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特開2024-63930余寿命判定システム、及び余寿命判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063930
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】余寿命判定システム、及び余寿命判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20240507BHJP
   G06Q 50/40 20240101ALI20240507BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20240507BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240507BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240507BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240507BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20240507BHJP
【FI】
G01M17/007 J
G06Q50/30
G06Q10/00 300
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
G16Y40/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172125
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柘植 穂高
(72)【発明者】
【氏名】石川 寛
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA20
5L049AA20
5L049CC42
5L050CC42
(57)【要約】
【課題】車両等の移動体で使用される部品の余寿命を適切に判定して、移動体の価値判断に寄与する。
【解決手段】余寿命判定システム1は、移動体50の使用時に対象部品53に加わる負荷の測定結果を示す負荷測定情報を取得する負荷測定情報取得部11と、負荷測定情報に基づく対象部品53の累積疲労度に応じて、対象部品53の第1推定余寿命を認識する第1推定余寿命認識部12と、対象部品53の物性値の測定結果を示す物性値測定情報を取得する物性値測定情報取得部13と、記物性値測定情報に基づく対象部品53の物性値の劣化度に応じて、対象部品53の第2推定余寿命を認識する第2推定余寿命認識部14と、第2推定余寿命が第1推定余寿命よりも長くなるまでの第1期間においては、第1推定余寿命に基づいて対象部品53の余寿命を判定する余寿命判定部15と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に備えられた対象部品の余寿命を判定する余寿命判定システムであって、
前記移動体の使用時に前記対象部品に加わる負荷の測定結果を示す負荷測定情報を取得する負荷測定情報取得部と、
前記負荷測定情報に基づく前記対象部品の累積疲労度に応じて、前記対象部品の第1推定余寿命を認識する第1推定余寿命認識部と、
前記対象部品の物性値の測定結果を示す物性値測定情報を取得する物性値測定情報取得部と、
前記物性値測定情報に基づく前記対象部品の前記物性値の劣化度に応じて、前記対象部品の第2推定余寿命を認識する第2推定余寿命認識部と、
前記第2推定余寿命が前記第1推定余寿命よりも長くなるまでの第1期間においては、前記第1推定余寿命に基づいて前記対象部品の余寿命を判定する余寿命判定部と、
を備える余寿命判定システム。
【請求項2】
前記余寿命判定部は、前記第2推定余寿命が前記第1推定余寿命よりも長くなった後の第2期間においては、前記第2推定余寿命に基づいて前記対象部品の寿命を判定する
請求項1に記載の余寿命判定システム。
【請求項3】
前記負荷測定情報取得部は、前記移動体から第1タイミングで送信される前記負荷測定情報を受信することによって、前記負荷測定情報を取得し、
前記物性値測定情報取得部は、前記移動体のメンテナンス時に前記物性値を測定した測定器から、第2タイミングで送信される前記物性値測定情報を受信することによって、前記物性値測定情報を取得し、
前記余寿命判定部は、前記第2期間において、前回の前記第2タイミングから次回の前記第2タイミングまでの間、前回の前記第2タイミングで前記第2推定余寿命認識部により認識された前記第2推定余寿命と、前記第1タイミングとなるごとに前記第1推定余寿命認識部により認識される前記第1推定余寿命とに基づいて、前記対象部品の余寿命を判定する
請求項2に記載の余寿命判定システム。
【請求項4】
前記余寿命判定部は、前記第2期間において、前回の前記第2タイミングから次回の前記第2タイミングまでの間、前記第1タイミングとなるごとに前記第1推定余寿命認識部により認識される前記第1推定余寿命を、前回の第2タイミングで前記第2推定余寿命認識部により認識された前記第2推定余寿命により補正することによって、前記対象部品の余寿命を判定する
請求項3に記載の余寿命判定システム。
【請求項5】
前記移動体には、前記対象部品の前記物性値を測定するためのダミーテストピースが備えられ、
