(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063831
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B60H1/00 102P
B60H1/00 103G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171942
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 勝郎
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA23
3L211DA92
(57)【要約】
【課題】空調ケースに取り付けられたアクチュエータのガタつきが生じることを抑制するとともに、空調ケースからアクチュエータが外れてしまうことを抑制することが可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置は、空調ケースと、空調ケースに装着されるアクチュエータ3とを備え、アクチュエータ3は、本体部31と、本体部31から突出する係合片32とを備え、空調ケースは、ケース本体と、前記ケース本体に固定される保持部5及び押し当て部6とを備え、保持部5は、弾性変形可能に構成される脚部51と、脚部51と接続され、係合片32と係合する係合部52とを備え、押し当て部6は、弾性変形可能に構成され、弾性変形した状態で係合片32に当接する押し当てツメ62を備え、係合片32は、係合部52と押し当てツメ62との間に配置され、押し当てツメ62の弾性力によって係合部52へ押し付けられる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調ケースと、前記空調ケースに装着されるアクチュエータとを備え、
前記アクチュエータは、本体部と、前記本体部から突出する係合片と、を備え、
前記空調ケースは、ケース本体と、前記ケース本体に固定される保持部及び押し当て部と、を備え、
前記保持部は、弾性変形可能に構成される脚部と、前記脚部と接続され、前記係合片と係合する係合部と、を備え、
前記押し当て部は、弾性変形可能に構成され、弾性変形した状態で前記係合片に当接する押し当てツメを備え、
前記係合片は、前記係合部と前記押し当てツメとの間に配置され、前記押し当てツメの弾性力によって前記係合部へ押し付けられる、
車両用空調装置。
【請求項2】
空調ケースと、前記空調ケースのケース本体に係止されるブラケットと、前記ブラケットに装着されるアクチュエータとを備え、
前記アクチュエータは、本体部と、前記本体部から突出する係合片と、を備え、
前記ブラケットは、ブラケット本体と、前記ブラケット本体に固定される保持部及び押し当て部と、を備え、
前記保持部は、弾性変形可能に構成される脚部と、前記脚部と接続され、前記係合片と係合する係合部と、を備え、
前記押し当て部は、弾性変形可能に構成され、弾性変形した状態で前記係合片に当接する押し当てツメを備え、
前記係合片は、前記係合部と前記押し当てツメとの間に配置され、前記押し当てツメの弾性力によって前記係合部へ押し付けられる、
車両用空調装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、位置決め穴を備え、
前記空調ケースは、前記位置決め穴に挿入される位置決めピンを備え、
前記位置決めピンは、前記位置決めピンの径方向の外側の側面に複数のピン潰しリブを備え、
前記複数のピン潰しリブは、前記アクチュエータの前記位置決め穴に前記位置決めピンが挿入される際に前記径方向の内側に向かって変形する、請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記位置決めピンは、その先端に、前記ケース本体の外壁面に対して傾斜する傾斜ピンガイド面を有するピンガイド部を備える、請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記保持部は、前記ケース本体の外壁面に対して傾斜する傾斜ガイド面を有するガイド部を備える、請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記押し当て部は、前記係合片の前記押し当てツメ側への移動範囲を規制するストッパー部をさらに備える、請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記押し当てツメの先端には、前記係合片と当接する突起が形成される、請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記係合部は、前記アクチュエータの前記係合片と略平行な状態で係合する、請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両には、車室内の温度や湿度を調節する車両用空調装置が搭載されている。このような車両用空調装置は、車室内の空気の温度を調整するための空調サイクルを構成し、温度が調整された空調風を車室内に流通させるように構成されている。特許文献1及び2の車両用空調装置は、空調ケースと、空調ケースに取り付けられるアクチュエータとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6256136号公報
