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特開2024-63777バイオ技術的に改質されたゴム粒子を含有するゴム組成物
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  • 特開-バイオ技術的に改質されたゴム粒子を含有するゴム組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063777
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】バイオ技術的に改質されたゴム粒子を含有するゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20240502BHJP
   C08L 17/00 20060101ALI20240502BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240502BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240502BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20240502BHJP
   C08C 19/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L17/00
C08K3/04
C08K3/36
C08K3/06
C08C19/00
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023183480
(22)【出願日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】10 2022 128 331.3
(32)【優先日】2022-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】516171768
【氏名又は名称】ビブラコースティック エスイー
【住所又は居所原語表記】Europaplatz 4,64293 Darmstadt,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー デイケ
(72)【発明者】
【氏名】メラニー グラーフェン
(72)【発明者】
【氏名】マーセル ディール
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002AC112
4J002AC132
4J002BB151
4J002DA036
4J002DA047
4J002DJ016
4J002EV278
4J002FD016
4J002FD147
4J002FD158
4J002GM00
4J002GN00
4J100BA11H
4J100BA13H
4J100HA55
4J100HA59
4J100HA61
4J100HG31
4J100JA28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】加硫ゴムのバイオ技術による再処理と、高品質の改質ゴム粒子の新しい組成物への使用、特にエンジンマウントおよびブッシュへの使用を提供する。
【解決手段】本発明は、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、合成ポリイソプレンまたはエチレン-プロピレン-ジエンゴム、または2以上のゴムの混合物、充填剤、架橋システム、および再生ゴム粒子を含むゴム組成物である。再生ゴム粒子はバイオ技術により改質されている。改質されたゴム粒子の添加により、ゴム組成物の物理的特性が改善され、エンジンマウントやブッシュの耐用年数が向上する。加硫ゴムのバイオ技術による再処理と、高品質の改質ゴム粒子の新しい組成物への使用により、廃材の量と排出されるCOの量が、リサイクル材料の使用により大幅に削減され、製品中のリサイクル含有量が増加する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、合成ポリイソプレンもしくはエチレン-プロピレン-ジエンゴム、または2種以上のゴムの混合物から選択されるゴム、
- 少なくとも1種の充填剤、
- 少なくとも1種の架橋システム、および、
- 再生ゴム粒子
を含み、
該再生ゴム粒子が、バイオ技術的に改質されたゴム混合物からなり、官能基で官能基化された表面を有するゴム組成物。
【請求項2】
バイオ技術的に改質された前記ゴム粒子が、加硫イソプレンゴムをベースとする酵素処理されたゴム粒子である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
