(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000640
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】異常診断装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20231226BHJP
B60K 35/00 20240101ALI20231226BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G01M17/007 K
B60K35/00 Z
B60R16/02 650D
G01M17/007 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099443
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野澤 駿
(72)【発明者】
【氏名】古谷 竜洋
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA20
3D344AB01
(57)【要約】
【課題】通知ランプが正常に動作するか否かを運転者に認識させることが可能な異常診断装置を提供する。
【解決手段】
一態様では、車両の始動時に車両の異常の有無を判定する初期診断を実行する診断部と、車両に異常が検知されたときに点灯して、車両の異常を運転者に通知する警告ランプと、車両の周辺の物体を検知する物体検知部と、車両の周辺に物体が検知されたときに点灯して、物体の存在を運転者に通知する通知ランプと、初期診断の実行中に警告ランプ及び通知ランプを点灯させ、初期診断において車両の異常が検出されなかったときに警告ランプ及び通知ランプを消灯させる表示制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の始動時に前記車両の異常の有無を判定する初期診断を実行する診断部と、
前記車両に異常が検知されたときに点灯して、前記車両の異常を運転者に通知する警告ランプと、
前記車両の周辺の物体を検知する物体検知部と、
前記車両の周辺に前記物体が検知されたときに点灯して、前記物体の存在を前記運転者に通知する通知ランプと、
前記初期診断の実行中に前記警告ランプ及び前記通知ランプを点灯させ、前記初期診断において前記車両の異常が検出されなかったときに前記警告ランプ及び前記通知ランプを消灯させる表示制御部と、
を備える、異常診断装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記初期診断において前記車両の異常が検知されたときに、前記警告ランプを点灯させ、前記通知ランプを消灯させる、請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項3】
前記警告ランプは、前記物体検知部による物体検知機能の異常を通知する、請求項2に記載の異常診断装置。
【請求項4】
前記診断部は、前記初期診断の実行中に前記通知ランプが点灯しているか否かを判定し、
前記表示制御部は、前記初期診断の実行中に前記通知ランプが点灯していないと判定されたときに、前記警告ランプを点灯させる、請求項3に記載の異常診断装置。
【請求項5】
前記通知ランプは、第1色及び第2色を含む2種以上の色彩で発光可能であり、
前記表示制御部は、前記初期診断の実行中に前記通知ランプを前記第1色及び前記第2色の順で点灯させる、請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項6】
前記初期診断の実行中の前記第1色での点灯時間及び前記第2色での点灯時間の合計は、前記初期診断の実行中の前記警告ランプの点灯時間と一致する、請求項5に記載の異常診断装置。
【請求項7】
前記通知ランプは、前記車両のフロントピラーに設けられている、請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項8】
前記車両の異常に関するメッセージを表示する表示装置を更に備え、
前記表示制御部は、異常の発生箇所を示す情報と、異常のレベルを示す情報とを含むメッセージを前記表示装置に表示させる、請求項1~7の何れか一項に記載の異常診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用の異常診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者に車両の異常を通知する警告ランプを備える車両が知られている。例えば、特許文献1には、イグニッションオンに伴ってメータパネル上の複数の警告灯を同時に点灯させ、これらの警告灯が正常に点灯するか否かを診断し、所定の時間後にこれらの警告灯を同時に消灯させる装置について記載されている。
