(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064002
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】電圧増幅回路、スイッチング電源装置、スイッチング電源装置の初期設定方法
(51)【国際特許分類】
H03G 3/02 20060101AFI20240507BHJP
H02M 3/00 20060101ALI20240507BHJP
H03G 3/12 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H03G3/02 A
H02M3/00 Z
H03G3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172255
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000103208
【氏名又は名称】コーセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】川高 伸人
【テーマコード(参考)】
5H730
5J100
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD31
5J100AA09
5J100BA07
5J100BB02
5J100BC05
5J100CA29
5J100EA02
(57)【要約】
【課題】入出力特性が原点を通る直線の関係となり、且つゲインの微調整が容易な電圧増幅回路、及びこれを用いたスイッチング電源装置とその初期設定方法を提供する。
【解決手段】電圧増幅回路22(1)は、オペアンプ24(1)と、Q点と反転入力端子との間に接続された第一抵抗26(1)と、反転入力端子と出力端子との間に接続された第二抵抗28(1)とを備える。P点と非反転入力端子との間に接続された第三抵抗30(1)と、一端が非反転入力端子に接続された第四抵抗32(1)とを備える。増幅電圧Vzoに比例した帰還電圧k・Vzo(kは1以下の係数)を発生させ、第四抵抗32(1)の他端に印加する電圧帰還部34(1)を備える。電圧帰還部34(1)は、外部入力されたデジタル信号DSを基に係数kの設定を変更する。電圧増幅回路22(1)の入出力特性は原点を通る直線の関係となり、その直線の傾き(ゲインG)を、係数kの設定を外部から変更することによって調節できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路網の中のP点とQ点との間に発生している電圧であって、グランドに対する前記P点の電圧Vpg(Vpg≧0)から前記グランドに対する前記Q点の電圧Vqg(Vpg≧Vqg≧0)を差し引いた電圧を増幅対象電圧Vzi(Vzi≧0)とし、入力された前記増幅対象電圧Vziを増幅して増幅電圧Vzo(≧0)出力する電圧増幅回路であって、
反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有し、前記出力端子から増幅電圧Vzoを出力するオペアンプと、前記Q点と前記反転入力端子との間に接続された第一抵抗と、前記反転入力端子と前記出力端子との間に接続された第二抵抗と、前記P点と前記非反転入力端子との間に接続された第三抵抗と、一端が前記非反転入力端子に接続された第四抵抗と、前記グランドを基準とする電圧であって、前記増幅電圧Vzoに比例した帰還電圧k・Vzo(kは1以下の係数)を発生させ、前記第四抵抗の他端に印加する電圧帰還部とを備え、
前記第一抵抗及び前記第三抵抗は公称抵抗値が等しい抵抗素子が使用され、前記第二抵抗及び前記第四抵抗は公称抵抗値が等しい抵抗素子が使用され、
前記電圧帰還部は、外部入力されたデジタル信号に基づく演算処理を行って前記係数kの設定を変更する機能を有しており、
前記前記増幅対象電圧Vziと前記増幅電圧Vzoとの関係がVzo=G・Vzi(Gは正の係数)を満たし、前記係数Gの値が、前記係数kの設定を外部から変更することによって調節できることを特徴とする電圧増幅回路。
【請求項2】
前記電圧帰還部は、一端が前記出力端子に接続されたハイサイド抵抗と、前記ハイサイド抵抗と前記グランドとの間に接続されたローサイド抵抗と、前記ローサイド抵抗に並列接続された回路であって、補助抵抗及びスイッチング素子の直列回路で成る補助回路と、前記スイッチング素子を所定のデューティでオンオフさせる回路であって、外部入力されたデジタル信号に基づく演算処理を行って前記デューティの設定を変更するスイッチング制御部と、前記ローサイド抵抗に並列接続され、両端に、前記デューティの値に応じて変化する前記帰還電圧k・Vzoを発生させる平滑コンデンサとを備え、
前記係数kの値は、前記デューティの設定を変更することによって変更できる請求項1記載の電圧増幅回路。
【請求項3】
前記電圧帰還部は電圧バッファを有し、前記平滑コンデンサに発生した前記帰還電圧k・Vzoを、前記電圧バッファを通じて前記第四抵抗の他端に印加する請求項2記載の電圧増幅回路。
【請求項4】
グランドを有した回路網の中のP点の電圧を増幅対象電圧Vzi(Vzi≧0)とし、入力された前記増幅対象電圧Vziを増幅して増幅電圧Vzo(≧0)出力する電圧増幅回路であって、
反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有し、前記出力端子から増幅電圧Vzoを出力するオペアンプと、前記P点と前記非反転入力端子との間に接続された第五抵抗と、前記非反転入力端子と前記グランドとの間に接続された第六抵抗と、前記反転入力端子と前記出力端子との間に接続された第七抵抗と、一端が前記反転入力端子に接続された第八抵抗と、前記第八抵抗と前記グランドとの間に接続された可変抵抗回路とを備え、
前記可変抵抗回路は、外部入力されたデジタル信号に基づく演算処理を行って自己の実効抵抗値Rkの設定を変更する機能を有しており、