15~75phr、好ましくは少なくとも50phrのバイオ技術的に改質されたゴム粒子を含む請求項1または請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム粒子が、700μm未満、好ましくは500μm未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の平均粒径を有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
改質された前記ゴム粒子が、官能基としてカルボニル基、好ましくは末端アルデヒド基および/または末端ケトン基を粒子表面に有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
ゴムとして、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記充填剤が、カーボンブラックまたはシリカである請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記架橋システムが、硫黄であり、好ましくは、硫黄が0.1phr~5phrの量で存在する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
さらに、以下の成分:可塑剤、樹脂、酸化防止剤および促進剤のうちの1つ以上を含む請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項10】
100phrの天然ゴムおよび/または合成ポリイソプレン、
15phr~75phrの改質されたゴム粒子、
0.1phr~5phrの硫黄、
5phr~200phrのカーボンブラック、好ましくは10phr~150phrのカーボンブラック、および、
1phr~50phrの他の添加剤
を含む請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項11】
改質された前記ゴム粒子が、
a)それぞれカーボンブラック、シリカ、または他の充填剤を含む、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物、または天然ゴム、または合成ポリイソプレンから、ゴム廃材を提供するステップ、
b)前記ゴム廃材を粉砕して、平均粒径700μm未満、好ましくは500μm未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の粒子にするステップ、
c)抽出ステップにおいて、前記ゴム粒子を有機溶媒で前処理するステップ、および、
d)Lcp、RoxA、RoxBおよびそれらの混合物から選択される酵素を用いて前記ゴム粒子を処理するステップ
を含む方法により調製される請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項12】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の改質されたゴム粒子を調製するための方法であって、
e)それぞれカーボンブラック、シリカ、または他の充填剤を含む、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物、または天然ゴム、または合成ポリイソプレンからゴム廃材を提供するステップ、
f)前記ゴム廃材を粉砕して、平均粒径700μm未満、好ましくは500μm 未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の粒子にするステップ、
g)抽出ステップにおいて、前記ゴム粒子を有機溶媒で前処理するステップ、および、
h)Lcp、RoxA、RoxBおよびそれらの混合物から選択される酵素を用いて前記ゴム粒子を処理するステップ
を含む方法。
【請求項13】
技術的なゴム製品、好ましくはエンジンマウントおよびブッシュのための、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のゴム組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、請求項1の一般的概念によるゴム組成物および請求項11による方法である。
【背景技術】
【0002】
毎年、ゴム加工産業は、処理により大量の加硫ゴムをスクラップとして発生させるが、これらは廃材として取り扱われるか、粗悪な製品に加工される。ゴムは発熱量が高い(3.3×104kJ/kg)ため、特に、タイヤについては、エネルギ回収、蒸気発生、電気エネルギ、パルプ、紙、石灰、鉄鋼の代替燃料として石炭とともに管理焼却することが基本的な処分方法である。特に、セメント窯が1200℃以上の高温で運転されるため、すべての成分の完全燃焼が保証されるセメント産業においては、タイヤが丸ごと使用されることさえある。廃材の燃焼は、大量の二酸化炭素(CO)の放出につながり、燃焼された量はリサイクル可能な材料サイクルから除かれる。すでに多くのタイヤメーカが、2030年以降、タイヤにリサイクル素材や生物学的に生産された素材を一定の割合で使用し、その割合を着実に増やしていくことを表明している。現在のところ、これらの努力は特にプラスチックに関連しているが、ゴムなどの他の素材も排除されているわけではなく、将来的には循環型価値連鎖に重要な貢献をする可能性がある。
