(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006382
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】積層剥離容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B65D1/02 111
B65D1/02 BRL
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107205
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】成田 有輝
(72)【発明者】
【氏名】永野 陽子
(72)【発明者】
【氏名】大澤 梓
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA14
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA21
3E033BB08
3E033CA20
3E033DA01
3E033DB03
3E033DC04
3E033DD01
3E033DE05
3E033FA03
3E033GA02
(57)【要約】
【課題】本発明は、積層剥離容器の外殻と内袋との簡単な分離を可能にすることを目的とする。
【解決手段】外殻10、及び外殻の内側に積層配置されている内袋10を備え、それによって内容物の減少に伴って内袋が外殻から剥離して収縮する、積層剥離容器100であって、外殻が、外気導入スリット16を底部に備えており、かつ内容物が減少したときに、外気導入スリットをきっかけとして、外殻を引き裂いて外殻を少なくとも部分的に内袋から分離可能である積層剥離容器を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻、及び前記外殻の内側に積層配置されている内袋を備え、それによって内容物の減少に伴って前記内袋が前記外殻から剥離して収縮する、積層剥離容器であって、
前記外殻が、外気導入スリットを底部に備えており、かつ
前記内容物が減少したときに、前記外気導入スリットをきっかけとして、前記外殻を引き裂いて前記外殻を少なくとも部分的に前記内袋から分離可能である、
積層剥離容器。
【請求項2】
前記積層剥離容器がブロー成形積層剥離容器であり、
前記ブロー成形積層剥離容器が底面に容器パーティングラインを有し、
前記容器パーティングラインの一部が、前記外気導入スリットを構成しており、かつ
前記容器パーティングラインの他の一部が、前記内袋を前記外殻に対して係止する内袋係止部を構成している、
請求項1に記載の積層剥離容器。
【請求項3】
前記外殻が、合成樹脂とバイオマス材料との混合材料で構成される層を有する、請求項1又は2に記載の積層剥離容器。
【請求項4】
前記外殻の前記層において、前記合成樹脂と前記バイオマス材料との合計に対する前記バイオマス材料の割合が、20質量%以上である、請求項3に記載の積層剥離容器。
【請求項5】
前記バイオマス材料が米粉である、請求項4に記載の積層剥離容器。
【請求項6】
前記外気導入スリットをきっかけとして前記外殻を引き裂き可能である旨の表示を有する、請求項1又は2に記載の積層剥離容器。
【請求項7】
前記積層剥離容器が、パーソナルケア製品、食品、及び工業用材料からなる群より選択される内容物を収容するためのものである、請求項1又は2に記載の積層剥離容器。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の積層剥離容器、及び
前記積層剥離容器の前記内袋に収容されている内容物、
を含む、内容物入りの積層剥離容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層剥離容器に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルケア製品、食品等を収納する容器として、外殻と、この外殻の内側に収められて減容変形自在の内袋とを備え、外殻と内袋との間に外気の導入を可能にすることによって内袋が外殻から剥離する積層剥離容器(「二重容器」としても言及される)が知られている。
【0003】
このような積層剥離容器は、使用の際に外殻を押して内容物を吐出すると、内袋のみが吐出容積に応じて減容し、内袋に空気が導入しない。これにより、内袋内に残存する未使用の内容物と、空気との直接の接触を抑制することができ、内容物の酸化劣化を防ぐことができる。
【0004】
ところで、近年、廃棄物の中間処理(リサイクル等)や最終処分等を容易にするために分別収集が行われており、内袋内に収容される内容物によっては、内容物が付着した内袋と外殻とを分別することが望まれる場合がある。また、内袋に収容されている内容物の使い切り性を向上させるために、内袋を外殻から取り出し、取り出した内袋を直接絞ることで内容物の更なる吐出を可能とすることが望まれる場合がある。
【0005】
しかしながら、従来の積層剥離容器では、内袋を外殻内から取り外すことが難しく、改善の余地があった。
【0006】
このような課題に対して、特許文献1~3では、外殻内から内袋を取り除くことができる積層剥離容器を提供している。
【0007】
具体的には、特許文献1では、内容物が収容されると共にこの内容物の減少に伴い減容変形する内容器(内袋)、及びこの内容器が内装される外容器(外殻)を備える容器本体と、容器本体の口部に離脱可能に装着され、内容物の吐出孔が形成された吐出キャップと、を備え、内容器と吐出キャップとは一体に固着されていることを特徴とする、積層剥離容器を提供している。特許文献1では、このような構成によれば、内容器と吐出キャップとが一体に固着されているので、内容物の吐出後、吐出キャップを容器本体の口部から取り外すことで、減容変形した内容器を外容器内から引き抜くように取り外すことができる。従って、従来に比べて、内容器の取り外し作業を容易に行うことができ、例えば内容物の種類に応じて外容器と内容器とを簡便に分別することができる、としている。
