(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063953
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】識別装置、選別装置、及び識別方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/85 20060101AFI20240507BHJP
B07C 5/34 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G01N21/85 Z
B07C5/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172161
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】503245465
【氏名又は名称】株式会社アーステクニカ
(71)【出願人】
【識別番号】591133321
【氏名又は名称】トヨキン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】高浪 裕智
(72)【発明者】
【氏名】神ノ田 茂紀
(72)【発明者】
【氏名】本郷 明裕
(72)【発明者】
【氏名】兒島 省吾
(72)【発明者】
【氏名】石田 勇作
【テーマコード(参考)】
2G051
3F079
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AB20
2G051CA03
2G051CD10
2G051DA06
2G051DA13
3F079AB00
3F079CA23
3F079CA29
3F079CA31
3F079CB25
3F079CB29
3F079CC03
3F079DA06
3F079DA12
(57)【要約】
【課題】対象物をカメラで撮影して得られた画像を用いて対象物を識別する識別装置において、対象物の識別精度が高い構成を提供する。
【解決手段】識別装置2は、以下の特徴1を有する。即ち、識別装置2は、コンベア10と、カメラ12と、画像処理部と、を備える。コンベア10は、対象物を置くための搬送面10aを有しており、対象物を搬送する。カメラ12は、恒温環境に配置されており、コンベア10によって搬送される対象物を撮影する。画像処理部は、カメラ12が対象物を撮影することで得られた画像を解析して、搬送面10a上の対象物を識別する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を置くための搬送面を有しており、前記対象物を搬送するコンベアと、
恒温環境に配置されており、前記コンベアによって搬送される前記対象物を撮影するカメラと、
前記カメラが前記対象物を撮影することで得られた画像を解析して、前記搬送面上の前記対象物を識別する画像処理部と、
を備える、識別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の識別装置であって、
断熱材を含んで構成されており、内部に断熱空間が形成される断熱カバーを備え、
前記断熱空間に前記カメラが配置される、識別装置。
【請求項3】
請求項2に記載の識別装置であって、
前記断熱空間に配置されるヒータ又は冷却器と、
前記断熱空間に配置される温度センサと、
前記温度センサが検出した温度に基づいて、前記ヒータ又は前記冷却器の出力を調整することにより、前記断熱空間を目標温度に近づける温度調整器と、
を備える、識別装置。
【請求項4】
請求項3に記載の識別装置であって、
前記温度センサは、前記カメラの上端よりも低く、前記カメラの下端よりも高い位置に配置される、識別装置。
【請求項5】
請求項3に記載の識別装置であって、
前記カメラがラインカメラであり、
前記断熱カバーの底板には、前記カメラが前記対象物を撮影するための細長状の窓部が形成されており、
前記ヒータ又は冷却器は、前記断熱カバーの底板のうち前記窓部の幅方向の外側に配置されている、識別装置。
【請求項6】
請求項1に記載の識別装置と、
前記対象物を選別する選別部と、
を備え、
前記画像処理部は、前記画像を解析して前記対象物に関する判定を行い、
前記選別部は、前記画像処理部の判定結果に基づいて、前記対象物を選別する、選別装置。
【請求項7】
コンベアの搬送面に対象物が置かれた状態で当該コンベアを動作させて前記対象物を搬送し、
恒温環境に配置されたカメラを用いて、前記コンベアによって搬送される前記対象物を撮影し、
