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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063824
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20240507BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H04L7/00 140
H04L27/26 410
H04L27/26 114
H04L27/26 420
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171933
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(71)【出願人】
【識別番号】517085125
【氏名又は名称】株式会社毎日放送
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大季
(72)【発明者】
【氏名】武居 裕之
(72)【発明者】
【氏名】仲田 樹広
(72)【発明者】
【氏名】柴山 武英
(72)【発明者】
【氏名】岩下 功志
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047BB01
5K047BB05
5K047GG42
5K047LL10
5K047MM49
(57)【要約】
【課題】単方向の無線機の軽微な改修により帯域内全二重無線通信を実現する。
【解決手段】本例の無線通信システムは、支局送信機201と本局受信機203の間で単方向通信を行う第1の通信系統と、第1の通信系統と同じ周波数帯を用いて本局送信機204と支局受信機202の間で単方向通信を行う第2の通信系統とを有する。これら送信機及び受信機201~204は、それぞれがクロック発振器205,207と局部発振器206を備え、支局送信機201のクロック発振器205と局部発振器206を基準にして動作するように制御される。更に、支局受信機203と支局送信機204は、これらの間で制御用信号を通信するためのインターフェース216を介して接続される。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の送信機と第1の受信機の間で単方向通信を行う第1の通信系統と、前記第1の通信系統と同じ周波数帯を用いて第2の送信機と第2の受信機の間で単方向通信を行う第2の通信系統とを有し、
これら送信機及び受信機は、それぞれがクロック発振器と局部発振器を備え、前記第1の送信機のクロック発振器と局部発振器を基準にして動作するように制御され、
前記第1の受信機と前記第2の送信機は、これらの間で制御用信号を通信するためのインターフェースを介して接続されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記第1の受信機は、前記第1の送信機の局部発振器に対する自身の局部発振器の周波数偏差を補正し、更に、前記制御用信号として、自身の局部発振器に対する前記第2の送信機の局部発振器の周波数偏差を補正するための周波数補正値を、前記インターフェースを介して前記第2の送信機へ提供し、
前記第2の送信機は、前記第1の受信機から提供された前記周波数補正値に基づいて、自身の局部発振器の周波数偏差を補正することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記第1の受信機は、前記第1の送信機のクロック発振器と同期するように自身のクロック発振器を制御し、更に、前記制御用信号として、前記第2の送信機のクロック発振器を前記第1の送信機のクロック発振器と同期させるための基準タイミング信号を、前記インターフェースを介して前記第2の送信機へ提供し、
前記第2の送信機は、前記第1の受信機から提供された前記基準タイミング信号に基づいて、自身のクロック発振器を前記第1の送信機のクロック発振器と同期させることを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記第2の送信機は、前記第2の受信機に送信した信号と同じである既知送信信号を、前記制御用信号として前記インターフェースを介して前記第1の受信機へ提供し、
前記第1の受信機は、前記第2の送信機から提供された前記既知送信信号に基づいて、前記第2の送信機から前記第1の受信機に回り込む自己干渉信号のキャンセルを行うことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の無線通信システムにおいて、
前記第1の送信機と前記第2の受信機は、これらの間で制御用信号を通信するためのインターフェースを介して接続されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項5に記載の無線通信システムにおいて、
前記第1の送信機は、前記制御用信号として、前記第1の受信機に送信した信号と同じである既知送信信号を、前記インターフェースを介して前記第2の受信機へ提供し、
前記第2の受信機は、前記第1の送信機から提供された前記既知送信信号に基づいて、前記第1の送信機から前記第2の受信機に回り込む自己干渉信号のキャンセルを行うことを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
請求項2に記載の無線通信システムにおいて、
前記第1の送信機は、第1の既知信号を送信信号に含めて送信し、
前記第2の送信機は、前記第1の既知信号に直交する第2の既知信号を送信信号に含めて送信し、
前記第1の受信機は、受信信号に含まれる前記第1の既知信号の成分に基づいて、自身の局部発振器の周波数偏差を補正し、更に、前記受信信号に含まれる前記第2の既知信号の成分に基づいて、前記周波数補正値を算出して前記第2の送信機へ提供することを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
請求項7に記載の無線通信システムにおいて、
前記第1の既知信号と前記第2の既知信号は、符号領域で直交化されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項9】
請求項7に記載の無線通信システムにおいて、
前記第2の送信機の周波数偏差の補正には、
前記第1の受信機によりサブキャリア周波数間隔以上の周波数偏差を検出し、前記第2の送信機によりその補正を行う第1の処理と、
前記第1の処理の後に、前記第1の受信機によりサブキャリア周波数間隔未満の周波数偏差を検出し、前記第2の送信機によりその補正を行う第2の処理と、
が含まれることを特徴とする無線通信システム。
【請求項10】
請求項5に記載の無線通信システムにおいて、
前記第1の送信機の送信信号と前記第2の送信機の送信信号の間に周波数偏差が存在する場合に、前記第2の受信機は、前記制御用信号として、その周波数偏差の検出結果を示す周波数偏差情報を、前記インターフェースを介して前記第1の送信機へ提供し、
前記第1の送信機は、前記第2の受信機から提供された前記周波数偏差情報を送信信号に含めて送信し、
前記第1の受信機は、受信信号に含まれる前記周波数偏差情報に基づいて、前記周波数補正値を算出して前記第2の送信機へ提供することを特徴とする無線通信システム。
【請求項11】
請求項5に記載の無線通信システムにおいて、
前記第1の送信機の送信信号と前記第2の送信機の送信信号の間に周波数偏差が存在する場合に、基準となる局部発振器を、前記第1の送信機の局部発振器から前記第2の送信機の局部発振器に変更することを特徴とする無線通信システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送受信分離型で帯域内全二重無線通信を実現することが可能な無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像や音声等の放送素材の伝送に、FPU(Field Pickup Unit)が使用されている。撮影現場で放送素材を正しく伝送できているかどうかを確認できるように、伝送された放送素材を受信側から送信側へ返送することが望まれている。そこで、双方向通信が可能なFPUも実用されている。
【0003】
本発明に係る技術分野の従来技術としては、以下のようなものがある。例えば、特許文献1には、近距離で伝送を行う場合に、フレーム期間内の冗長期間を除くことで、伝送レートを向上させ、伝送装置全体の性能の向上を図る発明が開示されている。また、特許文献2には、同一の帯域を用いて時間的に伝送を切り替えることで、双方向の伝送回線を確保する発明が開示されている。
【0004】
無線通信における双方向通信では、時分割多重方式や周波数分割多重方式が一般的であるが、近年では、帯域内全二重無線通信を行う方式も検討されている。図1には、従来例に係る無線通信システムとして、一般的な帯域内全二重無線通信を実現する無線通信システムの構成例を示してある。ここでは、対向する2つの無線局の一方を「支局」とし、他方を「本局」として説明する。
【0005】
図1の無線通信システムは、支局側に配備された支局送受信機101と、本局側に配備された本局送受信機102とを備えている。支局送受信機101及び本局送受信機102は、いずれも、送信機能と受信機能を一体的に備えた双方向の無線機である。支局送受信機101では、自身の送信処理ブロックと受信処理ブロックに対し、共通のクロック発振器105からのクロックと局部発振器106からの信号(以下、「ローカル信号」と呼称する)が供給される。本局送受信機102も同様に、自身の送信処理ブロックと受信処理ブロックに対し、共通の可変制御クロック発振器107からのクロックと局部発振器106からのローカル信号が供給される。
【0006】
帯域内全二重無線通信を行うためには、支局及び本局ともに、送信アンテナから受信アンテナに回り込む自己干渉信号を受信側でキャンセルすることが重要である。自己干渉信号のキャンセルを行うためには、支局送受信機101と本局送受信機102でクロック周波数とキャリア周波数が一致していることが望ましい。そこで、本局送受信機102の可変制御クロック発振器107の周波数を支局送受信機101のクロック発振器105の周波数に一致させ、本局送受信機102の局部発振器106の周波数偏差も補正する必要がある。支局送受信機101と本局送受信機102は同じ特性の局部発振器106を使用しているが、個体差等により周波数偏差が生じるので、その補正が必要となる。
