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特開2024-63947放射線画像を生成する方法、放射線画像を生成するプログラム及び放射線画像生成装置
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  • 特開-放射線画像を生成する方法、放射線画像を生成するプログラム及び放射線画像生成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063947
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】放射線画像を生成する方法、放射線画像を生成するプログラム及び放射線画像生成装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/17 20060101AFI20240507BHJP
   A61B 6/00 20240101ALI20240507BHJP
   H04N 5/32 20230101ALI20240507BHJP
【FI】
G01T1/17 C
A61B6/00 333
A61B6/00 350A
G01T1/17 H
H04N5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172151
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】青木 徹
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】都木 克之
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
5C024
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188AA25
2G188BB02
2G188BB04
2G188BB05
2G188BB06
2G188BB15
2G188CC28
2G188DD05
4C093AA01
4C093CA06
4C093EA07
4C093EB13
4C093EB17
4C093FA44
4C093FC16
4C093FC17
5C024AX12
5C024AX16
5C024CX03
5C024GX09
5C024HX32
(57)【要約】
【課題】放射線に基づく画像の画質を高める。
【解決手段】放射線画像を生成する方法は、複数の画素21(1)~21(N)から選択される第nの画素21(n)より、被写体を透過した放射線が第nの画素21(n)に入射した回数及び第nの画素21(n)に入射した放射線のそれぞれが有するエネルギによって示されるエネルギ情報φ2を得るステップ(S1)と、エネルギ情報φ2を互いに異なる複数のエネルギ帯域B1、B2、B3ごとに分割することによって、複数の分割エネルギ情報φ21を得るステップ(S2)と、複数の分割エネルギ情報φ21を用いて、複数の分割エネルギ情報φ21ごとに複数のノイズ情報φ22を得るステップ(S3)と、複数のノイズ情報φ22を用いて複数の分割エネルギ情報φ21を補正することによって、複数の補正分割エネルギ情報φ23を得るステップ(S4)と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1~第N(Nは2以上の整数)の画素から選択される第n(nは1以上N以下の整数)の画素より、被写体を透過した放射線が前記第nの画素に入射した回数及び前記第nの画素に入射した前記放射線のそれぞれが有するエネルギによって示されるエネルギ情報を得るステップと、
前記エネルギ情報を互いに異なる第1~第M(Mは2以上の整数)のエネルギ帯域ごとに分割することによって、第1~第Mの分割エネルギ情報を得るステップと、
前記第1~第Mの分割エネルギ情報を用いて、前記第1~第Mの分割エネルギ情報ごとに第1~第Mのノイズ情報を得るステップと、
前記第1~第Mのノイズ情報を用いて前記第1~第Mの分割エネルギ情報を補正することによって、第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得るステップと、を有する、放射線画像を生成する方法。
【請求項2】
前記第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得るステップは、
前記第1~第Mのノイズ情報を用いて第1~第Mの補正係数を得るステップと、
前記第1~第Mの補正係数を用いて前記第1~第Mの分割エネルギ情報をそれぞれ補正するステップと、を含む、請求項1に記載の放射線画像を生成する方法。
【請求項3】
前記第1~第Mの補正係数を得るステップは、
前記第1~第Mの補正係数と前記第1~第Mのノイズ情報との積である第1~第Mの補正ノイズ情報を互いに揃えるように、前記第1~第Mの補正係数を決定する、請求項2に記載の放射線画像を生成する方法。
【請求項4】
前記第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得るステップは、前記第1~第Nの画素ごとに実行される、請求項1に記載の放射線画像を生成する方法。
【請求項5】
前記第1~第Mの補正分割エネルギ情報を用いて、前記第nの画素に対応する第nの画素値を得る動作を、前記第1~第Nの画素ごとに実行することによって、第1~第Nの画素値を得るステップをさらに備える、請求項1に記載の放射線画像を生成する方法。
【請求項6】
前記第1~第Nの画素値を用いて放射線画像を得るステップを更に備える、請求項5に記載の放射線画像を生成する方法。
【請求項7】
複数の第1~第N(Nは2以上の整数)の画素から選択される第n(nは1以上N以下の整数)の画素より、被写体を透過した放射線が前記第nの画素に入射した回数及び前記第nの画素に入射した前記放射線のそれぞれが有するエネルギによって示されるエネルギ情報を得るステップと、
前記エネルギ情報を互いに異なる第1~第M(Nは2以上の整数)のエネルギ帯域ごとに分割することによって、第1~第Mの分割エネルギ情報を得るステップと、
前記第1~第Mの分割エネルギ情報を用いて、前記第1~第Mの分割エネルギ情報ごとに第1~第Mのノイズ情報を得るステップと、
前記第1~第Mのノイズ情報を用いて前記第1~第Mの分割エネルギ情報を補正することによって、第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得るステップと、をコンピュータに実行させる、放射線画像を生成するプログラム。
【請求項8】
第1~第N(Nは2以上の整数)の画素を有し、前記第1~第Nの画素のそれぞれは、被写体を透過した放射線が入射した回数及び入射した前記放射線のそれぞれが有するエネルギによって示されるエネルギ情報を生成するエネルギ情報生成部と、