【0003】
近年、ゴム産業においても、素材をリサイクルする方法の模索が加速している。そのひとつが、廃ゴムの熱分解であり、そこから得られる「回収カーボンブラック」、熱分解油、回収鋼材の利用である。加硫ゴム廃材を再利用するためのもうひとつの処理方法は、材料から硫黄を抽出することを目的とした脱硫である。これらの処理において、硫黄架橋は、ポリマー鎖内の結合を切断することなく切断される。この目的には様々な方法が用いられる。押出機における熱機械的処理に加えて、添加剤、超音波または超臨界COも、脱硫を改善し、ポリマー鎖の切断を減少させる補助として使用される。しかし、150℃を超え300℃までの超高温を使用することにより、硫黄架橋だけでなくポリマー鎖も分断され、特性が低下する。したがって、標準的な脱硫処理は、リサイクルではなくダウンサイクルである。
【0004】
エラストマ、充填剤、架橋システム、およびゴム粒状物をベースとするゴム組成物が記載されている(例えば、特許文献1参照。)。ゴム粒状物は、規定された粒度分布を有する粒子に粉砕することによるゴム材料のリサイクルによって得られる。
【0005】
このような用途に使用される使用済みタイヤまたはゴム廃材からのタイヤ粒状物は、改質されておらず、往々にして新しいゴム組成物の特性を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0382564A1号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明の主な特徴は、請求項1の特徴部分に記載されている。さらなる実施形態は、下位請求項または以下に記載されるものの主題である。
【0008】
本発明に係るゴム組成物は、
- 天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、合成ポリイソプレン(IR)もしくはエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、または2種以上のゴムの混合物から選択されるゴム、
- 少なくとも1種の充填剤、
- 少なくとも1種の架橋システム、および、
- 再生ゴム粒子
を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】表面にカルボニル基とポリイソプレン残基とを有する改質ゴム粒子の一例を示す図である。
図2】実施例2により調製されたゴム組成物からなるシートおよびエラストマブッシュを示す縦断面図である。
図3】酵素処理後のオリゴイソプレノイドの割合を、粉砕ゴムの平均粒子径の関数として示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、
- 天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、合成ポリイソプレン(IR)もしくはエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、または2種以上のゴムの混合物から選択されるゴム、
- 少なくとも1種の充填剤、
- 少なくとも1種の架橋システム、および、
- 再生ゴム粒子
を含んでいる。
【0011】
再生ゴム粒子は、天然ゴム、合成ポリイソプレンまたはそれらの混合物から選択された、粉砕され、バイオ技術的に改質されたポリイソプレンからなる。再生ゴム粒子は、官能基で官能基化された表面を有する。
【0012】
ゴムとは、ゴムに加えて、他の成分を含む加硫された天然または合成ゴムを意味すると理解される。本実施形態に係るゴム組成物は、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、合成ポリイソプレン(IR)またはエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、または2種以上のゴムの混合物を含む。好ましくは、ゴム組成物は、ゴムとして、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物を含む。
【0013】
好ましくは、改質されたゴム粒子は、加硫カーボンブラック含有イソプレンゴムをベースとする酵素処理されたゴム粒子である。
【0014】
ゴム組成物は、好ましくは15~75phr、好ましくは少なくとも50phrの再生ゴム粒子を含む。ゴム組成物は、特に好ましくは50phr~75phrの再生ゴム粒子を含有する。