【0007】
以下では、可変制御クロック発振器107の周波数を基準クロックの周波数に一致させることを「クロック同期」と呼称し、局部発振器104の周波数偏差の補正を「キャリア周波数補正」と呼称する。以下に、クロック同期とキャリア周波数補正について、順に説明する。
【0008】
まず、クロック同期について説明する。本局送受信機102は、可変制御クロック発振器107を使用しており、受信ベースバンド部111で受信信号から得られる受信シンボルタイミングと内部のシンボルタイミングの差が0になるような制御、所謂PLL(Phase Locked Loop)処理を行うことで、支局送受信機101にクロック同期させる。また、先述した通り、可変制御クロック発振器107は送信処理にも利用されるため、本局送受信機102で送信ベースバンド信号の生成に使用されるクロックも支局送受信機101に同期された状態となる。
【0009】
次に、キャリア周波数補正について説明する。本局送受信機102は、受信信号から周波数偏差を検出し、その周波数偏差が0になるように受信周波数補正部109で受信信号に対して周波数補正を行い、更に、送信周波数補正部108で送信信号に対しても同様の周波数補正を行う。ここで、周波数偏差の検出には、例えば、無線通信技術で使用されるAFC(Automatic Frequency Control)処理を用いることができる。本局送受信機102は、無線信号に挿入されている既知信号や無線信号の周期性から周波数偏差を検出し、その偏差分を補正する。
【0010】
以上のようなクロック同期処理とキャリア周波数補正処理により、支局送受信機101と本局送受信機102でクロック周波数とキャリア周波数が一致するので、自己干渉キャンセル処理を容易に行えるようになる。
【0011】
本発明に係る技術分野の従来技術としては、以下のようなものがある。例えば、特許文献1には、近距離で伝送を行う場合に、フレーム期間内の冗長期間を除くことで、伝送レートを向上させ、伝送装置全体の性能を向上させる発明が開示されている。また、特許文献2には、同一の帯域を用いて時間的に伝送を切り替えることで、双方奥の伝送回線を確保する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11-215107号公報
【特許文献2】特開平11-331133号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ARIB STD-B71 超高精細度テレビジョン放送番組素材伝送用可搬形マイクロ波帯OFDM方式デジタル無線伝送システム、一般社団法人電波産業会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
帯域内全二重無線通信を行う機能を有する双方向の無線機を、一時的に、送信機能または受信機能のみで使用したいという要求がある。しかしながら、図1に示す支局送受信機101及び本局送受信機102は、送信機能と受信機能が一体となっており、単方向の無線機(送信機能または受信機能のみの無線機)と比べて装置が大型である。このため、上述した要求に対しては、支局送受信機101や本局送受信機102のような双方向の無線機よりも、単方向の無線機のほうが適している。その一方で、単方向の無線機を基地局等に既設しているユーザーにとっては、新たに帯域内全二重無線通信を行うための無線通信システムを導入する際に、既存の無線機を活用することができないという問題もある。
【0015】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、単方向の無線機の軽微な改修により帯域内全二重無線通信を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様に係る無線通信システムは、以下のように構成される。すなわち、本発明に係る無線通信システムは、第1の送信機と第1の受信機の間で単方向通信を行う第1の通信系統と、第1の通信系統と同じ周波数帯を用いて第2の送信機と第2の受信機の間で単方向通信を行う第2の通信系統とを有し、これら送信機及び受信機は、それぞれがクロック発振器と局部発振器を備え、第1の送信機のクロック発振器と局部発振器を基準にして動作するように制御され、第1の受信機と第2の送信機は、これらの間で制御用信号を通信するためのインターフェースを介して接続される。
【0017】
ここで、第1の受信機は、第1の送信機の局部発振器に対する自身の局部発振器の周波数偏差を補正し、更に、制御用信号として、自身の局部発振器に対する第2の送信機の局部発振器の周波数偏差を補正するための周波数補正値を、インターフェースを介して第2の送信機へ提供し、第2の送信機は、第1の受信機から提供された周波数補正値に基づいて、自身の局部発振器の周波数偏差を補正するように構成され得る。
【0018】
また、第1の受信機は、第1の送信機のクロック発振器と同期するように自身のクロック発振器を制御し、更に、制御用信号として、第2の送信機のクロック発振器を第1の送信機のクロック発振器と同期させるための基準タイミング信号を、インターフェースを介して第2の送信機へ提供し、第2の送信機は、第1の受信機から提供された基準タイミング信号に基づいて、自身のクロック発振器を第1の送信機のクロック発振器と同期させるように構成され得る。
【0019】
また、第2の送信機は、制御用信号として、第2の受信機に送信した信号と同じである既知送信信号を、インターフェースを介して第1の受信機へ提供し、第1の受信機は、第2の送信機から提供された既知送信信号に基づいて、第2の送信機から第1の受信機に回り込む自己干渉信号のキャンセルを行うように構成され得る。
【0020】
また、第1の送信機と第2の受信機は、これらの間で制御用信号を通信するためのインターフェースを介して接続するように構成され得る。
【0021】
また、第1の送信機は、制御用信号として、第1の受信機に送信した信号と同じである既知送信信号を、インターフェースを介して第2の受信機へ提供し、第2の受信機は、第1の送信機から提供された既知送信信号に基づいて、第1の送信機から第2の受信機に回り込む自己干渉信号のキャンセルを行うように構成され得る。
【0022】
また、第1の送信機は、第1の既知信号を送信信号に含めて送信し、第2の送信機は、第1の既知信号に直交する第2の既知信号を送信信号に含めて送信し、第1の受信機は、受信信号に含まれる第1の既知信号の成分に基づいて、自身の局部発振器の周波数偏差を補正し、更に、受信信号に含まれる第2の既知信号の成分に基づいて、周波数補正値を算出して第2の送信機へ提供するように構成され得る。
【0023】
また、第1の既知信号と第2の既知信号は、符号領域で直交化され得る。
【0024】
また、第2の送信機の周波数偏差の補正には、第1の受信機によりサブキャリア周波数間隔以上の周波数偏差を検出し、第2の送信機によりその補正を行う第1の処理と、第1の処理の後に、第1の受信機によりサブキャリア周波数間隔未満の周波数偏差を検出し、第2の送信機によりその補正を行う第2の処理とが含まれるように構成され得る。
【0025】
また、第1の送信機の送信信号と第2の送信機の送信信号の間に周波数偏差が存在する場合に、第2の受信機は、その周波数偏差の検出結果を示す周波数偏差情報を、制御用信号としてインターフェースを介して第1の送信機へ提供し、第1の送信機は、第2の受信機から提供された周波数偏差情報を送信信号に含めて送信し、第1の受信機は、受信信号に含まれる周波数偏差情報に基づいて、周波数補正値を算出して第2の送信機へ提供するように構成され得る。
【0026】
また、第1の送信機の送信信号と第2の送信機の送信信号の間に周波数偏差が存在する場合に、基準となる局部発振器を、第1の送信機の局部発振器から第2の送信機の局部発振器に変更するように構成され得る。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、単方向の無線機の軽微な改修により帯域内全二重無線通信を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来方式に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】本発明の第1実施例に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
図3図2のシステムにおける送信ベースバンド部の構成例を示す図である。
図4図2のシステムにおける受信ベースバンド部の構成例を示す図である。
図5】本発明の第2実施例に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
図6図5のシステムにおける受信ベースバンド部の構成例を示す図である。
図7】本発明の第3実施例における周波数補正のシーケンス例を示す図である。
図8A】OFDM信号の周波数直交性の概念を示す図である。
図8B】自己干渉波の周波数偏差が生じている状態のOFDM信号の例を示す図である。
図9A】周波数偏差が0のときの遅延プロファイルの例を示す図である。
図9B】周波数偏差が生じているときの遅延プロファイルの例を示す図である。
図10】周波数スキャン時の周波数シフト量に対するBPF出力電力及びBEF出力電力の例を示す図である。
図11】BPF電力のピークを検出する方式Aと方式Bを比較した図である。
図12】本発明の第5実施例に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
図13図12のシステムにおける周波数補正のシーケンス例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一実施形態に係る無線通信システムについて、図面を参照して説明する。
本発明では、単方向の無線機を利用して帯域内全二重無線通信を実現する。つまり、図1における支局送受信機101の送信機能と受信機能を2台の単方向の無線機に分割し、本局送受信機102も同様に、その送信機能と受信機能を2台の単方向の無線機に分割する。以下では、送信側となる無線機を「送信機」と呼称し、受信側となる無線機を「受信機」と呼称する。
