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  • 特開-水素化装置、及び水素化方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064010
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】水素化装置、及び水素化方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 6/00 20060101AFI20240507BHJP
   C22B 21/00 20060101ALI20240507BHJP
   C22B 26/22 20060101ALI20240507BHJP
   C22B 5/16 20060101ALI20240507BHJP
   H05H 1/48 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C01B6/00 Z
C22B21/00
C22B26/22
C22B5/16
H05H1/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172275
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】前原 誠
【テーマコード(参考)】
2G084
4K001
【Fターム(参考)】
2G084AA26
2G084CC23
2G084CC33
2G084FF27
2G084FF28
2G084FF29
2G084HH02
2G084HH12
2G084HH21
2G084HH30
4K001AA02
4K001AA38
4K001BA05
4K001BA23
4K001BA24
4K001DA06
(57)【要約】
【課題】シンプルな構成で水素化金属を得ることができる水素化装置、及び水素化方法を提供する。
【解決手段】水素化装置1は、所定の金属の酸化物及び水酸化物の少なくとも一方を含む材料Maを気化させて気体を生成する気化部6を備える。このため、気化部6は、所定の金属の酸化物及び水酸化物の少なくとも一方の気体を生成し、プラズマと反応可能な状態とすることができる。これに対し、プラズマ供給部3は、気体に対して、水素プラズマPbを照射する。これにより、水素化金属を生成することができる。このように生成された水素化金属は、複雑な分離部などがなくとも、固体として容易に回収することができる。以上より、シンプルな構成で水素化金属を得ることができる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化金属を生成する水素化装置であって、
所定の金属の酸化物及び水酸化物の少なくとも一方を含む材料を気化させて気体を生成する気化部と、
前記気体に対して、水素プラズマを照射するプラズマ供給部と、を備える、水素化装置。
【請求項2】
前記プラズマ供給部は、水素プラズマを生成して照射する、請求項1に記載の水素化装置。
【請求項3】
前記プラズマ供給部は、プラズマを生成して、前記プラズマに対して水素を導入する、請求項1に記載の水素化装置。
【請求項4】
前記材料は、前記金属としてアルミニウム、マグネシウムを少なくとも含む、請求項1に記載の水素化装置。
【請求項5】
前記材料を配置する材料配置部と、
前記材料配置部に対向する位置に設けられ、前記気体と前記水素プラズマとを反応させる反応部と、
前記反応部に対して前記材料配置部の反対側に設けられ、水素化金属を回収する回収体を配置する回収体配置部と、を更に備える、請求項1に記載の水素化装置。
【請求項6】
前記プラズマ供給部は、前記材料配置部と前記回収体配置部との対向方向と交差する方向から前記水素プラズマを照射するプラズマガンを有する、請求項5に記載の水素化装置。
【請求項7】
前記プラズマ供給部は、水素をキャリアガスとする圧力勾配型プラズマガンを有する、請求項1に記載の水素化装置。
【請求項8】
前記反応部と前記回収体配置部との間に設けられ、真空ポンプで排気ガスを吸引する排気口を更に備える、請求項5に記載の水素化装置。
【請求項9】
水素化金属を生成する水素化方法であって、
所定の金属の酸化物及び水酸化物の少なくとも一方を含む材料を気化させて気体を生成する気化工程と、