前記物性値測定情報取得部は、前記ダミーテストピースによる前記物性値の測定結果を示す前記物性値測定情報を取得する
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の余寿命判定システム。
【請求項6】
移動体に備えられた対象部品の余寿命を判定するために、コンピュータにより実行される余寿命判定方法であって、
前記移動体の使用時に前記対象部品に加わる負荷の測定結果を示す負荷測定情報を取得する負荷測定情報取得ステップと、
前記負荷測定情報に基づく前記対象部品の累積疲労度に応じて、前記対象部品の第1推定余寿命を認識する第1推定余寿命認識ステップと、
前記対象部品の物性値の測定結果を示す物性値測定情報を取得する物性値測定情報取得ステップと、
前記物性値測定情報に基づく前記対象部品の物性値の劣化度に応じて、前記対象部品の第2推定余寿命を認識する第2推定余寿命認識ステップと、
前記第2推定余寿命が前記第1推定余寿命よりも長くなるまでの第1期間においては、前記第1推定余寿命に基づいて前記対象部品の余寿命を判定する余寿命判定ステップと、
を含む余寿命判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、余寿命判定システム、及び余寿命判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に備えられた駆動力伝達装置の疲労程度を、駆動力伝達装置に入力されるトルクに基づいて予め定められた関係から算出し、疲労程度に応じてエンジンの出力トルクを制限する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この構成により、駆動力伝達装置の残存寿命に応じて過剰にならない範囲で、エンジントルクの制限を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-128149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の設計においては、使用頻度が高いハードユーザーが、規定年数で規定距離を移動することを想定し、さらに余裕をもたせて、車両で使用される部品の寿命設計をしている。そのため、使用頻度が一般的なユーザーが移動体を使用する場合には、上記規定年数或いは規定距離以上に移動体を使用することができる。
しかしながら、車両の残価設定は、年式と走行距離を主な判定要素としているため、一般的なユーザーが使用した車両については、実際の価値から乖離したものとなる。また、ユーザーとしても、使用年数や走行距離がかさむにつれて、車両の余寿命について不安になって、部品の余寿命に余裕があるにもかかわらず早めに車両を手放す場合も多い。
本願はかかる背景に鑑みてなされたものであり、車両等の移動体で使用される部品の余寿命を適切に判定して、移動体の価値判断に寄与することができる余寿命判定システム及び余寿命判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための第1態様として、移動体に備えられた対象部品の余寿命を判定する余寿命判定システムであって、前記移動体の使用時に前記対象部品に加わる負荷の測定結果を示す負荷測定情報を取得する負荷測定情報取得部と、前記負荷測定情報に基づく前記対象部品の累積疲労度に応じて、前記対象部品の第1推定余寿命を認識する第1推定余寿命認識部と、前記対象部品の前記物性値の測定結果を示す物性値測定情報を取得する物性値測定情報取得部と、前記物性値測定情報に基づく前記対象部品の物性値の劣化度に応じて、前記対象部品の第2推定余寿命を認識する第2推定余寿命認識部と、前記第2推定余寿命が前記第1推定余寿命よりも長くなるまでの第1期間においては、前記第1推定余寿命に基づいて前記対象部品の余寿命を判定する余寿命判定部と、を備える余寿命判定システムが挙げられる。
【0006】
上記余寿命判定システムにおいて、前記余寿命判定部は、前記第2推定余寿命が前記第1推定余寿命よりも長くなった後の第2期間においては、前記第2推定余寿命に基づいて前記対象部品の寿命を判定する構成としてもよい。
【0007】
上記余寿命判定システムにおいて、前記負荷測定情報取得部は、前記移動体から第1タイミングで送信される前記負荷測定情報を受信することによって、前記負荷測定情報を取得し、前記物性値測定情報取得部は、前記移動体のメンテナンス時に前記物性値を測定した測定器から、第2タイミングで送信される前記物性値測定情報を受信することによって、前記物性値測定情報を取得し、前記余寿命判定部は、前記第2期間において、前回の前記第2タイミングから次回の前記第2タイミングまでの間、前回の前記第2タイミングで前記第2推定余寿命認識部により認識された前記第2推定余寿命と、前記第1タイミングとなるごとに前記第1推定余寿命認識部により認識される前記第1推定余寿命とに基づいて、前記対象部品の余寿命を判定する構成としてもよい。
【0008】
上記余寿命判定システムにおいて、前記余寿命判定部は、前記第2期間において、前回の前記第2タイミングから次回の前記第2タイミングまでの間、前記第1タイミングとなるごとに前記第1推定余寿命認識部により認識される前記第1推定余寿命を、前回の第2タイミングで前記第2推定余寿命認識部により認識された前記第2推定余寿命により補正することによって、前記対象部品の余寿命を判定する構成としてもよい。
【0009】
上記余寿命判定システムにおいて、前記移動体には、前記対象部品の前記物性値を測定するためのダミーテストピースが備えられ、前記物性値測定情報取得部は、前記ダミーテストピースによる前記物性値の測定結果を示す前記物性値測定情報を取得する構成としてもよい。