【0008】
また、特許文献2では、内容物が収容されると共にこの内容物の減少に伴い減容変形する内容器(内袋)、及びこの内容器が内装される外容器(外殻)を備える容器本体と、容器本体の口部に離脱可能に装着され、内容物の吐出孔が形成された吐出キャップと、を備えた二重容器の製造方法であって、容器本体の口部は、内容器の口部と、外容器の口部とが積層されることで構成され、内容器の口部の上端部には、外容器の口部の開口端を上方側から塞ぐ折り返し部が形成され、吐出キャップは、外容器の口部に離脱可能に装着され、吐出孔が形成された本体部と、内容器の内部と吐出孔とを連通させる流通孔が形成されると共に、容器本体の口部の上端開口部上に位置するベース部を有し、本体部と一体に連結された中栓部と、を備え、内容物が収容された容器本体の口部に吐出キャップを組み合わせる工程を行った後、高周波接着により、内容器の折り返し部と吐出キャップのベース部とを一体に固着する工程を行うことを特徴とする、二重容器の製造方法を提供している。特許文献2では、このような方法によれば、内容器と吐出キャップとが一体に固着されているので、内容物の吐出後、吐出キャップを容器本体の口部から取り外すことで、減容変形した内容器を外容器内から引き抜くように取り外すことができる。従って、従来に比べて、内容器の取り外し作業を容易に行うことができ、例えば内容物の種類に応じて外容器と内容器とを簡便に分別することができる、としている。
【0009】
また、特許文献3では、外気に接し空気導入部が設けられた外層容器(外殻)と、外層に対して剥離可能に積層される内層容器(内袋)とから構成され、空気導入部から外層と内層の間に空気を流通させ、内層容器を外層容器から剥離・収縮させることにより内層容器内の収容物が排出される積層剥離容器であって、内層容器は、外層容器から分離された状態で廃棄可能であることを特徴とする積層剥離容器を提供している。ここで、この特許文献3では、外層容器に分離用摘み部が設けられており、この分離用摘み部を利用して外層容器を引きちぎることにより内層容器が外層容器から分離できることが記載されている。
【0010】
なお、積層剥離容器としては、外気導入口を外殻の底部にスリット状の形態で設けたものが知られている。
【0011】
例えば、特許文献4では、口部、胴部及び底部を備えたボトル形状の外層体(外殻)と、内容物の収容空間を有し、外層体に収容される減容変形自在の内層体(内袋)と、外層体に設けられ、外層体と内層体との間に外気を導入する外気導入口と、を有する合成樹脂製の二重容器(積層剥離容器)であって、底部にスリット状の外気導入口が設けられているとともに、外層体の底部以外の部分に外層体と内層体との間を外層体の外部に連通させる通気口が設けられていることを特徴とする二重容器を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2015-163520号公報
【特許文献2】特開2018-138477号公報
【特許文献3】特開2015-212155号公報
【特許文献4】特開2020-23352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明では、外殻内から内袋を取り外すことを可能にする新規な積層剥離容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。そして、下記の本発明を完成させるに至った。
【0015】
〈態様1〉
外殻、及び前記外殻の内側に積層配置されている内袋を備え、それによって内容物の減少に伴って前記内袋が前記外殻から剥離して収縮する、積層剥離容器であって、
前記外殻が、外気導入スリットを底部に備えており、かつ
前記内容物が減少したときに、前記外気導入スリットをきっかけとして、前記外殻を引き裂いて前記外殻を少なくとも部分的に前記内袋から分離可能である、
積層剥離容器。
〈態様2〉
前記積層剥離容器がブロー成形積層剥離容器であり、
前記ブロー成形積層剥離容器が底面に容器パーティングラインを有し、
前記容器パーティングラインの一部が、前記外気導入スリットを構成しており、かつ
前記容器パーティングラインの他の一部が、前記内袋を前記外殻に対して係止する内袋係止部を構成している、
態様1に記載の積層剥離容器。
〈態様3〉
前記外殻が、合成樹脂とバイオマス材料との混合材料で構成される層を有する、態様1又は2に記載の積層剥離容器。
〈態様4〉
前記外殻の前記層において、前記合成樹脂と前記バイオマス材料との合計に対する前記バイオマス材料の割合が、20質量%以上である、態様3に記載の積層剥離容器。
〈態様5〉
前記バイオマス材料が米粉である、態様4に記載の積層剥離容器。
〈態様6〉
前記外気導入スリットをきっかけとして前記外殻を引き裂き可能である旨の表示を有する、態様1又は2に記載の積層剥離容器。
〈態様7〉
前記積層剥離容器が、パーソナルケア製品、食品、及び工業用材料からなる群より選択される内容物を収容するためのものである、態様1又は2に記載の積層剥離容器。
〈態様8〉
態様1又は2に記載の積層剥離容器、及び
前記積層剥離容器の前記内袋に収容されている内容物、
を含む、内容物入りの積層剥離容器。
【発明の効果】
【0016】
本発明の積層剥離容器によれば、外殻内から内袋を容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)は、本発明の積層剥離容器の概略断面図であり、かつ
図1(b)は、本発明の積層剥離容器の底面概略図である。
【
図2】本発明の一態様のブロー成形積層剥離容器を示す図である。
【
