(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063845
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】無人飛行体制御システム、無人飛行体制御方法およびアンテナ
(51)【国際特許分類】
B64C 13/20 20060101AFI20240507BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240507BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240507BHJP
G05D 1/46 20240101ALI20240507BHJP
H01Q 3/24 20060101ALI20240507BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20240507BHJP
B64U 101/70 20230101ALN20240507BHJP
【FI】
B64C13/20 Z
B64C39/02
B64C27/08
G05D1/10
H01Q3/24
B64U10/13
B64U101:70
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171971
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】717007295
【氏名又は名称】株式会社Liberaware
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野平 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】別納 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】平野 翔大
【テーマコード(参考)】
5H301
5J021
【Fターム(参考)】
5H301AA06
5H301AA10
5H301BB20
5H301CC04
5H301CC07
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301FF11
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG17
5J021AA03
5J021AA05
5J021AA11
5J021AB02
5J021DB04
5J021EA01
5J021FA31
5J021HA08
(57)【要約】
【課題】複数の空間に区画された地下空間内で安全に無人飛行体を制御することが可能な無人飛行体制御システム、無人飛行体制御方法およびアンテナを提供する。
【解決手段】本開示の無人飛行体制御システムは、第1の地下空間と第2の地下空間とが隔壁によって区画され、隔壁に形成された孔部を貫通するように配置される棒状のアンテナと、前記第1の地下空間を飛行する無人飛行体に対して、前記第2の地下空間から前記無人飛行体を制御するための制御信号を、前記アンテナを介して送信するための送信装置と、を備える、ことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の地下空間と第2の地下空間とが隔壁によって区画され、
隔壁に形成された孔部を貫通するように配置される棒状のアンテナと、
前記第1の地下空間を飛行する無人飛行体に対して、前記第2の地下空間から前記無人飛行体を制御するための制御信号を、前記アンテナを介して送信するための送信装置と、を備えることを特徴とする無人飛行体制御システム。
【請求項2】
前記アンテナは、
軸方向の中央側に位置する送信部と、
前記送信部に対して該アンテナの軸方向の先端側及び根本側にそれぞれ位置する受信部と、を有する、請求項1に記載の無人飛行体制御システム。
【請求項3】
複数の地下空間に対応する前記孔部にそれぞれ配置される複数の前記アンテナを備える、請求項1又は2に記載の無人飛行体制御システム。
【請求項4】
前記複数のアンテナの中で信号を送信するアンテナを切り替える切替装置をさらに備える、請求項3に記載の無人飛行体制御システム。
【請求項5】
第1の地下空間と第2の地下空間とが隔壁によって区画され、
隔壁に形成された孔部を貫通するように棒状のアンテナが配置された状態で、
前記第1の地下空間を飛行する無人飛行体に対して、前記第2の地下空間に位置する送信装置から前記無人飛行体を制御するための制御信号を、前記アンテナを介して送信する、ことを特徴とする無人飛行体制御方法。
【請求項6】
送信装置に接続され、前記送信装置から出力される制御信号を無人飛行体に送信するための棒状のアンテナであって、
