(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063921
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 17/00 20200101AFI20240507BHJP
B62J 23/00 20060101ALI20240507BHJP
B62J 41/00 20200101ALI20240507BHJP
B62J 50/30 20200101ALI20240507BHJP
【FI】
B62J17/00
B62J23/00 A
B62J41/00
B62J50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172108
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】新田 慶
(72)【発明者】
【氏名】高良 幸司
(57)【要約】
【課題】鞍乗型車両において、走行中の空気抵抗を低減しながら熱交換器の冷却性能を向上させること。
【解決手段】自動二輪車1は、後方に凹んだ窪み30が形成されたフロントカウル20を備えている。フロントカウル20は、窪み30の上方に位置するカウル上部20Uと、窪み30の下方に位置するカウル下部20Dとを有している。カウル下部20Dの下方かつ前輪6の上方に空気通路18が形成されている。空気通路18の後方にラジエータ15が配置されている。フロントカウル20の車両中心線を通る鉛直端面において、カウル上部20Uの中央部23は前方に突出する第1前端31を有し、カウル下部20Dは第1前端31よりも前方に位置する第2前端32を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を有する前輪と、
前記前輪の上方に配置され、後方に凹んだ窪みが形成されたフロントカウルと、
前記前輪の前記中心軸よりも後方に配置された熱交換器と、を備え、
前記フロントカウルは、前記窪みの上方に位置するカウル上部と、前記窪みの下方に位置するカウル下部と、前記窪みの左方に位置するカウル左部と、前記窪みの右方に位置するカウル右部と、を有し、
前記カウル下部の下方かつ前記前輪の上方に、気流が後方に向かって流れる空気通路が形成され、
前記熱交換器は、前記空気通路の後方に配置され、
前記フロントカウルの車両中心線を通る鉛直端面において、前記カウル上部は前方に突出する第1前端を有し、前記カウル下部は、前記第1前端よりも前方に位置する第2前端を有している、鞍乗型車両。
【請求項2】
前記カウル上部は、左部と、前記左部よりも右方に位置する右部と、前記左部の右方かつ前記右部の左方に位置し、前記左部および前記右部から後方に凹んだ中央部と、を有し、
前記第1前端は、前記中央部に備えられている、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記カウル上部の前記中央部の下端の凹み量は、前記中央部の前記下端よりも上方の部分の凹み量よりも大きい、請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記カウル上部の前記中央部の凹み量は、前記中央部の下方に行くほど大きくなっている、請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記カウル上部の前記左部は、前記中央部の左側に位置する右側面を有し、
前記カウル上部の前記右部は、前記中央部の右側に位置する左側面を有している、請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記フロントカウルの車両中心線を通る鉛直端面において、前記第2前端は、前記カウル上部の前記中央部の輪郭を下方に延長した延長線の前方に位置している、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記フロントカウルの車両中心線を通る鉛直端面において、前記第2前端と前記第1前端との間の前後方向の寸法は、前記第1前端の位置における前記窪みの鉛直方向の寸法の半分以上である、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記フロントカウルの車両中心線を通る鉛直端面における前記第2前端と前記第1前端との間の前後方向の寸法は、前記カウル上部の前記中央部の凹み量の最大値よりも大きい、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項9】
前記カウル下部の前記第2前端は、前記熱交換器の上端よりも上方に位置している、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項10】
前記第1前端および前記第2前端は、前記前輪の前端よりも後方、かつ、前記前輪の前記中心軸よりも前方に位置している、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項11】
