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特開2024-64034極低温冷凍機および極低温冷凍機の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064034
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】極低温冷凍機および極低温冷凍機の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
F25B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172326
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】大山 秀司
(57)【要約】
【課題】複数のコールドヘッドを非同期に同時運転することを可能にする新たな技術を提供する。
【解決手段】極低温冷凍機10は、圧縮機12と、圧縮機12に並列接続された複数のコールドヘッド14と、作動ガスの圧力を圧縮機12から複数のコールドヘッド14への供給側または複数のコールドヘッド14から圧縮機12への回収側で測定する圧力センサ48と、複数のコールドヘッド14の各々についてコールドヘッド14が個別運転されるとき圧力センサ48によって測定される個別圧力波形データを取得し、個別圧力波形データに基づいて複数のコールドヘッド14を非同期に同時運転するように構成されるコントローラ50と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、
前記圧縮機に並列接続された複数のコールドヘッドと、
作動ガスの圧力を前記圧縮機から前記複数のコールドヘッドへの供給側または前記複数のコールドヘッドから前記圧縮機への回収側で測定する圧力センサと、
前記複数のコールドヘッドの各々についてコールドヘッドが個別運転されるとき前記圧力センサによって測定される個別圧力波形データを取得し、前記個別圧力波形データに基づいて前記複数のコールドヘッドを非同期に同時運転するように構成されるコントローラと、を備えることを特徴とする極低温冷凍機。
【請求項2】
前記コントローラは、前記個別圧力波形データどうしの比較に基づいて前記複数のコールドヘッドを非同期に同時運転するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記複数のコールドヘッドが同時運転されるとき前記圧力センサによって測定される総合圧力波形データを取得し、
前記総合圧力波形データから総合圧力振幅を取得し、
前記複数のコールドヘッドの前記個別圧力波形データから個別圧力振幅の総和を取得し、
前記総合圧力振幅と前記個別圧力振幅の総和との比較に基づいて前記複数のコールドヘッドを非同期に同時運転するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
【請求項4】
極低温冷凍機の運転方法であって、前記極低温冷凍機は、圧縮機と、前記圧縮機に並列接続された複数のコールドヘッドとを備え、前記方法は、
前記複数のコールドヘッドの各々についてコールドヘッドの個別運転中に、作動ガスの圧力を前記圧縮機から前記複数のコールドヘッドへの供給側または前記複数のコールドヘッドから前記圧縮機への回収側で測定することと、
測定により得られた圧力波形に基づいて、前記複数のコールドヘッドを非同期に同時運転することと、を備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷凍機および極低温冷凍機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の冷凍機を備えるマルチシステム冷凍機において、これら冷凍機が同時運転されるとき各冷凍機の圧力切替バルブの開閉タイミングが一致すると、冷凍性能が低下しうる。従来、これを避けるために、各冷凍機に設けられたインバータを利用して冷凍機の運転周波数を異ならせ、バルブタイミングを非同期とすることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-49770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の手法は、インバータを搭載しない極低温冷凍機には適用することができない。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、複数のコールドヘッドを非同期に同時運転することを可能にする新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機は、圧縮機と、圧縮機に並列接続された複数のコールドヘッドと、作動ガスの圧力を圧縮機から複数のコールドヘッドへの供給側または複数のコールドヘッドから圧縮機への回収側で測定する圧力センサと、複数のコールドヘッドの各々についてコールドヘッドが個別運転されるとき圧力センサによって測定される個別圧力波形データを取得し、個別圧力波形データに基づいて複数のコールドヘッドを非同期に同時運転するように構成されるコントローラと、を備える。
