(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063933
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240507BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H01L21/60 301A
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172134
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一安 健志郎
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044AA02
5F044AA05
5F044FF05
5F044FF06
(57)【要約】
【課題】複数の半導体チップの電流アンバランスの発生を防止する。
【解決手段】半導体装置1は、基板10に搭載された半導体チップ21、22、ゲート配線11、ゲート用外部端子3およびゲートワイヤ群を形成するゲートワイヤw1、w2を備える。ゲートワイヤw1は、ゲート配線11の接合部p1と半導体チップ21のゲートパッドgp1とを接続する。ゲートワイヤw2は、ゲート配線11の接合部p2と半導体チップ22のゲートパッドgp2とを接続する。また、ゲート配線11およびゲートワイヤ群の少なくとも一方の素材の一部に他と異なる抵抗率の素材が設けられ、端子接合部p0から接合部p1までの電流経路c1の抵抗値R1とゲートワイヤw1の抵抗値R11との第1の合成抵抗値と、端子接合部p0から接合部p2までの電流経路c2の抵抗値R2とゲートワイヤw2の抵抗値R12との第2の合成抵抗値とが略等しくなるように調整されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に搭載された第1の半導体チップおよび第2の半導体チップと、
前記基板に搭載されて、第1の接合部および第2の接合部を有するゲート配線と、
前記基板の外部から前記ゲート配線に接続されたゲート用外部端子と、
前記ゲート配線の前記第1の接合部と前記第1の半導体チップの第1のゲートパッドとを接続する第1のゲートワイヤと、前記ゲート配線の前記第2の接合部と前記第2の半導体チップの第2のゲートパッドとを接続する第2のゲートワイヤとを含むゲートワイヤ群と、
を備え、
前記ゲート配線および前記ゲートワイヤ群の少なくとも一方の素材の一部に他と異なる抵抗率の素材が設けられ、
前記ゲート用外部端子と前記ゲート配線との端子接合部から前記第1の接合部までの第1の電流経路の第1の抵抗値と前記第1のゲートワイヤの第2の抵抗値との第1の合成抵抗値と、前記端子接合部から前記第2の接合部までの第2の電流経路の第3の抵抗値と前記第2のゲートワイヤの第4の抵抗値との第2の合成抵抗値とが略等しくなるように調整されている、
半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート配線の、前記端子接合部から前記第1の接合部までの一部、もしくは前記端子接合部から前記第2の接合部までの一部の少なくともいずれかの素材の一部に他の部分と抵抗率の異なる素材が設けられ、前記第1の合成抵抗値と前記第2の合成抵抗値とが略等しくなるように調整されている、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の接合部と前記第1のゲートパッドとの間、もしくは前記第2の接合部と前記第2のゲートパッドとの間の少なくともいずれかに電極が設けられ、前記電極とそれを挟む接合部、及びゲートパッドの間に第1のサブゲートワイヤ及び第2のサブゲートワイヤが設けられ、
少なくともいずれかのサブゲートワイヤの素材を他と抵抗率が異なる素材が設けられ、前記第1の合成抵抗値と前記第2の合成抵抗値とが略等しくなるように調整されている、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
基板に搭載された第1の半導体チップおよび第2の半導体チップと、
前記基板に搭載されて、第1の接合部および第2の接合部を有するゲート配線と、
前記基板の外部から前記ゲート配線に接続されたゲート用外部端子と、
