(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063986
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】スタートラッカ、光学パラメータ推定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B64G 1/36 20060101AFI20240507BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240507BHJP
【FI】
B64G1/36 100
G03B15/00 U
G03B15/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172223
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】稲川 智也
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、例えば焦点距離等の光学パラメータを高精度に推定することができるスタートラッカ、光学パラメータ推定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】スタートラッカ100は、星画像中の2つの星の位置を検出する星位置計算部30と、星位置計算部30での検出結果と第1光学パラメータとに基づいて星の方向を検出する星方向計算部40と、星を同定する星同定部50と、第1光学パラメータを更新可能な候補としての複数の第2光学パラメータを選定する光学パラメータ候補選定ソフトウェア120と、前記2つの星の離角の演算値と前記2つの星の離角の理論値との差を演算する星離角誤差計算部130と、前記差に基づいて複数の第2光学パラメータの中から1つの最適パラメータを決定する最適パラメータ決定ソフトウェア150とを備える。第1光学パラメータを最適パラメータに更新する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの星が含まれる画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像された前記画像中の各星の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段での検出結果と、前記画像の撮像における第1光学パラメータとに基づいて、前記画像中の星の方向を検出する方向検出手段と、
前記方向検出手段の検出結果に基づいて、前記画像中の星を同定する同定手段と、
前記第1光学パラメータを更新するパラメータ更新手段と、
を備え、
前記パラメータ更新手段は、
前記第1光学パラメータを更新可能な候補として複数の第2光学パラメータを選定する選定手段と、
前記位置検出手段での検出結果と、前記第2光学パラメータとに基づいた演算によって得られる前記画像中の星同士の離角の演算値と、前記同定手段での同定結果に基づいて得られる前記画像中の星同士の離角の理論値との差を演算する演算手段と、
前記演算手段で演算された前記差に基づいて、複数の前記第2光学パラメータの中から1つの最適パラメータを決定する決定手段と、を有し、
前記第1光学パラメータを、前記最適パラメータに更新することを特徴とするスタートラッカ。
【請求項2】
前記画像には、前記画像内の2つの星からなる組が複数存在しており、
前記演算手段は、前記組ごとに前記差を演算することを特徴とする請求項1に記載のスタートラッカ。
【請求項3】
前記演算手段は、前記第2光学パラメータごとに前記差の総和を演算し、
前記抽出手段は、前記演算手段で演算された前記総和に基づいて、前記複数の第2光学パラメータの中から最適パラメータを抽出することを特徴とする請求項2に記載のスタートラッカ。
【請求項4】
前記第1光学パラメータとして取り得る範囲全体に対し、所定の間隔ごとに設定された複数の前記第2光学パラメータ、または、前記第1光学パラメータに近い値の複数の前記第2光学パラメータが予め記憶されている記憶手段を備え、
前記選定手段は、前記記憶手段に記憶されている複数の前記第2光学パラメータから選定することを特徴とする請求項1に記載のスタートラッカ。
【請求項5】
前記位置検出手段での検出結果と、前記同定手段での同定結果とが記憶される記憶手段を備え、
前記演算手段には、前記記憶手段から前記位置検出手段での検出結果と前記同定手段での同定結果とが入力されることを特徴とする請求項1に記載のスタートラッカ。
【請求項6】
前記撮像手段の温度に関する温度情報を取得する温度情報取得手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のスタートラッカ。
【請求項7】
前記第1光学パラメータの更新は、前記温度の変化が所定値以上となった場合に実行されることを特徴とする請求項6に記載のスタートラッカ。
【請求項8】
前記選定手段は、前記温度情報取得手段で取得された前記温度情報に基づいて、前記第2光学パラメータを選定する選定範囲の拡大、縮小および変更のうちの少なくとも1つが可能であることを特徴とする請求項6に記載のスタートラッカ。
【請求項9】
前記撮像手段は、前記画像を撮像する撮像素子と、該撮像素子に向かって光を集光するレンズと、を有し、
前記第1光学パラメータおよび前記第2光学パラメータは、前記レンズの主点から前記撮像素子上の焦点までの焦点距離であることを特徴とする請求項1に記載のスタートラッカ。
