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特開2024-64028鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法、鉄鉱石ペレットの製造方法及び鉄鉱石ペレット
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  • 特開-鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法、鉄鉱石ペレットの製造方法及び鉄鉱石ペレット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064028
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法、鉄鉱石ペレットの製造方法及び鉄鉱石ペレット
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/14 20060101AFI20240507BHJP
   C21B 5/00 20060101ALI20240507BHJP
   C22B 1/16 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C22B1/14
C21B5/00 301
C22B1/16 R
C21B5/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172312
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】森岡 耕一
(72)【発明者】
【氏名】梶山 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 嗣憲
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 裕太
【テーマコード(参考)】
4K001
4K012
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001CA22
4K001CA26
4K001DA10
4K001GA02
4K001HA01
4K001HA09
4K001KA02
4K001KA06
4K001KA07
4K012BA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法及びこの判定方法を用いた鉄鉱石ペレットの製造方法を提供する。
【解決手段】高炉操業に用いる自溶性の鉄鉱石ペレットの製造方法であって、CaO/SiO質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO質量比が0.4以上となるようにCaO及びMgOを含む副原料を鉱石原料に配合する工程と、混合原料から生ペレットを造粒する工程と、生ペレットに強度を付与する塊成化工程とを備え、式1で示される温度T1を1100℃以上又は式2で示される温度T2を1350℃以上とする。
T1=1155-0.095×Po+15×FeO0.5・・・1
T2=220×C/S+13.1×M/S-23.13×TFe+2600・・・2
Poは鉄鉱石ペレットの気孔率[%]、FeOはFeOの割合[質量%]、C/SはCaO/SiO質量比、M/SはMgO/SiO質量比、TFeは総鉄分の割合[質量%]である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉操業に用いられ、CaO/SiO質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO質量比が0.4以上である自溶性の鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法であって、
融着開始温度T1としての下記式1又は急速収縮温度T2としての下記式2を用いる鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法。
T1=1155-0.095×Po+15×FeO0.5 ・・・1
T2=220×C/S+13.1×M/S-23.13×TFe+2600 ・・・2
上記式1において、Poは鉄鉱石ペレットの気孔率[%]、FeOは鉄鉱石ペレットに対するFeOの割合[質量%]である。
上記式2において、C/Sは鉄鉱石ペレットのCaO/SiO質量比、M/Sは鉄鉱石ペレットのMgO/SiO質量比、TFeは鉄鉱石ペレットに対する総鉄分の割合[質量%]である。
【請求項2】
上記式1及び上記式2を共に用いる請求項1に記載の鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法。
【請求項3】
高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットの製造方法であって、
CaO/SiO質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO質量比が0.4以上となるように、CaO及びMgOを含む副原料を鉱石原料に配合する原料配合工程と、
上記原料配合工程で得られた混合原料から生ペレットを造粒する造粒工程と、
上記生ペレットに強度を付与する塊成化工程と
を備え、
下記式1で示される温度T1を1100℃以上、又は下記式2で示される温度T2を1350℃以上とする鉄鉱石ペレットの製造方法。
T1=1155-0.095×Po+15×FeO0.5 ・・・1
T2=220×C/S+13.1×M/S-23.13×TFe+2600 ・・・2
上記式1において、Poは鉄鉱石ペレットの気孔率[%]、FeOは鉄鉱石ペレットに対するFeOの割合[質量%]である。
上記式2において、C/Sは鉄鉱石ペレットのCaO/SiO質量比、M/Sは鉄鉱石ペレットのMgO/SiO質量比、TFeは鉄鉱石ペレットに対する総鉄分の割合[質量%]である。
【請求項4】
上記温度T1を1100℃以上とし、かつ上記温度T2を1350℃以上とする請求項3に記載の鉄鉱石ペレットの製造方法。
【請求項5】
上記原料配合工程で、CaO量、MgO量、SiO量及び鉄量を調整する請求項3又は請求項4に記載の鉄鉱石ペレットの製造方法。
【請求項6】
上記塊成化工程での強度付与が、上記生ペレットの焼成によるものであり、
焼成温度によりFeO量を調整する請求項3又は請求項4に記載の鉄鉱石ペレットの製造方法。
【請求項7】
上記焼成温度を1200℃以上1300℃以下とする請求項6に記載の鉄鉱石ペレットの製造方法。
【請求項8】
上記副原料が、カルシウムフェライト系鉱物、マグネシウムフェライト系鉱物、及び結合剤を含み、
上記原料配合工程で、FeO量を調整する請求項3に記載の鉄鉱石ペレットの製造方法。
【請求項9】
高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットであって、
CaO/SiO質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO質量比が0.4以上であり、
下記式1で示される温度T1が1100℃以上、又は下記式2で示される温度T2が1350℃以上である鉄鉱石ペレット。
T1=1155-0.095×Po+15×FeO0.5 ・・・1T2=220×C/S+13.1×M/S-23.13×TFe+2600 ・・・2
