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特開2024-64003スチールコード被覆用ゴム組成物、及び空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064003
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】スチールコード被覆用ゴム組成物、及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20240507BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240507BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20240507BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20240507BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08K5/17
C08K5/37
B60C1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172261
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 飛鳥
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA13
3D131AA14
3D131AA15
3D131AA16
3D131AA39
3D131AA40
3D131AA46
3D131BA18
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC07
3D131BC36
3D131BC51
3D131DA01
3D131DA31
3D131HA42
4J002AC011
4J002AC061
4J002EN136
4J002EV027
4J002FD066
4J002FD067
4J002FD147
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】優れた加工性と、耐熱老化条件での優れた耐剥離力が得られるスチールコード被覆用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】ジエン系ゴム100質量部に対して、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物を1~5質量部と、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールを0.1~1質量部とを含有し、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物と1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールとの含有割合(1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物/1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール)が、質量比で1.6以上である、スチールコード被覆用ゴム組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部に対して、
1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物を1~5質量部と、
1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールを0.1~1質量部とを含有し、
1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物と1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールとの含有割合(1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物/1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール)が、質量比で1.6以上である、スチールコード被覆用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴムが、天然ゴム(NR)及び/又はイソプレンゴム(IR)を含有する、請求項1に記載のスチールコード被覆用ゴム組成物。
【請求項3】
有機酸コバルトを含有しない、請求項1又は2に記載のスチールコード被覆用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のスチールコード被覆用ゴム組成物を用いて作製した、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチールコード被覆用ゴム組成物、及び空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤ、特にラジアルタイヤでは、乗用車タイヤのベルト層、トラック・バス用など大型タイヤのベルト、カーカス、チェーハー層などの補強材としてスチールコードが多用されている。タイヤの使用期間が長期化する中、スチールコードによる補強効果を高め、耐久性を長期にわたり維持することが重要視されており、スチールコードを被覆するゴム組成物にはスチールコードとの優れた接着性が要求されている。
【0003】
従来から接着性の改善には、特許文献1,2に記載のように、トリアジントリチオールモノアルカリ金属塩が用いられているが、トリアジンチオールやトリアジントリチオールのジまたはトリアルカリ金属塩では、薬品の吸湿性(潮解性)が高くなり、接着性が悪化するおそれがあった。
【0004】
また、従来は加工性の改善に有機酸コバルト塩を用いることがあったが、環境保護の観点から有機酸コバルト塩は使用しないことが望ましく、有機酸コバルト塩を配合せずとも加工性に優れたゴム組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-83766号公報
【特許文献2】特開2002-13084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、優れた加工性と、耐熱老化条件での優れた耐剥離力が得られるスチールコード被覆用ゴム組成物、及び空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0007】
