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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063851
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】繊維強化ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20240507BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20240507BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20240507BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L1/00
C08K5/20
C08J5/04 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171996
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】中川 知之
(72)【発明者】
【氏名】坪井 一俊
(72)【発明者】
【氏名】荒川 誠一
(72)【発明者】
【氏名】隣 雅也
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA08
4F072AB03
4F072AB27
4F072AD44
4F072AF15
4F072AF29
4F072AG05
4F072AH05
4F072AH23
4F072AK15
4F072AL02
4F072AL11
4F072AL17
4J002AB01X
4J002AB02X
4J002AB03X
4J002CL01W
4J002CL03W
4J002CL05W
4J002EP016
4J002EU016
4J002FA04X
4J002FD01X
4J002GC00
4J002GF00
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】引張強度、曲げ強さ、曲げ弾性率及び外観が優れる、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)と、セルロース系繊維(B)と、アミド化合物(C)とを含む、繊維強化ポリアミド樹脂組成物であって、アミド化合物(C)が、下記一般式(1):R-CO-N(R)-R (1)〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素原子数1~4のアルキル基であるか、又は、R及びRは、互いに結合して、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、Rは、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数2~4のアシル基である〕で表され、アミド化合物(C)の含有量が、ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、0.1質量%以上2.5質量%未満である、繊維強化ポリアミド樹脂組成物に関する。また、繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、成形体の軽量化により、資源使用量の減少に寄与する観点から、SDGs(Sustainable Development Goals。持続可能な開発目標)のGoal9、13等の達成に貢献し得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)と、セルロース系繊維(B)と、アミド化合物(C)とを含む、繊維強化ポリアミド樹脂組成物であって、
アミド化合物(C)が、下記一般式(1):
-CO-N(R)-R (1)
〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素原子数1~4のアルキル基であるか、又は、R及びRは、互いに結合して、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、Rは、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数2~4のアシル基である〕
で表され、
アミド化合物(C)の含有量が、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、0.1質量%以上2.5質量%未満である、繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド5、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド56、ポリアミド510、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11及びポリアミド12からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
セルロース系繊維(B)が、アセチル化セルロース系繊維である、請求項1又は2に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
アミド化合物(C)が一般式(1)で示され、ここで、R及びRが、互いに結合して、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、Rが、水素原子である、請求項1又は2に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
アミド化合物(C)の含有量が、ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、1.0質量%以上2.2質量%以下である、請求項1又は2に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物を含む、成形体。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物を、射出成形により成形して、成形体を得る工程を含む、成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂組成物は、軽量である利点を有することから、金属材料に代えて自動車部品、航空機内部品、家庭用機器、建設材料等の分野で使用されている。また、繊維強化樹脂組成物から形成される構造体の軽量化の観点から、樹脂組成物を強化する繊維として、比重の小さな天然繊維を用いた天然繊維で強化した樹脂組成物が提案されている。
【0003】
特許文献1には、疎水化セルロース系繊維集合体を解繊するための解繊助剤が開示されている。特許文献1には、解繊助剤、疎水化セルロース系繊維集合体、及び樹脂を混合し、この混合操作中に前記疎水化セルロース系繊維集合体を解繊してする第一工程と、第一工程で得られた、解繊助剤、解繊された疎水化セルロース系繊維及び樹脂の混合物から解繊助剤を除去する第二工程とを含む、解繊された疎水化セルロース系繊維と樹脂とを含有する樹脂組成物の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、特定の相対粘度及びカルボキシ末端基濃度を有するポリアミド6と、アセチル化セルロース系繊維と、特定の式で示されるアミド化合物とを、水の存在下で溶融混練して得られた、繊維強化ポリアミド樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/163873号
【特許文献2】特開2021-36024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の樹脂組成物の製造方法では、解繊助剤として用いられるアミド化合物を除去する工程を含む。そのため、特許文献1の製造方法によって得られる繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、アミド化合物を含まない。そして、繊維強化ポリアミド樹脂組成物がアミド化合物を含まない場合は、当該アミド化合物による隠蔽性が劣ることにより、セルロース繊維に起因する外観の劣化が見られる場合があった。