前記カメラが前記対象物を撮影することで得られた画像を解析して、前記搬送面上の前記対象物を識別する、識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、主として、コンベアの搬送面に載せられた対象物を識別する識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ベルトコンベアと、レーザ計測器と、演算処理装置と、を備える識別装置を開示する。ベルトコンベアは、識別対象である破砕片を搬送する。レーザ計測器は、ベルトコンベアによって搬送される破砕片を3次元計測する。演算処理装置は、ベルトコンベア上の破砕片を識別し、破砕片の3次元形状に基づいて、破砕片を鋼板か部品か判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンベア上の対象物を検出する方法としては、レーザ計測器を用いる方法以外にもカメラを用いる方法が知られている。カメラを用いてコンベア上の対象物を撮影することにより、コンベアと対象物が含まれる画像を得ることができる。この画像を解析することにより、コンベア上の対象物を識別できる。しかし、カメラを用いる場合は、対象物にピントが合わないことに起因して、鮮明な画像が得られないことがある。その結果、対象物の識別精度が低下することがある。
【0005】
本出願は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、対象物をカメラで撮影して得られた画像を用いて対象物を識別する識別装置において、対象物の識別精度が高い構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本出願の第1の観点によれば、以下の構成の識別装置が提供される。即ち、識別装置は、コンベアと、カメラと、画像処理部と、を備える。前記コンベアは、対象物を置くための搬送面を有しており、前記対象物を搬送する。前記カメラは、恒温環境に配置されており、前記コンベアによって搬送される前記対象物を撮影する。前記画像処理部は、前記カメラが前記対象物を撮影することで得られた画像を解析して、前記搬送面上の前記対象物を識別する。
【0008】
本出願の第2の観点によれば、以下の識別方法が提供される。即ち、識別方法では、コンベアの搬送面に対象物が置かれた状態で当該コンベアを動作させて前記対象物を搬送する。識別方法では、恒温環境に配置されたカメラを用いて、前記コンベアによって搬送される前記対象物を撮影する。識別方法では、前記カメラが前記対象物を撮影することで得られた画像を解析して、前記搬送面上の前記対象物を識別する。
【発明の効果】
【0009】
本出願によれば、対象物をカメラで撮影して得られた画像を用いて対象物を識別する識別装置において、対象物の識別精度が高い構成を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】画像に基づいて低含有グループと高含有グループの何れに属するか判定する処理を示すフローチャート。
【
図3】断熱カバーの内部の各装置のレイアウトを示す断面斜視図。
【
図4】断熱カバーの内部の各装置のレイアウトを示す側面断面図。
【
図5】比較例の10分間選別率及びレンズ温度の時間変化を示すグラフ。
【
図6】本実施形態の10分間選別率及びレンズ温度の時間変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本出願の実施形態を説明する。
【0012】
図1に示す選別装置1は、対象物である破砕片を添加金属の含有割合に応じて選別する装置である。破砕片は、例えばリサイクル用の金属を破砕機等で処理することで得られる。選別装置1の上流側には破砕機が配置されており、破砕機から選別装置1に破砕片が供給される。なお、破砕機は、選別装置1とは別の工場等に配置されていてもよい。この場合、この破砕機で生成された破砕片が運搬されて選別装置1に供給される。
【0013】
なお、対象物は、金属に限られず、例えば樹脂材又は木材等であってもよい。また、選別の基準は、対象物の添加物の含有割合に限られず、例えば対象物の重さ又は形状であってもよい。本実施形態に記載の技術内容は、選別を行わない装置にも適用できる。選別を行わない装置とは、例えば、対象物に関する情報を取得する装置、又は、対象物に関する情報を分析して対象物の検査を行う装置等である。
【0014】
図1に示すように、選別装置1は、コンベア10と、カメラ12と、処理装置14と、選別部15と、を備える。また、選別装置1は、コンベア10に載せられた破砕片を識別する識別装置2を含んでいる。識別装置2は、カメラ12と、処理装置14と、により構成されている。
【0015】
コンベア10は、破砕機等から供給された破砕片を下流側へ搬送する。本実施形態のコンベア10はベルトコンベアであるが、破砕片を搬送可能であれば別のコンベアを用いることができる。別のコンベアは、例えばローラコンベアである。
【0016】
コンベア10は、破砕片を置くための搬送面10aを有している。本実施形態の搬送面10aは、ベルトの上面である。なお、コンベア10がローラコンベアの場合は、各ローラの最も高い位置を接続した仮想平面が搬送面10aである。つまり、搬送面10aとは、搬送される複数の破砕片の下端を通る平面と言い換えることもできる。