【0003】
また、メータパネルの外部に他車両の接近を運転者に通知する通知ランプが設けられた車両が知られている。例えば、特許文献2には、他車両の接近を検知するセンサと、インストルメントパネルに配置された左右一対の表示領域と、を備え、検知された他車両の接近方向に応じて左右一対の表示領域を発光させることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、現在及び将来の車線変更要注意度を判定し、自車両の右側についての現在及び将来の車線変更要注意度を右側のフロントピラーに設けた表示通知器を発光させて運転者に通知し、自車両の左側についての現在及び将来の車線変更要注意度を左側のフロントピラーに設けた表示通知器を発光させて運転者に通知することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-066645号公報
【特許文献2】特開2021-189808号公報
【特許文献3】特許6415507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の装置では、車両の始動時に警告ランプを同時に点灯させることで初期診断が行われていることを運転者に通知している。一方で、特許文献2及び3に記載の通知ランプは、他車両が自車両に接近したときに点灯するものであり、運転者は、車両の運転開始前に通知ランプが正常に動作するか否かを判断することができない。
【0007】
そこで、本開示は、通知ランプが正常に動作するか否かを運転者に認識させることが可能な異常診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様に係る異常診断装置は、車両の始動時に車両の異常の有無を判定する初期診断を実行する診断部と、車両に異常が検知されたときに点灯して、車両の異常を運転者に通知する警告ランプと、車両の周辺の物体を検知する物体検知部と、車両の周辺に物体が検知されたときに点灯して、物体の存在を運転者に通知する通知ランプと、初期診断の実行中に警告ランプ及び通知ランプを点灯させ、初期診断において車両の異常が検出されなかったときに警告ランプ及び通知ランプを消灯させる表示制御部と、を備える。
【0009】
本態様に係る異常診断装置では、初期診断の実行中に警告ランプ及び通知ランプが点灯し、初期診断の実行後に警告ランプ及び通知ランプが消灯する。したがって、車両の運転者は、車両の運転開始前に通知ランプが正常に動作することを確認することができる。
【0010】
一実施形態では、表示制御部は、初期診断において車両の異常が検知されたときに、警告ランプを点灯させ、通知ランプを消灯させてもよい。この実施形態では、車両の異常が検知したときに警告ランプが点灯するので、運転者に車両の異常を認識させることができる。
【0011】
一実施形態では、警告ランプは、物体検知部による物体検知機能の異常を通知してもよい。この実施形態では、警告ランプを点灯することにより、物体検知機能に異常があることを運転者に認識させることができる。
【0012】
一実施形態では、診断部は、初期診断の実行中に通知ランプが点灯しているか否かを判定し、表示制御部は、初期診断の実行中に通知ランプが点灯していないと判定されたときに、警告ランプを点灯させてもよい。この実施形態では、通知ランプが正常に点灯しないときに警告ランプが点灯するので、通知ランプの故障を運転者に認識させることができる。
【0013】
一実施形態では、通知ランプは、第1色及び第2色を含む2種以上の色彩で発光可能であり、表示制御部は、初期診断の実行中に通知ランプを第1色及び第2色の順で点灯させてもよい。初期診断中に前記通知ランプを前記第1色及び前記第2色の順で点灯させることにより、運転開始前に通知ランプが各色彩で正常に点灯することを運転者に認識させることができる。
【0014】
一実施形態では、初期診断の実行中の第1色での点灯時間及び第2色での点灯時間の合計は、初期診断の実行中の警告ランプの点灯時間と一致していてもよい。通知ランプの点灯時間を警告ランプの点灯時間と一致させることにより、通知ランプの初期診断を行っていることを運転者に認識させることができる。なお、通知ランプは、車両のフロントピラーに設けられていてもよい。
【0015】