【0030】
本発明に係る無線通信システムは、帯域内全二重無線通信を行うための基本的な構成として、第1の送信機と第1の受信機の間で単方向通信を行う第1の通信系統と、第1の通信系統と同じ周波数帯を用いて第2の送信機と第2の受信機の間で単方向通信を行う第2の通信系統とを有する。図2に示す第1実施例では、図面上側の支局送信機201と本局受信機203が第1の通信系統に相当し、図面下側の本局送信機204と支局受信機202が第2の通信系統に相当する。また、図5に示す第2実施例では、図面上側の送信局送信機501と中継局受信機503が第1の通信系統に相当し、図面下側の中継局送信機504と受信局受信機502が第2の通信系統に相当する。
【0031】
本システムにおける無線機(例えば、図2の無線機201~204)は、帯域内全二重無線通信を利用しない場合に単独で送信機又は受信機として使用できるように、クロック発振器(205,207)と局部発振器(206)をそれぞれ個別に搭載している。このように、各局の送信機と受信機が独立したクロック発振器と局部発振器を使用する構成の場合、各局の送信機と受信機の間でクロック発振器の同期(クロック同期)や局部発振器の周波数偏差の補正(キャリア周波数補正)が必要となる。つまり、同じ通信系統の送信機と受信機の間(例えば、支局送信機201と本局受信機203の間)だけでなく、異なる通信系統の送信機と受信機の間(例えば、本局受信機203と本局送信機204の間)でのクロック同期やキャリア周波数補正も必要となる。
【0032】
本システムにおけるクロック同期とキャリア周波数補正の概要について、図2を参照して説明する。なお、図2に示す無線通信システムは、単方向の無線機を二対向用いると共に、各局の送信機と受信機を、これらの間で制御用信号を通信するためのインターフェース216を介して接続した構成である。制御用信号としては、送信機側で局部発振器の周波数偏差を補正するための周波数補正値(Sa)、送信機側でクロック同期を行うための基準タイミング信号(Sb)、受信機側で自己干渉信号をキャンセルするための既知送信信号(Sc)などが挙げられる。ここでは、支局送信機201のクロック発振器205と局部発振器206を基準にして、他の無線機202~204のクロック同期や周波数補正を行うものとする。
【0033】
まず、キャリア周波数補正の概要について説明する。自己干渉信号のキャンセルを容易にするためには、本局側において、支局送信機201の局部発振器206と本局送信機204の局部発振器206の間の周波数偏差を検出し、送信周波数補正部208にて周波数偏差を補正する必要がある。そこで、本局受信機203は、本局送信機204からの自己干渉波を観測して、本局送信機204の局部発振器206の周波数偏差を検出する。この周波数偏差検出にはAFC処理と同様の方式を用いることができ、無線信号に挿入されている既知信号や無線信号の周期性から周波数偏差を検出する。そして、本局受信機203で検出した周波数偏差が0になるように周波数補正値(Sa)を求め、本局送信機204の送信周波数補正部208に通知して、送信信号に対する周波数補正を実行させる。
【0034】
また、支局側において、支局受信機202の局部発振器206の周波数偏差の補正に関しても同様に、受信信号に基づいて上述のAFC処理と同様の方式で実施する。このとき、本局送信機204の送信周波数と支局送信機201の送信周波数は先述の処理により同一になっているため、支局受信機202は、本局送信機204からの受信信号(希望波)と支局送信機201からの受信信号(自己干渉波)のどちらを使用してもよい。
【0035】
続いて、クロック同期の概要について説明する。自己干渉キャンセルを容易にするためには、本局側において、本局送信機204の可変制御クロック発振器207を支局送信機201のクロック発振器205と同期させる必要がある。そこで、本局受信機203は、支局送信機201からの受信タイミング信号を、クロック同期のための基準タイミング信号として、本局送信機204に通知する。本局送信機204は、この基準タイミング信号と送信ベースバンド部210で生成したタイミング信号とを一致させるPLL処理により、本局送信機204の可変制御クロック発振器207を支局送信機201のクロック発振器205に同期させる。これにより、支局送信機201と本局送信機204は、互いに同期されたクロックで動作することができる。
【0036】
また、支局側において、支局受信機202の可変制御クロック発振器207の同期に関しては、支局受信機202が本局送信機204からの受信信号に基づいてクロックを同期させればよい。あるいは、支局送信機201から支局受信機202へ基準タイミング信号を通知するためのインターフェースを追加し、支局受信機202がこの基準タイミング信号にクロックを同期させるようにしてもよい。
【0037】
以上のような方法により、送信機能と受信機能を2台の単方向の無線機に分割した図2の構成でも、支局送信機201と本局送信機204のクロック周波数とキャリア周波数を一致させることができる。その結果、本局送信機204において、本局送信機204から回り込む自己干渉信号のキャンセルを容易に行うことが可能となる。
以下、本発明に係る無線通信システムの詳細について、図面を参照しつつ、幾つかの実施例を用いて説明する。
【0038】
[第1実施例]
本発明の第1実施例について説明する。図2には、第1実施例に係る無線通信システムの構成例を示してある。図2は構成が複雑なため、先に無線通信システムの全体像の説明を行い、その後、信号の流れに沿って詳細に説明する。以下の説明では、支局送信機201の送信信号を「支局送信信号」と呼称し、本局送信機204の送信信号を「本局送信信号」と呼称する。
【0039】
第1実施例では、支局側の拠点に支局送信機201と支局受信機202を配置し、本局側の拠点に本局受信機203と本局送信機204を配置してある。各送信機と受信機には、アンテナ215が個別に取り付けられている。支局送信信号は、本局受信機203のアンテナ215で希望波として受信される一方で、支局受信機202のアンテナ215で自己干渉波として受信される。すなわち、支局受信機202は、支局送信信号が自己干渉波として受信される程度に支局送信機201に近接して配置されている。また、本局送信信号は、支局受信機202のアンテナ215で希望波として受信される一方で、本局受信機203のアンテナ215で自己干渉波として受信される。すなわち、本局受信機203は、本局送信信号が自己干渉波として受信される程度に本局送信機204に近接して配置されている。
【0040】
本局受信機203と本局送信機204は、ケーブル等のインターフェース216を介して、互いに通信可能に接続される。また、支局送信機201と支局受信機202も、ケーブル等の別のインターフェース216を介して、互いに通信可能に接続される。各局の送信機と受信機は、インターフェース216を介して、周波数補正値(Sa)、基準タイミング信号(Sb)、既知送信信号(Sc)などの制御用信号を通信する。ただし、支局送信機201のクロック発振器205と局部発振器206が基準となるため、支局側では、周波数補正値(Sb)と基準タイミング信号(Sb)は不要であり、既知送信信号(Sc)のみを通信すればよい。ここでは、インターフェース216としてケーブルを用いているが、インターフェース216はこれに限らず、他の態様であってもよい。例えば、本局と支局で通信する無線信号とは別の無線信号を用いて、制御用信号を通信するためのインターフェースを構成してもよい。
【0041】
次に、各無線機の局部発振器206に着目して説明する。本例の無線通信システムでは、支局側の拠点にある支局送信機201及び支局受信機202と本局側の拠点にある本局受信機203及び本局送信機204とで、合計4個の局部発振器206が存在している。以下の説明では、支局送信機201の局部発振器206の発振周波数を基準周波数として、他の無線機202~204の受信周波数補正部209や送信周波数補正部208で、それぞれの局部発振器206の発振周波数を基準周波数に一致させる処理を実行する。
【0042】
次に、各無線機のクロック発振器205,207に着目して説明する。支局送信機201には、基準となるクロック発振器205が搭載されており、他の無線機202~204には、可変制御クロック発振器207が搭載されている。各可変制御クロック発振器207を周波数制御することでPLLを構成し、受信タイミング信号等の基準タイミング信号に対して同期させる。これにより、無線機202~204の可変制御クロック発振器207を、支局送信機201のクロック発振器205に同期させることができる。
以上が、第1実施例に係る無線通信システムの全体像の説明である。
【0043】
以下では、第1実施例に係る無線通信システムの詳細について、クロック周波数とキャリア周波数の基準となる支局送信機201から、信号の流れに沿って、本局受信機203、本局送信機204、支局受信機202の順に説明する。なお、内部処理ブロックである送信ベースバンド部210と受信ベースバンド部211については、後ほど図3図4を用いて説明する。その中で、クロック同期、キャリア周波数補正、自己干渉キャンセルに関する具体的な処理の説明を行うものとする。
【0044】
図2の支局送信機201は、クロック発振器205を内蔵しており、クロック発振器205により発振されたクロックを送信ベースバンド部210に供給して、送信ベースバンド信号を生成する際に使用する。送信ベースバンド部210は、送信ベースバンド信号の生成、自己干渉キャンセルのための既知送信信号の提供、クロック同期などの処理を実行する機能を有する。
【0045】
支局送信機201は、基準となるクロック発振器205を有しているため、同機の送信ベースバンド部210は、送信ベースバンド信号の生成、既知送信信号の提供の処理のみを実行し、クロック同期処理は実行しない。クロック同期処理は、本局送信機204の送信ベースバンド部210でのみ実行される。ここでは、支局送信機201の送信ベースバンド部210が実行する2つの処理(送信ベースバンド信号の生成、既知送信信号の提供)の概要と、それら処理を実現するための信号の通信について説明するものとし、処理の詳細については後述する。
【0046】