上記式1において、Poは鉄鉱石ペレットの気孔率[%]、FeOは鉄鉱石ペレットに対するFeOの割合[質量%]である。
上記式2において、C/Sは鉄鉱石ペレットのCaO/SiO質量比、M/Sは鉄鉱石ペレットのMgO/SiO質量比、TFeは鉄鉱石ペレットに対する総鉄分の割合[質量%]である。
【請求項10】
上記温度T1が1100℃以上であり、かつ上記温度T2が1350℃以上である請求項9に記載の鉄鉱石ペレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法、鉄鉱石ペレットの製造方法及び鉄鉱石ペレットに関する。
【背景技術】
【0002】
高炉操業として、高炉の上部から酸化鉄類を含む鉄鉱石や焼成鉱及び炭素源のコークスを装入し、下部の羽口から空気や酸素を送風して炉内にて一酸化炭素の発生や酸化鉄から酸素を除去する還元反応を進行させ炉下部から銑鉄を取り出す方法が公知である。
【0003】
その連続操業を円滑に進行させるためには、送風を円滑に行うことが重要である。そのためには送風圧力が低く安定していること、つまり通気性が良いことが望ましい。この送風圧力は、装入物の性状に依存する。装入物の中でも鉄鉱石、焼結鉱、鉄鉱石ペレット類は、高温かつ還元雰囲気に晒されて還元反応を受けて金属鉄と酸化物の混合体となる。同時に高炉内の荷重を受けて軟化し変形する。この軟化変形により装入物粒子間の空隙を埋めて炉内の通気性が妨げられる。この現象が主たる原因となる事象を炉下部圧損と呼び、これを低減することが志向されている。
【0004】
この炉下部圧損を低減できる鉄鉱石ペレットとして、CaO/SiO質量比が0.8以上、MgO/SiO質量比が0.4以上であって、所定の粒径分布を有する自溶性ペレットが公知である(特開2008-280556号公報参照)。
【0005】
上記鉄鉱石ペレットでは、CaO/SiO質量比を0.8以上、MgO/SiO質量比を0.4以上とすることで高温における被還元性を高め、粒径分布を制御することで通気性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-280556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高炉操業は、高温で行われ多量のエネルギーを必要とするため、低エネルギー化が求められている。高炉操業を低エネルギー化するためには、炉壁から外界に伝わり、炉内反応に関係しない熱(炉壁熱損)を減らすことが重要である。高炉の熱損は、炉壁が高温であるほど大きくなる。炉壁の温度は、壁付近の炉内ガスが高温であり流量が多い場合に高温となるから、炉壁付近のガスの流量を減らすことが重要である。
【0008】
高炉内の通気は、高温軟化により鉱石類が形成する融着帯を境に大きく異なる。融着帯より低温側、つまり炉の上部の領域では、固体の鉱石類などの装入物が存在し、装入物制御により炉壁付近に通気性の低い装入物を配置することで、炉壁付近のガスの流量を減らせることが知られている。
【0009】
一方、融着帯よりも高温側、つまり炉の下部の領域では、液体の鉄及びスラグと固体のコークスが存在するのみで、ガスの流路を制御することは難しい。従って、高炉操業の低エネルギー化には、融着帯を下方に位置させ、装入物により炉壁付近のガスの流量を減らせる領域を拡大することが有効である。
【0010】
CaO及びMgOを含む鉄鉱石ペレットでは、CaO-FeO系化合物が溶融することにより軟化変形して融着帯が形成され始める。この融着帯を形成し始める温度は、荷重還元試験において10%の収縮率を示す融着開始温度で代表できる。さらに高温になると、固体として存在していたMgO-FeO系化合物も溶融して急速に収縮し、融着帯の形成は終了する。この急速に収縮する温度を急速収縮温度という。
【0011】
融着帯の形成が終了すると、炉壁付近のガスの流量を減らす手段がなくなり、壁の温度が高くなるから、高炉操業の低エネルギー化を図るには、融着開始温度又は急速収縮温度が高温であるとよいと考えられる。しかし、鉄鉱石ペレットの融着開始温度又は急速収縮温度を高温化する技術は確立されているとは言えない。
【0012】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、融着開始温度又は急速収縮温度が高温であることを判断可能な鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法、この高温性状判定方法を用いた鉄鉱石ペレットの製造方法及び鉄鉱石ペレットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法は、高炉操業に用いられ、CaO/SiO質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO質量比が0.4以上である自溶性の鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法であって、融着開始温度T1としての下記式1又は急速収縮温度T2としての下記式2を用いる。
T1=1155-0.095×Po+15×FeO0.5 ・・・1
T2=220×C/S+13.1×M/S-23.13×TFe+2600 ・・・2
上記式1において、Poは鉄鉱石ペレットの気孔率[%]、FeOは鉄鉱石ペレットに対するFeOの割合[質量%]である。
上記式2において、C/Sは鉄鉱石ペレットのCaO/SiO質量比、M/Sは鉄鉱石ペレットのMgO/SiO質量比、TFeは鉄鉱石ペレットに対する総鉄分の割合[質量%]である。
【0014】
本発明の別の一態様に係る鉄鉱石ペレットの製造方法は、高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットの製造方法であって、CaO/SiO質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO質量比が0.4以上となるように、CaO及びMgOを含む副原料を鉱石原料に配合する原料配合工程と、上記原料配合工程で得られた混合原料から生ペレットを造粒する造粒工程と、上記生ペレットに強度を付与する塊成化工程とを備え、下記式1で示される温度T1を1100℃以上、又は下記式2で示される温度T2を1350℃以上とする。
T1=1155-0.095×Po+15×FeO0.5 ・・・1
T2=220×C/S+13.1×M/S-23.13×TFe+2600 ・・・2
上記式1において、Poは鉄鉱石ペレットの気孔率[%]、FeOは鉄鉱石ペレットに対するFeOの割合[質量%]である。
上記式2において、C/Sは鉄鉱石ペレットのCaO/SiO質量比、M/Sは鉄鉱石ペレットのMgO/SiO質量比、TFeは鉄鉱石ペレットに対する総鉄分の割合[質量%]である。
【0015】
本発明のさらに別の一態様に係る鉄鉱石ペレットは、高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットであって、CaO/SiO質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO質量比が0.4以上であり、下記式1で示される温度T1が1100℃以上、又は下記式2で示される温度T2が1350℃以上である。
T1=1155-0.095×Po+15×FeO0.5 ・・・1T2=220×C/S+13.1×M/S-23.13×TFe+2600 ・・・2