前記フロントカウルの前記窪みは、後方に開口しており、
前記フロントカウルには、前記窪みにより、後方に向かって気流を導くダクトが形成されている、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントカウルを備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に開示されているように、走行中の空気抵抗を低減するためにフロントカウルを備えた鞍乗型車両が知られている。そのようなフロントカウルとして、車両前後方向の後方に凹んだ窪みが形成されたフロントカウルが知られている。また、走行に伴って発生する気流によって冷却される熱交換器(例えば、ラジエータまたはオイルクーラ)を備えた鞍乗型車両が知られている。
【0003】
図8は、従来の鞍乗型車両の部分端面図であり、車両中心線を通る鉛直端面を表している。この鞍乗型車両は、窪み102が形成されたフロントカウル100およびラジエータ106を備えている。フロントカウル100は、窪み102の上方に位置するカウル上部103と、窪み102の下方に位置するカウル下部104と、窪み102の左方に位置するカウル左部(図示せず)と、窪み102の右方に位置するカウル右部(図示せず)とを有している。カウル上部103の表面は、前方かつ下方に段差無く延びている。また、図示は省略するが、カウル上部103の表面は、左方および右方に向けて段差無く延びている。走行に伴って発生する気流(以下、単に気流という)の一部Aは、カウル下部104とフロントフェンダ105との間を通って後方に流れ、ラジエータ106を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気流は前方からフロントカウル100に吹き付けるので、フロントカウル100の前方は、圧力の高い領域(以下、高圧力領域という)となる。
図8の符号Rは、高圧力領域を模式的に表している。鞍乗型車両がフロントカウル100を備えることにより、走行中の空気抵抗を低減することができるが、フロントカウル100の前方に高圧力領域Rが発生する。高圧力領域Rは、フロントカウル100の窪み102の真正面に形成される。
【0006】
気流には圧力の高い領域を避けて流れる傾向がある。
図8に示す例では、高圧力領域Rがフロントカウル100のカウル下部104の比較的下方にまで形成されている。気流は、カウル下部104の下方に比較的流れ込みにくいので、ラジエータ106に向かって比較的流れにくい。しかし、気流をラジエータ106に向けて円滑に流すことができれば、ラジエータ106の冷却性能を向上させることができる。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、走行中の空気抵抗を低減しながら熱交換器の冷却性能を向上させることができる鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示される鞍乗型車両は、中心軸を有する前輪と、前記前輪の上方に配置され、後方に凹んだ窪みが形成されたフロントカウルと、前記前輪の前記中心軸よりも後方に配置された熱交換器と、を備える。前記フロントカウルは、前記窪みの上方に位置するカウル上部と、前記窪みの下方に位置するカウル下部と、前記窪みの左方に位置するカウル左部と、前記窪みの右方に位置するカウル右部と、を有している。前記カウル下部の下方かつ前記前輪の上方に、気流が後方に向かって流れる空気通路が形成されている。前記熱交換器は、前記空気通路の後方に配置されている。前記フロントカウルの車両中心線を通る鉛直端面において、前記カウル上部は前方に突出する第1前端を有し、前記カウル下部は、前記第1前端よりも前方に位置する第2前端を有している。
【0009】
上記鞍乗型車両によれば、フロントカウルを備えているので、走行中の空気抵抗を低減することができる。また、カウル下部の第2前端がカウル上部の第1前端よりも前方に配置されていることにより、フロントカウルの窪みの前方に形成される高圧力領域は、比較的上方に形成される。そのため、走行に伴って発生する気流は、カウル下部の下方の空気通路に比較的流れ込みやすい。熱交換器に向けて気流を円滑に流すことができる。よって、走行中の空気抵抗を低減できると共に、熱交換器の冷却性能を向上させることができる。
【0010】
前記カウル上部は、左部と、前記左部よりも右方に位置する右部と、前記左部の右方かつ前記右部の左方に位置し、前記左部および前記右部から後方に凹んだ中央部と、を有していてもよい。前記第1前端は、前記中央部に備えられていてもよい。
【0011】
このように、窪みの上方に位置するカウル上部の中央部が後方に凹んでいることにより、窪みの前方の高圧力領域が比較的上方に形成されることを促進することができる。よって、熱交換器に向けて気流を更に円滑に流すことができ、熱交換器の冷却性能を更に向上させることができる。
【0012】
