(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063972
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
G01B11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172198
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】川田 善之
(72)【発明者】
【氏名】松田 和也
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA06
2F065AA53
2F065BB05
2F065DD05
2F065FF01
2F065FF10
2F065GG23
2F065GG24
2F065HH02
2F065HH03
2F065HH13
2F065LL02
2F065LL67
2F065MM03
2F065QQ21
2F065QQ29
(57)【要約】
【課題】 光源から出力される多波長光を導光するときの漏れ量を抑制し、導光量を増加させることが可能な測定装置を提供する。
【解決手段】 測定装置は、入射端側の受光面積が出射端側よりも大きいテーパ光ファイバを含み、光源から出力された多波長光を入射端側から取り込んで導光する導光路と、導光路を通じて導光される多波長光を光軸上の複数の位置で合焦させ、光軸上の測定対象物からの多波長光の反射光を受光するプローブと、反射光から、多波長光のうち測定対象物の表面で合焦して反射された成分を検出する分光器とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射端側の受光面積が出射端側よりも大きいテーパ光ファイバを含み、光源から出力された多波長光を前記入射端側から取り込んで導光する導光路と、
前記導光路を通じて導光される多波長光を光軸上の複数の位置で合焦させ、前記光軸上の測定対象物からの前記多波長光の反射光を受光するプローブと、
前記反射光から、前記多波長光のうち前記測定対象物の表面で合焦して反射された成分を検出する分光器と、
を備える測定装置。
【請求項2】
前記光源と前記導光路の前記入射端との間に配置された導光光学系を備える、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記導光光学系は、複数枚のレンズを含み、前記複数枚のレンズの開口数が前記光源側に配置されたレンズほど大きい、請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記導光路に設けられた光分岐器であって、前記光源からの前記多波長光を前記プローブ側に導光し、前記測定対象物からの前記反射光を前記プローブ側から前記分光器側に導光する光分岐器を備え、
前記テーパ光ファイバの前記入射端側の端部は、前記光分岐器の前記プローブ側のポートに接続され、
前記光源と前記光分岐器との間の光ファイバと、前記分光器と前記光分岐器との間の光ファイバの口径が、前記テーパ光ファイバの前記入射端側の端部の口径と略等しい、請求項1から3のいずれか1項に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定装置に係り、特に色収差(軸上色収差)を利用して測定対象物の表面を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
色収差を利用して、測定対象物の表面高さを測定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、測定対象物の表面に多波長光を照射し、表面で焦点を結ぶ波長の光を検出することにより、測定対象物の表面高さを測定する共焦点ポイントセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8は、色収差を利用した測定装置の例を示す構成図である。
図8に示すように、測定対象物Wの平面を測定する場合、異なる複数の波長(色)の光を含む多波長光をコントローラ10Pから出力し、光ファイバF及びプローブ50Pを介して測定対象物Wに向けて照射する。プローブ50Pから照射される多波長光は、色収差により光軸AX上の異なる位置で焦点(図中の○)を結ぶ。コントローラ10Pの分光器20Pは、測定対象物Wに照射した多波長光の反射光のうち、測定対象物Wの表面で合焦した波長の光を検出する。
【0005】
ここで、多波長光としては、波長域が広い広帯域光(例えば、白色光)が使用されるが、広帯域光は、直進性が悪く、拡散しやすいという性質がある。測定対象物Wから戻ってくる反射光のうち、測定対象物Wの表面で合焦した波長の光を検出するためには、光ファイバFのプローブ50P側の開口APを小さくする必要がある。この場合、光ファイバFが細くなり、光源12Pから出力される多波長光の光ファイバFの入力端Finへの導光効率が低下する。