【請求項10】
前記同定手段は、前記方向検出手段の検出結果と、恒星カタログとに基づいて、前記星を同定することを特徴とする請求項1に記載のスタートラッカ。
【請求項11】
前記スタートラッカは、宇宙機に搭載可能であり、
前記宇宙機の姿勢を推定する姿勢推定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のスタートラッカ。
【請求項12】
少なくとも2つの星が含まれる画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像された前記画像中の各星の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段での検出結果と、前記画像の撮像における第1光学パラメータとに基づいて、前記画像中の星を同定する同定手段と、
前記第1光学パラメータを更新するパラメータ更新手段と、
を備え、
前記パラメータ更新手段は、
前記第1光学パラメータを更新可能な候補として複数の第2光学パラメータを選定する選定手段と、
恒星カタログを用いて算出される前記画像中の各星に関する真値と、複数の前記第2光学パラメータごとに算出される値との誤差に基づいて前記第2光学パラメータの中から1つの最適パラメータを決定する決定手段と、を有することを特徴とするスタートラッカ。
【請求項13】
少なくとも2つの星が含まれる画像を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像された前記画像中の各星の位置を検出する位置検出工程と、
前記位置検出工程での検出結果と、前記画像の撮像における第1光学パラメータとに基づいて、前記画像中の星の方向を検出する方向検出工程と、
前記方向検出工程の検出結果に基づいて、前記画像中の星を同定する同定工程と、
前記第1光学パラメータを更新するパラメータ更新工程と、
を備え、
前記パラメータ更新工程は、
前記第1光学パラメータを更新可能な候補として複数の第2光学パラメータを選定する選定工程と、
前記位置検出工程での検出結果と、前記第2光学パラメータとに基づいた演算によって得られる前記画像中の星同士の離角の演算値と、前記同定工程での同定結果に基づいて得られる前記画像中の星同士の離角の理論値との差を演算する演算工程と、
前記演算工程で演算された前記差に基づいて、複数の前記第2光学パラメータの中から1つの最適パラメータを決定する決定工程と、を有し、
前記第1光学パラメータを、前記最適パラメータに更新することを特徴とする光学パラメータ推定方法。
【請求項14】
コンピュータを、請求項1に記載のスタートラッカの各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタートラッカ、光学パラメータ推定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星および宇宙探査機等の宇宙機は、スタートラッカが搭載されており、スタートラッカにより恒星の位置を検出して、当該検出された恒星の位置に基づいて宇宙機の姿勢を決定する。スタートラッカは、宇宙機用姿勢センサの1つであり、星画像を撮像する撮像素子を有し、撮像素子により撮像した星画像に基づいて、星位置を検出する。そして、検出された星位置を、星カタログ上での星位置と比較して星を同定し、宇宙機の姿勢を決定することができる。また、スタートラッカは、星位置に基づいて星方向も検出する。この検出には、スタートラッカの光学系の焦点距離や光軸ズレ量等の光学パラメータ値が必要となる。光学パラメータ値として、宇宙機の軌道上での真値を用いるのは取得上困難であるため、宇宙機の打ち上げ前に、例えば実験やシミュレーション等で取得された値等をデフォルト値として用いることが多い。
【0003】
一般的に、スタートラッカは、宇宙機用姿勢センサの中で、最も高精度のものに属する。そのため、スタートラッカに要求される精度は、通常、一桁arcsecである。例えば、実際の焦点距離が変化し、認識焦点距離と0.1mmのズレが生じただけでも要求精度を逸脱し、姿勢決定率も大幅に低下する。また、スタートラッカでは、姿勢決定中でも、実焦点距離や光軸ズレは時々刻々と変化していると考えられる。この主な原因としては、光学系の熱ひずみが挙げられる。スタートラッカは、例えば動作時の温度変化が80度以上になることもあり、その温度変化で焦点距離等が変化する。
【0004】
スタートラッカには、金属材料用いて強固に設計されているものや、熱膨張率の異なる複数の金属材料を用いて熱ひずみの影響を抑えるもの(例えば特許文献1参照)がある。この熱ひずみを抑える設計は、装置の重量の増加や生産コストの上昇につながるため、特に超小型の人工衛星に搭載されるスタートラッカにはそぐわない。そこで、多少の熱ひずみを許容し、それによる焦点距離等の変化を推定する、または、姿勢誤差を小さくするような値を認識値として逐次更新する方法があれば、軽量・安価で高精度なスタートラッカが実現できる可能性がある。この1つの方法として、温度と熱ひずみの関係を測定または推定し、当該関係に基づいて、最適パラメータを算出する方法がある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-208979号公報