前記増幅対象電圧Vziと前記増幅電圧Vzoとの関係がVzo=G・Vzi(kは正の係数)を満たし、前記係数Gの値は、前記実効抵抗値Rkの設定を外部から変更することによって調節できることを特徴とする電圧増幅回路。
【請求項5】
前記可変抵抗回路は、前記第第八抵抗の他端とグランドとの間に接続されたローサイド抵抗と、前記ローサイド抵抗に並列接続された回路であって、補助抵抗及びスイッチング素子の直列回路で成る補助回路と、前記スイッチング素子を所定のデューティでオンオフさせる回路であって、外部入力されたデジタル信号に基づく演算処理を行った前記デューティの設定を変更するスイッチング制御部と、前記ローサイド抵抗に並列接続され、両端に、前記デューティの値に応じて変化する直流電圧を発生させる平滑コンデンサとを備え、
前記合成抵抗値Rkの値は、前記デューティの設定を変更することによって変更できる請求項3記載の電圧増幅回路。
【請求項6】
グランドを有した回路網の中のP点の電圧を増幅対象電圧Vzi(Vzi≧0)とし、入力された前記増幅対象電圧Vziを増幅して増幅電圧Vzo(≧0)出力する電圧増幅回路であって、
反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有し、前記反転入力端子が前記出力端子に接続され、前記出力端子から増幅電圧Vzoを出力するオペアンプと、前記P点と前記非反転入力端子との間に接続された第九抵抗と、一端が前記非反転有力端子に接続された第十抵抗と、前記第十抵抗の他端と前記グランドとの間に接続された可変抵抗回路とを備え、
前記可変抵抗回路は、外部入力されたデジタル信号に基づく演算処理を行って自己の実効抵抗値Rkの設定を変更する機能を有しており、
前記増幅対象電圧Vziと前記増幅電圧Vzoとの関係がVzo=G・Vzi(kは正の係数)を満たし、前記係数Gの値は、前記実効抵抗値Rkの設定を外部から変更することによって調節できることを特徴とする電圧増幅回路。
【請求項7】
前記可変抵抗回路は、前記第十抵抗とグランドとの間の位置に挿入されたローサイド抵抗と、前記ローサイド抵抗に並列接続された回路であって、補助抵抗及びスイッチング素子の直列回路で成る補助回路と、前記スイッチング素子を所定のデューティでオンオフさせる回路であって、外部入力されたデジタル信号に基づく演算処理を行った前記デューティの設定を変更するスイッチング制御部と、前記ローサイド抵抗に並列接続され、両端に、前記デューティの値に応じて変化する直流電圧を発生させる平滑コンデンサとを備え、
前記合成抵抗値Rkの値は、前記デューティの設定を変更することによって変更できる請求項6記載の電圧増幅回路。
【請求項8】
請求項1、4又は6記載の電圧増幅回路と、入力電圧を直流の出力電圧Voに変換して出力する電力変換回路と、前記電力変換回路の動作を制御する制御回路とを備え、
前記電圧増幅回路は、前記電力変換回路の出力電圧Voが前記増幅対象電圧Vziになるように接続され、前記電圧増幅回路が出力する増幅電圧Vzoが、出力電圧Voの検出信号として前記電力変換回路の制御に使用されることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項9】
請求項8記載のスイッチング電源装置の初期設定方法において、
前記電圧増幅回路に既知の増幅対象電圧Vziを入力した時の増幅電圧Vzoの値を測定し、増幅電圧Vzoの値が規定の範囲に収まるように前記係数Gの設定を外部から調節し、調節後の状態がデフォルト設定となるように、前記電圧増幅回路のプログラムを書き換えることを特徴とするスイッチング電源装置の初期設定方法。
【請求項10】
請求項1、4又は6記載の電圧増幅回路と、入力電圧を直流の出力電圧Voに変換して出力する電力変換回路と、前記電力変換回路が負荷に向けて出力する出力電流Ioが流れて電圧降下が発生する電流検出用抵抗と、前記電力変換回路の動作を制御する制御回路とを備え、
前記電圧増幅回路は、前記電流検出用抵抗に発生する前記電圧降下が前記増幅対象電圧Vziになるように接続され、前記電圧増幅回路が出力する増幅電圧Vzoが、出力電流Ioの検出信号として前記電力変換回路の制御に使用されることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項11】
請求項10記載のスイッチング電源装置の初期設定方法において、
前記電圧増幅回路に既知の増幅対象電圧Vziを入力した時の増幅電圧Vzoの値を測定し、増幅電圧Vzoの値が規定の範囲に収まるように前記係数Gの設定を外部から調節し、調節後の状態がデフォルト設定となるように、前記電圧増幅回路のプログラムを書き換えることを特徴とするスイッチング電源装置の初期設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧増幅回路とそれを用いたスイッチング電源装置、及びそのスイッチング電源装置の初期設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スイッチング電源装置では、出力電圧Voや出力電流Ioを検出するため、出力電圧Voに対応した電圧や出力電流Ioを電圧に変換した信号を電圧増幅回路で増幅することが行われる。例えば特許文献1の
図1には、DC-DCコンバータの出力ラインにシャント抵抗を挿入し、シャント抵抗の両端電圧を差動アンプ等で増幅することによって出力電流Ioを検出する構成が記載されている。また、特許文献1の
図14Aには、差動アンプの出力端に2つの直列抵抗を接続し、ハイサイド側の抵抗の接続をスイッチで切り替えることによって、差動アンプの出力電圧を変化させる技術(実質的に、差動アンプのゲインを変化させる技術)が記載されている。
【0003】
その他、一般的な技術として、