【0006】
入力端Finへの多波長光の導光量を確保するためには、光源12Pの出力を上げることが考えられるが、光源12Pの出力上昇による導光量の増加の効率は1%満たず、効率が悪い。
【0007】
そして、光源12Pから出力される多波長光のうち、光ファイバFの入力端Finに導光されずに漏れた成分は、光源12Pの周囲に配置された分光器20P等に影響を与える場合がある。
【0008】
例えば、光源12Pとして202mWの光源の光源を使用した場合、約200mWが光ファイバF内に導光されずに周囲に漏れてしまう。分光器20Pの筐体が約200mWの漏れ光のうち約2分の1を1時間吸収した場合、外界との熱の出入がなく、分光器20Pの筐体が鉄系の材料約200gからなると仮定すると、その温度は筐体全体の平均で約5℃上昇する。実際には、分光器20P内の各部品の材料特性、形状及び位置により温度ムラが発生するが、筐体の温度が平均で約5℃上昇した場合、一例で、温度変化が大きい箇所で約6℃、小さい箇所で約4℃上昇する。
【0009】
図9~
図11は、温度ムラの影響を説明するための図である。
図9に示すように、反射型の回折格子22Pは、第1支持部材30に支持されており、第2支持部材32により回折格子22Pの一部(縁部)が押さえられている。第1支持部材30と第2支持部材32は、ねじ34により固定されている。回折格子22Pは、第1支持部材30を貫通するねじ36により第1支持部材30の載置面に対して傾いている。
【0010】
第1支持部材30、第2支持部材32、ねじ34及び36が鉄系材料からなり、ねじ36のみが周囲より温度が2℃低くなったと仮定すると、ねじ36による回折格子22Pの持ち上げ量Δ=約2mmが約0.04μm小さくなる。このとき、回折格子22Pのサイズ(R)を25mmとすると、回折格子22Pがθ=約1.6mrad傾いてしまう。
【0011】
回折格子22Pが約1.6mrad傾くと、
図10に示すように、回折格子22PからD=100mm先の位置では、回折格子22Pによる反射光の照射位置がd=約160μmずれる。
【0012】
図11は、光検出器24Pの例を示している。
図11に示す光検出器24Pは、画素数(N)が1,024画素、画素サイズ(p1×p2)が7μm×200μmのラインセンサである。光の照射位置の160μmのずれは光検出器24Pでは22画素分のずれになる。光検出器24Pの1,024画素をすべて測定レンジに割り当てたと仮定すると、22/1,024=約2%の測定誤差になる。
【0013】
なお、上記の例では、回折格子22Pのドリフトのみについて説明したが、回折格子22P以外の光学素子についても、同様にドリフトが生じ得る。
【0014】
上記のように、色収差を利用した測定では、測定対象物Wの表面で合焦した波長の光を検出するためには、光ファイバFのプローブ50P側の開口APを小さくする必要があるが、光ファイバFを細くすると、多波長光の入射漏れが生じる。光源12Pから出力される多波長光の漏れに起因する温度ムラにより、光学素子のドリフトが生じ、測定精度が低下するという問題があった。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、光源から出力される多波長光を導光するときの漏れ量を抑制し、導光量を増加させることが可能な測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る測定装置は、入射端側の受光面積が出射端側よりも大きいテーパ光ファイバを含み、光源から出力された多波長光を入射端側から取り込んで導光する導光路と、導光路を通じて導光される多波長光を光軸上の複数の位置で合焦させ、光軸上の測定対象物からの多波長光の反射光を受光するプローブと、反射光から、多波長光のうち測定対象物の表面で合焦して反射された成分を検出する分光器とを備える。
【0017】
本発明の第2の態様に係る測定装置は、第1の態様において、光源と導光路の入射端との間に配置された導光光学系を備える。
【0018】
本発明の第3の態様に係る測定装置は、第2の態様において、導光光学系が、複数枚のレンズを含み、複数枚のレンズの開口数が光源側に配置されたレンズほど大きくなっている。
【0019】
本発明の第4の態様に係る測定装置は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、導光路に設けられた光分岐器であって、光源からの多波長光をプローブ側に導光し、測定対象物からの反射光をプローブ側から分光器側に導光する光分岐器を備え、テーパ光ファイバの入射端側の端部は、光分岐器のプローブ側のポートに接続され、光源と光分岐器との間の光ファイバと、分光器と光分岐器との間の光ファイバの口径が、テーパ光ファイバの入射端側の端部の口径と略等しい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、導光路にテーパ光ファイバを設けることにより、光源から出力される多波長光を導光するときの漏れ量を抑制し、導光量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る測定装置を示す構成図である。