前記カウル上部の前記中央部の下端の凹み量は、前記中央部の前記下端よりも上方の部分の凹み量よりも大きくてもよい。前記カウル上部の前記中央部の凹み量は、前記中央部の下方に行くほど大きくなっていてもよい。前記カウル上部の前記左部は、前記中央部の左側に位置する右側面を有し、前記カウル上部の前記右部は、前記中央部の右側に位置する左側面を有していてもよい。
【0013】
カウル上部が上述のような構成を有していることにより、窪みの前方の高圧力領域を、より上方に形成しやすくなる。よって、熱交換器に向けて気流をより円滑に流すことができるので、熱交換器の冷却性能を更に向上させることができる。
【0014】
前記フロントカウルの車両中心線を通る鉛直端面において、前記第2前端は、前記カウル上部の前記中央部の輪郭を下方に延長した延長線の前方に位置していてもよい。前記フロントカウルの車両中心線を通る鉛直端面において、前記第2前端と前記第1前端との間の前後方向の寸法は、前記第1前端の位置における前記窪みの鉛直方向の寸法の半分以上であってもよい。前記フロントカウルの車両中心線を通る鉛直端面における前記第2前端と前記第1前端との間の前後方向の寸法は、前記カウル上部の前記中央部の凹み量の最大値よりも大きくてもよい。
【0015】
上述の構成によれば、カウル下部の第2前端は、より前方に位置している。このことにより、窪みの前方の高圧力領域を、より上方に形成しやすくなる。よって、熱交換器に向けて気流をより円滑に流すことができるので、熱交換器の冷却性能を更に向上させることができる。
【0016】
前記カウル下部の前記第2前端は、前記熱交換器の上端よりも上方に位置していてもよい。
【0017】
このことにより、カウル下部の下方に形成される空気通路を通じて、熱交換器に気流を良好に供給することができる。よって、熱交換器の冷却性能を向上させることができる。
【0018】
前記第1前端および前記第2前端は、前記前輪の前端よりも後方、かつ、前記前輪の前記中心軸よりも前方に位置していてもよい。
【0019】
前記フロントカウルの前記窪みは、後方に開口していてもよい。前記フロントカウルには、前記窪みにより、後方に向かって気流を導くダクトが形成されていてもよい。
【0020】
このことにより、前記ダクトを通じて、フロントカウルの前方から後方に空気を導くことができる。例えば、前記ダクトの後方にエアクリーナまたはエンジンを設置した場合、エアクリーナまたはエンジンに空気を効率よく供給することができる。これにより、エンジンの出力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、走行中の空気抵抗を低減しながら熱交換器の冷却性能を向上させることができる鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【
図2】
図2は、自動二輪車の車両中心線を通る鉛直端面図である。
【
図5】
図5は、フロントカウルの
図1のV-V線端面図である。
【
図6】
図6は、自動二輪車の一部についての車両中心線を通る鉛直端面図である。
【
図7】
図7は、フロントカウルの前方の高圧力領域を示す図である。
【
図8】
図8は、従来の鞍乗型車両についての車両中心線を通る部分的な鉛直端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、鞍乗型車両の実施形態について説明する。
図1は、鞍乗型車両の一実施形態である自動二輪車1の左側面図である。
【0024】
自動二輪車1は、ヘッドパイプ2Aを有する車体フレーム2と、車体フレーム2に支持された内燃機関(以下、エンジンという)3と、車体フレーム2に支持されたシート4と、燃料タンク5と、前輪6と、後輪7と、フロントカウル20と、サイドカバー8と、を備えている。
【0025】
以下の説明では特に断らない限り、前、後、左、右、上、下とは、乗員が乗車せずかつ荷物が載せられていない自動二輪車1が水平面上に直立した状態で停止している場合に、シート4に着座した仮想的な乗員から見た前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図中のF、Re、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。
【0026】
ヘッドパイプ2Aにはステアリング軸(図示せず)が左右に回転可能に挿入されている。ステアリング軸の上部にはハンドルバー14が固定されている。ステアリング軸の下部にはフロントフォーク9が固定されている。フロントフォーク9の下端部は、前輪6の中心軸6Aに接続されている。自動二輪車1はフロントフェンダ10を備えている。フロントフェンダ10の少なくとも一部は、前輪6の上方に配置されている。
【0027】
フロントカウル20は、ヘッドパイプ2Aの前方に配置されている。フロントカウル20は、前輪6の上方に配置されており、フロントフェンダ10の上方に配置されている。フロントカウル20の詳細な構成は後述する。サイドカバー8はフロントカウル20の左方および右方にそれぞれ配置されている。サイドカバー8は、フロントカウル20に接続されている。本実施形態ではサイドカバー8はフロントカウル20と別体であるが、サイドカバー8はフロントカウル20と一体的に形成されていてもよい。フロントカウル20の上部には、ウインドシールド13が固定されている。