図7に示すように、差動増幅回路の特定の箇所にバイアス電圧Vbを印加して、入出力特性をシフトさせる技術があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電圧増幅回路(又はこれを備えたスイッチング電源装置)を量産すると、内部部品の特性バラツキの影響で、電圧増幅回路のゲインGに個体差が発生するという問題がある。そのため、出力電圧Voや出力電流Ioを一定以上の高い精度で検出するためには、電圧増幅回路を組み立てた後、ゲインGを微調整して個体差を補正する必要がある。
【0006】
しかし、特許文献1の
図1に記載された差動アンプは、ゲインGを調整する機能を備えていない。特許文献1の
図14Aに記載された回路は、差動アンプのゲインGを2段階に切り替えるものであり、ゲインGを微調整することはできない。
【0007】
一方、
図7に記載された技術は、バイアスVbを調節することによって、差動増幅回路の入出力特性を微調整することできる。しかし、スイッチング電源装置用の電圧増幅回路として使用しにくい面がある。
【0008】
スイッチング電源装置において、出力電圧Voや出力電流Ioを検出する場合、電圧増幅回路の入出力特性、すなわち入力電圧(増幅対象電圧Vzi)と出力電圧(増幅電圧Vzo)の関係は、原点を通る直線(Vzo=G・Vz1)の関係であると何かと都合が良い。
【0009】
特に、出力電流Ioをゼロアンペアから大きい値まで正確に検出したい場合、入出力特性は、出力電流Ioがゼロアンペアの時に増幅電圧Vzoが正確にゼロボルトになり、出力電流Ioが大きい時に増幅電圧Vzoが正確に所定の有限値になることが好ましい。しかし、
図7に記載された技術は、入出力特性の直線をシフトさせる(平行移動させる)ものなので、出力電流Ioが大きい時の増幅電圧Vzoを調整して合わせると、出力電流Ioがゼロアンペアの時の増幅電圧Vzoがずれてしまう可能性がある。
【0010】
この件は、出力電流Voをゼロボルトから大きい値まで正確に検出したい場合も同様で、出力電圧Voが大きい時の増幅電圧Vzoを調整して合わせると、出力電圧Voがゼロボルトの時の増幅電圧Vzoがずれてしまう可能性がある。したがって、
図7に記載された技術は、スイッチング電源装置用の電圧増幅回路としては使用しにくい。
【0011】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、入出力特性が原点を通る直線の関係となり、且つゲインの微調整が容易な電圧増幅回路、及びこれを用いたスイッチング電源装置とその初期設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、回路網の中のP点とQ点との間に発生している電圧であって、グランドに対する前記P点の電圧Vpg(Vpg≧0)から前記グランドに対する前記Q点の電圧Vqg(Vpg≧Vqg≧0)を差し引いた電圧を増幅対象電圧Vzi(Vzi≧0)とし、入力された前記増幅対象電圧Vziを増幅して増幅電圧Vzo(≧0)出力する電圧増幅回路であって、
反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有し、前記出力端子から増幅電圧Vzoを出力するオペアンプと、前記Q点と前記反転入力端子との間に接続された第一抵抗と、前記反転入力端子と前記出力端子との間に接続された第二抵抗と、前記P点と前記非反転入力端子との間に接続された第三抵抗と、一端が前記非反転入力端子に接続された第四抵抗と、前記グランドを基準とする電圧であって、前記増幅電圧Vzoに比例した帰還電圧k・Vzo(kは1以下の係数)を発生させ、前記第四抵抗の他端に印加する電圧帰還部とを備え、
前記第一抵抗及び前記第三抵抗は公称抵抗値が等しい抵抗素子が使用され、前記第二抵抗及び前記第四抵抗は公称抵抗値が等しい抵抗素子が使用され、記電圧帰還部は、外部入力されたデジタル信号に基づく演算処理を行って前記係数kの設定を変更する機能を有しており、
前記前記増幅対象電圧Vziと前記増幅電圧Vzoとの関係がVzo=G・Vzi(Gは正の係数)を満たし、前記係数Gの値が、前記係数kの設定を外部から変更することによって調節できる電圧増幅回路である。
【0013】
前記電圧帰還部は、一端が前記出力端子に接続されたハイサイド抵抗と、前記ハイサイド抵抗と前記グランドとの間に接続されたローサイド抵抗と、前記ローサイド抵抗に並列接続された回路であって、補助抵抗及びスイッチング素子の直列回路で成る補助回路と、前記スイッチング素子を所定のデューティでオンオフさせる回路であって、外部入力されたデジタル信号に基づく演算処理を行って前記デューティの設定を変更するスイッチング制御部と、前記ローサイド抵抗に並列接続され、両端に、前記デューティの値に応じて変化する前記帰還電圧k・Vzoを発生させる平滑コンデンサとを備え、前記係数kの値は、前記デューティの設定を変更することによって変更できる構成であることが好ましい。また、前記電圧帰還部は電圧バッファを有し、前記平滑コンデンサに発生した前記帰還電圧k・Vzoを、前記電圧バッファを通じて前記第四抵抗の他端に印加する構成にしてもよい。
【0014】
また、本発明は、グランドを有した回路網の中のP点の電圧を増幅対象電圧Vzi(Vzi≧0)とし、入力された前記増幅対象電圧Vziを増幅して増幅電圧Vzo(≧0)出力する電圧増幅回路であって、
反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有し、前記出力端子から増幅電圧Vzoを出力するオペアンプと、前記P点と前記非反転入力端子との間に接続された第五抵抗と、前記非反転入力端子と前記グランドとの間に接続された第六抵抗と、前記反転入力端子と前記出力端子との間に接続された第七抵抗と、一端が前記反転入力端子に接続された第八抵抗と、前記第八抵抗と前記グランドとの間に接続された可変抵抗回路とを備え、