前記エネルギ情報生成部から前記エネルギ情報を受けると共に、前記エネルギ情報を用いて放射線画像を生成するための画素値を得る1又は複数の画素値演算部と、を備え、
前記画素値演算部は、
前記エネルギ情報を互いに異なる第1~第M(Mは2以上の整数)のエネルギ帯域ごとに分割することによって、第1~第Mの分割エネルギ情報を得る分割エネルギ情報取得部と、
前記第1~第Mの分割エネルギ情報を用いて、前記第1~第Mの分割エネルギ情報ごとに第1~第Mのノイズ情報を得るノイズ情報取得部と、
前記第1~第Mのノイズ情報を用いて前記第1~第Mの分割エネルギ情報を補正することによって、第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得る補正分割エネルギ情報取得部と、を有する、放射線画像生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像を生成する方法、放射線画像を生成するプログラム及び放射線画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線画像を得る技術が開発されている。放射線画像を得る技術は、医療分野、工業分野、セキュリティ分野などへの応用が期待されている。放射線が撮像対象物を透過するとき、撮像対象物の性質と放射線の特性との関係に応じて、放射線の強度の変化が生じる。この放射線の強度の変化を利用することにより、放射線画像を得ることができる。
【0003】
例えば、検出器に入射した粒子の数を利用して放射線画像を得る撮像技術がある。このような技術は、フォトンカウンティング方式と呼ばれている。フォトンカウンティング方式を採用する放射線検出器は、放射線を粒子として扱う。放射線検出器は、検出した粒子の数に基づいて、放射線画像を得るための情報を取得する。
【0004】
例えば、互いに異なるエネルギ特性を有する放射線を撮像対象物に照射する放射線源を用いた撮像技術もある(特許文献1参照)。さらに、検出対象とする放射線のエネルギ特性が互いに異なる放射線検出器を用いた撮像技術もある。放射線のエネルギ特性が異なると、対象物を透過するときに生じる減衰の程度も異なる。この減衰の相違に基づいて、放射線画像を得るための情報を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-121578号公報
【特許文献2】特開2013-208189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放射線検出器から得られた画像には、目的のものを見やすくするための補正処理が施されることがある。例えば、特許文献2は、放射線検出器から得られた画像を補正するための技術を開示する。放射線を検出する技術分野では、放射線に基づく画像の画質をさらに高めることが望まれていた。
【0007】
本発明は、放射線に基づく画像の画質を高めることができる放射線画像を生成する方法、放射線画像を生成するプログラム及び放射線画像生成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態である放射線画像を生成する方法は、複数の第1~第N(Nは2以上の整数)の画素から選択される第n(nは1以上N以下の整数)の画素より、被写体を透過した放射線が第nの画素に入射した回数及び第nの画素に入射した放射線のそれぞれが有するエネルギによって示されるエネルギ情報を得るステップと、エネルギ情報を互いに異なる第1~第M(Mは2以上の整数)のエネルギ帯域ごとに分割することによって、第1~第Mの分割エネルギ情報を得るステップと、第1~第Mの分割エネルギ情報を用いて、第1~第Mの分割エネルギ情報ごとに第1~第Mのノイズ情報を得るステップと、第1~第Mのノイズ情報を用いて第1~第Mの分割エネルギ情報を補正することによって、第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得るステップと、を有する。
【0009】
本発明の別の形態である放射線画像を生成するプログラムは、複数の第1~第N(Nは2以上の整数)の画素から選択される第n(nは1以上N以下の整数)の画素より、被写体を透過した放射線が第nの画素に入射した回数及び第nの画素に入射した放射線のそれぞれが有するエネルギによって示されるエネルギ情報を得るステップと、エネルギ情報を互いに異なる第1~第M(Nは2以上の整数)のエネルギ帯域ごとに分割することによって、第1~第Mの分割エネルギ情報を得るステップと、第1~第Mの分割エネルギ情報を用いて、第1~第Mの分割エネルギ情報ごとに第1~第Mのノイズ情報を得るステップと、第1~第Mのノイズ情報を用いて第1~第Mの分割エネルギ情報を補正することによって、第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得るステップと、をコンピュータに実行させる。
【0010】
本発明のさらに別の形態である放射線画像生成装置は、第1~第N(Nは2以上の整数)の画素を有し、第1~第Nの画素のそれぞれは、被写体を透過した放射線が入射した回数及び入射した放射線のそれぞれが有するエネルギによって示されるエネルギ情報を生成するエネルギ情報生成部と、エネルギ情報生成部からエネルギ情報を受けると共に、エネルギ情報を用いて放射線画像を生成するための画素値を得る1又は複数の画素値演算部と、を備え、画素値演算部は、エネルギ情報を互いに異なる第1~第M(Mは2以上の整数)のエネルギ帯域ごとに分割することによって、第1~第Mの分割エネルギ情報を得る分割エネルギ情報取得部と、第1~第Mの分割エネルギ情報を用いて、第1~第Mの分割エネルギ情報ごとに第1~第Mのノイズ情報を得るノイズ情報取得部と、第1~第Mのノイズ情報を用いて第1~第Mの分割エネルギ情報を補正することによって、第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得る補正分割エネルギ情報取得部と、を有する。
【0011】
上記の放射線画像を生成する方法、放射線画像を生成するプログラム及び放射線画像生成装置は、第nの画素から得られたエネルギ情報を複数の分割エネルギ情報に分割する。そして、分割エネルギ情報ごとにノイズ情報を得る。このノイズ情報を用いて、分割エネルギ情報を補正する。つまり、第nの画素から得られたエネルギ情報を用いて、当該エネルギ情報を補正することができる。その結果、画素ごとにエネルギ情報を補正することが可能になるので、放射線に基づく画像の画質を高めることができる。
【0012】