【0017】
カメラ12は、コンベア10の上方に配置されている。カメラ12は、ラインカメラである。カメラ12は、搬送面10a及び破砕片のライン画像を取得する。ライン画像の長手方向は、コンベア10の幅方向と平行である。なお、本明細書において、平行及び垂直等の方向を表す用語は、厳密に平行及び垂直な状態だけでなく、実質的に平行及び垂直等の状態も含むものとする。また、カメラ12はラインカメラに限られない。即ち、カメラ12の撮影範囲は線形に限られず、矩形又は円形であってもよい。
【0018】
選別装置1は、添加金属の含有割合に応じて破砕片を2つの段階に選別する。以下では、添加金属の含有割合が高い方の段階のグループを高含有グループと称し、添加金属の含有割合が低い方の段階のグループを低含有グループと称する。なお、グループ分けは2段階に限られず、3段階以上にグループ分けしてもよい。例えば破砕片が鋼であって、マンガン又はクロム等の添加金属が多く含まれている場合、リサイクル用途として鋳鉄に用いることが好ましくない場合がある。例えば、マンガン又はクロムの含有量が多い鋼は、鋳造における凝固時に黒鉛が析出しにくくなったり、チルと称される脆い組織が生成されることがある。従って、添加金属の含有割合に応じて破砕片を選別することにより、リサイクル用途に適した鋼と、リサイクル用途に適していない鋼と、に分けることができる。破砕片の組成は鋼に限られず、他の合金であってもよい。他の合金は、例えば、鋼以外の鉄合金又はアルミニウム合金である。添加金属はマンガン又はクロムに限られず、例えばニッケルであってもよい。
【0019】
処理装置14は、FPGA、ASIC、又はCPU等の演算装置と、SSD又はフラッシュメモリ等の記憶装置と、を備える。演算装置は、記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、選別装置1に関する様々な処理を実行する。以下では、処理装置14を機能別に分けて、搬送制御部14a、画像処理部14b、及び選別制御部14cと称することがある。搬送制御部14aはコンベア10を制御する。画像処理部14bは、カメラ12が撮影することで得られた画像を解析する。選別制御部14cは、選別部15を制御する。
【0020】
選別部15は、コンベア10によって搬送される破砕片を、第1コンベア16を介して第1回収部21に送るか、第2コンベア17を介して第2回収部22に送るかを切換可能な空気噴射装置である。第1回収部21は、主として低含有グループの破砕片を回収する容器である。第2回収部22は、主として高含有グループの破砕片を回収する容器である。選別部15は、破砕片に向けて圧縮空気を噴射することにより、破砕片を第1コンベア16に送ることができる。選別部15が圧縮空気を噴射しない場合、破砕片は自然落下して第2コンベア17に送られる。選別部15が圧縮空気を噴射する位置及び噴射するタイミングは、選別制御部14cによって制御されている。
【0021】
選別部15は、高含有グループの破砕片に圧縮空気を噴射して選別してもよい。また、選別部15は圧縮空気を噴射する機械に限られない。例えば、選別部15はアームロボットであってもよい。アームロボットは、破砕片をピックアップして、破砕片が高含有グループか低含有グループかに応じて、収容先を異ならせる。
【0022】
次に、
図2を参照して、処理装置14が行う処理について説明する。
【0023】
コンベア10を搬送される破砕片をカメラ12で撮影して得られたライン画像は、処理装置14に出力される。画像処理部14bは、このライン画像を取得する(S101)。なお、カメラ12は、所定の時間間隔でライン画像を生成するため、画像処理部14bもライン画像を順次取得する。また、カメラ12がライン画像の元となるデータのみを取得し、画像処理部14bで処理を行うことでライン画像を生成してもよい。
【0024】
次に、画像処理部14bは、所定数のライン画像を統合することで統合画像を作成する(S102)。具体的には、画像処理部14bは、複数のライン画像を時系列で並べて接続することで統合画像を作成する。カメラ12がラインカメラではなく撮影領域が矩形のカメラである場合は、ステップS102の処理を省略できる。
【0025】
次に、画像処理部14bは、統合画像を解析することで破砕片を識別して、それぞれの破砕片にIDを付与して、位置情報とともに記憶する(S103)。破砕片のIDは、破砕片を特定するための固有の文字列である。また、破砕片の位置情報は、幅方向の位置と、搬送方向の位置と、を含む。
【0026】
