(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006378
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】樹脂ゴム複合体及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 5/01 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B60C5/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107200
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 秀之
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA28
3D131AA30
3D131BA18
3D131BC36
3D131CB10
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】接着剤を使用せずに樹脂を含む部材とゴムを含む部材とが接着してなる樹脂ゴム複合体、及び前記樹脂ゴム複合体を有するタイヤの提供。
【解決手段】樹脂を含む部材と、前記樹脂を含む部材に接着しているゴムを含む部材と、を備え、前記樹脂はアミノ基を含み、前記ゴムを含む部材は有機過酸化物とマレイミド化合物とを含む、樹脂ゴム複合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む部材と、前記樹脂を含む部材に接着しているゴムを含む部材と、を備え、
前記樹脂はアミノ基を含み、
前記ゴムを含む部材は有機過酸化物とマレイミド化合物とを含む、樹脂ゴム複合体。
【請求項2】
前記樹脂はポリアミド系熱可塑性エラストマー及びポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の樹脂ゴム複合体。
【請求項3】
前記樹脂は分子の末端にアミノ基を有し、前記アミノ基の含有量が0.01mmol/g以上である、請求項1に記載の樹脂ゴム複合体。
【請求項4】
前記ゴムを含む部材の硫黄の含有率が、前記ゴムを含む部材全体の0質量%~2質量%である、請求項1に記載の樹脂ゴム複合体。
【請求項5】
前記ゴムを含む部材に接着している別のゴムを含む部材をさらに備える、請求項1に記載の樹脂ゴム複合体。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の樹脂ゴム複合体を含む、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂ゴム複合体及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量化、成形容易性、リサイクル等の観点から、例えばタイヤ等の分野において、樹脂を含む部材をタイヤ部材の一部として用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含む部材を用いたタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂をタイヤの部材として用いる場合、樹脂とゴムとが接する部位が生じる可能性がある。樹脂とゴムとを接着させる方法としては接着剤を用いる方法があるが、生産性の向上、環境又は生体への負荷低減等の観点から、接着剤を使用せずにこれらを接着させる方策が望まれている。
上記事情に鑑み、本開示の一態様は接着剤を使用せずに樹脂を含む部材とゴムを含む部材とが接着してなる樹脂ゴム複合体、及び前記樹脂ゴム複合体を有するタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
<1>樹脂を含む部材と、前記樹脂を含む部材に接着しているゴムを含む部材と、を備え、前記樹脂はアミノ基を含み、前記ゴムを含む部材は有機過酸化物とマレイミド化合物とを含む、樹脂ゴム複合体。
<2>前記樹脂はポリアミド系熱可塑性エラストマー及びポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種を含む、<1>に記載の樹脂ゴム複合体。
<3>前記樹脂は分子の末端にアミノ基を有し、前記アミノ基の含有量が0.01mmol/g以上である、<1>又は<2>に記載の樹脂ゴム複合体。
<4>前記ゴムを含む部材の硫黄の含有率が、前記ゴムを含む部材全体の0質量%~2質量%である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の樹脂ゴム複合体。
<5>前記ゴムを含む部材に接着している別のゴムを含む部材をさらに備える、<1>~<4>のいずれか1項に記載の樹脂ゴム複合体。
<6><1>~<5>のいずれか1項に記載の樹脂ゴム複合体を含む、タイヤ。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、接着剤を使用せずに樹脂を含む部材とゴムを含む部材とが接着してなる樹脂ゴム複合体、及び前記樹脂ゴム複合体を有するタイヤが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るタイヤの構成を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【
図3】第2実施形態に係るタイヤの構成を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【
図4】第3実施形態に係るタイヤの構成を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【
図5】第4実施形態に係るタイヤのビード部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0009】
本明細書において「樹脂」とは、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及び熱硬化性樹脂を含む概念であり、ゴム(熱硬化性エラストマー)は含まない。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語には、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その目的が達成されるものであれば、当該工程も本用語に含まれる。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が組成物中に複数存在する場合には、特に断りがない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「主成分」とは、特に断りがない限り、混合物中における質量基準の含有率が最も多い成分を意味する。
【0010】
本明細書において「熱可塑性樹脂」とは、温度上昇とともに材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になるが、ゴム状弾性を有しない高分子化合物を意味する。
本明細書において「熱可塑性エラストマー」とは、温度上昇とともに材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり、かつ、ゴム状弾性を有するものが挙げられる。
熱可塑性エラストマーとして具体的には、結晶性で融点又は凝集力が高いハードセグメントと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントと、を有する共重合体が挙げられる。