【0015】
単位「phr」は、ゴム100重量部あたりの重量部を意味する。これは、原料ゴム100部当たりX部のゴム粒子または他の成分が追加的に含まれることを意味する。ゴム粒子中のゴムの割合は、生ゴムとはみなされない。phrデータは常に加硫前の組成を指す。
【0016】
改質されたゴム粒子は、好ましくは700μm未満、好ましくは500μm未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の平均粒径を有する。
【0017】
改質されたゴム粒子は、官能基で官能基化された表面を有する。好ましくは、改質されたゴム粒子は、官能基としてカルボニル基、好ましくは末端アルデヒド基および/または末端ケトン基を粒子表面に有する。アルデヒド基およびケトン基は、ポリイソプレンの酵素分解中に形成されるため、部分的に分解されたポリイソプレン上のカルボニル基である。
【0018】
官能基を有する官能基化されたゴム粒子に加えて、官能基化されたオリゴマーもゴム粉の酵素処理中に形成される。これらのオリゴマーの数は、出発原料の粒子径に強く依存し、粒子径が小さくなるにつれて増加する。図3は、酵素処理後のオリゴイソプレノイドの割合を、粉砕ゴムの平均粒子径の関数として示したものである。粒子が小さく、表面積が大きいと、官能基化がより強力に行われ、オリゴイソプレノイドの数が多くなる。これらの官能基化されたオリゴマーは、その特殊な特性により、ゴム組成物に配合することにより様々な機能を発揮することができる。モル質量が小さいため、加工助剤や可塑剤として機能し、その機能性のため、オイルのように容易に抽出できない。
【0019】
例えば、液状ブタジエンゴムは、TDAE(処理蒸留芳香族抽出物)オイルよりも移行性が低く、機能性により充填剤の分散性が良いという利点を示した。
【0020】
さらに、官能基化されたオリゴマーは、カルボニル官能基とイソプレン構造との組み合わせにより、ゴム鎖と改質粒子との中間体として働くことができる。
【0021】
ゴムに加えて、ゴム組成物は充填剤、架橋剤および他の加硫助剤を含む。好適な充填剤は、カーボンブラック、シリカまたはそれらの混合物などの補強充填剤である。充填剤は、ゴム製品の暗色化を達成する場合には、特にカーボンブラックである。充填剤は5~200phr、好ましくは10~150phrの量で存在する。好適なカーボンブラックは、N115、N220、N330、N550、N660、N772、N990などのASTM分類カーボンブラックであるが、他のゴム製品カーボンブラックも可能である。
混合物は、シリカまたは異なるシリカの混合物を含んでもよい。
【0022】
架橋システムは、好ましくは硫黄または硫黄供与体および一次加硫促進剤をベースとする。さらに、酸化亜鉛やステアリン酸のような二次加硫促進剤や活性剤も使用することができる。好ましくは、硫黄は0.1phr~5phr、より好ましくは0.5~3phrの量で存在する。
【0023】
一実施形態においては、ゴム組成物は、可塑剤、樹脂、酸化防止剤およびオゾン保護ワックスから選択される1以上の添加剤をさらに含む。
【0024】
好ましい実施形態において、本発明によるゴム組成物は、
100phrの天然ゴムおよび/または合成ポリイソプレン、
15phr~75phr、好ましくは50~75phrの改質されたゴム粒子、
0.1phr~5phrの硫黄、
5phr~200phrのカーボンブラック、好ましくは10phr~150phrのカーボンブラック、
1phr~50phrの添加剤、好ましくは1phr~20phrの添加剤、例えば可塑剤、
酸化防止剤、オゾン保護ワックス、樹脂および促進剤を含む。
【0025】
改質されたゴム粒子、すなわち酵素処理されたゴム粒子を製造するために、カーボンブラック、シリカまたは他の充填剤を含む、天然ゴムもしくは合成ポリイソプレンの混合物、または天然ゴムもしくはポリイソプレンと他のゴム、好ましくはBRもしくはSBRとの混合物からのゴム廃材、好ましくは使用済みタイヤからのゴム廃材または他のゴム製品からのゴム廃材を粉砕して粒子にする。粉砕によって得られるゴム粒子は、700μ未満、好ましくは、500μm未満、好ましくは、400μm未満、好ましくは、250μm未満の平均粒径を有する。ゴム粒子は、粉砕後、まず前処理される。前処理のために、ゴム粒子は、有機溶媒、好ましくは酢酸エチル、アセトン、クロロホルム、n-ペンタン、シクロヘキサン、ヘキサン、ジクロロメタン、トルエンまたはそれらの混合物、特に好ましくはアセトン、シクロヘキサン、クロロホルムまたはアセトンとシクロヘキサンとの混合物を用いて抽出される。Lcp(ラテックスクリアリングタンパク質)、RoxA(ゴム酸分解酵素)、RoxB(ゴム酸分解酵素)およびそれらの混合物から選択される酵素、好ましくはLcp1VH2を、前処理したゴム粒子に添加して、ゴム組成物をオリゴイソプレンに分解し、表面を改質する。
