(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063956
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】流体バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 51/00 20060101AFI20240507BHJP
F16K 3/24 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
F16K51/00 A
F16K3/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172167
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】狩野 拓広
(72)【発明者】
【氏名】青木 祐二
【テーマコード(参考)】
3H053
3H066
【Fターム(参考)】
3H053AA35
3H053BA11
3H066AA04
3H066BA38
(57)【要約】
【課題】部品点数を低減でき、生産管理を容易化できる流体バルブを提供する。
【解決手段】実施形態のタイマーバルブ1は、ドレンポート9に通じるスプール孔5、作動油が供給される供給ポート6、及び作動油が排出される排出ポート7を有するハウジング2と、スプール孔5に移動自在に設けられたスプール3と、を備える。スプール3は、外周面3aに形成されるとともに、供給ポート6と排出ポート7とを通じさせる第1接続凹部15と、第1接続凹部15とドレンポート9とを通じさせる連絡路30と、を有する。連絡路30の途中で、かつスプール孔5とスプール3の外周面3aとの間に、ドレンポート9への異物の侵入を防止するためのフィルタ25を形成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレンポートに通じるスプール孔、作動流体が供給される供給ポート、及び前記作動流体が排出される排出ポートを有するハウジングと、
前記スプール孔に移動自在に設けられたスプールと、
を備え、
前記スプールは、
外周面に形成されるとともに、前記供給ポートと前記排出ポートとを通じさせる接続凹部と、
前記接続凹部と前記ドレンポートとを通じさせる連絡路と、
を有し、
前記連絡路の途中で、かつ前記スプール孔と前記スプールの前記外周面との間に、前記ドレンポートへの異物の侵入を防止するためのフィルタを形成した、
流体バルブ。
【請求項2】
前記フィルタは、前記スプール孔と前記スプールの前記外周面との間に形成された微小隙間であり、
前記微小隙間の径方向の幅は、所望の大きさの異物が通過不能な大きさである、
請求項1に記載の流体バルブ。
【請求項3】
前記微小隙間の径方向の幅は、前記スプール孔の内径を大きく形成、又は前記スプールの前記外周面の外径を小さく形成することにより、前記微小隙間以外の前記スプール孔と前記スプールの前記外周面との間の径方向の幅よりも大きい、
請求項2に記載の流体バルブ。
【請求項4】
前記微小隙間を形成する前記スプール孔の内周面、及び前記スプール孔の前記外周面の少なくともいずれか一方は、前記微小隙間の径方向の幅が前記ドレンポートに向かうに従って漸次小さくなるように、軸方向に対して傾斜している、
請求項3に記載の流体バルブ。
【請求項5】
前記連絡路は、
前記スプールの軸心に形成されるとともに、前記接続凹部に通じる流体導入室と、
前記スプールの前記外周面のうち、前記接続凹部よりも前記ドレンポート側に形成されるとともに、前記流体導入室に通じる排出凹部と、
を有し、
前記排出凹部と前記スプールの前記ドレンポート側の端部との間に、前記フィルタが形成されている、
請求項1に記載の流体バルブ。
【請求項6】
前記連絡路は、
前記スプールの軸線で、かつ前記ドレンポート側の端部に形成された排出室と、
前記スプールの前記外周面のうち、前記排出凹部よりも前記ドレンポート側に形成されるとともに、前記排出室に通じる導入凹部と、
有し、
前記排出凹部と前記導入凹部との間に、前記フィルタが形成されている、
請求項5に記載の流体バルブ。
【請求項7】
前記排出室に、前記排出室から前記ドレンポートへの作動流体の排出量を制限する絞りを設けた、
請求項6に記載の流体バルブ。