支局送信機201において、送信ベースバンド部210は、ポートAから入力される送信情報に対して無線符号化や変調を施して送信ベースバンド信号を生成し、ポートBからDAC(Digital to Analog Converter)212に出力する。送信ベースバンド部210は更に、本局受信機203に対して送信する信号と同じである既知送信信号を、支局受信機202での自己干渉キャンセルのために、ポートCからインターフェース216を経由して支局受信機202に提供する。
【0047】
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing;直交周波数分割多重)方式を前提とした場合、ポートCから出力する既知送信信号は、周波数領域又は時間領域のどちらの送信信号であってもよい。ここでは、受信側での処理の説明の簡単化のために、周波数領域の送信信号を出力するものとする。また、シングルキャリア方式の場合は、時間領域の信号や波形等化後の領域でのキャンセルを想定して、信号点マッピング信号を出力する。
【0048】
支局送信機201において、DAC212は、入力された信号をデジタル形式からアナログ形式に変換し、ミキサ214へ出力する。ミキサ214には、同機の局部発振器206からローカル信号が供給されており、入力された信号をローカル信号に基づいてアップコンバートして出力する。ミキサ214から出力される送信信号は、アンテナ215から空間へ送出される。ここで、支局送信機201のミキサ214から出力される送信信号のキャリア周波数は、同機の局部発振器206の周波数に基づいており、この局部発振器206の周波数が帯域内全二重無線通信システム全体の基準キャリア周波数となる。
【0049】
支局送信信号は、空間を経由して本局受信機203のアンテナ215で受信され、受信信号としてミキサ214に入力される。本局受信機203のミキサ214には、同機の局部発振器206からのローカル信号が入力されており、受信信号をローカル信号に基づいてダウンコンバートして出力する。ミキサ214でダウンコンバートされた受信信号は、ADC(Analog to Digital Converter)213へ出力される。
【0050】
本局受信機203において、ADC213は、入力された信号をアナログ形式からデジタル形式に変換し、受信周波数補正部209へ出力する。ここで、本局受信機203の局部発振器206は、キャリア周波数の基準である支局送信機201の局部発振器206に対して周波数偏差が生じているものとする。受信周波数補正部209は、受信ベースバンド部211のポートDから出力される周波数補正値に基づいて、周波数偏差が0となるように受信周波数の補正を行う。周波数補正値は、受信ベースバンド部211において、支局送信機201からの受信信号に基づいて算出される。受信周波数補正部209により周波数補正された受信信号は、受信ベースバンド部211のポートAに入力される。
【0051】
同様に、本局送信信号のキャリア周波数は、本局送信機204の局部発振器206の周波数に基づいているが、本局受信機203の局部発振器206と同様に周波数偏差が生じているものとする。本局受信機203の受信ベースバンド部211は、その周波数偏差を補正するための周波数補正値をポートFから出力する。本局送信機204の送信周波数補正部208は、受信ベースバンド部211のポートFから出力された周波数補正値に基づいて、周波数偏差が0になるように送信周波数の補正を行う。なお、本局受信機203と本局送信機204のそれぞれの局部発振器206の周波数偏差は異なっており、周波数補正値も異なるものとする。
【0052】
本局受信機203の受信ベースバンド部211は、上記の周波数補正値を算出する処理の他に、クロック同期処理、自己干渉キャンセル処理も実行する。ここでは、それら処理の概要と、それら処理を実現するための信号の通信について説明するものとし、処理の詳細については後述する。
【0053】
クロック同期処理に関して、本局受信機203の受信ベースバンド部211は、同機の可変制御クロック発振器207の周波数が支局送信機201のクロック周波数205の周波数に一致するように、ポートEから可変制御クロック発振器207へクロック制御信号を出力して周波数制御する。本局受信機203の受信ベースバンド部211は更に、本局送信機204の可変制御クロック発振器207の周波数に関しても、支局送信機201のクロック発振器205の周波数に一致させるために、ポートGから同期用タイミング信号を出力する。
【0054】
自己干渉キャンセル処理に関して、本局受信機203の受信ベースバンド部211は、本局送信機204の送信ベースバンド部210から提供される既知送信信号を用いて自己干渉信号のレプリカを生成し、受信信号からレプリカを減算することで希望波のみを抽出する。自己干渉信号のレプリカは、例えば、送信側のアンテナから受信側のアンテナへの回り込み特性を既知送信信号に乗じることで生成される。
【0055】
次に、本局送信機204から支局受信機202への信号の流れについて説明する。本局送信機204は、支局送信機201とは異なって基準クロックを有していないため、送信ベースバンド部210ではクロック同期処理も必要となる。ここでは、まだ説明していない送信ベースバンド部210の処理であるクロック同期処理の概要と、その処理を実現するための信号の通信について説明するものとし、処理の詳細については後述する。
【0056】
クロック同期処理に関して、本局送信機204の送信ベースバンド部210は、ポートDに入力される同期用タイミング信号(本例では、本局受信機203での受信タイミング信号)を参照信号として、同機の可変制御クロック発振器207で生成したタイミング信号と一致するように、ポートEから可変制御クロック発振器207へクロック制御信号を出力して周波数制御する。これにより、本局送信機204の可変制御クロック発振器207を、支局送信機201のクロック発振器205に同期させることができる。
【0057】
本局送信機204の送信ベースバンド部210は、送信ベースバンド信号を生成してポートBから送信周波数補正部208へ出力する。また、支局送信機201と同様に、送信ベースバンド部210は、支局受信機202に対して送信する信号と同じである既知送信信号を、本局受信機203での自己干渉キャンセルのために、ポートCからインターフェース216を経由して本局受信機203に提供する。
【0058】
本局送信機204の送信周波数補正部208は、送信ベースバンド部210から入力される送信ベースバンド信号を、本局受信機203の受信ベースバンド部211から入力される周波数補正値に従って周波数補正して、DAC212へ出力する。この処理により、本局送信機204のキャリア周波数と支局送信機201のキャリア周波数を一致させることができる。以降の本局送信機204の処理は、支局送信機201と同様であるため説明を省略する。
【0059】
本局送信信号は、空間を経由して支局受信機202のアンテナ215で受信され、受信信号としてミキサ214に入力される。支局受信機202における受信ベースバンド部211までの処理は、本局受信機203と同様であるため、その説明を省略する。ただし、支局受信機202の受信ベースバンド部211では、ポートFとポートGは未使用である。支局送信機201がクロック周波数とキャリア周波数の基準なので、支局送信機201にとって周波数補正値と基準タイミング信号は不要であるためである。
以上により、支局送信機201から順に信号の流れを説明した。
【0060】
次に、送信ベースバンド部210の内部処理について、図3を用いて詳細に説明する。図3にて破線で示す処理ブロック(位相比較部305、シンボル周期カウンタ306、クロック同期制御部307)は、図1に示した送受信一体型の構成では不要であるが、図2のように送信機と受信機に機能分割した構成で必要となる。なお、図3に示す送信ベースバンド部210はOFDM方式を前提としているが、シングルキャリア方式であっても問題ない。
【0061】
送信ベースバンド部210の主な役割は、送信ベースバンド信号の生成と、クロック同期のための可変制御クロック発振器207の制御である。符号化・変調部301は、ポートAから入力される送信情報に無線符号化を施し、更に変調することで得られた信号を、合成部302に出力する。合成部302では、符号化・変調部301から入力された信号に、既知信号メモリ303に予め設定されている既知信号を合成する。このとき、支局側と本局側で送信信号の既知信号が互いに干渉しないように(以下「直交化」と呼称する)合成する必要がある。直交化の手法としては、周波数や時間、符号を用いた方法が知られているが、本発明の本質ではないので、具体的な説明は省略する。
【0062】
合成部302は、符号化・変調部301から入力された信号に対して所定の既知信号を合成し、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform;逆高速フーリエ変換)部304とポートCへ出力する。ポートCから出力された信号は、既知送信信号として、自局受信機にて自己干渉キャンセルを行うために使用される。IFFT304へ出力された信号は、時間領域の信号に変換され、送信ベースバンド信号としてポートBから出力される。
【0063】
一方、図3にて破線で示す処理ブロック(位相比較部305、シンボル周期カウンタ306、クロック同期制御部307)は、ポートDから入力される基準タイミング信号を参照信号としてクロック同期を行うためのPLLの一部であり、本局送信機204でのみ使用される。
【0064】
位相比較部305は、ポートDから入力される基準タイミング信号と、シンボル周期カウンタ306で生成されるシンボル周期のタイミング信号とに基づいて、これらタイミング信号の位相誤差を算出し、クロック同期制御部307へ出力する。クロック同期制御部307は、入力された位相誤差に基づいて、可変制御クロック発振器207を制御するクロック制御信号を生成し、ポートEから出力する。ポートEは、可変制御クロック発振器207に接続されている。これによりPLLを構成し、ポートDから入力される基準タイミング信号に可変制御クロック発振器207を同期させることができる。
【0065】
次に、受信ベースバンド部211の内部処理について、図4を用いて詳細に説明する。図4にて破線で示す処理ブロック(周波数偏差検出部409-2、周波数補正値算出部410-2)は、図1に示した送受信一体型の構成では不要となり、図2のように送信機と受信機に機能分割した構成でのみ必要となる。図4についてもOFDM方式を前提として説明するが、シングルキャリア方式であっても問題ない。以下では、受信信号の復調・復号と自己干渉波のキャンセル、クロック同期、キャリア周波数補正の順に説明する。