前記可変抵抗回路は、外部入力されたデジタル信号に基づく演算処理を行って自己の実効抵抗値Rkの設定を変更する機能を有しており、前記増幅対象電圧Vziと前記増幅電圧Vzoとの関係がVzo=G・Vzi(kは正の係数)を満たし、前記係数Gの値は、前記実効抵抗値Rkの設定を外部から変更させることによって調節できる電圧増幅回路である。
【0015】
前記可変抵抗回路は、前記第第八抵抗の他端とグランドとの間に接続されたローサイド抵抗と、前記ローサイド抵抗に並列接続された回路であって、補助抵抗及びスイッチング素子の直列回路で成る補助回路と、前記スイッチング素子を所定のデューティでオンオフさせる回路であって、外部入力されたデジタル信号に基づく演算処理を行った前記デューティの設定を変更するスイッチング制御部と、前記ローサイド抵抗に並列接続され、両端に、前記デューティの値に応じて変化する直流電圧を発生させる平滑コンデンサとを備え、前記合成抵抗値Rkの値は、前記デューティの設定を変更することによって変更できる構成であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、グランドを有した回路網の中のP点の電圧を増幅対象電圧Vzi(Vzi≧0)とし、入力された前記増幅対象電圧Vziを増幅して増幅電圧Vzo(≧0)出力する電圧増幅回路であって、
反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有し、前記反転入力端子が前記出力端子に接続され、前記出力端子から増幅電圧Vzoを出力するオペアンプと、前記P点と前記非反転入力端子との間に接続された第九抵抗と、一端が前記非反転有力端子に接続された第十抵抗と、前記第十抵抗の他端と前記グランドとの間に接続された可変抵抗回路とを備え、
前記可変抵抗回路は、外部入力されたデジタル信号に基づく演算処理を行って自己の実効抵抗値Rkの設定を変更する機能を有しており、
前記増幅対象電圧Vziと前記増幅電圧Vzoとの関係がVzo=G・Vzi(kは正の係数)を満たし、前記係数Gの値は、前記実効抵抗値Rkの設定を外部から変更させることによって調節できる電圧増幅回路である。
【0017】
前記可変抵抗回路は、前記第十抵抗とグランドとの間の位置に挿入されたローサイド抵抗と、前記ローサイド抵抗に並列接続された回路であって、補助抵抗及びスイッチング素子の直列回路で成る補助回路と、前記スイッチング素子を所定のデューティでオンオフさせる回路であって、外部入力されたデジタル信号に基づく演算処理を行った前記デューティの設定を変更するスイッチング制御部と、前記ローサイド抵抗に並列接続され、両端に、前記デューティの値に応じて変化する直流電圧を発生させる平滑コンデンサとを備え、前記合成抵抗値Rkの値は、前記デューティの設定を変更することによって変更できる構成であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上記のいずれかの電圧増幅回路と、入力電圧を直流の出力電圧Voに変換して出力する電力変換回路と、前記電力変換回路の動作を制御する制御回路とを備え、前記電圧増幅回路は、前記電力変換回路の出力電圧Voが前記増幅対象電圧Vziになるように接続され、前記電圧増幅回路が出力する増幅電圧Vzoが、出力電圧Voの検出信号として前記電力変換回路の制御に使用されるスイッチング電源装置である。
【0019】
また、本発明は、このスイッチング電源装置の初期設定方法であって、前記電圧増幅回路に既知の増幅対象電圧Vziを入力した時の増幅電圧Vzoの値を測定し、増幅電圧Vzoの値が規定の範囲に収まるように前記係数Gの設定を外部から調節し、調節後の状態がデフォルト設定となるように、前記電圧増幅回路のプログラムを書き換えるスイッチング電源装置の初期設定方法である。
【0020】
また、本発明は、上記のいずれかの電圧増幅回路と、入力電圧を直流の出力電圧Voに変換して出力する電力変換回路と、前記電力変換回路が負荷に向けて出力する出力電流Ioが流れて電圧降下が発生する電流検出用抵抗と、前記電力変換回路の動作を制御する制御回路とを備え、前記電圧増幅回路は、前記電流検出用抵抗に発生する前記電圧降下が前記増幅対象電圧Vziになるように接続され、前記電圧増幅回路が出力する増幅電圧Vzoが、出力電流Ioの検出信号として前記電力変換回路の制御に使用されるスイッチング電源装置である。
【0021】
また、本発明は、このスイッチング電源装置の初期設定方法であって、前記電圧増幅回路に既知の増幅対象電圧Vziを入力した時の増幅電圧Vzoの値を測定し、増幅電圧Vzoの値が規定の範囲に収まるように前記係数Gの設定を外部から調節し、調節後の状態がデフォルト設定となるように、前記電圧増幅回路のプログラムを書き換えるスイッチング電源装置の初期設定方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電圧増幅回路は、入出力特性が原点を通る直線の関係となり、且つゲインの微調整が容易である。また、ゲイン調整用の回路ブロック(電圧帰還部や可変抵抗回路)がデジタル信号に基づく演算処理を行ってゲインの調整を行うので、インテリジェンス性に優れた電圧増幅回路を得ることができる。しかも、ゲイン調整用の回路ブロック(電圧帰還部や可変抵抗回路)がグランドに接続される構成なので、デジタル信号入力用の信号線を通じて侵入するノイズの影響を小さく抑えることができる。
【0023】
本発明のスイッチング電源装置は、上記の優れた性能の電圧増幅回路を使用することによって、出力電圧又は出力電流を高精度に検出することができ、各種の制御に使用することができる。さらに、本発明のスイッチング電源装置の初期設定方法を実行することによって、電圧増幅回路の内部部品の特性バラツキに起因するゲインGの個体差を、プログラムを書き換えることによって補正することができ、狙いの性能を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明のスイッチング電源装置の第一の実施形態を示す回路図である。
【
図2】