【
図2】
図2は、テーパ光ファイバの入射端付近を拡大して示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る測定装置の制御系を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る測定装置におけるテーパ光ファイバの入射端付近を拡大して示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3の実施形態に係る測定装置を示す構成図である。
【
図6】
図6は、反射光の線幅を細くした場合の検出信号の変化を示すグラフである。
【
図7】
図7は、本発明の第4の実施形態に係る測定装置を示す構成図である。
【
図8】
図8は、色収差を利用した測定装置の例を示す構成図である。
【
図9】
図9は、温度ムラの影響を説明するための図である。
【
図10】
図10は、温度ムラの影響を説明するための図である。
【
図11】
図11は、温度ムラの影響を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って測定装置の実施の形態について説明する。
【0023】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る測定装置を示す構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る測定装置1は、コントローラ10と、プローブ50とを含んでいる。
【0024】
測定装置1は、異なる複数の波長(色)の光を含む多波長光L1(例えば、広帯域光又は白色光)をコントローラ10から出力し、プローブ50により測定対象物Wに向けて多波長光L1を照射する。プローブ50から照射される多波長光L1は、対物レンズ56により集光されて、色収差(軸上色収差)により光軸AX上の異なる位置で焦点を結ぶ。測定装置1は、コントローラ10の分光器20により、測定対象物Wに照射した多波長光L1の反射光L2のうち、測定対象物Wの表面で合焦した波長の光を検出する。これにより、プローブ50から測定対象物Wの表面までの距離、又は測定対象物Wの表面に垂直な方向(Z方向)の変位を高精度で測定することができる。
【0025】
図1に示すように、コントローラ10は、光源12、導光光学系14、光ファイバF1、F2、F3及びF5、コネクタC1、C3及びC5、光分岐器C2並びに分光器20を含んでいる。光ファイバF1、F2、F3、F4及びF5、コネクタC1、C3、C4及びC5、光分岐器C2は、導光路の一例である。
【0026】
光源12は、異なる複数の波長(色)の光を含む多波長光L1(例えば、広帯域光又は白色光)を出力可能な光源であり、例えば、発光ダイオード(Light-Emitting Diode:LED)又はハロゲンランプである。光源12から出力された多波長光L1は、導光光学系14を介して光ファイバF1の入射端F1inに導光される。
【0027】
光ファイバF1は、入射端F1inの方が出射端F1outよりも口径(コアの径)が大きいテーパ光ファイバである。
【0028】
図2は、テーパ光ファイバF1の入射端F1in付近を拡大して示す図である。
図2に示すように、導光光学系14は、レンズ140及び142を含んでおり、上流側(光源12側)から、光源12、レンズ140及び142、光ファイバF1の入力端F1inの順番で配置されている。
【0029】
光源12側のレンズ140は、光ファイバF1側のレンズ142よりも開口数(Numerical Aperture)が大きく、光源12から出力される多波長光L1を高効率で取り込むことが可能となっている。
【0030】
一方、レンズ142は、レンズ140により取り込まれた多波長光L1を、光ファイバF1の入射端F1inの口径(コア径)に合わせて導光することが可能な開口数に調整されている。
【0031】
光ファイバF1は、入射端F1inの口径が大きく、受光面積が大きくなっており、光源12からの多波長光L1の漏れを抑制可能となっている。ここで、光ファイバF1の入射端F1inにおけるコア径は一例で400μmであり、開口数は一例で0.5である。
【0032】
なお、
図2に示す例では、導光光学系14は、開口数が大きいレンズ140と、開口数が小さいレンズ142の2段階で構成されているが、これに限定されない。導光光学系14は、例えば、開口数が上流側から順次小さくなる3段階以上のレンズ群を含んでいてもよい。
【0033】
また、