【請求項8】
前記スプール孔のうち、前記ドレンポートと前記スプールとの間に設けられるとともに、前記スプールを前記ドレンポートとは反対側に付勢する弾性部材を備え、
前記スプールは、前記外周面のうち、前記接続凹部よりも前記ドレンポートとは反対側に形成された他の接続凹部を有し、
前記他の接続凹部と前記流体導入室とは遮断されている、
請求項5に記載の流体バルブ。
【請求項9】
ドレンポートに通じるスプール孔、作動流体が供給される供給ポート、及び前記作動流体が排出される排出ポートを有するハウジングと、
前記スプール孔に移動自在に設けられたスプールと、
前記スプール孔のうち、前記ドレンポートと前記スプールとの間に設けられ、前記スプールを前記ドレンポートとは反対側に付勢する弾性部材と、
を備え、
前記スプールは、
前記スプールの外周面に形成されるとともに、前記供給ポートと前記排出ポートとを通じさせる接続凹部と、
前記スプールの前記外周面のうち、前記接続凹部よりも前記ドレンポートとは反対側に形成されるとともに、前記供給ポートと前記排出ポートとを通じさせる他の接続凹部と、
前記スプールの軸心に形成されるとともに、前記接続凹部に通じる流体導入室と、
前記スプールの前記外周面のうち、前記接続凹部をよりも前記ドレンポート側に形成されるとともに、前記流体導入室に通じる排出凹部と、
を有し、
前記排出凹部と前記スプールの前記ドレンポート側の端部との間に、前記ドレンポートへの異物の侵入を防止するためのフィルタが形成されており、
前記フィルタは、前記スプール孔と前記スプールの前記外周面との間に形成された微小隙間であり、
前記微小隙間の径方向の幅は、所望の大きさの異物が通過不能な大きさである、
流体バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
流体バルブの中の例えば油圧バルブ(制御弁)は、油圧ショベル等の建設機械に用いられる。建設機械は、アームや旋回体を駆動させるための油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータに作動油を供給するための油圧ポンプと、油圧アクチュエータと油圧ポンプとを連結する油圧回路と、を備える。油圧アクチュエータとしては、例えば油圧シリンダや油圧モータ等がある。油圧回路に、複数の油圧バルブが用いられる。
【0003】
油圧バルブは、油圧アクチュエータへの作動油の供給を制御する。具体的には、油圧バルブに設けられたスプールを駆動させることにより、油圧アクチュエータへの作動油の供給が制御される。油圧回路は、油圧アクチュエータや油圧バルブへの異物への侵入を防止するためにフィルタを備えている。油圧アクチュエータや油圧バルブには、フィルタによって濾過された作動油が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術では、作動油を濾過するためのフィルタが別途必要になるので油圧回路全体として部品点数が増加し、生産管理が煩わしくなるという課題があった。
【0006】
本発明は、部品点数を低減でき、生産管理を容易化できる流体バルブを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る流体バルブは、ドレンポートに通じるスプール孔、作動流体が供給される供給ポート、及び前記作動流体が排出される排出ポートを有するハウジングと、前記スプール孔に移動自在に設けられたスプールと、を備え、前記スプールは、外周面に形成されるとともに、前記供給ポートと前記排出ポートとを通じさせる接続凹部と、前記接続凹部と前記ドレンポートとを通じさせる連絡路と、を有し、前記連絡路の途中で、かつ前記スプール孔と前記スプールの前記外周面との間に、前記ドレンポートへの異物の侵入を防止するためのフィルタを形成した。
【0008】
このように構成することで、フィルタを別途設けることなく、フィルタを廃止できる。このため、部品点数を低減でき、生産管理を容易化できる。
【0009】
上記構成で、前記フィルタは、前記スプール孔と前記スプールの前記外周面との間に形成された微小隙間であり、前記微小隙間の径方向の幅は、所望の大きさの異物が通過不能な大きさであってもよい。
【0010】