図1の中の電圧増幅回路(本発明の電圧増幅回路の第一の実施形態)を示す回路図(a)、この電圧増幅回路の入出力特性を示すグラフ(b)である。
【
図3】
図2の中の電圧帰還部の内部の具体的な構成を示す回路図(a)、デューティDを変化させた時の実効抵抗値Rk及び係数kの変化を示すグラフ(b)である。
【
図4】本発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態を示す回路図である。
【
図5】
図4の中の電圧増幅回路(本発明の電圧増幅回路の第二の実施形態)を示す回路図(a)、この電圧増幅回路の入出力特性を示すグラフ(b)である。
【
図6】
図4の中の電圧増幅回路の変形例(本発明の電圧増幅回路の第三の実施形態)を示す回路図(a)、この電圧増幅回路の入出力特性を示すグラフ(b)である。
【
図7】従来の差動増幅回路を示す回路図(a)、この差動増幅回路の入出力特性を示すグラフ(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第一の実施形態のスイッチング電源装置10及び電圧増幅回路22(1),22(2)>
以下、本発明のスイッチング電源装置及び電圧増幅回路の第一の実施形態について、
図1~
図3に基づいて説明する。この実施形態のスイッチング電源装置10は、入力電源12から供給された入力電圧を直流の出力電圧Voに変換して出力する電力変換回路14と、電力変換回路14の動作を制御する制御回路18とを備えている。さらにスイッチング電源装置10は、電力変換回路14が負荷16に向けて出力する出力電流Ioが流れて電圧降下が発生する電流検出用抵抗20と、第一の実施形態の電圧増幅回路22(1),22(2)とを備えている。
【0026】
電圧増幅回路22(1)は、電力変換回路14の2つの出力端のうちの高電圧側をP1点、低電圧側をQ1点とした時に、P1点とQ1点との間に発生する出力電圧Voが増幅対象電圧Vzi(1)となり、これを増幅した増幅電圧Vzo(1)を生成し、制御回路18に向けて出力する。そして、増幅電圧Vzo(1)は、出力電圧Voの検出信号として電力変換回路14の制御に使用される。
【0027】
また、電圧増幅回路22(2)は、電流検出用抵抗20の両端のうちの高電圧側をP2点、低電圧側をQ2点とした時に、P2点とQ2点との間に発生する電流検出用抵抗20の電圧降下が増幅対象電圧Vzi(2)となり、これを増幅した増幅電圧Vzo(2)を生成し、制御回路18に向けて出力する。そして、増幅電圧Vzo(2)は、出力電流Ioの検出信号として電力変換回路14の制御に使用される。
【0028】
電圧増幅回路22(1)と22(2)の回路の内部の構成は同様なので、ここでは電圧増幅回路22(1)の構成を中心に説明する。
【0029】
電圧増幅回路22(1)は、いわゆる差動増幅回路の一種で、
図2(a)に示すように、グランドに対するP1点の電圧Vpg(Vpg≧0)からグランドに対するQ1点の電圧Vqg(Vpg≧Vqg≧0)を差し引いた電圧を増幅対象電圧Vzi(Vzi≧0)とし、入力された増幅対象電圧Vziを増幅して増幅電圧Vzo(≧0)出力する。
【0030】
電圧増幅回路22(1)は、反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有し、出力端子から増幅電圧Vzo(1)を出力するオペアンプ24(1)を備え、Q1点と反転入力端子との間に第一抵抗26(1)[抵抗値R1]が接続され、反転入力端子と出力端子との間に第二抵抗28(1)[抵抗値R2]が接続されている。また、P1点と非反転入力端子との間に第三抵抗30(1)[抵抗値R1]が接続され、非反転入力端子に第四抵抗32(1)[抵抗値R2]の一端が接続され、第四抵抗32(1)の他端と出力端子との間に電圧帰還部34(1)が接続されている。
【0031】
電圧帰還部34(1)は、グランドを基準とする電圧であって、増幅電圧Vzoに比例した帰還電圧k・Vzo(kは1以下の係数)を発生させ、第四抵抗32(1)の他端に印加するブロックである。係数kは、後述するデューティDを基にデフォルト設定されており、外部入力されたデジタル信号DSに基づく演算処理を行うことによって、係数kの設定を変更することができる。
【0032】
電圧帰還部34(1)の内部の構成を説明すると、
図3(a)に示すように、一端がオペアンプ24(1)の出力端子に接続されたハイサイド抵抗36(1)[抵抗値Ra]と、ハイサイド抵抗36(1)とグランドとの間に接続されたローサイド抵抗38(1)[抵抗値Rb]とを備えている。また、ローサイド抵抗38(1)の両端に、補助抵抗40(1)[抵抗値Rc]及びスイッチング素子42(1)の直列回路で成る補助回路44(1)が接続されている。
【0033】
スイッチング素子42(1)の駆動端子には、スイッチング素子42(1)をオンオフさせるスイッチング制御部46(1)が接続されている。スイッチング制御部46(1)は、デフォルト設定されたデューティDでスイッチング素子42(1)をオンオフさせるものであるが、外部入力されたデジタル信号DSに基づく演算処理を行ってデューティDの設定を変更する機能を有している。
【0034】
また、ローサイド抵抗38(1)の両端には、デューティDの値に応じて変化する直流の帰還電圧k・Vzoを発生させる平滑コンデンサ48(1)が並列接続されている。さらに、平滑コンデンサ48(1)に発生した帰還電圧k・Vzoを第四抵抗32(1)の他端に印加する電圧バッファ50(1)が設けられている。
【0035】
次に、電圧増幅回路22(1)の動作を説明する。電圧増幅回路22(1)の入出力特性は、式(1)のように、原点を通る直線の関係になる。そして、式(1)の中のゲインGは、式(2)~式(4)に基づいて決定される。ここで、式(3)、(4)の中のRkは、ローサイド抵抗40(1)[抵抗値Rb]及び補助抵抗40(1)[抵抗値Rc]の抵抗値を合成した実効抵抗値である。
Vzo(1)=G・Vzi(1) (1)