LCP(ラテックスクリアリングタンパク質)、RoxAおよびRoxBは、シス型二重結合への酸素分子の付加を触媒するゴム酸分解酵素であり、その結果、ゴム鎖上にアルデヒド基およびケトン基が形成される酸化開裂が生じる。ゴム粒子を使用することにより、酸化開裂が表面で起こり、そこに官能基が生成する。

好ましくは、LcpK30、Lcp1VH2、RoxAXSpまたはRoxBXSp、特に好ましくは、Lcp1VH2が使用される。
【0026】
酵素は、例えば、E.coliC41における流加発酵プロセスにより生産される。
【0027】
ゴム粒子の処理は、インビトロで、例えば、pH7のTRIS/HCl緩衝液を用いてインキュベータシェーカ内で行うことができる。酵素の添加は、1回で行うこともできるし、複数ステップ、例えば、数日間、好ましくは5日間にわたって毎日行うこともできる。
【0028】
したがって、改質されたゴム粒子は、好ましくは以下のステップで調製される:
- それぞれカーボンブラック、シリカ、または他の充填剤を含む、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物から、または天然ゴムから、または合成ポリイソプレンから、ゴム廃材を提供するステップ、
- ゴム廃材を粉砕して、平均粒径700μm未満、好ましくは500μm未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の粒子にするステップ、
- 抽出ステップにおいて、ゴム粒子を有機溶媒で前処理するステップ、および、
- Lcp、RoxA、RoxBおよびそれらの混合物から選択される酵素でゴム粒子を処理するステップ。
【0029】
この改質されたゴム粒子の製造方法は、硫黄架橋の切断を回避し、ゴム鎖の選択的切断とゴム粒子表面のカルボニル基による官能基化とを達成する。図1は、表面にカルボニル基とポリイソプレン残基とを有する改質ゴム粒子の例を示している。切断後の鎖の柔軟性の増大と極性官能基化により、得られた材料は活性充填剤として新しいゴム組成物に組み込むことができる。得られた材料の特性は、元の材料に非常に類似しているが、脱硫された材料は特性の著しい劣化を招く。特に、脱硫を成功させるために必要とされる高温は、材料に不可逆的な損傷を与える。
【0030】
したがって、ゴム粒子は、再生ゴムの硫黄ネットワークを保持したまま、酵素を用いて改質される。得られたゴム粒子は表面が官能基化され、ゴムマトリクスとの結合が改善されている。その結果、特性を維持または向上させながら、新しいゴム組成物に15phrを超える官能基化されたゴム粒子を添加することができるのに対し、非改質粒子では、最大10phr未満しか添加できない。
【0031】
改質ゴム粒子の添加は、ゴム組成物の物理的特性を改善し、エンジンマウントまたはブッシュの寿命を向上させる。表面を官能基化した酵素処理されたゴム粒子を使用すると、ゴムマトリクスとの結合がより良好になる。特に、ゴム製造時に直接発生する高品質のゴム廃材は、循環経済に導入することができ、もはや焼却する必要はない。
【0032】
本発明に係るゴム組成物を、技術用ゴム製品、好ましくはエンジンマウントおよびブッシュのために使用することは、本発明のさらなる目的である。
【0033】
バイオ技術的に改質されたゴム粒子を含む本発明に係るゴム組成物は、自動車分野における部品に使用することができる。新たに開発された材料は、エンジンマウントまたはブッシュに使用される。しかし、天然ゴム組成物の他の典型的な用途も考えられる。
【0034】
加硫ゴムをバイオ技術で再処理し、高品質な改質されたゴム粒子を新しい組成物に使用することにより、廃材の量および排出されるCOの量が、リサイクル材料の使用によって大幅に削減され、製品に占めるリサイクル比率が高まる。その量の多さから、これまで最も頻繁に調査されてきたタイヤを例にとると、セメント産業における焼却と比べ、リサイクルはタイヤ1トンあたり2.5トンのCO削減につながることがわかる。したがって、加硫ゴム組成物についても同様のオーダを想定することができる。
【0035】
改質されたゴム粒子は、50phr(ゴム100分の1)の高い割合でリサイクル原料として混合することができる。
【実施例0036】
(実施例1)改質された粒子の調製
改質された粒子の調製のために、ゴム顆粒をLcp1VH2および緩衝液(TRIS/HCl緩衝液(0.2M、pH7))とともにガラス容器中で30℃のインキュベータシェーカを用いて5日間処理した。この目的のために、ゴム顆粒1gあたり500mgの酵素を使用し、容器を90rpmで振とうした。
【0037】
(実施例2)ゴム組成物の調製
表1に示す組成を有するゴム組成物を調製した。
【0038】
【表1】
表1 加硫前のゴム組成物の配合、
6PPD=N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、