【特許文献2】特開平7-270177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、複数点の温度を取得したとしても、当該温度情報のみからは、構造上の熱ひずみを高精度に補正するのは困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものである。本発明は、簡単な構成で、例えば焦点距離等の光学パラメータを高精度に推定することができるスタートラッカ、光学パラメータ推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のスタートラッカは、少なくとも2つの星が含まれる画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像された前記画像中の各星の位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段での検出結果と、前記画像の撮像における第1光学パラメータとに基づいて、前記画像中の星の方向を検出する方向検出手段と、前記方向検出手段の検出結果に基づいて、前記画像中の星を同定する同定手段と、前記第1光学パラメータを更新するパラメータ更新手段と、を備え、前記パラメータ更新手段は、前記第1光学パラメータを更新可能な候補として複数の第2光学パラメータを選定する選定手段と、前記位置検出手段での検出結果と、前記第2光学パラメータとに基づいた演算によって得られる前記画像中の星同士の離角の演算値と、前記同定手段での同定結果に基づいて得られる前記画像中の星同士の離角の理論値との差を演算する演算手段と、前記演算手段で演算された前記差に基づいて、複数の前記第2光学パラメータの中から1つの最適パラメータを決定する決定手段と、を有し、前記第1光学パラメータを、前記最適パラメータに更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な構成で、例えば焦点距離等の光学パラメータを高精度に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】熱ひずみによる焦点距離の変動を説明するための図である。
【
図2】スタートラッカにおける通常動作時の光学パラメータと、パラメータ推定動作時の光学パラメータとの関係を示す図である。
【
図4】星離角誤差和計算部の動作を説明するための表である。
【
図5】最適パラメータ決定ソフトウェアの動作を説明するための表である。
【
図6】光学パラメータ推定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、以下の実施形態に記載されている構成はあくまで例示に過ぎず、本発明の範囲は実施形態に記載されている構成によって限定されることはない。例えば、本発明を構成する各部や各手段は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0012】
以下、
図1~
図6を参照して、スタートラッカ100の実施形態について説明する。スタートラッカ(STT)100は、宇宙空間を飛行する宇宙機に搭載可能であり、宇宙空間で星を撮影して、宇宙機の姿勢(向き)を求める装置である。宇宙機としては、特に限定されず、例えば、人工衛星や人工惑星等の無人宇宙機、また、宇宙探査機、宇宙往還機、宇宙ステーション等の有人宇宙機が挙げられる。また、スタートラッカ100は、星の撮像における光学パラメータ(光学系パラメータ)を推定可能に構成されている。光学パラメータとしては、例えば本実施形態では焦点距離を挙げるが、これ限定されない。また、本実施形態では、光学パラメータには、第1光学パラメータと第2光学パラメータとがある。
【0013】
図1は、熱ひずみによる焦点距離の変動を説明するための図である。
図1(a)は、熱ひずみが生じる前の状態を示す。
図1(b)は、熱ひずみが生じた状態を示す。
図1(a)、
図1(b)に示すように、レンズ1と、レンズ1を支持する筒状の支持部品3と、支持部品3に収納された撮像素子2とが配置されている。レンズ1は、星からの光を撮像素子2に向かって集光する。撮像素子2は、2つの星である星ペア4を含む画像として、画像内星ペア5を撮像するものであり、レンズ1によって集光された光を電気信号に変換する。通常、スタートラッカ100は、画像内星ペア5に対し、レンズ1の主点から撮像素子2上の焦点までの焦点距離等に基づいて、星ペア4の方向や離角(角距離)を推定する。そして、この推定結果を恒星カタログと比較することにより、星を同定して、宇宙機の姿勢決定が行われる。しかし、スタートラッカ100においては、焦点距離の真値(実際の値)を逐次計測することは困難である。そのため、姿勢決定では、焦点距離に推定値を用いることになる。
【0014】
図1(a)に示す状態からスタートラッカ100が高温になることにより、熱ひずみが生じる。これにより、
図1(b)に示す状態となる。
図1(b)に示す状態では、支持部品3が膨張して、レンズ1が図中の上側に移動している。これにより、焦点距離が変化し、それに伴って、撮像素子2上の画像内星ペア5の位置も
図1(a)に示す状態での位置(
図1(b)中の二点鎖線で示す画像内星ペア5)と比べて変化する。ここで焦点距離の推定値として、
図1(a)に示す状態、すなわち、膨張前の値を用いた場合には、画像内星ペア5に基づいて得られる星ペア4の方向や離角の誤差が大きくなるおそれがある。そして、その誤差分、宇宙機の姿勢がズレるという問題が生じる。これを解決する従来の方法としては、例えば、スタートラッカの構造上の工夫によって熱膨張等を小さくする方法、スタートラッカの温度に関する情報に基づいて焦点距離を推定する方法等がある。これらの方法は、いずれも、前述したように軽量かつ高精度のスタートラッカ100を実現するためには不十分である。
