を使用した。大腸菌をLB broth(BD Difco)に接種してOD600 0.4~0.6になる時まで培養した後、遠心分離(4℃、4000rpm)で菌体を回収した。回収した菌体は氷で冷却した0.1M塩化カルシウム溶液で4回洗浄してコンピテントセルを製造した。ヒートショック形質転換に使用したプラスミドDNA(plasmid DNA)(形質転換過程で使用されたサブクローニング(subcloning)用プラスミドを通称する)は100乃至500ngを準備した。プラスミドDNAとコンピテントセル100μLを混合して氷で30分間反応した後、42℃で30秒間ヒートショックを与え、直ちに氷に入れて2分間冷ました後、LBブロス(LB broth)1mLを入れた。37℃で1時間培養した後、抗生剤を含むLBプレート(LB plate)に塗抹し、37℃で一晩(overnight)の間に定置培養して形質転換体を得た。
【0081】
D7pxの遺伝子は合成依頼して確保した鋳型から増幅した。プライマー5’-CGCTTGAGCAGACATCACCATGGCCGTTGCGGACTGGG-3’(配列番号11)と5’-TATGAATTCTCATTAGAGTCTTGGCCGAG-3’(配列番号12)を利用してD7pxを増幅した。プロモーターであるPEP3(配列番号13)はプライマー5’-GCAACTAGTGCGGCCGCCCTTGTATCTCTACACACAGGC-3’(配列番号14)と5’-GGTGATGTCTGCTCAAGCG-3’(配列番号15)を利用してpB-HCXEP3(配列番号16)から増幅した。
【0082】
増幅したD7px遺伝子とプロモーターPEP3は互いに重複する配列が存在するため、重複PCR(sewing PCR)を行って連結した。増幅したD7px断片とPEP3断片を鋳型としてプライマー配列番号12と配列番号14を利用してPCRを行い、PEP3とD7pxが連結されたPEP3-D7px断片を得た。ターミネーター(terminator)配列を有するようにするためにターミネーターベクターであるpB-TtrpC(配列番号17)を使用した。PEP3-D7px断片をSpeIとHindIIIに切断してpB-TtrpCの同一部位に挿入してpB-D7pxcast(配列番号18)を完成した。
【0083】
pB-D7pxcastからプライマーT3(配列番号19)とT7(配列番号20)を利用してD7px遺伝子カセットを増幅した後、pB-HF(配列番号21)のPmeI制限部位に平滑末端結合(blunt-end ligation)で挿入した。完成されたプラスミドはpB-HFD7px(配列番号22)と命名した。完成された発現ベクターの構成は
図1に示した。前記プラスミドはハイグロマイシン(hygromycin)抗生剤マーカーを有しており、flp-FRTシステムでマーカーを除去することができるように構成されている。
【0084】
1.3.D7px遺伝子導入のための形質転換
実施例1.1で準備された親菌株E3-E8から抗生剤マーカーを除去するために2%キシロースを含有する抗生剤LB平板培地に継代培養して10日後に出たコロニーから総DNAを抽出してPCRを通じてマーカー遺伝子カセットの欠損有無を確認した。以上の段階を繰り返して抗生剤マーカー遺伝子カセットが全て損失された菌株を選別した後、前記実施例1.2で準備されたpB-HFD7pxベクターを形質転換して導入した後、獲得した形質転換体を試験管培養を通じてDAOC生産性を比較し、発酵試験のための高生産性菌株を選別した。
【0085】
アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)への形質転換のためのpB-HFD7pxベクターの準備は、QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen、オランダ)のマニュアルに従った。
【0086】
アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)への形質転換はPEG(ポリエチレングリコール:polyethylene glycol)法を使用した。菌体確保のためにカビ菌株(E3-E8)をLB plateに塗抹した後、28℃で7日培養した。確保した菌糸体は火炎滅菌したメスで一辺の大きさが5~7mmである正四角形で切断してTB broth(12g/Lトリプトーン、24g/L酵母抽出物、9.4g/L K2HPO4、2.2g/LKH2PO4、4g/Lグリセロール)に4~6個を接種し、接種した培地は28℃で3日培養した。菌体回収のために培養液を遠心分離(4℃、4000rpm)した後、上澄液を捨てて0.6M MgSO4で1回洗浄した。