上記式1において、Poは鉄鉱石ペレットの気孔率[%]、FeOは鉄鉱石ペレットに対するFeOの割合[質量%]である。
上記式2において、C/Sは鉄鉱石ペレットのCaO/SiO質量比、M/Sは鉄鉱石ペレットのMgO/SiO質量比、TFeは鉄鉱石ペレットに対する総鉄分の割合[質量%]である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法は、融着開始温度又は急速収縮温度が高温であることを判断可能である。この鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法を利用する本発明の鉄鉱石ペレットの製造方法は、融着開始温度又は急速収縮温度が高温である鉄鉱石ペレットを製造できる。また、本発明の鉄鉱石ペレットは、融着開始温度又は急速収縮温度が高温である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る鉄鉱石ペレットの製造方法を示すフロー図である。
図2図2は、図1の鉄鉱石ペレットの製造方法で使用する製造装置の構成を示す模式図である。
図3図3は、融着開始温度と融着開始温度推定値T1との相関を示すグラフである。
図4図4は、急速収縮温度と急速収縮温度推定値T2との相関を示すグラフである。
図5図5は、図1とは異なる実施形態に係る鉄鉱石ペレットの製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係る鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法は、高炉操業に用いられ、CaO/SiO質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO質量比が0.4以上である自溶性の鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法であって、融着開始温度T1としての下記式1又は急速収縮温度T2としての下記式2を用いる。
T1=1155-0.095×Po+15×FeO0.5 ・・・1
T2=220×C/S+13.1×M/S-23.13×TFe+2600 ・・・2
上記式1において、Poは鉄鉱石ペレットの気孔率[%]、FeOは鉄鉱石ペレットに対するFeOの割合[質量%]である。
上記式2において、C/Sは鉄鉱石ペレットのCaO/SiO質量比、M/Sは鉄鉱石ペレットのMgO/SiO質量比、TFeは鉄鉱石ペレットに対する総鉄分の割合[質量%]である。
【0019】
本発明者らが、融着開始温度T1について、鋭意検討したところ、融着開始温度T1は、気孔率及びFeOの割合を用いて近似できることを知得した。すなわち、上記式1を用いることで、融着開始温度T1を精度よく推定することが可能である。また、急速収縮温度T2について、鋭意検討したところ、急速収縮温度T2は、C/S、M/S及びTFeを用いて近似できることを知得した。すなわち、上記式2を用いることで、急速収縮温度T2を精度よく推定することが可能である。従って、上記式1又は上記式2を用いることで、高炉操業における融着帯の形成温度を容易に判定することができる。
【0020】
上記式1及び上記式2を共に用いるとよい。このように上記式1及び上記式2を共に用いることで、融着帯の形成温度をさらに精度よく判定することができる。
【0021】
本発明の別の一態様に係る鉄鉱石ペレットの製造方法は、高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットの製造方法であって、CaO/SiO質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO質量比が0.4以上となるように、CaO及びMgOを含む副原料を鉱石原料に配合する原料配合工程と、上記原料配合工程で得られた混合原料から生ペレットを造粒する造粒工程と、上記生ペレットに強度を付与する塊成化工程とを備え、下記式1で示される温度T1を1100℃以上、又は下記式2で示される温度T2を1350℃以上とする。
T1=1155-0.095×Po+15×FeO0.5 ・・・1
T2=220×C/S+13.1×M/S-23.13×TFe+2600 ・・・2
上記式1において、Poは鉄鉱石ペレットの気孔率[%]、FeOは鉄鉱石ペレットに対するFeOの割合[質量%]である。
上記式2において、C/Sは鉄鉱石ペレットのCaO/SiO質量比、M/Sは鉄鉱石ペレットのMgO/SiO質量比、TFeは鉄鉱石ペレットに対する総鉄分の割合[質量%]である。
【0022】
当該鉄鉱石ペレットの製造方法では、上記式1で示される温度T1又は上記式2で示される温度T2を上記下限以上とする。上記式1で求められるT1は、融着開始温度を精度よく近似するので、上記T1を上記下限以上とすることで、製造される鉄鉱石ペレットの融着開始温度を容易に高温化することができる。また、上記式2で求められるT2は、急速収縮温度を精度よく近似するので、上記T2を上記下限以上とすることで、製造される鉄鉱石ペレットの急速収縮温度を容易に高温化することができる。このため、上記T1又は上記T2のいずれかを所定温度以上とする当該鉄鉱石ペレットの製造方法を用いることで、低エネルギーの高炉操業を可能とする鉄鉱石ペレットを製造することができる。
【0023】
上記温度T1を1100℃以上とし、かつ上記温度T2を1350℃以上とするとよい。このように上記温度T1を1100℃以上とし、かつ上記温度T2を1350℃以上とすることで、さらに低エネルギーの高炉操業を可能とする鉄鉱石ペレットを製造することができる。
【0024】
上記原料配合工程で、CaO量、MgO量、SiO量及び鉄量を調整するとよい。このように上記原料配合工程で、CaO量、MgO量、SiO量及び鉄量を調整することで、T2の値を制御することができる。
【0025】
上記塊成化工程での強度付与が、上記生ペレットの焼成によるものであり、焼成温度によりFeO量を調整するとよい。焼成温度を高くすると、FeO量が増加するので、T1の値を制御することができる。また、鉄鉱石ペレットに占める酸素の割合が低減し、鉄分(TFe)が増加するので、T2の値を制御することもできる。
【0026】
上記焼成温度を1200℃以上1300℃以下とするとよい。このように焼成温度を上記範囲内とすることで、高温焼成により鉄鉱石ペレットの表面張力が強化される焼き締め効果で気孔率を低減することができる。これによりT1の値を高めることができる。
【0027】
上記副原料が、カルシウムフェライト系鉱物、マグネシウムフェライト系鉱物、及び結合剤を含み、上記原料配合工程で、FeO量を調整するとよい。このように上記副原料がカルシウムフェライト系鉱物及びマグネシウムフェライト系鉱物、及び結合剤を含む場合、上記原料配合工程で、カルシウムフェライト系鉱物及びマグネシウムフェライト系鉱物の量により直接的にFeO量を調整できるので、T1の制御性が高い。
【0028】
本発明のさらに別の一態様に係る鉄鉱石ペレットは、高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットであって、CaO/SiO質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO質量比が0.4以上であり、下記式1で示される温度T1が1100℃以上、又は下記式2で示される温度T2が1350℃以上である。