CBS=N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドをベースとする促進剤;CBSと硫黄とは一緒に架橋システムを形成する。
【0039】
上記の成分を内部ミキサで2段階に混合した。第1段階では、架橋システムを除くすべての成分が、110℃~190℃の最高温度に達するまで混合された。第2段階では、架橋システムが添加され、110℃以下の温度で最大5分間混合された。
得られた混合物を150℃で15分間硬化させ、図2に示すような2mmシートとエラストマブッシュを得た。
【0040】
図2は、試験装置6,7に配置された外スリーブ1、エラストマ本体2、内スリーブ3を備えたエラストマブッシュの一例を示している。ここで、FX,yは試験装置6に作用する力を示す。さらに、エラストマブッシュはボルト5によって試験装置の固定部7に固定されており、特にブッシュのコア4はボルト5によって試験装置の固定部7に固定されていることがわかる。
【0041】
(材料特性の測定)
実施例2において調製したゴム組成物を、DIN53504に従って機械的特性について試験した。さらに、試料成分として得られた組成物からベアリングブッシュを製造し、図2に示すように、23℃での耐久性試験において2つの異なる振幅でラジアル繰返し荷重をかけた。測定された特性と、比較組成物および50phr改質ゴム粒子を添加した組成物の耐久性試験結果とを表2に示す。
【0042】
エラストマ粒子を含まない比較組成物V1と比較して、実施例によるゴム組成物M1の特性は、この組成物で製造したエラストマブッシュの耐用年数と同様に、著しく改善された。
【0043】
【表2】
表2 加硫組成物の機械的特性および耐久性試験結果
【0044】
このように、官能基化されたエラストマ廃材を添加することにより、同じ特性を有する組成物が得られるだけでなく、これらの特性を著しく向上させることさえできることが示された。
【0045】
本発明は上述した実施形態のいずれかに限定されるものではなく、様々な方法で変更することができる。
【0046】
特許請求の範囲、明細書および図面から浮かび上がる、構造的詳細、空間的配置および処理ステップを含むすべての特徴および利点は、個々に、および多種多様な組み合わせの両方において、本発明に不可欠であり得る。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、合成ポリイソプレンもしくはエチレン-プロピレン-ジエンゴム、または2種以上のゴムの混合物から選択されるゴム、
- 少なくとも1種の充填剤、
- 少なくとも1種の架橋システム、および、
- 再生ゴム粒子
を含み、
該再生ゴム粒子が、バイオ技術的に改質されたゴム混合物からなり、官能基で官能基化された表面を有するゴム組成物。
【請求項2】
バイオ技術的に改質された前記ゴム粒子が、加硫イソプレンゴムをベースとする酵素処理されたゴム粒子である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
15~75phr、好ましくは少なくとも50phrのバイオ技術的に改質されたゴム粒子を含む請求項1または請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム粒子が、700μm未満、好ましくは500μm未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の平均粒径を有する請求項1または請求項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
改質された前記ゴム粒子が、官能基としてカルボニル基、好ましくは末端アルデヒド基および/または末端ケトン基を粒子表面に有する請求項1または請求項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
ゴムとして、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物を含む請求項1または請求項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記充填剤が、カーボンブラックまたはシリカである請求項1または請求項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記架橋システムが、硫黄であり、好ましくは、硫黄が0.1phr~5phrの量で存在する請求項1または請求項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
さらに、以下の成分:可塑剤、樹脂、酸化防止剤および促進剤のうちの1つ以上を含む請求項1または請求項に記載のゴム組成物。
【請求項10】
100phrの天然ゴムおよび/または合成ポリイソプレン、
15phr~75phrの改質されたゴム粒子、