ハードセグメントとしては、例えば、主骨格に芳香族基若しくは脂環式基等の剛直な基を有する構造、又は分子間水素結合若しくはπ-π相互作用による分子間パッキングを可能にする構造等のセグメントが挙げられる。ソフトセグメントとして、例えば、主鎖に長鎖の基(アルキレン基等)を有し、分子回転の自由度が高く、伸縮性を有する構造のセグメントが挙げられる。
【0011】
[樹脂ゴム複合体]
本開示に係る樹脂ゴム複合体は、樹脂を含む部材と、前記樹脂を含む部材に接着しているゴムを含む部材と、を備え、
前記樹脂はアミノ基を含み、
前記ゴムを含む部材は有機過酸化物とマレイミド化合物とを含む。
以下、樹脂を含む部材を「樹脂部材」と称し、ゴムを含む部材を「ゴム部材」と称する場合がある。
【0012】
本開示に係る樹脂ゴム複合体は、接着剤を使用しなくても樹脂部材とゴム部材とが接着性した状態である。その理由は、例えば、下記のように推測される。
本開示に係る樹脂ゴム複合体では、樹脂部材に含まれる樹脂がアミノ基を含む。このため、樹脂部材とゴム部材との界面では、樹脂に含まれるアミノ基と、ゴム部材に含まれるマレイミド化合物との間で反応が生じて、樹脂部材とゴム部材との接着に寄与すると推測される。
さらに、ゴム部材はゴムの架橋剤として有機過酸化物、すなわち、硫黄を含有しない化合物を含む。このため、ゴム部材中でのマレイミド化合物と硫黄との反応によるマレイミド化合物の失活が抑制される。その結果、樹脂部材に含まれるアミノ基とマレイミド化合物との反応が充分に生じて、良好な接着性が達成される。
【0013】
<樹脂部材>
樹脂部材に含まれる樹脂の種類は、アミノ基を含むものであれば特に制限されず、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。
樹脂部材に含まれる樹脂は、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0014】
本開示において「アミノ基を含む樹脂」とは、1級アミノ基(-NH2)及び2級アミノ基(-NHR)のいずれか又は両方が分子中に存在する樹脂を意味する。
【0015】
アミノ基を含む樹脂として具体的には、各種のポリアミド系熱可塑性エラストマー及びポリアミドが挙げられる。これらの樹脂は、分子の末端に1級アミノ基とカルボキシ基とをそれぞれ有する。
【0016】
(ポリアミド系熱可塑性エラストマー)
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとは、ハードセグメントを形成するポリマーの主鎖にアミド結合(-CONH-)を有する熱可塑性エラストマーを意味する。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリアミドが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル、ポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント及びソフトセグメントの他に、ジカルボン酸等の鎖長延長剤を用いて形成されてもよい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、特開2004-346273号公報に記載のポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。
【0017】
ポリアミド系熱可塑性エラストマーにおいて、ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、例えば、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーによって生成されるポリアミドを挙げることができる。
【0018】
【0019】
[一般式(1)中、R1は、炭素数2~20の炭化水素の分子鎖(例えば炭素数2~20のアルキレン基)を表す。]
【0020】
【0021】
[一般式(2)中、R2は、炭素数3~20の炭化水素の分子鎖(例えば炭素数3~20のアルキレン基)を表す。]
【0022】
一般式(1)中、R1としては、炭素数3~18の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数3~18のアルキレン基が好ましく、炭素数4~15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数4~15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10~15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数10~15のアルキレン基が特に好ましい。
また、一般式(2)中、R2としては、炭素数3~18の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数3~18のアルキレン基が好ましく、炭素数4~15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数4~15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10~15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数10~15のアルキレン基が特に好ましい。
一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω-アミノカルボン酸又はラクタムが挙げられる。また、ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω-アミノカルボン酸又はラクタムの重縮合体、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
【0023】
ω-アミノカルボン酸としては、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、10-アミノカプリン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等の炭素数5~20の脂肪族ω-アミノカルボン酸等を挙げることができる。また、ラクタムとしては、ラウリルラクタム、ε-カプロラクタム、ウデカンラクタム、ω-エナントラクタム、2-ピロリドン等の炭素数5~20の脂肪族ラクタム等を挙げることができる。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、3-メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等の炭素数2~20の脂肪族ジアミン等のジアミン化合物を挙げることができる。
ジカルボン酸は、HOOC-(R3)m-COOH(R3:炭素数3~20の炭化水素の分子鎖、m:0又は1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ラウリルラクタム、ε-カプロラクタム、又はウデカンラクタムを開環重縮合したポリアミドを好ましく用いることができる。
【0024】
ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリエーテル等が挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリエーテルの末端にアンモニア等を反応させることによって得られるポリエーテルジアミン等も用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを意味する。