【0015】
図2は、スタートラッカにおける通常動作時の光学パラメータと、パラメータ推定動作時の光学パラメータとの関係を示す図である。
図2(a)は、通常動作状態を示す図である。
図2(b)は、パラメータ推定動作状態を示す図である。
図2(c)は、撮像素子上の画像内星ペアの位置を示す図である。
図2(a)に示すように、撮像素子2には、星ペア4-1、4-2が画像内星ペア5-1、5-2として撮像されている。
図2(c)に示すように、撮像素子2上では、画像内星ペア5-1は、X軸座標で10ピクセル(10PX)、Y軸座標で75ピクセル(75PX)に位置する、すなわち、(X座標位置,Y座標位置)が(10,75)である。画像内星ペア5-2は、X軸座標で50ピクセル(50PX)、Y軸座標で25ピクセル(25PX)に位置する、すなわち、(X座標位置,Y座標位置)が(50,25)である。離角推定値α’は、画像内星ペア5-1、5-2の位置に基づいた演算によって得られた星ペア4-1、4-2の離角の推定値である。また、焦点距離認識値frは、レンズ1と撮像素子2間の距離である焦点距離である。焦点距離認識値frは、スタートラッカ100で認識されている認識値である。例えば、焦点距離認識値frは、常温での初期認識値として50mmである。スタートラッカ100では、画像内星ペア5-1、5-2の位置と、焦点距離認識値frとに基づいて、星ペア4-1、4-2の離角推定値α’を計算し、恒星カタログと比較して星同定を行う。
【0016】
図2(b)に示す星ペア4-3、4-4は、上述した流れによって同定されたものである。また、離角真値αは、恒星カタログから計算された星ペア4-3、4-4の離角の真値である。恒星カタログから計算する星離角は、一般的に非常に高精度なため、本実施形態では真値とする。焦点距離最適値ftは、以下に説明するパラメータ推定部110による最適パラメータ推定の結果算出された焦点距離の最適値を示している。
【0017】
スタートラッカ100では、まず、画像内星ペア5の位置情報と焦点距離候補値とを用いて離角推定値α’を計算し、星を同定する。次いで、同定された星ペアの星IDと恒星カタログとを参照して、星離角の真値(離角真値α)を計算する。離角推定値α’と離角真値αとは、焦点距離の誤差や星位置計算誤差等があるため、完全には一致しない。しかし、焦点距離候補値の取り方によっては、離角推定値α’と離角真値αとの差分Δα(=|α’-α|)を最小とするものが存在するはずである。そのような差分Δαを最小とする焦点距離候補値を焦点距離最適値ftとする。この焦点距離最適値ftをこれ以降、焦点距離認識値frとして使用することができる。これにより、真値に近いと考えられる焦点距離である焦点距離最適値ftを利用して星方向の計算、星同定、宇宙機の姿勢決定等を正確に行うことができる、すなわち、星方向計算精度、星同定精度、姿勢精度等が向上する。なお、本実施形態に係るスタートラッカ100では、星の同定を行うたびに焦点距離最適値ftを算出する最適パラメータ推定を実行するように構成されている。但し、これに限られるものではなく、スタートラッカ100内に設けられたサーミスタ等の温度取得部における温度の変化が所定値以上となった場合に、真値に近いと考えられる焦点距離を求め、後述するように第1光学パラメータを第2光学パラメータに更新する、つまり、温度変化により焦点距離が変化したと推定される場合に焦点距離を更新するように処理されるように構成してもよい。
【0018】
図3は、スタートラッカの機能ブロック図である。
図3に示すように、スタートラッカ100は、姿勢決定用動作部10、パラメータ推定部110、星位置・同定結果保存部(記憶手段)200、温度取得部(温度情報取得手段)300を有する。また、図示は省略するが、スタートラッカ100は、CPU(メインCPU)、記憶部(記憶手段)を有しており、上述した機能ブロックにおける各部は、これらCPUや記憶部によって実現される。記憶部は、例えばROMやRAMを有し、CPUが各機能として機能するために実行される各種プログラムが記憶される。また、記憶部には、恒星カタログ(星表)も予め記憶されている。
【0019】
姿勢決定用動作部10は、撮像部(撮像手段)20、星位置計算部(位置検出手段)30、星方向計算部(方向検出手段)40、星同定部(同定手段)50、姿勢決定部(姿勢推定手段)60を有する。撮像部20は、撮像素子21、信号処理回路22を有する。撮像素子21は、
図2中の撮像素子2に相当する。また、撮像部20は、レンズ1と、レンズ1を支持し、内側に撮像素子21が収納された支持部品3とを有する(
図2参照)。撮像素子21は、少なくとも2つの星(星ペア)が含まれる星画像を撮像する(撮像工程)。本実施形態では、星画像には、2つの星が組となり、当該組が複数存在していることとする。撮像素子21としては、特に限定されず、例えば、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ等で構成することができる。撮像素子21は、レンズ1を介して入射した光を受光し、その光の強度に応じたアナログ信号を信号処理回路22に出力する。信号処理回路22は、撮像素子21から受け取ったアナログ信号をデジタル信号に変換した後、画像データを生成する。信号処理回路22は、画像データを星位置計算部30に出力する。
