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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063961
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/80 20180101AFI20240507BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B60N2/80
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172178
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000219668
【氏名又は名称】東海化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 雅士
(72)【発明者】
【氏名】加納 勇毅
(72)【発明者】
【氏名】金 俊
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DD02
3B087DC05
(57)【要約】
【課題】内蔵物の形状に関わらずパッド同士のずれを抑制できるヘッドレストを提供する。
【解決手段】ヘッドレストは、内蔵物(ヘッドレストステー5)を覆うヘッドレストパッド11と、該ヘッドレストパッド11に被せられるヘッドレストカバーと、を有する。ヘッドレストパッド11は、内蔵物(ヘッドレストステー5)を前後に挟み込むように合わされる前パッド部1及び後パッド部2と、前パッド部1と後パッド部2との合わせ面に形成され、前パッド部1と後パッド部2との合わせに伴い互いに前後に嵌合されて前パッド部1と後パッド部2との合わせ方向とは交差する方向の相対移動を規制する凹凸嵌合部3と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵物を覆うヘッドレストパッドと、該ヘッドレストパッドに被せられるヘッドレストカバーと、を有するヘッドレストであって、
前記ヘッドレストパッドが、前記内蔵物を前後に挟み込むように合わされる前パッド部及び後パッド部と、前記前パッド部と前記後パッド部との合わせ面に形成され、前記前パッド部と前記後パッド部との合わせに伴い互いに前後に嵌合されて前記前パッド部と前記後パッド部との合わせ方向とは交差する方向の相対移動を規制する凹凸嵌合部と、を有するヘッドレスト。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドレストであって、
前記内蔵物が、高さ方向に延びる幅方向一対のステー脚部と、一対の前記ステー脚部の間をシームレスに繋ぐステー繋ぎ部と、を備えるヘッドレストステーとされ、
前記合わせ面に形成され、一対の前記ステー脚部を幅方向に挟み込むように嵌合させることが可能な凹状のステー嵌合溝を更に有するヘッドレスト。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のヘッドレストであって、
前記凹凸嵌合部が、前記前パッド部と前記後パッド部との上縁間及び下縁間に形成される上下縁嵌合部と、前記前パッド部と前記後パッド部との幅方向の各側縁間に形成される各側縁嵌合部と、を有し、
前記上下縁嵌合部が、高さ方向の当接を伴う嵌合により前記前パッド部と前記後パッド部との高さ方向の相対移動を規制し、各前記側縁嵌合部が、幅方向の当接を伴う嵌合により前記前パッド部と前記後パッド部との幅方向の相対移動を規制するヘッドレスト。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のヘッドレストであって、
前記凹凸嵌合部が、前記前パッド部及び前記後パッド部の外縁には形成されず、前記外縁を残す中間部に形成されるヘッドレスト。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のヘッドレストであって、