【0007】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機の運転方法が提供される。極低温冷凍機は、圧縮機と、圧縮機に並列接続された複数のコールドヘッドとを備える。方法は、複数のコールドヘッドの各々についてコールドヘッドの個別運転中に、作動ガスの圧力を圧縮機から複数のコールドヘッドへの供給側または複数のコールドヘッドから圧縮機への回収側で測定することと、測定により得られた圧力波形に基づいて、複数のコールドヘッドを非同期に同時運転することと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のコールドヘッドを非同期に同時運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図2】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図3】実施の形態に係る極低温冷凍機の運転方法の一例を示すフローチャートである。
図4】実施の形態に係る極低温冷凍機の運転方法の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
図1および図2は、実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。極低温冷凍機10は、一例として、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機である。図1には、極低温冷凍機10の外観を示し、図2には、極低温冷凍機10の内部構造を示す。
【0013】
極低温冷凍機10は、圧縮機12と、圧縮機12に並列接続された複数のコールドヘッド14とを備える。圧縮機12は、極低温冷凍機10の作動ガスをコールドヘッド14から回収し、回収した作動ガスを昇圧して、再び作動ガスをコールドヘッド14に供給するよう構成されている。複数のコールドヘッド14は、少なくとも2つのコールドヘッド14、すなわち第1コールドヘッド14aと第2コールドヘッド14bを含みうる。コールドヘッド14は、膨張機とも呼ばれる。作動ガスは、冷媒ガスとも称され、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。
【0014】
コールドヘッド14は、冷凍機シリンダ16と、ディスプレーサ組立体18と、冷凍機ハウジング20とを備える。冷凍機ハウジング20は、冷凍機シリンダ16と結合され、それにより、ディスプレーサ組立体18を収容する気密容器が構成される。なお、冷凍機ハウジング20の内部容積は圧縮機12の低圧側に接続され、低圧に維持されてもよい。
【0015】
冷凍機シリンダ16は、第1シリンダ16a、第2シリンダ16bを有する。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2シリンダ16bが第1シリンダ16aよりも小径である。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは同軸に配置され、第1シリンダ16aの下端が第2シリンダ16bの上端に剛に連結されている。
【0016】
ディスプレーサ組立体18は、第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bとを有する。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2ディスプレーサ18bが第1ディスプレーサ18aよりも小径である。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは同軸に配置されている。
【0017】
第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに収容され、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに収容されている。第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに沿って軸方向に往復移動可能であり、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに沿って軸方向に往復移動可能である。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは互いに連結され、一体に移動する。