【0025】
【0026】
[一般式(3)中、x及びzは、それぞれ独立に1~20の整数を表す。yは、4~50の整数を表す。]
【0027】
一般式(3)において、x及びzは、それぞれ独立に1~18の整数が好ましく、1~16の整数がより好ましく、1~14の整数が更に好ましく、1~12の整数が特に好ましい。また、一般式(3)において、yは、5~45の整数が好ましく、6~40の整数がより好ましく、7~35の整数が更に好ましく、8~30の整数が特に好ましい。
【0028】
ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの組合せ、又はラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せが好ましく、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せがより好ましい。
【0029】
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリアミド)の数平均分子量は、溶融成形性の観点から、300~15000が好ましい。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、200~6000が好ましい。さらに、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50~90:10が好ましく、50:50~80:20がより好ましい。
【0030】
ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
【0031】
ポリアミド系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、宇部興産(株)の「UBESTA XPA」シリーズ(例えば、XPA9063X1、XPA9055X1、XPA9048X2、XPA9048X1、XPA9040X1、XPA9040X2、XPA9044等)、ダイセル・エポニック(株)の「ベスタミド」シリーズ(例えば、E40-S3、E47-S1、E47-S3、E55-S1、E55-S3、EX9200、E50-R2等)等が挙げられる。
【0032】
(ポリアミド)
ポリアミドとしては、上述したポリアミド系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するモノマーからなるホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。
ポリアミドとして具体的には、ε-カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(ナイロン6)、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(ナイロン11)、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド(ナイロン12)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とを重縮合したポリアミド(ナイロン66)、メタキシレンジアミンを構成単位として有するポリアミド(ナイロンMXD6)等が挙げられる。
【0033】
ナイロン6の構成単位は、例えば、{CO-(CH2)5-NH}nで表すことができる。ナイロン11の構成単位は、例えば、{CO-(CH2)10-NH}nで表すことができる。ナイロン12の構成単位は、例えば、{CO-(CH2)11-NH}nで表すことができる。ナイロン66の構成単位は、例えば、{CO(CH2)4CONH(CH2)6NH}nで表すことができる。ナイロンMXD6の構成単位は、例えば、下記構造式(A-1)で表すことができる。ここで、nは構成単位の数を表す。
【0034】
【0035】
ナイロン6の市販品としては、例えば、宇部興産(株)製の「UBEナイロン」シリーズ(例えば、1022B、1011FB等)を用いることができる。ナイロン11の市販品としては、例えば、アルケマ(株)製の「Rilsan B」シリーズを用いることができる。ナイロン12の市販品としては、例えば、宇部興産(株)製の「UBEナイロン」シリーズ(例えば、3024U、3020U、3014U等)を用いることができる。アミド66の市販品としては、例えば、旭化成(株)製の「レオナ」シリーズ(例えば、1300S、1700S等)を用いることができる。ナイロンMXD6の市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製の「MXナイロン」シリーズ(例えば、S6001、S6021、S6011等)を用いることができる。
【0036】
樹脂部材のゴム部材に対する接着性の観点からは、樹脂の末端アミノ基の含有量は0.01mmol/g以上であることが好ましく、0.02mmol/g以上であることがより好ましく、0.03mmol/g以上であることがさらに好ましい。
樹脂の末端アミノ基の含有量の上限は特に制限されない。例えば、1mmol/g以下であってもよい。
【0037】
本開示において、樹脂の末端アミノ基の含有量は、中和滴定法により測定される。具体的には、溶媒としてフェノール:メタノールの混合溶媒(混合体積比9:1)と、滴定液として0.01mol/M塩酸を使用し、室温(25℃)で測定を実施する。
【0038】
樹脂部材は樹脂のみを含んでもよく、樹脂以外の成分を含んでもよい。樹脂以外の成分として具体的には、各種充填剤(シリカ、炭酸カルシウム、クレイ、カーボンブラック等)、老化防止剤、オイル、可塑剤、着色剤、耐候剤等が挙げられる。
【0039】
樹脂部材が樹脂以外の成分を含む場合、その量は特に制限されない。例えば、樹脂以外の成分の合計量は樹脂100質量部に対して1質量部~70質量部の範囲であってもよく、5質量部~50質量部の範囲であってもよく、10質量部~30質量部の間であってもよい。
【0040】
<ゴム部材>
ゴム部材に含まれるゴムの種類は特に制限されない。
ゴムとして具体的には、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等のジエン系ゴムと、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム等の非ジエン系ゴムとが挙げられる。
樹脂部材との接着性の観点からは、ゴム部材はジエン系ゴムを含むことが好ましい。
ゴム部材に含まれるゴムは、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0041】
ゴム部材に含まれるゴムの含有率は特に制限されず、30質量%~100質量%の範囲から選択できる。
ゴム部材に含まれるゴムの含有率は、例えば、50質量%以上であってもよく、60質量%以上であってもよく、65質量%以上であってもよい。
ゴム部材に含まれるゴムの含有率は、例えば、95質量%以下であってもよく、85質量%以下であってもよく、75質量%以下であってもよい。
【0042】
ゴム部材に含まれる有機過酸化物の種類は、特に制限されない。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,3-ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4-ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)パレレート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキサイド等が挙げられる。