上記構成で、前記微小隙間の径方向の幅は、前記スプール孔の内径を大きく形成、又は前記スプールの前記外周面の外径を小さく形成することにより、前記微小隙間以外の前記スプール孔と前記スプールの前記外周面との間の径方向の幅よりも大きくてもよい。
【0011】
上記構成で、前記微小隙間を形成する前記スプール孔の内周面、及び前記スプール孔の前記外周面の少なくともいずれか一方は、前記微小隙間の径方向の幅が前記ドレンポートに向かうに従って漸次小さくなるように、軸方向に対して傾斜してもよい。
【0012】
上記構成で、前記連絡路は、前記スプールの軸心に形成されるとともに、前記接続凹部に通じる流体導入室と、前記スプールの前記外周面のうち、前記接続凹部よりも前記ドレンポート側に形成されるとともに、前記流体導入室に通じる排出凹部と、を有し、前記排出凹部と前記スプールの前記ドレンポート側の端部との間に、前記フィルタが形成されてもよい。
【0013】
上記構成で、前記連絡路は、前記スプールの軸線で、かつ前記ドレンポート側の端部に形成された排出室と、前記スプールの前記外周面のうち、前記排出凹部よりも前記ドレンポート側に形成されるとともに、前記排出室に通じる導入凹部と、有し、前記排出凹部と前記導入凹部との間に、前記フィルタが形成されてもよい。
【0014】
上記構成で、前記排出室に、前記排出室から前記ドレンポートへの作動流体の排出量を制限する絞りを設けてもよい。
【0015】
上記構成で、前記スプール孔のうち、前記ドレンポートと前記スプールとの間に設けられるとともに、前記スプールを前記ドレンポートとは反対側に付勢する弾性部材を備え、前記スプールは、前記外周面のうち、前記接続凹部よりも前記ドレンポートとは反対側に形成された他の接続凹部を有し、前記他の接続凹部と前記流体導入室とは遮断されてもよい。
【0016】
本発明の他の態様に係る流体バルブは、ドレンポートに通じるスプール孔、作動流体が供給される供給ポート、及び前記作動流体が排出される排出ポートを有するハウジングと、前記スプール孔に移動自在に設けられたスプールと、前記スプール孔のうち、前記ドレンポートと前記スプールとの間に設けられ、前記スプールを前記ドレンポートとは反対側に付勢する弾性部材と、を備え、前記スプールは、前記スプールの外周面に形成されるとともに、前記供給ポートと前記排出ポートとを通じさせる接続凹部と、前記スプールの前記外周面のうち、前記接続凹部よりも前記ドレンポートとは反対側に形成されるとともに、前記供給ポートと前記排出ポートとを通じさせる他の接続凹部と、前記スプールの軸心に形成されるとともに、前記接続凹部に通じる流体導入室と、前記スプールの前記外周面のうち、前記接続凹部をよりも前記ドレンポート側に形成されるとともに、前記流体導入室に通じる排出凹部と、を有し、前記排出凹部と前記スプールの前記ドレンポート側の端部との間に、前記ドレンポートへの異物の侵入を防止するためのフィルタが形成されており、前記フィルタは、前記スプール孔と前記スプールの前記外周面との間に形成された微小隙間であり、前記微小隙間の径方向の幅は、所望の大きさの異物が通過不能な大きさである。
【0017】
このように構成することで、例えば建設機械等に流体バルブを用いた場合、大きな慣性負荷が発生する油圧アクチュエータに設けられたブレーキ装置に用いるタイマーバルブとして流体バルブを使用できる。タイマーバルブのフィルタを廃止することができる。このため、タイマーバルブの部品点数を低減でき、生産管理を容易化できる。
【発明の効果】
【0018】
上述の流体バルブは、部品点数を低減でき、生産管理を容易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態におけるタイマーバルブの概略構成図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるタイマーバルブの動作説明図である。
【
図4】本発明の第1変形例におけるタイマーバルブの概略構成図である。
【
図5】本発明の第2変形例におけるタイマーバルブの概略構成図である。
【
図6】本発明の第3変形例におけるタイマーバルブの概略構成図である。
【
図7】本発明の第4変形例におけるタイマーバルブの概略構成図である。
【
図8】本発明の第5変形例におけるタイマーバルブの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
<タイマーバルブ>
