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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064024
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】接続構造および接続方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20240507BHJP
   E02D 31/06 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E02D31/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172304
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】大浦 志郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】秋山 完幸
(72)【発明者】
【氏名】樋江井 夕紀夫
(72)【発明者】
【氏名】小倉 剛
(72)【発明者】
【氏名】吉原 知佳
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046CA05
2D046CA07
(57)【要約】
【課題】プレキャスト上部工の孔を細径化しつつ、水平力に対しても効果的に抵抗できる斜杭とプレキャスト上部工の接続構造等を提供する。
【解決手段】接続構造10は、管状の斜杭4とコンクリート製のプレキャスト上部工2とを接続するものである。プレキャスト上部工2には、斜杭4に沿った傾斜を有する孔24が設けられ、斜杭4の上端部には仮受管12が設けられる。仮受管12の上にプレキャスト上部工2が載置され、プレキャスト上部工2の孔24および斜杭4の上端部の内側に、斜杭4に沿った傾斜を有する接続管13が挿入され、充填材Fが充填される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の斜杭とコンクリート製のプレキャスト上部工との接続構造であって、
前記プレキャスト上部工に、前記斜杭に沿った傾斜を有する孔が設けられ、
前記斜杭の上に前記プレキャスト上部工が配置され、
前記孔および前記斜杭の上端部の内側に、前記斜杭に沿った傾斜を有する接続管が挿入され、充填材が充填されたことを特徴とする接続構造。
【請求項2】
前記孔の内面に鞘管が設けられ、
前記接続管の上端部と、前記鞘管の内面とに、連結材が固定されたことを特徴とする請求項1記載の接続構造。
【請求項3】
前記接続管の上端部に、前記接続管の軸方向に沿ったスリットが設けられ、
前記鞘管の内面に固定された前記連結材である板材が、前記スリットに挿入され、前記板材が前記スリットに固定されたことを特徴とする請求項2記載の接続構造。
【請求項4】
前記斜杭の上端部に、仮受管が設けられ、
前記仮受管の上端に、前記プレキャスト上部工を載置するフランジが設けられ、
前記フランジの内縁部が前記孔の内側に突出し、
前記接続管の外面に突出片が設けられ、
前記突出片が、前記フランジの内縁部に載置されたことを特徴とする請求項1記載の接続構造。
【請求項5】
前記接続構造は、港湾の桟橋における斜杭とプレキャスト上部工の接続構造であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の接続構造。
【請求項6】
請求項1記載の接続構造による、管状の斜杭とコンクリート製のプレキャスト上部工との接続方法であって、
前記斜杭の上に前記プレキャスト上部工を配置する工程と、
前記孔および前記斜杭の上端部の内側に、前記斜杭に沿った傾斜を有する接続管を挿入し、充填材を充填する工程と、
を有することを特徴とする接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜杭とプレキャスト上部工の接続構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の係留等に利用される桟橋は、上部工を杭によって支持する構造となっている。この杭として斜杭を用いることで、水平力に対して効果的に抵抗させることができ、ブレース等による杭の補強を省略することができる。
【0003】