前記ゲート配線の前記第1の接合部と前記第1の半導体チップの第1のゲートパッドとを接続する第1のゲートワイヤと、前記ゲート配線の前記第2の接合部と前記第2の半導体チップの第2のゲートパッドとを接続する第2のゲートワイヤとを含むゲートワイヤ群と、
を備え、
前記ゲート配線に設けられた第1の電流経路および第2の電流経路の少なくともいずれかにスリットが設けられ、
前記ゲート用外部端子と前記ゲート配線との端子接合部から前記第1の接合部までの前記第1の電流経路の第1の抵抗値と前記第1のゲートワイヤの第2の抵抗値との第1の合成抵抗値と、前記端子接合部から前記第2の接合部までの前記第2の電流経路の第3の抵抗値と前記第2のゲートワイヤの第4の抵抗値との第2の合成抵抗値とが略等しくなるように調整されている、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体チップが基板上に配置された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体チップを備え、複数の半導体チップが基板上に配置されることで電気容量の大容量化が図られている。
【0003】
このような半導体装置では、セラミック基板上に、半導体チップの接合用の電極が複数存在し、それぞれの電極に半導体チップが接合されて、半導体チップが並列に搭載される。また、セラミック基板にはゲート用外部端子が接続されて、ゲート用外部端子とゲート配線とが接合される。
【0004】
さらに、半導体チップには、ゲートパッドが設けられており、ゲート配線とゲートパッドとがゲートワイヤで電気的に接続される。このような構成により、ゲート用外部端子に入力されたゲート電流は、ゲート配線を流れて、ゲート配線からゲートワイヤへ流れ、半導体チップのゲートパッドに入力される。
【0005】
関連技術としては、例えば、半導体素子のゲート配線に接続される端子接合部と、半導体素子を制御する制御回路に接続される接続部との間に抵抗部が備えられて、該抵抗部の抵抗が制御される技術が提案されている(特許文献1)。
また、半導体素子のゲート駆動回路に接続される抵抗体を装着可能として、並列接続される半導体素子のゲート抵抗のバランス化を行う技術が提案されている(特許文献2)。さらに、ゲート配線に発振防止用の抵抗が接続された半導体素子を含むユニットを複数段接続する技術が提案されている(特許文献3)。
【0006】
また、電極板(バスバー)と重なる半導体素子に対応するゲート抵抗を、電極板と重ならない半導体素子に対応のゲート抵抗よりも高くして、半導体素子のオンオフ時のピーク電流の差を相殺する技術が提案されている(特許文献4)。
さらに、複数の半導体チップに備えられる電極パッドそれぞれの内蔵抵抗の抵抗値を互いに変えて、ワイヤの長さの違いにより生じる各ワイヤの寄生インダクタンスのアンバランスを解消させる技術が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-84621号公報
【特許文献2】特開2003-332525号公報
【特許文献3】特開2001-15672号公報
【特許文献4】特開2005-261035号公報
【特許文献5】特開2009-16757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のような半導体装置では、ゲート配線の電流経路の長さの違いや、ゲートワイヤの長さの違い等によって、半導体チップのゲートパッドに入力されるまでのゲート電流が流れる経路の抵抗値に差が生じる。
【0009】
ゲート電流が流れる経路の抵抗値の差が大きいと、複数の半導体チップのスイッチングタイミングにばらつきが生じ、特定の半導体チップに対してドレイン電流またはコレクタ電流が集中する電流アンバランスが発生するという問題がある。
【0010】
1つの側面では、本発明は、抵抗値の差を低減して複数の半導体チップのスイッチングタイミングのばらつきを抑制し、半導体チップの電流アンバランスの発生の防止を図った半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、半導体装置が提供される。半導体装置は、基板に搭載された第1の半導体チップおよび第2の半導体チップと、基板に搭載されて、第1の接合部および第2の接合部を有するゲート配線と、基板の外部からゲート配線に接続されたゲート用外部端子と、ゲート配線の第1の接合部と第1の半導体チップの第1のゲートパッドとを接続する第1のゲートワイヤと、ゲート配線の第2の接合部と第2の半導体チップの第2のゲートパッドとを接続する第2のゲートワイヤとを含むゲートワイヤ群とを備える。