図1は、タイマーバルブ1の概略構成図である。以下の図では説明を分かりやすくするために適宜縮尺を変更している。
タイマーバルブ1は、例えば図示しない油圧ショベル等の建設機械に用いられる。タイマーバルブ1は、建設機械に設けられたメカニカルブレーキ14について、作業者による操作タイミングに対し、実際の作動タイミング(ブレーキ力を発生するタイミング)を遅らせる。
【0022】
メカニカルブレーキ14は、建設機械に設けられた走行駆動用や旋回体の回転駆動用としての油圧モータ等の図示しない油圧アクチュエータにブレーキ力を発生する。メカニカルブレーキ14は、例えば常時ばねの付勢力によってブレーキ力を発生している。メカニカルブレーキ14に作動油を供給することによって、ブレーキ力が解除される。
タイマーバルブ1は、油圧アクチュエータへの作動油の供給を停止しても大きな慣性力により油圧アクチュエータをしばらくの間動作させる。
【0023】
図1に示すように、タイマーバルブ1は、ハウジング2と、ハウジング2内に設けられたスプール3、及びコイルスプリング4と、を備える。
ハウジング2には、スプール3及びコイルスプリング4が収容されるスプール孔5と、作動油(作動流体)が供給される供給ポート6と、作動油が排出される排出ポート7と、が形成されている。
【0024】
ハウジング2には、スプール孔5の第1方向(
図1の左方)側に連なるドレン室8が形成されている。ドレン室8は、スプール孔5と同軸上に配置されている。ドレン室8は、段差部8a(
図2参照)を介してスプール孔5よりも内径が若干大きくなるように形成されている。ドレン室8の第1方向の端部には、ドレンポート9が形成されている。ドレン室8は、ドレンポート9を介してタンク10に接続されている。
スプール孔5の第1方向とは反対側(ドレンポート9とは反対側)の第2方向(
図1の右方)は、プラグ11によって閉塞されている。
【0025】
供給ポート6は、スプール孔5の軸方向と直交する方向を軸方向とするように形成されている。供給ポート6は、スプール孔5に連なっている。供給ポート6は、建設機械の作業者が操作する操作部12に接続されている。操作部12は、油圧ポンプ13に接続されている。油圧ポンプ13は、例えば操作部12から作動油の圧力(パイロット圧)を発生させるために用いられる。供給ポート6に供給される作動油には、操作部12の操作に基づく圧力が作用されている。
【0026】
排出ポート7は、スプール孔5を挟んで反対側に形成されている。排出ポート7は、スプール孔5に連なっている。排出ポート7のスプール孔5側は、供給ポート6と同軸上に配置されている。排出ポート7のスプール孔5とは反対側は、建設機械に設けられたメカニカルブレーキ14に接続されている。
【0027】
スプール3は、スプール孔5にスライド移動自在に収納されている。スプール3の外径は、スプール孔5の内径よりも若干小さい程度である。スプール3の外周面3aには、2つの接続凹部15,16(第1接続凹部15、第2接続凹部16)が形成されている。2つの接続凹部15,16のうちの第1接続凹部15は、請求項における接続凹部の一例である。2つの接続凹部15,16のうちの第2接続凹部16は、請求項における他の接続凹部の一例である。各接続凹部15,16は、スプール3の外周面3aの全体に渡って環状に形成されている。
【0028】
2つの接続凹部15,16のうち、第1接続凹部15は、スプール3の軸方向中央に配置されている。2つの接続凹部15,16のうち、第2接続凹部16は、第1接続凹部15よりも第2方向側(ドレンポート9やドレン室8とは反対側)に配置されている。2つの接続凹部15,16の間に第1ランド19が形成される。
【0029】
スプール3には、第1接続凹部15とドレンポート9(ドレン室8)とを通じさせる連絡路30が形成されている。連絡路30は、スプール3の軸心に形成された作動油導入室18と、スプール3の外周面3aに形成された排出凹部17及び流路23と、を主構成としている。
作動油導入室18は、スプール3の第2方向側の端部3bから排出凹部17が形成されている箇所よりも若干第1方向寄りに至る間に形成されている。すなわち、作動油導入室18は、スプール3の第2方向側の端部3bで開口されている。
【0030】
排出凹部17は、スプール3の外周面3aの全体に渡って環状に形成されている。排出凹部17は、スプール3の第1方向寄り(ドレンポート9寄り)に配置されている。第1接続凹部15と排出凹部17との間に第2ランド20が形成される。