【0018】
本書では、極低温冷凍機10の構成要素間の位置関係を説明するために、便宜上、ディスプレーサの軸方向往復動の上死点に近い側を「上」、下死点に近い側を「下」と表記することとする。上死点は膨張空間の容積が最大となるディスプレーサの位置であり、下死点は膨張空間の容積が最小となるディスプレーサの位置である。極低温冷凍機10の運転時には軸方向上方から下方へと温度が下がる温度勾配が生じるので、上側を高温側、下側を低温側と呼ぶこともできる。
【0019】
第1ディスプレーサ18aは、第1蓄冷器26を収容する。第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの筒状の本体部の中に、例えば銅などの金網またはその他適宜の第1蓄冷材を充填することによって形成されている。第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は第1ディスプレーサ18aの本体部とは別の部材として提供されてもよく、第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第1蓄冷材が第1ディスプレーサ18aに収容されてもよい。
【0020】
同様に、第2ディスプレーサ18bは、第2蓄冷器28を収容する。第2蓄冷器28は、第2ディスプレーサ18bの筒状の本体部の中に、例えばビスマスなどの非磁性蓄冷材、HoCuなどの磁性蓄冷材、またはその他適宜の第2蓄冷材を充填することによって形成されている。第2蓄冷材は粒状に成形されていてもよい。第2ディスプレーサ18bの上蓋部および下蓋部は第2ディスプレーサ18bの本体部とは別の部材として提供されてもよく、第2ディスプレーサ18bの上蓋部の下蓋部は、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第2蓄冷材が第2ディスプレーサ18bに収容されてもよい。
【0021】
ディスプレーサ組立体18は、上部室30、第1膨張室32、第2膨張室34を冷凍機シリンダ16の内部に形成する。極低温冷凍機10によって冷却すべき所望の物体または媒体との熱交換のために、コールドヘッド14は、第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35を備える。上部室30は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部と第1シリンダ16aの上部との間に形成される。第1膨張室32は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部と第1冷却ステージ33との間に形成される。第2膨張室34は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部と第2冷却ステージ35との間に形成される。第1冷却ステージ33は、第1膨張室32を取り囲むように第1シリンダ16aの下部に固着され、第2冷却ステージ35は、第2膨張室34を取り囲むように第2シリンダ16bの下部に固着されている。
【0022】
第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に形成された作動ガス流路36aを通じて上部室30に接続され、第1ディスプレーサ18aの下蓋部に形成された作動ガス流路36bを通じて第1膨張室32に接続されている。第2蓄冷器28は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部から第2ディスプレーサ18bの上蓋部へと形成された作動ガス流路36cを通じて第1蓄冷器26に接続されている。また、第2蓄冷器28は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部に形成された作動ガス流路36dを通じて第2膨張室34に接続されている。
【0023】
第1膨張室32、第2膨張室34と上部室30との間の作動ガス流れが、冷凍機シリンダ16とディスプレーサ組立体18との間のクリアランスではなく、第1蓄冷器26、第2蓄冷器28に導かれるようにするために、第1シール38a、第2シール38bが設けられていてもよい。第1シール38aは、第1ディスプレーサ18aと第1シリンダ16aとの間に配置されるように第1ディスプレーサ18aの上蓋部に装着されてもよい。第2シール38bは、第2ディスプレーサ18bと第2シリンダ16bとの間に配置されるように第2ディスプレーサ18bの上蓋部に装着されてもよい。
【0024】
また、コールドヘッド14は、圧力切替バルブ40と、駆動モータ42とを備える。圧力切替バルブ40は、冷凍機ハウジング20に収容され、駆動モータ42は、冷凍機ハウジング20に取り付けられている。
【0025】