【0010】
上記目的を達成するための第2態様として、移動体に備えられた対象部品の余寿命を判定するために、コンピュータにより実行される余寿命判定方法であって、前記移動体の使用時に前記対象部品に加わる負荷の測定結果を示す負荷測定情報を取得する負荷測定情報取得ステップと、前記負荷測定情報に基づく前記対象部品の累積疲労度に応じて、前記対象部品の第1推定余寿命を認識する第1推定余寿命認識ステップと、前記対象部品の物性値の測定結果を示す物性値測定情報を取得する物性値測定情報取得ステップと、前記物性値測定情報に基づく前記対象部品の物性値の劣化度に応じて、前記対象部品の第2推定余寿命を認識する第2推定余寿命認識ステップと、前記第2推定余寿命が前記第1推定余寿命よりも長くなるまでの第1期間においては、前記第1推定余寿命に基づいて前記対象部品の余寿命を判定する余寿命判定ステップと、を含む余寿命判定方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
上記余寿命判定システムによれば、車両等の移動体で使用される部品の余寿命を適切に判定して、移動体の価値判断に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、余寿命判定システムの構成の説明図である。
図2図2は、ナックルを対象部品とした、負荷と疲労度の対応マップと、累積疲労度の算出の説明図である。
図3図3は、ナックルを対象部品とした、物性値の劣化度と余寿命の対応マップの説明図である。
図4図4は、余寿命判定処理の第1のフローチャートである。
図5図5は、余寿命判定処理の第2のフローチャートである。
図6図6は、ナックルを対象部品とした、第1推定余寿命と第2推定余寿命に基づく余寿命の判定の説明図である。
図7図7は、第1推定余寿命による第2推定余寿命の補正の説明図である。
図8図8は、パワー半導体を対象部品とした、負荷と疲労度の対応マップと、累積疲労度の算出の説明図である。
図9図9は、パワー半導体を対象部品とした、物性値の劣化度と余寿命の対応マップの説明図である。
図10図10は、パワー半導体を対象部品とした、第1推定余寿命と第2推定余寿命に基づく余寿命の判定の説明図である。
図11図11は、弱電基板を対象部品とした、負荷と疲労度の対応マップの説明図である。
図12図12は、弱電基板を対象部品した、物性値の劣化度と余寿命の対応マップの説明図である。
図13図13は、弱電基板を対象部品とした、第1推定余寿命と第2推定余寿命に基づく余寿命の判定の説明図である。
図14図14は、対象部品を例示した一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1.余寿命判定システムの構成]
図1を参照して、本実施形態の余寿命判定システム1の構成について説明する。余寿命判定システム1は、車両50に備えられた対象部品53の余寿命を判定する処理を行う。車両50は、本開示の移動体に相当する。余寿命判定システム1は、プロセッサ10、メモリ20、通信ユニット30等を備えたコンピュータシステムである。
【0014】
余寿命判定システム1は、通信ユニット30により、通信ネットワーク200を介して、車両50に備えられたECU(Electronic Control Unit)51、車両50の利用者Uにより使用される利用者端末60、車両50のメンテナンス等を行うカーディーラー100の店舗管理システム101、カーディーラー100のスタッフVにより使用される測定器70、及び車両メーカーサーバー210等との間で通信を行う。
【0015】
車両50には、対象部品53に加わる負荷を検出するセンサが備えられており、ECU51は、車両50の使用時にセンサにより検出される負荷の検出結果を示す負荷測定情報Lmiを、車両50の電源オン時等に余寿命判定システム1に送信する。また、定期点検等のメンテナンスのために、車両50がカーディーラー100に持ち込まれたときに、スタッフVが測定器70により対象部品の物性値を測定し、測定結果を示す物性値測定情報Pmiが、測定器70から余寿命判定システム1に送信される。なお、物性値測定情報Pmiが、測定器70から店舗管理システム101を経由して余寿命判定システム1に送信されてもよい。
【0016】
車両メーカーサーバー210は、負荷測定情報Lmiにより示される負荷の検出値を、対象部品53の疲労度に変換するためのマップ(負荷-疲労度マップ)と、物性値測定情報Pmiにより示される物性値の測定値を、対象部品53の推定余寿命に変換するためのマップ(物性値劣化度-余寿命マップ)を含むマップ情報MPiを、余寿命判定システム1に送信する。
【0017】
余寿命判定システム1のメモリ20には、余寿命判定システム1の制御用のプログラム21と、マップ情報MPiから取得される負荷-疲労度マップのデータ22及び物性値劣化度-余寿命マップのデータ23が保存されている。プロセッサ10は、プログラム21を読み込んで実行することにより、負荷測定情報取得部11、第1推定余寿命認識部12、物性値測定情報取得部13、第2推定余寿命認識部14、及び余寿命判定部15として機能する。
【0018】