図3】本発明の一態様のブロー成形積層剥離容器の底面の断面写真である。
【
図4】本発明の一態様のブロー成形積層剥離容器を製造するための分割金型の概略図である。
【
図5】本発明の一態様のブロー成形積層剥離容器の製造工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《積層剥離容器》
本発明の積層剥離容器は、外殻、及び外殻の内側に積層配置されている内袋を備え、それによって内容物の減少に伴って内袋が外殻から剥離して収縮する。また、本発明の積層剥離容器では、外殻が、外気導入スリット(外気導入孔)を底部に備えており、かつ内容物が減少したときに、外気導入スリットをきっかけとして、外殻を引き裂いて、特に外殻を手で引き裂いて、外殻を少なくとも部分的に内袋から分離可能である。
【0019】
このような本発明の積層剥離容器によれば、外殻内から内袋を容易に取り外すことができる。したがって、本発明の積層剥離容器は、外気導入スリットをきっかけとして外殻を引き裂き可能である旨の表示、特に手で引き裂き可能である旨の表示を有することができ、これによれば、使用者に対して、外気導入スリットをきっかけとして外殻を引き裂き可能であることを知らせることができる。このような表示は、外殻に直接に印刷すること、外殻に貼り付けたラベルシールに印刷すること、及び/又は外殻に巻き付けられたラベルに印刷すること等ができる。
【0020】
また、本発明の積層剥離容器によれば、外気導入スリットを外殻の引き裂ききっかけとすることができるため、外気導入スリット以外の他の外殻の引き裂き用構造、例えばミシン目、線状の薄肉部、外殻引き裂き用タブ等を外殻に設ける必要がない。
【0021】
積層剥離容器では、外殻を押圧して変形させ、それによって外殻内の空気を介して内袋を押圧して、内容物を吐出させた後で、外殻は復元して元の形状に戻る必要がある。したがって、積層剥離容器の外殻は比較的大きい厚さを有し、樹脂の使用量も比較的多いので、外殻の分別回収及びリサイクルが可能になることは非常に好ましい。なお、本発明の積層剥離容器は、任意の積層剥離容器、特にブロー成形積層剥離容器であってよい。
【0022】
また、上記のように積層剥離容器の外殻は比較的大きい厚さを有するので、内袋内に残留した内容物を絞り出して最後まで使用することは容易ではない。これに対して、外殻と内袋との容易な分離が可能となれば、外殻から内袋を取り出して、内袋内に残留した内容物を最後まで絞り出すことが可能になる。したがって、外殻と内袋との容易な分離が可能となることは、食品ロスの減少のためにも好ましい。
【0023】
以下では、図面を参照しつつ、本発明の積層剥離容器について説明する。
【0024】
図1(a)に例示するように、本発明の積層剥離容器100は、外殻10、及び外殻10の内側に積層配置されている内袋20を備え、それによって内容物の減少に伴って内袋20が外殻10から剥離して収縮する容器である。この本発明の積層剥離容器100は開口部に吐出キャップ30を有している。
【0025】
本発明の積層剥離容器の外殻の底部は、
図1(b)に例示するように、外殻と内袋との間に外気の導入を可能にしつつ、容器を押圧したときには外殻から外気が漏れるのを抑制するための外気導入スリット(外気導入孔)16を有する。また、この底部は、円環状の外周縁部12と、外周縁部12の内側に設けられて上方(容器の口部側)に向けて凹んだ凹部14とを有し、外周縁部12を接地させることで積層剥離容器100を正立姿勢で配置することができる。外気導入スリット16は、凹部14に配置されていることが好ましい。
【0026】
例えば、積層剥離容器100がブロー成形積層剥離容器である場合、積層剥離容器100をブロー成形により形成する際に積層パリソンが金型で食い切られ、それにより、金型のパーティングラインに沿って延びるピンチオフ部が外殻10の底部に設けられ、このピンチオフ部における外殻10と内袋20との合わせ部分がスリット状の外気導入口(外気導入孔)16となっていてよい。
【0027】
なお、積層剥離容器では、内袋が外殻内で丸まって内袋内からの内容物の絞り出しが困難になるのを避けるために、外殻と内袋とを部分的に互いに接着及び/又は係止させて固定することがある。このような場合、外殻を内袋から分離することが可能な程度に、外殻と内袋との接着及び/又は係止を弱くする必要がある。このような外殻と内袋との接着及び/又は係止の程度の調節は、外殻と内袋との接着に用いる接着剤の種類、量等を調節して行うこと、外殻と内袋との固定のための係止の程度を調節して行うこと等ができる。
【0028】
本発明の積層剥離容器の1つの態様では、容器パーティングラインが、外気導入スリット及び内袋係止部の両方を構成するようにできる。すなわち、本発明の積層剥離容器の1つの態様では、積層剥離容器がブロー成形積層剥離容器であり、ブロー成形積層剥離容器が底面に容器パーティングラインを有し、容器パーティングラインの一部が、外気導入スリットを構成しており、かつ容器パーティングラインの他の一部が、内袋を外殻に対して係止する内袋係止部を構成している。
【0029】
(外殻)
本発明の積層剥離容器の外殻は、単層で構成されていても、積層体で構成されていてもよい。
【0030】
外殻は、引き裂き、特に手による引き裂きを可能にするために適切な引き裂き強度を有することができる。例えば外殻の引裂強度は、30.0N以下、25.0N以下、20.0N以下、15.0N以下、10.0N以下、8.0N以下、7.0N以下、6.0N以下、又は5.0N以下であってよい。また、この引裂強度は、外殻が適切な強度を有するために、この引裂強度は、1.0N以上、2.0N以上、又は3.0N以上であってよい。この引裂強度は、外殻を構成する樹脂を、熱プレス機にて外殻に対応する厚さのシート状に成形し、このサンプルについてJIS K7128-2を参考に引き裂き試験を行って評価できる。