【0007】
また、特許文献1及び2に開示された樹脂組成物は、引張強度、曲げ強さ及び曲げ弾性率の点で、改善が可能であることが発明者らによって見いだされた。
【0008】
したがって、本発明の目的は、引張強度、曲げ強さ、曲げ弾性率及び外観が優れる、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下に関する。
[1]脂肪族ポリアミド樹脂(A)と、セルロース系繊維(B)と、アミド化合物(C)とを含む、繊維強化ポリアミド樹脂組成物であって、
アミド化合物(C)が、下記一般式(1):
-CO-N(R)-R (1)
〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素原子数1~4のアルキル基であるか、又は、R及びRは、互いに結合して、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、Rは、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数2~4のアシル基である〕
で表され、
アミド化合物(C)の含有量が、ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、0.1質量%以上2.5質量%未満である、繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
[2]脂肪族ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド5、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド56、ポリアミド510、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11及びポリアミド12からなる群から選択される1種以上である、[1]の繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
[3]セルロース系繊維(B)が、アセチル化セルロース系繊維である、[1]又は[2]の繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
[4]アミド化合物(C)が一般式(1)で示され、ここで、R及びRが、互いに結合して、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、Rが、水素原子である、[1]~[3]のいずれかの繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
[5]アミド化合物(C)の含有量が、ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、1.0質量%以上2.2質量%以下である、[1]~[4]のいずれかの繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
[6][1]~[5]のいずれかの繊維強化ポリアミド樹脂組成物を含む、成形体。
[7][1]~[5]のいずれかの繊維強化ポリアミド樹脂組成物を、射出成形により成形して、成形体を得る工程を含む、成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、引張強度、曲げ強さ、曲げ弾性率及び外観が優れる、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[用語の定義]
「脂肪族ポリアミド樹脂(A)」を、「成分(A)」ともいう。「セルロース系繊維(B)」等についても同様である。
【0012】
[繊維強化ポリアミド樹脂組成物]
繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)と、セルロース系繊維(B)と、アミド化合物(C)とを含み、アミド化合物(C)が、下記一般式(1):R-CO-N(R)-R (1)〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素原子数1~4のアルキル基であるか、又は、R及びRは、互いに結合して、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、Rは、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数2~4のアシル基である〕で表され、そして、アミド化合物(C)の含有量が、ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、0.1質量%以上2.5質量%未満である。
【0013】
〔脂肪族ポリアミド樹脂(A)〕
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、芳香環を有さないポリアミド樹脂である。脂肪族ポリアミド樹脂(A)としては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)が挙げられる。
【0014】
<脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)>
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、1種であるポリアミド樹脂を意味する。ここで、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分としては、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組み合わせ、ラクタム又はアミノカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸の組み合わせである場合は、1種の脂肪族ジアミンと1種の脂肪族ジカルボン酸の組合せで1種のモノマー成分とみなすものとする。
【0015】
脂肪族ジアミンの炭素原子数は、2~20であることが好ましく、4~12であることが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の炭素原子数は、2~20であることが好ましく、6~12であることが特に好ましい。ラクタムの炭素原子数は、5~12であることが好ましい。アミノカルボン酸の炭素原子数は、5~12であることが好ましい。
【0016】
脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン等が挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等が挙げられる。
【0017】
脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組合せとして、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の組合せ、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の組合せ、及び、ヘキサメチレンジアミンとドデカンジオン酸の組合せ等が挙げられる。脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組合せは、該組合せの等モル塩であることが好ましい。
【0018】
ラクタムとしては、γ-ブチロラクタム、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム等が挙げられる。また、アミノカルボン酸としては、5-アミノペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。ラクタムは、生産性の観点から、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム又はドデカンラクタムであることが好ましい。