T1=1155-0.095×Po+15×FeO0.5 ・・・1T2=220×C/S+13.1×M/S-23.13×TFe+2600 ・・・2
上記式1において、Poは鉄鉱石ペレットの気孔率[%]、FeOは鉄鉱石ペレットに対するFeOの割合[質量%]である。
上記式2において、C/Sは鉄鉱石ペレットのCaO/SiO質量比、M/Sは鉄鉱石ペレットのMgO/SiO質量比、TFeは鉄鉱石ペレットに対する総鉄分の割合[質量%]である。
【0029】
当該鉄鉱石ペレットは、自溶性でCaO/SiO質量比を0.8以上とし、かつMgO/SiO質量比を0.4以上とするので、被還元性が高い。上記式1で求められるT1は、融着開始温度を精度よく近似するので、上記T1が上記下限以上であることは、鉄鉱石ペレットの融着開始温度が高いことを意味する。また、上記式2で求められるT2は、急速収縮温度を精度よく近似するので、上記T2が上記下限以上であることは、当該鉄鉱石ペレットの急速収縮温度が高いことを意味する。このため、上記T1又は上記T2のいずれかを所定温度以上である当該鉄鉱石ペレットを用いることで、低エネルギーの高炉操業を可能とする。
【0030】
上記温度T1が1100℃以上であり、かつ上記温度T2が1350℃以上であるとよい。このように上記温度T1が1100℃以上であり、かつ上記温度T2が1350℃以上である当該鉄鉱石ペレットを用いることで、さらに低エネルギーの高炉操業を可能とする。
【0031】
なお、本発明における鉄鉱石ペレットの形状は、球状に限定されるものではなく、任意の立体形状を採用することができる。
【0032】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法、鉄鉱石ペレットの製造方法及び鉄鉱石ペレットについて、適宜図面を参照しつつ説明する。
【0033】
〔鉄鉱石ペレットの製造方法〕
[第1実施形態]
図1に示す鉄鉱石ペレットの製造方法は、原料配合工程S1と、造粒工程S2と、塊成化工程S3と、冷却工程S4とを備える。当該鉄鉱石ペレットの製造方法において、塊成化工程S3での強度付与は、生ペレットの焼成によるものであり、製造されるペレットはいわゆる焼成ペレットである。
【0034】
当該鉄鉱石ペレットの製造方法は、高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレット1を、グレートキルン方式の製造装置(以下、単に「製造装置2」ともいう)を用いて製造することができる。製造装置2は、パンペレタイザ3と、グレート炉4と、キルン5と、アニュラクーラ6とを備える。
【0035】
<原料配合工程>
原料配合工程S1では、CaO/SiO質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO質量比が0.4以上となるように、CaO及びMgOを含む副原料を鉱石原料に配合する。
【0036】
塊成化工程S3での強度付与が生ペレットの焼成によるものである場合、上記副原料としてCaO源となる石灰石と、MgO源となるドロマイトとを配合する。
【0037】
上記鉱石原料及び上記副原料は、必要に応じて、事前に又は配合後にボールミル等で粉砕して、上記鉱石原料及び上記副原料が混合された混合原料の粒度を調整するとよい。
【0038】
このとき、原料粒度指数を適切に制御すれば、生ペレットPの気孔率が制御される。ここで、「原料粒度指数」は、以下の方法により特定できる。まず、混合原料の粒度分布を測定する。この測定には、JIS-A-1204:2010、JIS-A-8815:1994、JIS-Z-8825:2022のうちの1つを用いることができる。次に、各粒度範囲Pi(代表値)における質量比率もしくは体積比率miを用い、3μmから1000μmの範囲までの総和Σ3/Pi・miを計算し、これを原料粒度指数とする。
【0039】
この原料粒度指数と生ペレットPの気孔率との関係は、同一銘柄の鉄鉱石と副原料とを同一比率で配合した混合原料において成立するが、例えば鉄鉱石の銘柄が異なると、表面形状や濡れ性等の影響により、その比例係数は変化し得る。従って、原料粒度指数の好適値は以下の方法により特定できる。まず、特定の混合比率の混合原料において少なくとも2種類の原料粒度指数の原料を準備し、生ペレットPを作製し気孔率を測定する。この結果から、原料粒度指数と気孔率との関係を算出できる。そうすると、鉄鉱石ペレット1に必要な気孔率となる原料粒度指数を決定することができるから、この原料粒度指数となるように原料の粒度を調整する。なお、粒度の調整には、そのような粒度を有する原料を購入することも含まれる。
【0040】
あるいは、原料粒度の指標としてブレーン指数による比表面積を用いることもできる。上記比表面積の下限としては、1000cm/gが好ましく、2000cm/gがより好ましい。一方、上記比表面積の上限としては、5000cm/gが好ましく、4000cm/gがより好ましい。上記比表面積が上記下限未満であると、後述する急速収縮温度の指標であるT2を1350℃以上とすることが困難となるおそれがある。逆に、上記比表面積が上記上限を超えると、塊成化工程S3においてバースティング現象を引き起こすおそれがある。ここで、「比表面積」とは、JIS-R5201(2015)に準拠して測定される値を意味する。
【0041】
上記混合原料には、製造工程内の搬送で必要な生ペレットPの強度を得るために適宜ベンナイト等のバインダーを配合してもよい。
【0042】
<造粒工程>
造粒工程S2では、原料配合工程S1で得られた混合原料から生ペレットPを造粒する。生ペレットPの造粒には、転動造粒機が用いることができる。上記転動造粒機としては、図2に示すパンペレタイザ3やドラムペレタイザ、ディスクペレタイザなどを用いることができる。
【0043】
具体的には、造粒工程S2では、上記混合原料に水分(造粒水)を添加した後、この造粒水含有混合物(造粒水を含有した上記混合原料)をパンペレタイザ3に投入及び転動させて、泥団子状の生ペレットPを製造する。
【0044】
生ペレットPの気孔率の下限としては、15%が好ましく、17%がより好ましい。一方、上記気孔率の上限としては、25%が好ましく、20%がより好ましい。上記気孔率が上記下限未満であると、塊成化工程S3においてバースティング現象を引き起こすおそれがある。逆に、上記気孔率が上記上限を超えると、後述する融着開始温度の指標であるT1を1100℃以上とすることが困難となるおそれがある。
【0045】
上記気孔率は、原料配合工程S1における原料粒度及び造粒工程S2における転動時間により制御するとよい。このように気孔率を制御することで、気孔率を所望の値に制御し易く、より確実にT1を1100℃以上とすることができる。なお、細孔径分布における20μm以下の容積割合を好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上とすることで、さらに確実にT1を1100℃以上とすることができる。ここで、「細孔径分布における20μm以下の容積割合」は、JIS-R-1655:2003により測定することができる。
【0046】
また、塊成化工程S3後の粒径が4mm以上20mm以下、より好ましくは6mm以上15mm以下となるように、造粒工程S2で生ペレットPの粒度範囲を調整するとよい。このように塊成化工程S3後の粒径を上記範囲内とすることで、高温における被還元性を維持しつつ、高炉の上部通気抵抗が低下することを抑止できる。
【0047】