ここで、ゲート配線およびゲートワイヤ群の少なくとも一方の素材の一部に他と異なる抵抗率の素材が設けられ、ゲート用外部端子とゲート配線との端子接合部から第1の接合部までの第1の電流経路の第1の抵抗値と第1のゲートワイヤの第2の抵抗値との第1の合成抵抗値と、端子接合部から第2の接合部までの第2の電流経路の第3の抵抗値と第2のゲートワイヤの第4の抵抗値との第2の合成抵抗値とが略等しくなるように調整されている。
【0012】
また、上記課題を解決するために、半導体装置が提供される。半導体装置は、基板に搭載された第1の半導体チップおよび第2の半導体チップと、基板に搭載されて、第1の接合部および第2の接合部を有するゲート配線と、基板の外部からゲート配線に接続されたゲート用外部端子と、ゲート配線の第1の接合部と第1の半導体チップの第1のゲートパッドとを接続する第1のゲートワイヤと、ゲート配線の第2の接合部と第2の半導体チップの第2のゲートパッドとを接続する第2のゲートワイヤとを含むゲートワイヤ群とを備える。
ここで、ゲート配線に設けられた第1の電流経路および第2の電流経路の少なくともいずれかにスリットが設けられ、ゲート用外部端子とゲート配線との端子接合部から第1の接合部までの第1の電流経路の第1の抵抗値と第1のゲートワイヤの第2の抵抗値との第1の合成抵抗値と、端子接合部から第2の接合部までの第2の電流経路の第3の抵抗値と第2のゲートワイヤの第4の抵抗値との第2の合成抵抗値とが略等しくなるように調整されている。
【発明の効果】
【0013】
1側面によれば、抵抗値の差を低減して複数の半導体チップのスイッチングタイミングのばらつきを抑制して、半導体チップの電流アンバランスの発生を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の半導体装置の一例を説明するための図である。
【
図4】素材ごとの体積抵抗率の一覧を示す図である。
【
図5】ゲート配線の一部を置き換えた素材にもとづく抵抗値の調整を説明するための図である。
【
図6】延出部を有するゲート配線の一部を置き換えた素材にもとづく抵抗値の調整を説明するための図である。
【
図7】ゲートワイヤの素材にもとづく抵抗値の調整を説明するための図である。
【
図8】ゲート配線に設けたスリットにもとづく抵抗値の調整を説明するための図である。
【
図9】延出部を有するゲート配線に設けたスリットにもとづく抵抗値の調整を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において実質的に同一の構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。
【0016】
図1は本発明の半導体装置の一例を説明するための図である。半導体装置1は、基板10上にゲート配線11、半導体チップ21(第1の半導体チップ)および半導体チップ22(第2の半導体チップ)が搭載されている。また、基板10の外部からゲート用外部端子3が接続され、ゲート用外部端子3とゲート配線11とは、端子接合部p0を介して電気的に接続されている。
【0017】
半導体チップ21には、チップおもて面にゲートパッドgp1(第1のゲートパッド)が設けられ、半導体チップ22には、チップおもて面にゲートパッドgp2(第2のゲートパッド)が設けられている。
【0018】
また、ゲートワイヤw1によりゲート配線11上の接合部p1(第1の接合部)とゲートパッドgp1とが接続され、ゲートワイヤw2によりゲート配線11上の接合部p2(第2の接合部)とゲートパッドgp2とが接続される。ゲートワイヤ群を形成するゲートワイヤw1、w2は、超音波および荷重による超音波接合により接合される。
【0019】
このような構成により、ゲート用外部端子3に入力されたゲート電流は、端子接合部p0と接合部p1との間のゲート配線11上の電流経路c1(第1の電流経路)を流れ、さらに接合部p1に接続されているゲートワイヤw1を流れて、半導体チップ21のゲートパッドgp1に入力される。
【0020】
同様に、ゲート用外部端子3に入力されたゲート電流は、端子接合部p0と接合部p2との間のゲート配線11上の電流経路c2(第2の電流経路)を流れ、さらに接合部p2に接続されているゲートワイヤw2を流れて、半導体チップ22のゲートパッドgp2に入力される。ゲートパッドgp1、gp2にゲート電流が入力されることにより、半導体チップ21,22に対してスイッチング制御が行われる。