前記気体に対して、水素プラズマを照射するプラズマ供給工程と、を備える、水素化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化装置、及び水素化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマを用いて所望の物質を回収する装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された装置は、所定の物質を含む材料にプラズマを照射し、材料にプラズマが照射されることにより生成される中性粒子及び所定の物質のイオンを分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-231630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載された装置は、所定の物質を電極板で分離析出させることで回収するが、当該電極板の回収も必要になる上、分離のための構成が複雑になるため、十分な還元物の分解・回収効率が得られないという問題がある。ここで、金属の酸化物や水酸化物を分離して、水素化金属として取得することが求められている。このような水素化金属をシンプルな構成にて得ることが求められている。
【0005】
そこで本発明は、シンプルな構成で水素化金属を得ることができる水素化装置、及び水素化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る水素化装置は、水素化金属を生成する水素化装置であって、所定の金属の酸化物及び水酸化物の少なくとも一方を含む材料を気化させて気体を生成する気化部と、気体に対して、水素プラズマを照射するプラズマ供給部と、を備える。
【0007】
本発明の水素化装置は、所定の金属の酸化物及び水酸化物の少なくとも一方を含む材料を気化させて気体を生成する気化部を備える。このため、気化部は、所定の金属の酸化物及び水酸化物の少なくとも一方の気体を生成し、プラズマと反応可能な状態とすることができる。これに対し、プラズマ供給部は、気体に対して、水素プラズマを照射する。これにより、水素化金属を生成することができる。このように生成された水素化金属は、複雑な分離部などがなくとも、固体として容易に回収することができる。以上より、シンプルな構成で水素化金属を得ることができる。
【0008】
プラズマ供給部は、水素プラズマを生成して照射してよい。この場合、プラズマ供給部は、直接水素プラズマを生成して照射することができる。
【0009】
プラズマ供給部は、プラズマを生成して、プラズマに対して水素を導入してよい。この場合、直接水素プラズマを生成できない場合も、別途水素を導入することで、水素プラズマの生成が可能となる。
【0010】
材料は、金属としてアルミニウム、マグネシウムを少なくとも含んでよい。アルミニウム及びマグネシウムはイオン化し易いため、容易に水素化金属を生成することができる。
【0011】
水素化装置は、材料を配置する材料配置部と、材料配置部に対向する位置に設けられ、気体と水素プラズマとを反応させる反応部と、反応部に対して材料配置部の反対側に設けられ、水素化金属を回収する回収体を配置する回収体配置部と、を更に備えてよい。この場合、材料で発生した気体が反応部にて反応し、そのまま回収体配置部へ向かって飛散し、回収体にて回収される。
【0012】
プラズマ供給部は、材料配置部と回収体配置部との対向方向と交差する方向から水素プラズマを照射するプラズマガンを有してよい。この場合、プラズマガンは、飛散する水素化金属の邪魔にならない位置から、水素プラズマを照射できる。
【0013】
プラズマ供給部は、水素をキャリアガスとする圧力勾配型プラズマガンを有してよい。この場合、圧力勾配型プラズマガンが、高密度な水素プラズマを照射することができる。
【0014】
水素化装置は、反応部と回収体配置部との間に設けられ、真空ポンプで排気ガスを吸引する排気口を更に備えてよい。この場合、回収体の手前の位置にて、反応部にて生成された回収不要な水や水素を効率的に排気することができる。
【0015】
本発明に係る水素化方法は、水素化金属を生成する水素化方法であって、所定の金属の酸化物及び水酸化物の少なくとも一方を含む材料を気化させて気体を生成する気化工程と、気体に対して、水素プラズマを照射するプラズマ供給工程と、を備える。
【0016】
この水素化方法によれば、上述の水素化装置と同様な作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シンプルな構成で水素化金属を得ることができる水素化装置、及び水素化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る水素化装置の構成を示す概略断面図である。