前記凹凸嵌合部が、前記前パッド部と前記後パッド部との幅方向の各側縁における高さ方向の全域と上縁における幅方向の全域とに跨って連続的に形成されるヘッドレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに用いられるヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドレストの製造方法として、廃棄時における分別やリサイクルのしやすさの観点から、被せ製法が採用される場合がある。被せ製法では、発泡成形されたヘッドレストパッドでヘッドレストステーや樹脂ケース等の内蔵物を覆った後に、別体として準備したヘッドレストカバーが被せられる。
【0003】
例えば特許文献1では、前後に分割された第1、第2のパッドにて、内蔵物としての芯材(スピーカの筐体)の前面と背面を覆い、更に、複数の表皮材を縫い合わせて成るヘッドレストカバーで覆ったヘッドレストが開示されている。
【0004】
このような被せ製法のヘッドレストにおいては、内蔵物の外形に合わせて第1、第2のパッドの内面が成形されている。ヘッドレストカバーを被せる際は、まず第1、第2のパッドを内蔵物に嵌め合わせて位置決めする。これにより設計上、パッド同士が直接接触する部分(合わせ面)もずれることなく合わさる。このようにパッドを内蔵物に対して位置決めした後に、ヘッドレストカバーを被せていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-98268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のヘッドレストでは、パッド同士の合わせ面をぴったりと合わせたままヘッドレストカバーを被せることが困難となる場合がある。つまり、内蔵物には、パッドとの引っ掛かりが弱いものもある(例えば、樹脂ケースに凹凸が少ない場合や、樹脂ケース自体が無くヘッドレストステーのみの場合がそれに該当する)。そのような内蔵物を覆うパッドに対し、しわができないようにヘッドレストカバーをさすりながら被せていくと、パッド同士の合わせ面がずれてしまう。このようなずれが残っていると、ヘッドレストの表面に段差ができ、品質低下につながる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、内蔵物の形状に関わらずパッド同士のずれを抑制できるヘッドレストを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する手段として、本発明のヘッドレストは、次の手段をとる。すなわち、本発明の第1発明は、内蔵物を覆うヘッドレストパッドと、該ヘッドレストパッドに被せられるヘッドレストカバーと、を有するヘッドレストであって、前記ヘッドレストパッドが、前記内蔵物を前後に挟み込むように合わされる前パッド部及び後パッド部と、前記前パッド部と前記後パッド部との合わせ面に形成され、前記前パッド部と前記後パッド部との合わせに伴い互いに前後に嵌合されて前記前パッド部と前記後パッド部との合わせ方向とは交差する方向の相対移動を規制する凹凸嵌合部と、を有するヘッドレストである。
【0009】
第1発明によれば、ヘッドレストパッドは、凹凸嵌合部によって一体化され、前パッド部と後パッド部の合わせ方向(前後方向)とは交差する方向のずれが規制される。つまり、内蔵物を覆うヘッドレストパッドに対し、ヘッドレストカバーをさすりながら被せても、前後のパッド部同士の合わせ面はずれにくく、ヘッドレストの表面には段差ができにくい。したがって、内蔵物の形状に関わらず前後のパッド部同士のずれを抑制できる。
【0010】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記内蔵物が、高さ方向に延びる幅方向一対のステー脚部と、一対の前記ステー脚部の間をシームレスに繋ぐステー繋ぎ部と、を備えるヘッドレストステーとされ、前記合わせ面に形成され、一対の前記ステー脚部を幅方向に挟み込むように嵌合させることが可能な凹状のステー嵌合溝を更に有することを特徴とする。
【0011】
第2発明によれば、ヘッドレストステーがステー嵌合溝に嵌合することで、例えば後パッド部とヘッドレストステーが一体化される。後パッド部とヘッドレストステーが一体化されたうえで、前パッド部と後パッド部が凹凸嵌合部によって一体化される。つまり、前後のパッド部同士のずれが抑制されるとともに、ヘッドレストステーと前後のパッド部のずれも抑制されるため、内蔵物がヘッドレストステーのみのヘッドレストとして好適である。
【0012】