一実施形態に係る異常診断装置は、車両の異常に関するメッセージを表示する表示装置を更に備え、表示制御部は、異常の発生箇所を示す情報と、異常のレベルを示す情報とを含むメッセージを表示装置に表示させてもよい。この実施形態では、異常の解消に有益な情報を提供することができる。例えば、運転者は、表示装置に表示される車両の異常の発生箇所及び異常のレベルを示す情報に基づいて、修理業者に修理を依頼するか、或いは、一般的なメンテナンスで異常を解消できるのかを判断することができるので、車両のメンテナンス性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様及び種々の実施形態によれば、通知ランプが正常に動作するか否かを運転者に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る異常診断装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】複数のレーダを搭載する車両を示す図である。
【
図6】一実施形態に係る異常診断方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととし、同一又は相当の部分に対する重複した説明は省略する。
【0019】
図1は、一実施形態に係る異常診断装置の機能的構成を示すブロック図である。
図1に示す異常診断装置10は、車両1に搭載される。異常診断装置10は、車両1に搭載される各種装置の異常の有無を判定し、異常がある場合にはその装置に対応する警告ランプを点灯させる。車両1の運転者は、警告ランプの点灯により、車両1の異常を認識し、車両1の修理又はメンテナンスする。なお、以下の説明において、「異常」には故障が含まれ、「点灯」には点滅が含まれる。
【0020】
異常診断装置10を搭載する車両1は、トラック、トレーラ、バス又は乗用車である。
図1に示すように、車両1は、異常診断装置10及び検知部20を備える。検知部20は、車両1の車両情報、及び、周辺情報を取得する種々のセンサを含む。車両情報は、例えば車両1の速度情報、位置情報、ヨーレート情報、及び、車両1に搭載される各種装置の状態に関する情報を含む。車両1に搭載される各種装置としては、エンジン、エンジン冷却装置、サービスブレーキ、パーキングブレーキ、車両ドア、燃料供給装置、ハイブリッドシステム、シートベルト、ワイパー駆動ユニット及び物体検知装置が例示される。周辺情報は、例えば車両1の周辺の物体の位置、形状、速度及び進行方向に関する情報を含む。
【0021】
一実施形態では、検知部20は、レーダ装置21、カメラ22、エンジンオイルセンサ23、冷却水センサ24、パーキングブレーキセンサ25、ドアセンサ26及び燃料センサ27を含む。なお、検知部20は、車両1に搭載される各種装置の状態を検知する他のセンサを更に備えていてもよい。
【0022】
レーダ装置21は、電波又は光を車両1の周辺に送信し、物体で反射された電波又は光を受信することで車両1の周辺の物体を検出する。レーダ装置21としては、例えば、ミリ波レーダ又はライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)が用いられる。レーダ装置21が検出する物体としては、他車両、障害物及び歩行者等が例示される。
【0023】
レーダ装置21は、複数のレーダを含んでいてもよい。例えば、
図2に示すように、車両1は、前方レーダ21a、左前方レーダ21b、右前方レーダ21c、左側方レーダ21d及び右側方レーダ21eを含む。前方レーダ21aは、車両1の前方の物体を検出する。左前方レーダ21bは、車両1の左前方の物体を検出する。右前方レーダ21cは、車両1の右前方の物体を検出する。左側方レーダ21dは、車両1の左側方の物体を検出する。右側方レーダ21eは、車両1の右側方の物体を検出する。
【0024】
カメラ22は、車両1のフロントガラスに設けられ、車両1の前方を撮像する。カメラは、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。ステレオカメラは、両眼視差を再現するように配置された二つの撮像部を有する。ステレオカメラの撮像情報には、奥行き方向の情報も含まれる。
【0025】
エンジンオイルセンサ23は、エンジンオイルの残量を計測する。冷却水センサ24は、エンジンの冷却水の温度を計測する。パーキングブレーキセンサ25は、パーキングブレーキの作動状態を検出する。ドアセンサ26は、車両1のドアの開閉状態を検出する。燃料センサ27は、燃料の残量を計測する。
【0026】