0.1phr~5phrの硫黄、
5phr~200phrのカーボンブラック、好ましくは10phr~150phrのカーボンブラック、および、
1phr~50phrの他の添加剤
を含む請求項1または請求項に記載のゴム組成物。
【請求項11】
改質された前記ゴム粒子が、
a)それぞれカーボンブラック、シリカ、または他の充填剤を含む、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物、または天然ゴム、または合成ポリイソプレンから、ゴム廃材を提供するステップ、
b)前記ゴム廃材を粉砕して、平均粒径700μm未満、好ましくは500μm未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の粒子にするステップ、
c)抽出ステップにおいて、前記ゴム粒子を有機溶媒で前処理するステップ、および、
d)Lcp、RoxA、RoxBおよびそれらの混合物から選択される酵素を用いて前記ゴム粒子を処理するステップ
を含む方法により調製される請求項1または請求項に記載のゴム組成物。
【請求項12】
請求項1または請求項に記載の改質されたゴム粒子を調製するための方法であって、
e)それぞれカーボンブラック、シリカ、または他の充填剤を含む、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物、または天然ゴム、または合成ポリイソプレンからゴム廃材を提供するステップ、
f)前記ゴム廃材を粉砕して、平均粒径700μm未満、好ましくは500μm 未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の粒子にするステップ、
g)抽出ステップにおいて、前記ゴム粒子を有機溶媒で前処理するステップ、および、
h)Lcp、RoxA、RoxBおよびそれらの混合物から選択される酵素を用いて前記ゴム粒子を処理するステップ
を含む方法。
【請求項13】
請求項3に記載の改質されたゴム粒子を調製するための方法であって、
e)それぞれカーボンブラック、シリカ、または他の充填剤を含む、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物、または天然ゴム、または合成ポリイソプレンからゴム廃材を提供するステップ、
f)前記ゴム廃材を粉砕して、平均粒径700μm未満、好ましくは500μm 未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の粒子にするステップ、
g)抽出ステップにおいて、前記ゴム粒子を有機溶媒で前処理するステップ、および、
h)Lcp、RoxA、RoxBおよびそれらの混合物から選択される酵素を用いて前記ゴム粒子を処理するステップ
を含む方法。
【請求項14】
請求項4に記載の改質されたゴム粒子を調製するための方法であって、
e)それぞれカーボンブラック、シリカ、または他の充填剤を含む、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物、または天然ゴム、または合成ポリイソプレンからゴム廃材を提供するステップ、
f)前記ゴム廃材を粉砕して、平均粒径700μm未満、好ましくは500μm 未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の粒子にするステップ、
g)抽出ステップにおいて、前記ゴム粒子を有機溶媒で前処理するステップ、および、
h)Lcp、RoxA、RoxBおよびそれらの混合物から選択される酵素を用いて前記ゴム粒子を処理するステップ
を含む方法。
【請求項15】
請求項5に記載の改質されたゴム粒子を調製するための方法であって、
e)それぞれカーボンブラック、シリカ、または他の充填剤を含む、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物、または天然ゴム、または合成ポリイソプレンからゴム廃材を提供するステップ、
f)前記ゴム廃材を粉砕して、平均粒径700μm未満、好ましくは500μm 未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の粒子にするステップ、
g)抽出ステップにおいて、前記ゴム粒子を有機溶媒で前処理するステップ、および、
h)Lcp、RoxA、RoxBおよびそれらの混合物から選択される酵素を用いて前記ゴム粒子を処理するステップ
を含む方法。
【請求項16】
請求項6に記載の改質されたゴム粒子を調製するための方法であって、
e)それぞれカーボンブラック、シリカ、または他の充填剤を含む、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物、または天然ゴム、または合成ポリイソプレンからゴム廃材を提供するステップ、