上部工はコンクリートの現場打設によって構築することもできるが、潮位や波浪等の気象・海象条件の影響を強く受けるため、工程遅延のリスクや、品質および環境面への影響リスクがある。また、操業中の民間施設における桟橋更新では工事期間が長くなることで、操業活動に支障が出る恐れがある。そのため、工期短縮、施工の合理化、品質向上や安全性確保を図る観点から、特許文献1のようにコンクリート製のプレキャスト上部工が用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-152089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プレキャスト上部工による桟橋の施工時には、先行打設した杭の上からプレキャスト上部工を鉛直下方に吊り降ろし、プレキャスト上部工と杭とを接続するが、この際問題となるのが、斜杭とプレキャスト上部工の接続部である。通常、プレキャスト上部工には杭を挿入するため杭径に施工誤差を加えた程度の大きさの孔が設けられるが、斜杭の場合、杭が斜めになっている分、杭挿入用の孔を大きくする必要があり、孔が大きくなったことによる補強等の後施工で時間を要する。
【0006】
一方、特許文献1では、屈曲形状の接合用部材を用いて斜杭とプレキャスト上部工の接続を行っており、接合用部材の傾斜部分を斜杭の杭頭部に挿入して固定した上で、プレキャスト上部工の孔に接合用部材の鉛直部分を挿入し、当該孔に充填材を充填した構造としている。これにより、斜杭とプレキャスト上部工の接続部においても、プレキャスト上部工の孔の径を小さくできる。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、斜杭および接合用部材の傾斜部分が、プレキャスト上部工の下面近傍から下方に延びる構成となっている。斜杭の効果は、斜杭とプレキャスト上部工が成すトラス構造により実現される部分が大きいが、斜杭および接合用部材の傾斜部分がプレキャスト上部工の厚さ方向の中心から遠いと、完全なトラス構造とみなすことが難しく、水平力に対し杭頭部に余分な曲げモーメントが発生するなどして斜杭を設けた効果が低減する。
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、プレキャスト上部工の孔を細径化しつつ、水平力に対しても効果的に抵抗できる斜杭とプレキャスト上部工の接続構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するための第1の発明は、管状の斜杭とコンクリート製のプレキャスト上部工との接続構造であって、前記プレキャスト上部工に、前記斜杭に沿った傾斜を有する孔が設けられ、前記斜杭の上に前記プレキャスト上部工が配置され、前記孔および前記斜杭の上端部の内側に、前記斜杭に沿った傾斜を有する接続管が挿入され、充填材が充填されたことを特徴とする接続構造である。
【0010】
本発明の接続構造では、プレキャスト上部工に設けられた、斜杭と同様の傾斜を有する孔に接続管が挿入され、その一部が斜杭の内側に埋設される。プレキャスト上部工の孔は、斜杭と同様の傾斜を有しており、接続管より多少大きい程度の径で良いので、プレキャスト上部工の孔を細径化できる。また、斜杭へと続く接続管の傾斜がプレキャスト上部工の内部から始まるので、斜杭とプレキャスト上部工の間で完全性の高いトラス構造を実現でき、水平力に対し斜杭によって効果的に抵抗できる。
【0011】
また、前記孔の内面に鞘管が設けられ、前記接続管の上端部と、前記鞘管の内面とに、連結材が固定されることが望ましい。例えば、前記接続管の上端部に、前記接続管の軸方向に沿ったスリットが設けられ、前記鞘管の内面に固定された前記連結材である板材が、前記スリットに挿入され、前記板材が前記スリットに固定される。
上記の連結材により、接続管をプレキャスト上部工の孔内に確実に固定できる。また上記の板材を用いた固定方法は、接続管の位置や角度の多少のずれにも対応でき、斜杭やプレキャスト上部工等の設置誤差を吸収できる。
【0012】
また、前記斜杭の上端部に、仮受管が設けられ、前記仮受管の上端に、前記プレキャスト上部工を載置するフランジが設けられ、前記フランジの内縁部が前記孔の内側に突出し、前記接続管の外面に突出片が設けられ、前記突出片が、前記フランジの内縁部に載置されることも望ましい。
これにより、施工時に接続管を安定して配置することができる。
【0013】
前記接続構造は、例えば港湾の桟橋における斜杭とプレキャスト上部工の接続構造である。
これにより、桟橋において、プレキャスト上部工の孔を細径化しつつ、斜杭を水平力に対して効果的に抵抗させることができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明の接続構造による、管状の斜杭とコンクリート製のプレキャスト上部工との接続方法であって、前記斜杭の上に前記プレキャスト上部工を配置する工程と、前記孔および前記斜杭の上端部の内側に、前記斜杭に沿った傾斜を有する接続管を挿入し、充填材を充填する工程と、を有することを特徴とする接続方法である。