【0019】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の具体例としては、ポリバレロラクタム(ポリアミド5)、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリエナントラクタム(ポリアミド7)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリラウリルラクタム(ポリアミド12)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンオキサミド(ポリアミド122)等が挙げられる。
【0020】
<脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)>
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が2種以上であり、かつ、芳香環を有さない脂肪族ポリアミド樹脂である。よって、脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)としては、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組合せ、ラクタム及びアミノカルボン酸からなる群から選択される2種以上のモノマーの共重合体である脂肪族共重合ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0021】
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の具体例としては、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(ポリアミド6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカン酸共重合体(ポリアミド6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/66/612)、ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/カプロラクタム共重合体(ポリアミド66/6)等が挙げられる。
【0022】
<脂肪族ポリアミド樹脂(A)の特性>
<<相対粘度>>
脂肪族ポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、特に限定されないが、2.3以上であることが好ましい。物性と成形性の両立の観点から、脂肪族ポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、2.3~3.2であることが好ましく、2.4~3.0であることが特に好ましい。脂肪族ポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、JIS K-6920に準じて、96重量%の硫酸中、ポリアミド濃度1重量%、温度25℃の条件下にて測定することができる。
【0023】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)が、相対粘度の異なる2種以上の脂肪族ポリアミド樹脂(A)の組合せである場合、脂肪族ポリアミド樹脂(A)における相対粘度は、前記方法で測定されてもよい。また、それぞれの脂肪族ポリアミド樹脂(A)の相対粘度とその混合比が判明している場合、それぞれの相対粘度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、脂肪族ポリアミド樹脂(A)の相対粘度としてもよい。脂肪族ポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)の製造において重合条件により調整することができる。
【0024】
<好ましい態様>
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、ポリアミド5、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド56、ポリアミド510、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11及びポリアミド12からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0025】
〔セルロース系繊維(B)〕
セルロース系繊維(B)としては、非修飾セルロース系繊維及び修飾セルロース系繊維が挙げられる。
【0026】
<非修飾セルロース系繊維>
非修飾セルロース系繊維は、セルロース、ホロセルロース及びリグノセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子(以下、「セルロース系高分子」ともいう。)からなる繊維である。
【0027】
<修飾セルロース系繊維>
修飾セルロース系繊維は、非修飾セルロース系繊維を構成するセルロース系高分子中の多糖及びリグニンの少なくとも一部の水酸基が、置換基で修飾された繊維である。ここで、「セルロース系高分子」としては、セルロース、ホロセルロース及び/又はリグノセルロースが挙げられる。また、「修飾」とは、前記水酸基の水素原子が、前記置換基に置き換えられていることを意味する。置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アシル基等が挙げられる。
【0028】
アルキル基としては、非置換の炭素原子数1~4のアルキル基、又は、ヒドロキシル基若しくはシアノ基で置換された炭素原子数1~4のアルキル基が挙げられる。炭素原子数1~4のアルキル基は、直鎖状又は分岐状であり、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
【0029】
アルケニル基としては、炭素原子数2~4のアルケニル基が挙げられる。炭素原子数2~4のアルケニル基は、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基等が挙げられる。アルケニル基は、アリル基であることが好ましい。
【0030】
アシル基としては、式:R-CO-(式中、Rは、アルキル基又はフェニル基である)で表される基が挙げられる。
【0031】
Rにおけるアルキル基は、前記した基が挙げられ、非置換の炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましい。
【0032】
Rにおけるフェニル基としては、非置換のフェニル基、又は、アルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたフェニル基が挙げられる。
フェニル基の置換基であるアルキル基としては、前記した基が挙げられ、非置換の炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましい。
フェニル基の置換基であるアルコキシ基としては、炭素原子数1~4のアルコキシ基が挙げられる。炭素原子数1~4のアルコキシ基におけるアルキル基は、炭素原子数1~4のアルキル基において前記した基が挙げられる。炭素原子数1~4のアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基であることが好ましい。
【0033】
アシル基は、アセチル基(即ち、メチルカルボニル基)、エチルカルボニル基、n-プロピルカルボニル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、4-メチルベンゾイル基、4-エチルベンゾイル基、4-メトキシベンゾイル基、又は、4-エトキシベンゾイル基等が挙げられる。
【0034】
<<置換基による修飾度>>