【0020】
星位置計算部30は、撮像部20で撮像された星画像中の各星の位置を検出する(位置検出工程)。具体的には、星位置計算部30は、撮像部20で撮像された星画像内の星像を抽出して、その星像の位置を計算する。星位置計算部30で得られた星位置に関する情報は、星方向計算部40と、星位置・同定結果保存部200とに出力されて、宇宙機の姿勢決定のための星方向計算と光学パラメータ推定(最適パラメータ推定)とに使用される。星位置計算部30は、輝度ピーク探索回路/ソフトウェア31、星位置計算ソフトウェア32を有する。輝度ピーク探索回路/ソフトウェア31は、信号処理回路22から受け取った画像データの中で輝度が隣接画素のいずれよりも高い値を取る画素をピークピクセルとして保存する。輝度ピーク探索回路/ソフトウェア31は、ピークピクセルの位置に関する情報を星位置計算ソフトウェア32に出力する。星位置計算ソフトウェア32は、信号処理回路22から出力された画像データのうち、輝度ピーク探索回路/ソフトウェア31に保存されたピークピクセルの位置を中心とした範囲で輝度加重計算を行って、星位置を計算する。この計算結果は、宇宙機の姿勢計算のために星方向計算部40に出力されるとともに、パラメータ推定のために星位置・同定結果保存部200に出力される。
【0021】
星方向計算部40は、星位置計算部30での検出結果と、光学パラメータ(第1光学パラメータまたは第2光学パラメータ)とに基づいて、星の方向を検出する(方向検出工程)。星方向計算部40は、星方向計算ソフトウェア41、光学パラメータ保存部(記憶手段)42を有する。光学パラメータ保存部42には、星方向計算に使用される光学パラメータ、すなわち、第1光学パラメータおよび第2光学パラメータが保存されている。光学パラメータ保存部42は、光学パラメータを星方向計算ソフトウェア41に出力する。なお、光学パラメータ保存部42には、初回姿勢決定時には初期値としての第1光学パラメータが保存されているが、姿勢決定すれば、パラメータ推定部110の動作により、第1光学パラメータは、姿勢決定誤差が小さくなる値、すなわち、最適パラメータに更新される。星方向計算ソフトウェア41は、星位置計算部30での検出結果と、第1光学パラメータに基づいて、スタートラッカ100座標系での星方向を計算する。計算結果は、星同定部50と姿勢決定部60とに出力される。
【0022】
星同定部50は、星同定ソフトウェア51を有する。星同定ソフトウェア51は、星方向計算部40の検出結果と、恒星カタログとに基づいて、星画像中の各星を同定する(同定工程)。「同定」とは、星画像上の星が、宇宙の実際の星のどれに相当するのかを決定することを言う。星同定ソフトウェア51での同定結果は、姿勢決定部60に出力されるとともに、光学パラメータ推定のために星位置・同定結果保存部200にも出力される。
【0023】
姿勢決定部60は、姿勢決定ソフトウェア61を有する。姿勢決定ソフトウェア61は、星方向計算部40の検出結果と、星同定部50での同定結果とに基づいて、宇宙機の姿勢を決定する(推定する)。具体的には、姿勢決定ソフトウェア61は、慣性座標系における星方向と、星方向計算部40の出力であるスタートラッカ座標系での星方向とを比較して、慣性座標系とスタートラッカ座標系との座標変換行列を計算する。この計算により、宇宙機の姿勢を決定することができる。そして、この計算結果は、スタートラッカ100が搭載される宇宙機のメインコンピュータに出力される。
【0024】
星位置・同定結果保存部200には、星位置計算部30での検出結果と、星同定部50での同定結果(星IDの組み合わせ)とが記憶される。これらの記憶情報は、パラメータ推定部110に出力される。
【0025】
温度取得部300は、スタートラッカ100構成部品の1箇所以上の温度に関する温度情報を取得して、パラメータ推定部110に出力する。温度情報としては、例えば光学パラメータへの影響の大きい撮像部20の支持部品3の温度に関する温度情報を用いるのが好ましいが、これに限定されない。支持部品3の温度に関する温度情報を用いることにより、パラメータ推定部110は、温度に応じた第2光学パラメータの抽出範囲を決定することができ、最適値を含む、より狭い範囲での抽出も可能である。温度取得部300は、例えばサーミスタ等の温度センサを有する。
【0026】
パラメータ推定部110は、第1光学パラメータの最適パラメータへの更新を要する場合に用いられるものである。すなわち、パラメータ更新手段として機能する。パラメータ推定部110は、光学パラメータ候補選定ソフトウェア(選定手段)120、星離角誤差計算部(演算手段)130、パラメータ・誤差和計算保存ソフトウェア(演算手段)140、最適パラメータ決定ソフトウェア(決定手段)150を有する。パラメータ推定部110では、最適パラメータの候補として第2光学パラメータを複数決定した後、星位置・同定結果保存部200のデータを参照する。これにより、星離角誤差和を計算して、誤差和が最小になるか、または、事前に設定していた条件を満たす値となる第2光学パラメータを最適パラメータとして抽出することができる。最適パラメータは、星方向計算部40の光学パラメータ保存部42に出力される。
【0027】