第2の発明は、第1の発明の接続構造を用いた斜杭とプレキャスト上部工との接続方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、プレキャスト上部工の孔を細径化しつつ、水平力に対しても効果的に抵抗できる斜杭とプレキャスト上部工の接続構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】桟橋1を示す図。
図2】プレキャスト上部工2の上面を示す図。
図3】接続構造10を示す図。
図4】プレート111の配置を示す図。
図5】斜杭4の鋼管と接続管13の間の隙間を拡大して示す図。
図6】斜杭4とプレキャスト上部工2の接続方法を示す図。
図7】接続管13の上端部を示す図。
図8】接続管13と鞘管11の連結方法の例。
図9】接続構造10aを示す図。
図10】鞘管11と接続管13の間の隙間を拡大して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
(1.桟橋1)
図1は、本発明の実施形態に係る接続構造10を有する桟橋1を示す図であり、後述する図2の線a-aによる鉛直断面を示したものである。桟橋1は港湾の沿岸部等に設置される桟橋であり、船舶の係留等に用いられる。
【0019】
桟橋1は、プレキャスト上部工2を、水底の地盤に打設した鉛直杭3と斜杭4によって支持した構成となっている。プレキャスト上部工2はコンクリート製の板状部材であり、鉛直杭3および斜杭4の上に配置される。鉛直杭3と斜杭4は鋼管による管状の杭である。なお、桟橋1は鉛直杭3と斜杭4を有するものに限定されず、斜杭4のみ有する場合もある。
【0020】
図2はプレキャスト上部工2を上から見た図である。プレキャスト上部工(以下、単に上部工という)2の平面は矩形状である。上部工2は、床版の下面に、長辺方向の梁21と、短辺方向の梁22を格子状に設けたものである。上部工2の長辺方向、短辺方向はそれぞれ図2の上下方向、左右方向に対応する。
【0021】
鉛直杭3と斜杭4は、梁21、22の交差部で上部工2に接続される。斜杭4が接続される交差部には、当該交差部を上下に貫通する孔24が設けられる。斜杭4は当該孔24を用いて接続され、孔24には、モルタルやコンクリート等のセメント系材料による充填材Fが充填される。斜杭4には、上部工2の短辺方向の中央部から短辺方向の一方の端部に向かって延びるものと、他方の端部に向かって延びるものがあり、これら一対の斜杭4のそれぞれに対応して、一対の孔24が設けられる。
【0022】
(2.接続構造10)
図3は接続構造10を示す図であり、図2の線b-bによる鉛直断面を示したものである。図3に示すように、接続構造10は、鞘管11、仮受管12、接続管13等を有する。
【0023】
鞘管11は、プレキャスト上部工2の孔24の内面に沿って配置される鋼管であり、一対の孔24のそれぞれに設けられる。孔24は、斜杭4の傾斜方向に沿った傾斜を有し、鞘管11も同様の傾斜を有する。鞘管11の周囲には鍔状のプレート111が上下2段に設けられる。これらのプレート111は、上部工2のコンクリートに埋設される。
【0024】
図4は、上部工2内のプレート111の配置を上から見た図である。プレート111は、各孔24の鞘管11に共通して設けられる。このプレート111には、上部工2の長辺方向および短辺方向の主筋23が溶接等によって固定される。なお、主筋23は鞘管11の外面に直接固定することも可能である。
【0025】
図3の説明に戻る。仮受管12は、斜杭4の上端部に外嵌される鋼管であり、斜杭4の傾斜方向に沿った傾斜を有する。仮受管12の上端には、環状の水平板であるフランジ121が仮受管12の周方向に沿って設けられる。フランジ121の上面は上部工2の孔24の周囲の下面に当接し、フランジ121の内縁部が孔24の内側に突出する。図中符号122は、フランジ121を補強するためのリブであり、フランジ121の下面と仮受管12の外面に溶接等で固定される。リブ122は、仮受管12の周方向に間隔を空けて複数設けられる。
【0026】
仮受管12の内面には、仮受管12の内側に突出する水平板状のプレート123が設けられ、斜杭4の上端がプレート123の下面に溶接等で固定される。プレート123は、仮受管12の周方向に間隔を空けて複数設けられる。図中符号124は各プレート123を補強するためのリブであり、プレート123の上面と仮受管12の内面に溶接等で固定される。
【0027】
接続管13は、孔24(鞘管11)および斜杭4の上端部の内側に挿入される鋼管である。接続管13は、斜杭4の傾斜方向に沿った傾斜を有する。接続管13の上端部にはスリット131が設けられており、当該スリット131に、鞘管11の内面に溶接等で固定されたシムプレート112が挿入される。