次に、画像処理部14bは、破砕片が低含有グループと高含有グループの何れに属するかを判定し、判定結果をIDに対応付けて記憶する(S104)。画像処理部14bは、破砕片の画像を解析することで、以下のようにして、破砕片が低含有グループと高含有グループの何れに属するかを判定する。添加金属は、鉄合金等の強度を向上させるために添加される。従って、添加金属の含有割合が高い破砕片は、相対的に強度が高く、破砕機によって処理された場合に変形しにくい。逆に、添加金属の含有割合が低い破砕片は、相対的に強度が低く、破砕機によって処理された場合に変形し易い。具体的には、添加金属の含有割合が低い鋼板ほど、破砕機に投入された際に丸みを帯びるように折り曲げられ易くなり、その結果、破砕片の表面に皺が現れ易くなる。従って、破砕片の表面のうち皺が生じている部分の割合である皺割合と、添加金属の含有割合と、の間には相関性がある。具体的には、皺割合が高いほど添加金属の含有割合が少なくなる。
【0027】
画像処理部14bは、画像を解析することにより破砕片のうち皺が生じている範囲を特定する。次に、画像処理部14bは、破砕片の全体の面積に対する皺が生じている部分の面積である皺割合を算出する。画像処理部14bは、皺割合が閾値を超えた破砕片については低含有グループに属すると判定する。画像処理部14bは、皺割合が閾値以下の破砕片については高含有グループに属すると判定する。
【0028】
画像処理部14bは、以上の処理を繰り返し行うことで、コンベア10を搬送されるそれぞれの破砕片に対して処理を行い、ID、位置情報、及び、低含有グループと高含有グループの何れに属するかの情報を記憶する。その後、選別制御部14cは、低含有グループと判定した破砕片が選別部15を通過するタイミングで、選別部15に圧縮空気を噴射させる。以上により、添加金属の含有割合に応じて破砕片を選別できる。なお、添加金属の含有割合の指標として皺割合を用いることは一例であり、他の指標を用いてもよい。
【0029】
次に、
図3及び
図4を参照して、破砕片の鮮明な画像を得るための構成について説明する。
【0030】
カメラ12が撮影して得られた画像が不鮮明である場合、破砕片と搬送面10aの境界を明確に特定できない。その結果、破砕片の位置を的確に得ることができない場合がある。更に、画像が不鮮明であることに起因して、破砕片自体を識別できない可能性がある。また、皺割合を算出する際においても、破砕片の面積を算出する処理の精度が低下したり、皺が生じている範囲を特定する処理の精度が低下したりする可能性がある。その結果、破砕片の選別精度が低くなる。
【0031】
本実施形態では、カメラ12から搬送面10aまでの距離は一定であるため、予め焦点距離を調整しておくことにより、破砕片にピントを合わせることができる。その結果、明るさやシャッタースピード等の他の条件を満たすことにより、鮮明な画像を安定して得ることができる。しかし、レンズの温度が変化した場合、レンズが膨張又は収縮するため、レンズの焦点距離が変化する。その結果、破砕片にピントが合わず、鮮明な画像が得られなくなる可能性がある。
【0032】
以上の点を考慮し、本実施形態では、カメラ12のレンズの温度を略一定に保つために、カメラ12を恒温環境に配置している。恒温環境とは、温度が一定の範囲を維持するように構築された環境である。カメラ12を恒温環境に配置することにより、レンズの焦点距離を略一定に保つことができる。これにより、時間の経過に伴う外気温度の変化があったとしても、破砕片にピントを合わせることができるので、鮮明な画像を安定して得ることができる。
【0033】
以下、恒温環境を構築するための部材等について説明する。
図3及び
図4に示すように、識別装置2は、断熱カバー30を備える。断熱カバー30は、断熱材を含んで構成されており、内部に断熱空間が形成されている。本実施形態の断熱カバー30は、底板30aと上板30bと4枚の側板を含む直方体である。また、底板30aには破砕片を撮影するための窓部30cが形成されている。窓部30cは、底板30aを開口させることにより光が透過可能な部分である。底板30aを開口させた部分には、光を透過する部材が配置されていてもよい。窓部30cは細長状であり、窓部30cの長手方向と、カメラ12のライン画像の長手方向と、は一致する。コンベア10の幅方向の両端には支持台11が設けられており、支持台11に断熱カバー30が載せられている。
【0034】
断熱カバー30の形状は一例であり、円筒形であってもよい。また、例えば底板30aを省略してもよい。断熱空間には、カメラ12、ヒータ33、温度センサ34、及び温度調整器35が配置されている。
【0035】
カメラ12は、上板30bに配置されている。カメラ12は、レンズを下方又は斜め下方に向けており、搬送面10aを搬送される破砕片を撮影する。搬送面10a及び破砕片の像を形成するための光は、窓部30cを介して入射され、カメラ12のイメージセンサに入射される。
【0036】