【0087】
プロトプラスト(Protoplast)の作製のために菌体重量を測定し、2%の細胞溶解酵素(lysing enzyme)(シグマ-アルドリッチ、L1412、米国)が含まれている総量(total volume)が菌体重量の4倍になるようにした。30℃、100rpmで3時間反応させた後、同量の分離バッファ(separation buffer)A(0.6M ソルビトール(sorbitol)、100mM Tris-Cl、pH7.0)を塗り(overlay)、遠心分離(4℃、1、800g)でプロトプラストを分離した。新たな遠心分離管にプロトプラスト層を移した後、同量の分離バッファ(separation buffer)B(1.2M ソルビトール、100mM Tris-Cl、pH7.5)を混合した後、遠心分離(4℃、1、800g)でプロトプラストを回収した。上澄液を捨ててプロトプラストをMSC溶液(1M ソルビトール、10mM MOPS、pH6.5、10mM CaCl2)で1回洗浄した後、顕微鏡を通じて計数した1×107個のプロトプラストを確保した。
【0088】
形質転換のために1×107個のプロトプラストと1~5μg DNA(pB-HFD7px)、60%(w/v)PEG溶液(MSC溶液にポリエチレングリコール(polyethylene glycol)6000を60%(w/v)濃度に溶かして作る)50μLを混合して氷で20分間反応した。60% PEG溶液500μLを追加的に混合した後、常温で20分間反応し、形質転換体の選別に適切な抗生剤を含むLB-スクロースプレート(LB-sucrose plate)(0.8M スクロース(sucrose)、2%(w/v)寒天(agar))に塗抹した。培地は28℃で14日間培養して、pB-HFD7pxが成功的に導入された形質転換体を確保した。本実施例に例として使用されたベクターpB-HFD7pxは細胞内に導入時にプラスミド形態で存在できないようにデザインされているため、前記確保された形質転換体は大部分D7px遺伝子が染色体内に挿入(integration)されている。しかし、これは本発明を実施するための一例に過ぎず、導入された遺伝子がプラスミド形態で存在することが排除されず、如何なる形態で存在しても関係ない。
【0089】
胞子を確保するために、前記確保された形質転換体を火炎滅菌したメスで取った後、クランプでつかんで1.5mL e-tubeに入れ、0.85% NaCl 200μLを添加した後、乳棒を利用して菌体を破砕した。菌体は胞子培地(デンプン24g/L、グリシン1.2g/L、ポリペプトン4g/L、酵母抽出物0.3g/L、カゼイン8g/L、硫酸アンモニウム6g/L、リン酸二カリウム1.2g/L、硫酸マグネシウム0.6g/L、寒天20g/L、pH7.0)に塗抹して28℃で14日間培養した。胞子は白金耳で掻いて20%(w/v)グリセロール(glycerol)に懸濁した後、-80℃冷凍庫に保管した。
【0090】
このように得られたD7px遺伝子が導入されたアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株を2022年6月2日付で大韓民国全羅北道井邑市に所在する韓国生命工学研究院生物資源センターに寄託して受託番号KCTC 14989BPが付与された。
【0091】
実施例2.DAOC高生産菌株の選別
前記実施例1.3で準備された形質転換体のDAOC(Deacetoxy cephalosporin C)およびDAC(Deacetyl cephalosporin C)の生産、および7-ADCA転換量を確認した。
【0092】
前記確保された形質転換体の中でDAOC生産能が高く、DAC生産量が少ない菌株の選別のために、砂糖15g/L、soytone15g/L、硫酸アンモニウム5g/L、メチオニン10g/L、炭酸カルシウム10g/L、酵母抽出物10g/L、葡萄糖5g/L、硫酸マグネシウム2g/L、オレイン酸メチル(methyl oleate)50g/Lを含む培地で試験管培養を行った。前記実施例1.3で回収した胞子(1x107個)を試験管に接種して28℃、200rpmで10日間培養し、培養液0.5mLを採取した。DAOCとDAC生産量の分析のために上澄液25μLと3次蒸溜水975μLを混合して0.2μmサイズのフィルターでろ過(filtration)し、HPLCで分析した。