【0031】
外殻を構成する合成樹脂は、積層剥離容器の用途に応じて適宜選択することができ、例えば、復元自在な可撓性を有する合成樹脂を用いることができる。また、外殻が積層体である場合には、外殻は、層間に配置されて接着の役割を果たす接着層等を有することができる。
【0032】
外殻を構成する合成樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらは、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよい。また、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0033】
また、外殻の引き裂き強度を調節するために、外殻を構成する合成樹脂にバイオマス材料を混合することが好ましい場合がある。したがって、例えば外殻は、合成樹脂とバイオマス材料との混合材料で構成される層、特にオレフィン樹脂とバイオマス材料との混合材料で構成される層を有することができる。この場合、外殻のこの層において、合成樹脂とバイオマス材料との合計に対するバイオマス材料の割合は、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上であってよく、また60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
【0034】
このようなバイオマス材料のうちの無機系のバイオマス材料としては、卵殻紛を挙げることができ、また有機系のバイオマス材料としては、米粉、木粉を挙げることができる。このようなバイオマス材料の使用は、環境対応の面からも好ましい。
【0035】
(内袋)
本発明の積層剥離容器の内袋は、単層で構成されていても、積層体で構成されていてもよい。一般に、内袋は、積層体で構成されている。
【0036】
内袋を構成する合成樹脂は、積層剥離容器の用途に応じて適宜選択することができ、例えば、酸素に対するバリア性を有する合成樹脂を用いることができる。また、内袋が積層体である場合には、内袋は、層間に配置されて接着の役割を果たす接着層等を有することができる。
【0037】
内袋が積層体で構成されている場合、内袋は、バリア性を維持し、内袋に充填された内容物の酸化劣化をより防止する目的で、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を含有する層を有することができる。
【0038】
EVOHは、優れた酸素バリア性を有することから、内袋を構成する層の少なくとも1つ、特に内袋の最外層をEVOH層とすることにより、内袋に充填された内容物と酸素との接触を遮断することができ、内容物の酸化劣化を抑制することができる。
【0039】
また、EVOHは、極性を有する樹脂であることから、隣接する層となる外殻の最内層が、極性が低いか極性を有しない樹脂で構成される場合には、ブロー成形積層剥離容器をブロー成形する際に、隣接する樹脂との相溶性が低くなる。このため、例えば、外殻の最内層がポリオレフィン系樹脂等で構成される場合には、内袋の最外層がEVOH層であることにより、外殻と内袋との間の剥離性が高いものとなる。
【0040】
EVOH以外の内袋を構成する樹脂としては、例えば、ブロー成形が可能であり、薄く設計することで減容変形が自在となる合成樹脂等や、層間に配置されて接着の役割を果たす接着剤等が挙げられる。
【0041】
このような合成樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、ナイロン等のポリアミド樹脂等が挙げられる。これらは、1種のみならず、2種以上がブレンドされたものであってもよい。また、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0042】
なお、内袋においては、内容物を充填する空間を形成する最内層として、耐内容物性を有する樹脂が用いられることが好ましい。耐内容物性を有する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。
【0043】
内袋の層間に配置される接着剤としては、これらの層を互いに溶着可能な樹脂、例えば変性ポリオレフィン樹脂を用いることができる。
【0044】
(内容物)
本発明の積層剥離容器は、液状、ゲル状、又はペースト状の内容物を収容するためのものであってよい。具体的には、この積層剥離容器は、パーソナルケア製品、食品、及び工業用材料からなる群より選択される内容物を収容するためのものであってよい。ここで、パーソナルケア製品は、医薬品、医薬部外品、化粧品、洗剤を含む概念である。
【0045】
医薬品及び医薬部外品としては、例えば、注射薬、点滴薬、輸液薬、灌流薬、煎剤等が挙げられる。
化粧品としては、例えば、シャンプー、コンディショナー、整髪料(例えば、ヘアウォーター、ヘアリキッド、グリース等)、歯磨き粉等が挙げられる。
洗剤としては、例えば、中性洗剤、アルカリ性洗剤、酸性洗剤等が挙げられる。
食品としては、例えば、飲料、食用油、スープ、クリーム、液体調味料(例えば、醤油、酢、麺つゆ、割下、みりん、ウスターソース、ケチャップ、タバスコ、甘味料)、ゲル状又はペースト状調味料(例えば、ワサビ、ゼリー、ジャム、味噌)等が挙げられる。
工業用材料としては、例えば、塗料(例えば、ペンキ、ニス、オイルステイン)、接着剤、コーキング材料、漆喰などの建築材料等が挙げられる。
【0046】
《内容物入りの積層剥離容器》
本発明の内容物入り積層剥離容器は、本発明の積層剥離容器、及び積層剥離容器の内袋に収容されている内容物を含む。本発明の積層剥離容器、及び内容物等の詳細については、上記の記載を参照することができる。
【0047】
《積層剥離容器の具体的態様》