ゴム部材に含まれる有機過酸化物は、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0043】
ゴム部材に含まれる有機過酸化物の量は、特に制限されない。例えば、ゴム部材に含まれる有機過酸化物の量は、ゴム100質量部に対して0.1質量部~10質量部であることが好ましく、0.5質量部~5質量部であることがより好ましく、1質量部~3質量部であることがさらに好ましい。
【0044】
ゴム部材に含まれるマレイミド化合物の種類は、特に制限されない。具体的には、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、4,4’-ビス(マレイミド)ジフェニルメタン、1-マレイミド-3-マレイミドメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、1,1’-(シクロヘキサン-1,3-ジイルビス(メチレン))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)、1,1’-(4,4’-メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)、1,1’-(3,3’-(ピペラジン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)、2,2’-(エチレンジオキシ)ビス(エチルマレイミド)、1,2-ビス(マレイミド)エタン、N-スクシンイミジル-3-マレイミドプロピオナート、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート等が挙げられる。
ゴム部材に含まれるマレイミド化合物は、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0045】
ゴム部材に含まれるマレイミド化合物の量は、特に制限されない。例えば、ゴム部材に含まれるマレイミド化合物の量は、ゴム100質量部に対して0.1質量部~10質量部であることが好ましく、0.5質量部~5質量部であることがより好ましく、1質量部~3質量部であることがさらに好ましい。
【0046】
必要に応じ、ゴム部材はゴム、有機過酸化物及びマレイミド化合物以外の成分を含んでもよい。
ゴム、有機過酸化物及びマレイミド化合物以外の成分としては、カーボンブラック、架橋促進剤、脂肪酸、金属酸化物、プロセスオイル、老化防止剤、粘着付与剤、スコーチ防止剤等が挙げられる。
【0047】
ゴム部材の強度向上の観点からは、ゴム部材はカーボンブラックを含むことが好ましい。
カーボンブラックの種類は特に制限されない。具体的には、ファーネス法により得られるファーネスブラック、チャンネル法により得られるチャンネルブラック、アセチレン法により得られるアセチレンブラック、サーマル法により得られるサーマルブラック等が挙げられる。
ゴム部材に含まれるカーボンブラックは、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0048】
ゴム部材に含まれるカーボンブラックの量は、特に制限されない。例えば、ゴム部材に含まれるゴム100質量部に対して25質量部~65質量部であることが好ましく、30質量部~60質量部であることがより好ましく、35質量部~55質量部であることがさらに好ましい。
【0049】
架橋促進剤として具体的には、アルデヒド類等が挙げられる。
脂肪酸として具体的には、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、これらの金属塩等が挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸が好ましい。
金属酸化物として具体的には、亜鉛華(ZnO)、酸化鉄、酸化マグネシウム等が挙げられる。
プロセスオイルとしては、アロマティック系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル等が挙げられる>
老化防止剤としては、アミン-ケトン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、燐系老化防止剤等が挙げられる。
粘着付与剤としては、フェノール系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられる。
【0050】
樹脂部材との接着性の観点からは、ゴム部材は硫黄を含まないか、又は硫黄の含有率がゴム部材全体の2質量以下であることが好ましく、硫黄を含まないか、又は硫黄の含有率がゴム部材全体の0.5質量以下であることがより好ましく、硫黄を含まない(すなわち、硫黄の含有率が0質量%である)ことがさらに好ましい。
【0051】
本開示に係る樹脂ゴム複合体は、樹脂部材とゴム部材に加え、前記ゴム部材に接着している別のゴム部材をさらに備えていてもよい。
以下、樹脂部材と接着しているゴム部材を第1ゴム部材と称し、第1ゴム部材に接着しているゴム部材を第2ゴム部材と称する場合がある。
【0052】
第1ゴム部材と第2ゴム部材とを接着させる方法は特に制限されず、公知の手法で行うことができる。
例えば、未架橋の第1ゴム部材と未架橋の第2ゴム部材とを接触させた状態で加熱してこれらに含まれるゴムを架橋させることで第1ゴム部材と第2ゴム部材とを接着させる方法、接着剤を用いて第1ゴム部材と第2ゴム部材とを接着する方法などが挙げられる。
【0053】
第1ゴム部材と第2ゴム部材の組成は同じであってもよく、異なっていてもよい。
第1ゴム部材と組成が異なる第2ゴム部材としては、例えば、架橋剤として硫黄を含むゴム部材が挙げられる。
【0054】
(樹脂ゴム複合体の製造方法)
樹脂ゴム複合体を製造する方法としては、例えば、樹脂部材と未架橋のゴム部材とを接触させる工程と、
前記未架橋のゴム部材を架橋させる工程と、を含む方法が挙げられる。
【0055】
未架橋のゴム部材は、例えば、ゴム部材を構成する材料を混練し、目的とする形状に成形することで得られる。材料の混練温度としては、未架橋の状態を維持する観点から、例えば80℃~180℃の範囲が挙げられる。混練機としては、ミキシングロール、シグマ型回転羽根付混練機、バンバリミキサー、高速二軸連続ミキサー、一軸、二軸、多軸押出機型混練機等の通常の混練機が挙げられる。成形方法としては、押出成形、圧延成形等が挙げられる。
【0056】
樹脂部材は、例えば、樹脂部材を構成する材料を混練し、目的とする形状に成形することで得られる。材料の混練温度は特に制限されず、使用する材料に応じて設定できる。
混練に用いる混練機は、未架橋のゴム部材を得るために用いる混練機と同様である。成形方法としては、射出成形、真空成形、圧空成形、メルトキャスティング等が挙げられる。
【0057】
未架橋のゴム部材を架橋する工程における加熱温度は、ゴム部材の材料に応じて設定できる。例えば、110℃~220℃の範囲が挙げられる。加熱時間としては、例えば、1分間~30時間が挙げられる。
【0058】
(樹脂ゴム複合体の用途)
樹脂ゴム複合体は、種々の用途に適用することができる。樹脂ゴム複合体の用途としては、タイヤ、防振ゴム、ゴムホース、ゴム樹脂複合型ホース、ベルト、ゴムクローラ、ゴルフボール、ベローズ、免震ゴム、シーリング材、コーキング材、自転車用部品等が挙げられる。
【0059】
樹脂ゴム複合体がタイヤに用いられる場合、樹脂ゴム複合体における樹脂部材及びゴム部材の組合せとしては、以下の組合せが挙げられる。