【0066】
受信ベースバンド部211にポートAから入力された受信信号は、シンボルタイミング検出部401とFFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)部402に入力される。シンボルタイミング検出部401は、OFDMのガードインターバルの相関などを使用してシンボルタイミングを検出し、そのタイミングを表す受信タイミング信号をFFT部402と位相比較部305とポートGに出力する。ポートGから出力される受信タイミング信号は、本局送信機204の可変制御クロック発振器207を本局受信機203の受信タイミングに同期させるために使用される。
【0067】
FFT部402は、シンボルタイミング検出部401から入力される受信タイミング信号に従って受信信号のFFT処理を行い、FFT結果を既知信号抽出部403と加算器404へ出力する。既知信号抽出部403は、入力された受信信号から希望波の既知信号成分と干渉波の既知信号成分を分離し、希望波の既知信号成分を伝搬路推定フィルタ405-1と周波数偏差検出部409-1に出力し、干渉波の既知信号成分を伝搬路推定フィルタ405-2と周波数偏差検出部409-2に出力する。既知信号成分の抽出方法には送信側での直交方式により様々な方法があり、具体的な方法の説明は省略する。
【0068】
伝搬路推定フィルタ405-1は、入力された希望波の既知信号成分を用いて伝搬路推定処理を実施し、希望波伝搬路の推定結果を等化部406へ出力する。伝搬路推定フィルタ405-2は、入力された干渉波の既知信号成分を用いて伝搬路推定処理を実施し、干渉波伝搬路の推定結果を干渉波レプリカ生成部407へ出力する。
【0069】
干渉波レプリカ生成部407は、ポートBから自局送信機の既知送信信号も入力されており、干渉波伝搬路の推定結果と掛け合わせて自己干渉信号レプリカを生成し、加算器404へ負の符号で入力する。加算器404は、受信信号から自己干渉レプリカを減算することで希望波のみを抽出し、希望波信号を等化部406へ出力する。等化部406は、希望波信号と希望波伝搬路の推定結果に基づいて等化処理を行い、等化結果信号を復号部408へ出力する。復号部408は、等化結果信号に基づいて復号処理を行い、復号された送信情報をポートCへする。
【0070】
次に、クロック同期処理について説明する。受信ベースバンド部211の位相比較部305、シンボル周期カウンタ306、クロック同期制御部307は、送信ベースバンド部210のものと同様であるため、詳細な説明は省略する。これら処理ブロックは、位相比較部305に入力されるシンボルタイミング検出部401からの受信タイミング信号を基準として、外部の可変制御クロック発振器207を制御するPLL回路である。これら処理ブロックにより、受信タイミング信号を参照信号としてクロック同期を行うことができる。
【0071】
次に、局部発振器206の周波数偏差補正について説明する。本局受信機203の受信ベースバンド部211は、本局受信機203における受信周波数偏差の算出には希望波の既知信号成分を用い、本局送信機204における送信周波数偏差の算出には干渉波の既知信号成分を用いる。その理由について、数式を用いて以下に説明する。
【0072】
ここでは、支局送信機201の局分発振器206の周波数をF1、本局受信機203の局部発振器206の周波数をF3、本局送信機204の局部発振器206の周波数をF4とする。この場合、本局受信機203の受信ベースバンド部211で希望波の既知信号成分に基づいて検出される周波数偏差dF3D は、下記の式(1)のように表される。
【0073】
【数1】
【0074】
これは、本局受信機203に対する希望波は、支局送信機201でアップコンバートされ、本局受信機203でダウンコンバートされ、本局受信機203の受信周波数補正部209で補正されるためである。ここで、式(1)のFC3は、本局受信機203の受信周波数補正部209で使用する周波数補正値である。
【0075】
次に、本局受信機203の受信ベースバンド部211で干渉波の既知信号成分に基づいて検出される周波数偏差dF3U は、下記の式(2)のように表される。
【0076】
【数2】
【0077】
これは、本局受信機203に対する干渉波は、本局送信機204でアップコンバートされ、本局受信機203でダウンコンバートされ、本局受信機203の受信周波数補正部209で補正されるためである。
【0078】
希望波の既知信号成分に基づいて検出される周波数偏差dF3D は、受信周波数補正部209で0になるように制御される。このため、周波数制御による収束後、式(1)は、下記の式(3)のように表現できる。
【0079】
【数3】
【0080】
式(3)を変形すると、下記の式(4)が得られる。
【数4】
【0081】
式(4)を式(2)に代入すると、下記の式(5)が得られる。
【数5】
【0082】
式(5)より、本局受信機203で干渉波の既知信号成分に基づいて検出される周波数偏差dF3U は、支局送信機201の局部発振器206と本局送信機204の局部発振器206の間の周波数偏差であることが分かる。干渉波の既知信号成分に基づいて検出される周波数偏差dF3U を0にする補正は、本局送信機204の送信周波数補正部208で行われる。以上により、本局受信機203の受信ベースバンド部211において、受信周波数偏差の算出には希望波の既知信号成分を用い、送信周波数偏差の算出には干渉波の既知信号成分を用いる理由を説明した。
【0083】
受信ベースバンド部211の周波数偏差検出409-1は、入力された希望波の既知信号成分に基づいて周波数偏差を検出し、希望波の周波数偏差を周波数補正値算出部410-1に出力する。また、受信ベースバンド部211の周波数偏差検出409-2は、入力された干渉波の既知信号成分に基づいて周波数偏差を検出し、干渉波の周波数偏差を周波数補正値算出部410-2に出力する。周波数偏差の検出方法に関しては、後述の実施例にて詳細に説明する。
【0084】
周波数補正値算出部410-1は、入力された希望波の周波数偏差から周波数補正値を生成し、ポートDから出力する。また、周波数補正値算出部410-2は、入力された干渉波の周波数偏差から周波数補正値を生成し、ポートFから出力する。ポートDから出力される周波数補正値は、自局受信機で受信信号の周波数補正に使用される。ポートFから出力される周波数補正値は、自局送信機に通知され、送信信号の周波数偏差の補正に使用される。以上の処理により、各送信機のキャリア周波数を一致させることができる。
【0085】
第1実施例によれば、以上で説明した送信機と受信機の間のインターフェースの追加や処理ブロックの追加・修正のみで、各送信機と各受信機のクロック周波数やキャリア周波数を一致させることができ、自己干渉信号を容易にキャンセルすることが可能となる。また、既存の単方向の無線機を二対向用いて、帯域内全二重無線通信を行う無線通信システムを構築することが可能である。
【0086】
[第2実施例]
本発明の第2実施例について説明する。図5には、第2実施例に係る無線通信システムの構成例を示してある。第2実施例では、同一周波数での中継伝送を行う構成について説明する。第2実施例に係る無線通信システムは、送信局送信機501、受信局受信機502、中継局受信機503、中継局送信機504を備えており、これらは第1実施例(図2)の支局送信機201、支局受信機202、本局受信機203、本局送信機204と基本的な構成が同じである。
【0087】
送信局送信機501から送信された信号は、中継局受信機503で受信され、復号される。中継局受信機503で復号された信号は、同じ拠点に配備されている中継局送信機504に入力されて再び送信される。中継局送信機504から送信された信号は、受信局受信機502に受信される。このとき、中継局送信機504から送信された信号は、中継局受信機503に干渉する。
【0088】
第2実施例(図5)は、第1実施例(図2)とは異なり、送信局送信機501と受信局受信機502は地理的に離れた拠点に配置されており、これら無線機間をインターフェース接続することができない。また、送信局送信機501から受信局受信機502への干渉電力は無視できるほど小さいとする。そのため、中継局受信機503と中継局送信機504の間での自己干渉信号をキャンセルできれば、同一周波数での中継伝送を実現することができる。
【0089】
各送信機501,504及び各受信機502,503の内部動作は、図2の各送信機201,204及び各受信機202,203と同様である。そのため、中継局受信機503と中継局送信機504の間では、図2の本局受信機202と本局受信機203の間と同様に自己干渉キャンセルが行われるので、同一周波数での中継伝送が可能となる。
【0090】
次に、図5の構成において、送信局送信機501から受信局受信機502への干渉電力が無視できない場合について説明する。この場合、受信局受信機502は、送信局送信機501とインターフェース接続することができないため、送信局送信機501から既知送信信号が得られず、容易に干渉信号をキャンセルすることができない。このため、望ましい受信処理が上述した受信処理とは異なるので、受信ベースバンド部211内の一部処理を変更する必要がある。
【0091】
干渉波に対応する既知送信信号が得られない場合に適した受信ベースバンド部の構成について、図6を参照して説明する。図6の受信ベースバンド部211’では、図4の受信ベースバンド部211における等化部406を、キャリア復調部601に変更してある。また、図6の受信ベースバンド部211’では、加算器404及び干渉レプリカ生成部407は削除してある。キャリア復調部601には、FFT402からの受信信号と、伝搬路推定フィルタ405-1からの希望波伝搬路の推定結果と、伝搬路推定フィルタ405-2からの干渉波伝搬路の推定結果とが入力される。
【0092】
キャリア復調部601は、各伝搬路の推定結果に基づいて希望波と干渉波が多重した受信信号点のレプリカを生成し、受信信号とのユークリッド距離が最短となるレプリカを特定して復調処理を行う。キャリア復調部601は、復調結果として、硬判定による復調ビットを出力してもよいし、軟判定による尤度比を出力してもよい。尤度比の算出方法は、本発明の本質ではないため説明を省略する。