修飾セルロース系繊維において、修飾セルロース系繊維中のセルロース、ホロセルロース及び/又はリグノセルロースを構成する多糖及びリグニン中の水酸基の置換基による修飾度(「DS」ともいう)は、特に限定されず、所望の特性に応じて適宜設定することができる。ここで、置換基による修飾度とは、修飾セルロース系繊維中のセルロース、ホロセルロース及び/又はリグノセルロースを構成する多糖及びリグニン単位(繰り返し単位)に存在する水酸基が、置換基により修飾された程度である。
【0035】
セルロース系高分子がセルロースである場合は、前記繰り返し単位はグルコピラノース残基であり、この1単位あたりの水酸基数は3である。よって、修飾セルロース系繊維を構成するセルロース系高分子がセルロースのみで構成されている場合は、置換基による修飾度の上限は3である。
【0036】
リグノセルロースは、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンを含む。セルロース系高分子がヘミセルロースである場合は、前記繰り返し単位はキシランにおけるキシロース残基又はアラビノガラクタンにおけるガラクトース残基であり、これらの1単位あたりの水酸基数は2である。また、標準的なリグニンにおける、前記繰り返し単位は標準的なリグニン残基であり、この1単位当たりの水酸基数は2である。よって、修飾セルロース系繊維を構成するセルロース系高分子がリグノセルロースである場合は、置換基による修飾度の上限は3未満であり、リグノセルロースが含有するヘミセルロース及びリグニンの含有量に依存して、通常2.7~2.8である。
【0037】
ホロセルロースは、セルロース及びヘミセルロースを含む。セルロース及びヘミセルロースについて、前記繰り返し単位の1単位当たりの水酸基数は、それぞれ3及び2である。よって、修飾セルロース系繊維を構成するセルロース系高分子がホロセルロースである場合は、置換基による修飾度の上限は3未満である。
【0038】
修飾セルロース系繊維において、置換基による修飾度は、0.4~2.55であることが好ましい。置換基による修飾度が0.4~2.55である場合、アミド化合物(C)に対する分散性に優れる修飾セルロース系繊維を得ることができる。置換基による修飾度は0.56~2.00であることがより好ましく、0.60~1.00であることが特に好ましい。
【0039】
置換基による修飾度(DS)は、元素分析、中和滴定法、FT-IR、二次元NMR(H及び13C-NMR)等の各種分析方法等により分析することができる。例えば、置換基がアセチル基である場合、アセチル化セルロース系繊維におけるアセチル化度は、アセチル化に用いられるアセチル化剤(即ち、酢酸の無水物又は酸塩化物等)の量、反応温度、反応時間等を調節することにより調整することができる。
【0040】
<好ましい態様>
セルロース系繊維(B)は、修飾セルロース系繊維であることが好ましい。また、修飾セルロース系繊維における置換基はアシル基であることが好ましく、アセチル基であることが特に好ましい。よって、セルロース系繊維(B)は、アセチル化セルロース系繊維であることが特に好ましい。ここで、「アセチル化セルロース系繊維」とは、修飾セルロース系繊維における置換基がアセチル基である。即ち、セルロース系繊維(B)を構成するセルロース系高分子中の多糖及びリグニンの少なくとも一部の水酸基がアセチル化された繊維である。ここで、「アセチル化」とは、アセチル化セルロース系繊維を構成するセルロース系高分子中の多糖及びリグニンの少なくとも一部の水酸基がアセチル基で修飾された(即ち、水酸基の水素原子がアセチル基(CHCO-)により置換されている)ことを意味する。
【0041】
〔セルロース系繊維(B)の製造方法〕
セルロース系繊維(B)の製造方法は、特に限定されず、所望のセルロース系繊維(B)の態様に応じて適宜設定できる。セルロース系繊維(B)が非修飾セルロース系繊維である場合、セルロース系繊維(B)の製造方法としては、例えば、後述するセルロース系繊維(B)の製造方法(1)が挙げられる。また、セルロース系繊維(B)が修飾セルロース系繊維である場合、セルロース系繊維(B)の製造方法としては、例えば、後述するセルロース系繊維(B)の製造方法(2)が挙げられる。
【0042】
<セルロース系繊維(B)の製造方法(1)>
セルロース系繊維(B)の製造方法(1)は、非修飾セルロース系繊維の製造方法である。非修飾セルロース系繊維の製造方法は、非修飾セルロース系繊維含有材料を解繊して、非修飾セルロース系繊維を得る工程を含む。
【0043】
<<非修飾セルロース系繊維含有材料>>
非修飾セルロース系繊維含有材料は、セルロース系繊維(B)の原料である。非修飾セルロース系繊維含有材料は、セルロース系パルプ(非修飾セルロース系繊維集合体)であることが好ましい。
【0044】
セルロース系パルプは、植物性の原料から分離した、セルロース系高分子からなる繊維集合体を意味する。植物として、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビート、農産物残廃物等が挙げられる。木材としては、シトカスプルース、マツ(トドマツ、アカマツ等)、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシア等の針葉樹又は広葉樹由来の木材が挙げられる。
【0045】
セルロース系パルプは、リグニンを含まないパルプ(セルロースからなるパルプ、ホロセルロースからなるパルプ等)及びリグニンを含むパルプ(リグノパルプ)を包含する。ここで、リグノパルプは、リグニンが検出される限り、リグニンの含有量が微量であるパルプを包含する。リグノパルプ中のリグニン量は、クラーソン法で定量することができる。リグノパルプにおけるリグニンの含有量は、特に限定されないが、0.1~40質量%であることが好ましく、0.1~35質量%であることがより好ましく、0.1~30質量%であることが特に好ましい。
【0046】
セルロース系パルプは、木材から得られるパルプ(木材パルプ)であることが好ましい。セルロース系パルプは、リグノパルプであることが好ましい。
【0047】
セルロース系パルプは、前記した植物に由来する原料を、機械パルプ化法、化学パルプ化法、又は機械パルプ化法と化学パルプ化法との組み合わせにより処理して得ることができる。このようにして得られるパルプとしては、クラフトパルプ(KP)、機械パルプ(MP)等が挙げられる。クラフトパルプ(KP)としては、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)、及び針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)が挙げられる。機械パルプ(MP)としては、砕木パルプ(GP)、リファイナーGP(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等が挙げられる。
【0048】
セルロース系繊維含有材料の平均繊維径は、特に限定されないが、10~500μmであることが好ましい。このような平均繊維径であれば、解繊(ミクロフィブリル化)を効率的に行うことができる。
【0049】
<<平均繊維径>>
非修飾セルロース系繊維含有材料の平均繊維径は、特に限定されないが、10~500μmであることが好ましい。このような平均繊維径であれば、非修飾セルロース系繊維含有材料の解繊を効率的に行うことができる。
【0050】
<<解繊の方法>>
非修飾セルロース系繊維含有材料の解繊方法としては、パルプを解繊するための公知の解繊方法が挙げられる。前記解繊方法の具体例としては、非修飾セルロース系パルプの水懸濁液又はスラリーを、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸混練機、多軸混練機(好ましくは二軸混練機)、ビーズミル等による機械的な摩砕又は叩解することによる解繊方法が挙げられる。これらの解繊方法は、組み合わせて用いてもよい。
【0051】