光学パラメータ候補選定ソフトウェア120は、最適パラメータとなり得る複数の第2光学パラメータの値を選定する、すなわち、第1光学パラメータを更新可能な候補としての複数の第2光学パラメータを選定する(選定工程)。光学パラメータ候補選定ソフトウェア120は、光学パラメータ保存部42に記憶されている複数の第2光学パラメータから選定することができる。光学パラメータ保存部42には、第1光学パラメータとして取り得る範囲全体に対し、所定の間隔ごとに設定された複数の第2光学パラメータ、または、第1光学パラメータに近い値の複数の第2光学パラメータが予め記憶されている。これにより、光学パラメータ候補選定ソフトウェア120は、更新に適した複数の第2光学パラメータを迅速に選定することができる。ただし、これには限られず、光学パラメータ保存部42から第1光学パラメータを受け取った光学パラメータ候補選定ソフトウェア120が第2光学パラメータを生成してもよい。この場合、生成した第2光学パラメータをそのまま選定されたものとみなしてよい。また、光学パラメータ候補選定ソフトウェア120には、温度取得部300で取得された温度情報が入力される。光学パラメータ候補選定ソフトウェア120は、この温度情報に基づいて、第2光学パラメータを選定する選定範囲の拡大、縮小および変更(オフセット)のうちの少なくとも1つが可能である。例えば温度取得部300で取得された実温度が設計基準値に近い場合には、選定範囲を狭めることができる。また、これとは反対に、実温度が設計基準値から遠い(離れている)場合には、選定範囲を広げることができる。実温度が設計基準値よりも高い場合には、焦点距離が長くなる方向にオフセットした選定範囲で第2光学パラメータを選定することができる。また、これとは反対に、実温度が設計基準値よりも低い場合には、焦点距離が短くなる方向にオフセットした選定範囲で第2光学パラメータを選定することができる。このような選定により、更新に適した複数の第2光学パラメータの選定を正確かつ迅速に行うことができる。光学パラメータ候補選定ソフトウェア120での選定結果、すなわち、光学パラメータ候補選定ソフトウェア120で選定された複数の第2光学パラメータは、星離角誤差計算部130に順に出力される。また、この選定結果は、パラメータ・誤差和計算保存ソフトウェア140にも出力されて、保存される。
【0028】
星離角誤差計算部130には、星位置・同定結果保存部200から星位置計算部30での検出結果と星同定部50での同定結果とが入力される。そして、星離角誤差計算部130は、これらの結果等に基づいて、2つの星の離角の演算値と、2つの星の離角の理論値との差(以下「離角誤差」と言う)を演算することができる(演算工程)。演算値は、星位置・同定結果保存部200に保存されている星位置計算部30での検出結果と、光学パラメータ候補選定ソフトウェア120で選定された各第2光学パラメータとに基づいた演算によって得られる値である。理論値は、星位置・同定結果保存部200に保存されている星同定部50での同定結果に基づいて得られる値である。星離角誤差計算部130は、演算値を計算する離角計測値計算ソフトウェア131と、理論値を計算する離角理論値計算ソフトウェア132と、離角誤差を計算する離角誤差計算ソフトウェア133とを有する。離角誤差計算ソフトウェア133での計算結果、すなわち、離角誤差は、パラメータ・誤差和計算保存ソフトウェア140に出力されて、保存される。
【0029】
図4は、星離角誤差和計算部の動作を説明するための表である。前述したように、本実施形態では、星画像には、画像内星ペア5-1、5-2が複数組存在している。
図4に示すように、各組には、通し番号(No.1、No.2、No.3、・・・)が付されている。例えば通し番号がNo.1では、画像内星ペア5-1の星IDは、12545であり、画像内星ペア5-2の星IDは、14578である。星IDが12545の星画像(
図2(c)参照)上での座標(X座標134-1,Y座標135-1)は、(1000,1200)である。星IDが14578の星画像上での座標(X座標134-2,Y座標135-2)は、(500,826)である。
【0030】
離角計測値計算ソフトウェア131は、通し番号が付された組ごとに、(X座標134-1,Y座標135-1)および(X座標134-2,Y座標135-2)の情報と、光学パラメータ候補選定ソフトウェア120からの各第2光学パラメータの値とに基づいて、演算値としての離角推定値α’を計算する。この計算結果は、星同定結果である星ID(または通し番号)と紐づけられて、離角誤差計算ソフトウェア133に出力される。
【0031】
離角理論値計算ソフトウェア132は、通し番号が付された組ごとに、星IDと恒星カタログとに基づいて、理論値としての離角真値αを計算する。この計算結果は、星IDと紐づけられて、離角誤差計算ソフトウェア133に出力される。
【0032】
離角誤差計算ソフトウェア133は、通し番号が付された組ごとに、離角推定値α’と離角真値αとの差分Δα(=|α’-α|)である離角誤差を計算する。この計算結果は、星IDと第2光学パラメータとに紐づけられて、パラメータ・誤差和計算保存ソフトウェア140に出力される。
【0033】