【0031】
スプール3には、第1接続凹部15と作動油導入室18とを接続する2つの接続路21が形成されている。2つの接続路21は、スプール3の軸方向と直交する方向を軸方向とするように形成されている。2つの接続路21は、作動油導入室18を挟んで両側に配置されているとともに、同軸上に配置されている。
【0032】
スプール3には、第2接続凹部16と作動油導入室18とを接続する接続路が形成されていない。すなわち、第2接続凹部16と作動油導入室18とは遮断されている。
スプール3には、排出凹部17と作動油導入室18とを接続する4つの排出路22が形成されている。4つの排出路22は、スプール3の軸方向と直交する方向を軸方向とするように形成されている。4つの排出路22は、スプール3の周方向に等間隔で配置されている。
【0033】
図2は、
図1のII部拡大図である。
図1、
図2に示すように、流路23は、排出凹部17とスプール3の第1方向側の端部3cとの間に形成されている。スプール3の排出凹部17から第1方向側の端部3cに至る間には、縮径部24が形成されている。縮径部24の外径は、この縮径部24以外の外径よりも僅かに小さい。縮径部24の外周面24aとスプール孔5の内周面5aとの間が流路23である。流路23は、環状に形成されている。
【0034】
流路23の径方向の微小隙間Gの径方向の幅、つまり、縮径部24の外周面24aとスプール孔5の内周面5aとの微小隙間Gの大きさは、例えば200μmのフィルタの隙間と同程度の大きさである。すなわち、流路23は、連絡路30を通過する作動油を濾過するフィルタ25として機能している。換言すれば、流路23は、ドレンポート9への異物の侵入を防止するためのフィルタ25として機能している。同時に、流路23は、排出凹部17からドレンポート9へと流れる作動油の流量を制限するオリフィス(絞り)26として機能している(詳細は後述する)。
【0035】
ドレン室8には、コイルスプリング4が僅かに圧縮された状態で収納されている。コイルスプリング4のばね力によって、スプール3が第2方向に付勢されている。タイマーバルブ1の無負荷時には、コイルスプリング4によって、プラグ11にスプール3の第2方向側の端部3bが突き当たっている。無負荷時とは、作動油導入室18に作動油の圧力が作用していない時をいう(詳細は後述する)。
【0036】
この状態では、ハウジング2の供給ポート6及び排出ポート7と、スプール3の第1接続凹部15とが径方向で重なっている。つまり、供給ポート6及び排出ポート7と第1接続凹部15とが通じている。第1接続凹部15は、スプール3の外周面3aの全体に渡って環状に形成されているので、第1接続凹部15を介して供給ポート6と排出ポート7とが接続されている。
【0037】
<タイマーバルブの動作>
次に、タイマーバルブ1の動作について説明する。
図1に示すように、タイマーバルブ1に作動油が供給されていない場合(無負荷時の場合)、メカニカルブレーキ14によって図示しない油圧アクチュエータにブレーキ力が発生している。この状態から操作部12の操作によって供給ポート6に作動油が供給されると、第1接続凹部15を介して排出ポート7へと作動油が供給される。さらに、メカニカルブレーキ14へと作動油が供給される。すると、メカニカルブレーキ14は、作動油の圧力によってブレーキ力を解除する。
【0038】
図3は、タイマーバルブ1の動作説明図である。
図3は、
図1に対応している。
図1、
図3に示すように、供給ポート6に供給された作動油は、第1接続凹部15及び接続路21を介して作動油導入室18にも供給される(
図1における矢印Y1参照)。すると、作動油導入室18の圧力が高まる。作動油導入室18は、スプール3の第2方向側の端部3bで開口されている。このため、圧力が高まることによってコイルスプリング4のばね力に抗してスプール3が第1方向にスライド移動する(
図3における矢印Y2参照)。
【0039】
すると、第2接続凹部16を介して供給ポート6と排出ポート7とが接続される。このとき、第2接続凹部16と作動油導入室18とは遮断されているので、作動油導入室18に作動油は供給されない。一方、排出ポート7を介してメカニカルブレーキ14への作動油の供給は継続され、メカニカルブレーキ14のブレーキ解除は維持される。