【特許文献2】特許第6032037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空調装置では、アクチュエータをケース本体へ押し付ける構成要素が設けられていないため、アクチュエータのガタつきが生じる場合がある。
特許文献2の空調装置では、アクチュエータが空調ケースから外れる方向に外力が加わった場合、アクチュエータを保持する保持片が弾性変形し、アクチュエータが空調ケースから外れてしまう場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、空調ケースに取り付けられたアクチュエータのガタつきが生じることを抑制するとともに、空調ケースからアクチュエータが外れてしまうことを抑制することが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の態様1に係る車両用空調装置は、空調ケースと、前記空調ケースに装着されるアクチュエータとを備え、前記アクチュエータは、本体部と、前記本体部から突出する係合片と、を備え、前記空調ケースは、ケース本体と、前記ケース本体に固定される保持部及び押し当て部と、を備え、前記保持部は、弾性変形可能に構成される脚部と、前記脚部と接続され、前記係合片と係合する係合部と、を備え、前記押し当て部は、弾性変形可能に構成され、弾性変形した状態で前記係合片に当接する押し当てツメを備え、前記係合片は、前記係合部と前記押し当てツメとの間に配置され、前記押し当てツメの弾性力によって前記係合部へ押し付けられる。
【0007】
本発明の態様2に係る車両用空調装置は、空調ケースと、前記空調ケースのケース本体に係止されるブラケットと、前記ブラケットに装着されるアクチュエータとを備え、前記アクチュエータは、本体部と、前記本体部から突出する係合片と、を備え、前記ブラケットは、ブラケット本体と、前記ブラケット本体に固定される保持部及び押し当て部と、を備え、前記保持部は、弾性変形可能に構成される脚部と、前記脚部と接続され、前記係合片と係合する係合部と、を備え、前記押し当て部は、弾性変形可能に構成され、弾性変形した状態で前記係合片に当接する押し当てツメを備え、前記係合片は、前記係合部と前記押し当てツメとの間に配置され、前記押し当てツメの弾性力によって前記係合部へ押し付けられる。
【0008】
本発明の態様3は、態様1または態様2に係る車両用空調装置であって、前記アクチュエータは、位置決め穴を備え、前記空調ケースは、前記位置決め穴に挿入される位置決めピンを備え、前記位置決めピンは、前記位置決めピンの径方向の外側の側面に複数のピン潰しリブを備え、前記複数のピン潰しリブは、前記アクチュエータの前記位置決め穴に前記位置決めピンが挿入される際に前記径方向の内側に向かって変形する。
【0009】
本発明の態様4は、態様3に係る車両用空調装置であって、前記位置決めピンは、その先端に、前記ケース本体の外壁面に対して傾斜する傾斜ピンガイド面を有するピンガイド部を備える。
【0010】
本発明の態様5は、態様1または2に係る車両用空調装置であって、前記保持部は、前記ケース本体の外壁面に対して傾斜する傾斜ガイド面を有するガイド部を備える。
【0011】
本発明の態様6は、態様1または2に係る車両用空調装置であって、前記押し当て部は、前記係合片の前記押し当てツメ側への移動範囲を規制するストッパー部をさらに備える。
【0012】
本発明の態様7は、態様1または2に係る車両用空調装置であって、前記押し当てツメの先端には、前記係合片と当接する突起が形成される。
【0013】
本発明の態様8は、態様1または2に係る車両用空調装置であって、前記係合部は、前記アクチュエータの前記係合片と略平行な状態で係合する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、空調ケースに取り付けられたアクチュエータのガタつきが生じることを抑制するとともに、空調ケースからアクチュエータが外れてしまうことを抑制することが可能な車両用空調装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第一実施形態に係る車両用空調装置の概略図である。
