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▶ 株式会社日立産機システムの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063881
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】パスボックス
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240507BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20240507BHJP
   F24F 11/77 20180101ALI20240507BHJP
   F24F 110/40 20180101ALN20240507BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F7/06 B
F24F7/007 B
F24F11/77
F24F110:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172045
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八木 星弥
(72)【発明者】
【氏名】矢田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 朋行
【テーマコード(参考)】
3L056
3L058
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BF04
3L058BE02
3L058BF04
3L058BG01
3L058BG04
3L260AA06
3L260BA09
3L260BA12
3L260CA14
3L260CA19
3L260CB54
3L260FC03
(57)【要約】
【課題】
前室側から清浄室側へ物品の受け渡しに使用されるパスボックスにおいて、前室側から清浄室側への塵埃の流入を軽減するようにしたパスボックスを提供する。
【解決手段】
前室側から清浄室側へ物品の受け渡しに使用されるパスボックスにおいて、パスボックス内の空気を前室側へ排気する排気用のファンを設け、扉の開閉状態やエアジェットの動作状態に基づいて排気ファンの運転を制御する制御部を備えたパスボックス。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前室側から清浄室側へ物品の受け渡しに使用されるパスボックスにおいて、パスボックス内のエアを前室側へ排気する排気ファンを設けたパスボックス。
【請求項2】
請求項1に記載のパスボックスにおいて、
前室側の扉の開閉状態、清浄室側の扉の開閉状態及びエアジェットの作動状態に基づいて前記排気ファンの運転、停止を制御する制御部を備えたパスボックス。
【請求項3】
請求項2に記載のパスボックスにおいて、
前記制御部は清浄室側扉が開いているとき、前記排気ファンを運転する制御を行うパスボックス。
【請求項4】
請求項2に記載のパスボックスにおいて、
前記制御部はエアジェットが作動しているとき前記排気ファンを運転する制御を行う請求項2に記載のパスボックス。
【請求項5】
請求項2に記載のパスボックスにおいて、
扉を開けることの可否を示す表示板と、
前記排気ファンを運転したときに生じる陰圧により前記表示板の表示を開けてはいけないことを示す表示に変更するシリンジとプランジャを備えた作動部を備えるパスボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、精密機械等の製造や、食品の加工などを行う清浄室と前室や廊下との間に設置され、人の出入りを制限しながら物品のやり取りを行うことで清浄室へ塵埃が流入するのを抑えるために用いられるパスボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
清浄室と前室や廊下との間に設置され、人の出入りを制限しながら物品のやり取りを行うことで清浄室への塵埃の流入を抑えるために用いられるパスボックスや、そのパスボックスのうち物品に付着した塵埃や花粉などをエアジェットの噴射により除去するようにしているパスボックスが存在している。
【0003】
特許文献1には、清浄度の低い部屋と高い部屋間を連結する箱体内に内箱によって清浄ならしめるべき物品の収納空間を区劃し、上記内箱内に高性能フィルタを介してジェットエアーを噴射せしめるようにした物品清浄用パスボックスにおいて、上記内箱内に上記物品を載置するターンテーブルを設け、このターンテーブルを駆動手段によって回転する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-169951