【0021】
ここで、ゲート用外部端子3とゲート配線11とが接合されている端子接合部p0から接合部p1までの電流経路c1の抵抗値を抵抗値R1(第1の抵抗値)とし、ゲートワイヤw1の抵抗値を抵抗値R11(第2の抵抗値)とする。
また、端子接合部p0から接合部p2までの電流経路c2の抵抗値を抵抗値R2(第3の抵抗値)とし、ゲートワイヤw2の抵抗値を抵抗値R12(第4の抵抗値)とする。
【0022】
半導体装置1では、ゲート配線およびゲートワイヤ群の少なくとも一方の素材の一部に他と異なる抵抗率の素材が設けられて、抵抗値R1と抵抗値R11との合成抵抗値(R1+R11:第1の合成抵抗値)と、抵抗値R2と抵抗値R12との合成抵抗値(R2+R12:第2の合成抵抗値)とが略等しくなるように調整されている。略等しいとは例えば、抵抗値R1と抵抗値R11との合成抵抗値と、抵抗値R2と抵抗値R12との合成抵抗値との差が30%以内であることが好ましく、より好ましくは10%以内、さらに好ましくは1%以内である。
【0023】
このように、本発明の半導体装置1では、ゲート電流が流れる経路に対する抵抗値の差の低減を図っている。これにより、半導体チップ21、22のスイッチングタイミングのばらつきを抑制することができ、半導体チップ21、22の電流アンバランスの発生を防止することが可能になる。
【0024】
<半導体装置の構成>
次に半導体装置1の具体的な構成および特徴について以降詳しく説明する。
図2は半導体装置の構成の一例を示す図である。半導体装置1aは、4つの半導体チップ21、22、23、24が基板10上に並列に配置されている構成を有している。
【0025】
半導体装置1aは、基板10にゲート配線11、電極12および電極13が搭載される。電極12は、半導体チップ21、22、23、24が接合される電極である。半導体チップ21、22、23、24がMOSFETの場合、MOSFETのドレインが電極12に接続される。また、半導体チップ21、22、23、24がIGBTの場合、IGBTのコレクタが電極12に接続される。
【0026】
また、電極13は、半導体チップ21、22、23、24がMOSFETの場合、MOSFETのソースがワイヤw11、w12、w13、w14を介して接続される電極である。また、半導体チップ21、22、23、24がIGBTの場合、IGBTのエミッタがワイヤw11、w12、w13、w14を介して接続される電極である。一方、基板10の外部から、ゲート用外部端子3がゲート配線11に対して、端子接合部p0を介して電気的に接続されている。
【0027】
半導体チップ21、22、23、24には、チップおもて面それぞれにゲートパッドgp1、gp2、gp3、gp4が設けられている。また、ゲートワイヤw1によりゲート配線11上の接合部p1とゲートパッドgp1とが接続され、ゲートワイヤw2によりゲート配線11上の接合部p2とゲートパッドgp2とが接続される。
【0028】
さらに、ゲートワイヤw3によりゲート配線11上の接合部p3とゲートパッドgp3とが接続され、ゲートワイヤw4によりゲート配線11上の接合部p4とゲートパッドgp4とが接続される。
【0029】
ここで、基板10はセラミック基板である。また、基板10の上面に設けられた、ゲート配線11、電極12および電極13は、導電性に優れた材質により構成されている金属箔である。
【0030】
このような材質は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの1種を含む合金等により構成されている。ゲート配線11、電極12および電極13の厚さは、例えば、0.2mmである。なお、ゲート配線11、電極12および電極13の個数、配置位置並びに形状は、適宜設計により選択することができる。
【0031】
一方、半導体チップ21、22、23、24は、シリコン、炭化シリコンまたは窒化ガリウムから構成されるパワーデバイスであり、はんだ等の接合材を介して電極12に接合される。また、半導体チップ21、22、23、24は、スイッチング素子を含む。スイッチング素子は、パワーMOSFET、IGBT等である。
【0032】
このような半導体チップ21、22、23、24は、例えば、主電極としてドレイン電極(正極電極、IGBTではコレクタ電極)を、制御電極としてゲート配線、およびソース電極(負極電極、IGBTではエミッタ電極)をそれぞれ備えている。