【
図4】
図1の保持部及び押し当て部の斜視図である。
【
図5】
図1のアクチュエータが保持部及び押し当て部に取り付けられている状態を示す概略図である。
【
図6】第二実施形態に係る車両用空調装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一実施形態)
以下、本発明に係る第一実施形態の車両用空調装置1について説明する。
図1は、本実施形態の車両用空調装置1の概略を示す図である。車両用空調装置1は、空調ケース2と、アクチュエータ3と、を備えている。
車両用空調装置1は、不図示の車両に搭載され、車室内の空調を行うように構成されている。
【0017】
空調ケース2は、車室内の空気の温度を調整し、温度が調整された空調風を流通させる空調サイクルの構成部品を内部に収容している。また、空調ケース2は、空調風を空調ケース2の内部及び外部の間で流通可能とする開口(不図示)と、当該開口の開口割合を調整し、空調風の車室への供給量を調整するダンパ(不図示)を内部に備える。
空調ケース2は、ケース本体21と、位置決めピン4、保持部5及び押し当て部6を有する。位置決めピン4、保持部5及び押し当て部6は、ケース本体21の外壁面211に取り付けられる。アクチュエータ3は、位置決めピン4、保持部5及び押し当て部6に取り付けられることによって、ケース本体21の外壁面211に装着される。
【0018】
以下の説明において、
図1に示されるケース本体21の外壁面211に直交する方向をZ方向または上下方向と称し、上下方向において空調ケース2が位置している側を下側と称し、その反対側を上側と称する場合がある。
また、
図1に示されるケース本体21の外壁面211に沿う方向のうちの一つの方向をX方向と称し、ケース本体21の外壁面211に沿う方向のうちのX方向及びZ方向に直交する方向をY方向と称する場合がある。
X方向およびY方向について、アクチュエータ3が空調ケース2に装着された状態で、アクチュエータ3に向かう側を内側と称し、アクチュエータ3から離れる側を外側と称する場合がある。
Z方向について、外壁面211に向かう側を-Z方向と称し、外壁面211から離れる側を+Z方向と称する場合がある。
【0019】
図2は、アクチュエータ3の斜視図である。アクチュエータ3は、空調ケース2内に設けられたダンパを駆動させる駆動部である。アクチュエータ3が動作してダンパを駆動させることで、空調ケース2に設けられた開口の開口割合を調整し、空調ケース2にて温度が調整された空調風の車室への供給量を調整することができる。
アクチュエータ3は、位置決めピン4、保持部5及び押し当て部6に取り付けられることによって、ケース本体21の外壁面211に装着される。
【0020】
アクチュエータ3は、本体部31と、複数の板状の係合片32と、複数の位置決め穴33とを有する。
本体部31は、内部に電動機等(不図示)を有する。係合片32は、本体部31のY方向における側面からY方向に突出している。
位置決め穴33は、アクチュエータ3をZ方向に貫通する円柱状の貫通孔であり、Z方向視において、円形状に形成されている。
【0021】
図3は、位置決めピン4の斜視図である。
図4は、保持部5及び押し当て部6の斜視図である。
図5は、アクチュエータ3が保持部5及び押し当て部6に取り付けられている状態を示す概略図である。
図1に示すように、ケース本体21の外壁面211上には、複数の位置決めピン4と、複数の保持部5と、複数の押し当て部6とが取り付けられている。
【0022】
位置決めピン4は、アクチュエータ3の位置決め穴33に挿入可能に構成されている。
図1及び3に示すように、位置決めピン4は、外壁面211に固定される基端部41と、基端部41から+Z方向に延びる軸部42と、軸部42の先端(上端)に設けられるピンガイド部43と、軸部42の側面から突出する複数のピン潰しリブ44とを備える。
軸部42は円柱状に形成され、アクチュエータ3の位置決め穴33と嵌合するように構成されている。以下の説明において、軸部42の径方向を単に径方向と称する場合がある。
ピンガイド部43は、ケース本体21の外壁面211に対して傾斜する傾斜ピンガイド面431を有し、軸部42から位置決めピン4の先端に向かって細くなる円錐形状に形成されている。
ピン潰しリブ44は、軸部42の径方向の外側の側面から、径方向の外側に突出するように設けられている。ピン潰しリブ44は、径方向に塑性変形するように形成されている。複数のピン潰しリブ44は、軸部42の周方向において、互いに離間して設けられている。軸部42の周方向において複数のピン潰しリブ44が互いに離間する距離は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0023】