【0093】
このように、図6の受信ベースバンド211’では、図4の受信ベースバンド部211のように干渉波のレプリカを生成する必要がないため、送信信号が不明な場合にも使用可能である。したがって、同一周波数での中継伝送において、受信局受信機502に送信局送信機501の送信信号が干渉した場合にも、受信局受信機502は中継局送信機504からの希望波を復号することが可能となる。
【0094】
[第3実施例]
本発明の第3実施例について説明する。第3実施例は、第1実施例における本局受信機203の受信周波数補正部209、本局送信機204の送信周波数補正部208、支局受信機202の受信周波数補正部209での、周波数補正値の算出方式に関するものである。なお、第2実施例の構成に適用する場合には、支局送信機201を送信局送信機501、支局受信機202を受信局受信機502、本局受信機203を中継局受信機503、本局送信機204を中継局送信機504と読み替えればよい。
【0095】
これら周波数補正に関して、図7に示すシーケンス例を参照して説明する。シーケンスの開始(BT-1)において、支局送信機201から送信信号を送出する。支局送信信号は、本局受信機203のアンテナ215と支局受信機202のアンテナ215に到達する。第1実施例で説明したように、支局送信機201の局部発振器206の周波数に対する、支局受信機202の局部発振器206の周波数偏差と、本局受信機203の局部発振器206の周波数偏差を0にするように補正する。
【0096】
まずは、本局受信機203での周波数補正について説明する。本局受信機203は、支局送信機201からの受信信号を解析し、サブキャリア周波数間隔以上の周波数偏差を検出し(HR-1)、検出した周波数偏差を補正する(HR-2)。続いてサブキャリア間隔未満の周波数偏差を補正し続け、局部発振器206の周波数ドリフトにも追従する(HR-3)。
【0097】
これらの周波数補正方式(HR-1~3)に関して、OFDM信号を例に用いて具体的な説明を行う。このシーケンスの段階では本局送信機204から送信信号は送出されていないため、公知技術である一般的なAFC処理により周波数偏差を補正する。例えば、サブキャリア間隔以上の周波数偏差については、OFDM帯域内にランダムに配置される特殊キャリアの周波数位置に基づいて推定し、その補正を行う。また、サブキャリア間隔未満の周波数偏差の追従にはガードインターバルの相関性を利用し、相関ピークの位相差からAFC処理を行う。
【0098】
支局受信機202も、本局受信機203と同様に、支局送信機201からの受信信号を解析し、サブキャリア周波数間隔以上の周波数偏差を検出し(BR-1)、検出した周波数偏差を補正する(BR-2)。続いてサブキャリア間隔未満の周波数偏差を補正し続け、局部発振器206の周波数ドリフトにも追従する(BR-3)。
【0099】
本局受信機203が支局送信機201からの受信信号に対するサブキャリア間隔未満の周波数補正のシーケンス(HR-3)に移行して周波数補正が完了した後、本局送信機204による送信信号の出力を開始する(HT-1)。その後、本局送信機204の局部発振器206の周波数偏差を補正するため、本局送信機204は、所定の周波数範囲内で送信周波数をスキャンし(HT-2)、同時に本局受信機203は、周波数スキャンされた信号に基づいて、周波数スキャンの分解能で本局送信信号の周波数偏差を推定する(HR-4)。
【0100】
この周波数偏差の推定方式は、所定の既知信号を用いる方式と、変調信号からブラインドで処理する方式とに大別されるが、ここでは、既知信号としてパイロットキャリアを用いる方式を採用する。本局での周波数偏差検出方式(HT-2、HR-4)の詳細について、以下に説明する。
【0101】
パイロットキャリアとは、OFDM信号帯域内のサブキャリアに既知信号を時間方向及び周波数方向に分散配置した信号であり、変調方式として一般的にBPSK(Binary Phase Shift Keying;二位相偏移変調)が用いられる。詳細は後述するが、シンボル間の受信パイロット信号の位相差により周波数偏差を検出することが可能である。しかし、この位相差により検出可能な周波数偏差は、サブキャリア周波数間隔、すなわちシンボル長の逆数に相当する周波数である。これは、パイロットを観測する間隔がシンボル周期であるため、サンプリング定理よりシンボル周期の逆数以上の周波数偏差はエイリアジングにより不確定性が生じてしまうためである。
【0102】
そこで、第3実施例では、AFC処理を、サブキャリア間隔以上の粗い精度のAFC(HT-2,HR-4,HT-3)と、サブキャリア間隔未満の細かい精度のAFC(HR-5,HT-4)の二段階で行うこととする。以下では、これらの周波数偏差検出を、「粗検出」、「微検出」と呼称して区別する。
【0103】
以下に、パイロットキャリアを用いた二段階のAFC処理について詳細に説明する。第3実施例では、支局送信機201からの希望波と本局送信機204からの自己干渉波のパイロットパターンが互いに直交関係になるように配置する。そして、本局受信機203にて直交分離により希望波と自己干渉波を分離することで互いに異なる周波数偏差を検出し、それらを個別に補正する。
【0104】
パイロットパターンの直交化は、周波数領域、時間領域、あるいは符号領域でなされる。周波数領域の直交化は、例えば、支局送信機201の送信信号のパイロットを1,2b,4b,・・・,(2b)×Bのサブキャリア位置に配置し、b,3b,・・・,(2b-1)×Bのサブキャリアを0(ヌルキャリア)とする。これとは逆に、本局送信機204の送信信号のパイロットをb,3b,・・・,(2b-1)×Bのサブキャリア位置に配置し、1,2b,4b,・・・,(2b)×Bのサブキャリアを0(ヌルキャリア)とする。ここで、b,Bは整数であり、2bはパイロット間隔を示している。このように、一方のパイロットキャリアが配置されるキャリアでは、他方のキャリアがヌルキャリアになるようにすることで、パイロットキャリアが互いに干渉することがなく、希望波と自己干渉波を分離することが可能である。
【0105】
また、時間領域の直交化も同様に、例えば、一方の送信信号は偶数シンボルにパイロットを配置し、奇数シンボルをヌルキャリアとする。また、他方の送信信号は奇数シンボルにパイロットを配置し、偶数シンボルをヌルキャリアとする。これにより、パイロットパターンの直交化を図ることができる。
【0106】
このように、パイロットパターンを周波数領域や時間領域で直交化することで、希望波と自己干渉波のパイロットを分離することができる。第3実施例におけるパイロット直交化方式として、上記の方式を用いることに問題はないが、ヌルキャリアを設けるので、パイロット密度の低下による伝送路特性の推定精度の劣化を許容する必要がある。
【0107】
そこで、帯域内全二重無線機を2台の単方向の無線機として使用する場合に好適である、符号直交化方式について説明する。符号直交化方式は、ヌルキャリアを配置しないのでパイロット密度が低下せず、単方向の無線機の伝送路推定にも適している。符号直交化は、時間方向又は周波数方向で直交化を行うことができるが、ここでは時間方向の直交化を例に説明する。符号直交化の方向は、パイロット間隔が時間方向と周波数方向のうちのコヒーレント帯域幅の狭い方向で符号化することが望ましい。
【0108】
支局送信信号のパイロットは、周波数方向に分散配置され、そのパイロット信号の既知のランダムパターンでBPSK変調されている。ここでは、時間方向の直交化を行う例について説明するが、周波数方向の直交化であっても差し支えない。支局送信機201では、これらパイロットキャリアに対して、偶数シンボルでは符号を(+1)倍し、奇数シンボルでも符号を(+1)倍する。すなわち、これは何の変更も行わないことになる。一方、本局送信信号のパイロットは、支局送信信号のパイロットと同一のキャリアに配置され、支局送信信号とは異なったランダムパターンで変調されている。本局送信機204では、これらパイロットキャリアに対して、偶数シンボルでは符号を(+1)倍し、奇数シンボルでは符号を(-1)倍する。このように、支局送信機201は送信信号のパイロットを{+1,+1}で符号化し、本局送信機204は送信信号のパイロットを{+1,-1}で符号化する。
【0109】
本局受信機203の受信ベースバンド部211の既知信号抽出403は、連続する2シンボルの受信パイロット信号に対して、下記の式(6)、式(7)の処理を行うことで、符号による分離を実現することができる。
【0110】
【数6】
【0111】
【数7】
【0112】
ここで、式(6)、式(7)において、p(n,k)は、nシンボル、kキャリアの受信パイロット信号を示している。また、p^D (n,k)は、希望波の推定パイロット信号を示しており、p^U (n,k)は、干渉波の推定パイロット信号を示している。
【0113】
式(6)に示す希望波抽出に関しては、連続する2シンボル(n,n-1)の受信パイロットを加算することで、希望波は同符号なのでその成分は残存するが、干渉波は異符号なので相殺されて0となる。逆に、式(7)に示す干渉波抽出に関しては、連続する2シンボル(n,n-1)の受信パイロットを減算することで、希望波は同符号なので相殺されて0となり、干渉波は異符号なのでその成分は残存する。
【0114】
このように、パイロット信号を希望波と干渉波で符号直交させることにより、希望波と干渉波の分離が容易となる。また、単方向の無線として利用する場合でも、パイロット密度が低下しないので、伝送路推定の精度が低下することもない。シーケンスHR-4では、このように分離されたパイロットキャリアを用いて、本局送信信号の周波数偏差を粗検出及び微検出する。
【0115】
これら周波数偏差の検出方式の説明を行う前に、OFDM方式の諸特性に関して簡単に説明する。OFDM方式では、複数のサブキャリアが周波数直交するように配置され、これら複数のサブキャリアに対してシンボル周期の逆フーリエ変換を行うことで、時間領域の変調信号を生成する。
【0116】
図8Aには、OFDM信号の周波数直交性の概念を示してある。図8Aに示すように、周波数領域でのサブキャリアは、sinc関数の拡がりを呈している。図中の〇で示したサンプリング点であれば各サブキャリアが直交関係にあり、正しいOFDM復調を行うことが可能である。一方、△で示したようにサンプリング点がずれている場合には、互いの拡がり成分が混入するICI(Inter Carrier Interference;キャリア間干渉)が発生(×印)してしまい、復調特性が劣化する。