生ペレットPの粒度範囲の調整に、予め決められた篩目に調整されたオーバーサイズスクリーン(上限篩)及びシードスクリーン(下限篩)を有する篩群による分級を用いるとよい。このように生ペレットPの粒度範囲の調整を分級により行うことで、容易かつ確実に塊成化工程S3後の粒径を調整できる。なお、分級操作において外れた規格外品は解砕されて再度、混合原料として用いられることが好ましい。
【0048】
<塊成化工程>
塊成化工程S3では、生ペレットPに強度を付与する。当該鉄鉱石ペレットの製造方法では、塊成化工程S3で、生ペレットPを焼成する。図2に示す製造装置2では、塊成化工程S3に、グレート炉4及びキルン5が用いられている。
【0049】
(グレート炉)
グレート炉4は、図2に示すように、トラベリンググレート41と、乾燥室42と、離水室43と、予熱室44とを備える。
【0050】
トラベリンググレート41は、無端状に構成され、このトラベリンググレート41上に載置された生ペレットPを、乾燥室42、離水室43及び予熱室44の順に移動させることができる。
【0051】
乾燥室42、離水室43及び予熱室44では、加熱用ガスG1によって生ペレットPを乾燥、離水及び予熱し、キルン5での転動に耐えうる強度を生ペレットPに付与した予熱ペレットHを得る。
【0052】
具体的には以下の手順による。まず、乾燥室42で、生ペレットPを250℃程度の雰囲気温度で乾燥させる。次に、離水室43で、乾燥後の生ペレットPを450℃程度に昇温し、主に鉄鉱石中の結晶水を分解除去する。さらに、予熱室44で、生ペレットPを1100℃程度まで昇温し、石灰石、ドロマイト等に含まれる炭酸塩を分解し二酸化炭素を除去するとともに、鉄鉱石中のマグネタイトを酸化させる。これにより予熱ペレットHが得られる。
【0053】
図2に示すように、乾燥室42の加熱用ガスG1としては、離水室43で使用された加熱用ガスG1が流用される。同様に離水室43の加熱用ガスG1には予熱室44の加熱用ガスG1が流用され、予熱室44の加熱用ガスG1には、キルン5で使用された燃焼排ガスG2が流用される。このように下流側の高温の加熱用ガスG1又は燃焼排ガスG2を流用することで、加熱用ガスG1の加熱コストを削減できる。なお、各室にはバーナ45を設け、加熱用ガスG1の温度を制御してもよい。図2では、離水室43及び予熱室44にバーナ45が設けられている。また、乾燥室42で使用された加熱用ガスG1は、最終的には煙突Cから排出される。
【0054】
(キルン)
キルン5は、グレート炉4に直結されており、勾配をつけた円筒状の回転炉である。キルン5は、グレート炉4の予熱室44から排出される予熱ペレットHを焼成する。具体的には出口側に配設されたキルンバーナ(不図示)による燃焼により予熱ペレットHを焼成する。これにより高温の鉄鉱石ペレット1が得られる。
【0055】
予熱ペレットHを焼成する焼成温度の下限としては、1200℃が好ましく、1220℃がより好ましい。一方、上記焼成温度の上限としては、1300℃が好ましく、1280℃がより好ましい。上記焼成温度が上記下限未満であると、ペレットが焼き締まらないため、また上記焼成温度が上記上限を超えると、粗大結晶粒が生成し易くなるため、鉄鉱石ペレット1の気孔が大きくなるおそれがある。逆に、焼成温度を上記範囲内とすることで、高温焼成により鉄鉱石ペレット1の表面張力が強化される焼き締め効果で気孔率を低減することができる。これによりT1の値を高めることができる。
【0056】
キルン5では、燃焼用空気としては、アニュラクーラ6で使用された冷却ガスG3である大気が用いられる。また、予熱ペレットHの焼成用に使用された高温の燃焼排ガスG2は、加熱用ガスG1として予熱室44へ送り込まれる。
【0057】
<冷却工程>
冷却工程S4では、塊成化工程S3で得られる高温の鉄鉱石ペレット1を冷却する。冷却工程S4では、アニュラクーラ6が用いられる。冷却工程S4で冷却された鉄鉱石ペレット1は集積され、高炉操業に用いられる。
【0058】
アニュラクーラ6では、キルン5から排出された高温の鉄鉱石ペレット1を移動させながら、冷却ガスG3である大気を通風装置61により通風することで鉄鉱石ペレット1を冷却することができる。
【0059】
なお、アニュラクーラ6で使用され温度が上昇した冷却ガスG3は、キルン5へ送り込まれ、燃焼用空気として使用される。
【0060】
<急速収縮温度及び融着開始温度>
当該鉄鉱石ペレットの製造方法では、下記式1で示される温度T1を1100℃以上とし、かつ下記式2で示される温度T2を1350℃以上とする。
T1=1155-0.095×Po+15×FeO0.5 ・・・1
T2=220×C/S+13.1×M/S-23.13×TFe+2600 ・・・2
上記式1において、Poは鉄鉱石ペレットの気孔率[%]、FeOは鉄鉱石ペレットに対するFeOの割合[質量%]である。
上記式2において、C/Sは鉄鉱石ペレットのCaO/SiO質量比、M/Sは鉄鉱石ペレットのMgO/SiO質量比、TFeは鉄鉱石ペレットに対する総鉄分の割合[質量%]である。
【0061】
上記式1は、融着開始温度を推定する推定式であり、上記式2は、急速収縮温度を推定する推定式である。これらの推定式を用いることで、鉄鉱石ペレットの高温性状判定することができ、それ自体が本発明の一実施形態である。以下、これらの推定式を用いる鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法について説明する。
【0062】
本発明の一態様に係る鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法は、高炉操業に用いられ、CaO/SiO質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO質量比が0.4以上である自溶性の鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法であって、融着開始温度T1としての下記式1及び急速収縮温度T2としての下記式2を用いる。
T1=1155-0.095×Po+15×FeO0.5 ・・・1
T2=220×C/S+13.1×M/S-23.13×TFe+2600 ・・・2
上記式1において、Poは鉄鉱石ペレットの気孔率[%]、FeOは鉄鉱石ペレットに対するFeOの割合[質量%]である。
上記式2において、C/Sは鉄鉱石ペレットのCaO/SiO質量比、M/Sは鉄鉱石ペレットのMgO/SiO質量比、TFeは鉄鉱石ペレットに対する総鉄分の割合[質量%]である。
【0063】
(融着開始温度)
本発明者らが、融着開始温度T1について、鋭意検討したところ、融着開始温度T1は、気孔率及びFeOを用いて近似できることを知得した。図3に融着開始温度と、上記式1により推定した融着開始温度T1との相関を示す。図3に示すように、両者はよく一致している。すなわち、上記式1を用いることで、融着開始温度T1を精度よく推定することが可能であり、高炉操業における融着帯の形成温度を容易に判定することができる。
【0064】
本発明者らは、融着開始温度T1が上記式1で近似できるのは、1100℃付近における鉄鉱石ペレット1の組織の緻密性で理解できると考えている。つまり、CaO-FeO系化合物が溶融する1100℃付近で、緻密な金属鉄殻が維持されている場合、鉄鉱石ペレット1の強度が維持され、融着開始温度T1が上昇する。緻密な金属鉄殻が維持されるには、還元反応における金属鉄の生成速度が遅いとよい。気孔率が小さい場合、還元ガスの拡散が停滞し、金属鉄の生成速度を遅くすることができる。また、FeOを含むペレット基地組織はガラス質であり気孔を含まない。従って、T1は気孔率Poが大きいと下がり、FeOが大きいと上がる傾向となる。