以下では、容器パーティングラインが外気導入スリット及び内袋係止部の両方を構成している本発明の積層剥離容器の1つの具体的態様について、
図2~6を参照して説明する。
【0048】
本態様のブロー成形積層剥離容器1は、容器の底面3における容器パーティングライン4に、段差を有する段差部41と段差を有さない平坦部42とを備える。
【0049】
段差部41では、容器の底面3の容器内側において、外殻5及び内袋6を形成する材料が、容器パーティングライン4の両側について非対称に成形されており、それよって内袋6が外殻5に対して係止されている。
【0050】
平坦部42では、容器の底面3の容器内側において、外殻5及び内袋6を形成する材料が、容器パーティングライン4の両側について対称に成形されており、それによって内袋6が外殻5に対して係止されておらず、この構造により、外殻5と内袋6との間に外気を導入する外気導入口16を形成可能となっている。
【0051】
外気導入口16の作製は、平坦部42において、外殻5から内袋6を引き抜くことで行う。外殻5から内袋6の引き抜きについては、例えば、製造後、外殻5から内袋6を剥離する予備剥離と呼ばれる操作が挙げられる。引き抜きにより、内袋6が存在していた位置が空隙となり、この空隙を外気導入口16として使用することができる。
【0052】
本態様のブロー成形積層剥離容器1は、例えばブロー成形で製造した状態そのままの、外殻5と内袋6とが剥離されておらず接触した状態の容器であってもよいし、使用時に内袋6が外殻5から剥離しやすい状態にしておく目的で、製造後、外殻5と内袋6との間に空気を挿入する操作を実施して、外気導入口を形成した状態の容器であってもよい。
【0053】
図2(a)は、ブロー成形積層剥離容器1の底面3から斜めに見た斜視図であり、
図2(b)は、ブロー成形積層剥離容器1の底面3の拡大図であり、
図2(c)は、ブロー成形積層剥離容器1の底面3を、容器外側から撮影した写真である。なお、
図2(b)におけるX-Xラインと、Y-Yラインは、
図2(c)におけるX-Xライン、及びY-Yラインと、それぞれ対応している。
【0054】
図2(a)に示される本態様のブロー成形積層剥離容器1は、胴部2と底面3とを有する。底面3には、容器パーティングライン4を有しており、容器パーティングライン4は、ブロー成形の際に用いられる分割金型から形成される金型パーティングラインに対応して形成されるラインである。
【0055】
図2(a)に示される本態様のブロー成形積層剥離容器1は、底面3における容器パーティングライン4に、段差を有する段差部41と、段差を有さない平坦部42とを備える。底面3の外周は、容器を倒立させる際に地面等と接する設置部となっている。
【0056】
図2(a)に示される本態様のブロー成形積層剥離容器1は、製造直後のものであり、底面3には、段差部41から連結して突出している樹脂片43が付着している。なお、樹脂片43は、ブロー成形積層剥離容器1の材料である樹脂が固化した製品バリであり、軽微な力によって、ブロー成形積層剥離容器1の底面3から取り除くことが可能である。
【0057】
図2(b)は、
図2(a)に示される本態様のブロー成形積層剥離容器1の底面3の拡大図であり、容器パーティングライン4が有する、段差を有する段差部41、段差を有さない平坦部42、段差部41から連結して突出している樹脂片43、及び底面外周の設置部を、拡大して明示している。
【0058】
図2(b)におけるX-Xラインは、段差を有する段差部41において、容器パーティングライン4に対して垂直方向を示すラインであり、Y-Yラインは、段差を有さない平坦部42において、容器パーティングライン4に対して垂直方向を示すラインである。
【0059】
図2(c)は、本態様のブロー成形積層剥離容器1の底面3を、容器外側から撮影した写真である。なお、
図2(b)におけるX-Xラインと、Y-Yラインは、
図2(b)におけるX-Xライン、及びY-Yラインと、それぞれ対応している。
【0060】
図3に、本態様のブロー成形積層剥離容器の底面の断面写真を示す。
図3(a)及び
図3(b)は、
図2に示したブロー成形積層剥離容器1の底面3において、異なる2か所の断面写真である。
【0061】
図3(a)は、
図2(b)及び
図2(c)におけるX-Xラインの断面図である。すなわち、本態様のブロー成形積層剥離容器1の底面3の段差部41を通過するように、容器パーティングライン4に対して垂直方向に切断した、ブロー成形積層剥離容器1の底面3の断面写真である。
【0062】
本態様のブロー成形積層剥離容器1は、底面3における容器パーティングライン4の段差部41では、ブロー成形積層剥離容器1の底面3の容器内側において、外殻5及び内袋6を形成する材料が、容器パーティングライン4の両側について非対称に成形されており、それよって内袋6の外殻5に対する係止7が作製された構造となっている。
【0063】
図3(b)は、
図2(b)及び
図2(c)におけるY-Yラインの断面図である。すなわち、本態様のブロー成形積層剥離容器1の底面3の平坦部42を通過するように、容器パーティングライン4に対して垂直方向に切断した、ブロー成形積層剥離容器1の底面3の断面写真である。
【0064】
本態様のブロー成形積層剥離容器1は、底面3における容器パーティングライン4の平坦部42では、ブロー成形積層剥離容器1の底面3の容器内側において、外殻5及び内袋6を形成する材料が、容器パーティングライン4の両側について対称に成形されており、それによって内袋6が外殻5に対して係止されておらず、外殻5の接合部にて内袋6の挟み込み部8が作製されている。
【0065】
そして、挟み込み部8において、外殻5の接合部から内袋6を引き抜けば、内袋6が存在していた位置に空隙を作製することができ、この空隙は、外殻5と内袋6との間に外気を導入するための外気導入口となる。
【0066】