負荷測定情報取得部11により実行される処理は、本開示の余寿命推定方法における負荷測定情報取得ステップに相当し、第1推定余寿命認識部12により実行される処理は、本開示の余寿命推定方法における第1余寿命認識ステップに相当する。物性値測定情報取得部13により実行される処理は、本開示の余寿命判定方法における物性値測定情報取得ステップに相当し、第2推定余寿命認識部14により実行される処理は、本開示の余寿命判定方法における第2推定寿命認識ステップに相当する。余寿命判定部15により実行される処理は、本開示の余定命判定方法における余寿命判定ステップに相当する。
【0019】
負荷測定情報取得部11は、車両50から送信される負荷測定情報Lmiを通信ユニット30により受信して取得する。負荷測定情報取得部11が負荷測定情報Lmiを取得するタイミングは、本開示の第1タイミングに相当する。第1推定余寿命認識部12は、負荷測定情報Lmiに基づく対象部品53の累積疲労度に応じて、対象部品53の第1推定余寿命を認識する。
【0020】
物性値測定情報取得部13は、測定器70から送信される物性値測定情報Pmiを通信ユニット30により受信して取得する。物性値測定情報取得部13が物性値測定情報Pmiを取得するタイミングは、本開示の第2第2タイミングに相当する。第2推定余寿命認識部14は、物性値測定情報Pmiに基づく対象部品53の物性値の劣化度に応じて、対象部品53の第2推定余寿命を認識する。
【0021】
余寿命判定部15は、第1推定余寿命認識部12により認識される第1推定余寿命と、第2推定余寿命認識部14により認識される第2推定余寿命について、第2推定余寿命が第1推定余寿命よりも長くなるまでの第1期間においては、第1推定余寿命に基づいて対象部品53の余寿命を判定する。また、余寿命判定部15は、第2推定余寿命が第1推定余寿命よりも長くなった後の第2期間においては、第2推定余寿命に基づいて対象部品53の余寿命を判定する。
【0022】
負荷測定情報取得部11、第1推定余寿命認識部12、物性値測定情報取得部13、第2推定余寿命認識部14、及び余寿命判定部15による処理の詳細については後述する。
【0023】
[2.第1実施例]
第1実施例として、対象部品53が車両50に備えられたナックルである場合の余寿命判定システム1による処理について、図2図8を参照して説明する。第1実施形態では、車両メーカーサーバー210から送信されるマップ情報MPiに、図2のG1で示した負荷-疲労度マップと、図3のG3で示した物性値劣化度-推定余寿命マップが含まれる。
【0024】
G1で示した負荷-疲労度マップは、横軸をナックルに加わる荷重に設定し、縦軸を各荷重がナックルにかかったときの劣化度の重み(ナックルの余寿命の減少度合)に設定して、両者の対応関係を示したものである。車両50において、ナックルにかかる荷重は加速度センサにより検出される。ナックルにかかる荷重は、基準となる荷重を1として0.5~2の範囲で示し、重みは、ナックルが故障に至るまでに、ナックルにかかった総荷重を100%としたときの1回の荷重により生じる劣化の程度を示している。
【0025】
重みは、車両メーカーで実施されるナックルの耐久試験の結果に基づいて設定される。すなわち、車両メーカーの担当者は、ナックルに加える負荷を変化させてナックルの耐久試験を実施して、各負荷でナックルが故障に至ったサイクル数(故障サイクル数)を求める。そして、担当者は、各負荷について、100を故障サイクル数で除した値を重みとして、G1の負荷-疲労度マップを生成する。
【0026】
G3で示した物性値劣化度-余寿命マップは、横軸をナックルのヤング率変化率に設定し、縦軸をナックルの余寿命率に設定して、両者の対応関係を示したものである。余寿命率は、車両50の使用が開始された時点のナックルの余寿命を100%としたときの残寿命の割合を示している。ヤング率変化率は、車両50の使用が開始された時点からのナックルのヤング率の変化率を示している。なお、カーディーラー100における車両50のナックルのヤング率の測定は、音速測定等の非破壊の方法により行われる。
【0027】
G3で示した物性値劣化度-余寿命マップは、車両メーカーで実施される一定負荷でのナックルの耐久試験の結果に基づいて設定される。すなわち、車両メーカーの担当者は、一定負荷でのナックルの耐久試験中に、規定回数毎にサイクル数とヤング率との関係を測定し、ナックルが故障に至ったときのサイクル数を、ナックルの余寿命率が0%になったサイクル数とする。そして、担当者は、サイクル数とヤング率の関係を求めて、この関係をヤング率の減少率と余寿命率の関係に変換して、G3の物性値劣化度-推定余寿命マップを生成する。
【0028】
次に、図4図5に示したフローチャートに従って、余寿命判定システム1により実行されるナックルの余寿命判定の一連の処理について説明する。図4のステップS1とステップS2のループ処理により、負荷測定情報取得部11は、ステップS1で、車両50から送信される負荷測定情報Lmiを通信ユニット30により受信して取得したときにステップS20に処理を進める。また、物性値測定情報取得部13は、ステップS2で、測定器70から送信される物性値測定情報Pmiを通信ユニット30により受信して取得したときにステップS3に処理を進める。
【0029】
ステップS20で、第1推定余寿命認識部12は、負荷測定情報Lmiにより示されるナックルに加わった荷重を、図2のG1で示した負荷-疲労度マップに適用して、重みを求める。そして、第1推定余寿命認識部12は、図2のG2に示したように、これまでに取得された負荷測定情報Lmiについて求められた各荷重の重み付き回数のトータル値を、累積疲労度として算出する。
【0030】