上記の放射線画像を生成する方法において、第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得るステップは、第1~第Mのノイズ情報を用いて第1~第Mの補正係数を得るステップと、第1~第Mの補正係数を用いて第1~第Mの分割エネルギ情報をそれぞれ補正するステップと、を含んでもよい。このステップによれば、簡易な演算によって第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得ることができる。
【0013】
上記の放射線画像を生成する方法において、第1~第Mの補正係数を得るステップは、第1~第Mの補正係数と第1~第Mのノイズ情報との積である第1~第Mの補正ノイズ情報を互いに揃えるように、第1~第Mの補正係数を決定してもよい。このステップによれば、放射線に基づく画像の画質を高めることができる補正係数を画素ごとに得ることができる。
【0014】
上記の放射線画像を生成する方法において、第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得るステップは、第1~第Nの画素ごとに実行してもよい。このステップによれば、放射線に基づく画像の画質を高めるための補正演算を画素ごとに実行することができる。
【0015】
上記の放射線画像を生成する方法は、第1~第Mの補正分割エネルギ情報を用いて、第nの画素に対応する第nの画素値を得る動作を、第1~第Nの画素ごとに実行することによって、第1~第Nの画素値を得るステップをさらに備えてもよい。このステップによっても、放射線に基づく画像の画質を高めるための補正演算を画素ごとに実行することができる。
【0016】
上記の放射線画像を生成する方法は、第1~第Nの画素値を用いて放射線画像を得るステップを更に備えてもよい。このステップによれば、画質を高めた放射線に基づく画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放射線に基づく画像の画質を高めることができる放射線画像を生成する方法、放射線画像を生成するプログラム及び放射線画像生成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第1実施形態の放射線画像生成装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すコンピュータの物理的な構成を示すブロック図である。
図3図3は、図1に示す放射線画像生成装置の機能ブロック図である。
図4図4は、エネルギ情報の例示である。
図5図5は、画素値演算器の機能ブロック図である。
図6図6は、放射線画像を生成する方法のフローチャートである。
図7図7(a)は、分割エネルギ情報の例示である。図7(b)は、ノイズ情報の例示である。図7(c)は、補正分割エネルギ情報の例示である。
図8図8は、第2実施形態の放射線画像生成装置の機能ブロック図である。
図9図9は、コンピュータに画素値演算器を実現させるためのプログラムの機能ブロック図である。
図10図10は、放射線画像生成装置における分割エネルギ情報を得る動作の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
<第1実施形態>
図1に示す放射線画像生成装置1は、検査対象から到達する放射線に基づく放射線画像を得る。放射線とは、例えば、ガンマ線、X線、アルファ線、ベータ線などである。放射線画像生成装置1は、放射線検出器2と、コンピュータ3と、読出線4と、制御信号線5と、を有する。
【0021】
放射線検出器2は、複数の放射線検出センサ2p(1)~2p(N)を有する。放射線検出センサ2pは、それぞれ画素21と、エネルギ情報生成器22と、画素値演算器23と、を有する。以下、複数の放射線検出センサ2p(1)~2p(N)のうちのひとつを例示して説明する場合には、単に「放射線検出センサ2p」と記載する。
【0022】
画素21は、フォトンカウンティング方式を採用する放射線撮像素子である。複数の画素21(1)~21(N)は、二次元状に配置されている。従って、ひとつの画素21(n)は、放射線画像を構成する複数の画素21(1)~21(N)のうちのひとつに相当する。画素21は、入射した放射線に応じた電荷を発生する。画素21は、電荷情報φ1をエネルギ情報生成器22に出力する。画素21は、エネルギ情報生成器22に対してバンプ電極を介して電気的に接続されていてもよい。
【0023】
エネルギ情報生成器22は、画素21から電荷情報φ1を受ける。エネルギ情報生成器22は、受けた電荷情報φ1を利用してエネルギ情報φ2を得る。
【0024】
画素値演算器23は、一例としてエネルギ情報生成器22が設けられた半導体チップ上に設けられる回路である。つまり、エネルギ情報生成器22及び画素値演算器23は、物理的にはひとつの半導体チップ部品であってもよい。画素値演算器23は、エネルギ情報生成器22からエネルギ情報φ2を受け取る。画素値演算器23は、受けたエネルギ情報φ2を利用して画素値φ3を得る。
【0025】
上述したように、フォトンカウンティング方式を採用する画素21を備える放射線画像生成装置1も、フォトンカウンティング方式を採用する装置であると言える。
【0026】
コンピュータ3は、読出線4を介して複数の放射線検出センサ2p(1)~2p(N)に接続されている。コンピュータ3は、複数の放射線検出センサ2p(1)~2p(N)から複数の画素値φ3(1)~φ3(N)を受け取る。例えば、コンピュータ3は、受け取った複数の画素値φ3(1)~φ3(N)に基づく放射線画像φ4を生成する。
【0027】
図2は、コンピュータ3の物理的な構成を示す。コンピュータ3は、CPU(Central Processing Unit)であるプロセッサ31と、主記憶装置32と、補助記憶装置33と、通信制御装置34と、入力装置35と、出力装置36とを有する。
【0028】
放射線画像生成装置1が複数のコンピュータ3を含む場合には、これらのコンピュータ3はローカルで接続されてもよいし、インターネット又はイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続されてもよい。この接続によって、論理的に1つのコンピュータ3が構築される。
【0029】
プロセッサ31は、オペレーティングシステムやアプリケーション・プログラムなどを実行する。主記憶装置32は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成される。補助記憶装置33は、ハードディスク及びフラッシュメモリなどにより構成される記憶媒体である。補助記憶装置33は、一般的に主記憶装置32よりも大量のデータを記憶する。通信制御装置34は、ネットワークカード又は無線通信モジュールにより構成される。入力装置35は、キーボード、マウス、タッチパネル、及び、音声入力用マイクなどにより構成される。出力装置36は、ディスプレイ及びプリンタなどにより構成される。
【0030】