カメラ12は、所定の温度において、予めピント調整が行われている。ピント調整とは、カメラ12が有する複数のレンズの位置等を変更することにより、ピントが合う範囲に、搬送面10a及び搬送面10aに置かれた破砕片の位置を含めることである。本実施形態では、断熱空間をこの所定の温度に維持することを目標としているため、この所定の温度を以下では目標温度と称する。
【0037】
ヒータ33は底板30aに配置されている。具体的には、ヒータ33は、窓部30cの幅方向の外側に配置されている。これにより、窓部30cの長手方向の外側にヒータ33が配置される構成と比較して、断熱カバー30のサイズを低減できる。本実施形態では、ヒータ33は2つ設けられている。また、ヒータ33はカメラ12の視界に入らない場所に配置されている。ただし、ヒータ33は1つであってもよい。また、ヒータ33は底板30aに限られず、上板30b又は側板に配置されていてもよい。
【0038】
ヒータ33は、断熱空間を加熱する。具体的には、ヒータ33は電熱線等の発熱体を有している。ヒータ33には電力が供給されており、供給された電力を発熱体を介して熱に変換する。ヒータ33には、熱を拡散するためのファンが設けられていてもよい。仮にヒータ33がカメラ12の近傍に配置されていた場合、ヒータ33のオンオフ時にカメラ12の周囲の温度が大きく変化し易い。この点、本実施形態では、ヒータ33を底板30aに配置し、カメラ12を上板30bに配置している。これにより、カメラ12の周囲の温度変化を抑えることができる。なお、ヒータ33に代えて、断熱空間を冷却する冷却器を設けてもよい。もしくは、ヒータ33と冷却器を両方設けてもよい。冷却器としては例えばペルチェクーラーを用いることができる。
【0039】
温度センサ34は、断熱空間の温度を検出する。本実施形態ではカメラ12の周囲の温度を略一定に維持することを目的とするため、温度センサ34はカメラ12の近傍に配置されることが好ましい。本実施形態では、温度センサ34は、カメラ12の上端よりも低く、かつ、カメラ12の下端よりも高い位置に配置されている。本実施形態では、温度センサ34は温度調整器35と一体的に構成されているが、別体であってもよい。この場合、温度センサ34をカメラ12に取り付けてもよい。
【0040】
温度調整器35は、ヒータ33が検出した現在温度に基づいてヒータ33の出力を調整する。温度調整器35には予め目標温度が設定されており、温度調整器35は、現在温度と目標温度の大小関係に応じて、ヒータ33に電力を供給する。例えば、温度調整器35は、現在温度が目標温度よりも低い場合は、電力をヒータ33に供給する。現在温度が目標温度以上である場合は、電力をヒータ33に供給しない。なお、現在温度と目標温度の差の大きさに応じて、ヒータ33に供給する電力の大きさを変更してもよい。また、本実施形態の温度調整器35は断熱空間内、詳細には側板に配置されている。これに代えて、断熱空間の外側に温度調整器35を配置してもよい。
【0041】
なお、断熱空間には、例えば調湿材又は照明器を設けてもよい。
【0042】
以上の構成により、外気温度の変化又は他の要因等で選別装置1が設置される環境の温度が変化した場合であっても、カメラ12の周囲の温度を目標温度に近い温度に保つことができる。その結果、カメラ12の焦点距離が略一定である。一方で、カメラ12は、温度調整器35に設定した目標温度における環境下において、予めピント調整が行われている。従って、鮮明な画像を安定して得ることができる。鮮明な画像を用いて判定を行うことができるため、破砕片と搬送面10aを的確に区別することができる。また、破砕片の輪郭を的確に特定したり、破砕片と搬送面10aの境界を的確に特定したりすることができる。そのため、破砕片の面積を的確に特定できる。更に、皺が生じている範囲を的確に特定できる。以上により、破砕片の添加金属の含有割合について高い判定精度を実現できる。
【0043】
次に、
図5及び
図6を参照して、本実施形態の効果を確かめるための実験について説明する。
【0044】
この実験では、恒温環境にカメラ12を配置した本実施形態の選別装置1と、恒温環境を設けていない比較例の選別装置と、を用いて破砕片の選別を行った。比較例の選別装置には、断熱カバー30、ヒータ33、及び温度センサ34等が設けられていない。そして、時刻毎に10分間選別率を記録した。10分間選別率とは、10分間に低含有グループに選別された破砕片の割合である。選別装置1に供給される破砕片の種類が同様であると仮定すると、10分間選別率が大きく変化することは考えにくい。
【0045】
しかし、
図5に示すように、比較例では10分間選別率が大きく変化する。特にレンズ温度が低い時間帯において、10分間選別率が大幅に低くなる。この点、本実施形態では、
図6に示すように、10分間選別率が略同じ値を取っている。本実施形態では恒温環境にカメラ12を配置しているため、レンズ温度は目標温度で略一定である。以上により、恒温環境にカメラ12を配置することで、10分間選別率を安定させることができることが確かめられた。