続くステップS21で、第1推定余寿命認識部12は、例えば累積疲労度が3.7%であった場合、100%から3.7%を減じた96.3%を、ナックルの第1推定余寿命として認識する。次のステップS22で、余寿命判定部15は、第1推定余寿命をナックルの余寿命と判定し、ナックルの余寿命を示す余寿命情報RLiを利用者端末60に送信して、ステップS2に処理を進める。
【0031】
これにより、利用者端末60で実行される車両50のメンテナンス対応アプリ(アプリケーション)によって、利用者端末60の表示部にナックルの余寿命を示す画面が表示されて、ナックルの余寿命が通知される。なお、第1推定余寿命認識部12が、車両50のECU51に余寿命情報RLiを送信して、車両50のディスプレイ52にナックルの余寿命を表示させるようにしてもよい。
【0032】
ステップS3で、第2推定余寿命認識部14は、物性値測定情報Pmiにより示されるナックルのヤング率から、ヤング率変化率を算出する。続くステップS4で、第2推定余寿命認識部14は、ヤング率変化率を図3のG3で示した物性値劣化度-余寿命マップに適用して、第2推定余寿命を認識する。
【0033】
次のステップS5で、余寿命判定部15は、第1推定余寿命認識部12により認識された第1推定余寿命と、第2推定余寿命認識部14により認識された第2推定余寿命とを比較する。そして、余寿命判定部15は、第2推定余寿命が第1推定余寿命よりも長いときはステップS3に処理を進め、第2推定余寿命が第1推定余寿命以下であるときにはステップS1に処理を進める。
【0034】
ステップS6で、余寿命判定部15は、第2推定余寿命をナックルの余寿命と判定し、ナックルの余寿命を示す余寿命情報RLiを利用者端末に送信する。ここで、図6のG4は、縦軸をナックルの余寿命率に設定し、横軸を車両50の走行距離(総走行距離)Dに設定して、第1推定余寿命率をa1で示し、第2推定余寿命率をb1で示した対比グラフである。G4では、走行距離がDc1になったときに、第2推定余寿命が第1推定余寿命よりも長くなっている。
【0035】
そのため、図6のG5で示したように、余寿命判定部15は、Dc1までの第1期間P1では、第1推定余寿命a1をナックルの余寿命として判定し、Dc2以降の第2期間P2では、第2推定余寿命b1をナックルの余寿命として判定する。
【0036】
次のステップS7で、余寿命判定部15は、第2推定余寿命の情報(直近の第2推定余寿命の情報)をメモリ20に保存する。続く図5のステップS8~ステップS13及びステップS30~ステップS32は、第2推定余寿命を第1推定余寿命により補正する処理である。ステップS8とステップS9のループ処理により、負荷測定情報取得部11は、ステップS8で車両50から送信される負荷測定情報Lmiを通信ユニット30により受信して取得したときにステップS30に処理を進める。また、物性値測定情報取得部13は、ステップS9で、測定器70から送信される物性値測定情報Pmiを通信ユニット30により受信して取得したときにステップS10に処理を進める。
【0037】
ステップS30で、第1推定余寿命認識部12は、負荷測定情報Lmiにより示されるナックルに加わった荷重を、図2のG1で示した負荷-疲労度マップに適用して、重みを求める。そして、第1推定余寿命認識部12は、図2のG2に示したように、これまでに取得された負荷測定情報Lmiについて求められた各荷重の重み付き回数のトータル値を、累積疲労度として算出し、次のステップS31で、100%から累積疲労度を減じて第1推定余寿命を認識する。
【0038】
続くステップS32は、余寿命判定部15は、直近の第2タイミングで認識された第2推定余寿命から、次の第2タイミングまでの間の第1タイミングで認識される第1推定余寿命の減少分を減じる補正を行って、ナックルの余寿命を判定する。図7のG6は、縦軸をナックルの余寿命率に設定し、横軸を車両50の走行距離に設定して、第2推定余寿命b1を第1推定余寿命a1により補正する例を示したものである。b11~b19は、第2期間P2において各第2タイミングで認識された第2推定余寿命を示している。
【0039】
例えば、余寿命判定部15は、第2推定余寿命b11について、第2推定余寿命b11から、次の第2推定余寿命b12が認識されるまでに認識される第1推定余寿命の減少分cを順次減じることによって、ナックルの余寿命を判定する。b12~b19についても同様である。余寿命判定部15は、このようにして判定したナックルの余寿命を示す余寿命情報RLiを、利用者端末60に送信して、ステップS9に処理を進める。これにより、利用者Uに通知されるナックルの余寿命率が急に減少して、利用者Uに違和感を与えてしまうことを回避することができる。
【0040】
ステップS10で、第2推定余寿命認識部14は、物性値測定情報Pmiにより示されるナックルのヤング率により、ヤング率変化率を算出する。続くステップS11で、第2推定余寿命認識部14は、ヤング率変化率を図3のG3で示した物性値劣化度-余寿命マップに適用して、第2推定余寿命を認識する。
【0041】
次のステップS12で、余寿命判定部15は、第2推定余寿命をナックルの余寿命と判定し、ナックルの余寿命を示す余寿命情報RLiを利用者端末に送信する。続くステップS13で、余寿命判定部15は、認識した第2推定余寿命(直近の第2推定余寿命)の情報をメモリにメモリ20に保存して、ステップS8に処理を進める。
【0042】
[3.第2実施例]
第2実施例として、対象部品53が車両50に備えられたパワー半導体である場合の余寿命判定システム1による処理について、図8図10を参照して説明する。パワー半導体は、例えば、モーター、チャージャー、エアコンコンプレッサー等を駆動するインバータやDC-DCコンバーターで使用される。