【0028】
シムプレート112は、板面を鉛直方向として配置した板材であり、鋼板が用いられる。シムプレート112は、スリット131に溶接等で固定され、接続管13の上端部と鞘管11の内面とを連結する連結材として機能し、斜杭4に発生する押込力または引抜力に対して抵抗する。
【0029】
接続管13の軸方向の中間部では、接続管13の外面に突出片132が設けられる。突出片132は、板面を鉛直方向として配置した板材であり、突出片132の下端がフランジ121の内縁部の上面に載置される。突出片132は、溶接等により接続管13の外面に固定され、接続管13の周方向に間隔を空けて複数設けられる。
【0030】
上部工2の孔24および斜杭4の上端部の内側には前記の充填材Fが充填される。図3の符号133は、接続管13の充填材Fへの定着のため、接続管13の下端部に設けられる係止片である。
【0031】
図5は、斜杭4の上端部の内側における、斜杭4の鋼管と接続管13の間の隙間を拡大して示す図である。斜杭4の上端部では鋼管の内面に丸鋼等によるシアキー41が固定され、当該鋼管に挿入された接続管13の下部の外面にも、丸鋼等によるシアキー134が固定される。これらのシアキー41、134により斜杭4の鋼管と接続管13の間で充填材Fを介したせん断力の伝達が可能になり、斜杭4と接続管13が一体化される。シアキー41、134は、斜杭4や接続管13の軸方向に間隔を空けて複数段設けられる。
【0032】
以上は、上部工2の短辺方向の両端部に向かって延びる斜杭4のうち一方について説明したものであるが、他方の斜杭4についても、図3等と同様の接続構造10により上部工2と接続される。
【0033】
(3.斜杭4と上部工2の接続方法)
図6は、斜杭4と上部工2の接続方法について説明する図である。本実施形態では、まず、図6(a)に示すように先行打設された斜杭4の上端部に、図6(b)に示すように仮受管12を設置する。仮受管12は斜杭4の上端部に外嵌され、斜杭4の鋼管の上端が、仮受管12の内面のプレート123に溶接等で固定される。
【0034】
その後、上部工2を斜杭4の上から吊り降ろして鉛直下方に下降させ、図6(c)に示すように仮受管12のフランジ121の上に上部工2を載置する。この時、フランジ121は上部工2の孔24の周囲の下面に当接し、フランジ121の内縁部は孔24の内側に突出する。
【0035】
その後、図6(d)に示すように斜杭4の鋼管内にコンクリートConを充填し、接続管13を上部工2の孔24および斜杭4の内側に挿入する。コンクリートConは斜杭4の上端部の下方まで充填され、接続管13の下部は、斜杭4の上端部の内側に配置される。この時、接続管13の外面の突出片132は、孔24の内側に突出したフランジ121の内縁部に載置される。
【0036】
また、シムプレート112を鞘管11の内面と接続管13のスリット131に溶接等で固定する。これにより接続管13が孔24内に固定される。
【0037】
図7(a)、(b)は、接続管13の上端部を示したものであり、図7(a)はシムプレート112の設置前、図7(b)はシムプレート112の設置後の状態である。なお図7(a)、(b)では鞘管11のプレート111や上部工2の図示を省略している。
【0038】
スリット131は接続管13の周方向に間隔を空けて複数設けられ、本実施形態では8つのスリット131が接続管13の上端部に等間隔で形成されている。これらのスリット131は、接続管13の上端から接続管13の軸方向に沿って下方に延びるように設けられる。
【0039】
シムプレート112も、スリット131の位置に対応して、鞘管11の周方向に間隔を空けて複数設けられる。シムプレート112は、当該シムプレート112内のどの位置でもスリット131に溶接固定することができ、また後付けされるものであるため、接続管13の位置や角度の多少のずれにも対応でき、斜杭4や上部工2等の設置誤差を吸収できる。
【0040】
この後、図3に示すように、上部工2の孔24および斜杭4の上端部の内側に充填材Fを充填する。仮受管12のフランジ121は、充填材Fの充填時の底型枠としても機能し、型枠の設置作業を軽減できる。フランジ121の上面にシール材(不図示)を予め設け、上部工2とフランジ121の間から充填材Fが漏れるのを確実に防止することもできる。また充填材Fは、仮受管12の内側にも充填され、仮受管12の設置時(図6(b)参照)には、仮受管12と斜杭4の間の隙間の下端を塞ぐ詰物等の閉止材(不図示)も設けられる。
【0041】