補助記憶装置33は、放射線画像φ4の生成に要するプログラム及び処理に必要なデータを格納している。例えば、放射線画像φ4の生成に要するプログラムは、プロセッサ31又は主記憶装置32によって読み込まれ、プロセッサ31、主記憶装置32、補助記憶装置33、通信制御装置34、入力装置35、及び出力装置36の少なくとも1つを動作させる。例えば、放射線画像φ4の生成に要するプログラムは、主記憶装置32及び補助記憶装置33におけるデータの読み出し及び書き込みを行う。
【0031】
放射線画像φ4の生成に要するプログラムは、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に記録された上で提供されてもよい。放射線画像φ4の生成に要するプログラムは、データ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0032】
図3は、放射線画像生成装置1の機能ブロック図である。画素21は、X線などの放射線を受ける。画素21は、受けたX線によって電子正孔対(電荷対)を生成する。つまり、画素21は、受けた放射線をそのエネルギに対応した電流信号(電荷信号)に変換する。画素21としては、例えば、Cd(Zn)Te電荷生成器、Si電荷生成器、Ge電荷生成器、GaAs電荷生成器、GaN電荷生成器、TlBr電荷生成器等を利用してよい。また、画素21として、シンチレータと光検出器とを備えた装置を用いてもよい。シンチレータは、X線を光に変換する。光検出器は、シンチレータが生成した光を電荷に変換する。
【0033】
エネルギ情報生成器22は、画素21が出力する電荷情報φ1を利用してエネルギ情報φ2を得る。エネルギ情報生成器22は、エネルギ情報φ2を画素値演算器23に出力する。
【0034】
エネルギ情報生成器22は、例えば、半導体基板に形成されたアナログ回路及び/又はデジタル回路を含むチップ部品であってもよい。エネルギ情報生成器22は、エネルギ弁別器221と、ストレージ222と、を有する。
【0035】
エネルギ弁別器221は、画素21から電荷情報φ1を受ける。エネルギ弁別器221は、画素21に放射線の入射が発生するたびに電荷情報φ1を受けてもよい。エネルギ弁別器221は、受けた電荷情報φ1が有するエネルギに関する情報を得る。エネルギ弁別器221は、エネルギに関する情報をストレージ222に渡す。
【0036】
ストレージ222は、いくつかの種類のデータを保持する。ストレージ222は、記憶部又はデータ保持部と称してもよい。ストレージ222は、エネルギ情報φ2を保持するエネルギ情報メモリ222aと、画素値φ3を保持する画素値メモリ222bと、を含む。エネルギ情報メモリ222a及び画素値メモリ222bは、それぞれ独立したメモリ装置であってもよい。この場合には、複数のメモリ装置がひとつのストレージ222を構成する。また、エネルギ情報メモリ222a及び画素値メモリ222bは、ひとつのメモリ装置であり、ひとつのメモリ装置の内部に確保されたメモリ空間であってもよい。この場合には、ひとつのメモリ装置がひとつのストレージ222を構成する。
【0037】
エネルギ情報φ2(図4参照)は、エネルギ値と、カウント値によって示される。エネルギ値の単位は、例えば電子ボルト(eV)である。カウント値の単位は、例えば回数である。つまり、エネルギ情報φ2は、所定の露光期間(1フレーム)の間に、所定のエネルギを有する粒子の入射が何回生じたかを示す。
【0038】
より詳細には、エネルギ情報φ2(n)は、放射線検出器2を構成する第1~第N(Nは2以上の整数)の画素21(1)~21(N)から選択される第n(nは1以上N以下の整数)の画素21(n)において、被写体を透過した放射線が当該第nの画素21(n)に入射した回数(カウント値)と、第nの画素21(n)に入射した放射線のそれぞれが有するエネルギ(エネルギ値)と、を示す。
【0039】
ひとつの画素21は、放射線画像φ4の1ピクセルに対応する。従って、エネルギ情報生成器22のストレージ222に保持される画素値φ3は、放射線画像φ4の1ピクセルに対応する輝度値であってもよい。画素値φ3は、画素値演算器23によって生成される。
【0040】
画素値演算器23は、エネルギ情報φ2を利用して、画素値φ3を生成する。画素値演算器23は、生成した画素値φ3をストレージ222に渡す。画素値演算器23は、後に詳細に説明する。
【0041】
コンピュータ3は、読出信号θを放射線検出センサ2pに与えることによって、放射線検出センサ2pから画素値φ3を受ける。コンピュータ3は、例えば、受けた画素値φ3を補助記憶装置33に一時的に保持する。
【0042】
コンピュータ3は、補助記憶装置33に保存された画像生成プログラムP1を有する。コンピュータ3は、画像生成プログラムP1をプロセッサ31に実行させることによって、機能構成要素である画像生成器311を実現する。画像生成器311は、補助記憶装置33に保存されている複数の画素値φ3(1)~φ3(N)を用いて、放射線画像φ4を生成する。
【0043】
<画素値演算器23>
画素値演算器23は、アナログ回路及び又はデジタル回路によって実現される物理的構成要素であってもよい。また、画素値演算器23は、プログラムをプロセッサ31で実行することによって実現される機能的構成要素であってもよい。本実施形態では、画素値演算器23を物理的な構成要素によって実現する例を説明する。画素値演算器23を機能的な構成要素によって実現する例は、第2実施形態として後に説明する。
【0044】
図5は、画素値演算器23の構成を示すブロック図である。画素値演算器23は、エネルギ情報読み出し回路231と、分割エネルギ情報演算回路232と、ノイズ情報演算回路233と、補正分割エネルギ情報演算回路234と、画素値生成回路235と、を有する。画素値演算器23は、図6に示す画素値演算動作を実行する。画素値演算動作は、放射線画像を生成する方法である。
【0045】
<画素値演算動作>
以下、図6に示すフローチャートを参照しながら、画素値演算動作について詳細に説明する。
【0046】
まず、エネルギ情報φ2を得る(S1)。エネルギ情報を得る動作(S1)は、エネルギ情報読み出し回路231によって実行される。エネルギ情報読み出し回路231は、ストレージ222からエネルギ情報φ2を読み出す。
【0047】
次に、分割エネルギ情報φ21を得る(S2)。分割エネルギ情報φ21を得る動作(S2)は、分割エネルギ情報演算回路232によって実行される。分割エネルギ情報演算回路232は、エネルギ情報読み出し回路231からエネルギ情報φ2(図5参照)を受け取る。分割エネルギ情報演算回路232は、エネルギ情報φ2を互いに異なる第1~第M(Mは2以上の整数)のエネルギ帯域ごとに分割する。
【0048】