図2図1に示す水素化装置における水素化金属が生成される様子を説明する図である。
図3図1に示す水素化装置を用いた水素化方法の動作の一例を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る水素化装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る水素化装置及び水素化方法について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る水素化装置の構成を示す概略断面図である。図1に示すように、本実施形態の水素化装置1は、所定の物質を含む材料Maの金属を水素化する水素化装置1であって、材料配置部2、プラズマ供給部3、回収体配置部4、及び真空チャンバー5を備えている。なお、説明の便宜上、図1には、XYZ座標系を示す。Y軸方向は、プラズマ供給部3がプラズマビームを出射する方向である。Z軸方向は、材料配置部2と回収体配置部4とが対向する方向である。X軸方向は、Y軸方向とZ軸方向とに直交する方向である。なお、水素化装置1の向きは特に限定されず、Z軸方向が鉛直方向であってもよく、水平方向であってもよい。
【0021】
真空チャンバー5は、材料Maを水素プラズマと反応させる反応室5a(反応部)と、プラズマ供給部3から照射される水素プラズマPbを真空チャンバー5に受け入れるプラズマ口5bとを有している。反応室5a、及びプラズマ口5bは互いに連通している。また、真空チャンバー5は、導電性の材料からなり接地電位に接続されている。
【0022】
材料配置部2は、真空チャンバー5の反応室5a内に設けられ、Z軸方向の負方向に配置されており、材料Maを配置可能に構成されている。
【0023】
本実施形態では、材料配置部2は、プラズマ供給部3から出射された水素プラズマPbを材料Maに導く主陽極又はプラズマ供給部3から出射された水素プラズマPbが導かれる主陽極である主ハースによって構成されている。材料配置部2は、材料Maが充填されたZ軸方向の正方向に延びた筒状の充填部2aと、充填部2aから突出したフランジ部2bとを有している。材料配置部2は、真空チャンバー5が有する接地電位に対して正電位に保たれているため、プラズマ供給部3から出射された水素プラズマPbを吸引する。この水素プラズマPbが入射する充填部2aには、材料Maを充填するための貫通孔2cが形成されている。そして、材料Maの先端部分が、この貫通孔2cの一端において反応室5aに露出している。
【0024】
材料Maは、例えば所定長さの円柱形状に形成された固形物である。材料配置部2の充填部2aには一度に複数の材料Maが充填されている。材料Maは、その消費に応じて、フランジ部2b側から充填部2a側へ向かって、充填部2aから順次押し出される。材料Maとしては、所定の金属の酸化物及び水酸化物の少なくとも一方を含む。また、金属として、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン等が例示される。材料Maが絶縁性物質からなる場合、主ハースである材料配置部2に水素プラズマPbが照射されると、水素プラズマPbからの電流によって材料配置部2が加熱され、材料Maの先端部分が蒸発し、蒸発粒子Mbが反応室5a内で広がりつつ回収体配置部4側へ進行する。また、材料Maが導電性物質からなる場合、主ハースである材料配置部2に水素プラズマPbが照射されると、水素プラズマPbが材料Maに直接入射し、材料Maの先端部分が加熱されて蒸発し、蒸発粒子Mbが反応室5a内で広がりつつ回収体配置部4側へ進行する。なお、蒸発粒子Mbとは、材料Maから蒸発した粒子全般を指すものとして、以下の説明を行う。
【0025】
以上のように、材料配置部2及びプラズマガン30は、材料Maを気化させて気体を生成する気化部6として機能する。
【0026】
なお、真空チャンバー5には圧力調整装置として、真空ポンプ31が接続されている。真空ポンプ31は、真空チャンバー5に連通した排気口32に接続されている。排気口32は、反応室5aと回収体配置部4との間に設けられ、真空ポンプ31で排気ガスを吸引する。これにより、真空ポンプ31は、真空チャンバー5内の圧力を調整することができる。なお、圧力調整装置として、真空ポンプ31以外の装置が用いられてもよく、例えばターボ分子ポンプやクライオポンプ等の減圧部と、真空チャンバー5内の圧力を測定する圧力測定部とを有してよい。