以上の工程により、図3等に示す接続構造10が形成される。本実施形態では上部工2をプレキャスト部材とすることで工期短縮、施工の合理化等が可能になり、また上部工2の設置後の工程のほぼ全てが上部工2の上面での作業により実施できるため、上部工2の下方での潮間作業が軽減され、施工が容易になる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の接続構造10では、上部工2に設けられた、斜杭4と同様の傾斜を有する孔24に接続管13が挿入され、その一部が斜杭4の内側に埋設される。上部工2の孔24は、斜杭4と同様の傾斜を有しており、接続管13より多少大きい程度の径で良いので、上部工2の孔24を細径化できる。また、斜杭4へと続く接続管13の傾斜が上部工2の内部から始まるので、斜杭4と上部工2の間で完全性の高いトラス構造を実現でき、水平力に対し斜杭4によって効果的に抵抗できる。
【0043】
また本実施形態では、シムプレート112が鞘管11の内面と接続管13のスリット131に固定されるので、接続管13を上部工2の孔24内に確実に固定できる。またシムプレート112を用いた固定方法は、接続管13の位置や角度の多少のずれにも対応でき、斜杭4や上部工2等の設置誤差を吸収できる。さらに、シムプレート112の溶接等は上部工2の上面から手の届く範囲で行えるので、作業も容易である。
【0044】
また本実施形態では、接続管13の外面の突出片132が、上部工2の孔24の内側に突出する仮受管12のフランジ121の内縁部に載置される構成となっており、施工時に接続管13を安定して配置することができる。
【0045】
また本実施形態の接続構造10は港湾の桟橋1における斜杭4と上部工2の接続構造であり、桟橋1において、上部工2の孔24を細径化しつつ、斜杭4を水平力に対して効果的に抵抗させることができる。
【0046】
しかしながら、本発明は以上の実施形態に限定されない。例えば本実施形態では接続構造10を港湾の桟橋1に適用しているが、接続構造10の適用対象はこれに限らない。
【0047】
また仮受管12や接続管13の構成等も前記に限定されない。例えば仮受管12のプレート123を斜杭4の鋼管の上端に溶接等で固定する代わりに、仮受管12と斜杭4の鋼管の間に楔状の金物を挿入するなどして仮受管12を固定することも可能である。また本実施形態では仮受管12を斜杭4の鋼管に外嵌しているが、仮受管12は当該鋼管の内側に挿入されるものであってもよい。さらに、仮受管12の上に上部工2を載置する代わりに、上部工2側から下方に仮受部材を突出させて、この仮受部材を斜杭4の上端部に設置する可能性もあり、この場合では前記の仮受管12が省略される。
【0048】
また本実施形態では接続管13のスリット131にシムプレート112を溶接固定し、シムプレート112により接続管13と鞘管11を連結しているが、図8(a)に示すように、シムプレート112を、内側の端部が下方に折れ曲がるL字状のものとし、その折れ曲がり部分を接続管13に溶接等で固定することも可能である。また図8(b)に示すように、接続管13から上方に突出する一対のプレート135(引抜抵抗プレート)を溶接等によって接続管13に固定し、一対のプレート135の間の隙間にシムプレート112を挿入し、当該シムプレート112とこれらのプレート135とを溶接等により固定することも可能である。図8(a)、(b)のシムプレート112および図8(b)の一対のプレート135の組は、鞘管11や接続管13の周方向に間隔を空けて複数設けられ、図8(a)、(b)の例ではスリット131を省略することが可能である。これに対し、図7のようなスリット131を用いた連結方法は、部材数の少なさ、施工誤差への対応の容易さ等の点で優れている。
【0049】
また、図9の接続構造10aに示すようにシムプレート112を省略し、孔24を更に細径化することもできる。この場合も、接続管13には前記のスリット131が設けられない。
【0050】
図10は、鞘管11と接続管13の間の隙間を拡大して示す図である。この例では、鞘管11の内面に丸鋼等によるシアキー113が上下複数段に固定されており、鞘管11内に配置される接続管13の上部の外面にも、前記と同様のシアキー134が上下複数段に固定される。これらのシアキー113、134により鞘管11と接続管13の間で充填材Fを介したせん断力の伝達が可能になり、上部工2と接続管13が一体化される。
【0051】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0052】
1:桟橋
2:プレキャスト上部工
3:鉛直杭
4:斜杭
10、10a:接続構造
11:鞘管
12:仮受管
13:接続管
24:孔
111、123、135:プレート
112:シムプレート
131:スリット
132:突出片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10