図2に示されるように、圧力切替バルブ40は、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bを備え、冷凍機シリンダ16内に周期的圧力変動を発生させるように構成されている。圧縮機12の作動ガス吐出口が高圧バルブ40aを介して上部室30に接続され、圧縮機12の作動ガス吸入口が低圧バルブ40bを介して上部室30に接続されている。高圧バルブ40aと低圧バルブ40bは、選択的かつ交互に開閉するように(すなわち、一方が開いているとき他方が閉じるように)構成されている。高圧(例えば2~3MPa)の作動ガスが圧縮機12から高圧バルブ40aを通じてコールドヘッド14に供給され、低圧(例えば0.5~1.5MPa)の作動ガスがコールドヘッド14から低圧バルブ40bを通じて圧縮機12に回収される。理解のために、作動ガスの流れる方向を図2に矢印で示す。
【0026】
駆動モータ42は、ディスプレーサ組立体18の往復動を駆動するために設けられている。駆動モータ42は、たとえばスコッチヨーク機構などの運動変換機構43を介してディスプレーサ駆動軸44に連結されている。運動変換機構43は、圧力切替バルブ40と同様に、冷凍機ハウジング20に収容されている。ディスプレーサ駆動軸44は、運動変換機構43から冷凍機ハウジング20を貫通して上部室30の中へと延び、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に固定されている。上部室30から冷凍機ハウジング20(上述のように低圧に維持されている場合がある)への作動ガスのリークを防ぐために、第3シール38cが設けられている。第3シール38cは、冷凍機ハウジング20とディスプレーサ駆動軸44との間に配置されるように冷凍機ハウジング20に装着されてもよい。
【0027】
駆動モータ42が駆動されるとき、駆動モータ42の回転出力は運動変換機構43によってディスプレーサ駆動軸44の軸方向往復動に変換され、ディスプレーサ組立体18は冷凍機シリンダ16内を軸方向に往復する。また、駆動モータ42は、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bを選択的かつ交互に開閉するように圧力切替バルブ40に連結されている。
【0028】
また、極低温冷凍機10は、圧縮機12と複数のコールドヘッド14を接続する作動ガスライン46を備える。作動ガスライン46は、圧縮機12から複数のコールドヘッド14に高圧作動ガスを供給するための高圧ライン46aと、複数のコールドヘッド14から圧縮機12に低圧作動ガスを回収するための低圧ライン46bと、を備える。高圧ライン46aは、圧縮機12の作動ガス吐出口から延び、途中で分岐して、各コールドヘッド14の圧力切替バルブ40に接続される。低圧ライン46bは、圧縮機12の作動ガス吸入口から延び、途中で分岐して、各コールドヘッド14の圧力切替バルブ40に接続される。このようにして、上述のように、圧縮機12の作動ガス吐出口が各コールドヘッド14の高圧バルブ40aに接続され、圧縮機12の作動ガス吸入口が各コールドヘッド14の低圧バルブ40bに接続される。
【0029】
上述の構成により、極低温冷凍機10は、圧縮機12および駆動モータ42が駆動されディスプレーサ組立体18および圧力切替バルブ40が動作するとき、第1膨張室32および第2膨張室34において周期的な容積変動とこれに同期した作動ガスの圧力変動を発生させ、それにより冷凍サイクルが構成され、第1冷却ステージ33および第2冷却ステージ35が所望の極低温に冷却される。第1冷却ステージ33は、例えば約20K~約40Kの範囲にある第1冷却温度に冷却されることができる。第2冷却ステージ35は、第1冷却温度より低い第2冷却温度(例えば、約1K~約4K)に冷却されることができる。
【0030】
また、極低温冷凍機10は、第1圧力センサ48a、第2圧力センサ48b、およびコントローラ50を備える。第1圧力センサ48aは、圧縮機12から複数のコールドヘッド14への供給側、すなわち高圧ライン46aで、作動ガスの圧力を測定する。第2圧力センサ48bは、複数のコールドヘッド14から圧縮機12への回収側、すなわち低圧ライン46bで、作動ガスの圧力を測定する。以下では説明の便宜上、第1圧力センサ48aおよび第2圧力センサ48bを圧力センサ48と総称することがある。圧力センサ48は、有線または無線によりコントローラ50に通信可能に接続されており、測定される圧力波形データをコントローラ50に伝送することができる。
【0031】
第1圧力センサ48aは、高圧ライン46a上の任意の場所に設置されうる。例えば、第1圧力センサ48aは、圧縮機12の筐体内に配置され、圧縮機12内で高圧ライン46aの圧力を測定してもよい。あるいは、第1圧力センサ48aは、高圧ライン46aとして圧縮機12とコールドヘッド14を接続する作動ガス配管に設置されてもよい。同様に、第2圧力センサ48bは、低圧ライン46b上の任意の場所に設置されうる。