・樹脂部材としてのベルト部材と、ゴム部材としてのトレッド、タイヤ骨格部材、及びベルト部材の表面に接着されたゴムシートからなる群より選択される少なくとも1種の部材と、の組合せ。
・樹脂部材としてのビード部材と、エポキシゴム部材としてのタイヤ骨格部材、及びビード部材の表面に接着されたゴムシートからなる群より選択される少なくとも1種の部材と、の組合せ。
・樹脂部材としてのタイヤ骨格部材と、エポキシゴム部材としてのトレッド、ベルト部材、ビード部材、及びタイヤ骨格部材の表面に接着されたゴムシートからなる群より選択される少なくとも1種の部材と、の組合せ。
・樹脂部材としてのベルトコードと、エポキシゴム部材としてのベルトコードを被覆するコード被覆部材、及び前記ベルトコードの表面に接着されたゴムシートからなる群より選択される少なくとも1種の部材と、の組合せ(つまりベルト部材が複合体である)。
・樹脂部材としてのプライコードと、エポキシゴム部材としてのプライコードを被覆するコード被覆部材、及び前記プライコードの表面に接着されたゴムシートからなる群より選択される少なくとも1種の部材と、の組合せ(つまりカーカスプライが複合体である)。
・樹脂部材としてのビードワイヤーと、エポキシゴム部材としてのビードワイヤーを被覆するワイヤー被覆部材、及び前記ビードワイヤーの表面に接着されたゴムシートからなる群より選択される少なくとも1種の部材と、の組合せ(つまりビードコアが複合体である)。
【0060】
樹脂ゴム複合体が樹脂部材と、樹脂部材に接着している第1ゴム部材と、第1ゴム部材に接着している第2ゴム部材とを有する場合、これらの組み合わせとしては、例えば以下の組み合わせが挙げられる。
・樹脂部材としてのベルト部材と、第1ゴム部材としてのゴムシートと、第2ゴム部材としてのトレッド及びタイヤ骨格部材からなる群より選択される少なくとも1種の部材と、の組合せ。
・樹脂部材としてのビード部材と、第1ゴム部材としてのゴムシートと、第2ゴム部材としてのタイヤ骨格部材と、の組合せ。
・樹脂部材としてのタイヤ骨格部材と、第1ゴム部材としてのゴムシートと、第2ゴム部材としてのトレッド、ベルト部材及びビード部材からなる群より選択される少なくとも1種の部材と、の組合せ。
・樹脂部材としてのベルトコードと、第1ゴム部材としてのゴムシートと、第2ゴム部材としてのコード被覆部材と、の組合せ。
・樹脂部材としてのプライコードと、第1ゴム部材としてのゴムシートと、第2ゴム部材としてのコード被覆部材と、の組合せ。
・樹脂部材としてのビードワイヤーと、第1ゴム部材としてのゴムシートと、第2ゴム部材としてのワイヤー被覆部材と、の組合せ。
【0061】
[タイヤ]
本発明のタイヤは、少なくとも前述の複合体を有する。
以下、前述の複合体を有するタイヤの実施形態について、図を参照して説明するが、本発明のタイヤはこれらの例に限定されるものではない。
【0062】
<第1実施形態>
第1実施形態のタイヤは、樹脂を含む環状のタイヤ骨格部材と、タイヤ骨格部材のタイヤ径方向外側に設けられ、複数の補強コードと補強コードを被覆する被覆樹脂とを含むベルト部材と、ベルト部材のタイヤ径方向外側の面にベルト部材の被覆樹脂と直接接して設けられたゴムシートと、ゴムシートのタイヤ径方向外側の面にゴムシートと直接接して設けられたトレッドと、を有する。
第1実施形態のタイヤは、樹脂部材に相当するベルト部材の被覆樹脂と、第1ゴム部材に相当するゴムシートと、第2ゴム部材に相当するトレッドと、を有する。トレッドは、複数のゴム層の複層体となっていてもよい。
なお、ゴムシートを介さずにトレッドをベルト部材の被覆樹脂と接するよう配置してもよい。すなわち、トレッドが第1ゴム部材に相当してもよい。
【0063】
以下、第1実施形態について、
図1及び
図2を参照して説明する。なお、
図2中、矢印Wはタイヤ回転軸と平行な方向(以下、「タイヤ幅方向」と称する場合がある)を示し、矢印Sはタイヤの回転軸を通りタイヤ幅方向と直交する方向(以下、「タイヤ径方向」と称する場合がある)を示す。さらに、一点鎖線CLは、タイヤのセンターライン(以下「タイヤ赤道面」ともいう)を示す。
【0064】
図1は、第1実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図であり、
図2は、第1実施形態に係るタイヤの構成を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
図1及び
図2に示すように、第1実施形態に係るタイヤ10は、樹脂を含む樹脂材料で構成された環状のタイヤ骨格部材であるタイヤケース17と、タイヤケース17のタイヤ径方向外側に設けられたベルト部材12と、タイヤケース17のタイヤ径方向外側の面のうちベルト部材12が設けられてない領域並びにベルト部材12のタイヤ径方向外側の面及びタイヤ幅方向外側の面に設けられたゴムシート11と、ゴムシート11のタイヤ径方向外側の面に設けられたトレッド30と、を備えている。ベルト部材12は、被覆樹脂26で被覆された複数の補強コード24を備えている。
【0065】
-タイヤ骨格部材-
タイヤケース17は、例えば、樹脂材料の一例である熱可塑性エラストマーを用いて構成され、タイヤ周方向に円環状に形成されている。
タイヤケース17は、タイヤ幅方向に間隔をあけて配置された一対のビード部14と、これら一対のビード部14からタイヤ径方向外側へそれぞれ延出する一対のサイド部16と、一対のサイド部16を連結するクラウン部18と、を含んで構成されている。ビード部14は、リム(図示せず)に接触する部位である。また、サイド部16は、タイヤ10の側部を形成し、ビード部14からクラウン部18に向かってタイヤ幅方向外側に凸となるように緩やかに湾曲している。
【0066】
クラウン部18は、一方のサイド部16のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部16のタイヤ径方向外側端とを連結する部位であり、タイヤ径方向外側に配設されるトレッド30を支持する。
【0067】
タイヤケース17のクラウン部18における外周面18Aは、タイヤ幅方向断面において平坦状に形成されていてもよいし、タイヤ径方向外側に膨らんだ湾曲形状であってもよい。本実施形態のクラウン部18の外周面18Aは、ベルト部材12が設けられるタイヤケース17の外周である。
【0068】
タイヤケース17は、1つのビード部14、1つのサイド部16、及び半幅のクラウン部18を有する円環状のタイヤ半体17Hを一対形成し、これらのタイヤ半体17Hを互いに向かい合わせ、各々の半幅のクラウン部18の端部同士をタイヤ赤道面CLで
接合して形成されている。この端部同士は、例えば溶接用樹脂材料17Aを用いて接合されている。
【0069】
ビード部14には、タイヤ周方向に沿って延びる円環状のビードコア20が埋設されている。このビードコア20は、ビードコード(図示せず)で構成されている。このビードコードは、スチールコード等の金属コード、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などで構成される。なお、ビード部14の剛性を十分に確保できれば、ビードコア20自体を省略してもよい。
【0070】
タイヤケース17を一体成形品としてもよく、タイヤケース17を3以上の樹脂部材に分けて製造し、これらを接合して形成してもよい。例えば、タイヤケース17を各部位(例えば、ビード部14、サイド部16、クラウン部18)ごとに分けて製造し、これらを接合して形成してもよい。このとき、タイヤケース17の各部位(例えば、ビード部14、サイド部16、クラウン部18)を異なる特徴を有する樹脂材料で形成してもよい。
【0071】
必要に応じ、タイヤケース17に補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置してもよい。