G=(R2÷R1)・k (2)
k=Rk÷(Ra+Rk) (3)
Rk=Rb//(Rc÷D) (4)
式(2)に示すように、ゲインGと係数kはほぼ正比例の関係になるので、ゲインGは、係数kを変化させることによって調節することができる。また、式(3)に示すように、係数kは、実効抵抗値Rkを変化させることによって調節することができる。そして、式(4)に示すように、実効抵抗値Rkの値は、デューティDを変化させることによって調節することができる。
【0036】
図3(b)の上段のグラフは、式(4)をグラフ化したものである。例えば、D=100%の時は、スイッチング素子42(1)がオンに固定されることになるので、Rk=Rb//Rcとなる。また、D=0%の時は、スイッチング素子42(1)がオフに固定されることになるので、Rk=Rbとなる。したがって、デューティDを0~100%の範囲で変化させることで、実効抵抗値RkをRb~(Rb//Rc)の範囲で変化させることができる。
【0037】
図3(b)の下段のグラフは、式(4)の実効抵抗値Rkを式(3)に代入した時の、係数kとデューティDの関係をグラフ化したものである。このグラフから分かるように、デューティDを0~100%の範囲で変化させることで、係数kをRb÷(Ra+Rb)~(Rb//Rc)÷[Ra+(Rb//Rc)]の範囲で調節することができる。
【0038】
以上のことから、電圧増幅回路22(1)の入出力特性は、
図2(b)に示すように、原点を通る直線となり、直線の傾き(ゲインG)は、デューティDを変化させることによって調節することができる。
【0039】
スイッチング電源装置10を量産すると、電圧増幅回路22(1)の内部部品の特性バラツキの影響でゲインGに個体差が発生する。そこで、スイッチング電源装置10の製造工程で、次のような初期設定方法(本発明のスイッチング電源装置の初期設定方法の一実施形態)を実施するとよい。
【0040】
まず、電圧増幅回路22(1)に既知の増幅対象電圧Vzi(1)を入力し、その時の増幅電圧Vzo(1)の値を測定する。増幅電圧Vzo(1)の値が規定の範囲に収まっている時は、これで初期設定作業を終了すればよいが、規定の範囲に収まっていない時は、スイッチング制御部46(1)にデジタル信号DSを送信し、増幅電圧Vzo(1)の値が規定の範囲に収まるように、デューティDの設定を調節する。そして、調節後のデューティDがデフォルト設定となるように、スイッチング制御部46(1)のプログラムを書き換える。この初期設定作業を電圧増幅回路22(1)毎に実施することによって、ゲインGの個体差を確実に補正することができる。
【0041】
ここまで、電圧増幅回路22(1)の構成、動作及び初期設定方法を説明したが、電圧増幅回路22(2)についても同様である。
【0042】
以上説明したように、電圧増幅回路22(1),22(2)は、入出力特性が原点を通る直線の関係となり、且つゲインの微調整が容易である。また、ゲイン調整用の電圧帰還部34(1)がデジタル信号に基づく演算処理を行ってゲインの調整を行うので、インテリジェンス性に優れた電圧増幅回路22(1),22(2)を得ることができる。しかも、電圧帰還部34(1)は、グランドに接続される構成なので、デジタル信号DSを入力するための信号線を通じて電圧増幅回路22(1),22(2)に侵入するノイズの影響を小さく抑えることができる。
【0043】
スイッチング電源装置10は、優れた性能の電圧増幅回路22(1),22(2)を使用することによって、出力電圧Vo及び出力電流Ioを高精度に検出することができ、各種の制御に使用することができる。さらに、上記の初期設定方法を実行することによって、電圧増幅回路22(1),22(2)の内部部品の特性バラツキに起因するゲインGの個体差を、プログラムを書き換えることによって補正することができ、狙いの性能を容易に実現することができる。
【0044】
また、電圧帰還部34(1)は、Vzoが入力されて帰還電圧k・Vzoを出力するブロックであり、係数kを調節する方法として、スイッチング素子42(1)のオンオフのデューティDを変化させる構成になっているという特徴がある。この構成は、スイッチング制御部46(1)の中のデジタル演算処理を行う部分(演算部)をデジタルプロセッサ内に設けることになるが、安価な汎用デジタルプロセッサを使用しても、高い分解能で帰還電圧k・Vzoを生成できるという利点がある。
【0045】
その他の構成として、電圧帰還部を、A/Dコンバータ、演算部、D/Aコンバータを組み合わせた構成にすることも可能である。この場合、演算部で使用される係数kを直接調節する(変化させる)ことになり、スイッチング素子42(1)等のディスクリート部品が不要になるという利点がある。ただし、帰還電圧k・Vzoの分解能を高くしたい時は、非常に高価な高速デジタルプロセッサが必要になるので注意が必要である。
【0046】
<第二の実施形態のスイッチング電源装置52及び電圧増幅回路54(1),54(2)>
次に、本発明のスイッチング電源装置及び電圧増幅回路の第二の実施形態について、
図4、
図5に基づいて説明する。ここで、上記のスイッチング電源装置10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
この実施形態のスイッチング電源装置52は、
図4に示すように、上記と同様の電力変換回路14、制御回路18及び電流検出用抵抗20備え、電圧増幅回路22(1),22(2)が新たな電圧増幅回路54(1),54(2)に置き換えられている。
【0048】
電圧増幅回路54(1)は、電力変換回路14の2つの出力端のうちの高電圧側をP1点、低電圧側をグランドとし、P1点に発生する出力電圧Voが増幅対象電圧Vzi(1)となり、これを増幅した増幅電圧Vzo(1)を生成し、制御回路18に向けて出力する。そして、増幅電圧Vzo(1)は、出力電圧Voの検出信号として電力変換回路14の制御に使用される。
【0049】