【0033】
また、半導体チップ21、22、23、24以外に、ダイオード素子が接続されてもよい。ダイオード素子は、例えば、SBD(Schottky Barrier Diode)や、PIN(P-intrinsic-N)ダイオード等で構成されたFWD(Free Wheeling Diode)でもよい。
【0034】
上記のような構成により、ゲート用外部端子3に入力されたゲート電流は、端子接合部p0と接合部p1との間のゲート配線11上の電流経路c1を流れ、さらに接合部p1に接続されているゲートワイヤw1を流れて、半導体チップ21のゲートパッドgp1に入力される。また、ゲート用外部端子3に入力されたゲート電流は、電流経路c2を流れ、さらに接合部p2に接続されているゲートワイヤw2を流れて、半導体チップ22のゲートパッドgp2に入力される。
【0035】
同様に、ゲート用外部端子3に入力されたゲート電流は、電流経路c3を流れ、さらに接合部p3に接続されているゲートワイヤw3を流れて、半導体チップ23のゲートパッドgp3に入力される。また、ゲート用外部端子3に入力されたゲート電流は、電流経路c4を流れ、さらに接合部p4に接続されているゲートワイヤw4を流れて、半導体チップ24のゲートパッドgp4に入力される。
このように、ゲートパッドgp1、gp2、gp3、gp4にゲート電流が入力されることにより、半導体チップ21、22、23、24のスイッチング制御が行われる。
【0036】
<抵抗と半導体チップの等価回路>
図3は抵抗値の等価回路を示す図である。端子接合部p0から接合部p1までの電流経路c1の抵抗値R1を抵抗R1とし、ゲートワイヤw1の抵抗値R11を抵抗R11として示す。また、端子接合部p0から接合部p2までの電流経路c2の抵抗値R2を抵抗R2とし、ゲートワイヤw2の抵抗値R12を抵抗R12として示す。
【0037】
さらに、端子接合部p0から接合部p3までの電流経路c3の抵抗値R3を抵抗R3とし、ゲートワイヤw3の抵抗値R13を抵抗R13として示す。さらにまた、端子接合部p0から接合部p4までの電流経路c4の抵抗値R4を抵抗R4とし、ゲートワイヤw4の抵抗値R14を抵抗R14として示す。
【0038】
このとき、抵抗R1、R2、R3、R4および抵抗R11、R12、R13、R14は、
図3に示すような等価回路で表せる。すなわち、抵抗R1と抵抗R11とが直列接続され、抵抗R2と抵抗R12とが直列接続されている。また、抵抗R3と抵抗R13とが直列接続され、抵抗R4と抵抗R14とが直列接続されている。
【0039】
抵抗R11の下側の一端は、ゲートパッドgp1を介して半導体チップ21のゲートに接続され、抵抗R12の下側の一端は、ゲートパッドgp2を介して半導体チップ22のゲートに接続される。さらに、抵抗R13の下側の一端は、ゲートパッドgp3を介して半導体チップ23のゲートに接続され、抵抗R14の下側の一端は、ゲートパッドgp4を介して半導体チップ24のゲートに接続される。半導体チップ21、22、23、24は並列に接続される。
【0040】
ここで、半導体装置1aでは、抵抗R1と抵抗R11の合成抵抗値Rc1(=R1+R11)と、抵抗R2および抵抗R12の合成抵抗値Rc2(=R2+R12)と、抵抗R3および抵抗R13の合成抵抗値Rc3(=R3+R13)と、抵抗R4および抵抗R14の合成抵抗値Rc4(=R4+R14)に差があると、半導体チップ21、22、23、24のターンオンがずれることから、これら合成抵抗値は、略等しくなるように調整されている。
【0041】
合成抵抗値Rc1、Rc2、Rc3、Rc4の関係は、以下の式(1)のように示される。
Rc1≒Rc2≒Rc3≒Rc4・・・(1)
また、例えば、合成抵抗値Rc1、Rc2、Rc3、Rc4それぞれの差は30%以内であることが好ましく、より好ましくは10%以内、さらに好ましくは1%以内である。
【0042】
<抵抗値の調整>
次に抵抗値の調整について以降詳しく説明する。
(素材にもとづく抵抗値の調整)
図4は素材ごとの体積抵抗率の一覧を示す図である。
図4の表は、素材、合金番号、体積抵抗率(μΩ・cm)および純アルミの電気抵抗率を1とした場合の体積抵抗率の項目を示す。
【0043】
一般的に、配線部またはワイヤは、例えば、銅、アルミニウム等の導電性金属が用いられるが、
図4の表に示すような素材を用いることで、それぞれの抵抗値を調整することができる。