【0028】
燃料タンク5はヘッドパイプ2Aの後方に配置されている。シート4は燃料タンク5の後方に配置されている。燃料タンク5およびシート4は、エンジン3の上方に配置されている。後輪7は、チェーン等の動力伝達部材(図示せず)を介してエンジン3に接続されている。後輪7はエンジン3によって駆動される駆動輪である。後輪7は、リアアーム11の後端部に接続されている。リアアーム11の前端部は、ピボット軸12により車体フレーム2に揺動可能に接続されている。
【0029】
図2は、自動二輪車1における車両中心線CL(
図3参照)を通る鉛直端面図である。本実施形態では、エンジン3は水冷式のエンジンである。自動二輪車1は、ラジエータ15およびオイルクーラ16を備えている。なお、ラジエータ15およびオイルクーラ16は熱交換器の一例である。ラジエータ15およびオイルクーラ16は、前輪6の中心軸6Aよりも後方に配置されている。フロントカウル20の下方かつフロントフェンダ10の上方には、自動二輪車1の走行に伴って発生する気流(以下、単に気流という)が流れる空気通路18が形成されている。ラジエータ15およびオイルクーラ16は、空気通路18の後方に配置されている。
【0030】
次に、フロントカウル20の詳細な構成について説明する。
図3は自動二輪車1の正面図である。
図4はフロントカウル20の斜視図である。
図3および
図4に示すように、フロントカウル20には、後方に凹んだ窪み30が形成されている。本実施形態では、窪み30は前方に開口しているだけでなく、後方にも開口している。窪み30は、フロントカウル20の前方から後方に気流を導くダクト35を形成している。
図2に示すように、ダクト35の後方には、エンジン3およびエアクリーナ17が配置されている。
【0031】
フロントカウル20は、窪み30の上方に位置するカウル上部20Uと、窪み30の下方に位置するカウル下部20Dと、窪み30の左方に位置するカウル左部20Lと、窪み30の右方に位置するカウル右部20Rとを有している。カウル上部20Uは、左部21と、左部21よりも右方に位置する右部22と、左部21の右方かつ右部22の左方に位置する中央部23とを有している。
図3に示すように車両正面視において、左部21は車両中心線CLよりも左方に位置し、右部22は車両中心線CLよりも右方に位置している。車両正面視において、中央部23は車両中心線CLと重なっている。中央部23の横幅(左右方向の寸法)は、中央部23の下方に行くほど小さくなっている。左部21、右部22、および中央部23のそれぞれの表面は、滑らかな曲面となっている。
【0032】
中央部23は、左部21および右部22から後方に凹んでいる。中央部23は後方に凹んだ凹部となっている。左部21は、中央部23の左側に位置する右側面21Wを有している。右側面21Wは、車両左右方向に延びる直線(図示せず)と交差する面であり、前方かつ上方に延びている。右部22は、中央部23の右側に位置する左側面22Wを有している(
図4参照)。左側面22Wは、車両左右方向に延びる直線と交差する面であり、前方かつ上方に延びている。
図5は、フロントカウル20の
図1のV-V線端面図である。フロントカウル20が右側面21Wおよび左側面22Wを有していることにより、左部21と中央部23との間、および、右部22と中央部23との間には、段差Sが形成されている。
【0033】
図4に示すように、中央部23の凹み量Mは、中央部23の下方に行くほど大きくなっている。なお、ここでいう凹み量Mとは、左部21および右部22に対する中央部23の車両前後方向の凹み量のことである。中央部23の下端の凹み量Mdは、中央部23の下端よりも上方の部分の凹み量Mよりも大きくなっている。すなわち、中央部23の下端の凹み量Mdは、中央部23の他の部分の凹み量Mよりも大きくなっている。
【0034】
図2に示すように、フロントカウル20の車両中心線CLを通る鉛直端面において、カウル上部20Uの中央部23は第1前端31を有し、カウル下部20Dは第2前端32を有している。なお、本実施形態ではカウル上部20Uの中央部23は前端を一つしか有していないが、カウル上部20Uの中央部23が複数の前端を有する場合、第1前端31は最も下方に位置する前端を意味するものとする。
図2に示すように、第1前端31および第2前端32は、前方に突出している。第1前端31および第2前端32は、前方に向かって凸状に形成されている。第1前端31および第2前端32は、前輪6の前端6fよりも後方に位置している。第1前端31および第2前端32は、フロントフェンダ10の前端10fよりも後方に位置している。第1前端31および第2前端32は、前輪6の前端6fよりも後方、かつ、前輪6の中心軸6Aよりも前方に位置している。
【0035】
第2前端32は第1前端31よりも前方に位置している。