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなパスボックスは前室側扉を開けたとき前室側の汚染された空気が庫内に流入し、その後清浄室側扉を開けると流入した空気が清浄室側に流出してしまう可能性があった。また、塵埃を除去するためエアジェットを清浄室へ搬入する物品に所定時間浴びせる場合、エアジェットの噴射中に誤って作業者が扉を開いてしまい、塵埃を含む空気が清浄室内へ流れこみ、物品に付着した塵埃の除去が不十分になってしまう可能性があった。
【0006】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、清浄室への塵埃の流出を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前室側から清浄室側へ物品の受け渡しに使用されるパスボックスにおいて、パスボックス内のエアを前室側へ排気する排気ファンを設けることにより達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、清浄室内への塵埃の侵入を軽減することが可能となる。
【0009】
上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1及び実施例2におけるパスボックスを前室側からみた正面図の例である。
図2】本発明の実施例1及び実施例2におけるパスボックスを図1のAA’の線で切断した断面図の例である。
図3(a)】本発明の実施例3における扉開可状態の表示機構断面図である。
図3(b)】本発明の実施例3における扉開不可状態の表示機構断面図である。
図3(c)】本発明の実施例3における扉開可状態の表示機構正面図である。
図3(d)】本発明の実施例3における表示機構の表示内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。なお、実施例を説明するための各図において、同一の構成要素にはなるべく同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例0012】
図1は本発明の実施例1におけるパスボックスを前室側からみた正面図の例である。
【0013】
パスボックス1は、前室側扉2、清浄室側扉3、床4、両側の側壁5および6と天井7などにより構成されパスボックス庫内8を形成する。天井7には、エアジェット機構10が設置され、制御部(図示せず)によりエアジェット機構10が駆動制御されエアジェットノズル50からエアジェットを噴射する。床4や側壁5および6にはパンチングやスリットなどの穴が設けられており、物品20に浴びせられた空気が穴から排出される。
【0014】
パスボックス1の筐体内を通過した空気はエアジェット機構10に戻り循環する。排気ファン11は循環するエアの一部を前室側に向かって排出するように設けられる。これによりパスボックス内は陰圧となる。制御部は、パスボックス1のエアジェット機構と排気ファン11を制御するために設けられ、前室側扉2及び、清浄室側扉3の扉スイッチ30,31からの開閉情報を受け取り、エアジェット機構10、排気ファン11を駆動制御させるものである。
【0015】
この制御部は、PLC(Programmable Logic Controller)や、マイクロプロセッサなどで実現することができる。表示板12は例えば「開可」、「開不可」と記載された銘板であり、左右にスライドすることで表示が切替えられ、使用者に現在、パスボックスを開けてよいかどうかを示す情報を提供するものである。
【0016】
次に排気ファン11の動作について説明する。通常パスボックス1には両側の扉が閉じている待機状態(物品20がパスボックス庫内8に置かれていてエアジェットが作動していない状態を含む)、前室側扉2のみが開いている状態、清浄室側扉3のみが開いている状態の3つの状態がある。この3つの状態における排気ファン11の動作について説明する。
【0017】
尚、前室側扉2と清浄室側扉3の両方が開いている場合は塵埃が清浄室内へ侵入する可能性のある異常状態のため制御部はアラームを出力するか、どちらか一方の扉が開いている間は他の扉が開かないように制御してもよい。
【0018】
待機状態では排気ファン11は停止状態にある。この状態においては、清浄室側の圧力がパスボックス庫内8、前室側より高く保たれているためパスボックス庫内8の塵埃が清浄室側に流出することはない。ただし、前室側扉2を開閉させた後は、パスボックス庫内8に汚染された空気が残存するため、排気ファン11を一定時間運転させパスボックス庫内8を清浄化する。
【0019】
前室側扉2のみが開いている状態では排気ファン11は停止状態にある。この状態においては前室側の汚染された空気がパスボックス庫内8に流入するが、清浄室側の圧力がパスボックス庫内8、前室側より高く保たれているためパスボックス庫内8の塵埃が清浄室側に流出することはない。
【0020】
清浄室側扉3のみが開いている状態では排気ファン11は運転状態にある。前室側扉2を開閉させた直後はパスボックス庫内に汚染された空気があるため、その状態で清浄室側扉3を開くと汚染されたエアが清浄室側に流出してしまう。そのような状態において排気ファン11を運転させることで汚染されたエアを前室側に排出し、パスボックス庫内8は清浄室側の空気により清浄化することができる。