例えば、図7(a)に示す例示では、分割エネルギ情報演算回路232は、エネルギ情報φ2を第1エネルギ帯域B1と、第2エネルギ帯域B2と、第3エネルギ帯域B3と、に分割する。例えば、第1エネルギ帯域B1は、0keV以上50keV未満である。第2エネルギ帯域B2は、50keV以上100keV未満である。第3エネルギ帯域B3は、100keV以上150keV未満である。上記の動作の結果、分割エネルギ情報演算回路232は、第1分割エネルギ情報φ21aと、第2分割エネルギ情報φ21bと、第3分割エネルギ情報φ21cと、を得る。以下、特に区別する必要がない場合には、単に「分割エネルギ情報φ21」と記載する。
【0049】
なお、上述の説明では、例えば、第1分割エネルギ情報φ21aは、エネルギ情報φ2から第1エネルギ帯域B1の数値を切り出しただけのものとして説明した。第1分割エネルギ情報φ21aは、さらに、第1エネルギ帯域B1に含まれるカウント値の総和として定義してもよい。カウント値の総和は、次のノイズ情報φ22を得る(S3)動作にも現れる。つまり、カウント値の総和は、ステップS2で第1分割エネルギ情報φ21aとして取得してもよい。
【0050】
次に、ノイズ情報φ22を得る(S3)。ノイズ情報φ22を得る動作(S3)は、ノイズ情報演算回路233によって実行される。ノイズ情報演算回路233は、分割エネルギ情報演算回路232から分割エネルギ情報φ21を受け取る。図7(b)に示すように、ノイズ情報演算回路233は、第1分割エネルギ情報φ21aを用いて第1ノイズ情報φ22aを得る。具体的には、ノイズ情報演算回路233は、第1分割エネルギ情報φ21aを積分する。この積分動作は、第1分割エネルギ情報φ21aに含まれるカウント値の総和φ22sであってもよい。図7(b)の例示では、カウント値の総和φ22sとして「16000」を例示する。次に、ノイズ情報演算回路233は、カウント値の総和φ22sの平方根を得る。カウント値の総和φ22sの平方根として、「126」(=√16000)を例示する。カウント値の総和φ22sの平方根は、ショットノイズカウント値である。つまり、ノイズ情報演算回路233は、エネルギ情報φ2から第1エネルギ帯域B1の第1ノイズ情報φ22aとして、第1ショットノイズカウント値を得る。
【0051】
ノイズ情報演算回路233は、第2分割エネルギ情報φ21bを用いてカウント値の総和φ22p(12000)を得る。そして、ノイズ情報演算回路233は、当該カウント値の総和φ22pを用いて第2ノイズ情報φ22bである第2ショットノイズカウント値(110)を得る。同様に、ノイズ情報演算回路233は、第3分割エネルギ情報φ21cを用いてカウント値の総和φ22r(2500)を得る。そして、ノイズ情報演算回路233は、当該カウント値の総和φ22rを用いて第3ノイズ情報φ22cである第3ショットノイズカウント値(50)を得る。以下、特に区別する必要がない場合には、単に「ノイズ情報φ22」と記載する。
【0052】
次に、補正分割エネルギ情報φ23を得る(S4)。補正分割エネルギ情報φ23を得る動作(S4)は、補正分割エネルギ情報演算回路234によって実行される。補正分割エネルギ情報演算回路234は、分割エネルギ情報演算回路232から分割エネルギ情報φ21を受ける。さらに、補正分割エネルギ情報演算回路234は、ノイズ情報演算回路233からノイズ情報φ22を受ける。補正分割エネルギ情報演算回路234は、分割エネルギ情報φ21及びノイズ情報φ22を用いて補正分割エネルギ情報φ23を得る。
【0053】
補正分割エネルギ情報演算回路234が実行する補正分割エネルギ情報φ23を得る動作(S4)を詳細に説明する。
【0054】
はじめに、補正係数φ231を得る(S4a)。補正係数φ231を得る動作(S4a)は、補正係数演算回路234aによって実行される。補正係数φ231は、エネルギ帯域ごとのノイズレベルを一致させるもの、又は、ノイズレベルを揃えるものということもできる。
【0055】
例えば、補正係数φ231とは、第1ノイズ情報φ22a、第2ノイズ情報φ22b及び第3ノイズ情報φ22cとして示される数値(ショットノイズカウント値)を一致させるものと定義してもよい。例えば、第1補正係数φ231a、第2補正係数φ231b及び第3補正係数φ231cがあると仮定する。以下、特に区別する必要がない場合には、単に「補正係数φ231」と記載する。そして、第1補正係数φ231と第1ノイズ情報φ22aとの積である第1補正ショットノイズカウント値φ23s(図7(c)参照)を得る。同様に、第2補正ショットノイズカウント値φ23p及び第3補正ショットノイズカウント値φ23rを得る。第1補正ショットノイズカウント値φ23s、第2補正ショットノイズカウント値φ23p及び第3補正ショットノイズカウント値φ23rは、互いに一致していると評価してよい程度の数値である。
【0056】
なお、本実施形態でいう「一致」は、厳密な数字上の一致を意味しない。最終的に得られる放射線画像φ4において、所望の明瞭性を実現できるという条件のもと、所定のずれを許容することができる。つまり、「一致」とは、ある数値の幅の範囲に、それぞれの補正カウント値が存在するものと定義してもよい。
【0057】
一例として、第2ノイズ情報φ22bを基準とする。第1ノイズ情報φ22aを第2ノイズ情報φ22bに揃えると共に、第3ノイズ情報φ22cを第2ノイズ情報φ22bに揃える場合を例示する。
【0058】
第2ノイズ情報φ22bを基準として選択したので、第2補正係数φ231bとして1を得る。
【0059】
いま、第2ノイズ情報φ22bが110であり、第1ノイズ情報φ22aが126である。この場合において、第1ノイズ情報φ22aを110とするためには、0.87を乗算すればよい。従って、第1補正係数φ231aとして0.87を得る。
【0060】
同様に、第2ノイズ情報φ22bが110であり、第3ノイズ情報φ22cが50である。この場合において、第3ノイズ情報φ22cを110とするためには、2.2を乗算すればよい。従って、第3補正係数φ231cとして2.2を得る。
【0061】
なお、基準とするノイズ情報φ22は、いずれのエネルギ帯域のものを用いてもよい。
【0062】
さらに、上記の例示では、ショットノイズカウント値を揃えるという条件のもと、補正係数φ231を得る動作を説明した。例えば、補正係数φ231を得る動作では、それぞれのエネルギ帯域におけるS/N比を揃えることを条件としてもよい。S/N比とは、カウント値とショットノイズカウント値との比率である。また、補正係数φ231を得る動作では、ショットノイズカウント値の対数を揃えることを条件としてもよい。同様に、補正係数φ231を得る動作では、S/N比の対数を揃えることを条件としてもよい。
【0063】
続いて、分割エネルギ情報φ21を補正する(S4b)。分割エネルギ情報φ21を補正する動作(S4b)は、分割エネルギ情報補正回路234bによって実行される。分割エネルギ情報補正回路234bは、補正係数演算回路234aから補正係数φ231を受ける。さらに、分割エネルギ情報補正回路234bは、分割エネルギ情報演算回路232から分割エネルギ情報φ21を受ける。