検知部20の種々のセンサは、検出結果を示すデータを車載ネットワーク(例えば、CAN(Controller Area Network)を介して異常診断装置10に出力する。なお、種々のセンサのうち一以上のセンサは、専用線を介して異常診断装置10に接続されてもよい。
【0027】
異常診断装置10は、制御装置30及び報知装置40を含む。制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CAN(Controller Area Network)通信回路などを有する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。制御装置30は、例えばCAN通信回路を用いて通信するネットワークに接続され、車両1の各構成要素と通信可能に接続される。制御装置30は、例えば、CPUが出力する信号に基づいて、CAN通信回路を動作させてデータを入出力し、データをRAMに記憶し、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行することで、後述する各種機能を実現する。制御装置30は、複数の電子制御ユニットから構成されてもよい。
【0028】
制御装置30は、機能的構成として、物体検知部31、表示制御部32及び診断部33を備える。物体検知部31は、レーダ装置21及びカメラ22の出力データに基づいて、車両1の周辺の物体を検知する。表示制御部32は、警告ランプ及び通知ランプの点灯状態を制御して、車両1の異常又は物体の接近を運転者に通知する。診断部33は、車両1の各種装置の異常の有無を判定する。物体検知部31、表示制御部32及び診断部33の機能の詳細については、後述する。
【0029】
報知装置40は、車両1の異常又は物体の接近を運転者に通知する。報知装置40は、警告ランプ41、メッセージ表示部42、及び、通知ランプ43,44,45を備える。警告ランプ41は、車両1の異常の有無を通知する所謂テルテールランプである。メッセージ表示部42は、液晶ディスプレイ及び有機ELディスプレイ等の表示装置であり、車両1の異常に関するメッセージを表示する。
【0030】
一実施形態では、警告ランプ41及びメッセージ表示部42は、車両1の運転席の前方に設けられるメータパネル51内に配置される。
図3は、メータパネル51の一例を示している。
図3に示すように、メータパネル51は、車両1の速度を示す速度メータM1、エンジン回転数を示すタコメータM2、警告ランプ41、及び、メッセージ表示部42を含む。
【0031】
警告ランプ41は、車両1に搭載される各種装置の異常を運転者に通知する。警告ランプ41は、異常の緊急度に応じて異なる色で発光してもよい。例えば、高い緊急性の異常が発生した場合には警告ランプ41が赤色で点灯し、中程度の緊急性の異常が発生した場合には警告ランプ41が黄色で点灯し、低い緊急度の異常が発生した場合には警告ランプ41が緑色で点灯する。異常が発生した装置を識別できるように、警告ランプ41は、装置に対応した形状を有している。
【0032】
図4は、メータパネル51に配置される警告ランプ41の一例を示している。
図4に示す実施形態では、警告ランプ41は、ブレーキ警告ランプ41a、油圧警告ランプ41b、水温警告ランプ41c、充電警告ランプ41d、ハイブリッドシステム警告ランプ41e、ドア警告ランプ41f、シートベルト警告ランプ41g、燃料残量警告ランプ41h、物体検知警告ランプ41i、及び、ウォッシャ液警告ランプ41jを含んでいる。
【0033】
ブレーキ警告ランプ41aは、パーキングブレーキの作動が検知されたときに点灯する。油圧警告ランプ41bは、エンジンオイルの圧力不足が検出されたときに点灯する。水温警告ランプ41cは、エンジンの冷却水の温度が基準値以上であるときに点灯する。充電警告ランプ41dは、車両1に搭載されるバッテリの電圧が基準値以下であるときに点灯する。
【0034】
ハイブリッドシステム警告ランプ41eは、ハイブリッドシステムに異常が検出されたときに点灯する。ドア警告ランプ41fは、車両1のドアが開いているときに点灯する。シートベルト警告ランプ41gは、シートベルトが未装着であるときに点灯する。燃料残量警告ランプ41hは、燃料の残量が基準値以下であるときに点灯する。
【0035】
物体検知警告ランプ41iは、後述する物体検知部31による物体検知機能に異常があるときに点灯する。ウォッシャ液警告ランプ41jは、ウォッシャ液の残量が基準値以下であるときに点灯する。
【0036】