なお、特許文献1,2には、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物と、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールとを併用した実施例の記載はない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] ジエン系ゴム100質量部に対して、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物を1~5質量部と、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールを0.1~1質量部とを含有し、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物と1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールとの含有割合(1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物/1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール)が、質量比で1.6以上である、スチールコード被覆用ゴム組成物。
[2] 上記ジエン系ゴムが、天然ゴム(NR)及び/又はイソプレンゴム(IR)を含有する、[1]に記載のスチールコード被覆用ゴム組成物。
[3] 有機酸コバルトを含有しない、[1]又は[2]に記載のスチールコード被覆用ゴム組成物。
[4] [1]~[3]のいずれか1項に記載のスチールコード被覆用ゴム組成物を用いて作製した、空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスチールコード被覆用ゴム組成物によれば、優れた加工性、及び耐熱老化条件での優れた耐剥離力が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0011】
本実施形態に係るスチールコード被覆用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対して、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物を1~5質量部と、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールを0.1~1質量部とを含有し、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物と1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールとの含有割合(1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物/1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール)が、質量比で1.6以上であるものとする。
【0012】
本実施形態に係るゴム組成物において、ゴム成分として用いられるジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。これらジエン系ゴムは、いずれか1種を単独で、又は2種以上ブレンドして用いることができる。
【0013】
上記ゴム成分は、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを含有することが好ましく、ジエン系ゴム100質量部中、天然ゴム及びイソプレンゴムの含有量は、80質量部以上であることが好ましく、90質量部以上であることがより好ましく、95質量部以上であることがさらに好ましい。
【0014】
本実施形態に係るゴム組成物は、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物を含有するものであり、その含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して1~5質量部であり、1~3質量部であることが好ましく、1~2質量部であることがより好ましい。含有量が上記範囲内である場合、優れた加工性、及び耐熱老化条件での優れた耐剥離力が得られやすい。
【0015】
本実施形態に係るゴム組成物は、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールを含有するものであり、その含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1~1質量部であり、0.1~0.8質量部であることが好ましく、0.1~0.5質量部であることがより好ましい。1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールは反応性の高いチオール基を有しているため、含有量が0.1質量部以上であれば高い効果を発揮し、優れた加工性、及び耐熱老化条件での耐剥離力が得られやすく、含有量が1質量部以下である場合、スコーチ時間が早くなりゴム焼けが発生してしまうのを抑制しやすい。
【0016】
1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物と1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールとの含有割合(1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物/1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール)は、質量比で1.6以上であり、1.6~50であることが好ましく、2~30であることがより好ましく、3~15であることがさらに好ましい。含有割合が上記範囲内である場合、優れた加工性、及び耐熱老化条件での優れた耐剥離力が得られやすい。
【0017】
本実施形態に係るスチールコード被覆用ゴム組成物は、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物と1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールとを所定割合で併用することにより、優れた加工性、及び耐熱老化条件での優れた耐剥離力が得られる。このメカニズムは定かではないが、次のように推測できる。まず、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物が開裂し、それにより発生したラジカルがスチールコードの金属表面及びポリマー中の二重結合と反応することで架橋構造を形成する。そして、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物による架橋構造は、硫黄による架橋構造と比較して熱的に安定であるため、耐熱老化条件での耐剥離力が向上するものと推測できる。ここで、併用した1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールは、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物と同様に開裂によりラジカルを生成するものであるが、反応性の高いチオール基を構造中に3つ有しているため、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物に比べラジカルを発生しやすいと考えられる。そして、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールから発生したラジカルにより1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物のラジカル発生が促進され、スチールコードの金属表面及びポリマー中の二重結合との反応が促進される。すなわち、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物と1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールとを所定割合で併用することで、耐剥離力の向上について相乗効果が得られるものと推測できる。さらに、反応性の高い1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールの含有量を少量に限定したことでスコーチ時間が長くなり、加工性の改善という予期せぬ効果が得られたものと推測できる。