軸部42の径方向における大きさは、位置決め穴33の径方向における大きさよりもわずかに小さいように構成されている。また、軸部42とピン潰しリブ44とをあわせた径方向における大きさは、位置決め穴33の径方向における大きさよりも大きいように構成されている。
このような構成により、アクチュエータ3の位置決め穴33に位置決めピン4が挿入される際には、位置決め穴33の内面によって、ピン潰しリブ44は、軸部42の径方向の内側に向かって押しつぶされ、塑性変形する。径方向の内側に向かって塑性変形したピン潰しリブ44は、位置決め穴33の内面に当接して、当該内面を径方向の外側に向かって押圧し、アクチュエータ3を保持する。
【0024】
図1、4及び5に示すように、保持部5及び押し当て部6は、一体に形成されて、ケース本体21の外壁面211に一体に取り付けられている。なお、保持部5及び押し当て部6を異なる構成要素として別体に形成して、空調ケース2に取り付けてもよい。保持部5及び押し当て部6は、アクチュエータ3の係合片32を保持するよう構成されている。
【0025】
保持部5は、Z方向に延在するとともに弾性変形可能に構成される脚部51と、脚部51の上端に設けられる係合部52と、係合部52から突出するガイド部53とを備える。脚部51の下端は、外壁面211に固定される。
脚部51は、Y方向視において、押し当て部6を挟むようにX方向に互いに離間して配置される一対の立設部511を備える。すなわち、一対の立設部511のうち一方は、押し当て部6のX方向における一方側に位置し、一対の立設部511のうち他方は、押し当て部6のX方向における他方側に位置する。保持部5及び押し当て部6がアクチュエータ3の係合片32を保持している際には、一対の立設部511のうち一方は、係合片32のX方向における一方側に位置し、一対の立設部511のうち他方は、係合片32のX方向における他方側に位置する。
なお、Y方向において、一対の立設部511と押し当て部6との位置は同じであってもよいし、異なっていてもよい。すなわち、X方向視において、一対の立設部511と押し当て部6とは重なるように位置していてもよいし、重ならないように位置していてもよい。
また、脚部51は、Z方向に平行に延在していてもよい。また、脚部51は、ケース本体21の外壁面211に対して傾斜していてもよく、例えば、Z方向に略平行に延在していてもよい。
【0026】
係合部52は、ケース本体21の外壁面211に対して傾斜する上面521と、係合片32の上面と係合する係合面522とを有する。係合部52は、一対の立設部511の上端をX方向に接続するように設けられ、アクチュエータ3の係合片32と係合する係合部である。具体的には、保持部5及び押し当て部6がアクチュエータ3の係合片32を保持している際には、係合部52の係合面522は、アクチュエータ3の係合片32の上面に当接して係合する。なお、係合部52は、アクチュエータ3の係合片32と略平行な状態で係合してもよく、すなわち、保持部5及び押し当て部6がアクチュエータ3の係合片32を保持している際に、係合部52の係合面522と係合片32の上面とが略平行な状態であってもよい。
ガイド部53は、ケース本体21の外壁面211に対して傾斜する傾斜ガイド面531を上面として有する。傾斜ガイド面531は、係合部52から+Z方向に延びるにつれてY方向の外側に延びるように形成されている。
アクチュエータ3が保持部5及び押し当て部6に取り付けられる際には、傾斜ガイド面531及び上面521に対して上側から押し付けられた係合片32が、傾斜ガイド面531上及び上面521上を摺動するようにガイドされる。同時に、係合片32によってガイド部53及び係合部52が-Z方向及びY方向の外側に向かって押圧されることで、脚部51がY方向の外側に向けて弾性変形し、保持部5がアクチュエータ3の本体部31からY方向に離間する。
【0027】
なお、係合部52の上面521は、ケース本体21の外壁面211に対して、ガイド部53の傾斜ガイド面531と同じ傾斜角度で傾斜してもよい。この場合、アクチュエータ3が取り付けられる際に、係合部52の上面521とガイド部53の傾斜ガイド面531とが連続した一つの傾斜ガイド面として係合片32をガイドする。
また、係合部52の上面521は、ケース本体21の外壁面211に対して傾斜していなくてもよく、また、一対の脚部と同様の傾斜角度で傾斜していてもよい。
【0028】
押し当て部6は、ストッパー部61と、ストッパー部61から突出する押し当てツメ62とを有する。