【0044】
素材として標準的なアルミニウムを基準にした場合、例えば、素材にAl-Cu素材のものを使用すると体積抵抗率を約2.07倍にすることができる。また、Al-Mn素材のものを用いることにより、体積抵抗率を約1.24倍にすることができる。このように、体積抵抗率の異なる素材を用いることにより、抵抗値を調整することができる。
【0045】
(ゲート配線の一部を置き換えた素材にもとづく抵抗値の調整)
図5はゲート配線の一部を置き換えた素材にもとづく抵抗値の調整を説明するための図である。端子接合部p0から接合部p1までのゲート配線11の一部が体積抵抗率(以下、抵抗率と呼ぶ)raを有する素材4aに置き換えられ、端子接合部p0から接合部p2までのゲート配線11の一部が抵抗率rbを有する素材4bに置き換えられる。
【0046】
抵抗率ra、rbは互いに異なり、例えば、rb<raである。素材4a、4bは、例えば、
図4に示したような素材である。また、素材4a、4bは、例えば、はんだ、溶接、超音波接合、ワイヤによりゲート配線11に接合される。
【0047】
このように、ゲート配線11の素材の一部に他と異なる抵抗率の素材を設けることで、端子接合部p0から接合部p1までの電流経路c1の抵抗値R1が素材4aによって調整することができ、端子接合部p0から接合部p2までの電流経路c2の抵抗値R2が素材4bによって調整することができる。したがって、合成抵抗値Rc1、Rc2、Rc3、Rc4を略等しくなるように調整することができる。
【0048】
なお、
図5の例では、接合部p1、p2の近傍に対して抵抗率が互いに異なる素材4a、4bで置き換えているが、接合部p1、p2、p3、p4のうちの任意の接合部に対して所定の抵抗率の素材に置き換えることができる。また、接合部p1、p2のいずれか片方だけを所定の抵抗率の素材に置き換えてもよい。
【0049】
図6は延出部を有するゲート配線の一部を置き換えた素材にもとづく抵抗値の調整を説明するための図である。ゲート配線11は、端子接合部p0から接合部p1へ延出したゲート配線部11-1および端子接合部p0から接合部p2へ延出したゲート配線部11-2を含む。
さらに、ゲート配線11は、端子接合部p0から接合部p3へ延出したゲート配線部11-3および端子接合部p0から接合部p4へ延出したゲート配線部11-4を含む。
【0050】
そして、ゲート配線部11-1の一部が抵抗率raを有する素材4aに置き換えられ、ゲート配線部11-2の一部が抵抗率rbを有する素材4bに置き換えられる。さらに、ゲート配線部11-3の一部が抵抗率rcを有する素材4cに置き換えられる。なお、抵抗率ra、rb、rcは互いに異なり、例えば、rc<rb<raである。
また
図5と同様に、ゲート配線部11-1、11-2、11-3それぞれに対して素材4a、4b、4cが異なる部分間は、はんだ、溶接、超音波接合およびワイヤにより接合される。
【0051】
このように、ゲート配線11の素材の一部に他と異なる抵抗率の素材を設けることで、端子接合部p0から接合部p1までの電流経路c1の抵抗値R1を素材4aによって調整することができる。同様に、端子接合部p0から接合部p2までの電流経路c2の抵抗値R2を素材4bによって調整することができ、端子接合部p0から接合部p3までの電流経路c3の抵抗値R3を素材4cによって調整することができる。したがって、合成抵抗値Rc1、Rc2、Rc3、Rc4を略等しくなるように調整することができる。
【0052】
なお、
図6の例では、ゲート配線部11-1、11-2、11-3の一部に対して抵抗率が互いに異なる素材4a、4b、4cでそれぞれ置き換えているが、ゲート配線部11-1、11-2、11-3、11-4のうちの任意のゲート配線部の一部を所定の抵抗率の素材に置き換えることができる。
【0053】
(ゲートワイヤの素材にもとづく抵抗値の調整)
図7はゲートワイヤの素材にもとづく抵抗値の調整を説明するための図である。基板10上には、接合部p1とゲートパッドgp1との間に電極51が設けられ、接合部p2とゲートパッドgp2との間に電極52が設けられている。
【0054】
また、ゲートワイヤw1は、サブゲートワイヤws11(第1のサブゲートワイヤ)とサブゲートワイヤws12(第2のサブゲートワイヤ)を含む。サブゲートワイヤws11は、接合部p1と電極51とを接続し、サブゲートワイヤws12は、電極51とゲートパッドgp1とを接続する。なお、ゲートワイヤw1の抵抗値R11は、サブゲートワイヤws11の抵抗値とサブゲートワイヤws12の抵抗値との直列合成抵抗値になる。