通知ランプ43,44,45は、LED等の発光体であり、車両1の周辺に物体が存在することを運転者に通知する。
図5は、通知ランプの配置の一例を示している。
図5に示すように、通知ランプ43は、車両1の左フロントピラー52に設けられている。通知ランプ43は、車両1の左側に物体が検知されたときに点灯して、車両1の左方向からの物体の接近を運転者に通知する。通知ランプ44は、車両1の右フロントピラー53に設けられている。通知ランプ44は、車両1の右側に物体が検知されたときに点灯して、車両1の右方向からの物体の接近を運転者に通知する。例えば、運転者は、通知ランプ43,44の点灯状況を踏まえて進路変更(車線変更又は右左折等)を行うか否かを判断する。
【0037】
通知ランプ45は、運転席前方のインストルメントパネル54に設けられている。通知ランプ45は、車両1の前方に物体が検知されたときに点灯して、車両1の前方からの物体の接近を運転者に通知する。
【0038】
通知ランプ43,44,45は、二種以上の色彩で発光可能であってもよい。例えば、通知ランプ43,44,45の点灯色は、車両1と検知された物体との距離に応じて変化する。例えば、通知ランプ43,44,45は、物体までの距離が基準値より大きいときに黄色(第1色)で点灯し、物体までの距離が基準値以下であるときに赤色(第2色)で点灯する。物体までの距離に応じて通知ランプ43,44,45の点灯色を変化させることにより、物体の危険度を運転者に認識させることができる。
【0039】
次に、制御装置30の物体検知部31、表示制御部32及び診断部33についてより詳細に説明する。物体検知部31は、レーダ装置21及びカメラ22の出力に基づいて、車両1の周辺に存在する物体を検知する。例えば、物体検知部31は、前方レーダ21a、左前方レーダ21b、右前方レーダ21c、左側方レーダ21d及び右側方レーダ21eからの出力データを受信し、車両1の前方、左前方、右前方、左側方及び右側方に存在する物体を検知し、車両1を基準とする検知された物体の方向を取得する。例えば、物体検知部31は、右側方レーダ21eによって物体が検知された場合には、車両1の右側に物体が存在すると認識する。
【0040】
また、物体検知部31は、車両1から検知した物体までの距離を取得する。なお、物体が車両1の前方に存在する場合には、物体検知部31は、カメラ22の前方画像に画像認識処理を行って物体までの距離を取得してもよい。そして、物体検知部31は、車両1から物体までの距離に基づいて、車両1と物体との衝突の危険度を算出する。
【0041】
例えば、物体検知部31は、物体までの距離が第1閾値よりも小さい場合には、危険度を「高」に設定する。物体検知部31は、物体までの距離が第1閾値以上、第2閾値以下である場合には、危険度を「中」に設定する。ここで、第2閾値は、第1閾値よりも大きな値である。物体検知部31は、物体までの距離が第2閾値より大きい場合には、危険度を「低」に設定する。すなわち、物体検知部31は、車両1から物体までの距離が近いほど危険度を高く設定する。物体検知部31は、物体の方向を示す情報、及び、危険度を示す情報を表示制御部32に出力する。
【0042】
表示制御部32は、物体検知部31から出力された情報に基づいて、通知ランプ43,44,45の点灯状態を制御する。例えば、物体が車両1の左側方に検出された場合には、表示制御部32は、左フロントピラー52に設けられた通知ランプ43を点灯させる。物体が車両1の右側方に検出された場合には、表示制御部32は右フロントピラー53に設けられた通知ランプ44を点灯させる。また、物体が車両1の前方、左前方又は右前方に検出された場合には、表示制御部32は、インストルメントパネル54に設置された通知ランプ45を点灯させる。上記のように、検知された物体の方向に応じて通知ランプ43,44,45の点灯を制御することにより、運転者に物体の接近方向を認識させることが可能となる。
【0043】
また、表示制御部32は、物体の衝突の危険度に応じて通知ランプ43,44,45の点灯色を制御してもよい。物体検知部31によって設定された物体の危険度が「高」である場合には、表示制御部32は、通知ランプ43,44,45のうち対象の通知ランプを赤色で点灯させる。物体検知部31によって設定された物体の危険度が「中」である場合には、表示制御部32は、通知ランプ43,44,45のうち対象の通知ランプを黄色で点灯させる。物体検知部31によって設定された物体の危険度が「低」である場合には、表示制御部32は、通知ランプ43,44,45のうち対象の通知ランプを消灯させる。上記のように、危険度に応じて通知ランプ43,44,45の点灯色を変化させることにより、車両1の運転者に物体の危険度を認識させることができる。