また、非修飾セルロース系繊維含有材料及び脂肪族ポリアミド樹脂(A)を一緒に溶融混練することで、溶融混練中に非修飾セルロース系繊維含有材料が解繊されて、脂肪族ポリアミド樹脂(A)中で、非修飾セルロース系繊維であるセルロース系繊維(B)とすることができる。これにより、非修飾セルロース系繊維含有材料の解繊及び繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造を効率的に行うことができる。
【0052】
<セルロース系繊維(B)の製造方法(2)>
セルロース系繊維(B)の製造方法(2)は、修飾セルロース系繊維の製造方法である。修飾セルロース系繊維の製造方法は、非修飾セルロース系繊維を修飾して、修飾セルロース系繊維を得る工程を含む。または、修飾セルロース系繊維の製造方法は、非修飾セルロース系繊維含有材料を修飾して、修飾セルロース系繊維含有材料を得る工程、及び、修飾セルロース系繊維含有材料を解繊して、修飾セルロース系繊維を得る工程を含む。
ここで、非修飾セルロース系繊維含有材料については、セルロース系繊維(B)の製造方法(1)において前記したとおりである。
【0053】
<<修飾方法>>
非修飾セルロース系繊維含有材料の修飾方法及び解繊された非修飾セルロース系繊維の修飾方法は、セルロース系高分子の水酸基を、置換基によって修飾するための公知の方法を用いることができる。このような方法としては、例えば、国際公開2019/163873号に記載の方法が挙げられる。
【0054】
例えば、セルロース系高分子の水酸基の水素原子をアセチル基とするアセチル化反応としては、非修飾セルロース系繊維含有材料を膨潤させることのできる無水非プロトン性極性溶媒中に、前記非修飾セルロース系繊維含有材料を懸濁させる工程と、塩基の存在下で、前記非修飾セルロース系繊維含有材料をアセチル化剤と反応させる工程とを含む方法が挙げられる。ここで、アセチル化剤としては、酢酸の無水物又は酸塩化物等が挙げられる。また、非プロトン性極性溶媒としては、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。また、塩基としては、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。アシル化反応は、例えば、室温(例えば、25℃)~100℃で、原料成分を撹拌しながら行うことが好ましい。アセチル化剤の量、反応温度、反応時間等を調節することにより、アセチル化セルロース系繊維のアセチル化度を調整することができる。
【0055】
また、アセチル化反応以外の修飾方法としては、例えば、国際公開2019/163873号に記載の方法が挙げられる。
【0056】
<<修飾セルロース系繊維含有材料>>
修飾セルロース系繊維含有材料における、修飾については、前記したとおりである。修飾セルロース系繊維含有材料は、アセチル化セルロース系パルプ(アセチル化セルロース系繊維集合体)であることが好ましい。
【0057】
<<平均繊維径>>
修飾セルロース系繊維含有材料の平均繊維径は、非修飾セルロース系繊維含有材料の平均繊維径について、前記したとおりである。
【0058】
<<解繊の方法>>
アセチル化セルロース系繊維含有材料の解繊方法は、非修飾セルロース系繊維の製造方法において前記したとおりである。
【0059】
また、修飾セルロース系繊維含有材料及び脂肪族ポリアミド樹脂(A)を一緒に溶融混練することで、溶融混練中に修飾セルロース系繊維含有材料が解繊(ミクロフィブリル化)されて、脂肪族ポリアミド樹脂(A)中で修飾セルロース系繊維とすることができる。これにより、修飾セルロース系繊維含有材料の解繊及び繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造を効率的に行うことができる。
【0060】
〔アミド化合物(C)〕
アミド化合物(C)は、下記一般式(1):R-CO-N(R)-R(1)〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素原子数1~4のアルキル基であるか、又は、R及びRは、互いに結合して、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、Rは、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数2~4のアシル基である〕で表される。
【0061】
<R及びR
炭素原子数1~4のアルキル基は、直鎖状又は分岐状であり、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。炭素原子数1~4のアルキル基は、メチル基、エチル基及びn-プロピル基であることが好ましい。
【0062】
炭素原子数3~11のアルキレン基は、直鎖状又は分岐状であり、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が挙げられる。炭素原子数3~11のアルキレン基は、炭素原子数3~5及び炭素原子数9~11のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数3、5、10又は11のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0063】
及びRは、互いに結合して、炭素原子数3~11のアルキレン基である場合は、一般式(1)は、Rが結合するCOと、Rが結合する-N(R)-とによって、環を形成する。前記場合のアミド化合物の具体例として、ε-カプロラクタム、N-メチル-ε-カプロラクタム、N-アセチル-ε-カプロラクタム、ラウロラクタム、δ-バレロラクタム、N-メチル-δ-バレロラクタム、ウンデカンラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0064】
<R
炭素原子数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。炭素原子数1~3のアルキル基は、メチル基であることが好ましい。
【0065】
炭素原子数2~4のアシル基としては、アセチル基及びプロピオニル基等が挙げられる。炭素原子数2~4のアシル基は、アセチル基であることが好ましい。
【0066】
<好ましい態様>
アミド化合物(C)は、一般式(1)で示され、ここで、R及びRが、互いに結合して、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、Rが、水素原子であることが好ましい。また、アミド化合物(C)は、ε-カプロラクタム及びラウロラクタムであることがより好ましく、ε-カプロラクタムであることが特に好ましい。
【0067】
(その他の成分(D))
繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含むことができる。このような成分として、水、相溶化剤、界面活性剤、多糖類(デンプン、アルギン酸等)、天然タンパク質(ゼラチン、ニカワ、カゼイン等)、無機化合物(タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属等)、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、結晶化促進剤、着色剤、可塑剤、香料、顔料、流動調整剤、レベリング剤、導電剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、紫外線分散剤、消臭剤等が挙げられる。
【0068】
(各成分の含有量)
繊維強化ポリアミド樹脂組成物中の各成分の含有量は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物中にセルロース系繊維(B)が分散している程度の含有量であれば特に制限されないが、以下の含有量が好ましい。
【0069】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)の含有量は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、50.0質量%~98.0質量%であることが好ましく、60.0質量%~95.0質量%であることが特に好ましい。
【0070】