【0072】
ビード部14の表面のうち、リム(図示せず)との接触部分には、リムとの間の気密性を高めるための被覆層21を形成してもよい。被覆層21の材料としては、タイヤケース17よりも軟質で且つ耐候性が高いゴム等の材料が挙げられる。被覆層21は、ビード部14のタイヤ幅方向内側の内面からタイヤ幅方向外側へ折り返され、サイド部16の外面を経由して、ベルト部材12のタイヤ幅方向外側の端部近傍まで延びているように設けられてもよい。被覆層の延出端部は、後述するトレッド30によって覆われていてもよい。ただし、タイヤケース17のビード部14のみにより、リム(図示せず)との間のシール性(気密性)を確保できれば、被覆層21を設けなくてもよい。
被覆層21がゴムを含む場合、タイヤケース17が樹脂ゴム複合体の樹脂部材に相当し、被覆層21が樹脂ゴム複合体のゴム部材に相当してもよい。
【0073】
-ベルト部材-
次に、ベルト部材12について説明する。
ベルト部材12は、樹脂被覆コード28がタイヤケース17の外周にタイヤ周方向に螺旋状に巻かれてタイヤケース17に接合されると共に、樹脂被覆コード28におけるタイヤ幅方向に互いに隣接する部分同士が接合されることで構成されている。樹脂被覆コード28は、補強コード24を被覆樹脂26で被覆して構成されている。
【0074】
補強コード24は、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)で構成され、被覆樹脂26は樹脂材料で構成されている。
補強コード24は、タイヤの耐久性をより向上させる観点からは、マルチフィラメントが好ましい。複数本の金属コードの数としては、例えば2本~10本が挙げられ、5本~9本が好ましい。
タイヤの耐内圧性と軽量化とを両立する観点からは、補強コード24の太さは、0.2mm~2mmであることが好ましく、0.8mm~1.6mmであることがより好ましい。
【0075】
図1及び
図2に示すベルト部材12では、樹脂被覆コード28の層が単層であり、補強コード24がタイヤ幅方向に一列に並んだ構成となっているが、これに限られない。ベルト部材12は、樹脂被覆コード28がタイヤ周方向に螺旋状に巻かれて層を形成した後に、前記層の外周面にさらに樹脂被覆コード28が巻かれた積層構造のベルト部材であってもよい。
【0076】
図1及び
図2に示すベルト部材12は、タイヤケース17の外周面に樹脂被覆コード28を螺旋状に巻いて接合することで構成されているが、これに限られない。例えば、複数本の補強コード24と被覆樹脂26とがシート状に一体化されたものをタイヤケース17の外周面に巻くことで構成されたベルト部材であってもよい。
【0077】
-ゴムシート及びトレッド-
次に、ゴムシート11及びトレッド30について説明する。
図1及び
図2に示すように、ベルト部材12のタイヤ径方向外側にベルト部材12にゴムシート11が配置され、ゴムシート11のタイヤ径方向外側にトレッド30が配置されている。
ゴムシート11とトレッド30は、それぞれゴムを含む。トレッド30は、複数のゴム層からなる複層体であってもよい。
ゴムシート11の厚さは、例えば0.1mm~100mmであってもよい。
【0078】
トレッド30のタイヤ径方向の外周面には、タイヤ周方向に延びる排水用の溝30Aが形成されている。本実施形態では、2本の溝30Aが形成されているが、これに限らず、さらに多くの溝30Aを形成してもよい。トレッドパターンとしては、公知のものを用いることができる。
【0079】
図1及び
図2においては、トレッド30がゴムシート11を介してベルト部材12に設けられているが、これに限られない。例えば、トレッド30がゴムシート11を介さずにベルト部材12に接していてもよい。
【0080】
-タイヤの製造方法-
次に、本実施形態のタイヤ10の製造方法について説明する。まず、熱可塑性の樹脂材料を用いた射出成形により、ビードコア20を含む一対のタイヤ半体17Hを形成する。
次に、一対のタイヤ半体17Hのクラウン部18となる部分の端部同士を突き合わせ、突き合わせ部分に溶融状態の溶接用樹脂材料17Aを付着させて一対のタイヤ半体17Hを接合する。このようにして、円環状のタイヤケース17が形成される。
【0081】
次に、タイヤケース17の外周に樹脂被覆コード28を巻き付ける工程について説明する。具体的には、クラウン部18の外周面18Aに向かって樹脂被覆コード28を送り出しつつ、樹脂被覆コード28の熱可塑性樹脂及びクラウン部18の外周面18Aに熱風を吹き当てて加熱し溶融させる。そして、熱可塑性樹脂が溶融した状態の樹脂被覆コード28を、溶融した状態のクラウン部18の外周面18Aに押し付けて接合させ、これらを冷却することで固化させる。
このようにして、タイヤケース17の外周、具体的には、クラウン部18の外周に樹脂被覆コード28の層が形成され、ベルト部材12となる。
【0082】
次に、ベルト部材12の外周面に、ゴムシート11及びトレッド30を形成する。
具体的には、まず、ベルト部材12の外周面に、未架橋のゴムシートを巻き付ける。次に、未架橋のゴムシートの外周面に、未架橋のトレッドを巻き付ける。そして、ベルト部材12、未架橋のゴムシート、及び未架橋のトレッドが積層されたタイヤケース17(すなわち、生タイヤ)を架橋させる。具体的には、タイヤケース17を加熱することで、未架橋のゴムシートが架橋されてゴムシート11が形成され、かつ、未架橋のトレッドが架橋されてトレッド30が形成される。架橋のための加熱温度としては、例えば110℃~220℃が挙げられ、加熱時間としては、例えば1分間~30時間が挙げられる。
以上のようにして、第1実施形態のタイヤ10が得られる。
【0083】
<第2実施形態>
第2実施形態のタイヤは、ゴムを含む環状のタイヤ骨格部材と、タイヤ骨格部材のタイヤ径方向外側に設けられ、複数の補強コードと補強コードを被覆する被覆樹脂とを含むベルト部材と、ベルト部材のタイヤ径方向外側の面に設けられたトレッドと、タイヤ骨格部材とベルト部材との間、及び、ベルト部材とトレッドとの間に配置されるゴムシートと、を有する。
第2実施形態では、樹脂ゴム複合体の樹脂部材に相当するベルト部材の被覆樹脂と、第1ゴム部材に相当するゴムシートと、第2ゴム部材に相当するゴム層と、を有するタイヤ骨格部材と、前記ゴム層に相当するトレッドと、を有する複合体を有する。トレッドは、複数のゴム層の複層体となっていてもよい。
なお、ゴムシートを介さずにゴム層をベルト部材の被覆樹脂と接するよう配置してもよい。すなわち、ゴム層が第1ゴム部材に相当してもよい。
【0084】
以下、第2実施形態について、
図3を参照して説明する。
図3は、第2実施形態に係るタイヤの構成を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
図3において他の図と共通する部材については同様の符号を付して説明を省略する。
図3に示すように、第2実施形態に係るタイヤ80は、ゴムを含有するゴム材料を含んで構成された環状のタイヤ骨格部材の一例であるタイヤケース94と、ベルト部材12と、ゴムシート11と、トレッド30と、を備えている。
ベルト部材12、ゴムシート11、及びトレッド30については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0085】
図3に示すように、本実施形態のタイヤ80は、例えば、所謂ラジアルタイヤであり、ビードコア20が埋設された一対のビード部14を備え、一方のビード部14と他方のビード部14との間に、1枚のカーカスプライ82からなるカーカス86が跨っている。なお、
図3は、タイヤ80の空気充填前の自然状態の形状を示している。