図6に示すように、フロントカウル20の車両中心線CLを通る鉛直端面において、第2前端32と第1前端31との間の前後方向の寸法Kは比較的大きい。本実施形態では、フロントカウル20の車両中心線CLを通る鉛直端面における第2前端32と第1前端31との間の前後方向の寸法Kは、カウル上部20Uの中央部23の凹み量の最大値Md(
図4参照)よりも大きい。また、フロントカウル20の車両中心線CLを通る鉛直端面において、第2前端32と第1前端31との間の前後方向の寸法Kは、第1前端31の位置における窪み30の鉛直方向の寸法H30の半分以上である。フロントカウル20の車両中心線CLを通る鉛直端面において、第2前端32は、カウル上部20Uの中央部23の輪郭(詳しくは、中央部23の表面の輪郭)を下方に延長した延長線23Lの前方に位置している。なお、延長線23Lとは、中央部23の表面の輪郭の下端を通る接線のことである。
【0036】
図2に示すように、フロントカウル20の第2前端32は、ラジエータ15の上端15tよりも上方に位置している。フロントカウル20の第2前端32は、オイルクーラ16の上端16tよりも上方に位置している。
【0037】
自動二輪車1が走行すると、自動二輪車1の周囲には前方から後方に向かう気流が発生する。フロントカウル20の窪み30は前方および後方に開口しているが、窪み30の後方にはエアクリーナ17が配置されている。窪み30の後方の流路は絞られている。気流は前方からフロントカウル20に吹き付けるので、
図7に示すように、フロントカウル20の窪み30の前方は、圧力の高い領域(すなわち高圧力領域)R2となる。本実施形態によれば、カウル下部20Dの第2前端32は、カウル上部20Uの第1前端31よりも前方に位置している。第2前端32が第1前端31よりも後方に位置する場合に比べて、高圧力領域R2の位置は、第2前端32から第1前端31に向かう方向、すなわち上方に向けて移動する。そのため、高圧力領域R2は、第2前端32が第1前端31よりも後方に位置する場合の高圧力領域R1よりも上方に形成される。本実施形態によれば、窪み30の前方の高圧力領域R2は比較的上方に形成される。また、本実施形態によれば、フロントカウル20のカウル上部20Uの中央部23は、左部21および右部22から後方に凹んでいる。凹状の中央部23によって、高圧力領域R2の上方への位置変更が促進される。
【0038】
高圧力領域R2が比較的上方に形成されると、気流はフロントカウル20の下方に流れやすい。気流は、フロントカウル20の下方の空気通路18に流れ込みやすい。空気通路18に流入した空気は、空気通路18を流れた後、ラジエータ15およびオイルクーラ16に供給される。空気通路18に十分な量の空気が流れ込むことにより、ラジエータ15およびオイルクーラ16の冷却性能が向上する。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る自動二輪車1によれば、フロントカウル20を備えているので、走行中の空気抵抗を低減することができる。また、カウル下部20Dの第2前端32がカウル上部20Uの第1前端31よりも前方に配置されていることにより、フロントカウル20の窪み30の前方に形成される高圧力領域R2は、比較的上方に形成される。そのため、気流はカウル下部20Dの下方の空気通路18に比較的流れ込みやすい。ラジエータ15およびオイルクーラ16に対して、十分な量の空気を円滑に供給することができる。よって、自動二輪車1によれば、走行中の空気抵抗を低減できると共に、ラジエータ15およびオイルクーラ16の冷却性能を向上させることができる。
【0040】
また、自動二輪車1によれば、カウル上部20Uの中央部23が後方に凹んでいるので、高圧力領域R2の上方への位置変更を促進させることができる。よって、ラジエータ15およびオイルクーラ16の冷却性能を更に向上させることができる。
【0041】
本実施形態によれば、カウル上部20Uの中央部23の左側および右側に段差Sが形成されている(
図5参照)。カウル上部20Uの左部21は、中央部23の左側に位置する右側面21Wを有し、カウル上部20Uの右部22は、中央部23の右側に位置する左側面22Wを有している。カウル上部20Uの中央部23の凹み量Mは、中央部23の下方に行くほど大きくなっている(
図4参照)。中央部23の下端の凹み量Mdは、中央部23の他の部分の凹み量Mよりも大きくなっている。フロントカウル20がこのような構成を有していることにより、高圧力領域R2を比較的上方に形成しやすくなる。よって、ラジエータ15およびオイルクーラ16の冷却性能を向上させることができる。
【0042】
本実施形態によれば、
図6に示すように、フロントカウル20の車両中心線CLを通る鉛直端面において、カウル下部20Dの第2前端32は、カウル上部20Uの中央部23の輪郭を下方に延長した延長線23Lの前方に位置している。フロントカウル20の車両中心線CLを通る鉛直端面における第2前端32と第1前端31との間の前後方向の寸法Kは、カウル上部20Uの中央部23の凹み量の最大値Md(