【0046】
以上に説明したように、本実施形態の識別装置2は、以下の特徴1を有する。即ち、識別装置2は、コンベア10と、カメラ12と、画像処理部14bと、を備える。コンベア10は、対象物を置くための搬送面10aを有しており、対象物を搬送する。カメラ12は、恒温環境に配置されており、コンベア10によって搬送される対象物を撮影する。画像処理部14bは、カメラ12が対象物を撮影することで得られた画像を解析して、搬送面10a上の対象物を識別する。
【0047】
これにより、カメラ12が恒温環境に配置されるため、カメラ12の焦点距離が変化しにくいので、鮮明な画像を安定して得ることができる。その結果、対象物の識別精度を高くすることができる。
【0048】
本実施形態の識別装置2は、以下の特徴2を有する。即ち、識別装置2は、断熱材を含んで構成されており、内部に断熱空間が形成される断熱カバー30を備える。断熱空間にカメラ12が配置される。
【0049】
これにより、外気温度がカメラ12に与える影響を軽減できる。
【0050】
本実施形態の識別装置2は、以下の特徴3を有する。即ち、識別装置2は、ヒータ33と、温度センサ34と、温度調整器35と、を備える。ヒータ33は、断熱空間に配置される。温度センサ34は、断熱空間に配置される。温度調整器35は、温度センサ34が検出した温度に基づいて、ヒータ33の出力を調整することにより、断熱空間を目標温度に近づける。
【0051】
これにより、断熱空間の温度と目標温度に基づいてヒータ33の出力が調整されるので、断熱空間の温度を精度良く目標温度に近づけることができる。
【0052】
本実施形態の識別装置2は、以下の特徴4を有する。即ち、温度センサ34は、カメラ12の上端よりも低く、カメラ12の下端よりも高い位置に配置される。
【0053】
これにより、温度センサ34とカメラ12の高さを揃えることにより、温度センサ34は、カメラ12の周囲の温度に近い温度を検出することができる。従って、カメラ12の周囲の温度を目標温度に近づけることができる。
【0054】
本実施形態の識別装置2において、以下の特徴5を有する。即ち、カメラ12はラインカメラである。断熱カバー30の底板30aには、カメラ12が対象物を撮影するための細長状の窓部30cが形成されている。ヒータ33は、断熱カバー30の底板30aのうち窓部30cの幅方向の外側に配置されている。
【0055】
これにより、窓部30cの長手方向の外側にヒータ33が配置される構成と比較して、断熱カバー30のサイズを小さくすることができる。
【0056】
上述した特徴1から特徴5は矛盾が生じない限り、適宜組み合わせることができる。例えば、特徴3には、特徴1,2の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴4には、特徴1から3の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴5には、特徴1から4の少なくとも1つを組み合わせることができる。
【0057】
以上に本出願の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0058】
カメラ12を配置するための恒温環境を実現する方法は様々である。例えば、断熱性が高い材料で断熱カバー30を構成し、カメラ12自体の発熱が問題とならない場合は、ヒータ33、温度センサ34、及び温度調整器35を省略することができる。また、カメラ12からコンベア10までの空間を断熱カバー30で覆う構成に代えて、主としてカメラ12のみが断熱カバーで覆われていてもよい。
【0059】
上記実施形態で示したフローチャートは一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。
【0060】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するように構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、又は手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであっても良いし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウェアであっても良い。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、又はユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0061】
1 選別装置
2 識別装置
10 コンベア
12 カメラ
14 処理装置
14a 搬送制御部
14b 画像処理部
14c 選別制御部
30 断熱カバー
33 ヒータ
34 温度センサ
35 温度調整器