本発明の第3発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記凹凸嵌合部が、前記前パッド部と前記後パッド部との上縁間及び下縁間に形成される上下縁嵌合部と、前記前パッド部と前記後パッド部との幅方向の各側縁間に形成される各側縁嵌合部と、を有し、前記上下縁嵌合部が、高さ方向の当接を伴う嵌合により前記前パッド部と前記後パッド部との高さ方向の相対移動を規制し、各前記側縁嵌合部が、幅方向の当接を伴う嵌合により前記前パッド部と前記後パッド部との幅方向の相対移動を規制することを特徴とする。
【0013】
第3発明によれば、前パッド部と後パッド部を合わせる際に、凹凸嵌合部がきちんと嵌合しているか否かを外観上で目視確認できる。そのため、外縁を残す中間部に凹凸嵌合部が形成される場合と比較して、前パッド部と後パッド部との合わせ作業をより簡易なものとすることができる。また、前後のパッド部同士のずれは最終的に外縁に現れるが、上下縁嵌合部と各側縁嵌合部は、中間部ではなく、その外縁において直接にずれを規制するので、ヘッドレストの表面に段差ができにくくすることができる。
【0014】
本発明の第4発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記凹凸嵌合部が、前記前パッド部及び前記後パッド部の外縁には形成されず、前記外縁を残す中間部に形成されることを特徴とする。
【0015】
第4発明によれば、外縁に凹凸嵌合部が形成される場合と比較して、外縁における前パッド部と後パッド部の境界をシンプルにすることができ、ヘッドレストの外観や手触りに影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0016】
本発明の第5発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記凹凸嵌合部が、前記前パッド部と前記後パッド部との幅方向の各側縁における高さ方向の全域と上縁における幅方向の全域とに跨って連続的に形成されることを特徴とする。
【0017】
第5発明によれば、凹凸嵌合部がきちんと嵌合しているか否かを外観上で目視確認でき、前パッド部と後パッド部との合わせ作業をより簡易なものとすることができる。また、外縁における前パッド部と後パッド部の境界をシンプルにすることができ、ヘッドレストの外観や手触りに影響を及ぼすことを抑制することができる。さらに、前後のパッド部同士をずらそうとする力が上縁における幅方向の全域及び/又は各側縁における高さ方向の全域に分散されるので、より好適に前後のパッド部同士のずれが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態であるヘッドレストの正面図である。
図2】ヘッドレストカバーが被せられる前のヘッドレスト(ヘッドレスト本体)の正面図である。
図3図2におけるヘッドレスト本体を後方左上から見た斜視図である。
図4図2におけるヘッドレスト本体を前方右下から見た斜視図である。
図5図2のV-V矢視線断面図である。
図6図2のVI-VI矢視線断面図である。
図7図2におけるヘッドレスト本体から前パッド部を取り外した図である。
図8図2におけるヘッドレスト本体の分解斜視図である。
図9】その他の実施形態に係る中間凸部を示す図である。
図10】その他の実施形態に係る中間凹部を示す図である。
図11】その他の実施形態に係るインロー凸部を示す図である。
図12】その他の実施形態に係るインロー凹部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図8は、本発明の一実施形態を示す。本実施形態は、ヘッドレスト10に本発明を適用した例である。図1図8では、矢印により、ヘッドレスト10を自動車に搭載されたシートバックに取付けたときの各方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。なお、上下方向、左右方向は、本発明の「高さ方向」、「幅方向」に相当している。
【0020】