【0027】
また、真空チャンバー5の反応室5a内に、輪ハース7を備えてもよい。輪ハース7は、水素プラズマPbを誘導するための電磁石を有する補助陽極である。輪ハース7は、材料Maを配置する材料配置部2の充填部2aの周囲に配置されている。輪ハース7は、環状のコイル8と環状の永久磁石9と環状の容器10とを有し、コイル8及び永久磁石9は容器10に収容されている。輪ハース7は、コイル8に流れる電流の大きさに応じて、材料Maに入射する水素プラズマPbの幅・太さを制御する。
【0028】
圧力勾配型のプラズマガン30は、材料配置部2に配置される材料Maに高密度の水素プラズマPbを供給する圧力勾配型のプラズマ供給部であり、真空チャンバー5におけるプラズマ口5bに固定されている。プラズマガン30は、真空チャンバー5のY軸方向の負方向における壁部に設けられる。プラズマガン30には、キャリアガスGSとして、水素ガス、及びアルゴンガスが供給される。これにより、プラズマガン30は、水素プラズマPbを直接生成することができる。
【0029】
圧力勾配型のプラズマガン30は、第1中間電極15及び第2中間電極16からなる中間電極17と、陰極管18が固定されたカソードフランジ19とを備え、中間電極17とカソードフランジ19との間には、陰極管18を包囲するガラス管20が配置されている。
【0030】
第2中間電極16は環状であり、真空チャンバー5のプラズマ口5bにシールカラーを介して固定されている。第2中間電極16の後側には、シールカラーを介して環状の第1中間電極15が同心状に重ねて固定されている。第2中間電極16には、空芯コイル16aが内蔵されており、第1中間電極15には、磁極軸が陰極管18の中心線に平行になるように永久磁石15aが内蔵されている。空芯コイル16aや永久磁石15aは、水素プラズマPbを収束させる。なお、真空チャンバー5のプラズマ口5bの周囲には、発生した水素プラズマPbを真空チャンバー5内に導くステアリングコイル21が設けられている。
【0031】
ステアリングコイル21により真空チャンバー5内に導かれた水素プラズマPbは、上述のように、材料配置部2により吸引され、材料Maに導かれる。以上のような構成により、材料Maの表面上にはプラズマ領域Pが形成されている。すなわち、材料配置部2と圧力勾配型のプラズマガン30とは、材料Maの表面上にプラズマ領域Pを保持可能な位置関係となるように配置されている。なお、「プラズマ領域Pを保持可能な位置関係」とは、輪ハース7やステアリングコイル21を用いることによって、材料Maの表面上にプラズマ領域Pを保持可能な位置関係も含まれる。よって、材料Maの蒸発粒子Mbが当該プラズマ領域Pにおけるプラズマと反応することにより、水素化金属を及び金属イオンなど、回収体40で回収される粒子PT1が生成される。また、当該反応によって、水や水素などの粒子PT2も生成される。粒子PT1,PT2は、反応室5a内で広がりつつ回収体配置部4側へ進行する。
【0032】
圧力勾配型のプラズマガン30は、電子温度領域1~10eVにおいて動作が可能であり、ガン駆動装置23によってその動作が制御されている。ガン駆動装置23により、陰極管18への給電をオン・オフしたり、陰極管18への印加電圧を調整したりでき、さらに第1中間電極15、第2中間電極16、空芯コイル16aまたはステアリングコイル21への給電を調整することができる。ガン駆動装置23によって、真空チャンバー5内に供給される水素プラズマPbの強度や分布状態が制御されている。
【0033】
回収体配置部4は、真空チャンバー5の反応室5aと接続され、反応室5a内で広がりつつ回収体配置部4側へ進行した粒子PT1を回収体40に付着させて回収する。回収体配置部4は、回収前の回収体40を真空チャンバー5に対応する回収位置まで搬送し、回収後の回収体40を回収位置から退避するように搬送する。なお、回収体40は、粒子PT1を付着させて回収できるものであれば特に限定されず、ガラスなどの基板、フィルムなどを採用してもよい。
【0034】
ここで、材料Maが金属酸化物及び金属水酸化物を含む場合を例にして、真空チャンバー5内の反応の様子について、図2を参照して説明する。ただし、図2は理解を容易にするために模式的に示したものである。なお、図2では金属の元素記号を「X」と示している。
【0035】