セルロース系繊維(B)の含有量は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、1.0質量%~30.0質量%であることが好ましく、5.0質量%~20.0質量%であることが特に好ましい。
【0071】
アミド化合物(C)の含有量は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、0.1質量%以上2.5質量%未満である。アミド化合物(C)の含有量が、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、0.1質量%未満である場合、セルロース系繊維(B)に対して、アミド化合物(C)による隠蔽性が十分に発揮できす、外観が良好とはならない傾向がある。アミド化合物(C)の含有量が、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、2.5質量%以上である場合、機械的特性が劣る。また、アミド化合物(C)の含有量が、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、2.5質量%を大きく超える場合、アミド化合物(C)の成形品表面へのブリードアウトによりより外観が劣る傾向がある。アミド化合物(C)の含有量は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、1.0質量%以上2.2質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上2.2質量%以下であることが特に好ましい。
【0072】
その他の成分(D)の含有量は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、0質量%~30.0質量%以下であることが好ましく、0質量%~25.0質量%であることがより好ましく、0質量%~20.0質量%であることが特に好ましい。
【0073】
[繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法]
繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、所望の繊維強化ポリアミド樹脂組成物が得られる方法であれば特に限定されない。繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、以下の繊維強化ポリアミド樹脂組成物の第1の製造方法~第3の製造方法が挙げられる。
【0074】
(製造方法1)
繊維強化ポリアミド樹脂組成物の第1の製造方法(製造方法1)は、以下の工程(1A):
(1A)脂肪族ポリアミド樹脂(A)と、セルロース系繊維(B)とを、一般式(1)で示されるアミド化合物(C)の存在下で溶融混練して、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得る工程
を含む。
【0075】
製造方法1は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物に含まれる成分を一緒に溶融混練する方法である。工程(1A)における、セルロース系繊維(B)は、非修飾セルロース系繊維及び/又は修飾セルロース系繊維である。よって、製造方法1は、セルロース系繊維(B)の種類に応じて、セルロース系繊維(B)の製造方法(1)で前記した各工程、及び/又は、セルロース系繊維(B)の製造方法(2)で前記した各工程を含むことができる。また、工程(1A)における、溶融混練は、後述するとおりである。
【0076】
(製造方法2)
繊維強化ポリアミド樹脂組成物の第2の製造方法(製造方法2)は、以下の工程(2A):
(2A)脂肪族ポリアミド樹脂(A)と、セルロース系繊維含有材料とを、一般式(1)で示されるアミド化合物(C)の存在下で溶融混練して、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得る工程と
を含む。
【0077】
製造方法2は、セルロース系繊維含有材料及び脂肪族ポリアミド樹脂(A)を一緒に溶融混練する方法である。製造方法2では、混練中のせん断応力によりセルロース系繊維含有材料の解繊が進行する。工程(2A)における、セルロース系繊維含有材料は、非修飾セルロース系繊維含有材料及び/又は修飾セルロース系繊維含有材料である。よって、製造方法2において修飾セルロース系繊維含有材料が用いられる場合は、非修飾セルロース系繊維を修飾して、修飾セルロース系繊維を得る工程を含むことができる。本工程は、セルロース系繊維(B)の製造方法(2)において前記前記したとおりである。また、工程(2A)における、溶融混練は、後述するとおりである。
【0078】
(製造方法3)
繊維強化ポリアミド樹脂組成物の第3の製造方法(製造方法3)は、以下の工程(3A)及び工程(3B):
(3A)マスターバッチを得る工程であって、以下の工程(3A-1)又は工程(3A-2):
(3A-1)脂肪族ポリアミド樹脂(A)と、セルロース系繊維(B)とを、一般式(1)で示されるアミド化合物(C)の存在下で溶融混練して、マスターバッチを得る工程、又は、
(3A-2)脂肪族ポリアミド樹脂(A)と、セルロース系繊維含有材料とを、一般式(1)で示されるアミド化合物(C)の存在下で溶融混練して、マスターバッチを得る工程、
及び
(3B)前記マスターバッチと更なる成分(A)とを溶融混練して繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得る工程と
を含む。
【0079】
製造方法3は、いわゆるマスターバッチ法である。工程(3A)は、マスターバッチ混練工程であり、工程(3B)は、希釈混練工程である。そして、工程(3A-1)は、工程(1A)に相当する。工程(3A-2)は、工程(2A)に相当する。即ち、製造方法1及び製造方法2において、繊維強化ポリアミド樹脂組成物はマスターバッチとして得られてもよい。このようにして得られたマスターバッチを更なる脂肪族ポリアミド樹脂(A)によって希釈するように溶融混練することにより、所望の繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0080】
(溶融混練)
製造方法1及び製造方法2における溶融混練、並びに製造方法3におけるマスターバッチを得る工程における溶融混練は、所望のアミド化合物(C)の含有量である繊維強化ポリアミド樹脂組成物が得られる範囲で、アミド化合物(C)の存在下で行い、アミド化合物(C)及び水の存在下で行うことが好ましい。アミド化合物(C)を用いて溶融混練を行うことで、セルロース系繊維含有材料の解繊がより進行するか、セルロース系繊維(B)の凝集が抑えられることにより、脂肪族ポリアミド樹脂(A)中にセルロース系繊維(B)が良好に分散した、繊維強化ポリアミド樹脂組成物が容易に得られる。また、水を用いることで、セルロース系繊維(B)の分散性がより高まる傾向がある。なお、その他の成分(D)は、任意の段階で添加することができる。
【0081】
<溶融混練の温度>
溶融混練の温度は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)に応じて適宜設定することができるが、225~240℃であることが好ましい。溶融混練時の温度が前記範囲であることにより、脂肪族ポリアミド樹脂(A)及びセルロース系繊維(B)を均一に混合することができる。
【0082】
(希釈混練)
希釈混練における条件は、溶融混練において前記したとおりである。希釈混練は、所望のアミド化合物(C)の含有量である繊維強化ポリアミド樹脂組成物が得られる範囲で、アミド化合物(C)の存在下で行ってもよい。また、アミド化合物(C)及び水の存在下で行ってもよい。
【0083】
<使用量>