f)前記ゴム廃材を粉砕して、平均粒径700μm未満、好ましくは500μm 未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の粒子にするステップ、
g)抽出ステップにおいて、前記ゴム粒子を有機溶媒で前処理するステップ、および、
h)Lcp、RoxA、RoxBおよびそれらの混合物から選択される酵素を用いて前記ゴム粒子を処理するステップ
を含む方法。
【請求項17】
請求項7に記載の改質されたゴム粒子を調製するための方法であって、
e)それぞれカーボンブラック、シリカ、または他の充填剤を含む、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物、または天然ゴム、または合成ポリイソプレンからゴム廃材を提供するステップ、
f)前記ゴム廃材を粉砕して、平均粒径700μm未満、好ましくは500μm 未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の粒子にするステップ、
g)抽出ステップにおいて、前記ゴム粒子を有機溶媒で前処理するステップ、および、
h)Lcp、RoxA、RoxBおよびそれらの混合物から選択される酵素を用いて前記ゴム粒子を処理するステップ
を含む方法。
【請求項18】
請求項8に記載の改質されたゴム粒子を調製するための方法であって、
e)それぞれカーボンブラック、シリカ、または他の充填剤を含む、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物、または天然ゴム、または合成ポリイソプレンからゴム廃材を提供するステップ、
f)前記ゴム廃材を粉砕して、平均粒径700μm未満、好ましくは500μm 未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の粒子にするステップ、
g)抽出ステップにおいて、前記ゴム粒子を有機溶媒で前処理するステップ、および、
h)Lcp、RoxA、RoxBおよびそれらの混合物から選択される酵素を用いて前記ゴム粒子を処理するステップ
を含む方法。
【請求項19】
請求項9に記載の改質されたゴム粒子を調製するための方法であって、
e)それぞれカーボンブラック、シリカ、または他の充填剤を含む、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物、または天然ゴム、または合成ポリイソプレンからゴム廃材を提供するステップ、
f)前記ゴム廃材を粉砕して、平均粒径700μm未満、好ましくは500μm 未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の粒子にするステップ、
g)抽出ステップにおいて、前記ゴム粒子を有機溶媒で前処理するステップ、および、
h)Lcp、RoxA、RoxBおよびそれらの混合物から選択される酵素を用いて前記ゴム粒子を処理するステップ
を含む方法。
【請求項20】
請求項10に記載の改質されたゴム粒子を調製するための方法であって、
e)それぞれカーボンブラック、シリカ、または他の充填剤を含む、天然ゴムと合成ポリイソプレンとの混合物、または天然ゴム、または合成ポリイソプレンからゴム廃材を提供するステップ、
f)前記ゴム廃材を粉砕して、平均粒径700μm未満、好ましくは500μm 未満、より好ましくは400μm未満、さらに好ましくは250μm未満の粒子にするステップ、
g)抽出ステップにおいて、前記ゴム粒子を有機溶媒で前処理するステップ、および、
h)Lcp、RoxA、RoxBおよびそれらの混合物から選択される酵素を用いて前記ゴム粒子を処理するステップ
を含む方法。
【請求項21】
技術的なゴム製品、好ましくはエンジンマウントおよびブッシュのための、請求項1または請求項に記載のゴム組成物の使用。
【請求項22】
技術的なゴム製品、好ましくはエンジンマウントおよびブッシュのための、請求項3に記載のゴム組成物の使用。
【請求項23】
技術的なゴム製品、好ましくはエンジンマウントおよびブッシュのための、請求項4に記載のゴム組成物の使用。
【請求項24】
技術的なゴム製品、好ましくはエンジンマウントおよびブッシュのための、請求項5に記載のゴム組成物の使用。
【請求項25】
技術的なゴム製品、好ましくはエンジンマウントおよびブッシュのための、請求項6に記載のゴム組成物の使用。
【請求項26】
技術的なゴム製品、好ましくはエンジンマウントおよびブッシュのための、請求項7に記載のゴム組成物の使用。
【請求項27】
技術的なゴム製品、好ましくはエンジンマウントおよびブッシュのための、請求項8に記載のゴム組成物の使用。
【請求項28】
技術的なゴム製品、好ましくはエンジンマウントおよびブッシュのための、請求項9に記載のゴム組成物の使用。
【請求項29】
技術的なゴム製品、好ましくはエンジンマウントおよびブッシュのための、請求項10に記載のゴム組成物の使用。
【外国語明細書】