ストッパー部61は、外壁面211に固定される基部611と、基部611から上方に向けて延びる一対の規制部612とを有している。一対の規制部は、X方向に離間して配置される。規制部612は、その上面が係合片32の下面と当接することで、係合片32の下方(押し当てツメ側)への移動範囲を規制する。
押し当てツメ62は、下端が基部611に接続されている。押し当てツメ62は、Z方向に弾性変形可能に構成されている。押し当てツメ62は、上方に向かって延びるにつれてY方向の外側に延びるように形成されている。押し当てツメ62は、X方向において一対の規制部612の間に位置し、押し当てツメ62の少なくとも一部は、一対の規制部612の上端よりも上側に突出するように形成されている。
押し当てツメ62は、その先端に突起形状を有する押し当て先端部621を備えている。すなわち、押し当てツメ62の先端には、係合片32と当接する突起が形成されている。
保持部5の係合部52と、押し当て部6の押し当て先端部621との間のZ方向における距離は、アクチュエータ3の係合片32のZ方向の厚さより短い。
【0029】
アクチュエータ3が保持部5及び押し当て部6に取り付けられる際には、アクチュエータ3の係合片32が押し当て先端部621に当接して押し当て先端部621を下側に向かって押すことで、押し当てツメ62が下側に向かって弾性変形する。下側に向かって弾性変形した押し当てツメ62は、上側に向かって復元しようとし、その復元力(弾性力)によって、係合片32が保持部5の係合部52に押し付けられる。
ここで、係合片32が押し当て先端部621を下側に向かって押す際に、押し当てツメ62が一定以上弾性変形する(押し当てツメ62の弾性変形量が一定以上となる)と、係合片32の下面に規制部612の上面が当接する。これにより、係合片32が押し当てツメ62に押し付けられる際に、押し当てツメ62が過剰に変形し塑性変形する前にストッパー部61が係合片32に接触するため、押し当てツメ62が塑性変形することが抑制されている。
【0030】
次に、アクチュエータ3の空調ケース2への装着方法について説明する。
まず、アクチュエータ3の位置決め穴33に位置決めピン4のピンガイド部43が挿入され、さらにアクチュエータ3を下側に(外壁面211に向けて)移動させることで、位置決め穴33に軸部42を嵌合させる。この時、アクチュエータ3は、円錐形状のピンガイド部43の傾斜ピンガイド面431に案内されることで、所定の位置までスムーズに移動する。また、軸部42が位置決め穴33に嵌合する際に、ピン潰しリブ44は軸部42の径方向の内側に向かって押しつぶされる。
一方、アクチュエータ3を下側に(外壁面211に向けて)移動させると係合片32はガイド部53及び係合部52に上方から接触する。ガイド部53及び係合部52が傾斜しているため、ガイド部53および係合部52はY方向の外側かつ下方に向けて押圧され、これにより、脚部51がY方向の外側に弾性変形し、ガイド部53及び係合部52が、本体部31からY方向の外側に離間するように移動する。同時に、係合片32は下側に向かって移動しながら、Y方向の外側に向かって移動するガイド部53及び係合部52の傾斜ガイド面531上及び上面521上を摺動する。係合片32が傾斜ガイド面531上及び上面521上を摺動した後、係合片32のY方向における外側の側面が、Y方向において係合部52の内側に位置するようになると、係合片32のY方向における外側の側面が係合部52に当接して係合部52をY方向の外側に押圧する。
【0031】
そして、さらに係合片32を下側に移動させると、係合片32の下面が押し当て部6の押し当て先端部621に当接するとともに押し当てツメ62を下側に向かって押し付け、押し当てツメ62は下側に向かって弾性変形する。押し当てツメ62が弾性変形することで、押し当て先端部621と係合部52との間の上下方向の距離が係合片32の厚さ以上になると、係合片32の上端が係合部52の下端と同じ位置または係合部52の下端よりも下側に位置するようになる。これにより、係合片32によるガイド部53及び係合部52のY方向への押圧が解除され、弾性変形していた脚部51が弾性力(復元力)により元の形状に復帰し、係合部52が係合片32の上方の位置に移動する。その後、係合片32の押し当てツメ62への押し付けをやめると、弾性変形している押し当てツメ62の弾性力(復元力)によって、係合片32が係合部52の係合面522に押し付けられる。これにより、係合片32は、係合部52と押し当て先端部621とによって上下方向に挟持されることで保持され、アクチュエータ3の空調ケース2への装着が完了する。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の車両用空調装置1は、空調ケース2と、空調ケース2に装着されるアクチュエータ3とを備え、アクチュエータ3は、本体部31と、本体部31から突出する係合片32とを備え、空調ケース2は、ケース本体21と、前記ケース本体21に固定される保持部5及び押し当て部6とを備え、保持部5は、弾性変形可能に構成される脚部51と、脚部51と接続され、係合片32と係合する係合部52とを備え、押し当て部6は、弾性変形可能に構成され、弾性変形した状態で係合片32に当接する押し当てツメ62を備え、係合片32は、係合部52と押し当てツメ62との間に配置され、押し当てツメ62の弾性力によって係合部52へ押し付けられる。