溶融混練における脂肪族ポリアミド樹脂(A)、セルロース系繊維(B)、及び、セルロース系繊維含有材料の使用量は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物における各成分の含有量となるような量が挙げられる。繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法において、セルロース系繊維含有材料が用いられる場合は、セルロース系繊維含有材料の使用量は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物におけるセルロース系繊維(B)の含有量となるような量が挙げられる。
【0084】
製造方法3において、マスターバッチを得る場合、セルロース系繊維(B)の使用量は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)と、セルロース系繊維(B)との合計100質量%に対して、5~70質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることが特に好ましい。溶融混練におけるアミド化合物(C)の使用量は、セルロース系繊維(B)の100質量%に対して、30~150質量%であることが好ましく、40~110質量%であることが特に好ましい。溶融混練におけるアミド化合物(C)の使用量が前記範囲である場合、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の全量に対するアミド化合物(C)の含有量を、効率良く、0.1質量%以上2.5質量%未満とすることができる。また、溶融混練における水の使用量は、特に限定されないが、セルロース系繊維(B)の100質量%に対して、10~100質量%であることが好ましく、40~60質量%であることが特に好ましい。
【0085】
[用途]
繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、成形体に用いることができる。また、繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、引張強度、曲げ強さ、曲げ弾性率及び外観が優れるため、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を含む成形体(繊維強化ポリアミド樹脂組成物を用いた成形体)は、引張強度、曲げ強さ、曲げ弾性率及び外観からなる群より選択される1種以上の特性が要求される成形体であることができる。成形体の形状としては、フィルム状、シート状、板状、ペレット状、棒状、粉末状、中空状等が挙げられる。
【0086】
繊維強化ポリアミド樹脂組成物を含む成形体は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を金型成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等の各種公知の成形方法で成形することにより製造することができる。繊維強化ポリアミド樹脂組成物を用いた成形体の製造方法は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を射出成形により成形して、成形体を得る工程を含む、製造方法であることが好ましい。射出成形機としては、特に限定されず、スクリューインライン式射出成形機、プランジャ式射出成形機等が挙げられる。射出成形機のシリンダー内で加熱溶融された繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、ショットごとに計量され、金型内に溶融状態で射出され、所定の形状で冷却、固化された後、成形体として金型から取り出される。射出成形時の樹脂温度は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物、特に脂肪族ポリアミド樹脂(A)の融点以上とすることが好ましく、「融点+100℃」未満とすることが特に好ましい。
【0087】
繊維強化ポリアミド樹脂組成物を含む成形体は、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維のみを含有する繊維強化樹脂組成物を含む成形体と比べて、軽量で、かつ強度特性に優れる。また、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を含む成形体は、自動車、電車、船舶、飛行機等の輸送機の内装材、外装材、構造材等;パソコン、テレビ、電話等の電化製品等の筺体、構造材、内部部品等;建築材;等に使用することができる。また、繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、成形体の軽量化により、資源使用量の減少に寄与する観点から、SDGs(Sustainable Development Goals。持続可能な開発目標)のGoal9、13等の達成に貢献し得る。
【実施例0088】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
<評価>
1)引張強度:繊維強化ポリアミド樹脂組成物を用いて、ISO 527-1、2に記載の試験方法に準拠し、常温(23℃。以下同じ。)下、引張速度5mm/minで試験を行った。5個の試験片(n=5)についての平均値を求めた。
2)曲げ弾性率:繊維強化ポリアミド樹脂組成物を用いて、 ISO 178に記載の試験方法に準拠し、常温下、厚み4mmの試験片を用いて曲げ速度2mm/minで試験を行った。5個の試験片(n=5)についての平均値を求めた。
3)曲げ強さ:繊維強化ポリアミド樹脂組成物を用いて、ISO 178に記載の試験方法に準拠し、常温下、厚み4mmの試験片を用いて曲げ速度2mm/minで試験を行った。5個の試験片(n=5)についての平均値を求めた。
4)外観:電動射出成型機(住友重機械工業(株)製、型式SE100D-C160S)でバレル温度240℃、金型温度80℃でISO527-1,2に記載のType A試験片を成形し、その表面外観を目視にて観察した。試験片表面に白化又はセルロース繊維に起因する外観の劣化が観測された場合は×、観測されない場合は〇と判定した。
5)相対粘度:JIS K-6920に準拠し、脂肪族ポリアミド樹脂(A)1gを96%濃硫酸100mlに溶解させて、25℃にて、相対粘度を測定した。
6)アミド化合物(C)の含有量:繊維強化ポリアミド樹脂組成物を熱水(100℃)で6時間抽出した。抽出液をガスクロマトグラフィーで分離し、繊維強化ポリアミド樹脂組成物中に残ったアミド化合物(C)の量を測定した。
【0090】
<使用成分>
以下の成分を用いた。
・脂肪族ポリアミド樹脂(A):ポリアミド6(UBE社製、相対粘度2.47)
・セルロース系繊維(B):アセチル化セルロース系繊維(アセチル化度0.86。平均繊維径35μmのセルロース系繊維を用いて特開2016-176052号公報に記載の方法に準じて製造した。)
・アミド化合物(C):ε-カプロラクタム(UBE社製)
【0091】
<実施例1>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
ポリアミド6 1000g(脂肪族ポリアミド樹脂(A)及びセルロース系繊維(B)の合計100質量%に対して、66.7質量%)と、アセチル化セルロース系繊維 500g(脂肪族ポリアミド樹脂(A)及びセルロース系繊維(B)の合計100質量%に対して、33.3質量%)と、ε-カプロラクタム 500g(セルロース系繊維(B)100質量%に対して、100質量%)と、水 250g(セルロース系繊維(B)100質量%に対して、50質量%)を80℃でブレンドし、二軸溶融混練機((株)コペリオン製、型式ZSK32Mc)に供給し、シリンダー温度230℃、ベント圧力0.094MPaで減圧しながら、溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押し出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A1)のペレットを得た。
(2)希釈混練