該アンテナの軸方向の中央側に位置する送信部と、
前記送信部に対して軸方向の先端側及び根本側にそれぞれ位置する受信部と、を有し、
前記送信部は、前記送信装置からの制御信号を無人飛行体に送信し、
前記受信部は、前記無人飛行体から送信されるデータを受信する、ことを特徴とするアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無人飛行体制御システム、無人飛行体制御方法およびアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンション等の建物の地下空間の点検は、人が目視で行っていた。マンションの地下空間は狭く、多数の空間に区画されており、人が移動しながら全ての空間を確認することは大変な作業であり、小型の無人飛行体のカメラで撮影しながら点検することが要望されている。
【0003】
ここで、地下空間を飛行する無人飛行体を制御する技術としては、例えば特許文献1のように、マンホールの蓋を中継装置として用いることで、地上にいる作業者が操作する操縦端末からマンホール蓋の中継装置を経由して地下空間のドローンに操縦用信号を伝達させることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、建物の地下空間はコンクリートの隔壁で多数の小空間に区画されており、これらの小空間のそれぞれには電波が到達し難く、安全に飛行体を操縦することが難しい。
【0006】
そこで、本開示は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の空間に区画された地下空間内で安全に無人飛行体を制御することが可能な無人飛行体制御システム、無人飛行体制御方法およびアンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、
第1の地下空間と第2の地下空間とが隔壁によって区画され、
隔壁に形成された孔部を貫通するように配置される棒状のアンテナと、
前記第1の地下空間を飛行する無人飛行体に対して、前記第2の地下空間から前記無人飛行体を制御するための制御信号を、前記アンテナを介して送信するための送信装置と、
を備える、ことを特徴とする無人飛行体制御システムが提供される。
【0008】
また、本開示によれば、送信装置に接続され、前記送信装置から出力される制御信号を無人飛行体に送信するための棒状のアンテナであって、
該アンテナの軸方向の中央側に位置する送信部と、
前記送信部に対して軸方向の先端側及び根本側にそれぞれ位置する受信部と、を有し、
前記送信部は、前記送信装置からの制御信号を無人飛行体に送信し、
前記受信部は、前記無人飛行体から送信されるデータを受信する、ことを特徴とするアンテナが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、複数の空間に区画された地下空間内で安全に無人飛行体を制御することが可能な無人飛行体制御システム、無人飛行体制御方法およびアンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係る無人飛行体制御システムの一例を示す概要図である。
【
図2】同実施形態に係るアンテナの構成例を示す図である。
【
図3】同実施形態に係る操縦端末の構成例を示すブロック図である。
【
図4】同実施形態に係る無人飛行体の構成例を示すブロック図である。
【
図5】同実施形態に係る無人飛行体制御システムの変形例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
<概要>
図1は、無人飛行体制御システム100の一例を示す。本システム100は、隔壁で区画された地下空間内を飛行する無人飛行体(ドローン)1を制御するためのシステムである。本システム100は、隔壁の孔部に差し込み可能な棒状のアンテナ20と、アンテナ20に有線接続される送信装置としての操縦端末30とを備える。なお、無人飛行体に制御信号を送信するための送信装置は、本例の操縦端末30に限られず、例えば、操縦端末30が無線もしくは有線により接続される中継装置等であってもよい。
【0013】
<アンテナ>
アンテナ20は、隔壁に形成された孔部を貫通するように配置される。「孔部を貫通するように配置される」とは、アンテナの先端が少なくとも孔部に部分的に差し込まれた状態であればよく、必ずしも一方の空間から他方の空間までアンテナが隔壁を完全に貫通して到達していなくてもよい。なお、アンテナの送信部及び受信部が、無人飛行体が位置する小空間に露出しているように保持されることが好ましい。
【0014】