【0064】
分割エネルギ情報補正回路234bは、第1分割エネルギ情報φ21aに第1補正係数φ231aを乗算することによって、第1補正分割エネルギ情報φ23aを得る。具体的には、分割エネルギ情報補正回路234bは、第1分割エネルギ情報φ21aが示すカウント値の総和φ22s(16000)に第1補正係数φ231a(0.87)を乗算する。その結果、第1補正分割エネルギ情報φ23a(13920)を得る。
【0065】
同様に、分割エネルギ情報補正回路234bは、第2分割エネルギ情報φ21bが示すカウント値の総和φ22p(12000)に第2補正係数φ231b(1)を乗算することによって、第2補正分割エネルギ情報φ23b(12000)を得る。分割エネルギ情報補正回路234bは、第3分割エネルギ情報φ21cが示すカウント値の総和φ22r(2000)に第3補正係数φ231c(2.2)を乗算することによって、第3補正分割エネルギ情報φ23c(5500)を得る。
【0066】
ここで注目すべき点は、本実施形態の放射線画像生成装置1では、エネルギ情報φ2の補正を自動的に実行していることである。具体的には、補正係数を得る動作(S4a)を自動的に実行すると共に、分割エネルギ情報φ21を補正する動作(S4b)も自動的に実行する。
【0067】
さらに、本実施形態の放射線画像生成装置1では、エネルギ情報φ2の補正(S4)を自動的に実行しているために、エネルギ情報φ2の補正(S4)を画素21ごとに実行することが可能である。換言すると、放射線画像生成装置1が実行する補正動作(S4)は、1つの画素21が出力する情報のみを用いて実行することができる。放射線画像生成装置1が実行する補正動作(S4)は、複数の画素21が出力する情報を用いることを排除しないが、必ずしも複数の画素21が出力する情報を要しない。
【0068】
次に、画素値φ3を得る(S5)。画素値φ3を得る動作(S5)は、画素値生成回路235によって実行される。画素値生成回路235は、補正分割エネルギ情報演算回路234から補正分割エネルギ情報φ23を受ける。画素値生成回路235は、補正分割エネルギ情報φ23を用いて画素値φ3を生成する。例えば、画素値生成回路235は、補正されたエネルギスペクトルとしての補正分割エネルギ情報φ23の積分値を画素値φ3として生成してもよい。画素値生成回路235は、生成した画素値φ3をストレージ222に渡す。
【0069】
上記の動作を画素21ごとに実行することによって、複数の画素値φ3(1)~φ3(N)を得ることができる。例えば、コンピュータ3は、複数の画素値φ3(1)~φ3(N)を、例えば1ピクセルが10ビットや12ビットとして定義された輝度値に変換する。そして、変換された輝度値を用いて、放射線画像φ4を得る(S6)。
【0070】
<作用効果>
ところで、X線画像、特に透過画像は、種々の被写体を透過したいわゆる「影絵」情報である。従って、撮像素子に捉えられるX線は、材質や厚みの異なる複数の材質を透過してくることがほとんどである。
【0071】
X線は、電磁波である。光子は、波長に相当するエネルギを有する。高いエネルギを有する光子は、物体の透過率が高い。低いエネルギを有する光子は、物体の透過率が低い。透過撮像する被写体の物質の厚みや材質は被写体ごと、さらには被写体の部位ごとに様々である。そこで、透過撮像を行う現場ではこれらを明瞭な透過画像とするための撮像条件の調整を行っている。例えば、X線透過撮像を行うとき、X線技師や医師らがX線管の加速電圧(出射光子の最大エネルギー)や電流(単位時間あたりの出射光子数)を変化させている。さらには、X線技師や医師らは、X線撮像素子(X線フィルム、イメージングプレート、フラットパネルディテクター等)の被写体とエネルギ応答特性を加味しながら経験で調整している。
【0072】
最近では、X線の強度のみではなく、エネルギの情報も取得できる撮像素子が開発されている。このような撮像素子は、被写体で減弱したX線の光子エネルギ情報を撮像素子で検出できる。つまり、複数のエネルギーバンドで形成される画像を全エネルギ帯で単一に積分せず、適当な比率で補正して見やすい画像を得る試験が始まったばかりである。これは、まだ、実用的なエネルギ弁別型のX線カメラが登場していないことに起因している。
【0073】
X線画像において「全体を見たい」場合もあれば「一部の場所」を見たい場合もある。この場合には、適切なコントラストを得るために、着目するウィンドウ幅(W/W)とウィンドウ中心値(W/L)を調整している。この調整は、その全帯域で必要なダイナミックレンジでデータが確保されていることが前提となる。画像全体において、エネルギ帯を分けて自動的に画像を生成する技術も検討されている。
【0074】
これらの技術の適用により、透過画像の画質は向上する。しかし、透過撮像を行う分野では、さらに画像の画質を高めることが望まれていた。
【0075】
このような課題に鑑み、本実施形態の放射線画像を生成する方法及び放射線画像生成装置は、以下のような要素を備えることにより画質のさらなる向上を実現する。
【0076】
放射線画像を生成する方法は、複数の画素21(1)~21(N)から選択される第nの画素21(n)より、被写体を透過した放射線が第nの画素21(n)に入射した回数及び第nの画素21(n)に入射した放射線のそれぞれが有するエネルギによって示されるエネルギ情報φ2を得るステップ(S1)と、エネルギ情報φ2を互いに異なる複数のエネルギ帯域B1、B2、B3ごとに分割することによって、複数の分割エネルギ情報φ21を得るステップ(S2)と、複数の分割エネルギ情報φ21を用いて、複数の分割エネルギ情報φ21ごとに複数のノイズ情報φ22を得るステップ(S3)と、複数のノイズ情報φ22を用いて複数の分割エネルギ情報φ21を補正することによって、複数の補正分割エネルギ情報φ23を得るステップ(S4)と、を有する。
【0077】
放射線画像生成装置1は、複数の画素21(1)~21(N)を有し、複数の画素21(1)~21(N)ごとに、被写体を透過した放射線が第nの画素21(n)に入射した回数及び入射した放射線のそれぞれが有するエネルギによって示されるエネルギ情報φ2を生成するエネルギ情報生成器22と、エネルギ情報生成器22からエネルギ情報φ2を受けると共に、エネルギ情報φ2を用いて放射線画像φ4を生成するための画素値φ3を得る複数の画素値演算器23と、を備える。画素値演算器23は、エネルギ情報φ2のそれぞれを互いに異なる複数のエネルギ帯域B1、B2、B3ごとに分割することによって、複数の分割エネルギ情報φ21を得る分割エネルギ情報演算回路232と、複数の分割エネルギ情報φ21を用いて、複数の分割エネルギ情報φ21ごとに複数のノイズ情報φ22を得るノイズ情報演算回路233と、複数のノイズ情報φ22を用いて複数の分割エネルギ情報φ21を補正することによって、複数の補正分割エネルギ情報φ23を得る補正分割エネルギ情報演算回路234と、を有する。