本態様の積層ブロー成形容器の製造においては、最外層から最内層までが順番に配置された溶融状態の多層パリソンを押出成形し、溶融状態の多層パリソンをブロー成形用の分割金型にセットし、分割金型を閉じ、積層ブロー成形容器本体の口部となる開口部にブローノズルを挿入する。型締めを行った状態で、分割金型の金型キャビティ内にエアーを吹き込み、最外層から最内層までが積層されたブロー成形品を成形する。成形後、分割金型を開いて、ブロー成形品を取り出す。
【0067】
この場合の分割金型は、少なくとも2個以上の部分型からなる分割金型であり、これら複数個の分割金型を閉じることで、本態様の積層ブロー容器を形成するための金型キャビティを形成する。例えば、2つの部分型によるもの、4つの部分型によるもの等であってよい。
【0068】
そして、形成される金型キャビティの底面における金型パーティングラインの一部に、分割金型を構成する複数の部分型の不整合による不整合部を有する。具体的には、不整合部は、分割金型を閉じて金型キャビティを形成した際に、金型同士の間に段差が存在しており、この段差により、金型同士の間に隙間が形成される。
【0069】
そして、不整合部の金型キャビティの外側に、分割金型を閉じる際の型締め圧力により、積層ブロー成形容器の材料である溶融樹脂を、金型キャビティの外側から内側に押し上げるための樹脂流動部を備えている。
【0070】
この分割金型においては、この不整合部と樹脂流動部とが存在することにより、分割金型を閉じる際の型締め圧力により金型キャビティの外側から内側に押し上げられた溶融樹脂が、形成される積層ブロー成形容器の底面の容器内側において、容器パーティングラインの両側について非対称に成形される。
【0071】
これにより、積層されている層同士が、形成される容器の底面の容器内側で係止され、例えば、外殻と、外殻の内側に積層配置された内袋とを備え、内容物の減少に伴って内袋が外殻から剥離して収縮するブロー成形積層剥離容器を成形した場合には、容器の底面の容器内側で、内袋を外殻に対して係止することができる。
【0072】
キャビティ底面における金型パーティングラインの不整合部は、例えば、不整合部となる位置の分割金型の大きさを異ならせることで、形成することができる。
【0073】
不整合部の金型キャビティの外側に存在する樹脂流動部の構成は、特に限定されるものではない。例えば、金型キャビティの外側となる位置に、不整合部に連結する溶融樹脂溜まりが形成できるように、不整合部に連結する凹部としてもよい。凹部に積層ブロー成形容器の材料である溶融樹脂の溜まりを作製し、分割金型を閉じる際の型締め圧力により、金型キャビティ外側の凹部からキャビティ内側に、溶融樹脂を押し上げることができる。
【0074】
キャビティ底面における金型パーティングラインの不整合部の位置は、特に限定されるものではない。例えば、金型パーティングラインの略中央であってよい。略中央部に不整合部を配置することにより、形成される容器底面の略中央部に、非対称に成形される係止を作製することができ、例えば、ブロー成形積層剥離容器を成形した場合には、使用時に内袋を略均一に収縮させていくことが可能となる。
【0075】
また、この分割金型は、分割金型を閉じることで形成される金型キャビティの底面における金型パーティングラインにおいて、上記の不整合部以外の部分は、整合部としてよい。
【0076】
整合部は、金型パーティングラインに段差や隙間が存在せず平坦となっているため、形成される積層ブロー成形容器の底面の容器内側において、容器を形成する材料が、容器パーティングラインの両側について対称に成形される。これにより、積層されている層同士が、形成される容器の底面の容器内側で係止されない。
【0077】
この分割金型により、本態様のブロー成形積層剥離容器を作製する場合には、整合部から形成される平坦部において、外殻から内袋を引き抜くことにより、外殻と内袋との間に外気を導入するための外気導入口を作製することができる。外殻から内袋を引き抜く方法としては、例えば、ブロー成形積層剥離容器を製造し、容器使用前に実施する、予備剥離が挙げられる。
【0078】
キャビティ底面における金型パーティングラインの整合部の位置は、特に限定されるものではない。例えば、金型パーティングラインにおいて、略中央に不整合部を設ける場合には、整合部は、不整合部の両側に存在させてもよい。
【0079】
図4に、この分割金型を例示する。
図4に示される分割金型は、部分型Aと部分型Bの2つの部分型から構成され、部分型Aと部分型Bを閉じることにより、1つの金型キャビティを形成する。
【0080】
図4(a)は部分型Aであり、
図4(c)は部分型Bであり、
図4(b)は、部分型Aと部分型Bとを閉じることで形成した金型キャビティの中央部を、部分型Aと部分型Bを横切るラインで切断した断面図である。すなわち、
図4(a)の部分型Aと、
図4(c)の部分型Bをそれぞれ90度回転させて閉じることで金型キャビティを形成し、形成した金型キャビティの中央部の断面図が
図4(b)である。
【0081】
図4(a)に示される分割金型の部分型Aにおいては、
図4(c)に示される部分型Bと閉じることで金型キャビティを形成したときに、金型キャビティの底面における金型パーティングラインにおいて、不整合を形成する不整合部C11を有する。
図4(a)に示される分割金型においては、不整合部C11は、金型パーティングラインにおいて、略中央部に位置している。
【0082】
また、
図4(a)に示される分割金型の部分型Aにおいては、不整合部C11に連結する金型キャビティの外側に、樹脂流動部D1を備える。
【0083】
また、
図4(a)に示される分割金型の部分型Aにおいては、
図4(c)に示される部分型Bと閉じることで金型キャビティを形成したときに、金型キャビティの底面における金型パーティングラインにおいて、部分型Bと整合する整合部C21を有する。整合部C21は、金型パーティングラインにおいて、不整合部C11の両側に存在している。