アンテナ20は、信号を送信するための送信部21と、信号を受信するための受信部22と、を備える。送信部21は、操縦端末から出力される信号を、無人飛行体に送信する。送信部21は、例えば、無人飛行体を制御するための制御信号を送信する。制御信号は、操縦端末を作業者が手動操作することにより出力される操縦信号とすることができるが、これに限られず、自律飛行を指示する信号であってもよい。
【0015】
図2に示すように、本例のアンテナ20は、軸方向の中央側に位置する送信部21と、送信部21に対して軸方向の先端側及び根本側にそれぞれ位置する受信部22と、を有する。つまり、送信部21は棒状のアンテナ20の中央領域に位置し、送信部21を挟むように両側に受信部22が設けられている。本例のアンテナ20は、軸方向に直線状の円柱形状であるが、全体として孔部に差し込みやすい棒状であれば、形状は適宜変更可能である。例えば、円柱でなくても角柱等でもよいし、また、湾曲していたり、屈曲していたりしてもよい。太さも一定でなくてもよく、部分的に太さが異なっていたり、断面形状が異なっていたりしてもよい。受信部22は、例えば、無人飛行体1から送信される画像データ(動画、静止画)を受信する。受信した画像データは、操縦端末の表示部もしくは操縦端末に接続される他の表示部(表示装置)に出力することで、確認することができる。表示部は、モニタ、タッチパネル等のディスプレイとすることができる。本例のアンテナ20は、根本側の端部23が、作業者が把持するための把持部となっている。またアンテナ20には、操縦端末30に接続されるケーブル24が接続されており、本例では、根本側(把持部側)の端部にケーブル24が接続されている。なお、アンテナ20における送信部21と受信部22の配置は、図示例に限定されない。また、アンテナ20の受信部22は2つに限られず、例えば1つであってもよい。
【0016】
<操縦端末>
操縦端末30は、無人飛行体1の飛行を制御するための装置である。なお、無人飛行体1の飛行は、作業者の手動操縦のみで制御される必要はなく、一時的に、飛行経路情報やセンシングによる自律的な飛行プログラム(例えば、GCS(Ground Control Station))に基づく自動操縦により制御されてもよい。操縦端末30は、例えば、送受信機(プロポ)、スマートフォン、タブレット等の端末等であってもよい。操縦端末30は、フライトコントローラ11に対して、飛行制御を指示する情報(信号)を、アンテナを介して送出する。
【0017】
図3に示すように、操縦端末30は、例えば、制御部31、記憶部32、操作入力部33、表示部34、送受信部35を備える。なお、
図3の機能ブロックは参考構成であり、操縦端末30は、上記以外のその他の構成部(例えばボタン等の操作部)を備えてもよい。
【0018】
制御部31は、例えばプロセッサを有する。制御部31は、操縦端末30の各部の動作を統括して制御するための信号処理(生成、出力、送受信)、他の各部との間のデータの入出力処理、データの演算処理及びデータの記憶処理を行う。制御部31は、作業者の操作入力部33の操作に基づいて、適宜記憶部32に記憶された情報を参照しつつ、無人飛行体1の飛行を制御するための操縦信号を生成することができる。制御部31は、この操縦信号を、(アンテナ20を介して)無人飛行体1に送信して無人飛行体1を制御することができる。これにより、操縦端末30は、無人飛行体1の移動を制御できる。操縦端末30は、飛行方向、飛行速度、飛行加速度等を変更する信号を無人飛行体1に送信することができる。
【0019】
記憶部32は、例えば操縦端末30の動作を規定するプログラムや設定値のデータが格納されたROMと、制御部31の処理時に使用される各種の情報やデータを一時的に保存するRAMを有してよい。記憶部32は、ROM及びRAM以外のメモリが含まれてよい。記憶部32は、操縦端末30の内部に設けられてよいし、操縦端末30から取り外し可能に設けられてよい。
【0020】
送受信部35は、外部の装置に対して直接、またはネットワークを介して信号を送信したり、装置からの信号を受信したりすることができる。送受信部35は、無人飛行体1と通信可能であってもよい。送受信部35は、送信部と受信部が一体となった構成であるが、送信部と受信部とを別々に設けてもよい。送受信部35は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。例えば、送受信部35は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することができる。送受信部35は、Bluetooth(登録商標)及びBLE(Bluetooth Low Energy)等の近距離通信インタフェースを備えていてもよい。
【0021】