図2では、レンズ140及び142は、それぞれ1枚のレンズとして図示しているが、これに限定されない。レンズ140及び142は、例えば、複数枚のレンズ又は光学素子を組み合わせた構成であってもよい。
【0034】
上記のように、開口数が上流側から段階的に小さくなるように設計された導光光学系14により、光ファイバF1の大口径の入射端F1inに多波長光L1を集光させることができる。これにより、光源12から出力される多波長光L1を高効率で取り込むことができ、かつ、多波長光L1を光ファイバF1に導光するときの漏れを抑制することが可能になる。
【0035】
図1に示すように、多波長光L1は、光ファイバF1の入射端F1inから取り込まれた後、出射端F1outに取り付けられたコネクタC1を通過し、下流側の光ファイバF2~F5に順次導光される。
【0036】
光ファイバF1の出射端F1outは、コネクタC1を介して光ファイバF2と、その下流の光ファイバF3~F5に接続されている。本実施形態では、構成の簡略化のため、光ファイバF2~F5の口径は、光ファイバF1の出射端F1outの口径と略等しいものとするが、口径が互いに異なる構成とする(例えば、下流側の光ファイバほど口径を大きくする)ことも可能である。
【0037】
なお、
図1に示す例では、光ファイバF1及びF2と、光ファイバF3及びF4とは、それぞれコネクタC1及びC3を介して接続されているが、これに限定されない。例えば、光ファイバF1及びF2を1本の光ファイバ(テーパ光ファイバ)としてコネクタC1を省略してもよい。同様に、光ファイバF3及びF4を1本の光ファイバとしてコネクタC3を省略してもよい。
【0038】
光ファイバF1に入力された多波長光L1は、コネクタC1、光ファイバF2、光分岐器C2、光ファイバF3、コネクタC3、光ファイバF4及びコネクタC4を順次通過してプローブ50に入力される。
【0039】
図1に示すように、プローブ50は、プローブ筐体52と、プローブ筐体52内に配置されたレンズ54及び対物レンズ(集光レンズ)56とを含んでいる。
【0040】
プローブ50に入力された多波長光L1は、レンズ54を介して対物レンズ56に導光され、対物レンズ56を介して測定対象物Wに向けて照射される。ここで、対物レンズ56から照射された多波長光L1は異なる複数の波長(色)の光を含んでおり、多波長光L1を構成する光の焦点距離はそれぞれの波長(色)に応じて異なっている。このため、対物レンズ56から照射された多波長光L1を構成する光は、色収差により、多波長光L1の光軸AX上の複数の位置に焦点を結ぶ。
【0041】
プローブ50から測定対象物Wに照射された多波長光L1のうち、測定対象物Wの表面で焦点を結んだ光は、測定対象物Wの表面で反射された後、光ファイバF4の開口APの位置で焦点を結ぶように構成されている。すなわち、測定対象物Wの表面の焦点位置と光ファイバF4の開口APの位置とは光学的に共役の関係になっている。
【0042】
一方、プローブ50から測定対象物Wに照射された多波長光L1のうち、測定対象物Wの表面以外の位置で焦点を結んだ光は、測定対象物Wの表面で反射された後、光ファイバF4の開口APの位置では焦点を結ばない。すなわち、プローブ50から測定対象物Wに照射された多波長光L1のうち、測定対象物Wの表面以外の位置で焦点を結んだ光は、光ファイバF4の開口AP付近で拡散する。
【0043】
測定対象物Wに照射された多波長光L1のうち、測定対象物Wの表面で焦点を結んだ光の反射光は、光ファイバF4の開口APの位置で合焦するため、反射光のほぼすべてを光ファイバF4内に導光可能となっている。一方、測定対象物Wの表面以外の位置で焦点を結んだ光は、光ファイバF4の開口AP付近で拡散する(散乱される)ため、光ファイバF4への導光効率が低くなる。したがって、測定対象物Wから戻って光ファイバF4内に導光された反射光L2では、測定対象物Wの表面で焦点を結んだ光の成分の光強度(信号レベル)が、表面以外の位置で焦点を結んだ光の成分の光強度よりも高くなる。ここで、光ファイバF4の開口APは、測定対象物Wの表面で焦点を結んだ光を選択的に通過させる空間フィルタ又はピンホールとして機能する。
【0044】
測定対象物Wから戻ってきた反射光L2は、開口APを通って光ファイバF4内に導光された後、光ファイバF4及びコネクタC3を順次通過してコントローラ10に戻る。そして、反射光L2は、光ファイバF3を通過した後、光分岐器C2に到達する。
【0045】
光分岐器C2は、3つのポートを有しており、各ポートに接続された光ファイバF2、F3及びF5の間の導光経路を構成する。光分岐器C2は、例えば、光カプラ、スプリッタ又は光サーキュレータである。光分岐器C2は、光ファイバF2を介して入力される多波長光L1を光ファイバF3に導光し、光ファイバF3を介して入力される反射光L2を光ファイバF5に導光する。
【0046】