【0032】
圧力切替バルブ40の周期的な動作(すなわち高圧バルブ40aと低圧バルブ40bの周期的な交互の開閉)は、作動ガスライン46に周期的な圧力の変動(脈動)をもたらしうる。例えば、高圧ライン46aでは、高圧バルブ40aが開くとき高圧ライン46aからコールドヘッド14に作動ガスが流入するため高圧ライン46aの圧力はいくらか低下しうる。この圧力低下はその後高圧バルブ40aが閉じると圧縮機12から高圧ライン46aへの作動ガス供給により回復する。高圧ライン46aでのこのような圧力変動は、第1圧力センサ48aによって検出されうる。すなわち、第1圧力センサ48aによって測定される圧力波形データには、周期的な圧力変動が現れうる。同様に、第2圧力センサ48bによって測定される圧力波形データには、低圧バルブ40bの周期的な開閉に起因して低圧ライン46bに発生しうる周期的な圧力変動が現れうる。
【0033】
こうした周期的圧力変動は、圧力切替バルブ40のバルブタイミング、ひいてはコールドヘッド14の冷凍サイクルの位相を反映している。したがって、圧力センサ48(第1圧力センサ48aおよび第2圧力センサ48bのうち少なくとも一方)を使用して作動ガスライン46(高圧ライン46aおよび低圧ライン46bのうち少なくとも一方)の圧力波形を監視することにより、圧力切替バルブ40のバルブタイミングを把握することができる。個々のコールドヘッド14について圧力切替バルブ40のバルブタイミングを取得し、これらバルブタイミングが同期しないように各コールドヘッド14を起動することで、複数のコールドヘッド14を非同期に同時運転することが可能になる。
【0034】
そこで、この実施の形態では、コントローラ50は、複数のコールドヘッド14の各々についてコールドヘッド14が個別運転されるとき圧力センサ48によって測定される個別圧力波形データを取得し、個別圧力波形データに基づいて複数のコールドヘッド14を非同期に同時運転するように構成される。
【0035】
コントローラ50は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPU(Central Processing Unit)やメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図では適宜、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0036】
図3は、実施の形態に係る極低温冷凍機10の運転方法の一例を示すフローチャートである。図3に例示される処理は、複数のコールドヘッド14が同時に運転される極低温冷凍機10の通常運転に先行して、この通常運転の準備として、コントローラ50によって実行される。以下に述べるように、コントローラ50は、個別圧力波形データどうしの比較に基づいて複数のコールドヘッド14を非同期に同時運転するように構成されてもよい。
【0037】
図3に示されるように、第1コールドヘッド14aが起動される(S10)。コントローラ50は、第1コールドヘッド14aの駆動モータ42をオンにすることにより、第1コールドヘッド14aの運転を開始する。このとき、第1コールドヘッド14aが個別に運転される。すなわち、第1コールドヘッド14aのみが運転され、第2コールドヘッド14bを含む他のコールドヘッド14は、運転停止されている。
【0038】
コントローラ50は、第1コールドヘッド14aの個別運転中に、第1コールドヘッド14aについて圧力センサ48によって測定される個別圧力波形データを取得する(S11)。個別圧力波形データは、少なくとも1回または複数回のコールドヘッド14の冷凍サイクルにわたって取得される。個別圧力波形データは、第1圧力センサ48aによって測定される高圧ライン46aの圧力波形データであってもよいし、あるいは、第2圧力センサ48bによって測定される低圧ライン46bの圧力波形データであってもよい。
【0039】
第1コールドヘッド14aについて個別圧力波形データが取得されると、第1コールドヘッド14aは停止される(S12)。コントローラ50は、第1コールドヘッド14aの駆動モータ42をオフにすることにより、第1コールドヘッド14aの運転を終了する。
【0040】
続いて、同様にして、第2コールドヘッド14bが起動され(S13)、第2コールドヘッド14bの個別運転中に第2コールドヘッド14bについて個別圧力波形データが取得され(S14)、その後第2コールドヘッド14bが停止される(S15)。
【0041】