【0055】
さらに、ゲートワイヤw2は、サブゲートワイヤws21(第3のサブゲートワイヤ)とサブゲートワイヤws22(第4のサブゲートワイヤ)を含む。サブゲートワイヤws21は、接合部p2と電極52とを接続し、サブゲートワイヤws22は、電極52とゲートパッドgp2とを接続する。なお、ゲートワイヤw2の抵抗値R12は、サブゲートワイヤws21の抵抗値とサブゲートワイヤws22の抵抗値との直列合成抵抗値になる。
【0056】
このように、ゲートワイヤ群の素材の一部に他と異なる抵抗率の素材を設けるようにして、サブゲートワイヤws11、ws12、ws21、ws22の少なくとも1つに抵抗率の異なる素材を用いる構成とした。これにより、抵抗値R1と抵抗値R11との合成抵抗値(R1+R11:第1の合成抵抗値)と、抵抗値R2と抵抗値R12との合成抵抗値(R2+R12:第2の合成抵抗値)とを略等しくなるように調整することができる。なお、
図7では、半導体チップ21、22の両方に電極を設けてサブゲートワイヤを適用したが、片方の半導体チップだけに電極とサブゲートワイヤを適用してもよい。
【0057】
(ゲート配線に設けたスリットにもとづく抵抗値の調整)
図8はゲート配線に設けたスリットにもとづく抵抗値の調整を説明するための図である。ゲート配線11において、スリットs0が設けられる。スリットs0が設けられることで、電流経路を相対的に長くしたり、電流経路の幅を狭くしたりすることができる。
【0058】
このように、ゲート配線11にスリットを設けることで、電流経路c1、c2、c3、c4それぞれの抵抗値R1、R2、R3、R4を調整することができる。したがって、合成抵抗値Rc1、Rc2、Rc3、Rc4を略等しくなるように調整することができる。
【0059】
図9は延出部を有するゲート配線に設けたスリットにもとづく抵抗値の調整を説明するための図である。ゲート配線11は、端子接合部p0から接合部p1へ延出したゲート配線部11-1および端子接合部p0から接合部p2へ延出したゲート配線部11-2を含む。
【0060】
さらに、ゲート配線11は、端子接合部p0から接合部p3へ延出したゲート配線部11-3および端子接合部p0から接合部p4へ延出したゲート配線部11-4を含む。
そして、ゲート配線部11-1にスリットs1が設けられ、ゲート配線部11-2にスリットs2が設けられる。さらに、ゲート配線部11-3にスリットs3が設けられる。
【0061】
このように、ゲート配線11にスリットを設けることで、電流経路c1の抵抗値R1をスリットs1によって調整することができる。同様に、電流経路c2の抵抗値R2をスリットs2によって調整することができ、電流経路c3の抵抗値R3をスリットs3によって調整することができる。したがって、合成抵抗値Rc1、Rc2、Rc3、Rc4を略等しくなるように調整することができる。
【0062】
なお、
図9の例では、ゲート配線部11-1、11-2、11-3に対してスリットs1、s2、s3をそれぞれ設けているが、ゲート配線部11-1、11-2、11-3、11-4のうちの任意のゲート配線部にスリットを設けることができる。
以上説明したように、本発明によれば、部材点数を増やすことなく、チップ汎用性を保った状態で、かつ設計の自由度を損なうことなく、複数の半導体チップのスイッチングタイミングのばらつきによる電流アンバランスの発生を抑制することが可能になる。
【0063】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1、1a 半導体装置
3 ゲート用外部端子
4a、4b、4c 素材
10 基板
11 ゲート配線
11-1、11-2、11-3、11-4 ゲート配線部
12、13 電極
21、22、23、24 半導体チップ
51、52 電極
c1、c2、c3、c4 電流経路
gp1、gp2、gp3、gp4 ゲートパッド
p0 端子接合部
p1、p2、p3、p4 接合部
w1、w2、w3、w4 ゲートワイヤ
ws11、ws12、ws21、ws22 サブゲートワイヤ
w11、w12、w13、w14 ソースまたはエミッタに接続されるワイヤ
R1、R2、R3、R4 電流経路の抵抗値
R11、R12、R13、R14 ゲートワイヤの抵抗値
Rc1、Rc2、Rc3、Rc4 合成抵抗値
s0、s1、s2、s3 スリット