【0040】
作動油導入室18に供給された作動油は、排出路22及び排出凹部17にも流入され、さらに流路23を通過してドレン室8に流入される(
図3における矢印Y3参照)。そして、ドレン室8に流入された作動油は、ドレンポート9を介してタンク10に還流される。作動油導入室18の作動油が還流されることにより、作動油導入室18の圧力が低下する。
【0041】
すると、コイルスプリング4のばね力が作動油導入室18の圧力に打ち勝って再びスプール3が第2方向にスライド移動する。これにより、再び第1接続凹部15と供給ポート6及び排出ポート7とが接続され、作動油導入室18に作動油が供給される。
流路23は、オリフィス26として機能しているので、作動油導入室18からドレン室8へと流れる作動油の流量は制限される。流路23は、フィルタ25としても機能している。このため、流路23によって異物の通過が阻害され、作動油導入室18からドレン室8へと流れる作動油が濾過される。
【0042】
このように、供給ポート6から作動油が供給されている間、作動油導入室18からタンク10に還流される作動油と作動油導入室18に供給される作動油とのバランスにより、スプール3は、所定位置での姿勢を保つ。この所定位置とは、おおよそ供給ポート6及び排出ポート7と同軸上に第1ランド19が配置された位置である。
【0043】
再びメカニカルブレーキ14のブレーキ力を発生させる場合、操作部12の操作によって供給ポート6への作動油の供給が停止される。この時点では、直ちにメカニカルブレーキ14のブレーキ力が発生されない。すなわち、供給ポート6への作動油の供給が停止されると、スプール3の作動油導入室18には作動油が供給されない。このため、作動油導入室18内の作動油は、排出路22、排出凹部17、及び流路23を介して徐々にドレン室8へと排出される。
【0044】
そして、第1接続凹部15と供給ポート6及び排出ポート7とが接続される。すると、メカニカルブレーキ14内の作動油が作動油導入室18に逆流する。メカニカルブレーキ14内の作動油も作動油導入室18、排出路22、排出凹部17、及び流路23を介して徐々にドレン室8へと排出される。これにより、メカニカルブレーキ14に作動油の圧力が作用しなくなり、再びメカニカルブレーキ14のブレーキ力が発生する。このように、タイマーバルブ1は、操作部12の操作タイミングに対し、実際にメカニカルブレーキ14のブレーキ力が発生するタイミングを遅らせる。
【0045】
このように上述の実施形態では、タイマーバルブ1に形成された連絡路30の途中にフィルタ25として機能する流路23を形成した。このため、タンク10へ還流される作動油を濾過するフィルタを別途設けることなく、フィルタを廃止できる。よって、タイマーバルブ1の部品点数を低減でき、生産管理を容易化できる。
【0046】
流路23を微小隙間Gとし、スプール3の外周面3aとスプール孔5の内周面5aとの間に流路23を流れる作動油内の異物を引っ掛けさせることができる。このため、スプール3の外周面3aとスプール孔5の内周面5aとの間(流路23)に、確実にフィルタ25の機能を持たせることができる。
流路23を形成するために、スプール3の排出凹部17から第1方向側の端部3cに至る間に、この間の箇所以外の外径よりも外径が僅かに小さい縮径部24を形成した。このような簡素な構造でフィルタ25として機能する微小隙間Gを形成できる。
【0047】
上述の実施形態では、縮径部24の外周面24aとスプール孔5の内周面5aとの微小隙間Gの径方向の幅は、例えば200μmのフィルタの隙間と同程度の大きさである場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、微小隙間Gの幅は所望の大きさの異物が通過不能な大きさであればよい。
【0048】
[第1変形例]
図4は、第1変形例におけるタイマーバルブ1の概略構成図である。
図4は、前述の
図1に対応している(以下の変形例も同様)。
上述の実施形態では、流路23を形成するために、スプール3の排出凹部17から第1方向側の端部3cに至る間に、この間の箇所以外の外径よりも外径が僅かに小さい縮径部24を形成した場合について説明した。
【0049】
しかしながらこれに限られるものではなく、