電圧増幅回路54(2)は、電流検出用抵抗20の両端うちの高電圧側をP2点、低電圧側をグランドとし、P2点に発生する電流検出用抵抗20の電圧降下が増幅対象電圧Vzi(2)となり、これを増幅した増幅電圧Vzo(2)を生成し、制御回路18に向けて出力する。そして、増幅電圧Vzo(2)は、出力電流Ioの検出信号として電力変換回路14の制御に使用される。
【0050】
電圧増幅回路54(1)と54(2)の回路の内部の構成は同様なので、ここでは電圧増幅回路54(1)の構成を中心に説明する。
【0051】
電圧増幅回路54(1)は、いわゆる反転増幅回路の一種で、
図5(a)に示すように、グランドに対するP1点の電圧を増幅対象電圧Vzi(Vzi≧0)とし、入力された増幅対象電圧Vziを増幅して増幅電圧Vzo(≧0)出力する。
【0052】
電圧増幅回路54(1)は、反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有し、出力端子から増幅電圧Vzo(1)を出力するオペアンプ56(1)を備え、P1点と非反転入力端子との間に第五抵抗58(1)[抵抗値R5]が接続され、非反転入力端子とグランドとの間に第六抵抗60(1)[抵抗値R6]が接続されている。また、反転入力端子と出力端子との間に第七抵抗62(1)[抵抗値R7]が接続され、反転入力端子に第八抵抗64(1)[抵抗値R8]の一端が接続され、第八抵抗64(1)の他端とグランドとの間に可変抵抗回路66(1)が接続されている。
【0053】
可変抵抗回路66(1)は、自己の抵抗値(実効抵抗値Rk)が変化する回路である。実効抵抗値Rkは、後述するデューティDを基にデフォルト設定されており、外部入力されたデジタル信号DSに基づく演算処理を行うことによって、実効抵抗値Rkの設定を変更することができる。
【0054】
可変抵抗回路66(1)の内部の構成を説明すると、第八抵抗64(1)の他端とグランドとの間に接続されたローサイド抵抗68(1)[抵抗値Rb]を備え、ローサイド抵抗68(1)の両端に、補助抵抗70(1)[抵抗値Rc]及びスイッチング素子72(1)の直列回路で成る補助回路74(1)が接続されている。
【0055】
スイッチング素子72(1)の駆動端子には、スイッチング素子72(1)をオンオフさせるスイッチング制御部76(1)が接続されている。スイッチング制御部76(1)は、デフォルト設定されたデューティDでスイッチング素子72(1)をオンオフさせるものであるが、外部入力されたデジタル信号DSに基づく演算処理を行ってデューティDの設定を変更する機能を有している。そして、ローサイド抵抗68(1)の両端には、ローサイド抵抗68(1)の両端電圧を平滑して直流電圧にする平滑コンデンサ78(1)が並列接続されている。
【0056】
次に、電圧増幅回路54(1)の動作を説明する。電圧増幅回路54(1)の入出力特性は、式(5)に示すように、原点を通る直線の関係になる。そして、式(5)の中のゲインGは、式(6)、式(7)に基づいて決定される。
Vzo(1)=G・Vzi(1) (5)
G=[1+R7÷(R8+Rk)]・R6÷(R5+R6) (6)
Rk=Rb//(Rc÷D) (7)
式(6)に示すように、ゲインGは実効抵抗値Rkを変化させることによって調節することができる。また、式(7)に示すように、実効抵抗値Rkは、ローサイド抵抗68(1)[抵抗値Rb]及び補助抵抗70(1)[抵抗値Rc]の抵抗値を合成した値であり、デューティDを変化させることによって調節することができる。
【0057】
先に説明した
図3(b)の上段のグラフは式(4)をグラフ化したものであるが、式(7)も同様のグラフになる。例えば、D=100%の時は、スイッチング素子72(1)がオンに固定されることになるので、Rk=Rb//Rcとなる。また、D=0%の時は、スイッチング素子72(1)がオフに固定されることになるので、Rk=Rbとなる。したがって、デューティDを0~100%の範囲で変化させることで、実効抵抗値RkをRb~(Rb//Rc)の範囲で変化させることができる。
【0058】
以上のことから、電圧増幅回路54(1)の入出力特性は、
図5(b)に示すように原点を通る直線となり、直線の傾き(ゲインG)は、デューティDを変化させることによって調節することができる。
【0059】
スイッチング電源装置52を量産すると、電圧増幅回路54(1)の内部部品の特性バラツキの影響でゲインGに個体差が発生する。そこで、スイッチング電源装置52の製造工程で、上記と同様の初期設定方法(本発明のスイッチング電源装置の初期設定方法の一実施形態)を実施するとよい。
【0060】
まず、電圧増幅回路54(1)に既知の増幅対象電圧Vzi(1)を入力し、増幅電圧Vzo(1)の値を測定する。増幅電圧Vzo(1)の値が規定の範囲に収まっている時は、これで初期設定作業を終了すればよいが、規定の範囲に収まっていない時は、スイッチング制御部76(1)にデジタル信号DSを送信し、増幅電圧Vzo(1)の値が規定の範囲に収まるように、デューティDの設定を調節する。そして、調節後のデューティDがデフォルト設定となるように、スイッチング制御部76(1)のプログラムを書き換える。この初期設定作業を電圧増幅回路54(1)毎に実施することによって、ゲインGの個体差を確実に補正することができる。
【0061】
ここまで、電圧増幅回路54(1)の構成、動作及び初期設定方法を説明したが、電圧増幅回路54(2)についても同様である。
【0062】
以上説明したように、この実施形態の電圧増幅回路54(1),54(2)及びスイッチング電源装置52のおいても、上記の電圧増幅回路22(1),22(2)及びスイッチング電源装置10と同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
<その他の実施形態、変形例等>