まず、水素プラズマPbからの電流によって加熱されて材料Maの表面から飛び出した蒸発粒子Mbは、直ちにプラズマ領域Pに曝される。当該プラズマ領域Pを通過しながら、蒸発粒子Mbがプラズマと反応することにより、蒸発粒子Mbの一部がイオン化される。このとき、金属酸化物及び金属水酸化物が分解されて、金属のイオン(X(+))、酸素(O,O)、水酸化物イオン(OH)が生成される。ここで、プラズマ領域Pには水素イオン(H)が存在する。従って、蒸発粒子Mbは、プラズマ領域P内を通過することで、水素イオンと反応する。これにより、水素化金属(XH)、水(HO)、水素(H2)が生成される。また、金属イオン(X(+))もプラズマ領域Pを通り抜ける。これにより、反応した蒸発粒子Mbは、反応室5a内で広がりつつ回収体配置部4側へ進行する。
【0036】
以上により、水素化金属(XH)及び金属(X)は、回収体40の表面に付着することによって当該回収体40に回収される。水及び水素は、反応室5aと回収体配置部4との間にて、排気ガスとして排気口32に吸引される。
【0037】
次に、水素化装置1による水素化方法の動作について、図3を参照して説明する。図3は、図1に示す水素化装置1を用いた水素化方法の動作の一例を示すフローチャートである。図3に示すように、まず、材料配置部2に所定の物質を含む材料Maが配置される(S1:材料配置工程)。次に、圧力勾配型のプラズマガン30を用いて、材料Maに高密度の水素プラズマPbが照射される(S2:プラズマ供給工程)。このとき、材料Maの表面上にプラズマ領域Pが保持されるため、材料Maを気化させて気体を生成する(S3:気化工程)。プラズマガン30は、水素プラズマPbを照射し続けるため、気体に対して水素プラズマPbを照射する。当該プラズマ領域Pにおいて材料Maの蒸発粒子Mbが反応することにより、水素化金属、金属、水、水素等が生成される。そして、生成された水素化金属、及び金属が回収体配置部4の回収体により回収される(S4:回収工程)。
【0038】
次に、本実施形態に係る水素化装置1の作用・効果について説明する。
【0039】
本実施形態に係る水素化装置1は、所定の金属の酸化物及び水酸化物の少なくとも一方を含む材料Maを気化させて気体を生成する気化部6を備える。このため、気化部6は、所定の金属の酸化物及び水酸化物の少なくとも一方の気体を生成し、プラズマと反応可能な状態とすることができる。これに対し、プラズマ供給部3は、気体に対して、水素プラズマPbを照射する。これにより、水素化金属を生成することができる。このように生成された水素化金属は、複雑な分離部などがなくとも、固体として容易に回収することができる。以上より、シンプルな構成で水素化金属を得ることができる。
【0040】
プラズマ供給部3は、水素プラズマPbを生成して照射してよい。この場合、プラズマ供給部3は、直接水素プラズマPbを生成して照射することができる。
【0041】
材料Maは、金属としてアルミニウム、マグネシウムを少なくとも含んでよい。アルミニウム及びマグネシウムはイオン化し易いため、容易に水素化金属を生成することができる。
【0042】
水素化装置1は、材料を配置する材料配置部2と、材料配置部2に対向する位置に設けられ、気体と水素プラズマPbとを反応させる反応室5aと、反応室5aに対して材料配置部2の反対側に設けられ、水素化金属を回収する回収体40を配置する回収体配置部4と、を更に備えてよい。この場合、材料で発生した気体が反応室5aにて反応し、そのまま回収体配置部4へ向かって飛散し、回収体40にて回収される。
【0043】
プラズマ供給部3は、材料配置部2と回収体配置部4との対向方向(Z軸方向)と交差する方向(Y軸方向)から水素プラズマPbを照射するプラズマガン30を有してよい。この場合、プラズマガン30は、飛散する水素化金属の邪魔にならない位置から、水素プラズマPbを照射できる。
【0044】
プラズマ供給部3は、水素をキャリアガスとする圧力勾配型プラズマガン30を有してよい。この場合、圧力勾配型プラズマガン30が、高密度な水素プラズマPbを照射することができる。
【0045】
水素化装置1は、反応室5aと回収体配置部4との間に設けられ、真空ポンプ31で排気ガスを吸引する排気口32を更に備えてよい。この場合、回収体40の手前の位置にて、反応室5aにて生成された回収不要な水や水素を効率的に排気することができる。
【0046】
本実施形態に係る水素化方法は、水素化金属を生成する水素化方法であって、所定の金属の酸化物及び水酸化物の少なくとも一方を含む材料Maを気化させて気体を生成する気化工程S3と、気体に対して、水素プラズマPbを照射するプラズマ供給工程S2と、を備える。