【0117】
シーケンスHR-4の状態では、シーケンスHR-1~3の処理により、希望波の周波数偏差はほぼ0となっているが、自己干渉波の周波数偏差が生じている状態である。この場合、図8Bに示すように、希望波(実線)と自己干渉波(点線)の間でICI(×印)が発生していることになる。本局送信信号の周波数偏差の粗検出では、本局送信信号の周波数をスキャン(図8B)し、受信パイロットキャリアを用いてICIが最小となるときのスキャン周波数を検出する。以下に、周波数スキャンによる周波数偏差検出方式について説明する。
【0118】
微検出での周波数偏差の検出範囲はサブキャリア周波数間隔の-0.5倍から+0.5倍以内であるため、粗検出での周波数補正では、その範囲内に周波数偏差が収まるように補正しておく必要がある。そこで、例えば、サブキャリア間隔の1/10程度のスキャン周波数分解能で、一定時間間隔(少なくとも直交分離が可能な時間以上)で、送信周波数補正部208にて周波数スキャンする。本局送信機204と本局受信機203はインターフェース216で接続されており、本局送信機204による周波数スキャン情報がインターフェース216を介して本局受信機203に通知される。したがって、本局受信機203の受信ベースバンド部211は、本局送信機204でスキャンした周波数とそのタイミングを把握することができる。
【0119】
周波数スキャンによる周波数偏差を伴った本局送信信号は、本局送信機204のアンテナ215から本局受信機203のアンテナ215に回り込んで干渉信号となる。この干渉信号は、最短経路で直接回り込む直接干渉信号と、近隣の反射物に反射して遅延時間を伴って回り込む反射干渉信号の合成であり、反射干渉信号の電力は直接干渉信号の電力よりも小さいと仮定する。
【0120】
上記の仮定の下で、周波数方向に分散されたパイロットキャリアを、図9Aに示すような時間領域の信号(すなわち、遅延プロファイルd(τ))に変換すると、直接干渉信号成分は、所定の時間に位置し、また時間狭帯域性を有する。ここで、図9Aは、周波数偏差が0のときの遅延プロファイルの例を示しており、図9Bは、周波数偏差が生じているときの遅延プロファイルの例を示している。
【0121】
前述したように、周波数偏差が生じるとICIが発生し、OFDM復調時の周波数サンプリング点に、所望のサブキャリア信号の電力だけではなく隣接サブキャリアの電力も混入し、パイロットキャリアが混濁してしまう。そのため、図9A図9Bから分かるように、周波数偏差がない場合には、パイロットキャリアのエネルギーが所定の時間位置に集中するが、周波数偏差が生じている場合には、そのエネルギーは時間方向に分散されてしまい、所定の時間位置でのエネルギーが低下する。
【0122】
そこで、所定の時間位置(図9A図9Bの網掛け部分)に対して時間領域BPF(Band Pass Filter;帯域通過フィルタ)を設けることとする。BPF帯域内の電力をPBPF とすると、PBPF は下記の式(8)で示される。
【0123】
【数8】
【0124】
図10は、本局送信信号の周波数偏差が0の場合について、横軸にスキャンした周波数を示し、縦軸にBPF出力電力(PBPF )を〇印で示した図である。図10から容易に分かるように、周波数シフト量Δfが0のときにBPF出力電力がピークとなり、正しい周波数偏差を粗検出することが可能である。図10は、本局送信信号の周波数偏差が0の場合を示しているが、例えば、周波数偏差として+1サブキャリア間隔周波数の偏差がある場合には、ピークが+1に位置するようになる。このBPF電力のピークを検出する方式を「方式A」と称する。
【0125】
また、図9で網掛けした所定時間位置以外の時間領域の総エネルギー、すなわち、BPFで設定した時間領域を除去するBEF(Band Eliminate Filter;帯域阻止フィルタ)の出力電力PBEF は、下記の式(9)で定義される。
【0126】
【数9】
【0127】
図10に□印で示すように、BEF出力電力(PBEF )は、本局送信信号の周波数偏差が0のときに最小となり、周波数偏差が生じたときには大きくなる。これは、前述したように、周波数スキャンによる周波数シフト量Δfに周波数偏差が最も近い場合にICIが最小となり、BEFエネルギーはICIに相当する。
【0128】
このように、PBEF はPBPF と逆の特性となるので、その特徴を活かして、下記の式(10)に示すように、それらの比を計算してそのピーク値を検出する方式を「方式B」と称する。
【0129】
【数10】
【0130】
図11には、方式Aの特性を△印で示し、方式Bの特性を〇印で示してある。図11から容易に分かるように、方式Aと比較して方式Bのほうがシャープな波形となっている。これは、方式Bのほうが方式Aよりも検出特性が高精度であることを示している。一方、方式Aと方式Bの演算量を比較すると、方式Bは、PBEF の計算と、PBPF とPBEF の比の計算を行う必要があり、方式Bのほうが方式Aよりも演算量が多い。
【0131】
最後に、方式Cの周波数偏差検出方式について説明する。非特許文献1では、OFDM内にACキャリアと称するキャリアを設けており、そのキャリアはヌルキャリアとして送信することも可能である。また、OFDM帯域外も同様にヌルキャリアである。
【0132】
そこで、方式Cでは、周波数スキャン毎にそれらヌルキャリア位置の総電力を計算し、その電力が最も小さいときが、周波数偏差が最も少ないと判断する。方式Cは、電力計算のみであるため、演算量は非常に少ない。しかしながら、CNR(Carrier to Noise Ratio;搬送波対雑音比)が低下すると、ヌルキャリアに混入する雑音電力と周波数偏差による隣接キャリアからの漏洩電力との差が小さくなり、誤検出の可能性が高くなる。
【0133】
以上より、周波数偏差の検出精度は、方式Bが最も良く、次いで方式A、方式Cの順となる。逆に、周波数偏差の検出に係る演算量は、方式Cが最も少なく、次いで方式B、方式Aの順となる。このように、方式A~方式Cは、検出精度と演算量がトレードオフの関係となる。したがって、伝搬環境や装置規模を勘案して、使用する周波数偏差検出方式を選定すればよい。
【0134】
以上の処理によりHT-2、HR-4のシーケンスで本局送信信号の周波数偏差の粗検出を行った後に、本局送信機204の送信周波数補正部208は、粗検出の結果に基づいて、本局送信機204の局部発振器206の周波数偏差の粗補正を行う(HT-3)。
【0135】
本局送信信号の本局周波数の粗補正に続いて、本局送信信号の本局周波数の微補正のシーケンス(HR-5、HT-4)に移る。本局周波数の微補正では、前述したように、連続するシンボルのパロットキャリアの位相差を計算し、その位相差を0にするように補正を行う。式(6)、式(7)で説明した、希望波の推定パイロット信号p^D (n,k)、自己干渉波の推定パイロット信号p^U (n,k)に対して、下記の式(11)に示すように、1シンボル前の推定パイロットと現シンボルの推定パイロットとの相関Δp^D (n)、Δp^U (n)を算出する。
【0136】
【数11】
【0137】
式(11)は、シンボル時間の経過時の変動を示しており、この位相成分を求めることで、下記の式(12)に表すように、希望波、干渉波のそれぞれのシンボル間の位相変動ΔφD (n)、ΔφU (n)を求めることができる。
【0138】
【数12】
【0139】
これら位相変動ΔφD (n)、ΔφU (n)は、シンボル時間間隔での位相差であるため、希望波、干渉波のそれぞれの周波数偏差とみなすことができる。パイロット信号を用いた周波数偏差の検出方式ではサブキャリア間隔周波数以上の検出が不可能であることは前述したが、これは式(12)に示す位相差が-180°から+180°の範囲を超えてしまうためであり、正しい位相差は不定となる。なお、式(12)は逆正接関数が必要であり、その演算量は大きいため、下記の式(13)のように近似してもよい。
【0140】
【数13】
【0141】
本局送信信号の周波数偏差の微検出のシーケンス(HR-5)では、上記の位相差ΔφD (n)、ΔφU (n)を、受信ベースバンド部211の周波数偏差検出部409-1,409-2にて算出する。周波数偏差の微補正のシーケンス(HT-4)では、希望波に対してはΔφD (n)を常に0にするように、自己干渉波に対してはΔφU (n)を常に0にするように、周波数補正値算出部410-1,410-2にて周波数補正値を算出する。周波数偏差検出部409-1から周波数補正値算出部410-1、受信周波数補正部209までの一連の処理、及び、周波数偏差検出部409-2から周波数補正値算出部410-2、送信周波数補正部208までの一連の処理は、フィードバックループを形成している。その制御方法としては、よく知られているPID(Proportional Integral Differential)制御などを用いることができ、高速追従性と安定性を両立させながら周波数補正を行うことが可能である。
【0142】
このように、第3実施例では、希望波と自己干渉波のパイロット信号を分離して各々の位相差を検出し、本局受信機203の局部発振器206の周波数偏差を0にするように補正を行うと共に、本局送信機204の局部発振器206の周波数偏差を0にするように補正を行う。これにより、本局送信信号のキャリア周波数を、支局送信機201の局部発振器206の周波数に常に一致させることが可能となる。
【0143】
最後に、支局受信機202での受信処理について説明する。上記で説明したように、本局送信機204の局部発振器206は支局送信機201の局部発振器206の周波数に一致している。そのため、支局受信機202に到達する希望波と干渉波は同一の周波数であるため、新たな周波数補正処理は不要である。
【0144】
以上説明したように、第3実施例によれば、異なる周波数偏差を有する局部発振器を用いていても、それらの周波数偏差を0にするように周波数補正を行うことができるので、安定的な帯域内全二重無線通信を実現することが可能となる。
【0145】
[第4実施例]