なお、本発明の電圧増幅回路は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の電圧増幅回路22(1)には、電圧バッファ50(1)が設けられている。しかし、電圧バッファ50(1)の出力端から見た第四抵抗32(1)側のインピーダンスが、電圧バッファ50(1)の入力端から見た平滑コンデンサ48(1)側のインピーダンスよりも十分に高い場合、電圧バッファ50(1)を省略(短絡除去)しても、式(1)~式(4)が成立する。したがって、電圧バッファ50(1)は、前段と後段のインピーダンスの関係が一定の条件を満たせば、無くすことができる。これは、電圧増幅回路22(2)についても同様である。
【0064】
また、上記の電圧増幅回路54(1)は、
図6(a)に示す変形例の電圧増幅回路80(1)に置き換えることができる。電圧増幅回路80(1)は、電圧増幅回路54(1)と同様に非反転増幅回路の一種である。電圧増幅回路80(1)は、電圧増幅回路54(1)と同様に非反転増幅回路の一種で、
図6(a)に示すように、グランドに対するP1点の電圧を増幅対象電圧Vzi(Vzi≧0)とし、入力された増幅対象電圧Vziを増幅して増幅電圧Vzo(≧0)出力する。
【0065】
電圧増幅回路80(1)は、反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有し、出力端子から増幅電圧Vzo(1)を出力するオペアンプ82(1)を備え、P1点と非反転入力端子との間に第九抵抗84(1)[抵抗値R9]が接続され、入力端子と出力端子とが接続されている。また、非反転入力端子に第十抵抗86(1)[抵抗値R10]が接続され、第十抵抗86(1)の他端とグランドとの間に可変抵抗回路66(1)が接続されている。
【0066】
可変抵抗回路66(1)は、
図5(a)の可変抵抗回路66(1)と同様のものであり、実効抵抗値RkがデューティDを基にデフォルト設定され、スイッチング制御部76(1)がデジタル信号DSに基づく演算処理を行うことによって、実効抵抗値Rkの設定を変更することができる。
【0067】
電圧増幅回路80(1)の動作を説明すると、電圧増幅回路80(1)の入出力特性は、式(8)に示すように、原点を通る直線の関係になる。そして、式(8)の中のゲインGは、式(9)、式(10)に基づいて決定される。
Vzo(1)=G・Vzi(1) (8)
G=(R10+Rk)÷(R9+R10+Rk) (9)
Rk=Rb//(Rc÷D) (10)
式(9)に示すように、ゲインGは実効抵抗値Rkを変化させることによって調節することができ、式(7)に示すように、実効抵抗値Rkの値はデューティDを変化させることによって調節することができる。
【0068】
先に説明した
図3(b)の上段のグラフは式(4)をグラフ化したものであるが、式(10)も同様のグラフになる。例えば、D=100%の時は、スイッチング素子72(1)がオンに固定されることになるので、Rk=Rb//Rcとなる。また、D=0%の時は、スイッチング素子72(1)がオフに固定されることになるので、Rk=Rbとなる。したがって、デューティDを0~100%の範囲で変化させることで、実効抵抗値RkをRb~(Rb//Rc)の範囲で変化させることができる。
【0069】
以上のことから、電圧増幅回路80(1)の入出力特性は、
図6(b)に示すように原点を通る直線となり、直線の傾きであるゲインGは、デューティDを変化させることによって調節することができる。したがって、電圧増幅回路54(1)を電圧増幅回路80(1)に置き換えても、同様の作用効果が得られる。
【0070】
また、本発明の電圧増幅回路は非常に汎用性が高く、スイッチング電源装置以外の用途に使用できることは言うまでもない。
【0071】
本発明のスイッチング電源装置は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、スイッチング電源装置10,52の場合、出力電圧Vo及び出力電流Ioを検出するため、同じ構成の電圧増幅回路を2組搭載しているが、上記の電圧増幅回路22(1),54(1),80(1)の中から別の2組を選択して搭載してもよい。また、出力電圧Voと出力電流Ioのどちらか一方だけを検出する場合は、適宜の構成の電圧増幅回路を1組だけ搭載すればよい。
【0072】
本発明のスイッチング電源装置の初期設定方法は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の説明では、「スイッチング制御部46(1),76(1)に、デューティDがデフォルト設定されている。」としたが、必ずしもデフォルト設定されている必要はない。例えば、初期設定作業を行う時、最初のデューティDを外部機器のデジタル信号で設定し、調節した後のデューティDをスイッチング制御部76(1)のプログラムに書き込むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10,52 スイッチング電源装置
14 電力変換回路
18 制御回路
20 電流検出用抵抗
22(1),22(2),54(1),54(2),80(1) 電圧増幅回路
24(1),56(1),82(1) オペアンプ
26(1) 第一抵抗
28(1) 第二抵抗
30(1) 第三抵抗
32(1) 第四抵抗
34(1) 電圧帰還部
36(1) ハイサイド抵抗
38(1),68(1) ローサイド抵抗
40(1),70(1) 補助抵抗
42(1),72(1) スイッチング素子
44(1),74(1) 補助回路
46(1),76(1) スイッチング制御部
48(1),78(1) 平滑コンデンサ
50 電圧バッファ
58(1) 第五抵抗
60(1) 第六抵抗
62(1) 第七抵抗
64(1) 第八抵抗
66(1) 可変抵抗回路
84(1) 第九抵抗
86(1) 第十抵抗
D デューティ
G ゲイン
Io 出力電流
k 係数
Rk 実効抵抗値
Vo 出力電圧
Vzi(1),Vz1(2) 増幅対象電圧
Vzo(1),Vzo(2) 増幅電圧