【0044】
診断部33は、車両1の始動時に当該車両1の異常の有無を判定する初期診断を実行する。初期診断は、車両1が始動される毎に実行される。初期診断では、車両1に搭載される各種装置が正常に動作するか否かが検査される。
【0045】
例えば、診断部33は、検知部20の各種センサの出力に基づいて、車両1の異常を検知する。車両1に異常が検知された場合には、異常が発生した装置を示す情報を表示制御部32に出力する。例えば、診断部33は、レーダ装置21及びカメラ22の異常の有無を判定するために、診断部33は、レーダ装置21及びカメラ22に制御信号を送信して、レーダ装置21及びカメラ22に自己診断制御を実行させる。自己診断制御によってレーダ装置21又はカメラ22に異常が検知された場合には、レーダ装置21又はカメラ22からエラーコードを受信する。レーダ装置21又はカメラ22に異常があると物体検知部31による物体検知の精度が低下する。そこで、診断部33は、レーダ装置21又はカメラ22からエラーコードを受信した場合には、物体検知機能に異常があることを示す情報を表示制御部32に出力する。
【0046】
また、診断部33は、初期診断において通知ランプ43,44,45が正常に点灯しているか否かを判定する。例えば、診断部33は、通知ランプ43,44,45に供給される電流値を計測し、計測した電流値が基準値以下の場合に通知ランプ43,44,45に異常があると判定する。
【0047】
また、診断部33は、エンジンオイルセンサ23によって計測されたエンジンオイルの残量を示す情報を取得し、エンジンオイルの残量が基準値以下である場合には、エンジンオイルの残量に異常があると判定する。また、診断部33は、冷却水センサ24によって計測されたエンジンの冷却水の温度を示す情報を取得し、冷却水の温度が基準値以下である場合には、冷却水の温度に異常があると判定する。
【0048】
さらに、診断部33は、パーキングブレーキセンサ25によってパーキングブレーキの作動が検出された場合には、パーキングブレーキが作動中であると判定する。診断部33は、ドアセンサ26によって車両1のドアが開状態あることが検出された場合には、ドアが開状態であると判定する。診断部33は、燃料センサ27によって計測された燃料の残量が基準値以下である場合には、燃料残量に異常があると判定する。なお、診断部33は、初期診断の実行後に車両1の各種装置の検査を所定の周期で行ってもよい。
【0049】
表示制御部32は、診断部33による初期診断の実行中に、警告ランプ41、通知ランプ43,44,45の点灯状態を制御する。具体的には、表示制御部32は、初期診断の実行中に警告ランプ41及び通知ランプ43,44,45を同時に点灯させる。このとき、警告ランプ41及び通知ランプ43,44,45の点灯時間は、運転者が点灯を認識できる程度の時間にする。警告ランプ41及び通知ランプ43,44,45が同時に点灯させることにより、初期診断の実行が行われていることを運転者に認識させることができる。初期診断において、車両1に搭載された各種装置に異常が発見されなかった場合には、表示制御部32は、警告ランプ41、通知ランプ43,44,45を同時に消灯させる。
【0050】
ここで、表示制御部32は、初期診断の実行中に通知ランプ43,44,45を黄色及び赤色に順番に点灯させてもよい。このとき、初期診断の実行中の通知ランプ43,44,45を黄色での点灯時間と赤色での点灯時間の合計は、初期診断の実行中の警告ランプ41の点灯時間に一致させる。すなわち、通知ランプ43,44,45は、警告ランプ41と同じタイミングで点灯し、警告ランプ41と同じタイミングで消灯する。このように、初期診断の実行中に通知ランプ43,44,45を警告ランプ41と連動して点灯させることにより、通知ランプ43,44,45が正常に動作することを運転者に認識させることができる。
【0051】
一方、初期診断において、車両1の異常が検出された場合には、表示制御部32は、通知ランプ43,44,45を消灯させ、異常が検出された装置に対応する警告ランプ41を点灯させる。例えば、初期診断においてパーキングブレーキの作動が検出された場合には、表示制御部32は、ブレーキ警告ランプ41aを点灯させる。また、初期診断においてエンジンオイルの残量に異常があると判定された場合には、表示制御部32は、油圧警告ランプ41bを点灯させる。初期診断においてエンジンの冷却水の温度に異常があると判定された場合には、表示制御部32は水温警告ランプ41cを点灯させる。
【0052】