光ファイバF5に導光された反射光L2は、コネクタF5を通って分光器20に入力される。
【0047】
分光器20は、分光素子22及び光検出器24を含んでおり、反射光L2を波長成分(色成分)ごとに分光し、光強度が最大となる波長(色)を検出する。
【0048】
分光素子22は、反射光L2を波長成分(色成分)ごとの光(以下、単色光という。)に分光するための光学素子である。
図1には、分光素子22が反射型の回折素子として図示されているが、これに限定されない。分光素子22は、例えば、透過型の回折格子又はプリズムであってもよい。
【0049】
光検出器24は、分光素子22によって単色光に分光された反射光L2を検出するための光学素子であり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)である。
【0050】
光検出器24は、分光素子22によって分光された光の照射方向に沿って1次元状(ライン状)に画素が配列されたラインセンサである。分光素子22によって分光された単色光は、その波長に応じて、互いに異なる角度で反射されて光検出器24の各画素に入力される。
【0051】
なお、本実施形態では、光検出器24をラインセンサとしたが、2次元状に画素が配列されたものであってもよい。2次元センサにおいて単色光ごとの光強度を求める場合には、例えば、反射光L2が分光される方向に対して垂直な方向に画素値を加算するようにしてもよい。
【0052】
上記のように、反射光L2は、光ファイバF4の開口APにおいてフィルタリングされるため、測定対象物Wの表面で焦点を結んだ光の成分の光強度が、表面以外の位置で焦点を結んだ光の成分の光強度よりも高くなる。したがって、光検出器24では、測定対象物Wの表面で焦点を結んだ光の成分が入射する画素の出力が最大となる。
【0053】
図1に示すグラフは、光検出器24の出力の例であり、横軸が単色光の波長又は画素(ピクセル)の位置であり、縦軸が単色光の光強度である。光検出器24の画素の位置(座標)は、入射する単色光の波長又は色に対応する。
【0054】
測定装置1によれば、光検出器24の出力が最大になる画素を特定し、この画素に対応する波長を特定することにより、プローブ50から測定対象物Wの表面までの距離、又は測定対象物Wの表面の変位を高精度で測定することができる。
【0055】
図3は、本実施形態に係る測定装置の制御系を示すブロック図である。
図3に示すように、測定装置1のコントローラ10は、光源12及び分光器20に加えて、制御部100、操作部102、表示部104及び駆動部106を含んでいる。
【0056】
制御部100は、測定装置1の各部を制御する装置であり、プロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit)等)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージデバイス(例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等)を含んでいる。
【0057】
操作部102は、ユーザからの操作入力を受け付けるための装置であり、例えば、キーボード及びポインティングデバイスを含んでいる。
【0058】
表示部104は、測定装置1の操作のためのGUI(Graphical User Interface)等を表示するディスプレイ(例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等)を含んでいる。
【0059】
駆動部106は、測定対象物Wが載置されるステージに対してプローブ50を移動させる駆動機構(例えば、直線移動のための機構(ボールねじ機構)及び回転移動のためのモータ等)を含んでいる。駆動部106によりプローブ50を移動させることにより、測定対象物Wに対する多波長光L1の照射位置を調整することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、駆動部106によりプローブ50を移動させるようにしたが、これに限定されない。例えば、駆動部106は、ステージを移動させる機構を備えていてもよい。すなわち、駆動部106は、プローブ50と測定対象物Wの相対位置を調整できる構成であればよい。
【0061】
測定対象物Wの表面の測定を行う際には、制御部100は、光源12を制御して多波長光L1を出力させる。
【0062】
光源12から出力された多波長光L1は、光源12側の方が開口数が大きい導光光学系14により効率的に取り込まれた後、テーパ光ファイバF1の大口径の入力端F1inに効率的に導光される。テーパ光ファイバF1により取り込まれた多波長光L1は、プローブ50から測定対象物Wに照射されて反射光L2として分光器20に導光される。
【0063】