【0086】
カーカスプライ82は、空気入りタイヤ80のラジアル方向に延びる複数本のコード(図示せず)をコーティングゴム(図示せず)で被覆して形成されている。
【0087】
カーカスプライ82は、タイヤ幅方向の端部分がビードコア20においてタイヤ径方向外側に折り返されている。カーカスプライ82は、一方のビードコア20から他方のビードコア20に跨る部分が本体部82Aと呼ばれ、ビードコア20から折り返されている部分が折り返し部82Bと呼ばれる。
【0088】
カーカスプライ82の本体部82Aと折返し部82Bとの間には、ビードコア20からタイヤ径方向外側に向けて厚さが漸減するビードフィラー88が配置されている。なお、タイヤ80において、ビードフィラー88のタイヤ径方向外側端88Aからタイヤ径方向内側の部分がビード部14とされている。
【0089】
カーカス86のタイヤ内側にはゴムからなるインナーライナー90が配置されており、カーカス86のタイヤ幅方向外側には、ゴムを含有するゴム材料からなるサイドゴム層92が配置されている。
本実施形態では、ビードコア20、カーカス86、ビードフィラー88、インナーライナー90、及びサイドゴム層92によってタイヤケース94が構成されている。
【0090】
図3においては、ベルト部材12がゴムシート11を介してカーカス86のタイヤ径方向外側に設けられているが、これに限られない。例えば、コーティングゴムでコードが被覆されて形成されたカーカスプライからなるカーカスがベルト部材12に接していてもよい。
図3においては、ベルト部材12のタイヤ径方向外側にゴムシート11を介してトレッド30が配置されているが、これに限られない。例えば、トレッドがベルト部材12に接していてもよい。
トレッド30には、排水用の溝30Aが形成されている。トレッド30の溝30Aにおけるパターンは、従来一般公知のものが用いられる。
【0091】
(タイヤの製造方法)
次に、本実施形態のタイヤ80の製造方法の一例を説明する。
まず、公知のタイヤ成形ドラム(不図示)の外周に、ゴム材料からなるインナーライナー90、ビードコア20、ゴム材料からなるビードフィラー88、コードをゴム材料で被覆したカーカスプライ82、及びサイドゴム層92からなる未架橋のタイヤケース94を形成する。
【0092】
一方、ベルト部材12は、以下のようにして形成する。
具体的には、ベルト成形ドラム(図示せず)の外周面に向かって樹脂被覆コード28を送り出す。樹脂被覆コード28は、熱風により加熱され溶融した状態でベルト成形ドラムの外周面に押し付けられ、その後冷却される。このようにして、ベルト成形ドラムの外周面に樹脂被覆コード28の層が形成される。
【0093】
次に、樹脂被覆コード28が冷却されて被覆樹脂26が固化した状態のベルト部材12を、ベルト成形ドラムから取り外す。そして、取り外したベルト部材12の内周面に、未架橋のゴムシート11を貼り付け、次いで、タイヤ成形ドラムにおける前記未架橋のタイヤケース94の径方向外側に上記ベルト部材12を配置する。その後、タイヤケース94を拡張し、タイヤケース94の外周面、言い換えればカーカス86の外周面を、ベルト部材12の内周面に圧着する。
最後に、ベルト部材12の外周面に、未架橋のゴムシート11を貼り付け、次いで、未架橋のゴムシート11の上に未架橋のトレッド30を貼り付け、生タイヤを得る。得られた生タイヤを加熱してゴムを架橋させて、タイヤ80が完成する。
【0094】
<第3実施形態>
第3実施形態のタイヤは、樹脂を含む環状のタイヤ骨格部材と、タイヤ骨格部材のタイヤ径方向外側に設けられ、複数の補強コードと補強コードを被覆する被覆樹脂とを含むベルト部材と、ベルト部材のタイヤ径方向外側の面にベルト部材の被覆樹脂と接して設けられたゴムシートと、ゴムシートのタイヤ径方向外側の面にゴムシートと接して設けられたトレッドと、タイヤ骨格部材のタイヤ幅方向外側に設けられたサイドゴムと、を有する。
第3実施形態では、樹脂ゴム複合体の樹脂部材に相当するタイヤ骨格部材と、ゴム部材に相当するサイドゴムと、を有する。
なお、サイドゴムとタイヤ骨格部材との間にゴムシートが配置されていてもよい。すなわち、ゴムシートが第1ゴム部材に相当し、サイドゴムが第2ゴム部材に相当してもよい。
【0095】
図4は、第3実施形態に係るタイヤの構成を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
図4において他の図と共通する部材については同様の符号を付して説明を省略する。
図4に示すように、第3実施形態に係るタイヤ110は、樹脂を含む樹脂材料で構成された環状のタイヤ骨格部材であるタイヤケース17と、タイヤケース17のタイヤ径方向外側に設けられたベルト部材12と、タイヤケース17のタイヤ径方向外側の面のうちベルト部材12が設けられてない領域並びにベルト部材12のタイヤ径方向外側の面及びタイヤ幅方向外側の面に設けられたゴムシート11と、ゴムシート11のタイヤ径方向外側の面に設けられたトレッド30と、タイヤケース17のタイヤ幅方向外側の面に設けられたサイドゴム13と、を備えている。
タイヤケース17、ベルト部材12、ゴムシート11、及びトレッド30については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。サイドゴム13は、ゴムを含む材料で構成されている。
【0096】
なお、第3実施形態では、エポキシゴム部材として、タイヤケース17のタイヤ幅方向外側に直接接してサイドゴム13を設けたが、タイヤケース17のタイヤ幅方向内側に直接接してゴム部材に相当するインナーゴムを設けてもよく、タイヤケース17のタイヤ幅方向内側にゴム部材に相当するゴムシートを介してジエンゴム層に相当するインナーゴムが設けられている構成でもよい。
【0097】
<第4実施形態>
第4実施形態では、ゴムを含む環状のタイヤ骨格部材のビード部に、樹脂ゴム複合体を有する形態の一例である。具体的には、ビードワイヤーが被覆樹脂で被覆されたビードコアと、前記ビードコア間に位置する本体部と前記ビードコア周りに内側から外側へ折り返された折返し部とを有するカーカスと、ビードコアと前記本体部と前記折返し部との間に設けられた樹脂製のビードフィラーと、ビードコア及びビードフィラーの周囲に設けられたゴムシートと、ゴムシートの周囲に設けられたゴム部材と、によりタイヤ骨格部材が構成されている。
第4実施形態では、ビードコアの被覆樹脂及びビードフィラーが樹脂ゴム複合体の樹脂部材に相当し、ゴムシートが第1ゴム部材に相当し、ゴム部材が第2ゴム部材に相当する。
なお、ゴム部材がゴムシートを介さずにビードコアの被覆樹脂及びビードフィラーに接していてもよい。すなわち、ゴム部材が第1ゴム部材に相当してもよい。
【0098】
第4実施形態においては、ビードコア及びビードフィラーの両方が樹脂層を有しているが、ビードコア及びビードフィラーのいずれか一方が樹脂層を有していてもよい。例えば、ビードフィラーがゴム製である場合、樹脂部材に相当するビードコアの被覆樹脂の周囲に第1ゴム部材に相当するゴムシートを介して、第2ゴム部材に相当するビードフィラーが設けられていてもよく、樹脂部材に相当するビードコアの被覆樹脂に接するようにゴム部材に相当するビードフィラーが設けられていてもよい。
【0099】
図5は、第4実施形態に係るタイヤのビード部を拡大した断面図である。
図5において他の図と共通する部材については同様の符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、第4実施形態に係るタイヤのビード部14は、ゴム部材91と、樹脂製のビードフィラー89と、ビードコア20と、ビードフィラー89及びビードコア20の周囲を取り囲むゴムシート11と、カーカス86と、を備えている。