【0084】
図4(c)に示される分割金型の部分型Bにおいては、
図4(a)に示される部分型Aと閉じることで金型キャビティを形成したときに、金型キャビティの底面における金型パーティングラインにおいて、不整合を形成する不整合部C12を有する。
【0085】
また、
図4(c)に示される分割金型の部分型Bにおいては、不整合部C12に連結する金型キャビティの外側に、樹脂流動部D2を備える。
【0086】
また、
図4(c)に示される分割金型の部分型Bにおいては、
図4(a)に示される部分型Aと閉じることで金型キャビティを形成したときに、金型キャビティの底面における金型パーティングラインにおいて、部分型Aと整合する整合部C22を有する。整合部C22は、金型パーティングラインにおいて、不整合部C12の両側に存在している。
【0087】
図4に示される分割金型においては、
図4(a)の部分型Aと、
図4(c)の部分型Bをそれぞれ90度回転させて閉じることで、金型キャビティを形成する。形成した金型キャビティの中央部の断面図である
図4(b)に示されるように、部分型Aと部分型Bとで形成される金型キャビティの底部の金型パーティングラインは、部分型Aの不整合部C11と、部分型Bの不整合部C12との高低差により、段差を備える。そしてこの段差により、部分型Aと部分型Bとの間に隙間が形成されることとなる。
【0088】
また、部分型Aの不整合部C11に連結している樹脂流動部D1と、部分型Bの不整合部C12に連結している樹脂流動部D2は、金型キャビティの外側に備えられた凹部であり、本態様の積層ブロー成形容器を製造する際には、当該凹部に、その材料である多層溶融パリソンが挿入される。
【0089】
そして、部分型Aの樹脂流動部D1と、部分型Bの樹脂流動部D2では、部分型Aと部分型Bを閉じる際の型締め圧力により、積層ブロー成形容器の材料である多層溶融パリソンを、樹脂流動部D1及び樹脂流動部D2から、すなわち金型キャビティの外側から、金型キャビティの内側に押し上げるように移動させる。
【0090】
部分型Aと部分型Bを閉じる際の型締め圧力により金型キャビティの外側から内側に押し上げられた多層溶融樹脂は、形成される積層ブロー成形容器の底面の容器内側において、不整合部C11と不整合部C12とで形成される容器パーティングラインの両側について非対称に成形される。これにより、多層溶融パリソンを構成していた樹脂の層同士が、形成される積層ブロー成形容器の底面の容器内側で係止されることとなる。
【0091】
本態様の積層ブロー成形容器の製造方法は、筒状の外層と内層とを有する多層パリソンを、分割金型の間に配置し、分割金型を閉じることにより形成した金型キャビティの底部において、多層パリソンを圧し潰してピンチオフ部を形成するものである。
【0092】
そして、形成されるピンチオフ部の一部に、段差を有する段差部を形成するとともに、ピンチオフ部の残部に、段差を有さない平坦部を形成する。
【0093】
段差部においては、分割金型を閉じる際に、金型キャビティの外側から内側に向かって、多層パリソンを構成する溶融樹脂を押し上げて、金型キャビティの内側の金型パーティングラインの両側について溶融樹脂を非対称に成形し、それよって内層を外層に対して係止する。
【0094】
段差部の位置は、特に限定されるものではない。例えば、ピンチオフ部の略中央に位置するように形成してもよい。略中央部に段差部を配置することにより、成形される積層ブロー成形容器底面の略中央部に、非対称に成形された係止を作製することができ、例えば、ブロー成形積層剥離容器を成形した場合には、使用時に内袋を略均一に収縮させていくことが可能となる。
【0095】
段差部の形成方法は、特に限定されるものではない。例えば、成形に用いる金型キャビティとして、キャビティ底部の金型パーティングラインに、高低差を有するものを用いることによって、段差を形成することができる。
【0096】
金型キャビティの底部の金型パーティングラインが、高低差を有する金型としては、例えば、上記した本発明の分割金型が挙げられる。すなわち、分割金型を閉じることで形成される金型キャビティの底面における金型パーティングラインの一部に、分割金型を構成する複数の部分型の不整合による不整合部を形成することで、金型同士の間に段差を形成する。そして、この段差により、金型同士の間に隙間を形成する。
【0097】
段差部における溶融樹脂の押し上げ方法は、特に限定されるものではない。例えば、段差部に対応する金型パーティングラインの金型キャビティの外側に、樹脂流動部が設けられた分割金型を用いて、分割金型を閉じる際の型締め圧力により、材料となる多層パリソンを構成する溶融樹脂を、樹脂流動部から金型キャビティの内側に押し上げて移動させてもよい。
【0098】
このような樹脂流動部としては、例えば、上記した本発明の分割金型の構成が挙げられる。
【0099】
ピンチオフ部の残部に形成する、段差を有さない平坦部においては、多層パリソンを構成する溶融樹脂を、金型キャビティの内側の金型パーティングラインの両側について対称に成形する。これにより平坦部は、内層が外層に対して係止されない箇所となる。
【0100】
平坦部の形成方法は、特に限定されるものではない。一般的には、成形に用いる金型キャビティとして、キャビティ底部の金型パーティングラインに高低差を設けることなく、整合させたものを用いることで、形成することができる。
【0101】
平坦部は、キャビティ底部の金型パーティングラインに段差や隙間が存在しない状態で成形するため、金型キャビティの内側の金型パーティングラインの両側について溶融樹脂が対称に成形されており、それよって内層が外層に対して係止されていない。
【0102】
平坦部の位置は、特に限定されるものではない。例えば、ピンチオフ部の略中央に段差部を設ける場合には、平坦部は、段差部の両側に存在させてもよい。