また、初期診断において車両1のドアが開状態あると判定され場合には、表示制御部32は、ドア警告ランプ41fを点灯させる。初期診断において燃料残量に異常があると判定された場合には、表示制御部32は、燃料残量警告ランプ41hを点灯させる。これらの警告ランプ41を点灯させることにより、運転者は、車両1の各種装置に異常があることを認識することができる。
【0053】
さらに、初期診断においてレーダ装置21又はカメラ22に異常があると判定された場合には、表示制御部32は、物体検知警告ランプ41iを点灯させる。上記のように、診断部33は、初期診断の実行中に通知ランプ43,44,45が正常に点灯しているか否かを判定する。初期診断において通知ランプ43,44,45が点灯していないと判定された場合には、表示制御部32は、物体検知警告ランプ41iを点灯させる。断線等により通知ランプ43,44,45が正常に点灯しない場合には、物体の接近を運転者に通知することができないためである。運転者は、物体検知警告ランプ41iの点灯によって、物体検知部31による物体検知機能が正常に動作しないことを認識することができる。
【0054】
また、表示制御部32は、車両1の異常の発生箇所を示す情報、及び、異常のレベルを示す情報を含むメッセージをメッセージ表示部42に表示する。例えば、異常の発生箇所を示す情報とは、異常が発生している装置を特定するメッセージである。異常のレベルを示す情報とは、異常の深刻度を表す情報である。例えば、表示制御部32は、簡易的なメンテナンスで異常を解消できるのか、又は、異常の解消に専門の修理業者による修理が必要であるのかを示す情報を異常のレベルを示す情報として表示する。表示制御部32は、例えば、レーダ装置21又はカメラ22から受診したエラーコードに基づいて、異常のレベルを特定する。
【0055】
例えば、エラーコードに基づいて右前方レーダ21cに深刻な発生が発生したと判定された場合には、表示制御部32は、メッセージ表示部42に「右前方レーダに深刻な不具合が発生しました。速やかに販売店で点検を受けてください。」という警告メッセージを表示する。また、カメラ22に不具合が発生したもののレンズの清掃で不具合が改善すると判定されたば場合には、表示制御部32は、例えばメッセージ表示部42に「カメラを清掃してください。」という警告メッセージを表示する。
【0056】
上記のようなメッセージをメッセージ表示部42に表示することにより、運転者は、異常の発生箇所を把握することができると共に、異常に対する対処法を容易に理解することができる。例えば、運転者は、メッセージ表示部42に表示された異常のレベルに応じて、車両1の修理を専門の修理業者に依頼するか、或いは、一般的なメンテナンスで異常を解消するかを判断することが可能となる。したがって、車両1のメンテナンス性が向上する。
【0057】
以下、
図6を参照して、異常診断装置10によって実行される異常診断方法について説明する。
図6は、一実施形態に係る異常診断方法を示すフローチャートである。この方法では、まず車両1のエンジンが始動される(ステップST1)。エンジンが始動されると、診断部33が車両1の異常の有無を判定する初期診断を実行する(ステップST2)。表示制御部32は、診断部33による初期診断が実行中に、警告ランプ41及び通知ランプ43,44,45を点灯させる(ステップST3)。このとき、表示制御部32は、通知ランプ43,44,45を黄色及び赤色の順で点灯させる。
【0058】
この初期診断中に、診断部33は、通知ランプ43,44,45が正常に点灯しているか否かを判定する。通知ランプ43,44,45が正常に点灯していないと判定した場合には、物体検知部31による物体検知機能に異常があると判定する。
【0059】
次に、表示制御部32は、初期診断において車両1の異常が発見された否かを判定する(ステップST4)。車両1の異常が発見されなかった場合には、表示制御部32は、警告ランプ41及び通知ランプ43,44,45を消灯させる(ステップST5)。一方、車両1の異常が発見された場合には、表示制御部32は、警告ランプ41を点灯させ、通知ランプ43,44,45を消灯させる(ステップST6)。ここで、複数の警告ランプ41を有する場合には、表示制御部32は、異常の発見された特定の装置に対応する警告ランプ41のみを点灯させ、異常の発見されなかった他の警告ランプ41を消灯させる。例えば、初期診断中に通知ランプ43,44,45の少なくとも1つが正常に点灯しなかった場合には、物体検知警告ランプ41iを点灯させ、他の警告ランプ41を消灯させる。また、表示制御部32は、車両1の異常の発生箇所を示す情報、及び、異常のレベルを示す情報を含むメッセージをメッセージ表示部42に表示する。