【0065】
(急速収縮温度)
本発明者らが、急速収縮温度T2について、鋭意検討したところ、急速収縮温度T2は、C/S、M/S及びTFeを用いて近似できることを知得した。図4に急速収縮温度と、上記式1により推定した急速収縮温度T2との相関を示す。図4に示すように、両者はよく一致している。すなわち、上記式2を用いることで、急速収縮温度T2を精度よく推定することが可能であり、高炉操業における融着帯の形成終了温度を容易に判定することができる。
【0066】
本発明者らは、急速収縮温度T2が上記式2で近似できるのは、熱力学的な状態で理解できると考えている。つまり、CaO及びMgOの量は、SiOとの比率で効果が示され、酸化物の融点を近似している。CaO/SiO、MgO/SiOが大きいほど高融点になる。また、TFeは鉄分が多いほど、CaO及びMgOの効果が小さくなることを示し、還元途中のFeOがCaO及びMgOの酸化物融点に及ぼす影響を近似している。詳説すると、CaOが不足すると金属鉄への還元性が低下し、未還元酸化物であるFeOが多く残存する。MgOは、残存FeOと高融点のMgO-FeO系化合物を形成し、急速収縮温度T2を上昇させるが、MgOが不足するとMgO-FeO系化合物を形成しない自由なFeOが残存する。さらに、鉄鉱石ペレットにおいてFeOが多いと総鉄分TFeは多くなる関係となる。ここで、CaO、MgOの量自体の効果は、C/S及びM/Sの係数として反映されるから、急速収縮温度T2にTFeの項を加えるとFeOの効果が表され、FeOが大きいほど、つまりTFeが大きいほど低融点となる。
【0067】
上記T1、T2の推定式は、マグネタイト及びウスタイトの融点である1597℃まで有効であると考えられる。鉄鉱石ペレット中のTFeが55質量%以上である範囲で精度が高く、細孔径分布における20μm以下の容積割合が80%以上である鉄鉱石ペレットで、特に精度が高い。
【0068】
当該鉄鉱石ペレットの製造方法では、上記式1で示される温度T1を1100℃以上とする。例えばCaO-FeO及びAl-CaO-FeOの化合物の融点が約1100℃である。また、当該鉄鉱石ペレットの製造方法では、上記式2で示される温度T2を1350℃以上とする。例えばAl-CaO-SiO系の化合物の一部の融点が約1350℃である。上記式1及び上記式2を所定温度以上とする制御は、このような融点を有する化合物の生成を抑制していると考えることもできる。この点、鉄鉱石ペレット1に含まれるアルミナ(Al)が一定量以下であることが好ましく、その含有量としては、3.0質量%以下が好ましい。
【0069】
(T1及びT2の制御)
T1及びT2の値は、種々の方法で調整することができる。
【0070】
T1に含まれる気孔率Poは、上記原料配合工程で、微粉もしくは粗粉原料を使用すると、気孔率Poを低減できる。逆に、炭酸塩や水和物等を加えると焼成中に揮発し気孔率Poは増加する傾向となる。また、上述したように高温焼成により鉄鉱石ペレット1の表面張力が強化される焼き締め効果で気孔率Poは低減する。Poを低減するとT1は上昇し、Poを増加するとT1は低下する。
【0071】
T1に含まれるFeOは、FeOを含む原料であるマグネタイト鉱石や酸化鉄スケールの増減に合わせて変動するほか、高温焼成による鉄鉱石ペレット1の大気中還元と急冷によってFeOが残存することでも増加する。FeOが増加するとT1は上昇し、FeOが減少するとT1は低下する。
【0072】
原料配合工程S1で、CaO量、MgO量、SiO量及び鉄量を調整すると、その増減に応じてT2の値を制御することができる。
【0073】
CaO、MgO、SiOは、これらを含む原料の選定により量を調整することができる。例えばドロマイトには、CaO、MgOの炭酸塩が含まれ、マグネサイトにはMgO、SiOが含まれる。石灰石にはCaOの炭酸塩が含まれ、珪石にはSiOが含まれる。これらの配合比率を調整することで、C/SやM/Sの値を調整することができる。C/S又はM/Sが増加するとT2は上昇し、C/S又はM/Sが減少するとT2は低下する。
【0074】
TFeは、鉄鉱石選定と配合比率により量を調整することができる。例えばヘマタイトは高鉄分であり、脈石成分の多くは低鉄分である。また、CaO、MgO及びSiOの合計量を増減させても、TFeの量は変動する。上記合計量を増加させると、TFeの量は減少する。あるいは、焼成温度を高くしてFeO量を増加させると、鉄鉱石ペレット1に占める酸素の割合が低減し、TFeが増加する。TFeが増加するとT2は低下し、TFeが減少するとT2は上昇する。
【0075】
<利点>
当該鉄鉱石ペレットの製造方法では、上記式1で示される温度T1を1100℃以上、及び上記式2で示される温度T2を1350℃以上とする。上記式1で求められるT1は、融着開始温度を精度よく近似するので、上記T1を上記下限以上とすることで、製造される鉄鉱石ペレットの融着開始温度を容易に高温化することができる。また、上記式2で求められるT2は、急速収縮温度を精度よく近似するので、上記T2を上記下限以上とすることで、製造される鉄鉱石ペレットの急速収縮温度を容易に高温化することができる。このため、上記T1及び上記T2を所定温度以上とする当該鉄鉱石ペレットの製造方法を用いることで、低エネルギーの高炉操業を可能とする鉄鉱石ペレットを製造することができる。
【0076】
また、上記温度T1を1100℃以上とし、かつ上記温度T2を1350℃以上とすることで、さらに低エネルギーの高炉操業を可能とする鉄鉱石ペレットを製造することができる。
【0077】
[第2実施形態]
図5に示す鉄鉱石ペレットの製造方法は、原料配合工程S11と、造粒工程S12と、塊成化工程S13とを備える。当該鉄鉱石ペレットの製造方法において、塊成化工程S3での強度付与は、結合剤によるものであり、製造されるペレットはいわゆる非焼成ペレットである。
【0078】
当該鉄鉱石ペレットの製造方法は、高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットを製造することができる。
【0079】
<原料配合工程>
原料配合工程S11では、CaO/SiO質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO質量比が0.4以上となるように、CaO及びMgOを含む副原料を鉱石原料に配合する。
【0080】
原料配合工程S11では、上記副原料は、CaO及びMgOに加え、カルシウムフェライト系鉱物(CaO・FeO)、マグネシウムフェライト系鉱物(MgO・FeO)、及び結合剤を含む(ここで0.667≦x≦1.0)。上記副原料は、上記鉱石原料である鉄鉱石(ペレットフィード)の鉄品位に応じて配合される。なお、副原料にフェライト系鉱物が含まれる場合、CaO/SiO質量比を定めるCaOには、単体のCaOに加えCaO・FeOに含まれるCaOも加味され、MgO/SiO質量比を定めるMgOには、単体のMgOに加えMgO・FeOに含まれるMgOが加味される。
【0081】