【0021】
本実施例によれば、前室側扉を開け閉めした後に清浄室側扉を開けたとしても清浄室側への塵埃の流出を防ぐことができる。
【0022】
図2は本発明の実施例におけるパスボックスを図1のAA’の線で切断した断面図の例である。
【0023】
清浄室と前室を隔てる隔壁51を挟んでパスボックス1が設置され、前室側扉2と洗浄室側扉3を備える。前室側扉2から入れた物品20をパスボックス庫内8へ置くことで清浄室側扉3から取り出すことが可能となる。
【0024】
前室側扉2と洗浄室側扉3には各々ハンドル32,33が備えられており、ハンドル32,33を把持し扉を開けることができる。また各々の扉には扉スイッチ30,31を備え扉の開閉を検知し、排気ファン11、エアジェット機構10の運転を制御する。エアジェット機構10運転時には不用意に扉が開けられることの無いよう扉スイッチ30,31の情報に基づいて動作するロック機構をハンドル32,33に備えれば十分な物品20の洗浄が可能となる。
【実施例0025】
エアジェット作動時に扉をロックするよう、扉にロック機構を設けようとするとパスボックスの構造が複雑になる。そこで、エアジェットを作動させている状態では制御部は排気ファン11を運転状態にする。エアジェット中に排気ファン11を運転させることでパスボックス庫内8の圧力が下がるため両側の扉が開きにくくなる。
【0026】
扉が開きにくくなることで扉にロック機構を設けない場合であってもエアジェット中に誤って扉が開かれるのを防止し、エアジェットを所定時間の間、物品20に浴びせることができる。
本実施例によれば、エアジェット作動中に扉を開かせないようにし、エアジェットを所定時間物品に浴びせることができる。
【実施例0027】
図3(a)~(c)は本発明の実施例3におけるパスボックスの表示機構12の表示を切替える機構を示した図である。
【0028】
パスボックスにおいて塵埃を確実に除去するためエアジェットを物品に所定時間浴びせることを定めた場合、扉を所定時間内に開かせないように喚起する機構、例えば「開可」や「開不可」と記載された表示板をパスボックスの状態により切替えて表示する表示機構12を設けることが望ましい。表示を切替るためには表示板を移動させる機構を設ける必要があるが、その機構を例えば、注射器のシリンジとプランジャのような部品で構成し、排気ファン11の陰圧化の作用によりプランジャに連動させた表示を動かすことで、表示機構12の表示を切替えることができる。
【0029】
電気的な機構を用いて表示を切替えても良いが、シリンジとプランジャ用いた作動部により表示板を切替えることにより単純な構成で使用者に現在のパスボックスの状態を喚起することができる。
【0030】
図3(a)は本発明の実施例3における扉開可状態の表示板断面図である。
【0031】
この状態においてパスボックス内は陰圧となっていないため、ばね42は収縮し第二の表示板46が左方向へ移動し、表示機構12には扉を開けることができることを示す第一の表示板45が表示される。シリンジ40とプランジャ44は摩擦により塵埃が発生しないよう低摩擦素材を使用しても良い。さらに摩擦の低い素材を用いることによりパスボックス内と前室との差圧が少ない場合でも表示板の切替えが可能となる。低摩擦素材としてはフッ素樹脂やグラスシートを添付したプラスチックなどが挙げられる。
【0032】
図3(b)は本発明の実施例3における扉開不可状態の表示板断面図である。
【0033】
この状態においてはパスボックス内の陰圧と通気口を介した前室側の圧力との圧力差によりプランジャ44がばね42の張力に逆らって右方向へ移動し、扉を開けることができないことを示す第二の表示板46が表示機構12に表示される。
【0034】
図3(c)は本発明の実施例3における扉開可状態の表示機構12の正面図である。扉開可状態では表示機構12には第一の表示板45が表示される。
【0035】
図3(d)は本発明の実施例3における表示板の表示内容を示す図である。第一の表示板45は扉を開けられること(開可状態であること)を示す表示で「開可」のような表示とし、第二の表示板46は扉を開けることができないこと(開不可状態であること)を示す表示で「開不可」のような表示とすれば良い。
【0036】
本実施例によれば単純な構成で使用者に現在のパスボックスの状態を喚起することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 パスボックス、2 前室側扉、3 清浄室側扉、4 床、5,6 側壁、7 天井、10 エアジェット機構、11 排気ファン、12 表示機構、20 物品、30,31 センサ、32,33 ハンドル、40 シリンジ、42 ばね、44 プランジャ、43 通気口、45 第一の表示板、46 第二の表示板、51 隔壁
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図3(d)】