【0060】
初期診断の実行後、診断部33は、車両1の異常の有無を判定する異常診断を実行する(ステップST7)。異常診断では、例えば初期診断と同じ項目について検査が行われる。次に、表示制御部32は、異常診断において車両1の異常が発見された否かを判定する(ステップST8)。異常診断において車両1の異常が発見されなかった場合には、表示制御部32は、警告ランプ41及び通知ランプ43,44,45を消灯させたままにする(ステップST9)。一方、異常診断において車両1の異常が発見された場合には、表示制御部32は、警告ランプ41を点灯させる(ステップST10)。例えば、車両1の燃料が基準値以下であると判定された場合には、表示制御部32は、燃料残量警告ランプ41hを点灯させる。この異常診断は、エンジンの始動中に所定の周期で繰り返し実行される。
【0061】
以上説明したように、一実施形態の異常診断装置10では、初期診断の実行中に警告ランプ41及び通知ランプ43,44,45が点灯され、初期診断の実行後に警告ランプ41及び通知ランプ43,44,45が消灯される。このように、車両1の始動時に通知ランプ43,44,45を警告ランプ41と連動させて点灯及び消灯させることにより、運転開始前に通知ランプ43,44,45が正常に動作することを運転者に認識することができる。
【0062】
以上、種々の実施形態に係る異常診断装置10について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。例えば、上記実施形態では、左フロントピラー52、右フロントピラー53及びインストルメントパネル54に通知ランプ43,44,45が設けられているが、異常診断装置10は、少なくとも一つの通知ランプを備えていればよい。同様に、異常診断装置10は、少なくとも一つの警告ランプ41を備えていればよい。上述した種々の実施形態は、矛盾が生じない範囲で組み合わせることが可能である。
【0063】
以下に列挙する条項を参照して、本発明を説明する。なお、本発明は、具体的な列挙がなくても、以下の条項を任意の組み合わせで含んでいてもよい。
【0064】
1. 車両の始動時に前記車両の異常の有無を判定する初期診断を実行する診断部と、
前記車両に異常が検知されたときに点灯して、前記車両の異常を運転者に通知する警告ランプと、
前記車両の周辺の物体を検知する物体検知部と、
前記車両の周辺に前記物体が検知されたときに点灯して、前記物体の存在を前記運転者に通知する通知ランプと、
前記初期診断の実行中に前記警告ランプ及び前記通知ランプを点灯させ、前記初期診断において前記車両の異常が検出されなかったときに前記警告ランプ及び前記通知ランプを消灯させる表示制御部と、
を備える、異常診断装置。
【0065】
2. 前記表示制御部は、前記初期診断において前記車両の異常が検知されたときに、前記警告ランプを点灯させ、前記通知ランプを消灯させる、条項1に記載の異常診断装置。
【0066】
3. 前記警告ランプは、前記物体検知部による物体検知機能の異常を通知する、条項1又は2に記載の異常診断装置。
【0067】
4. 前記診断部は、前記初期診断の実行中に前記通知ランプが点灯しているか否かを判定し、
前記表示制御部は、前記初期診断の実行中に前記通知ランプが点灯していないと判定されたときに、前記警告ランプを点灯させる、条項3に記載の異常診断装置。
【0068】
5. 前記通知ランプは、第1色及び第2色を含む2種以上の色彩で発光可能であり、
前記表示制御部は、前記初期診断の実行中に前記通知ランプを前記第1色及び前記第2色の順で点灯させる、条項1~4の何れか一項に記載の異常診断装置。
【0069】
6. 前記初期診断の実行中の前記第1色での点灯時間及び前記第2色での点灯時間の合計は、前記初期診断の実行中の前記警告ランプの点灯時間と一致する、条項5に記載の異常診断装置。
【0070】
7. 前記通知ランプは、前記車両のフロントピラーに設けられている、条項1~6の何れか一項に記載の異常診断装置。
【0071】
8. 前記車両の異常に関するメッセージを表示する表示装置を更に備え、
前記表示制御部は、異常の発生箇所を示す情報と、異常のレベルを示す情報とを含むメッセージを前記表示装置に表示させる、条項1~7の何れか一項に記載の異常診断装置。
【符号の説明】
【0072】
1…車両、10…異常診断装置、31…物体検知部、32…表示制御部、33…診断部、41…警告ランプ、41i…物体検知警告ランプ、43,44,45…通知ランプ。