【0018】
本実施形態に係るゴム組成物には、補強性充填剤を配合することができる。
【0019】
補強性充填剤としては、カーボンブラック及び/又はシリカを用いることが好ましい。すなわち、補強性充填剤は、カーボンブラック単独でも、シリカ単独でも、カーボンブラックとシリカの併用でもよい。好ましくは、カーボンブラック、又はカーボンブラックとシリカの併用である。補強性充填剤の含有量は、特に限定されず、例えば上記ジエン系ゴム100質量部に対して10~140質量部であることが好ましく、より好ましくは20~100質量部であり、さらに好ましくは30~80質量部である。
【0020】
上記カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。カーボンブラックの含有量としては、ジエン系ゴム100質量部に対して5~100質量部であることが好ましく、より好ましくは20~80質量部である。
【0021】
シリカとしても、特に限定されないが、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカが好ましく用いられる。シリカを配合する場合、その含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して5~40質量部であることが好ましく、より好ましくは5~30質量部である。
【0022】
本実施形態に係るゴム組成物には、メチレン受容体とメチレン供与体を配合することができる。メチレン受容体の水酸基とメチレン供与体のメチレン基とが反応することで、ゴムとスチールコードの接着性を高め、タイヤ走行に伴う負荷や発熱による接着性の劣化を抑制することができる。
【0023】
メチレン受容体としては、フェノール類化合物、又はフェノール類化合物をホルムアルデヒドで縮合したフェノール系樹脂が用いられる。該フェノール類化合物としては、フェノール、レゾルシンまたはこれらのアルキル誘導体が含まれる。アルキル誘導体には、クレゾール、キシレノールといったメチル基誘導体の他、ノニルフェノール、オクチルフェノールといった比較的長鎖のアルキル基による誘導体が含まれる。フェノール類化合物は、アセチル基等のアシル基を置換基に含むものであってもよい。
【0024】
また、フェノール類化合物をホルムアルデヒドで縮合したフェノール系樹脂には、レゾルシン-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂(即ち、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂)、クレゾール樹脂(即ち、クレゾール-ホルムアルデヒド樹脂)等の他、複数のフェノール類化合物からなるホルムアルデヒド樹脂が含まれる。これらは、未硬化の樹脂であって、液状又は熱流動性を有するものが用いられる。
【0025】
これらの中でも、ゴム成分や他の成分との相溶性、硬化後の樹脂の緻密さ及び信頼性の見地から、メチレン受容体としてはレゾルシン又はレゾルシン誘導体が好ましく、特には、レゾルシン、又はレゾルシン-アルキルフェノール-ホルマリン樹脂が好ましく用いられる。
【0026】
これらメチレン受容体の含有量としては、特に限定しないが、ジエン系ゴム100質量部に対して1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは1~4質量部である。
【0027】
上記メチレン供与体としては、ヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体が用いられる。該メラミン誘導体としては、例えば、メチロールメラミン、メチロールメラミンの部分エーテル化物、メラミンとホルムアルデヒドとメタノールの縮合物等が用いられ、その中でもヘキサメトキシメチルメラミンが特に好ましい。
【0028】
メチレン供与体の含有量としては、特に限定しないが、ジエン系ゴム100質量部に対して0.5~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~4質量部である。
【0029】
本実施形態に係るゴム組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、スチールコードとの接着性向上剤として有機酸コバルト塩を配合してもよいが、環境保護の観点からは含有しないことが好ましい。有機酸コバルト塩としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、オレイン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ロジン酸コバルト、ホウ酸コバルト、マレイン酸コバルトなどが挙げられる。
【0030】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記した各成分に加え、通常のゴム工業で使用されているプロセスオイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、軟化剤、可塑剤、ワックス、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤などの配合薬品類を通常の範囲内で適宜配合することができる。
【0031】
上記加硫剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄成分が挙げられ、特に限定するものではないが、その含有量はジエン系ゴム100質量部に対して1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは2~8質量部である。また、加硫促進剤の含有量としては、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1~3質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~2質量部である。
【0032】
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。この中でも、スルフェンアミド系加硫促進剤であることが好ましく、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)であることがより好ましい。
【0033】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し調製することができる。
【0034】
本実施形態に係るゴム組成物は、空気入りタイヤのベルト層やカーカス層において、補強材として使用されるスチールコードの被覆(トッピング)ゴムとして用いられる。すなわち、ベルトコード及び/又はカーカスコードの被覆用ゴム組成物として用いられる。該ゴム組成物は、常法に従い、スチールカレンダーなどのトッピング装置によりスチールコードトッピング反を製造し、これをベルト層及び/又はカーカス層として用いて、未加硫タイヤを作製し、常法に従い加硫成形することにより空気入りタイヤを製造することができる。