図4参照)よりも大きい。フロントカウル20の車両中心線CLを通る鉛直端面において、第2前端32と第1前端31との間の前後方向の寸法Kは、第1前端31の位置における窪み30の鉛直方向の寸法H30の半分以上である。このように、カウル下部20Dの第2前端32は、より前方に位置している。本実施形態によれば、高圧力領域R2をより上方に形成しやすくなる。よって、ラジエータ15およびオイルクーラ16に向けて空気をより円滑に流すことができるので、ラジエータ15およびオイルクーラ16の冷却性能を更に向上させることができる。
【0043】
本実施形態によれば、カウル下部20Dの第2前端32は、ラジエータ15の上端15tおよびオイルクーラ16の上端16tよりも上方に位置している。カウル下部20Dの下方の空気通路18を通じて、空気をラジエータ15およびオイルクーラ16に向けてより円滑に流すことができる。よって、ラジエータ15およびオイルクーラ16の冷却性能を更に向上させることができる。
【0044】
本実施形態によれば、フロントカウル20の窪み30は後方に開口している。この窪み30により、フロントカウル20に気流を後方に導くダクト35が形成されている。ダクト35を通じて、フロントカウル20の前方から後方に空気を導くことができる。
図2に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1では、ダクト35の後方にエンジン3およびエアクリーナ17が配置されている。ダクト35を通じて、エアクリーナ17およびエンジン3に空気を効率よく供給することができる。これにより、エンジン3の出力を向上させることができる。
【0045】
以上、鞍乗型車両の一実施形態について説明したが、前記実施形態は例示に過ぎない。他にも様々な実施形態が可能である。
【0046】
前記実施形態に係る自動二輪車1はラジエータ15およびオイルクーラ16を備えているが、ラジエータ15およびオイルクーラ16の一方は無くてもよい。また、エンジン6が水冷式でない場合、ラジエータ15およびオイルクーラ16の両方を省略してもよい。本明細書でいう熱交換器は、空気と熱交換することによって冷却される機器をいう。熱交換器はラジエータ15またはオイルクーラ16に限定されない。
【0047】
前記実施形態では、カウル上部20Uの中央部23が左部21および右部22から後方に凹んでいるが、中央部23は左部21および右部22から後方に凹んでいなくてもよい。
【0048】
カウル上部20Uの中央部23の凹みの形状は特に限定されない。中央部23のうち凹み量Mが最も大きい部分は、中央部23の下端に限定されない。中央部23の凹み量Mは、中央部23の下方に行くほど大きくなっていなくてもよい。例えば、中央部23の凹み量Mは、中央部23の上下位置に拘わらず一定であってもよい。カウル上部20Uの中央部23の左側または右側に段差Sが無くてもよい。左部21は右側面21Wを有していなくてもよく、右部22は左側面22Wを有していなくてもよい。
【0049】
カウル下部20Dの第2前端32の前方への突出量は特に限定されない。フロントカウル20の車両中心線CLを通る鉛直端面において、第2前端32は、カウル上部20Uの中央部23の輪郭を下方に延長した延長線23Lよりも前方に位置していなくてもよい。上記鉛直端面において、第2前端32と第1前端31との間の前後方向の寸法Kは、第1前端31の位置における窪み30の鉛直方向の寸法H30の半分未満であってもよい。上記鉛直端面における第2前端32と第1前端31との間の前後方向の寸法Kは、カウル上部20Uの中央部23の凹み量Mの最大値Md以下であってもよい。
【0050】
カウル下部20Dの第2前端32は、ラジエータ15の上端15t以下の高さに位置していてもよい。
【0051】
フロントカウル20の窪み30の前方に高圧力領域が形成されるためには、最終的に窪み30の後方が絞られているか、または閉じている必要があるが、窪み30自体の形態は特に限定されない。フロントカウル20の窪み30は後方に開口していてもよく、開口していなくてもよい。フロントカウル20にダクト35が形成されていなくてもよい。フロントカウル20の窪み30には、ヘッドライト等が収容されていてもよい。
【0052】
鞍乗型車両とは、乗員が跨がって乗車する車両のことである。鞍乗型車両は自動二輪車1に限定されない。鞍乗型車両は、例えば、自動三輪車、ATV(All Terrain vehicle)、スノーモービルであってもよい。
【0053】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、実施形態がここに記載されている。ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0054】
1…自動二輪車(鞍乗型車両)、6…前輪、6A…中心軸、15…ラジエータ(熱交換器)、18…空気通路、20…フロントカウル、20U…カウル上部、20D…カウル下部、20L…カウル左部、20R…カウル右部、21…左部、21W…右側面、22…右部、22W…左側面、23…中央部、23L…延長線、30…窪み、31…第1前端、32…第2前端、35…ダクト