図4に示すように、スプール孔5の第1方向側に、他の箇所よりも内径が僅かに大きい拡径部27を形成してもよい。拡径部27の内周面27aとスプール3の外周面3aとの間に、流路23を形成してもよい。拡径部27は、スプール3の移動範囲に応じて形成する。
このように構成した場合であっても簡素な構造でフィルタ25として機能する微小隙間Gを形成できる。
【0050】
[第2変形例]
図5は、第2変形例におけるタイマーバルブ1の概略構成図である。
図5に示すように、スプール3に形成された縮径部24は、第1方向に向かうに従って漸次外径が大きくなるように傾斜形成してもよい。これにより、流路23を形成する微小隙間Gの径方向の幅は、第1方向(ドレンポート9)に向かうに従って漸次小さくなる。
【0051】
このように構成することで、異物の大きさに応じてフィルタ25(流路23)では異物が引っ掛かる場所が変化する。つまり、さまざまな大きさの異物が流路23中の同一箇所に集中して引っ掛かってしまうことを防止できる。このため、異物によって流路23が詰まってしまうことを防止できる。
【0052】
本第2変形例では、スプール3の縮径部24を傾斜形成する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、スプール孔5の内周面5aのうち、流路23に対応する箇所を傾斜形成し、流路23を形成する微小隙間Gの径方向の幅が、第1方向(ドレンポート9)に向かうに従って漸次小さくなるようにしてもよい。縮径部24とスプール孔5の内周面5aとのいずれも傾斜形成してもよい。
【0053】
本第2変形例での傾斜とは、平坦な斜め形状に限られるものではない。流路23を形成する微小隙間Gの径方向の幅が、第1方向(ドレンポート9)に向かうに従って漸次小さくなればよい。例えばスプール3の縮径部24やスプール孔5の内周面5aを湾曲するように形成してもよい。
【0054】
[第3変形例]
図6は、第3変形例におけるタイマーバルブ1の概略構成図である。
上述の実施形態では、スプール3に排出凹部17及び排出路22を形成し、スプール3の外周面3aのうち、排出凹部17とスプール3の第1方向側の端部3cとの間に流路23(フィルタ25、オリフィス26)を形成した場合について説明した(
図1、
図2参照)。しかしながらこれに限られるものではなく、
図6に示すように、スプール3に排出凹部17及び排出路22を形成しなくてもよい。
【0055】
この場合、第1接続凹部15を実施形態と比較して第1方向側へと延ばして形成する。第1接続凹部15と第1方向側の端部3cとの間を、流路23(フィルタ25、オリフィス26)とする。
このように構成した場合であっても、前述の実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、排出凹部17及び排出路22を形成する必要がなく、作動油導入室18の長さも短くできる。このため、タイマーバルブ1の製造コストを低減できる。
【0056】
[第4変形例]
図7は、第4変形例におけるタイマーバルブ1の概略構成図である。
図7に示すように、連絡路30は、スプール3における第1方向側の端部3cに形成された排出室31と、排出室31に通じる導入凹部32(導入路33)と、を有していてもよい。
排出室31は、作動油導入室18と同軸上に形成されている。排出室31は、作動油導入室18と通じないように形成されている。
【0057】
導入凹部32は、スプール3の外周面3aの全体に渡って環状に形成されている。排出凹部17は、排出室31の作動油導入室18寄りとスプール3の径方向で重なる位置に配置されている。
スプール3には、導入凹部32と排出室31とを接続する4つの導入路33が形成されている。4つの導入路33は、スプール3の軸方向と直交する方向を軸方向とするように形成されている。4つの導入路33は、スプール3の周方向に等間隔で配置されている。流路23(フィルタ25、オリフィス26)は、導入凹部32と排出凹部17との間に形成されている。
【0058】
このような構成のもと、流路23に流入された作動油は、導入凹部32及び導入路33を介して排出室31へ排出される(
図7における矢印Y4参照)。さらに、作動油は、排出室31からドレン室8及びドレンポート9を介してタンク10に還流される。
【0059】