上記カルシウムフェライト系鉱物及びマグネシウムフェライト系鉱物は、すでに合成されたものを用いる。カルシウムフェライト系鉱物及びマグネシウムフェライト系鉱物の合成は、電気炉や焼結炉等で、酸化鉄、石灰石、ドロマイト、マグネサイトを高温で焼成、又は溶融させて反応させた後に冷却し解砕する方法で行うことができる。このときの温度履歴により酸化鉄の価数が異なり、xの値は0.667以上1.0以下の範囲で変化する。このxの値は、FeO濃度を表すことになる。x=0.667であれば全ての鉄がFe3+イオンで占められていることを示し、x=1であれば全ての鉄がFe2+イオンで占められていることを示す。xがその中間値である場合は、両者のイオンが混在しており、x=0.667に近いほどFe3+イオンの割合が高く、x=1に近いほどFe2+イオンの割合が高い。
【0082】
また、上記結合剤としては、セメント、珪酸ナトリウム、デンプン、合成高分子剤などを挙げることができる。なお、上記合成高分子材としては、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エーテル系セルロース(カルボキシメチルセルロース(CMC))などを挙げることができる。
【0083】
なお、第1実施形態の原料配合工程S11と同様に、必要に応じて、粉砕により上記混合原料の粒度を調整するとよい。
【0084】
<造粒工程>
造粒工程S12では、原料配合工程S11で得られた混合原料から生ペレットを造粒する。
【0085】
生ペレットの造粒方法としては、第1実施形態の造粒工程S2と同様にパンペレタイザやドラムペレタイザ、ディスクペレタイザなどを用いた転動造粒法を用いることができるほか、金型等の型に上記混合原料を入れて圧密する圧接法、押出機に上記混合原料を入れて押出型から圧出し、適宜切断して成型する成型法などがある。なお、非焼成ペレットの場合、転動造粒法では、第1実施形態の場合と同様に原料粒度指数及び転動時間を適切に制御すれば、生ペレットの気孔率が制御される。圧接法及び成形法では、圧密又は成型する際の圧力条件により生ペレットの気孔率が制御される。
【0086】
いずれの方法においても、生ペレットの気孔率及び粒度範囲は、第1実施形態の場合と同様の範囲とすることが好ましい。
【0087】
<塊成化工程>
塊成化工程S13では、生ペレットPに強度を付与する。
【0088】
当該鉄鉱石ペレットの製造方法では、塊成化工程S13で、結合剤の種類に応じて大気養生法、蒸気養生法などが選択される。大気養生法は、所定の強度となるまで大気中に生ペレットを静置する方法であり、例えば結合剤がセメントである場合に用いることができる。蒸気養生法は、所定の強度となるまで高温蒸気中に生ペレットを静置する方法であり、例えば結合剤が珪酸ナトリウムやセメントである場合に用いることができる。
【0089】
塊成化工程S13は、造粒工程S12と同時に行われる場合もある。例えば結合剤の種類によっては造粒とともに十分な強度が付与される。この場合、造粒工程S12に改めて塊成化工程S13を行う必要はなく、造粒工程S12の間に塊成化工程S13を完了することができる。
【0090】
<急速収縮温度及び融着開始温度>
当該鉄鉱石ペレットの製造方法では、下記式1で示される温度T1を1100℃以上とし、かつ下記式2で示される温度T2を1350℃以上とする。
T1=1155-0.095×Po+15×FeO0.5 ・・・1
T2=220×C/S+13.1×M/S-23.13×TFe+2600 ・・・2
上記式1において、Poは鉄鉱石ペレットの気孔率[%]、FeOは鉄鉱石ペレットに対するFeOの割合[質量%]である。
上記式2において、C/Sは鉄鉱石ペレットのCaO/SiO質量比、M/Sは鉄鉱石ペレットのMgO/SiO質量比、TFeは鉄鉱石ペレットに対する総鉄分の割合[質量%]である。
【0091】
当該鉄鉱石ペレットの製造方法においても、上記式1で示される温度T1を1100℃以上とし、かつ上記式2で示される温度T2を1350℃以上とすることで、第1実施形態で説明したと同様の効果が得られる。このため詳細説明は省略する。
【0092】
(T1及びT2の制御)
T1及びT2の値は、種々の方法で調整することができる。
【0093】
T1に含まれる気孔率Poは、上記原料配合工程で、微粉もしくは粗粉原料を使用すると、気孔率Poを低減できる。Poを低減するとT1は上昇し、Poを増加するとT1は低下する。
【0094】
T1に含まれるFeOは、FeOを含む原料であるカルシウムフェライト系鉱物及びマグネシウムフェライト系鉱物に合わせて変動する。FeOが増加するとT1は上昇し、FeOが減少するとT1は低下する。カルシウムフェライト系鉱物及びマグネシウムフェライト系鉱物の量により直接的にFeO量を調整できるので、T1の制御性が高い。
【0095】
また、原料配合工程S11で、CaO量、MgO量、SiO量及び鉄量を調整すると、その増減に応じてT2の値を制御することができる。
【0096】
TFeは、鉄鉱石選定と配合比率により量を調整することができる。例えばヘマタイトは高鉄分であり、脈石成分の多くは低鉄分である。また、CaO、MgO及びSiOの合計量を増減させても、TFeの量は変動する。上記合計量を増加させると、TFeの量は減少する。あるいは、カルシウムフェライト系鉱物及びマグネシウムフェライト系鉱物の配合量を高くしてFeO量を増加させると、鉄鉱石ペレット1に占める酸素の割合が低減し、TFeが増加する。TFeが増加するとT2は低下し、TFeが減少するとT2は上昇する。
【0097】
<利点>
第1実施形態と同様、上記T1及び上記T2を所定温度以上とする当該鉄鉱石ペレットの製造方法を用いることで、低エネルギーの高炉操業を可能とする鉄鉱石ペレットを製造することができる。
【0098】
〔鉄鉱石ペレット〕
本発明のさらに別の一態様に係る鉄鉱石ペレットは、高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットである。当該鉄鉱石ペレット1は、微粉鉱石を造粒し、焼成して、あるいは結合剤を添加して強度の高い塊成鉱としたものであり、例えば上述の鉄鉱石ペレットの製造方法により製造することができる。
【0099】
鉄鉱石ペレット1の製造において、鉱石原料に石灰石などのCaO含有化合物を添加し、鉄鉱石ペレット1のCaO/SiO質量比を高めると、鉄鉱石ペレット1の被還元性が向上することが知られている。この知見に基づき、当該鉄鉱石ペレット1のCaO/SiO質量比は0.8以上である。
【0100】
原料が鉄鉱石(酸化鉄)と石灰石(CaO含有化合物)である場合、焼成過程において、熱分解によって生成したCaOと酸化鉄との固相反応によって、カルシウムフェライト系化合物が生成され、同時にその接点で固相拡散接合によって結合していく。この結合は局所的なものであり、焼成前に存在していた微細気孔が焼成後も維持され、鉄鉱石ペレット1は、微細気孔が比較的均一に存在する多孔質体となる。
【0101】
高炉操業時には、この微細気孔に還元ガスが拡散侵入していくことで、鉄鉱石ペレット1の外表面から内部へと還元反応が進行していく。還元反応により酸化鉄から酸素が除去されることによって、既存の微細気孔の拡大と新規微細気孔の生成が進行すると同時に金属鉄が生成する。この金属鉄の凝集によって鉄鉱石ペレット1の外形が収縮していく過程において微細気孔は減少に転じる。その結果、鉄鉱石ペレット1の内部への還元ガスの拡散が抑制され、還元が停滞し易くなる。
【0102】
この還元停滞を抑制するには、金属鉄の凝集過程で微細気孔消失を抑制する高融点成分の添加が有効である。特に高融点成分であるMgO源としてドロマイトを添加し、鉄鉱石ペレット1のMgO/SiO質量比を高めると、高い還元停滞抑制効果が得られることが知られている。この知見に基づき、当該鉄鉱石ペレット1のMgO/SiO質量比は0.4以上である。