図1に示すようにヘッドレスト10は、ヘッドレストステー5と、ヘッドレストステー5を覆うヘッドレストパッド11と、ヘッドレストパッド11に被せられるヘッドレストカバー12と、を有する。ヘッドレストステー5は、上下方向に延びる左右方向一対のステー脚部5aと、一対のステー脚部5aの間をシームレスに繋ぐステー繋ぎ部5bと、を備える(図7も参照)。一対のステー脚部5aは、上下方向に沿って延びる一対の垂下部5xと、一対の垂下部5xから傾斜してステー繋ぎ部5bまで延びる一対の傾斜部5yとを有している。ヘッドレストパッド11は、ステー繋ぎ部5bの全部と、一対の傾斜部5yの全部と、一対の垂下部5xの上部(各傾斜部5yへと繋がる部分)を覆うようにヘッドレストステー5に被せられている。各ステー脚部5aの下部についてはヘッドレストパッド11から下方に突き出ている。
【0021】
図2図8に示すようにヘッドレストパッド11は、前パッド部1と後パッド部2を有している。言い換えれば、ヘッドレストパッド11は、前後に2分割された前パッド部1と後パッド部2が前後方向に合わさって一つとされている。前パッド部1及び後パッド部2は、ヘッドレストステー5を前後方向から挟み込んでいる。なお、図2図4には、説明の都合上、ヘッドレストカバー12が被せられる前のヘッドレスト本体13を示している。
【0022】
図2図4に示すようにヘッドレストパッド11は、凹凸嵌合部3を有している。凹凸嵌合部3は、前パッド部1と後パッド部2との上縁間及び下縁間に形成される上下縁嵌合部3aと、前パッド部1と後パッド部2との左右方向の各側縁間に形成される各側縁嵌合部3pと、を含む。具体的には、図7図8に示すように前パッド部1と後パッド部2の合わせ面1a、2aには、上下凸部3b、上下凹部3c、左右凸部3q、左右凹部3rが形成されている。
【0023】
上下凹部3cと左右凹部3rは、その凹みが、前パッド部1あるいは後パッド部2の合わせ面1a、2aの周縁にまで及んでいる。つまり、上下凹部3cと左右凹部3rは、壁面が前パッド部1あるいは後パッド部2の外面に続いている。例えば、図8に示すように左右凹部3rのうち左側の凹部は、前面を底面として、上面、下面、右面の3面が前パッド部1の外面に続く壁面となっている。なお、上下凹部3cのうち上側の凹部は、薄肉である後パッド部2の上縁に形成される都合上切り欠き状になっており、底面はなく、左右面、下面の3面が後パッド部2の外面に続く壁面となっている。
【0024】
上下凸部3bと左右凸部3qは、前パッド部1あるいは後パッド部2の外縁に形成された上下凹部3cと左右凹部3rを埋めるかのごとく形成されている。上下凸部3b、上下凹部3cは、前パッド部1と後パッド部2が前後方向に合わされるのに伴い、嵌合される。同様に、左右凸部3q、左右凹部3rは、前パッド部1と後パッド部2が前後方向に合わされるのに伴い、嵌合される。上下凸部3bと左右凸部3qにおいて、上下凹部3cと左右凹部3rの各壁面に向き合わず接触しない面は、ヘッドレストパッド11の外面となる。ヘッドレストパッド11の外面は、上下凸部3b、上下凹部3c、左右凸部3q、左右凹部3rが嵌合された状態において、段差のない滑らかな表面となっている。
【0025】
このように、ヘッドレストパッド11は、上下凸部3bと上下凹部3cが嵌合した上下縁嵌合部3aと、左右凸部3qと左右凹部3rが嵌合した各側縁嵌合部3pを有している。上下縁嵌合部3aは、前パッド部1と後パッド部2との上縁間及び下縁間に形成されている。具体的には、図3に示すように上下縁嵌合部3aの上側の嵌合部は、ヘッドレストパッド11の上縁に1箇所形成されており、両端を残す中間部に位置する。図4に示すように上下縁嵌合部3aの下側の嵌合部は、ヘッドレストパッド11の下縁に1箇所形成されており、両端を残す中間部に位置する。また、各側縁嵌合部3pは、前パッド部1と後パッド部2との左右方向の各側縁間に形成されている。具体的には、図3に示すように各側縁嵌合部3pの左側の嵌合部は、ヘッドレストパッド11の左縁に2箇所離れて形成されており、両端を残す中間部に位置する。図4に示すように上下縁嵌合部3aの下側の嵌合部は、ヘッドレストパッド11の下縁に2箇所離れて形成されており、両端を残す中間部に位置する。
【0026】
図5に示すように上下凸部3b(図8参照)と上下凹部3c(図7参照)は、上下方向の当接を伴って嵌合する。すなわち、上下凸部3bと上下凹部3cの嵌合によって、上側の上下凸部3bの下面と、上側の上下凹部3cの下面とが接触して接触面4aとなり、下側の上下凸部3bの上面と、上側の上下凹部3cの上面とが接触して接触面4bとなる。接触面4a、4bは、上下方向と交差するため、前パッド部1と後パッド部2の上下方向の相対移動に作用する。