【0078】
上記の放射線画像を生成する方法及び放射線画像生成装置1は、第nの画素21(n)から得られたエネルギ情報φ2を複数の分割エネルギ情報φ21に分割する。そして、分割エネルギ情報φ21ごとにノイズ情報φ22を得る。このノイズ情報φ22を用いて、分割エネルギ情報φ21を補正する。つまり、第nの画素21(n)から得られたエネルギ情報φ2を用いて、当該エネルギ情報φ2を補正することができる。その結果、画素21ごとにエネルギ情報φ2を補正することが可能になるので、放射線に基づく画像の画質を高めることができる。
【0079】
上記の放射線画像を生成する方法において、複数の補正分割エネルギ情報φ23を得るステップ(S4)は、複数のノイズ情報φ22を用いて複数の補正係数φ231を得るステップ(S4a)と、複数の補正係数φ231を用いて複数の分割エネルギ情報φ21をそれぞれ補正するステップ(S4b)と、を含む。このステップ(S4)によれば、簡易な演算によって複数の補正分割エネルギ情報φ23を得ることができる。
【0080】
上記の放射線画像を生成する方法において、複数の補正係数φ231を得るステップ(S4a)は、複数の補正係数φ231と複数のノイズ情報φ22との積である複数の補正ノイズ情報φ22a~φ22cを互いに揃えるように、複数の補正係数φ231を決定する。このステップ(S4a)によれば、放射線に基づく画像の画質を高めることができる補正係数を得ることができる。
【0081】
上記の放射線画像を生成する方法において、複数の補正分割エネルギ情報φ24を得るステップ(S4)は、第1~第Nの画素21(1)~21(N)ごとに実行される。このステップによれば、第1~第Nの画素21(1)~21(N)ごとに放射線に基づく画像の画質を高めるための補正演算を実行することができる。
【0082】
上記の放射線画像を生成する方法は、複数の補正分割エネルギ情報φ23を用いて、第nの画素21(n)に対応する第nの画素値φ3(n)を得る動作を、第1~第Nの画素21(1)~21(N)ごとに実行することによって、第1~第Nの画素値φ3(1)~φ3(N)を得るステップ(S5)をさらに備える。このステップ(S5)によっても、放射線に基づく画像の画質を高めるための補正演算を画素ごとに実行することができる。
【0083】
上記の放射線画像を生成する方法は、第1~第Nの画素値φ3(1)~φ3(N)を用いて放射線画像を得るステップ(S6)を更に備える。このステップ(S6)によれば、画質を高めた放射線に基づく画像を得ることができる。
【0084】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の放射線画像生成装置1Aを説明する。第2実施形態の放射線画像生成装置1Aは、画素値演算器23が機能的な構成要素として実現される点において、第1実施形態の放射線画像生成装置1と相違する。
【0085】
図8は、放射線画像生成装置1Aのブロック図である。放射線画像生成装置1Aは、放射線検出器2Aと、コンピュータ3と、を有する。
【0086】
放射線検出器2Aを構成する複数の放射線検出センサ2p(1)~2p(N)は、それぞれ画素21と、エネルギ情報生成器22Aと、を有する。第2実施形態のエネルギ情報生成器22Aは、物理的な回路として実現された画素値演算器23を備えていない。
【0087】
一方、第2実施形態のコンピュータ3は、画像生成プログラムP1に加えて、さらに、画素値演算プログラムP2(放射線画像を生成するプログラム)を有する。プロセッサ31が、画素値演算プログラムP2を実行することによって、機能的な構成要素として画素値演算器312が実現される。機能的な構成要素として画素値演算器312の動作は、物理的な構成要素として画素値演算器23と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0088】
図9は、画素値演算プログラムP2の構成を示すブロック図である。画素値演算プログラムP2は、エネルギ情報読み出しモジュールM1と、分割エネルギ情報演算モジュールM2と、ノイズ情報演算モジュールM3と、補正分割エネルギ情報演算モジュールM4と、画素値生成モジュールM5と、を有する。補正分割エネルギ情報演算モジュールM4は、補正係数演算モジュールM4aと、分割エネルギ情報補正モジュールM4bと、を含む。これらのモジュールがプロセッサ31によって実行されることによって、画素値演算器23が実現される。
【0089】
エネルギ情報読み出しモジュールM1は、エネルギ情報φ2を得る動作(S1)を実行する。分割エネルギ情報演算モジュールM2は、分割エネルギ情報φ21を得る動作(S2)を実行する。ノイズ情報演算モジュールM3は、ノイズ情報φ22を得る動作(S3)を実行する。補正分割エネルギ情報演算モジュールM4は、補正分割エネルギ情報φ23を得る動作(S4)を実行する。補正係数演算モジュールM4aは、補正係数φ231を得る動作(S4a)を実行する。分割エネルギ情報補正モジュールM4bは、分割エネルギ情報φ21を補正する動作(S4b)を実行する。画素値生成モジュールM5は、画素値φ3を得る動作(S5)を実行する。
【0090】
要するに、放射線画像を生成するプログラム(画素値演算プログラムP2)は、複数の第1~第N(Nは2以上の整数)の画素21(1)~21(N)から選択される第n(nは1以上N以下の整数)の画素21(n)より、第nの画素21(n)に被写体を透過した放射線が入射した回数及び第nの画素21(n)に入射した放射線のそれぞれが有するエネルギによって示されるエネルギ情報を得るエネルギ情報読み出しモジュールM1と、エネルギ情報φ2を互いに異なる複数のエネルギ帯域B1、B2、B3ごとに分割することによって、複数の分割エネルギ情報φ21を得る分割エネルギ情報演算モジュールM2と、複数の分割エネルギ情報φ21を用いて、複数の分割エネルギ情報φ21ごとに複数のノイズ情報φ22を得るノイズ情報演算モジュールM3と、複数のノイズ情報φ22を用いて複数の分割エネルギ情報φ21を補正することによって、複数の補正分割エネルギ情報φ23を得る補正分割エネルギ情報演算モジュールM4と、を有する。
【0091】
放射線画像を生成するプログラムP2を実行する放射線画像生成装置1Aによっても、放射線に基づく画像の画質を高めることができる。
【0092】
<変形例>
本発明の放射線画像を生成する方法は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0093】