パラメータ・誤差和計算保存ソフトウェア140は、第2光学パラメータごとに離角誤差の総和を計算する(演算する)。その後、パラメータ・誤差和計算保存ソフトウェア140は、各計算結果と、各第2光学パラメータとを紐づけて保存する。例えば第2光学パラメータとして、3つの第2光学パラメータ(第2光学パラメータA、第2光学パラメータB、第2光学パラメータC)があった場合、各組、すなわち、通し番号がNo.1、No.2、No.3、・・・では、それぞれ、第2光学パラメータAを用いたときの離角誤差Aと、第2光学パラメータBを用いたときの離角誤差Bと、第2光学パラメータCを用いたときの離角誤差Cとが存在することとなる。そして、パラメータ・誤差和計算保存ソフトウェア140は、通し番号がNo.1、No.2、No.3、・・・の離角誤差Aの総和を計算する。同様に、パラメータ・誤差和計算保存ソフトウェア140は、通し番号がNo.1、No.2、No.3、・・・の離角誤差Bの総和を計算する。また、パラメータ・誤差和計算保存ソフトウェア140は、通し番号がNo.1、No.2、No.3、・・・の離角誤差Cの総和を計算する。その後、パラメータ・誤差和計算保存ソフトウェア140は、第2光学パラメータAと離角誤差Aの総和とを紐づけ、第2光学パラメータBと離角誤差Bの総和とを紐づけ、第2光学パラメータCと離角誤差Cの総和とを紐づけて、これらを保存する。なお、誤差の総和を計算する際には、単純な加算をしてもよいし、二乗和を計算してもよい。また、誤差和と表現しているが、かならずしも単純な和を計算する方法に限らず、誤差の総和として扱われる演算であれば他の方法であっても誤差和の一種として同様に取り扱うことが可能である。
【0034】
図5は、最適パラメータ決定ソフトウェアの動作を説明するための表である。
図5に示すように、通し番号(No.1、No.2、No.3、・・・)ごとに、第2光学パラメータと、離角誤差和(離角誤差の総和)との関係が示されている。例えば上記の例を当てはめてみると、パターンAでは、第2光学パラメータが50mmとなり、離角誤差和が2360arcsecとなる。パターンBでは、第2光学パラメータが50.1mmとなり、離角誤差和が1463arcsecとなる。パターンCでは、第2光学パラメータが49.9mmとなり、離角誤差和が3675arcsecとなる。最適パラメータ決定ソフトウェア150は、これらの離角誤差和に基づいて、複数の第2光学パラメータの中から最適値となる1つの第2光学パラメータ(最適パラメータ)を決定する(決定工程)。具体的には、最適パラメータ決定ソフトウェア150は、パラメータ・誤差和計算保存ソフトウェア140に保存されているデータを参照して、離角誤差和が最小あるいは事前に設定していた条件を満たす値となる第2光学パラメータを最適パラメータとして決定する。
図5に示す例では、離角誤差和が最小値となるNo.2の1463arcsecが選択されて、パターンBの第2光学パラメータが最適パラメータ(=50.1mm)として決定される(抽出される)。この最適パラメータは、星方向計算部40の光学パラメータ保存部42に書き込まれる(反映される)。これにより、光学パラメータ保存部42では、第1光学パラメータが最適パラメータに更新される。そして、この最適パラメータに更新された第1光学パラメータは、通常の姿勢決定用動作で星方向計算をする際に使用される。
【0035】
図6は、光学パラメータ推定処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、ステップS100では、撮像部20は、星画像を取得する。
【0036】
ステップS101では、姿勢決定用動作部10は、星画像内の全ての星候補に対して、星位置計算部30での星位置計算と、星方向計算部40での星方向計算とが完了しているか否かを判断する。ステップS101での判断の結果、各計算が完了していると判断された場合には、処理はステップS102に進む。一方、ステップS101での判断の結果、各計算が完了していないと判断された場合には、処理はステップS104、ステップS105に順に進む。
【0037】
ステップS104では、星位置計算部30は、未星位置計算の星候補に対して、星位置計算を行う。
【0038】
ステップS105では、星方向計算部40は、未星方向計算の星候補に対して、星方向計算を行い、処理はステップS101に戻る。
【0039】
ステップS102では、星同定部50は、ステップS101で得られた星方向計算結果に基づいて、ステップS100で撮影した星画像内の星の同定を行う。星同定部50は、当該同定された星と、恒星カタログにおける星IDとを紐づける。
【0040】
ステップS103では、姿勢決定用動作部10は、ステップS102での同定結果(星ID)と、ステップS101で得られた星位置計算結果とを星位置・同定結果保存部200に保存して、処理はステップS106に進む。
【0041】
ステップS106では、姿勢決定用動作部10は、星位置・同定結果保存部200に保存されている星位置・星同定結果のデータ個数が、パラメータ推定に必要な数(閾値)以上であるか否かを判断する。なお、この閾値は、例えば星位置・同定結果保存部200に予め記憶されている。ステップS106での判断の結果、閾値以上であると判断された場合には、処理はステップS107に進む。一方、ステップS106での判断の結果、閾値以上ではないと判断された場合には、処理はステップS100に戻り、それ以降のステップを順に実行する。
【0042】
ステップS107では、光学パラメータ候補選定ソフトウェア120は、複数の第2光学パラメータを選定する。ここでは、最も単純な方法である、スタートラッカ100の構造上取り得る値全域から、ある差分ごとに候補値を選定することとする。
【0043】
ステップS108では、光学パラメータ候補選定ソフトウェア120は、ステップS107で選定した第2パラメータ候補のうち、離角誤差和計算に使用する第2光学パラメータを1つ選定する。そして、光学パラメータ候補選定ソフトウェア120は、当該選定した第2光学パラメータを星離角誤差計算部130(離角計測値計算ソフトウェア131)と、パラメータ・誤差和計算保存ソフトウェア140とに出力する。