本発明の第4実施例について説明する。第1実施例や第3実施例では、支局及び本局のそれぞれで送信側のアンテナから受信側のアンテナに回り込んで干渉する自己干渉波が存在すると仮定した。しかしながら、これらアンテナ間の距離、各アンテナの指向性利得や偏波面によっては、自己干渉波の電力が小さく、殆ど混入しない場合もある。その場合、本局受信機203では本局送信信号を観測することができないため、当然、本局送信信号のパイロット信号も観測できない。すると、図7のような本局送信信号の周波数偏差補正を行うことができず、本局送信信号の周波数偏差が残ったままとなる。
【0146】
本局受信機203にとっては干渉信号がないため、支局送信信号を受信することに特段の弊害はない。しかしながら、周波数偏差が生じた状態の本局送信信号が支局受信機202に到達すると、支局送信信号と本局送信信号の間に周波数偏差が存在しているため、自己干渉キャンセルの性能が低下してしまう。第4実施例では、このような問題を解決する手法を提供する。
【0147】
支局受信機202には、周波数偏差の無い支局送信信号と、周波数偏差が生じている本局送信信号が到達する。第3実施例では、支局受信機202の受信ベースバンド部211の周波数偏差検出部409-1,409-2にて、希望波、自己干渉波のそれぞれの周波数偏差を粗検出及び微検出の各シーケンスで検出し、その補正を行っていた(BR-1~BR-3)。第4実施例でも同様に、本局受信機202の受信ベースバンド部211の周波数偏差検出部409-1,409-2にて、希望波、自己干渉波のそれぞれの周波数偏差を、粗検出及び微検出の各シーケンスで検出する。このとき、補正を行いたい周波数偏差は、本局送信機204の局部発振器206の周波数であるため、支局側から直接補正することができない。
【0148】
そこで、第4実施例では、支局受信機202で得られた周波数偏差を示す周波数偏差情報を、支局側のインターフェース216を経由して支局送信機201に通知し、支局送信機201では当該周波数偏差情報を符号化し、支局送信信号を経由して本局受信機203に伝送する。ここで、本情報に伝送誤りが生じると、正しい検出結果を通知することができず、周波数偏差を補正できないため、十分な誤り耐性を有する誤り訂正符号化や反復伝送ダイバーシティなどを行う必要がある。本局受信機203は、周波数偏差情報を復号して得られる周波数偏差に基づいて周波数補正値を算出し、インターフェース216を経由して本局送信機204に送信する。本局送信機204の送信周波数補正部208は、この周波数補正値に基づいて、周波数偏差が0となるように送信周波数の補正を行う。
【0149】
[第5実施例]
最後に、本発明の第5実施例について説明する。図12には、第5実施例に係る無線通信システムの構成例を示してある。第5実施例に係る無線通信システムは、支局送信機1201、支局受信機1202、本局受信機1203、本局送信機1204を備えており、これらは第1実施例(図2)の支局送信機201、支局受信機202、本局受信機203、本局送信機204と基本的に同様な構成である。ただし、第5実施例では、支局送信機1201に送信周波数補正部208を追加してある。
【0150】
第4実施例では、支局送信機201から本局受信機203に周波数偏差情報を伝送する必要があるが、この情報伝送に大きな遅延が発生する場合がある。無線通信では、伝搬路で生じるバースト誤りを軽減するために、情報を時間領域や周波数領域に分散するインターリーブ処理が用いられることがあり、インターリーブ処理には時間遅延が伴うので、周波数偏差情報の伝送が遅れてしまう。前述したように、周波数偏差の検出とその補正を行う処理はフィードバックループを形成する。このため、上記のような伝送遅延は、ループ内に遅延(制御では無駄時間)をもたらし、フィードバックループの安定性を低下させてしまう。また、安定性を確保するためには追従特性を犠牲にする必要があり、実運用上で問題になる場合もある。
【0151】
そこで、第5実施例では、キャリア周波数をマスターとする送信機を、支局側から本局側に入れ替えることで、上記のような伝送遅延の問題を回避する。すなわち、支局受信機1202の受信ベースバンド部211の周波数偏差検出部409-1,409-2にて、支局送信信号と本局送信信号の間に周波数偏差があることが検知された場合に、本局送信機1204から本局受信機1203への干渉が存在しない(あるいは殆ど無い)と判断し、キャリア周波数のマスターを支局送信機1201から本局送信機1204に移転(変更)する。
【0152】
このマスター周波数の移転処理では、本局送信信号の周波数偏差の存在を示す周波数偏差存在情報を、第4実施例での周波数偏差情報の伝送と同様に、支局送信機1201から本局受信機1203に情報伝送する。本局受信機1203は、支局送信機1201から受信した周波数偏差存在情報を本局送信機1204に転送する。本局送信機1204は、この周波数偏差存在情報に基づいて、自身がキャリア周波数のマスターであることを認識し、送信周波数補正を実施しない。
【0153】
一方、支局側では、支局送信機1201の局部発振器206の発振周波数を、本局送信機1204の局部発振器206の発振周波数に一致させる処理を実行する。すなわち、支局受信機1202の受信ベースバンド部211は、受信信号に基づいて同機の局部発振器206の周波数偏差を補正するだけでなく、受信信号に基づいて支局送信機1201の局部発振器206の周波数補正値を算出して支局送信機1201に提供する。支局送信機1201の送信ベースバンド部210は、支局受信機1202から提供された周波数補正値に基づいて、同機の局部発振器206の周波数偏差を補正する。
【0154】
図13に示すシーケンスは、図7に示したシーケンスの支局と本局を入れ替えた構成であり、その一連の処理は同様である。つまり、シーケンスの開始(HT-1)において、本局送信機1204から送信信号を送出する。本局送信信号は、支局受信機1202のアンテナ215と本局受信機1203のアンテナ215に到達する。本局受信機1203は、本局送信機1204からの受信信号を解析し、サブキャリア周波数間隔以上の周波数偏差を検出し(HR-1)、検出した周波数偏差を補正する(HR-2)。続いてサブキャリア間隔未満の周波数偏差を補正し続け、局部発振器206の周波数ドリフトにも追従する(HR-3)。支局受信機1202も、本局受信機1203と同様に、本局送信機1204からの受信信号を解析し、サブキャリア周波数間隔以上の周波数偏差を検出し(BR-1)、検出した周波数偏差を補正する(BR-2)。続いてサブキャリア間隔未満の周波数偏差を補正し続け、局部発振器206の周波数ドリフトにも追従する(BR-3)。
【0155】
支局受信機1202が本局送信機1204からの受信信号に対するサブキャリア間隔未満の周波数補正のシーケンス(BR-3)に移行して周波数補正が完了した後、支局送信機1202による送信信号の出力を開始する(BT-1)。その後、支局送信機1201の局部発振器206の周波数偏差を補正するため、支局送信機1201は、所定の周波数範囲内で送信周波数をスキャンし(BT-2)、同時に支局受信機1202は、周波数スキャンされた信号に基づいて、支局送信信号の周波数偏差を粗検出し(BR-4)、支局送信機1201は、サブキャリア周波数間隔以上の周波数偏差を粗補正する(BT-3)。その後、支局受信機1202は、支局送信信号の周波数偏差を微検出し(BR-4)、支局送信機1201は、サブキャリア周波数間隔未満の周波数偏差を微補正する(BT-5)。
【0156】
このように、本局で自己干渉が存在せず、送信周波数偏差を補正できないような場合であっても、マスター周波数を本局と支局で入れ替えることで、本局と支局の送受信全てにおいてその周波数偏差を0とすることができ、安定的な帯域内全二重無線通信を実現することができる。更に、本局と支局の両方が自己干渉信号を検出できない場合には、互いの送信周波数に偏差があっても干渉信号が存在しないため、帯域内全二重無線通信は問題なく実現できる。
【0157】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、その他の様々な実施形態をとることが可能であると共に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等の種々の変形を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0158】
また、本発明は、上記の説明で挙げたような装置や、これら装置で構成されたシステムとして提供することが可能なだけでなく、これら装置により実行される方法、これら装置の機能をプロセッサにより実現させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明は、送受信分離型で帯域内全二重無線通信を行う無線通信システムを実現するために利用することが可能である。
【符号の説明】
【0160】
101:支局送受信機、 102:本局送受信機、 105:クロック発振器、 106:局部発振器、 107:可変制御クロック発振器、 108:送信周波数補正部、 109:受信周波数補正部、 110:送信ベースバンド部、 111:受信ベースバンド部、 112:DAC、 113:ADC、 114:ミキサ、 115:アンテナ、 201:支局送受機、 202:支局受信機、 203:本局受信機、 204:本局送信機、 205:クロック発振器、 206:局部発振器、 207:可変制御クロック発振器、 208:送信周波数補正部、 209:受信周波数補正部、 210:送信ベースバンド部、 211:受信ベースバンド部、 212:DAC、 213:ADC、 214:ミキサ、 215:アンテナ、 216:インターフェース、 301:符号化・変調部、 302:合成部、 303:既知信号メモリ、 304:IFFT部、 305:位相比較部、 306:シンボル周期カウンタ、 307:クロック同期制御部、 401:シンボルタイミング検出部、 402:FFT部、 403:既知信号抽出部、 404:加算器、 405-1,405-2:伝搬路推定フィルタ、 406:等化部、 407:干渉レプリカ生成部、 408:復号部、 409-1,409-2:周波数偏差検出部、 410-1,410-2:周波数補正値算出部、 501:送信局送信機、 502:受信局受信機、 503:中継局受信機、 504:中継局送信機、 601:キャリア復調部、 1201:支局送信機、 1202:支局受信機、 1203:本局受信機、 1204:本局送信機

図1
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