次に、得られたMB-A1のペレット1000g(マスターバッチ及び更なる脂肪族ポリアミド樹脂(A)の合計100質量%に対して、50質量%)と、ポリアミド6 1000g(マスターバッチ及び更なる脂肪族ポリアミド樹脂(A)の合計100質量%に対して、50質量%)とをあらかじめブレンドし、二軸溶融混練機((株)コペリオン製、型式ZSK32Mc)に供給し、シリンダー温度230℃、ベント圧力0.090MPaで減圧しながら溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押し出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、繊維強化ポリアミド樹脂組成物(A1)のペレットを得た。
【0092】
<実施例2>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
ε-カプロラクタムの量を250g(セルロース系繊維(B)100質量%に対して、50質量部)へ変更し、溶融混練時のベント圧力を0.090MPaへ変更した以外は、実施例1の製造方法と同じ方法にて、繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A2)のペレットを得た。
(2)希釈混練
繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A1)を繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A2)へ変更した以外は、実施例1の製造方法と同じ方法にて、繊維強化ポリアミド樹脂組成物(A2)のペレットを得た。
【0093】
<実施例3>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
溶融混練時のベント圧力を0.090MPaへ変更した以外は、実施例1の製造方法と同じ方法にて、繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A3)のペレットを得た。
(2)希釈混練
繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A1)を繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A3)へ変更した以外は、実施例1の製造方法と同じ方法にて、繊維強化ポリアミド樹脂組成物(A3)のペレットを得た。
【0094】
<比較例1>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
ε-カプロラクタム及び水を用いないで、かつ、溶融混練時のベント圧力を0.094MPaへ変更した以外は、実施例1の製造造方法と同じ方法にて、繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A4)のペレットを得た。
(2)希釈混練
繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A1)を繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A4)へ変更し、ベント圧力を0.092MPaへ変更した以外は、実施例1の製造方法と同じ方法にて、繊維強化ポリアミド樹脂組成物(A4)のペレットを得た。
【0095】
<比較例2>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
ε-カプロラクタムの量を1000g(セルロース系繊維(B)100質量%に対して、200質量%)へ変更し、溶融混練時のベント圧力を0.092MPaへ変更した以外は、実施例1の製造方法と同じ方法にて、繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A5)のペレットを得た。
(2)希釈混練
繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A1)を繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A5)へ変更した以外は、実施例1の製造方法と同じ方法にて、繊維強化ポリアミド樹脂組成物(A5)のペレットを得た。
【0096】
<比較例3>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
溶融混練時のベント圧力を0.088MPaへ変更した以外は、比較例2の製造造方法と同じ方法にて、繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A6)のペレットを得た。
(2)希釈混練
繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A1)を繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A6)へ変更し、ベント圧力を0.090MPaへ変更した以外は、実施例1の製造方法と同じ方法にて、繊維強化ポリアミド樹脂組成物(A6)のペレットを得た。
【0097】
<比較例4>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
溶融混練時のベント圧力を0.084MPaへ変更した以外は、比較例2の製造造方法と同じ方法にて、繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A7)のペレットを得た。
(2)希釈混練
繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A1)を繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB-A7)へ変更し、ベント圧力を0.090MPaへ変更した以外は、実施例1の製造方法と同じ方法にて、繊維強化ポリアミド樹脂組成物(A7)のペレットを得た。
【0098】
<比較例5>
比較例3で製造した繊維強化ポリアミド樹脂組成物(A6)のペレットを90℃で8時間水洗を行い、ペレット中に残ったε-カプロラクタムを除去した。その後、真空乾燥を行い、繊維強化ポリアミド樹脂組成物(A8)のペレットを得た。
【0099】
結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1より、実施例のポリアミド樹脂組成物は、引張強度、曲げ弾性率、曲げ強さ及び外観に優れていた。
実施例1と実施例2及び3との比較によると、ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、アミド化合物(C)の含有量が多くなると、引張強度、曲げ弾性率及び曲げ強さがより優れていた。
比較例1は、アミド化合物(C)の含有量が、ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、0.1質量%未満であるため、引張強度、曲げ弾性率及び曲げ強さが劣っていた。また、比較例1は、アミド化合物(C)の含有量が、ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、0.1質量%未満であるため、アミド化合物(C)による隠蔽性が劣ることによって、外観が劣っていた。
比較例2~4は、アミド化合物(C)の含有量が、ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、2.5質量%以上であるため、引張強度、曲げ弾性率及び曲げ強さが劣っていた。
また、比較例3及び4は、アミド化合物(C)の含有量が、ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、2.5質量%を大幅に超える。そのため、比較例3及び4のポリアミド樹脂組成物は、アミド化合物(C)の表面へのブリードアウトにより、アミド化合物(C)による白化が観察されており、外観が劣っていた。
比較例5は、比較例3の組成物を水洗して、アミド化合物(C)の含有量を検出限界までに低減させた組成物に関する。また、比較例5は、アミド化合物(C)の含有量が、ポリアミド樹脂組成物の全量に対して、0.1質量%未満であるため、アミド化合物(C)による隠蔽性が劣ることにより、外観が劣っていた。