上記の第1実施形態において、分割エネルギ情報φ21を得る動作(S2)では、図7(a)に示すように、それぞれのエネルギ帯域は、互いに重複していなかった。つまり、あるエネルギに対応するカウント値は、複数のエネルギ帯域のうちのいずれか一つに属しており、互いに隣接する2つのエネルギ帯域に属することがなかった。しかし、例えば、図10に示すように、エネルギ帯域は、その一部が相互に重複する領域T1、T2を有していてもよい。つまり、あるエネルギに対応するカウント値は、互いに隣接する2つのエネルギ帯域に属していてもよい。また、重複する領域は、互いに同じであるように設定されてもよいし、互いに同じでなくてもよい。つまり、互いに隣接するエネルギ帯域の境界は、急峻であってもよいし、なだらかな曲線であってもよい。
【0094】
〔付記〕
本開示は、以下の構成を含む。
【0095】
本開示の放射線画像を生成する方法は、[1]「複数の第1~第N(Nは2以上の整数)の画素から選択される第n(nは1以上N以下の整数)の画素より、被写体を透過した放射線が前記第nの画素に入射した回数及び前記第nの画素に入射した前記放射線のそれぞれが有するエネルギによって示されるエネルギ情報を得るステップと、前記エネルギ情報を互いに異なる第1~第M(Mは2以上の整数)のエネルギ帯域ごとに分割することによって、第1~第Mの分割エネルギ情報を得るステップと、前記第1~第Mの分割エネルギ情報を用いて、前記第1~第Mの分割エネルギ情報ごとに第1~第Mのノイズ情報を得るステップと、前記第1~第Mのノイズ情報を用いて前記第1~第Mの分割エネルギ情報を補正することによって、第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得るステップと、を有する、放射線画像を生成する方法。」である。
【0096】
本開示の放射線画像を生成する方法は、[2]「 前記第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得るステップは、前記第1~第Mのノイズ情報を用いて第1~第Mの補正係数を得るステップと、前記第1~第Mの補正係数を用いて前記第1~第Mの分割エネルギ情報をそれぞれ補正するステップと、を含む、上記[1]に記載の放射線画像を生成する方法。」である。
【0097】
本開示の放射線画像を生成する方法は、[3]「前記第1~第Mの補正係数を得るステップは、前記第1~第Mの補正係数と前記第1~第Mのノイズ情報との積である第1~第Mの補正ノイズ情報を互いに揃えるように、前記第1~第Mの補正係数を決定する、上記[2]に記載の放射線画像を生成する方法。」である。
【0098】
本開示の放射線画像を生成する方法は、[4]「前記第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得るステップは、前記第1~第Nの画素ごとに実行される、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の放射線画像を生成する方法。」である。
【0099】
本開示の放射線画像を生成する方法は、[5]「前記第1~第Mの補正分割エネルギ情報を用いて、前記第nの画素に対応する第nの画素値を得る動作を、前記第1~第Nの画素ごとに実行することによって、第1~第Nの画素値を得るステップをさらに備える、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の放射線画像を生成する方法。」である。
【0100】
本開示の放射線画像を生成する方法は、[6]「前記第1~第Mの補正分割エネルギ情報を用いて、前記第nの画素に対応する第nの画素値を得る動作を、前記第1~第Nの画素ごとに実行することによって、第1~第Nの画素値を得るステップをさらに備える、上記[5]に記載の放射線画像を生成する方法。」である。
【0101】
本開示の放射線画像を生成するプログラムは、[7]「複数の第1~第N(Nは2以上の整数)の画素から選択される第n(nは1以上N以下の整数)の画素より、被写体を透過した放射線が前記第nの画素に入射した回数及び前記第nの画素に入射した前記放射線のそれぞれが有するエネルギによって示されるエネルギ情報を得るステップと、前記エネルギ情報を互いに異なる第1~第M(Nは2以上の整数)のエネルギ帯域ごとに分割することによって、第1~第Mの分割エネルギ情報を得るステップと、前記第1~第Mの分割エネルギ情報を用いて、前記第1~第Mの分割エネルギ情報ごとに第1~第Mのノイズ情報を得るステップと、前記第1~第Mのノイズ情報を用いて前記第1~第Mの分割エネルギ情報を補正することによって、第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得るステップと、をコンピュータに実行させる、放射線画像を生成するプログラム。」である。
【0102】
本開示の、放射線画像生成装置は、[8]「第1~第N(Nは2以上の整数)の画素を有し、前記第1~第Nの画素のそれぞれは、被写体を透過した放射線が入射した回数及び入射した前記放射線のそれぞれが有するエネルギによって示されるエネルギ情報を生成するエネルギ情報生成部と、前記エネルギ情報生成部から前記エネルギ情報を受けると共に、前記エネルギ情報を用いて放射線画像を生成するための画素値を得る1又は複数の画素値演算部と、を備え、前記画素値演算部は、前記エネルギ情報を互いに異なる第1~第M(Mは2以上の整数)のエネルギ帯域ごとに分割することによって、第1~第Mの分割エネルギ情報を得る分割エネルギ情報取得部と、前記第1~第Mの分割エネルギ情報を用いて、前記第1~第Mの分割エネルギ情報ごとに第1~第Mのノイズ情報を得るノイズ情報取得部と、前記第1~第Mのノイズ情報を用いて前記第1~第Mの分割エネルギ情報を補正することによって、第1~第Mの補正分割エネルギ情報を得る補正分割エネルギ情報取得部と、を有する、放射線画像生成装置。
」である。
【符号の説明】
【0103】
1,1A…放射線画像生成装置、2,2A…放射線検出器、2p…放射線検出センサ、3…コンピュータ、21…画素、22,22A…エネルギ情報生成器、23…画素値演算器、31…プロセッサ、221…エネルギ弁別器、222…ストレージ、231…エネルギ情報読み出し回路、232…分割エネルギ情報演算回路、233…ノイズ情報演算回路、234…補正分割エネルギ情報演算回路、234a…補正係数演算回路、234b…分割エネルギ情報補正回路、235…画素値生成回路、311…画像生成器、M1…エネルギ情報読み出しモジュール、M2…分割エネルギ情報演算モジュール、M3…ノイズ情報演算モジュール、M4…補正分割エネルギ情報演算モジュール、M4a…補正係数演算モジュール、M4b…分割エネルギ情報補正モジュール、M5…画素値生成モジュール、P1…画像生成プログラム、P2…画素値演算プログラム(放射線画像を生成するプログラム)、φ1…電荷情報、φ2…エネルギ情報、φ21…分割エネルギ情報、φ22…ノイズ情報、φ23…補正分割エネルギ情報、φ231…補正係数、φ3…画素値、φ4…放射線画像。
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