このような構成により、係合片32が、係合部52と押し当てツメ62との間に配置され、押し当てツメ62によって係合部52へ押し付けられることで、係合片32が保持されるとともにその移動が規制される。これにより、空調ケース2に装着されたアクチュエータ3のガタつきが生じることを抑制するとともに、空調ケース2からアクチュエータ3が外れてしまうことを抑制することができる。
【0033】
また、アクチュエータ3は、位置決め穴33を備え、空調ケース2は、位置決め穴33に挿入される位置決めピン4を備え、位置決めピン4は、位置決めピン4の径方向の外側の側面に複数のピン潰しリブ44を備え、複数のピン潰しリブ44は、アクチュエータ3の位置決め穴33に位置決めピン4が挿入される際に径方向の内側に向かって変形する。
このような構成により、位置決めピン4によって空調ケース2に対するアクチュエータ3の位置決めが可能になるとともに、変形したピン潰しリブ44が位置決め穴33の内面に当接して径方向の外側に向かって押圧することでアクチュエータ3をより強固に保持することができる。
【0034】
また、位置決めピン4は、その先端に、ケース本体21の外壁面211に対して傾斜する傾斜ピンガイド面431を有するピンガイド部43を備える。
このような構成により、アクチュエータ3に位置決めピン4を挿入する際に、アクチュエータ3が傾斜ピンガイド面431に案内されて所定の位置までスムーズに移動するため、位置決めピン4の挿入をより容易に行うことができる。
【0035】
また、保持部5は、ケース本体21の外壁面211に対して傾斜する傾斜ガイド面531を有するガイド部53を備える。
このような構成により、アクチュエータ3を保持部5に取り付ける際に、傾斜ガイド面531上を摺動するように係合片32がガイドされるため、アクチュエータ3の取り付けをより容易に行うことができる。
【0036】
また、押し当て部6は、係合片32の押し当てツメ62側への移動範囲を規制するストッパー部61をさらに備える。
このような構成により、係合片32が押し当てツメ62に押し付けられる際に、押し当てツメ62が過剰に変形する前にストッパー部61が係合片32に接触するため、押し当てツメ62が塑性変形することを抑制することができる。
【0037】
また、押し当てツメ62の先端には、係合片32と当接する突起が形成される。
このような構成により、突起が係合片32に当接して押圧されることで、押し当てツメ62の弾性変形量の調整が容易となり、押し当てツメ62がアクチュエータ3の係合片32を係合部52へ押し付ける押し付け力の調整が容易となる。
【0038】
また、係合部52は、アクチュエータ3の係合片32と略平行な状態で係合する。
これにより、係合片32と係合部52の接触面積が大きくなり、保持部5によってアクチュエータ3をより強固に保持することができる。
【0039】
(第二実施形態)
以下、本発明に係る第二実施形態の車両用空調装置1Aについて説明する。
第二実施形態の車両用空調装置1Aは、基本的な構成は第一実施形態の車両用空調装置1と同様であるため、異なる点を中心に説明する。また、第一実施形態の車両用空調装置1と同一または類似の機能を有する構成要素については、同一の符号を付す場合がある。
【0040】
図6は、車両用空調装置1Aの概略を示す図である。車両用空調装置1Aは、空調ケース2と、ブラケット7と、アクチュエータ3と、を備えており、ブラケット7は、ブラケット本体71と、位置決めピン4と、保持部5と、押し当て部6とを備えている。位置決めピン4、保持部5及び押し当て部6は、ブラケット本体71の外壁面711に取り付けられる。
アクチュエータ3は、位置決めピン4、保持部5及び押し当て部6に取り付けられることによって、ブラケット7の外壁面711に装着される。車両用空調装置1Aでは、ブラケット7を介してアクチュエータ3が空調ケース2に装着されている。
【0041】
ブラケット本体71の外壁面711は、ケース本体21の外壁面211に対して平行になっている。なお、外壁面711は、ケース本体21の外壁面211に対して平行でなくてもよく、例えば略平行であってもよい。