表示部34は、操縦端末30が取得した各種の情報(例えば無人飛行体1から受信した画像、飛行データ等)を表示する。表示部34は、操縦端末30の内部または外部に設けられてよいし、操縦端末30から取り外し可能に設けられてよい。表示部34は、各種の入力を受け付け可能なタッチパネルで構成されていてもよい。
【0022】
操作入力部33は、作業者による操作入力を受け付ける。操作入力部33は、上下左右に傾倒操作可能な操縦スティック、上下左右に対応する押しボタン(十字キーの左右ボタン等を含む)、または、回転式のダイヤル等で構成されるが、特に限定されるものではない。操作入力部33は、少なくとも一軸方向の操作入力が可能となるように構成されている。一軸方向の操作入力とは、中立な状態から、一方側への操作入力と、その逆の他方側への操作入力とが含まれる。
【0023】
また、操縦端末30は、飛行を開始する要求を発信するための飛行開始ボタン、ホバリングさせる空中停止ボタン、飛行を停止させて着陸させる着陸ボタン等を備えていてもよい。
【0024】
操縦端末30の全体または一部は、例えばタッチパネル式の画面を有するスマートフォン、タブレット端末等の情報処理装置で構成されていてもよい。その場合、タッチパネルの画面に表示された操縦スティック等の画像アイコンが操作入力部を構成する。画面に表示された操作入力部をタップ(画面に指を接触させること)したり、スライドしたり(画面に指を接触させた状態のまま、指を何れかの方向に滑らせて移動させること)することで、各種の操作入力を行うことができる。なお、操縦装置30は、カメラ5の向き(撮影方向)の変更指示、機体の向き(ヘディング方向)の変更指示等を示す操縦信号を出力し、無人飛行体20に送信できるようにしてもよい。カメラ5のジンバルを制御することで撮影方向を変更するようにしてもよいし、機体の向きを変更することで撮影方向を変更するようにしてもよい。
【0025】
<無人飛行体>
無人飛行体1は、送信装置から受信する制御信号に基づいて、点検対象である地下空間の内部を飛行する。無人飛行は撮影装置(カメラ)を備え、撮影した画像データ(静止画、動画を含む)を操縦端末等に送信することができる。
【0026】
本実施形態に係る無人飛行体(ドローン)1は、いわゆる複数の回転翼3により揚力や推力を得る回転翼機であり、所定の内部空間を飛行しながら、撮影対象としての床面、壁面、点検対象物等と、当該内部空間に配置されたマーカーメジャーに設けられたARマーカーと、を含む画像データを取得する。無人飛行体1は、予め設定されたプログラムに基づいて自律的に飛行するものであってもよいし、撮影対象空間の内部または外部からユーザーが操縦することにより飛行を制御されるものであってもよいし、それらの組み合わせによって飛行制御されるものであってもよい。
【0027】
図4は、本実施形態に係る無人飛行体1のハードウェア構成例を示す図である。
図4に示すように、本実施形態に係る無人飛行体1は、本体部2と、回転翼3と、モータ4と、カメラ及びセンサ5とを備える。また、無人飛行体1は、本体部2において、フライトコントローラ11、バッテリ14、ESC(Electric Speed Controller)15および送受信部16を備える。なお、
図4に示す無人飛行体1の構成は一例であり、
図4に示す本体部2とは異なる構成を有する回転翼機であってもよい。
【0028】
本体部2は、無人飛行体1を構成するフレーム等により形成される。本体部2を構成する素材は特に限定されず、例えば、炭素繊維樹脂、ガラス繊維樹脂、マグネシウム、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄鋼、チタンその他の材料であり得る。回転翼3はモータ4に取り付けられる。回転翼3は、モータ4の回転により自身が回転することで、無人飛行体1に揚力(推力)を発生させる。回転翼3とモータ4とは、推力発生部の一例である。なお、回転翼3は、本実施形態においては、前後左右の4箇所に設けられているが、本発明はかかる例に限定されない。無人飛行体1の構造、形状、装備およびサイズ等に応じて、回転翼3の設けられる数は適宜変更されうる。
【0029】
フライトコントローラ11は、例えば、中央演算処理装置(CPU)や、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルプロセッサなど、1つ以上のプロセッサ13を有することができる。フライトコントローラ11は、メモリ12を有しており、当該メモリ12にアクセス可能である。メモリ12は、1つ以上のステップを行うためにフライトコントローラ11が実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。フライトコントローラ11は、制御装置の一例である。
【0030】