【0103】
本発明の積層ブロー成形容器の製造方法によって、ブロー成形積層剥離容器を作製することも可能である。すなわち、外殻と、外殻の内側に積層配置された内袋と、を備え、内容物の減少に伴って内袋が外殻から剥離して収縮する容器を形成することができる。
【0104】
本発明の積層ブロー成形容器の製造方法によって、ブロー成形積層剥離容器を作製する場合には、筒状の外層と内層とを有する多層パリソンの、外層から外殻を形成し、内層から内袋を形成する。そして、ピンチオフ部の段差部に形成される係止により、内袋が外殻に対して係止される。
【0105】
また、ピンチオフ部の平坦部においては、ブロー成形積層剥離容器を作製の後に外殻から内袋を引き抜くことにより、外殻と内袋との間に外気を導入するための外気導入口を作製することができる。外殻から内袋を引き抜く方法としては、例えば、ブロー成形積層剥離容器を製造し、容器使用前に実施する、予備剥離が挙げられる。
【0106】
図5に、本態様の積層ブロー成形容器の製造方法を示す。
図5は、
図4に示される分割金型を用いて、積層ブロー成形容器を製造する工程を示したものである。
【0107】
本態様の積層ブロー成形容器の製造にあたっては、先ず、
図5(a)に示されるように、最外層から最内層までが順番に配置された溶融状態の多層パリソン9を、分割金型の部分型Aと部分型Bとの間に配置する。分割金型の部分型Aは不整合部C11を備え、部分型Bは不整合部C12を備えており、部分型Aと部分型Bとを閉じて金型キャビティを形成した際には、不整合部C11と不整合部C12とから、金型キャビティには段差が作製されることとなる。
【0108】
続いて、
図5(b)に示されるように、部分型Aと部分型Bとを閉じ始めると、溶融状態の多層パリソン9は、部分型Aの不整合部C11と、部分型Bの不整合部C12によりピンチオフされ、金型キャビティの外部に存在している多層パリソンは、部分型Aの不整合部C11に連結している樹脂流動部D1(図示せず)と、部分型Bの不整合部C12に連結している樹脂流動部D2(図示せず)のそれぞれの凹部に、嵌め込まれるようにして移動する。
【0109】
更に、部分型Aと部分型Bとを閉じることにより、金型キャビティを形成する際には、
図5(c)に示される状態となる。部分型Aと部分型Bを閉じる際の型締め圧力(図中、矢印で示す)により、パリソン9を構成する溶融樹脂を、部分型Aの樹脂流動部D1と部分型Bの樹脂流動部D2から、形成された金型キャビティの内側に移動させる。そして、移動させた溶融樹脂により、部分型Aの不整合部C11と部分型Bの不整合部C12によって形成されている段差部分に、係止7を作製する。
【0110】
この後、本態様の積層ブロー成形容器本体の口部となる開口部に、ブローノズルを挿入し、金型キャビティ内にエアーを吹き込むことで、外層と内層とが積層された積層ブロー成形容器を成形することができる。成形後は、分割金型の部分型Aと部分型Bとを開いて、積層ブロー成形容器を取り出す。
【実施例0111】
〈積層剥離容器〉
以下の実施例及び比較例では、容器外側から容器内側に向かって下記の積層構成の外殻及び内袋を有するブロー成形積層剥離容器を用いた。なお、外殻で用いた「ポリエチレン(PE)及び米粉のブレンド」は、ポリエチレン(PE)及びポリエチレン(PE)中に米粉を含有しているマスターバッチから得た。
(外殻)
ポリエチレン(PE)及び米粉のブレンド(厚さ:約900μm)/環状オレフィン共重合体(COC)(厚さ:約60μm)
(内袋)
エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)(厚さ:約35μm)/ポリオレフィン系接着層(厚さ:約25μm)/ポリエチレン(PE)(厚さ:約150μm)
【0112】
〈実施例1~6及び比較例1~2〉
下記の表1に示すように、外殻の外層におけるポリエチレンと米粉との合計に対する米粉の配合割合を変化させて実施例1~6及び比較例1~2のブロー成形積層剥離容器を製造した。これらのブロー成形積層剥離容器の製造においては、
図2~6で示すようにして、ブロー成形積層剥離容器が底面に容器パーティングラインを有し、容器パーティングラインの一部が、外気導入スリットを構成しており、かつ容器パーティングラインの他の一部が、内袋を外殻に対して係止する内袋係止部を構成するようにした。
【0113】
なお、引裂強度の評価のためには、ポリエチレンと米粉とが混合された樹脂を、熱プレス機にて約900μmの厚さのシート状に成形し、このサンプルについてJIS K 7128-2を参考に、シート枚数1枚の引き裂き強度を評価した。なお、ここでは、外殻を構成する樹脂層のうちの環状オレフィン共重合体(COC)層は積層せずに引裂強度の評価を行ったが、外殻に占めるCOC層の厚さは10%未満であり、引裂き強度の主たる要因となりえないので、実験結果の評価においては実質的に問題がないと考えられる。
【0114】
また、ポリエチレンと米粉とが混合された樹脂のMFRは、JIS K 7210-1:2014に準拠して評価した。
【0115】
結果は下記の表1に示している。ここで、表1において、「引き裂き性」は、外気導入スリットをきっかけとしてブロー成形積層剥離容器の外殻を手で引き裂けた場合には〇、手での引き裂きが困難であった場合には×とした。また、「ブロー成形性」は、積層剥離容器をブロー成形で成形できた場合には〇、成形できなかった場合には×としている。
【0116】
【0117】
表1で示されているように、実施例1~4のブロー成形積層剥離容器では、「引き裂き性」及び「ブロー成形性」の両方が「〇」であったのに対して、比較例1のブロー成形積層剥離容器では、「ブロー成形性」が「×」であり、また比較例2のブロー成形積層剥離容器では、「引き裂き性」及が「×」であった。