なお、第二実施形態において、ブラケット本体71の外壁面711がケース本体21の外壁面211に対して平行でない場合、外壁面711に直交する方向をZ方向または上下方向と称し、外壁面711に沿う方向のうちの一つの方向をX方向と称し、外壁面711に沿う方向のうちのX方向及び上下方向に直交する方向をY方向と称してもよい。
この場合、例えば位置決めピン4の上下方向に延在する軸部42は、外壁面711に直交する方向に延在し、傾斜ピンガイド面431及び傾斜ガイド面531は、ブラケット7の外壁面711に対して傾斜する。
ブラケット7は、アクチュエータ3が装着された状態で空調ケース2のケース本体21の外壁面211に係止可能に構成される。
【0042】
第二実施形態のアクチュエータ3は、第一実施形態のアクチュエータ3の空調ケース2への装着方法と同様の方法によってブラケット7の外壁面711に装着される。アクチュエータ3が装着されたブラケット7が、不図示の係止手段によって、ケース本体21の外壁面211に係止されることで、アクチュエータ3はケース本体21の外壁面211に装着される。
あらかじめアクチュエータ3をブラケット7に装着し、アクチュエータ3が装着された状態のブラケット7を空調ケース2に係止させることで、空調ケース2へのアクチュエータ3の着脱を容易に行うことができる。
なお、あらかじめケース本体21の外壁面211に係止させたブラケット7に対してアクチュエータ3を装着させることで、アクチュエータ3を空調ケース2に装着してもよい。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の車両用空調装置1Aは、空調ケース2と、空調ケース2のケース本体21に係止されるブラケット7と、ブラケット7に装着されるアクチュエータ3とを備え、アクチュエータ3は、本体部31と、本体部31から突出する係合片32とを備え、ブラケット7は、ブラケット本体71と、前記ブラケット本体71に固定される保持部5及び押し当て部6とを備え、保持部5は、弾性変形可能に構成される脚部51と、前記脚部51と接続され、前記係合片32と係合する係合部52とを備え、押し当て部6は、弾性変形可能に構成され、弾性変形した状態で前記係合片に当接する押し当てツメ62を備え、係合片32は、前記係合部52と前記押し当てツメ62との間に配置され、前記押し当てツメの62弾性力によって係合部52へ押し付けられる。
このような構成により、係合片32が、係合部52と押し当てツメ62との間に配置され、押し当てツメ62によって係合部52へ押し付けられることで強固に保持される。これにより、空調ケース2に装着されたアクチュエータ3のガタつきが生じることを抑制するとともに、空調ケース2からアクチュエータ3が外れてしまうことを抑制することができる。
また、ブラケット7を介してアクチュエータ3が空調ケース2に装着されるため、アクチュエータ3が空調ケース2に装着される際の、アクチュエータ3の配置の自由度を向上させることができる。
【0044】
なお、本発明の技術的範囲は前記の各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0045】
位置決めピン4、保持部5及び押し当て部6は、空調ケース2またはブラケット7と一体に形成されてもよい。
複数の係合片32は、本体部31のX方向における側面から突出してもよい。複数の係合片32のうちの一部は、保持部5及び押し当て部6に取り付けられなくてもよい。
また、複数の係合片32は、X方向またはY方向における本体部31の一方側及び他方側の両側面から突出する一対の係合片32を少なくとも備えていればよく、これらの一対の係合片32が保持部5及び押し当て部6に取り付けられていればよい。
複数の位置決め穴33は、そのうちの少なくとも一つに位置決めピン4が挿入されていればよい。
アクチュエータ3には、位置決め穴33が一つのみ形成されていてもよい。
ケース本体21の外壁面211上には、位置決めピン4が一つのみ取り付けられていてもよい。
位置決めピン4の軸部42は、三角柱、四角柱等の多角柱であってもよい。
脚部51は、一対の立設部511に代えて、押し当て部6のY方向一方側において立設する一つの立設部を備えてもよく、この場合において係合部52は、当該立設部の上端からY方向他方側に突出するように構成されてもよい。この場合においても、係合部52と押し当てツメ62との間で係合片32を上下方向に保持することができる。
【0046】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1、1A…車両用空調装置 2…空調ケース 3…アクチュエータ 4…位置決めピン 5…保持部 6…押し当て部 7…ブラケット 32…係合片 33…位置決め穴 42…軸部 43…ピンガイド部 44…ピン潰しリブ 51…脚部 52…係合部 53…ガイド部 61…ストッパー部 62…押し当てツメ