【0043】
第2実施例では、車両メーカーサーバー210から送信されるマップ情報MPiには、図8のG7で示した負荷-疲労度マップと、図9のG9で示した物性劣化度-余寿命マップが含まれる。
【0044】
G7で示した負荷-疲労度マップは、横軸をパワー半導体の温度変化幅(作動時の発熱による温度変化幅)に設定し、縦軸をパワー半導体が各温度変化幅になったときの劣化度の重み(余寿命の減少度合)に設定して、両者の対応関係を示したものである。重みは、車両メーカーで実施されるパワー半導体のパワーサイクル試験の結果に基づいて設定される。すなわち、車両メーカーの担当者は、パワー半導体のパワーサイクル試験を、パワー半導体の温度を変化させて実施して、各温度でパワー半導体が故障に至ったサイクル数(故障サイクル数)を求める。そして、担当者は、各温度について、100を故障サイクル数で除した値を重みとして、G7の負荷-疲労度マップを生成する。
【0045】
G9で示した物性値劣化度-推定余寿命マップは、横軸をパワー半導体の時定数変化率に設定し、縦軸をパワー半導体の余寿命に設定して、両者の対応関係を示したものである。余寿命率は、車両50の使用が開始された時点のパワー半導体の余寿命率を100%としたときの残寿命の割合を示している。時定数変化率は、車両50の使用が開始された時点からのパワー半導体の時定数の変化率を示している。
【0046】
G9に示した物性値劣化度-余寿命マップは、車両メーカーで実施されるパワー半導体のパワーサイクル試験の結果に基づいて設定される。すなわち、車両メーカーの担当者は、パワー半導体のパワーサイクル試験を、パワー半導体の温度を一定して実施し、パワー半導体が故障に至るサイクル数まで、所定サイクル数(例えば、1000サイクル)毎に、パワー半導体の時定数を測定する。そして、担当者は、サイクル数0回を余寿命率100%、故障サイクル数を余寿命率0%として、図9のG9に示した物性値劣化度-余寿命マップを作成する。
【0047】
パワー半導体の時定数は、パワー半導体の放熱の速度(冷却のし易さ)を示し、パワー半導体の半田層のクラック等の劣化によって、パワー半導体の放熱の速度が低下すると時定数が大きくなる。パワー半導体の時点数の測定は、パワー半導体が駆動を停止した時点からのパワー半導体の温度の低下度合を測定することによって行う。
【0048】
負荷測定情報取得部11は、車両50から送信されるパワー半導体の測定温度を示す負荷測定情報Lmiを通信ユニット30により受信して取得する。車両50において、パワー半導体の温度は、車両50に備えられた温度センサにより検出される。第1推定余寿命認識部12は、負荷測定情報Lmiから認識したパワー半導体の温度を、図8のG7で示した負荷―疲労度マップに適用して、対応する重みを求める。そして、第1推定余寿命認識部12は、図8のG8に示したように、各温度の重み付き回数を合計して累積疲労度を算出し、100%から累積疲労度を減じて、第1推定余寿命を認識する。
【0049】
物性値測定情報取得部13は、測定器70から送信されるパワー半導体の時定数を示す物性値測定情報Pmiを通信ユニット30により受信して取得する。第2推定余寿命認識部14は、物性値測定情報Pmiから認識したパワー半導体の時定数により、パワー半導体の時定数変化率を算出し、時定数変化率を図9のG9で示した物性値劣化度-余寿命マップに適用して、パワー半導体の第2推定余寿命を認識する。
【0050】
余寿命判定部15は、上述した第1実施例と同様に、第1推定余寿命と第2推定余寿命を比較して、パワー半導体の余寿命を判定する。図10のG10は、縦軸をパワー半導体の余寿命率に設定し、横軸を車両50の走行距離に設定して、第1推定余寿命をa2で示し、第2推定余寿命をb2で示した対比グラフである。G10では、走行距離がDc2になったときに、第2推定余寿命b2が第1推定余寿命a1よりも長くなっている。
【0051】
そのため、余寿命判定部15は、第2推定余寿命が第1推定余寿命よりも長くなるDc2までの第1期間においては、第1推定余寿命a2に基づいてパワー半導体の余寿命を判定する。また、第2推定余寿命が第1推定余寿命よりも長くなるDc以後の第2期間においては、余寿命判定部15は、第2推定余寿命に基づいて、また、第2推定余寿命を第1推定余寿命により補正して、パワー半導体の余寿命を判定する。
【0052】
[4.第3実施例]
第3実施例として、対象部品53が車両50に備えられた弱電基板である場合の余寿命判定システム1による処理について、図11図13を参照して説明する。ここでは、弱電基板の余寿命の判定が可能な物性値を直接測定することが難しいために、弱電基板とダミーテストピースを車両50に備えて、ダミーテストピースの抵抗値を、弱電基板の物性値として測定する場合について説明する。このダミーテストピースは、チップ抵抗器を実装して、チップ抵抗器と基板を接合している半田の劣化状態を、このダミーテストピースの抵抗値で判断できるように設計されたものである。
【0053】
第3実施例では、車両メーカーサーバー210から送信されるマップ情報MPiには、図11のG11で示した負荷-疲労度マップと、図12のG12で示した物性劣化度-余寿命マップが含まれる。
【0054】
G11で示した負荷―疲労度マップは、横軸を車両50で測定される加速度に設定し、縦軸を各加速度が測定された時の弱電基板の劣化度の重み(余寿命の減少度合)に設定して、両者の対応関係を示したものである。重みは、車両メーカーで、弱電基板に対して同時に実施される振動耐久試験の結果に基づいて設定される。