【0093】
HPLC分析条件は次のとおりである。使用したHPLC機器はShimadzu LC10Avpであり、ZORBAX Eclipse Plus C18(Analytical 4.6mm×250mm、5-Micron)カラム(column)で分析した。移動相(Mobile phase)は20mM 酢酸アンモニウム(ammonium acetate):アセトニトリル(acetonitrile)(95:5)、pH7.0、流速は0.8mL/分、カラム(column)温度は40℃、UV検出器220nmを使用して分析した。前記HPLC分析条件は、実施例2と実施例3でDAOC、DAC、7-ADCAを分析するために共通的に使用した。
【0094】
また、DAC area値をDAOC area値で割ってDAOCとDACの比率(DAC/DAOC、%)を計算した。DAC/DAOC値が小さいほど目的産物であるDAOCの生産量は高く、DAOC生産過程の不純物であるDACの生産量は低いということを示す。
【0095】
また、前記培養液にCPCアシラーゼを処理して酵素反応によるDAOCから7-ADCAへの転換を行った。前記CPCアシラーゼは韓国公開特許10-2014-0094150号(本明細書に参照として含まれる)に開示された変異CPCアシラーゼ(PM2 mutant;配列番号23によりコードされる)を利用した。より具体的に、培養試験管で、前記HPLC分析のために準備されたDAOC培養液に14%(v/v)アンモニア水を添加してpH8.0に調節した後、液状のCPCアシラーゼを最終30U/mL濃度に投入し、15℃および200rpm条件で1時間反応させた。その後、7-ADCA転換量(g/L)をHPLCで分析した。より具体的に、前記反応液を遠心分離して上澄液25μLを取った後、3次蒸溜水975μLと混合して40倍希釈した。希釈した発酵液は0.2μmフィルターでろ過した後、HPLC分析した。HPLC分析条件は前記で記載された内容に従った。
【0096】
前記で得られたDAOC生産量(g/L)とDAOC生産過程の不純物であるDACの比率(DAC/DAOC、%)を
図2および表1に示した。また前記得られた7-ADCA転換量(g/L)を表1に示した。
【0097】
【0098】
図2および表1でE3-E8はD7pxが導入されていない親菌株(対照群)であり、ED-1、ED-2、ED-3、ED-4、およびED-5は全てE3-E8にD7pxが導入された形質転換菌株である。
【0099】
図2および表1に示すように、試験した5種の形質転換菌株共に目的産物であるDAOCの生産性が対照群であるE3-E8より9~17%増加し、DAC/DAOC(%)も対照群であるE3-E8(約10.5%)より顕著に減った2.55~3.54%水準であることを確認した。また、表1に示すように、試験した5種の形質転換菌株共にDAOCから7-ADCA転換量が対照群であるE3-E8より約6~17%増加した。
【0100】
実施例3.DAOC生産能、DAC/DAOC比率、および7-ADCA転換量の確認
前記実施例でDAOC生産量が最も高く、副産物であるDAC生産量は最も低いと確認されたED-4菌株の培養期間に応じたDAOC生産能およびDAC/DAOC比率を確認した。また、最大培養期間の7-ADCA転換量を測定した。対照群としてE3-E8菌株を使用した。
【0101】