メモリ12は、たとえば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラ及びセンサ5から取得したデータは、メモリ12に直接に伝達されかつ記憶されてもよい。たとえば、カメラ5で撮影した画像データ(静止画データ・動画データ)が内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。また、カメラ5で撮影した画像データは、送受信部16を介して、操縦端末30のアンテナ20に送信される。
【0031】
フライトコントローラ11は、無人飛行体1の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。たとえば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θx、θy及びθz)を有する無人飛行体1の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために、ESC15を経由して無人飛行体1の推進機構であるモータ4を制御する。モータ4により回転翼3が回転することで無人飛行体1の揚力を生じさせる。フライトコントローラ11は、モータ4の回転数(回転数は、所定時間あたりの回転数をも意味する)を制御して、回転翼3による推力を調整し得る。
【0032】
フライトコントローラ11は、1つ以上の外部のデバイス(例えば、アンテナ20、操縦端末30、他の情報処理装置等)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部16と通信可能である。送受信部16は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。送受信部16は、フライトコントローラ11等の制御装置をインターネット網等のネットワークに接続するものであって、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信、LTE、Bluetooth(登録商標)やBLE(Blu etooth Low Energy)などの任意の通信方式のうちの1つ以上を利用することができる。
【0033】
送受信部16は、カメラ5で取得した画像データなどの各種データを、操縦端末30等の外部装置に送信する。また、送受信部16は、センサで取得したデータ、フライトコントローラ11が生成した処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンドなどのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。
【0034】
本実施の形態に係るセンサ5は、例えば、慣性センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、GPSセンサ、風センサ、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、高度センサ、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)等の近接センサ、またはカメラ以外のビジョン/イメージセンサ等を含み得る。また、センサ5は、フライトコントローラ11に搭載されるものであってもよいし、フライトコントローラ11の外部に設けられるものであってもよい。また、カメラは、画像データを取得することができれば任意のカメラであってよい。例えば、カメラ5は、一般的なカメラの他に、赤外線カメラ、ステレオカメラ等であってもよく、任意のセンサと一体に設けられていてもよい。
【0035】
ここで、マンション等の建物の地下空間Sは、例えばコンクリート等の隔壁Wによって、複数の小空間S(S1、S2、S3、S4)に区画されている。小空間Sは、地下ピット、トレンチ等とも称され、各種配管やケーブル等が存在するため、人がスムーズに移動し難い。そのため、小型のドローンを飛行させて点検作業を行うことにより、作業者の負担を軽減することができる。
【0036】
図1の例では、地下空間が、第1小空間S1、第2小空間S2、第3小空間S3、及び第4小空間S4に区画されている。第1小空間S1は、第2小空間S2、第3小空間S3、及び第4小空間S4に隣接している。各空間を隔てる隔壁Wには、人が通るための比較的大径の大径孔A(人通口)、及び、人が通過できない大きさで空気を通すための小径孔B(空気口)などの孔部が形成されている。孔部の位置、数、大きさ等は図示例に限られない。大径孔Aは、例えば、作業者及び無人飛行体1が通過可能な大きさであり、小径孔Bは、作業者及び無人飛行体1が通過不可能(もしくは通過困難)な大きさとすることができる。本例では、第1小空間S1と第2小空間S2とを隔てる隔壁W1、第2小空間S2と第3小空間S3とを隔てる隔壁W2、第3小空間S3と第4小空間S4とを隔てる隔壁W3、に大径孔Aが形成されている。また、第1小空間S1と第3小空間S3とを隔てる隔壁W4、第1小空間S1と第4小空間S4とを隔てる隔壁W5、に小径孔Bが形成されている。