【0055】
すなわち、車両メーカーの担当者は、弱電基板とダミーテストピースの振動耐久試験を、加速度を変化させて行い、各加速度で弱電基板が故障に至ったサイクル数(故障サイクル数)を求める。そして、担当者は、各加速度について、100を故障サイクル数で除した値を重みとして、G11の負荷-疲労度マップを生成する。
【0056】
G12で示した物性値劣化度-余寿命マップは、横軸をダミーテストピースの抵抗値変化率に設定し、縦軸を弱電基板の余寿命率に設定して、両者の対応関係を示したものである。余寿命率は、車両50の使用が開始された時点での弱電基板の余寿命率を100%としたときの弱電基板の残寿命の割合を示している。抵抗値変化率は、車両50の使用が開始された時点からのダミーテストピースの抵抗値の変化率を示している。
【0057】
G12に示した物性値劣化度-余寿命マップは、車両メーカーで、弱電基板とダミーテストピースについて同時に実施される振動耐久試験の結果に基づいて設定される。すなわち、車両メーカーの担当者は、弱電基板とダミーテストピースの振動耐久試験を、加速度を一定として所定周波数で、弱電基板の故障が生じるまで行って、所定サイクル数が経過するごとにダミーテストピースの抵抗値を測定する。
【0058】
そして、担当者は、サイクル数0回を余寿命率100%、弱電基板の故障が生じたサイクル数(故障サイクル数)を余寿命率0%として、サイクル数を余寿命率に変換して、G12で示した物性値劣化度-余寿命マップを生成する。
【0059】
負荷測定情報取得部11は、車両50から送信される加速度を示す負荷測定情報Lmiを通信ユニット30により受信して取得する。第1推定余寿命認識部12は、負荷測定情報Lmiから認識した加速度を、図11のG11で示した負荷―疲労度マップに適用して、対応する重みを求める。そして、第1推定余寿命認識部12は、各加速度の重み付き回数を合計して累積疲労度を算出し、100%から累積疲労度を減じて、第1推定余寿命を認識する。
【0060】
物性値測定情報取得部13は、測定器70から送信されるダミーテストピースの抵抗値を示す物性値測定情報Pmiを通信ユニット30により受信して取得する。第2推定余寿命認識部14は、物性値測定情報Pmiから認識したダミーテストピースの抵抗値により、ダミーテストピースの抵抗変化率を算出する。そして、第2推定余寿命認識部14は、ダミーテストピースの抵抗変化率を図12のG12で示した物性値劣化度-余寿命マップに適用して、パワー半導体の第2推定余寿命を認識する。
【0061】
余寿命判定部15は、上述した第1実施例及び第2実施例と同様に、第1推定余寿命と第2推定余寿命を比較して、弱電基板の余寿命を判定する。図13のG13は、縦軸を弱電基板の余寿命率に設定し、横軸を車両50の走行距離に設定して、第1推定余寿命をa3で示し、第2推定余寿命をb3で示した対比グラフである。G13では、走行距離がDc3になったときに、第2推定余寿命b3が第1推定余寿命a3よりも長くなっている。
【0062】
そのため、余寿命判定部15は、第2推定余寿命b3が第1推定余寿命a3よりも長くなるDc3までの第1期間においては、第1推定余寿命a3に基づいて弱電基板の余寿命を判定する。また、第2推定余寿命b3が第1推定余寿命a3よりも長くなるDc3以後の第2期間においては、余寿命判定部15は、第2推定余寿命b3に基づいて、また、第2推定余寿命b3を第1推定余寿命a3により補正して、弱電基板の余寿命を判定する。
【0063】
[5.他の実施形態]
上記実施形態では、余寿命を判定する対象部品として、車両50に備えられたナックル、パワー半導体、及び弱電基板を例示したが、対象部品はこれらに限られず、図14に示したように、累積疲労度と物性値の測定が可能な対象部品であれば、本開示の余寿命判定システムによる余寿命の判定が可能である。
【0064】
上記実施形態では、本開示の移動体として車両50を示したが、本開示の移動体は、航空機、船舶等であってもよい。
【0065】
上記実施形態では、余寿命判定部15は、図7に示したように、第2推定余寿命を第1推定余寿命により補正したが、かかる補正を行わない構成としてもよい。また、他の手法による補正を行ってもよい。
【0066】
なお、図1は、本願発明の理解を容易にするために、余寿命判定システム1の構成を、主な処理内容により区分して示した概略図であり、余寿命判定システム1を他の区分によって構成してもよい。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアユニットにより実行されてもよいし、複数のハードウェアユニットにより実行されてもよい。また、図4図5に示した各構成要素による処理は、1つのプログラムにより実行されてもよいし、複数のプログラムにより実行されてもよい。
【0067】
[6.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成の具体例である。
【0068】
(構成1)移動体に備えられた対象部品の余寿命を判定する余寿命判定システムであって、前記移動体の使用時に前記対象部品に加わる負荷の測定結果を示す負荷測定情報を取得する負荷測定情報取得部と、前記負荷測定情報に基づく前記対象部品の累積疲労度に応じて、前記対象部品の第1推定余寿命を認識する第1推定余寿命認識部と、前記対象部品の物性値の測定結果を示す物性値測定情報を取得する物性値測定情報取得部と、前記物性値測定情報に基づく前記対象部品の物性値の劣化度に応じて、前記対象部品の第2推定余寿命を認識する第2推定余寿命認識部と、前記第2推定余寿命が前記第1推定余寿命よりも長くなるまでの第1期間においては、前記第1推定余寿命に基づいて前記対象部品の余寿命を判定する余寿命判定部と、を備える余寿命判定システム。