【0103】
当該鉄鉱石ペレット1は、自溶性である。このように当該鉄鉱石ペレット1を自溶性とすることで、還元された鉄の溶け落ちが促進され易い。なお、鉄鉱石ペレット1の自溶性は、副原料等により決まる。
【0104】
当該鉄鉱石ペレット1は、下記式1で示される温度T2が1350℃以上である。
T2=220×C/S+13.1×M/S-23.13×TFe+2600 ・・・1
上記式1において、C/Sは鉄鉱石ペレットのCaO/SiO質量比、M/Sは鉄鉱石ペレットのMgO/SiO質量比、TFeは鉄鉱石ペレットに対する総鉄分の割合[質量%]である。
【0105】
また、当該鉄鉱石ペレット1は、下記式2で示される温度T1が1100℃以上である。
T1=1155-0.095×Po+15×FeO0.5 ・・・2
上記式2において、Poは鉄鉱石ペレットの気孔率[%]、FeOは鉄鉱石ペレットに対するFeOの割合[質量%]である。
【0106】
<利点>
当該鉄鉱石ペレット1は、自溶性でCaO/SiO質量比を0.8以上とし、かつMgO/SiO質量比を0.4以上とするので、被還元性が高い。上記式1で求められるT1は、融着開始温度を精度よく近似するので、上記T1が上記下限以上であることは、鉄鉱石ペレットの融着開始温度が高いことを意味する。また、上記式2で求められるT2は、急速収縮温度を精度よく近似するので、上記T2が上記下限以上であることは、当該鉄鉱石ペレットの急速収縮温度が高いことを意味する。このため、上記T1又は上記T2のいずれかを所定温度以上である当該鉄鉱石ペレットを用いることで、低エネルギーの高炉操業を可能とする。
【0107】
さらに、上記温度T1が1100℃以上であり、かつ上記温度T2が1350℃以上である当該鉄鉱石ペレットを用いることで、さらに低エネルギーの高炉操業を可能とする。
【0108】
[その他の実施形態]
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0109】
上記鉄鉱石ペレットの製造方法の第1実施形態では、鉄鉱石ペレットをグレートキルン方式の製造装置を用いて製造する方法を説明したが、ストレートグレート方式の製造装置を用いて製造することもできる。ストレートグレート方式の製造装置では、グレート炉は、トラベリンググレートと、乾燥室と、離水室と、予熱室と、焼成室とを備え、グレート炉のみで塊成化工程が完了する。具体的には、乾燥室、離水室及び予熱室で、加熱用ガスによって生ペレットを乾燥、離水及び予熱し、焼成室で最後の焼成に至る。
【0110】
上記実施形態では、鉄鉱石ペレットの製造方法においてT1を1100℃以上とし、かつT2を1350℃以上とする場合を説明したが、T1及びT2の両者を所定温度以上とすることは必須の構成要件ではない。T1を1100℃以上とするのみ、あるいはT2を1350℃以上とするのみでも、高炉操業の低エネルギー化を図ることができる。
【0111】
同様に、上記実施形態で説明した鉄鉱石ペレットについても、T1を1100℃以上とし、かつT2を1350℃以上とすることは必須の構成要件ではない。T1のみが1100℃以上であっても、あるいはT2のみが1350℃以上とするのみであっても、高炉操業の低エネルギー化を図ることができる。
【実施例0112】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0113】
[No.1]
鉱石原料としての鉄鉱石と、副原料としての石灰石、ドロマイト及びベンナイトを準備した。CaO/SiO質量比(C/S)、MgO/SiO質量比(M/S)がそれぞれ表1に示す値となるように、上記副原料を上記鉱石原料に配合し、混合原料を得た。
【0114】
上記混合原料をボールミル粉砕機で粉砕した後、ディスクペレタイザ造粒機に粉砕原料を投入し、水分を添加しつつ転動させ、粒径10mm以上12mm以下に造粒し、生ペレットを作製した。
【0115】
上記生ペレットをグレート炉に入れて、高温空気を加熱用ガスとして生ペレットを加熱して乾燥及び予備焼成した。予熱焼成した予熱ペレットをキルン炉に入れて加熱し、No.1の鉄鉱石ペレットを得た。
【0116】
このNo.1の鉄鉱石ペレットのTFe、FeO、気孔率、融着開始温度及び急速収縮温度の実測値、並びに上述の式2及び式1に基づくT1、T2の値は表1に示すとおりであった。なお、実測値は、荷重還元試験により求めた。融着開始温度は、収縮率が10%となる温度を算出した。また、急速収縮温度は、最大圧損を示す温度から溶け落ち終了(収縮率100%)までの温度範囲で、最初に収縮率が1%/分以上となる温度とした。
【0117】
[No.2]
C/S及びM/Sを表1に示す値となるように、混合原料を調整した以外は、No.1と同様にして、No.2の鉄鉱石ペレットを得た。得られた鉄鉱石ペレットの各緒言は表1に示すとおりである。
【0118】
[No.3]
No.1及びNo.2の鉄鉱石ペレットでは、実測値も推定値(T1、T2)も融着開始温度は1100℃未満であり、急速収縮温度は1350℃未満である。そこで、T1を1100℃以上、T2を1350℃以上となるようにTFe、FeO、C/S、M/Sを表1に示す値に調整して、No.3の鉄鉱石ペレットを得た。得られた鉄鉱石ペレットの各緒言は表1に示すとおりである。
【0119】
[No.4]
No.4の鉄鉱石ペレットでは、No.1の鉄鉱石ペレットに対し、気孔率を5%低減しつつ、融着開始温度を1100℃以上、急速収縮温度を1350℃以上とすることを企図した。気孔率を5%程度低減するため、鉱石及び副原料を粉砕し、ブレーン指数による比表面積が1.8倍から2.2倍である粒度の原料を用意した。その粉砕原料を用いて、T1を1100℃以上、T2を1350℃以上となるようにTFe、FeO、C/S、M/Sを表1に示す値に調整して、No.4の鉄鉱石ペレットを得た。得られた鉄鉱石ペレットの各緒言は表1に示すとおりである。
【0120】
【表1】
【0121】
上述のようにT1、T2の推定式を用いていないNo.1、No.2の鉄鉱石ペレットでは、融着開始温度は1100℃未満であり、急速収縮温度も1350℃未満である。これに対し、T1、T2の推定式を用いて融着開始温度が1100℃以上、急速収縮温度が1350℃以上となるように各パラメータを調整したNo.3、No.4の鉄鉱石ペレットでは融着開始温度が1100℃以上であり、急速収縮温度も1350℃以上である。このように本発明の鉄鉱石ペレットの製造方法を用いることで、これまで実現できていなかった融着開始温度及び急速収縮温度が高い鉄鉱石ペレットを初めて得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法は、融着開始温度又は急速収縮温度が高温であることを判断可能である。この鉄鉱石ペレットの高温性状判定方法を利用する本発明の鉄鉱石ペレットの製造方法は、融着開始温度又は急速収縮温度が高温である鉄鉱石ペレットを製造できる。また、本発明の鉄鉱石ペレットは、融着開始温度又は急速収縮温度が高温である。
【符号の説明】
【0123】
1 鉄鉱石ペレット
2 製造装置
3 パンペレタイザ
4 グレート炉
41 トラベリンググレート
42 乾燥室
43 離水室
44 予熱室
45 バーナ
5 キルン
6 アニュラクーラ
61 通風装置
P 生ペレット
H 予熱ペレット
G1 加熱用ガス
G2 燃焼排ガス
G3 冷却ガス
C 煙突
図1
図2
図3
図4
図5