【0035】
空気入りタイヤとしては、乗用車用タイヤでも重荷重用タイヤでもよく、特に限定されない。なお、空気入りタイヤの構造自体は周知であり、特に限定されない。一般には、空気入りタイヤは、左右一対のビード及びサイドウォールと、左右のサイドウォールの径方向外方端部同士を連結するように両サイドウォール間に設けられたトレッドとを備え、左右一対のビード間にまたがって延びる少なくとも1層のカーカス層を備える。カーカス層は、トレッドからサイドウォールをへて、両端がビードにて係止されており、上記各部を補強するものである。また、ベルト層は、トレッドにおけるカーカス層の外周側においてトレッドゴムとの間に、通常2層以上にて設けられており、カーカス層の外周でトレッドを補強するものである。本実施形態において、上記ゴム組成物をスチールコードの被覆ゴムに用いる場合、ベルト層とカーカス層のうちのいずれか一方に適用してもよく、双方に適用してもよい。
【実施例0036】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従い、まず、第一混合段階で、硫黄と加硫促進剤を除く成分を添加混合し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で硫黄と加硫促進剤を添加混合して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。
【0038】
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
・天然ゴム:RSS#3
・カーボンブラック:HAF、東海カーボン(株)製「シースト300」
・シリカ:エボニック社製「Ultrasil VN3」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛3種」
・ステアリン酸:日油(株)製「ビーズステアリン酸」
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・レゾルシン誘導体:住友化学工業(株)製「スミカノール620」、レゾルシン-アルキルフェノール-ホルマリン樹脂
・メラミン誘導体:オルネクスジャパン(株)製「サイレッツ963L」、ヘキサメトキシメチルメラミン
・ステアリン酸コバルト:泰光精密化学(株)製「Corebond CS-9.5」
・架橋剤1:フレキシス社製「Duralink HTS」、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物
・架橋剤2:東京化成工業(株)製「Thiocyanuric Acid」、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール
・硫黄:四国化成工業(株)製「ミュークロン OT-20」
・加硫促進剤:三新化学工業(株)製「サンセラーNS-G」、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)
【0039】
得られた各ゴム組成物について、加工性、スコーチ、及び耐熱老化条件での耐剥離力を評価した。評価方法は次の通りである。
【0040】
・加工性:JIS K6300に準拠して東洋精機(株)製ロータレスムーニー測定機を用い、未加硫ゴムを100℃で1分間余熱後、4分後のトルク値をムーニー単位で測定した。比較例1のトルク値を100とした指数で表示した。数値が高いほどトルク値が高く加工性に優れることを示す。
【0041】
・スコーチ:JIS K6300に準拠して東洋精機(製)ロータレスムーニー測定機を用い、未加硫ゴム組成物を125℃で1分間予熱後、最低粘度Vmより5ムーニー単位上昇するのに要した時間t5を測定し、比較例1の値を100とした指標で表示した。数値が高いほどムーニースコーチ時間が長いことを示す。
【0042】
・耐熱老化条件での耐剥離力:真鍮めっきスチールコード(3×0.20+6×0.35構造、銅:亜鉛=64:36%、めっき付着量=6g/kg)を12本/25mmの間隔で平行に配列し、表1記載の各ゴム組成物の厚み0.8mmシートでコード両面を挟んだコード/ゴム複合シートを作製し、この2枚をコード配列方向が平行になるように重ね合わせ、150℃×30分のプレス加硫にて接着性評価試料を作製した。得られた試料を100℃のオーブン中で96時間放置した後、オートグラフ(島津製作所製DCS500)を用いて2層のスチールコード間の剥離試験を行い、剥離力を求めた。比較例1の値を100とした指数で表示した。数値が大きいほど、剥離力が優れることを示す。
【0043】
【表1】
【0044】
結果は、表1に示す通りであり、比較例1~3は架橋剤として1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物を単独使用した例であり、比較例4は架橋剤として1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールを単独使用した例である。実施例1~4と比較例1~4との対比より、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物と1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールとを併用することで、優れた加工性と耐熱老化条件での優れた耐剥離力が得られることがわかった。
【0045】
比較例5,6は、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物と1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールとを所定割合から外れて含有する例であり、耐熱老化条件での耐剥離力が劣っていた。
【0046】
比較例4~6の対比より、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールの含有量が多いほど、スコーチ時間が短く、加工性が劣っていることがわかった。
【0047】
比較例7は、架橋剤1,2に代えて、ステアリン酸コバルトを用いた例であり、比較例1と比較し、加工性の向上効果は得られず、耐熱老化条件での耐剥離力も実施例1~4と比較すると劣っていた。
【0048】
また、実施例1~4の対比より、1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物と1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールとの含有割合(1,6-へキサメチレンジアミン-ジチオ硫酸ナトリウム二水和物/1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール)が、大きいほど加工性及び耐熱老化条件での耐剥離力の改善効果が大きいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のスチールコード被覆用ゴム組成物は、空気入りタイヤの補強材であるスチールコードの被覆用ゴムとして有用であり、このゴム組成物を用いたスチールコード-ゴム複合体は、乗用車用タイヤのベルト層、トラック・バス用などの大型タイヤのベルト、カーカス、チェーハー層などに使用することができる。