【0027】
図6に示すように左右凸部3q(図7参照)と左右凹部3r(図8参照)は、左右方向の当接を伴って嵌合する。すなわち、左右凸部3qと左右凹部3rの嵌合によって、右側の左右凸部3qの左面と、右側の左右凹部3rの左面とが接触して接触面4eとなり、左側の左右凸部3qの右面と、左側の左右凹部3rの右面とが接触して接触面4fとなる。接触面4e、4fは、左右方向と交差するため、前パッド部1と後パッド部2の左右方向の相対移動に作用する。
【0028】
なお、図3図4で示す接触面4c、4dも上下方向と交差している。つまり、左右凸部3qと左右凹部3rは、左右方向に加えて上下方向の当接も伴って嵌合している。同様に、図3図4における接触面4g、4hも左右方向と交差している。つまり、上下凸部3bと上下凹部3cは、上下方向に加えて左右方向の当接も伴って嵌合している。
【0029】
上下縁嵌合部3aと各側縁嵌合部3pの形成により、前パッド部1と後パッド部2との合わせ方向(前後方向)と交差する方向(上下左右方向)の相対移動が規制されている。つまり、前パッド部1が後パッド部2に対して上下方向に移動しようとしても、接触面4a~4d(図3図5参照)にて前パッド部1と後パッド部2が干渉するため、その移動が規制される。また、例えば前パッド部1が後パッド部2に対して左右方向に移動しようとしても、接触面4e~4h(図3図4図6参照)にて前パッド部1と後パッド部2が干渉するため、その移動が規制される。
【0030】
なお、後述するステー嵌合溝6aとステー押付凸部6bの嵌合で形成される接触面によっても、前パッド部1と後パッド部2の相対移動が規制される。つまり、ステー嵌合溝6aとステー押付凸部6bは、左右方向の当接を伴って嵌合しており、前パッド部1と後パッド部2の左右方向の相対移動を規制している。その他にも、図5図7に示すようにヘッドレストステー5の下方向への移動を規制するため、ステー繋ぎ部5bを下側から支持する支持部6cが後パッド部2に設けられている。支持部6cは、ステー繋ぎ部5bの前縁まで張り出している。このような支持部6cによって形成される接触面によっても同様に前パッド部1と後パッド部2の相対移動が規制される。
【0031】
図6に示すようにヘッドレストパッド11は、凹凸嵌合部3のほか、ステー収容嵌合部6を有している。具体的には、図7図8に示すように前パッド部1と後パッド部2の合わせ面1a、2aには、ステー嵌合溝6aとステー押付凸部6bが形成されている。
【0032】
図7に示すようにステー嵌合溝6aは、一対のステー脚部5aを左右方向から挟み込むように嵌合させることができる。ステー嵌合溝6aは、一対の傾斜部5yの全部と、一対の垂下部5xの上部(各傾斜部5yへと繋がる部分)を収容するように形成されている。ステー脚部5aがステー嵌合溝6aに対して圧入されるように、ステー嵌合溝6aの幅がステー脚部5aの径と比較して小さく設定されることが望ましい。これにより、ヘッドレストステー5は、ステー嵌合溝6aに圧入嵌合することで後パッド部2と一体化され、左右方向はもちろん、上下方向、前後方向の相対移動が規制される。
【0033】
図8に示すようにステー押付凸部6bは、ステー嵌合溝6aに奥まで圧入嵌合したステー脚部5aと密着するように形成されており、ステー嵌合溝6aに対して奥まで隙間なく嵌合するようには突出していない。
【0034】
ステー嵌合溝6aとステー押付凸部6bは、前パッド部1と後パッド部2が合わされるのに伴い、嵌合する。つまり、図6に示すようにヘッドレストパッド11は、ステー嵌合溝6aとステー押付凸部6bが嵌合したステー収容嵌合部6を有している。ステー押付凸部6bが上述したような形状である結果、ステー収容嵌合部6には、ステー脚部5aが収容される空間6xが形成される。ステー脚部5aは、空間6xにて、壁面としてのステー嵌合溝6aとステー押付凸部6bに密着している。これにより、ヘッドレストステー5のヘッドレストパッド11に対する前後方向への相対移動がさらに規制される。
【0035】
以上をまとめると、本実施形態に係るヘッドレスト10は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0036】