【0037】
本例において、作業者は、第1小空間S1から、隔壁Wの大径孔Aを通って、第2小空間S2、第3小空間S3、第4小空間S4の順に移動することができるものの、作業者は、第1小空間S1から第3小空間S3及び第4小空間S4には直接移動できない。無人飛行体1も同様に、第1小空間S1から、隔壁Wの大径孔Aを通って、第2小空間S2、第3小空間S3、第4小空間S4の順に移動することができ、第1小空間S1から第3小空間S3及び第4小空間S4には直接移動できない。
【0038】
無人飛行体1を用いて地下空間Sの点検をする際、例えば、1名以上の作業者が第1小空間S1に位置しながら、操縦端末30及びアンテナ20を使用する。作業者は、無人飛行体1の位置に応じてアンテナ20を適切な位置に配置しながら無人飛行体1を手動操縦する。無人飛行体1が第1小空間S1に位置する場合には、アンテナ20は第1小空間S1に配置する。無人飛行体1が第1小空間S1から第2小空間S2に移動する場合、作業者は無人飛行体1が隔壁W1の大径孔Aを通過するタイミングで、アンテナ20を隔壁W1の大径孔Aに差し込み、操縦信号を無人飛行体1に送信する。また、無人飛行体1が第2小空間S2から第3小空間S3に移動する場合、作業者は無人飛行体1が隔壁W2の大径孔Aを通過するタイミングで、アンテナ20を隔壁W1の大径孔Aから抜き出して隔壁W4の小径孔Bに差し込み、操縦端末30と無人飛行体1とを通信させる。
【0039】
図1の例では、第1小空間S1に位置する作業者が操縦端末30を操作し、アンテナ20を介して制御信号を第3小空間S3に位置する無人飛行体1に送信する。操縦端末30は、隔壁W4の小径孔Bに配置されたアンテナ20を介して操縦信号を第3小空間S3内の無人飛行体1に送信したり、無人飛行体1からの画像データ等の信号を受信したりすることができる。無人飛行体1は、受信した制御信号に基づいて飛行等の動作、無人飛行体1に設けられたカメラの動き、撮影開始、撮影停止、撮影方向等を制御される。また、無人飛行体1は、カメラ5で取得した画像データを送信し、操縦端末30はアンテナ20を介して受信する。作業者は、操縦端末30が受信した画像データを表示部に表示させることで、無人飛行体1が撮影した画像(動画、静止画)をリアルタイムで確認することができ、当該画像に基づいて手動操縦することができる。
【0040】
なお、アンテナ20を隔壁W1の大径孔Aから抜き出して隔壁W4の小径孔Bに差し込むまでの間、無人飛行体1を一定の位置に留まるようにホバリングさせたり、予め設定されたプログラムに基づいて自律的に飛行させたりしてもよい。これにより、アンテナ20を移動させる間の安全性を高めることができる。また、その場合、アンテナ20を隔壁W1の大径孔Aから抜き出す前に、ホバリングや自律飛行の指示をしておくことが好ましく、これによれば、アンテナ20を移動させる間、及び、無人飛行体1が隔壁の大径孔Aを通過して小空間を移動する際の安全性をさらに高めることができる。
【0041】
図1の例では、第1小空間S1に位置する作業者が操縦端末30を操作し、隔壁W4の小径孔Bに配置されたアンテナ20を介して制御信号を第3小空間S3に位置する無人飛行体1に送信する。無人飛行体1は、受信した制御信号に基づいて飛行等の動作、無人飛行体1に設けられたカメラの動き、撮影開始、撮影停止、撮影方向等を制御される。また、無人飛行体1は、カメラ5で取得した画像データを、アンテナ20を介して操縦端末30に送信する。作業者は、操縦端末30が受信した画像データを表示部に表示させることで、無人飛行体1が撮影した画像(動画、静止画)を確認することができる。
【0042】
図1では、操縦端末30にケーブル24で接続されたアンテナ20は、第1小空間S1と第3小空間S3とを隔てる隔壁W4の小径孔Bに差し込まれた状態(アンテナ20の送信部及び受信部が第3小空間S3に露出した状態)で保持されている。アンテナ20は、作業者等の人が把持して小径孔Bに差し込んだ状態を維持するようにしてもよいし、小径孔Bに差し込んだ状態を維持できる支持部材を設けて保持されるようにしてもよい。
【0043】
従来の操縦端末で(アンテナ20を用いずに)無人飛行体を操縦しようとする場合、無人飛行体と同一の小空間(S1,S2、S3、S4)に操縦端末を持った作業者が移動しなければならなかった。本システム100では、無人飛行体1が位置する小空間S3とは別の小空間からでも、孔部Bに差し込んだアンテナ20を介して操縦信号を無人飛行体1に送信することができる。これにより、操縦端末30を持った作業者は、無人飛行体1と同じ小空間に移動する必要がなく、効率的に点検作業を行うことが可能となる。