したがって上述の第4変形例によれば、前述の実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、排出室31及び導入凹部32(導入路33)を形成することにより、流路23をスプール3における第1方向側の端部3cから第2方向側へとずらす(オフセットする)ことができる。すなわち、スプール3における第1方向側の端部3cに流路23を形成する必要がなくなる。この結果、例えば、スプール孔5にスプール3を挿入する際、ハウジング2にスプール3の端部3cの周縁が衝突してこの周縁を損傷してしまう可能性がなくなる。この周縁が損傷してしまうと、微小隙間Gによるフィルタ25の機能が損なわれる可能性がある。このため、第4変形例によれば、流路23(微小隙間G)によって確実にフィルタ25やオリフィス26の機能を満足させることができる。
【0060】
[第5変形例]
図8は、第5変形例におけるタイマーバルブ1の概略構成図である。
図8に示すように、上述の第4変形例における排出室31に、オリフィス34を設けてもよい。
このように構成することで、流路23にフィルタ25の機能のみを持たせ、フィルタ25の機能とオリフィス34とを別々にできる。上述の実施形態にように流路23にフィルタ25とオリフィス26との両方の機能を持たせようとすると、それぞれの要求を満足することが難しくなる場合が考えられる。しかしながら第5変形例のように構成することで、流路23のフィルタ25の機能をより適正にできる。また、作動油導入室18からドレンポート9へと排出される作動油の流量もより適正にできる。
【0061】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、タイマーバルブ1にフィルタ25やオリフィス26として機能する流路23を形成した場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、タイマーバルブ1以外のさまざまなバルブ(制御弁)にフィルタ25やオリフィス26として機能する流路23を形成することが可能である。
【0062】
上述の実施形態では、タイマーバルブ1は、例えば油圧ショベル等の建設機械に用いられる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな建設機械に上述のタイマーバルブ1を用いることができる。
上述の実施形態では、流体バルブとして作動油を用いたタイマーバルブ1について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、流体バルブとして流体を用いたさまざまなバルブに上述の構成を採用できる。流体は、作動油に限られるものではなく、さまざまな液体や気体であってもよい。
【0063】
上述の実施形態では、スプール3そのものに縮径部24を形成したり、スプール孔5そのものに拡径部27を形成したりする場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、スプール3の縮径部24やスプール孔5の拡径部27を大きく形成し、管状のブッシュを嵌め込んでもよい。ブッシュの外周面や内周面を精度よく加工することにより、流路23における微小隙間Gの径方向の幅を、容易、かつ高精度に管理することが可能になる。
【0064】
上述の実施形態では、スプール3を第2方向に付勢する弾性部材として、コイルスプリング4を設けた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、弾性部材は、スプール3を第2方向に付勢できればよい。例えば、弾性部材としてコイルスプリング4に代わってゴム等を設けてもよい。ゴムによってドレン室8が閉塞されないように、ゴムを形成すればよい。
【0065】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0066】
1…タイマーバルブ
2…ハウジング
3…スプール
3a…外周面
4…コイルスプリング(弾性部材)
5…スプール孔
5a…内周面
6…供給ポート
7…排出ポート
8…ドレン室(ドレンポート)
9…ドレンポート
15…第1接続凹部(接続凹部)
16…第2接続凹部(他の接続凹部)
17…排出凹部
18…作動油導入室(流体導入室)
25…フィルタ
30…連絡路
31…排出室
32…導入凹部
34…オリフィス(絞り)
G…微小隙間