制御部100は、例えば、単色光の波長又は色と、単色光が入射する光検出器24の画素との対応関係を示すルックアップテーブルをストレージデバイス内に記憶している。なお、分光器20内の温度とドリフト量との関係を示す補正用のルックアップテーブルを制御部100のストレージデバイスに記憶して、波長の補正に使用してもよい。
【0064】
制御部100は、分光器20における検出結果に基づき、測定対象物Wの表面で焦点を結んだ光の成分の波長(色)を特定し、プローブ50から測定対象物Wの表面までの距離、又は測定対象物Wの表面の変位を高精度で測定する。
【0065】
制御部100は、操作部102からの操作入力又は測定制御のためのプログラム等に応じて、駆動部106の駆動制御を行って、測定対象物Wに対する多波長光L1の照射位置を変更して測定を繰り返す。これにより、測定対象物Wの表面の形状等の測定を行うことができる。
【0066】
本実施形態によれば、開口数が上流側から段階的に小さくなる導光光学系14と、テーパ光ファイバF1を用いることにより、光源12から出力される多波長光L1を高効率で取り込むことができ、かつ、多波長光L1を光ファイバF1に導光するときの漏れを抑制することが可能になる。これにより、光ファイバ(F1~F5)を通して導光される多波長光L1及び反射光L2の導光量を増加させることができる。
【0067】
ところで、本実施形態において、光検出器24による単色光の検出と光強度の測定を高速化するためには、光検出器24(ラインセンサ)における積分時間(信号の蓄積時間)を短縮することが考えられる。しかしながら、積分時間を短縮すると、S/N比(Signal-to-Noise ratio)が低下し、測定精度が低下してしまう。本実施形態によれば、光ファイバF1~F5を通して導光される多波長光L1及び反射光L2の導光量を上げることができるので、積分時間を短縮してもS/N比を確保することができる。
【0068】
さらに、本実施形態によれば、反射光L2の導光量の増加により、積分時間を短縮しても単色光の検出信号(電荷)を確保することができ、測定分解能を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、光強度の測定を高速化することができるので、高速測定を繰り返し、測定結果を平均化する処理を容易に行うことができる。これにより、測定分解能をより向上させることができる。例えば、光強度のピーク値をK回求めて平均化したとすると、繰り返し回数に応じて誤差が小さくなり(1/K1/2)、分解能が更に良くなる。また、光強度の波形をRAM又はストレージデバイスに保存して平均化してからピーク値を求めることも可能であり、同様に分解能を改善することができる。
【0070】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態に係る測定装置におけるテーパ光ファイバの入射端付近を拡大して示す図である。なお、以下の説明において、上記の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
図4に示す例では、導光光学系14を設けず、光源12からの多波長光L1がテーパ光ファイバF1の入力端F1inに直接導光される。
【0072】
本実施形態においても、テーパ光ファイバF1を用いることにより、多波長光L1を光ファイバF1に導光するときの漏れを抑制することが可能になる。
【0073】
具体的には、光ファイバF1に対する多波長光L1の導光量は、光ファイバF1の入力端F1inのコア径の2乗に比例する。光ファイバF1の入力端F1inのコア径が
図8~
図11の例の8倍であると仮定すると、多波長光L1の導光量が約64倍改善することになる。この場合、分光器20内の光学素子(分光素子22及び光検出器24等)のドリフト量は約3分の1になる。
【0074】
上記のように、本実施形態によれば、多波長光L1を光ファイバF1に導光するときの漏れを抑制することができ、分光器20内の光学素子(分光素子22及び光検出器24等)のドリフト量を減少させることができる。これにより、測定対象物Wの表面の測定精度を高めることができる。
【0075】
[第3の実施形態]
図5は、本発明の第3の実施形態に係る測定装置を示す構成図である。なお、以下の説明において、上記の実施形態と同様の構成については、同一又は添字を付した符号を付して説明を省略する。
【0076】
図5に示すように、本実施形態に係る測定装置1Aでは、コントローラ10Aとプローブ50とをつなぐ光ファイバF4Aがテーパ光ファイバとなっている。そして、光ファイバF4Aでは、コントローラ10AのコネクタC3Aに接続されるコントローラ側端部の口径が、プローブ50のコネクタC4Aに接続されるプローブ側端部の口径よりも大きくなっている。
【0077】