次に、取得された個別圧力波形データどうしが比較される(S16)。コントローラ50は、第1コールドヘッド14aの個別圧力波形データと第2コールドヘッド14bの個別圧力波形データを比較し、これら2つの圧力波形の位相差を決定する。コントローラ50は、第1コールドヘッド14aおよび第2コールドヘッド14bの個別圧力波形データから同じ特定のバルブタイミングに起因する圧力変動の発生タイミングを決定し、これらの時間差から2つの圧力波形の位相差を決定する。例えば、個別圧力波形データが第1圧力センサ48aによって測定された場合、コントローラ50は、第1コールドヘッド14aおよび第2コールドヘッド14bの個別圧力波形データそれぞれから、高圧バルブ40aの開タイミングに相当する高圧ライン46aの圧力低下の発生タイミングを検出し、これらから2つの圧力波形の位相差を決定することができる。
【0042】
そして、極低温冷凍機10の通常運転が開始される(S17)。コントローラ50は、個別圧力波形データどうしの比較に基づいて複数のコールドヘッド14を非同期に同時運転する。
【0043】
例えば、コントローラ50は、決定された圧力波形の位相差が非ゼロか否かを判定する。決定された位相差が非ゼロである場合、コントローラ50は、第1コールドヘッド14aと第2コールドヘッド14bを同時に起動する。このようにすれば、第1コールドヘッド14aと第2コールドヘッド14bの圧力波形の位相差が保たれたままこれらコールドヘッドが運転開始される。よって、2つのコールドヘッドのバルブタイミングを非同期とすることができる。
【0044】
一方、決定された位相差がゼロである場合、コントローラ50は、第1コールドヘッド14aと第2コールドヘッド14bを時間差をもって起動する。すなわち、一方のコールドヘッドがまず起動され、他方のコールドヘッドが遅れて起動される。この遅延時間は、コールドヘッド14の冷凍サイクルの一回分(すなわち圧力波形の一周期分)の非整数倍であればよい。このようにすれば、遅延時間に相当する位相差で2つのコールドヘッドが運転開始される。よって、2つのコールドヘッドのバルブタイミングを非同期とすることができる。
【0045】
極低温冷凍機10が3台以上のコールドヘッド14を有する場合、コントローラ50は、同様の処理を繰り返すことによって、複数のコールドヘッド14の各々についてコールドヘッド14が個別運転されるとき圧力センサ48によって測定される個別圧力波形データを取得し、個別圧力波形データどうしの比較に基づいて複数のコールドヘッド14を非同期に同時運転することができる。
【0046】
したがって、実施の形態によると、複数のコールドヘッド14を非同期に同時運転され極低温冷凍機10を提供することができる。とくに、各コールドヘッド14がインバータを搭載せず駆動モータ42が固定された運転周波数で運転される極低温冷凍機10であっても、複数のコールドヘッド14を非同期に同時運転することができる。
【0047】
図4は、実施の形態に係る極低温冷凍機10の運転方法の他の一例を示すフローチャートである。図4に例示される処理は、図3の処理と同様に、複数のコールドヘッド14が同時に運転される極低温冷凍機10の通常運転に先行して、この通常運転の準備として、コントローラ50によって実行される。
【0048】
以下に述べるように、コントローラ50は、複数のコールドヘッド14が同時運転されるとき圧力センサ48によって測定される総合圧力波形データを取得し、総合圧力波形データから総合圧力振幅を取得し、複数のコールドヘッド14の個別圧力波形データから個別圧力振幅の総和を取得し、総合圧力振幅と個別圧力振幅の総和との比較に基づいて複数のコールドヘッド14を非同期に同時運転するように構成されてもよい。
【0049】
図4に示されるように、第1コールドヘッド14aが起動され(S10)、第1コールドヘッド14aの個別運転中に第1コールドヘッド14aについて個別圧力波形データが取得され(S11)、その後第1コールドヘッド14aが停止される(S12)。また、第2コールドヘッド14bが起動され(S13)、第2コールドヘッド14bの個別運転中に第2コールドヘッド14bについて個別圧力波形データが取得される(S14)。極低温冷凍機10が3台以上のコールドヘッド14を有する場合、同様にして、それらコールドヘッド14について個別圧力波形データが取得される。こうした個別圧力波形データの取得は、図3の処理と同様に実行することができる。
【0050】
続いて、複数のコールドヘッド14が同時に運転される(S20)。例えば、極低温冷凍機10が2台のコールドヘッド14を有する場合、第2コールドヘッド14bの個別圧力波形データの取得後に第1コールドヘッド14aが再び起動される。第1コールドヘッド14aと第2コールドヘッド14bが同時に運転されることになる。極低温冷凍機10が3台以上のコールドヘッド14を有する場合、停止しているコールドヘッド14が再び起動され、すべてのコールドヘッド14が同時に運転される。
【0051】