【0044】
図5は、本システムの変形例を示す。本例では、1台の操縦端末30に対して3本のアンテナ20が接続されている。3本のアンテナ20は、それぞれ、第2小空間S2、第3小空間S3、及び第4小空間S4につながる孔に配置されている。このような構成により、無人飛行体1が第2小空間S2、第3小空間S3、及び第4小空間S4に移動する間、アンテナ20の位置を変えることなく、操縦端末30と無人飛行体1とが相互に通信可能となる。
【0045】
本例の場合は、さらに、操縦端末30に接続された複数のアンテナ20の中で何れのアンテナ20を機能させるかを切り替えることができるような構成であることが好ましい。つまり、操縦端末30に実装され、もしくは操縦端末30とアンテナ20との間に設けられた切替え装置を有することが好ましい。作業者は、無人飛行体1が飛行している小空間に位置するアンテナ20が通信できるように、切り替え装置を操作して、アンテナ20を切り替えることができる。なお、切替え装置を設けずに、常に全てのアンテナ20が機能するようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態無人飛行体制御システムにおいて、例えば、操縦端末30を持つ作業者が地上に位置した状態で、操縦端末30に接続されるアンテナ20を地下空間に配置して無人飛行体1を制御するようにしてもよい。この場合、作業者は地上から無人飛行体1を制御することができる。なお、この場合でも、無人飛行体1に電波が確実に届くように、アンテナ20の送信部及び受信部を、無人飛行体と同一の地下空間に露出させることが好ましい。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0048】
なお、上記実施形態においては、自律飛行制御を無人飛行体1のフライトコントローラ11により実行するものとして説明したが、本技術はかかる例に限定されない。すなわち、かかる自律飛行制御方法は、無人飛行体においてエッジで処理される例に限られず、他の自律飛行制御装置により遠隔で上述した補正処理がなされ、その処理結果を無人飛行体に送信し、かかる結果をもとに駆動部を制御するようなものであってもよい。つまり、かかる自律飛行制御方法を実行するハードウェアの主体は特に限定されず、上述した機能部は複数のハードウェアにより実行されるものであってもよい。
【0049】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0050】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(項目1)
第1の地下空間と第2の地下空間とが隔壁によって区画され、
隔壁に形成された孔部を貫通するように配置される棒状のアンテナと、
前記第1の地下空間を飛行する無人飛行体に対して、前記第2の地下空間から前記無人飛行体を制御するための制御信号を、前記アンテナを介して送信するための送信装置と、を備える、ことを特徴とする無人飛行体制御システム。
(項目2)
前記アンテナは、
軸方向の中央側に位置する送信部と、
前記送信部に対して該アンテナの軸方向の先端側及び根本側にそれぞれ位置する受信部と、を有する、項目1に記載の無人飛行体制御システム。
(項目3)
複数の地下空間に対応する前記孔部にそれぞれ配置される複数の前記アンテナを備える、項目1又は2に記載の無人飛行体制御システム。
(項目4)
前記複数のアンテナの中で信号を送信するアンテナを切り替える切替装置をさらに備える、項目3に記載の無人飛行体制御システム。
(項目5)
第1の地下空間と第2の地下空間とが隔壁によって区画され、
隔壁に形成された孔部を貫通するように棒状のアンテナが配置された状態で、
前記第1の地下空間を飛行する無人飛行体に対して、前記第2の地下空間に位置する送信装置から前記無人飛行体を制御するための制御信号を、前記アンテナを介して送信する、ことを特徴とする無人飛行体制御方法。
(項目6)
送信装置に接続され、前記送信装置から出力される制御信号を無人飛行体に送信するための棒状のアンテナであって、
該アンテナの軸方向の中央側に位置する送信部と、
前記送信部に対して軸方向の先端側及び根本側にそれぞれ位置する受信部と、を有し、
前記送信部は、前記送信装置からの制御信号を無人飛行体に送信し、
前記受信部は、前記無人飛行体から送信されるデータを受信する、ことを特徴とするアンテナ。
【符号の説明】
【0051】
1 無人飛行体
20 アンテナ
30 操縦端末(送信装置)
100 無人飛行体制御システム