DAOC生産は、1次種培養、2次種培養、本培養の段階で進行した。1次種培養は、コロニーの大きさにより4乃至6コロニーを1次種培養培地(大豆粉28.5g/L、とうもろこし浸漬液25mL/L、スクロース(sucrose)35g/L、葡萄糖5g/L、炭酸カルシウム5g/L、消泡剤0.8mL/L)に接種後、30℃、200rpmで63時間培養した。2次種培養は、1次種培養液を2次種培養培地(1次種培養培地と同一であるが、大豆油を5mL/L追加する)が盛られた発酵槽に全て接種し、30℃、35%DO、400rpm、空気1.0vvmの条件を始まりとして菌体成長により6%葡萄糖を供給(feeding)し、攪拌速度を段階的に上げながら68時間培養した。本培養は、2次種培養液200mLを本培養培地(落花生粉23g/L、とうもろこし浸漬液50mL/L、メチオニン1.5g/L、デキストリン70g/L、コーンミール35g/L、硫酸カルシウム13g/L、大豆油60mL/L、硫酸アンモニウム13g/L、果糖シロップ9g/L、炭酸カルシウム10g/L、消泡剤0.5mL/L)が盛られた発酵槽に接種し、28℃、35%DO、400rpm、空気1.0vvmの条件を始まりとして培養し、pHはアンモニア水を利用して5.4乃至5.7に調節し、菌体成長により攪拌速度を段階的に上げながら培養した。培養2日後に培養温度を28℃から25℃に下げた後、菌体成長により5%乃至10%の大豆油を段階的に供給しながら7日乃至8日目に発酵を完了した。
【0102】
発酵培養液のDAOCおよびDAC生産量の分析のために培養液1mLを取って100倍希釈した後、14,000rpmで10分間遠心分離後、上澄液を0.2umシリンジフィルターでろ過してHPLC分析に使用した。HPLC分析条件は、前記実施例2に記載された内容に従った。DAOCとDACの比率(DAC/DAOC、%)はDAC area値をDAOC area値で割って計算した。
【0103】
前記得られたDAOC生産量(g/L)を
図3および表2に示し、DAC/DAOC比率(%)を
図4および表3に示した。
【0104】
【0105】
【0106】
図3、
図4、表2および表3に示すように、D7px遺伝子が導入されたED-4菌株は、対照群であるE8-E3菌株に比べて、DAOC生産量が高く、DAC/DAOC比率は顕著に低いことが明らかになった。
【0107】
また、前記培養液にCPCアシラーゼを処理して酵素反応によるDAOCから7-ADCAへの転換を行った。前記CPCアシラーゼは、韓国公開特許10-2014-0094150号(本明細書に参照として含まれる)に開示された変異CPCアシラーゼ(PM2 mutant;配列番号23によりコードされる)を利用した。より具体的に、最大培養時間の発酵培養液が盛られた発酵槽に14%(v/v)アンモニア水を添加してpH8.0に調節した後、液状のCPCアシラーゼを最終30U/mL濃度に投入し、温度15℃条件で800rpmで攪拌しながら1時間反応させた。その後、7-ADCA転換量(g/L)をHPLCで分析した。より具体的に、発酵培養液の7-ADCA転換量分析のために反応液1mLを取って100倍希釈した後、14,000rpmで10分間遠心分離後、上澄液を0.2umシリンジフィルターでろ過してHPLC分析に使用した。HPLC分析条件は、前記実施例2に記載された内容に従った。
【0108】
前記得られた結果に基づいて、最終のDAOC生産量、DAC/DAOC比率、および7-ADCA転換量(g/L)を下記の表4に記載した。
【0109】
【0110】
表4に示すように、D7px遺伝子が導入されたED-4菌株は、対照群であるE8-E3菌株に比べて、DAOC生産量が高く、DAC/DAOC比率は顕著に低いだけでなく、7-ADCA転換量も高いことが明らかになった。
【0111】
前記D7px遺伝子が導入されたアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)変異菌株ED-4を2022年6月2日付で大韓民国全羅北道井邑市に所在する韓国生命工学研究院生物資源センターに寄託して受託番号KCTC 14989BPが付与された。
【0112】
以上の説明から、本出願が属する技術分野における当業者は、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解できるだろう。これに関連して、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。本出願の範囲は、前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導き出される全ての変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【0113】
[受託番号]
寄託機関名:韓国生命工学研究院生物資源センター
受託番号:KCTC14989BP
受託日付:20220602
【配列表】
【外国語明細書】