光分岐器C2Aの3つのポートに接続される3本の光ファイバ(光源12と光分岐器C2Aとの間の光ファイバF1A、光分岐器C2AとコネクタC3Aとの間の光ファイバF3A、及び光分岐器C2Aと分光器20のコネクタC5Aとの間の光ファイバF5A)の口径は、光ファイバF4Aのコントローラ側端部の口径と略等しくなっている。光ファイバF1A、F3A、F4A及びF5A、コネクタC3A、C4A及びC5A、光分岐器C2Aは、導光路の一例である。
【0078】
本実施形態においても、光源12からの多波長光L1が入力される光ファイバF1Aが大口径であるため、多波長光L1を光ファイバF1Aに導光するときの漏れを抑制することが可能になる。
【0079】
また、本実施形態によれば、光分岐器C2Aの3つのポートに接続される3本の光ファイバF1A、F3A及びF5Aの口径を光ファイバF4Aのコントローラ側端部の口径と略等しい大口径とすることができる。光分岐器C2A(例えば、光カプラ)は、コア径が大きくなるほど波長域が広がるため、多波長光L1の波長域の広帯域化が容易になる。多波長光L1の波長域を広帯域化すれば、プローブ50により多波長光L1を集光させたときに、光軸AX上の焦点を結ぶ範囲が広範囲になる。これにより、例えば、プローブ50から遠距離にある測定対象物Wの表面の測定を行うことができる等、測定姿勢の自由度を高めることができる。
【0080】
さらに、テーパ光ファイバF4Aのプローブ50側の開口部APにおけるコア径を小さくすることが容易になる。開口部APにおけるコア径を小さくした場合、開口部APの空間フィルタ機能を高めることができ、分光器20に向かう反射光L2の線幅を小さくすることができる。この場合、
図6に示すように、光強度のグラフの横軸方向の幅が細くなるので、分解能を上げることができる。
【0081】
本実施形態によれば、多波長光L1の導光量を増加させることができるので、開口部APにおけるコア径を小さくしても、反射光L2の導光量を確保することができる。これにより、反射光L2の導光量の確保と分解能の向上とを同時に実現することができる。
【0082】
[第4の実施形態]
図7は、本発明の第4の実施形態に係る測定装置を示す構成図である。なお、以下の説明において、上記の実施形態と同様の構成については、同一若しくは枝番又は添字を付した符号を付して説明を省略する。
【0083】
図7に示すように、本実施形態に係る測定装置1Bでは、光分岐器C2-1BとコネクタC3Bとの間にテーパ光ファイバF3-2Bが設けられている。具体的には、光分岐器C2-1Bに光ファイバF3-1B及びコネクタC2-2Bが順次接続されており、コネクタC2-2BとコネクタC3Bとの間の光ファイバF3-2Bがテーパ光ファイバとなっている。そして、光ファイバF3-2Bでは、光分岐器C2-1B側のコネクタC2-2Bに接続される端部(大口径端部)の口径が、コネクタC3Bに接続される端部(小口径端部)の口径よりも大きくなっている。光ファイバF1B、F3-1B、F3-2B、F4B及びF5B、コネクタC2-2B、C3B、C4B及びC5B、光分岐器C2-1Bは、導光路の一例である。
【0084】
光分岐器C2-1Bの3つのポートに接続される3本の光ファイバ(光源12と光分岐器C2-1Bとの間の光ファイバF1B、光分岐器C2-1BとコネクタC2-2Bとの間の光ファイバF3-1B及び光分岐器C2-1Bと分光器20のコネクタC5Bとの間の光ファイバF5B)の口径は、光ファイバF3Bの大口径端部の口径と略等しくなっている。
【0085】
一方、コントローラ10Bとプローブ50とをつなぐ光ファイバF4Bの口径は、光ファイバF3Bの小口径端部の口径と略等しくなっている。
【0086】
本実施形態においても、光源12からの多波長光L1が入力される光ファイバF1Bが大口径であるため、多波長光L1を光ファイバF1Bに導光するときの漏れを抑制することが可能になる。
【0087】
また、本実施形態によれば、第3の実施形態と同様に、光分岐器C2-1Bの3つのポートに接続される3本の光ファイバF1B、F3-1B及びF5Bの接続端における口径を大きくすることができる。光分岐器C2-1B(例えば、光カプラ)は、コア径が大きくなるほど波長域が広がるため、多波長光L1の波長域の広帯域化が容易になる。
【0088】
さらに、テーパ光ファイバF3-2Bの小口径側端部の径を小さくすることにより、光ファイバF4Bの開口部APにおけるコア径を小さくすることが容易になるので、開口部APの空間フィルタ機能を高めることが容易になる。
【0089】
なお、導光路のテーパ部、すなわち、テーパ光ファイバ(F1、F3-2B)については、屈曲等の力学的ストレスに対する耐性が比較的低くなることが考えられる。第1、第2及び第4の実施形態は、第3の実施形態とは異なり、テーパ光ファイバ(F1、F3-2B)がコントローラ(10、10B)内に設けられており、力学的ストレスが加えられることが少ないので、特別な保護を施す必要がない。
【符号の説明】
【0090】
1、1A、1B…測定装置、10、10A、10B…コントローラ、50…プローブ、F1、F4A、F3-2B…テーパ光ファイバ