すなわち、ヘッドレスト(10)は、内蔵物(5)を覆うヘッドレストパッド(11)と、該ヘッドレストパッド(11)に被せられるヘッドレストカバー(12)と、を有するヘッドレスト(10)である。ヘッドレストパッド(11)が、内蔵物(5)を前後に挟み込むように合わされる前パッド部(1)及び後パッド部(2)と、前パッド部(1)と後パッド部(2)との合わせ面(1a、2a)に形成され、前パッド部(1)と後パッド部(2)との合わせに伴い互いに前後に嵌合されて前パッド部(1)と後パッド部(2)との合わせ方向とは交差する方向の相対移動を規制する凹凸嵌合部(3)と、を有する。
【0037】
上記構成によれば、ヘッドレストパッド(11)は、凹凸嵌合部(3)によって一体化され、前パッド部(1)と後パッド部(2)の合わせ方向(前後方向)とは交差する方向にずれが規制される。つまり、内蔵物(5)を覆うヘッドレストパッド(11)に対し、ヘッドレストカバー(12)をさすりながら被せても、前後のパッド部(1、2)同士の合わせ面(1a、2a)はずれにくく、ヘッドレスト10の表面には段差ができにくい。したがって、内蔵物(5)の形状に関わらずパッド同士のずれを抑制できる。
【0038】
また、内蔵物(5)は、高さ方向に延びる幅方向一対のステー脚部(5a)と、一対のステー脚部(5a)の間をシームレスに繋ぐステー繋ぎ部(5b)と、を備えるヘッドレストステー(5)とされる。合わせ面(1a、2a)に形成され、一対のステー脚部(5a)を幅方向に挟み込むように嵌合させることが可能な凹状のステー嵌合溝(6a)を更に有することを特徴とする。
【0039】
上記構成によれば、ヘッドレストステー(5)がステー嵌合溝(6a)に嵌合することで、例えば後パッド部(2)とヘッドレストステー(5)が一体化される。後パッド部(2)とヘッドレストステー(5)が一体化したうえで、前パッド部(1)と後パッド部(2)が凹凸嵌合部(3)によって一体化される。つまり、前後のパッド部(1、2)同士のずれが抑制されるとともに、ヘッドレストステー(5)と前後のパッド部(1、2)のずれも抑制されるため、内蔵物(5)がヘッドレストステー(5)のみのヘッドレスト(10)として好適である。
【0040】
また、凹凸嵌合部(3)が、前パッド部(1)と後パッド部(2)との上縁間及び下縁間に形成される上下縁嵌合部(3a)と、前パッド部(1)と後パッド部(2)との幅方向の各側縁間に形成される各側縁嵌合部(3q)と、を有し、上下縁嵌合部(3a)が、高さ方向の当接を伴う嵌合により前パッド部(1)と後パッド部(2)との高さ方向の相対移動を規制し、各側縁嵌合部(3p)が、幅方向の当接を伴う嵌合により前パッド部(1)と後パッド部(2)との幅方向の相対移動を規制することを特徴とする。
【0041】
上記構成によれば、前パッド部(1)と後パッド部(2)を合わせる際に、凹凸嵌合部(3)がきちんと嵌合しているか否かを外観上で目視確認できる。そのため、外縁を残す中間部に凹凸嵌合部(3)が形成される場合と比較して、前パッド部(1)と後パッド部(2)との合わせ作業をより簡易なものとすることができる。また、前後のパッド部(1、2)同士のずれは最終的に外縁に現れるが、上下縁嵌合部(3a)と各側縁嵌合部(3q)は、中間部ではなく、その外縁において直接にずれを規制するので、ヘッドレスト10の表面に段差ができにくくすることができる。
【0042】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0043】
1.上記実施形態においては、前パッド部1と後パッド部2に完全に分割されたヘッドレストパッド11を例に説明した。しかし、前パッド部と後パッド部は、ヘッドレストステー5を前後方向から挟み込むように合わされるものであればよく、例えば、完全分割せずに、外縁の一部を残して切り込みを入れた結果、前パッド部と後パッド部が一部で繋がったヘッドレストパッドであっても良い。
【0044】
2.上記実施形態においては、内蔵物がヘッドレストステー5のみのヘッドレスト10を例に説明した。しかし、これに関わらず、ヘッドレストステーのほかに、樹脂ケースやスピーカ等を内蔵物とするヘッドレストであっても良い。
【0045】