【0044】
ステップS109では、星離角誤差計算部130は、星位置・同定結果保存部200に保存されている全星ペアに対し、星離角誤差計算部130で離角誤差を計算し、パラメータ・誤差和計算保存ソフトウェア140で離角誤差和を計算したか否かを判断する。ステップS109での判断の結果、計算が終了したと判断された場合には、処理はステップS114に進む。一方、ステップS109での判断の結果、計算が終了していないと判断された場合には、処理はステップS110に進む。
【0045】
ステップS110では、星離角誤差計算部130は、星位置・同定結果保存部200から、所定の星ペアの位置情報および同定情報を抽出する。
【0046】
ステップS111では、離角計測値計算ソフトウェア131は、ステップS110で抽出された位置情報と、ステップS107で選定された第2光学パラメータとに基づいて、離角推定値α’を計算する。離角計測値計算ソフトウェア131は、離角推定値α’を離角誤差計算ソフトウェア133に出力する。
【0047】
ステップS112では、離角理論値計算ソフトウェア132は、ステップS110で抽出された同定情報(星ID)と、恒星カタログとに基づいて、離角真値αを計算する。離角理論値計算ソフトウェア132は、離角真値αを離角誤差計算ソフトウェア133に出力する。
【0048】
ステップS113では、離角誤差計算ソフトウェア133は、ステップS111で計算された離角推定値α’と、ステップS112で計算された離角真値αとの差分Δαを計算する。そして、パラメータ・誤差和計算保存ソフトウェア140は、ステップS111で使用した第2光学パラメータに対応する離角誤差和を計算して、処理はステップS109に戻り、それ以降のステップを順に実行する。この場合、星離角誤差計算部130は、星位置・同定結果保存部200に保存されている星ペアのうち、離隔誤差和が計算されていない残りの星ペアを選択し、その星ペアに対し、ステップS110以降の処理を順に実行する。
【0049】
ステップS114では、最適パラメータ決定ソフトウェア150は、ステップS109までで得られた情報に基づいて、最適パラメータを決定可能か否かを判断する。具体的には、最適パラメータ決定ソフトウェア150は、ステップS109までで得られた各第2光学パラメータにおける離角誤差和のうち、予めに設定されている閾値を下回る第2光学パラメータが存在するか否か(条件1)、あるいは全ての第2光学パラメータ候補値について離角誤差和を計算したか(条件2)否かを判断する。ステップS114での判断の結果、これらの2つ条件のいずれかを満足する場合には、処理はステップS115に進む。一方、ステップS114での判断の結果、これらの2つ条件のいずれも満足しない場合には、処理はステップS108に戻り、それ以降のステップを順に実行する。
【0050】
ステップS115では、最適パラメータ決定ソフトウェア150は、離角誤差和を閾値、あるいは最小にする第2光学パラメータを抽出して、当該第2光学パラメータをその時点での最適パラメータとする。
【0051】
ステップS116では、最適パラメータ決定ソフトウェア150は、ステップS115で決定した最適パラメータを星方向計算部40の光学パラメータ保存部42に保存する。これにより、最適パラメータを姿勢決定用動作部10での処理に用いることができ、よって、宇宙機の姿勢決定を高精度に行うことができる。
【0052】
このようにスタートラッカ100は、例えば熱ひずみの影響を抑える金属材料を用いたり、熱ひずみを測定または推定したりする構成とは異なる簡単な構成とすることができるとともに、撮像部20での温度変化に応じた光学パラメータを高精度に推定することもできる。また、星離角の真値は、これまでの詳細な天体観測により取得され一般公開されているデータから非常に高精度に計算できる。そのため、当該データを利用すれば温度情報を用いる従来技術よりも高い精度で光学パラメータを推定できる。これにより、軽量かつ低コストでありながら高精度なスタートラッカ100を実現することができる。
【0053】
また、上記では、構造上取り得る値の選定範囲全域から第2パラメータ候補を決定する場合について説明した。この場合、1回のパラメータ推定動作で誤差を極小にするパラメータを発見可能であると考えられる。また、スタートラッカ100では、パラメータ候補を現在の推定値から近い値で選定値域を狭めて選定することも可能である。この場合、1回の動作で誤差和を極小とするパラメータの発見が困難となるおそれがあるが、撮影とパラメータ推定の処理を複数回繰り返すことにより、最終的に誤差和を極小とするパラメータを推定することができる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態においては、星ペアに対する離角を用いて最適パラメータの推定を行ったが、これに限られず、恒星カタログを用いて算出される真値に対し、第2光学パラメータを変化させることによって得られる値ごとの誤差を求め、それに基づいて第2光学パラメータのうちから最適パラメータを決定するものが含まれる。
【符号の説明】
【0056】
20 撮像部(撮像手段)
30 星位置計算部(位置検出手段)
40 星方向計算部(方向検出手段)
50 星同定部(同定手段)
100 スタートラッカ(STT)
120 光学パラメータ候補選定ソフトウェア(選定手段)
130 星離角誤差計算部(演算手段)
150 最適パラメータ決定ソフトウェア(決定手段)