コントローラ50は、複数のコールドヘッド14の同時運転中に圧力センサ48によって測定される総合圧力波形データを取得する(S21)。総合圧力波形データは、少なくとも1回または複数回のコールドヘッド14の冷凍サイクルにわたって取得される。総合圧力波形データは、第1圧力センサ48aによって測定される高圧ライン46aの圧力波形データであってもよいし、あるいは、第2圧力センサ48bによって測定される低圧ライン46bの圧力波形データであってもよい。
【0052】
コントローラ50は、取得された総合圧力波形データからその圧力振幅(これを本書では、総合圧力振幅ともいう)を取得する(S22)。また、コントローラ50は、複数のコールドヘッド14の個別圧力波形データからその圧力振幅(これを本書では、個別圧力振幅ともいう)を取得し、個別圧力振幅の総和を算出する(S23)。
【0053】
次に、総合圧力振幅と個別圧力振幅の総和とが比較される(S24)。コントローラ50は、総合圧力振幅と個別圧力振幅の総和とを比較し、両者の大小関係を決定する。複数のコールドヘッド14のバルブタイミングが同期している場合、総合圧力振幅が個別圧力振幅の総和に等しくなり、逆に複数のコールドヘッド14のバルブタイミングが非同期の場合、総合圧力振幅が個別圧力振幅の総和よりも小さくなると考えられる。
【0054】
例えば、極低温冷凍機10が2台のコールドヘッド14を有する場合を考える。第1コールドヘッド14aの個別圧力振幅をA、第2コールドヘッド14bの個別圧力振幅をB、これら2台のコールドヘッド14が同時運転されるときの総合圧力振幅をCと表すことにする。2台のコールドヘッド14のバルブタイミングが同期している場合には、C=A+Bが成立する一方、2台のコールドヘッド14のバルブタイミングが非同期の場合には、C<A+Bが成立するはずである。
【0055】
なお、複数のコールドヘッド14が同じ個別圧力振幅をもつと想定される場合(例えば、複数のコールドヘッド14が同じ仕様のコールドヘッドである場合)、あるコールドヘッドについての個別圧力振幅を他のコールドヘッドにも使用できるので、コールドヘッドごとに個別圧力振幅を取得することは必須ではない。例えば、2台のコールドヘッド14の個別圧力振幅が等しい場合を考えると、2台のコールドヘッド14のバルブタイミングが同期していれば、C=2Aが成立し、2台のコールドヘッド14のバルブタイミングが非同期であれば、C<2Aが成立するはずである。
【0056】
したがって、総合圧力振幅が個別圧力振幅の総和よりも小さい場合(例えば、C<A+B、またはC<2A)、コントローラ50は、複数のコールドヘッド14の同時運転を継続する(S25)。この場合、複数のコールドヘッド14のコールドヘッドのバルブタイミングを非同期となっている。
【0057】
一方、総合圧力振幅が個別圧力振幅の総和に等しい場合(例えば、C=A+B、またはC=2A)、コントローラ50は、一方のコールドヘッド14(例えば第2コールドヘッド14b)を一度停止し、待機時間の経過後に再び起動する(S26)。この待機時間は、コールドヘッド14の冷凍サイクルの一回分(すなわち圧力波形の一周期分)の非整数倍であればよい。このようにすれば、待機時間に相当する位相差で2つのコールドヘッドが運転される。よって、2つのコールドヘッドのバルブタイミングを非同期とすることができる。
【0058】
極低温冷凍機10が3台以上のコールドヘッド14を有する場合には、コントローラ50は、同様の処理によって、総合圧力振幅と個別圧力振幅の総和との比較に基づいて複数のコールドヘッド14を非同期に同時運転することができる。
【0059】
実施の形態によると、複数のコールドヘッド14を非同期に同時運転され極低温冷凍機10を提供することができる。とくに、各コールドヘッド14がインバータを搭載せず駆動モータ42が固定された運転周波数で運転される極低温冷凍機10であっても、複数のコールドヘッド14を非同期に同時運転することができる。
【0060】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0061】
上述の実施の形態では、極低温冷凍機10が1台の圧縮機12を有する場合を例として説明しているが、極低温冷凍機10は、複数(例えば2台)の圧縮機12を備えてもよい。
【0062】
上述の実施の形態では、極低温冷凍機10が二段式のGM冷凍機である場合を例として説明しているが、これに限られない。極低温冷凍機10は、単段式または多段式のGM冷凍機であってもよく、さらには、パルス管冷凍機などその他のタイプの極低温冷凍機であってもよい。
【0063】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0064】
10 極低温冷凍機、 12 圧縮機、 14 コールドヘッド、 14a 第1コールドヘッド、 14b 第2コールドヘッド、 46 作動ガスライン、 46a 高圧ライン、 46b 低圧ライン、 48 圧力センサ、 48a 第1圧力センサ、 48b 第2圧力センサ、 50 コントローラ。
図1
図2
図3
図4