【0047】
この水素化方法によれば、上述の水素化装置1と同様な作用・効果を得ることができる。
【0048】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0049】
図4は、第2実施形態に係る水素化装置100の構成を示す概略図である。図4に示すように、本実施形態の水素化装置100が上記水素化装置1と異なる点は、気化部6の構成が異なる点である。気化部6は、材料Maを保持するるつぼ70と、材料に電子を照射する電子銃71と、を備える。なお、気化部6は、るつぼ70の抵抗加熱によって気化を行ってもよい。気化部6は、水素プラズマPbを導く機能を有していないため、プラズマガン30から照射された水素プラズマPbは、横側から蒸発粒子Mbに照射される。
【0050】
以上、本実施形態の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0051】
また、上述の実施形態では、プラズマガン30と主ハース(材料配置部)の組がチャンバー内に一組だけ設けられていたが、複数組設けてもよい。また、一の材料に対して複数のプラズマガン30からプラズマを供給してもよい。また、材料配置部2として主ハースが適用され、筒状の充填部2aに材料Maを配置する構成が適用されていたが、プラズマを材料Maの表面に導くことができる態様であれば特に限定されず、大きな材料に複数のプラズマガン30からプラズマを照射するような構成を採用してもよい。この場合、成膜材料の下に陽極を配置すれば、プラズマが陽極上の成膜材料に照射される。例えば、一定範囲に広がる材料Maを配置し、当該材料Maの表面の各領域に対して複数のプラズマガン30からそれぞれ水素プラズマPbを照射してよい。この際、材料Maの周りに複数のプラズマガン30を所定間隔で設け、材料Maに所定間隔毎に水素プラズマPbを照射してもよい。また、上述の第1実施形態では、輪ハース7が設けられていたが、プラズマガン30の向きと材料配置部2による材料の位置や向きを工夫することで、輪ハース7を省略してもよい。
【0052】
また、プラズマ供給部3は、プラズマを生成して、プラズマに対して水素を導入してよい。この場合、直接水素プラズマを生成できない場合も、別途水素を導入することで、水素プラズマの生成が可能となる。
【0053】
[形態1]
水素化金属を生成する水素化装置であって、
所定の金属の酸化物及び水酸化物の少なくとも一方を含む材料を気化させて気体を生成する気化部と、
前記気体に対して、水素プラズマを照射するプラズマ供給部と、を備える、水素化装置。
[形態2]
前記プラズマ供給部は、水素プラズマを生成して照射する、形態1に記載の水素化装置。
[形態3]
前記プラズマ供給部は、プラズマを生成して、前記プラズマに対して水素を導入する、形態1又は2に記載の水素化装置。
[形態4]
前記材料は、前記金属としてアルミニウム、マグネシウムを少なくとも含む、形態1~3の何れか一項に記載の水素化装置。
[形態5]
前記材料を配置する材料配置部と、
前記材料配置部に対向する位置に設けられ、前記気体と前記水素プラズマとを反応させる反応部と、
前記反応部に対して前記材料配置部の反対側に設けられ、水素化金属を回収する回収体を配置する回収体配置部と、を更に備える、形態1~4の何れか一項に記載の水素化装置。
[形態6]
前記プラズマ供給部は、前記材料配置部と前記回収体配置部との対向方向と交差する方向から前記水素プラズマを照射するプラズマガンを有する、形態5に記載の水素化装置。
[形態7]
前記プラズマ供給部は、水素をキャリアガスとする圧力勾配型プラズマガンを有する、形態1~6の何れか一項に記載の水素化装置。
[形態8]
前記反応部と前記回収体配置部との間に設けられ、真空ポンプで排気ガスを吸引する排気口を更に備える、形態5に記載の水素化装置。
[形態9]
水素化金属を生成する水素化方法であって、
所定の金属の酸化物及び水酸化物の少なくとも一方を含む材料を気化させて気体を生成する気化工程と、
前記気体に対して、水素プラズマを照射するプラズマ供給工程と、を備える、水素化方法。
【符号の説明】
【0054】
1,100…水素化装置、2…材料配置部、3…プラズマ供給部、4…回収体配置部、5…反応室(反応部)、6…気化部、30…圧力勾配型のプラズマガン、31…真空ポンプ、32…排気口、Pb…水素プラズマ。
図1
図2
図3
図4