図5に示すビード部14では、ビードコア20とビードフィラー89とが、ゴム部材91内に埋設され、ビードコア20とビードフィラー89とが、一体に構成されたコア・フィラ部材50を構成し、その周囲にゴムシート11が設けられている。ただし、ビードコア20とビードフィラー89とは別体でもよい。
【0100】
図5に示すように、ビードコア20はビードワイヤー束62と、ビードワイヤー束62の周囲に配置される被覆層65と、を有している。
図5の例では、ビードフィラー89が、ビードコア20の被覆層65と一体に、被覆層65と同じ樹脂材料から構成されているが、これに制限されない。例えば、ビードフィラー89を構成する樹脂材料は、ビードコア20の被覆層65を構成する樹脂材料と異なっていてもよい。また、ビードフィラー89を構成する樹脂材料は、ビードフィラー89の部分ごとに異なっていてもよい。
図5の例では、ビードコア20の被覆層65及びビードフィラー89の両方が樹脂材料で構成されているが、いずれか一方が樹脂材料で構成されていてもよい。例えば、ビードコア20の被覆層65が樹脂材料で構成されている場合はビードフィラー89がゴム製であってもよく、ビードフィラー89が樹脂製である場合は、被覆層65がゴム材料で構成されていてもよい。
【0101】
ビードコア20を構成するビードワイヤーの実際の本数は、1本でも複数本でもよい。すなわち、ビードワイヤー束62は、1本のビードワイヤーがタイヤ周方向に複数回にわたって巻回されることによって構成されてもよいし、複数本のビードワイヤーがそれぞれタイヤ周方向に1回又は複数回にわたって巻回されることによって構成されてもよい。
ビードワイヤーは、任意の既知の材料を用いることができ、例えばスチールコードを用いることができる。スチールコードは、例えば、スチールのモノフィラメント又は撚り線からなるものとすることができる。また、有機繊維やカーボン繊維等を用いることもできる。
【0102】
本実施形態のタイヤの製造は、前述の第2実施形態のタイヤと同様にして行われる。
本実施形態では、ビードフィラー89とビードコア20とを一体に成形することにより得られたコア・フィラ部材50を用いる。本実施形態では、コア・フィラ部材50の周囲に、未架橋のゴムシートを貼り付け、次いで、未架橋のゴム部材91を貼り付けて、未架橋のタイヤケースを形成し、必要に応じてベルト部材及び未架橋のトレッドをタイヤケースに配置して生タイヤを得る。得られた生タイヤを加熱して架橋させて、タイヤを得る。
【0103】
以下、コア・フィラ部材50を製造する方法の一例について、説明する。
コア・フィラ部材50の製造方法は、例えば、環状体形成工程と、射出成形工程と、冷却工程と、を含んでいる。
【0104】
環状体形成工程では、1本以上のビードワイヤーを被覆樹脂63で被覆してなるストリップ部材を巻回して、環状体を形成する。
図5に示すビードコア20は、3本のビードワイヤーを被覆樹脂63で被覆してなるストリップ部材を3回巻回して得られる3層構成になっている。
本工程では、溶融状態の被覆樹脂63をビードワイヤーの外周側に被覆し、冷却して被覆樹脂を固化させることによって、ストリップ部材が形成される。環状体は、ストリップ部材を巻回して形成される。
ストリップ部材を2層以上重ねる場合、層同士は溶融樹脂の固化により接合しても、接着剤等を用いて接着してもよい。
【0105】
環状体形成工程に次いで、射出成形工程では、環状体形成工程において形成した環状体を被覆層65の材料で被覆し、被覆層65と、被覆層65と一体のビードフィラー89と、を形成する。
【0106】
射出成形工程に次いで、冷却工程では、被覆層65及びビードフィラー89を、冷却により固化させる。コア・フィラ部材50におけるビードコア20は、環状体の周囲が、固化した被覆層65により覆われた構成となっている。また、被覆層65のタイヤ径方向外側には、ビードフィラー89が被覆層65と一体に構成されている。
【0107】
以上、本発明における実施形態の一例を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、他の種々の実施形態が可能である。
さらに、前記第1実施形態~第4実施形態は、適宜組み合わせることができる。
【実施例0108】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。なお、特に断りのない限り「部」は質量基準を表す。
【0109】
<実施例1>
(1)未架橋のゴムシートの作製
下記の組成からなる材料を混錬し、得られた混練物を用いて厚さ1mmの未架橋のゴムシートを作製した。
天然ゴム(85質量部)
ブタジエンゴム(15質量部)
カーボンブラック(40質量部)
プロセスオイル(2.64質量部)
ジクミルパーオキサイド(PO)(0.7質量部)
4,4’-ビス(マレイミド)ジフェニルメタン(BMI)(0.7質量部)
【0110】
(2)試験片の作製
表1に示す樹脂からなる厚さ2.5mmの樹脂シートの片面に未架橋のゴムシートを貼り合せ、圧力3MPaを加えながら表1に示す条件で加熱してゴムシートを架橋させ、樹脂シートと架橋したゴムシートとからなる試験片を得た。
加熱の温度及び時間は、表1に示す
【0111】
(3)接着力の評価
得られた試験片の樹脂シートから架橋したゴムシートを剥離する試験を室温(25℃)、90℃、150℃のそれぞれの条件下で行い、結果を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
接着…ゴムシートと樹脂シートの界面で剥離せず、ゴムシートの内部で破壊が生じた。
非接着…ゴムシートと樹脂シートの界面で剥離が生じた。
【0112】
<比較例1>
ゴムシートの作製に使用する材料において、POの量を2質量部に変更し、BMIの量を0質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、接着力を評価した。結果を表1に示す。
【0113】
<比較例2>
ゴムシートの作製に使用する材料において、POの量を4質量部に変更し、BMIの量を0質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、接着力を評価した。結果を表1に示す。
【0114】
<比較例3>
ゴムシートの作製に使用する材料において、POとBMの量をそれぞれ0質量部に変更し、ステアリン酸及び亜鉛華(計6質量部)と、硫黄及び架橋促進剤(計4.56質量部)とを添加したこと以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、接着力を評価した。結果を表1に示す。
【0115】
【0116】
表1に示す樹脂1~3の詳細は、下記の通りである。
樹脂1…アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(末端アミノ基の含有量:0mmol/g)
樹脂2…ポリアミド系熱可塑性エラストマー(末端アミノ基の含有量:0.01mmol/g以上)
樹脂3…ナイロン6(末端アミノ基の含有量:0.01mmol/g以上)
【0117】
表1に示すように、ゴムシートが有機過酸化物とマレイミド化合物とを含み、かつ樹脂シートがアミノ基を含む樹脂2又は樹脂3からなる試験片は、樹脂シートがアミノ基を含まない樹脂1からなる試験片に比べて優れた接着性を示した。
ゴムシートが有機過酸化物を含むがマレイミド化合物を含まない比較例1及び比較例2、並びにゴムシートが有機過酸化物とマレイミド化合物を含まず硫黄を含む比較例3は、樹脂シートを構成する樹脂がアミノ基を含むか含まないかにかかわらず接着性を示さなかった。