構成1の余寿命判定システムによれば、車両等の移動体で使用される部品の余寿命を適切に判定して、移動体の価値判断に寄与することができる。
【0069】
(構成2)前記余寿命判定部は、前記第2推定余寿命が前記第1推定余寿命よりも長くなった後の第2期間においては、前記第2推定余寿命に基づいて前記対象部品の寿命を判定する構成1に記載の余寿命判定システム。
構成2の余寿命判定システムにおいて、第1推定余寿命は比較的容易に算出が可能な対象部品の累積疲労度に応じて認識され、第2推定余寿命は第1推定余寿命よりも余寿命判定の精度は高くなるが、測定に手間がかかる対象部品の物性の劣化度に応じて認識される。そこで、第21指標値に基づく余寿命が第1指標値に基づく余寿命よりも長くなるまでは第1指標値に基づいて余寿命を判定し、第1指標値に基づく余寿命が第2指標値に基づく余寿命よりも長くなった後は第2指標値に基づいて余寿命を判定することにより、判定精度を維持して効率良く対象部品の余寿命を判定することができる。
【0070】
(構成3)前記負荷測定情報取得部は、前記移動体から第1タイミングで送信される前記負荷測定情報を受信することによって、前記負荷測定情報を取得し、前記物性値測定情報取得部は、前記移動体のメンテナンス時に前記物性値を測定した測定器から、第2タイミングで送信される前記物性値測定情報を受信することによって、前記物性値測定情報を取得し、前記余寿命判定部は、前記第2期間において、前回の前記第2タイミングから次回の前記第2タイミングまでの間、前回の前記第2タイミングで前記第2推定余寿命認識部により認識された前記第2推定余寿命と、前記第1タイミングとなるごとに前記第1推定余寿命認識部により認識される前記第1推定余寿命とに基づいて、前記対象部品の余寿命を判定する構成2に記載の余寿命判定システム。
構成3の余寿命判定システムによれば、第2タイミングで、物性の劣化度合により対象部品の余寿命を精度良く認識し、次の第2タイミングとなるまでの間は、第1タイミングとなるごとに累積疲労度に基づいて認識される第1指標値を用いて、対象部品の余寿命を更新して認識することができる。
【0071】
(構成4)前記余寿命判定部は、前記第2期間において、前回の前記第2タイミングから次回の前記第2タイミングまでの間、前記第1タイミングとなるごとに前記第1推定余寿命認識部により認識される前記第1推定余寿命を、前回の第2タイミングで前記第2推定余寿命認識部により認識された前記第2推定余寿命により補正することによって、前記対象部品の余寿命を判定する構成3に記載の余寿命判定システム。
構成4の余寿命判定システムによれば、第2指標値に基づいて認識した対象部品の余寿命をベースとして、第1指標値に基づく対象部品の余寿命の減少分を減じることにより、余寿命の判定精度を維持しつつ、対象部品の使用状況を速やかに反映させて、対象部品の余寿命を判定することができる。
【0072】
(構成5)前記移動体には、前記対象部品の前記物性値を測定するためのダミーテストピースが備えられ、前記物性値測定情報取得部は、前記ダミーテストピースによる前記物性値の測定結果を示す前記物性値測定情報を取得する構成1から構成4のうちいずれか1つの構成に記載の余寿命判定システム。
構成5の余寿命判定システムによれば、対象部品の物性値を測定することが難しい場合に、予め移動体に備えられたダミーテストピースにより測定した物性値を用いて、対象部品の物性値を認識することができる。
【0073】
(構成6)移動体に備えられた対象部品の余寿命を判定するために、コンピュータにより実行される余寿命判定方法であって、前記移動体の使用時に前記対象部品に加わる負荷の測定結果を示す負荷測定情報を取得する負荷測定情報取得ステップと、前記負荷測定情報に基づく前記対象部品の累積疲労度に応じて、前記対象部品の第1推定余寿命を認識する第1推定余寿命認識ステップと、前記対象部品の物性値の測定結果を示す物性値測定情報を取得する物性値測定情報取得ステップと、前記物性値測定情報に基づく前記対象部品の物性値の劣化度に応じて、前記対象部品の第2推定余寿命を認識する第2推定余寿命認識ステップと、前記第2推定余寿命が前記第1推定余寿命よりも長くなるまでの第1期間においては、前記第1推定余寿命に基づいて前記対象部品の余寿命を判定する余寿命判定ステップと、を含む余寿命判定方法。
構成6の余寿命判定方法をコンピュータにより実行することによって、構成1の余寿命判定システムと同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0074】
1…余寿命判定システム、10…プロセッサ、11…負荷測定情報取得部、12…第1推定余寿命認識部、13…物性値測定情報取得部、14…第2推定余寿命認識部、15…余寿命判定部、20…メモリ、21…プログラム、22…負荷-疲労度マップのデータ、23…物性値-推定余寿命マップのデータ、30…通信ユニット、50…車両(移動体)、51…ECU、52…ディスプレイ、53…対象部品、60…利用者端末、70…測定器、100…カーディーラー、101…店舗管理システム、200…通信ネットワーク、210…車両メーカーサーバー、U…利用者、V…(カーディーラーの)スタッフ。
図1
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