3.上記実施形態においては、前パッド部1にステー押付凸部6bを設け、後パッド部2のステー嵌合溝6aに嵌合させるヘッドレストパッド11を例に説明した。しかし、これに関わらず、前パッド部1にステー押付凸部6bが無くとも良い。つまり、ステー脚部5aは、ステー嵌合溝6aに圧入嵌合しているので、それだけでもヘッドレストステー5のヘッドレストパッド11に対する前後方向および左右方向への相対移動は十分に規制される。
【0046】
4.上記実施形態においては、各側縁嵌合部3pがそれぞれ形成されたヘッドレストパッド11を例に説明した。しかし、これに関わらず、上下縁嵌合部3aと各側縁嵌合部3pのいずれか一方が形成されたヘッドレストパッド11であっても良い。また、前パッド部1と後パッド部2のいずれに凹部、凸部を形成するかは任意であり、例えば、前パッド部1の合わせ面1aに形成されるのは全て凹部で、後パッド部2の合わせ面2aに形成されるのは全て凸部であっても良い。
【0047】
5.上記実施形態においては、凹凸嵌合部3が前パッド部1及び後パッド部2の外縁に形成されるヘッドレストパッド11を例に説明した。しかし、これに関わらず、凹凸嵌合部が、前パッド部及び後パッド部の外縁には形成されず、外縁を残す中間部に形成されても良い。具体的には、図9図10に示すように前パッド部1と後パッド部2の合わせ面1a、2aには、中間凸部23b、中間凹部23cが形成されている。中間凸部23b、中間凹部23cは、前パッド部1と後パッド部2が前後方向に合わされるのに伴い、嵌合されて凹凸嵌合部となる。これによれば、外縁に凹凸嵌合部3が形成される上記実施形態と比較して、外縁における前パッド部と後パッド部の境界がシンプルにすることができ、ヘッドレストの外観や手触りに影響を及ぼすことを抑制することができる。なお、上記実施形態(凹凸嵌合部3が前パッド部1及び後パッド部2の外縁に形成されるヘッドレストパッド11)に対して、中間凸部23b、中間凹部23cが併せて形成されても良い。
【0048】
6.上記実施形態においては、凹凸嵌合部3が前パッド部1及び後パッド部2の外縁に断続的に複数設けられたヘッドレストパッド11を例に説明した。しかし、これに関わらず、凹凸嵌合部が、前パッド部と後パッド部との左右方向の各側縁における上下方向の全域と上縁における左右方向の全域とに跨って連続的に形成されても良い。具体的には、図11図12に示すように前パッド部1と後パッド部2の合わせ面1a、2aには、インロー凸部33b、インロー凹部33cが形成されている。インロー凸部33b、インロー凹部33cは、前パッド部1と後パッド部2が前後方向に合わされるのに伴い、嵌合されて凹凸嵌合部となる。これによれば、凹凸嵌合部がきちんと嵌合しているか否かを外観上で目視確認でき、前パッド部と後パッド部との合わせ作業をより簡易なものとすることができる。また、外縁における前パッド部と後パッド部の境界をシンプルにすることができ、ヘッドレストの外観や手触りに影響を及ぼすことを抑制することができる。さらに、前後のパッド部同士をずらそうとする力が上縁における幅方向の全域及び/又は各側縁における高さ方向の全域に分散されるので、より好適に前後のパッド部同士のずれが抑制される。なお、前パッド部1と後パッド部2の合わせ面1a、2aに、インロー凸部33b、インロー凹部33c、中間凸部23b、中間凹部23cが併せて形成されていても良い。
【0049】
7.上記実施形態においては、本発明を自動車に搭載されたシートバックに取り付けられるヘッドレストに適用したが、飛行機、船、電車等に搭載されたシートバックに取り付けられるヘッドレストのヘッドレストに適用しても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 前パッド部
1a 合わせ面
2 後パッド部
2a 合わせ面
3 凹凸嵌合部
3a 上下縁嵌合部
3b 上下凸部
3c 上下凹部
3p 各側縁嵌合部
3q 左右凸部
3r 左右凹部
4a~4h 接触面
5 ヘッドレストステー(内蔵物)
5a ステー脚部
5b ステー繋ぎ部
5x 垂下部
5y 傾斜部
6 ステー収容嵌合部
6a ステー嵌合溝
6b ステー押付凸部
6c 支持部
6x 空間
10 ヘッドレスト
11 ヘッドレストパッド
12 ヘッドレストカバー
13 ヘッドレスト本体
図1
図2
図3
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図5
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図12