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特開2024-64035搬送異常処理装置、搬送異常処理方法、搬送異常処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064035
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】搬送異常処理装置、搬送異常処理方法、搬送異常処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/18 20060101AFI20240507BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240507BHJP
【FI】
B65H23/18
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172329
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 直哉
【テーマコード(参考)】
2G024
3F105
【Fターム(参考)】
2G024AD14
2G024BA27
2G024CA01
2G024CA11
2G024CA22
2G024CA27
2G024DA28
2G024FA06
2G024FA15
3F105AA01
3F105AA04
3F105AA08
3F105AA11
3F105AA12
3F105AB03
3F105DA04
3F105DA09
3F105DA12
3F105DA17
3F105DA19
3F105DA61
3F105DB16
(57)【要約】
【課題】搬送装置における搬送異常を効果的に処理できる搬送異常処理装置等を提供する。
【解決手段】搬送異常処理装置5は、被搬送物3を搬送する搬送装置2における監視対象部位で撮影された画像に基づいて判断された画像異常を登録する画像異常登録部54と、画像異常を含む画像が撮影された時間帯に、搬送装置2の少なくとも一部を測定するセンサ42によって測定されたセンサデータを取得するセンサデータ取得部55と、センサデータにおけるデータ異常を特定するデータ異常特定部56と、データ異常を画像異常と関連付けて登録する関連登録部57と、を備える。搬送異常処理装置5は、センサデータを監視し、関連登録部57によって登録されたデータ異常が認められる場合に、関連登録部57によって登録された画像異常に相当する搬送異常の発生を推定する搬送異常推定部58を更に備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を搬送する搬送装置における監視対象部位で撮影された画像に基づいて判断された画像異常を登録する画像異常登録部と、
前記画像異常を含む画像が撮影された時間帯に、前記搬送装置の少なくとも一部を測定するセンサによって測定されたセンサデータを取得するセンサデータ取得部と、
前記センサデータにおけるデータ異常を特定するデータ異常特定部と、
前記データ異常を前記画像異常と関連付けて登録する関連登録部と、
を備える搬送異常処理装置。
【請求項2】
前記センサデータを監視し、前記関連登録部によって登録された前記データ異常が認められる場合に、前記関連登録部によって登録された前記画像異常に相当する搬送異常の発生を推定する搬送異常推定部を更に備える、請求項1に記載の搬送異常処理装置。
【請求項3】
前記搬送異常推定部によって推定された前記搬送異常を報知する搬送異常報知部を更に備える、請求項2に記載の搬送異常処理装置。
【請求項4】
前記監視対象部位で撮影された画像をユーザに提示する画像提示部を更に備え、
前記画像異常登録部は、提示された前記画像に基づいて前記ユーザが判断した画像異常を登録する、
請求項1から3のいずれかに記載の搬送異常処理装置。
【請求項5】
前記画像提示部は、前記監視対象部位で異なる時刻に撮影された複数の画像の一覧をユーザに提示し、
前記画像異常登録部は、前記ユーザが前記一覧から選択した画像に基づいて画像異常を登録する、
請求項4に記載の搬送異常処理装置。
【請求項6】
前記データ異常特定部は、前記センサデータに対する所定の閾値に基づいて、当該センサデータにおけるデータ異常を特定する、請求項1から3のいずれかに記載の搬送異常処理装置。
【請求項7】
前記センサデータ取得部は、前記画像異常を含まない画像が撮影された平常時間帯に、前記センサによって測定された平常センサデータを更に取得し、
前記データ異常特定部は、前記画像異常を含む画像が撮影された時間帯の前記センサデータと前記平常センサデータの差が前記閾値以上の場合、当該センサデータにおけるデータ異常を特定する、
請求項6に記載の搬送異常処理装置。
【請求項8】
被搬送物を搬送する搬送装置における監視対象部位で撮影された画像に基づいて判断された画像異常を登録する画像異常登録ステップと、
前記画像異常を含む画像が撮影された時間帯に、前記搬送装置の少なくとも一部を測定するセンサによって測定されたセンサデータを取得するセンサデータ取得ステップと、
前記センサデータにおけるデータ異常を特定するデータ異常特定ステップと、
前記データ異常を前記画像異常と関連付けて登録する関連登録ステップと、
を備える搬送異常処理方法。
【請求項9】
被搬送物を搬送する搬送装置における監視対象部位で撮影された画像に基づいて判断された画像異常を登録する画像異常登録ステップと、
前記画像異常を含む画像が撮影された時間帯に、前記搬送装置の少なくとも一部を測定するセンサによって測定されたセンサデータを取得するセンサデータ取得ステップと、
前記センサデータにおけるデータ異常を特定するデータ異常特定ステップと、
前記データ異常を前記画像異常と関連付けて登録する関連登録ステップと、
をコンピュータに実行させる搬送異常処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送異常処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検査対象物を撮影した画像に基づいて、当該検査対象物を高精度に検査できる画像検査技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-3452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、画像に写っている検査対象物の異常を検知できるが、その異常の原因までは特定できない恐れがある。例えば、検査対象物が搬送その他の処理を経たものであり、その異常が当該処理の過程で生じた場合、処理後の検査対象物の画像からでは異常の原因を特定することが難しい。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、搬送装置における搬送異常を効果的に処理できる搬送異常処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の搬送異常処理装置は、被搬送物を搬送する搬送装置における監視対象部位で撮影された画像に基づいて判断された画像異常を登録する画像異常登録部と、画像異常を含む画像が撮影された時間帯に、搬送装置の少なくとも一部を測定するセンサによって測定されたセンサデータを取得するセンサデータ取得部と、センサデータにおけるデータ異常を特定するデータ異常特定部と、データ異常を画像異常と関連付けて登録する関連登録部と、を備える。
【0007】
この態様では、搬送装置における監視対象部位で撮影された画像に基づいて判断された画像異常(搬送異常)と、同時間帯に測定されたセンサデータにおけるデータ異常が関連付けられるため、両者の因果関係を搬送異常処理装置が的確に把握できる。なお、本発明における「異常」とは、搬送装置の即時停止が必要な深刻なものに限らず、搬送装置を稼働させながらでも改善できる搬送品質の軽度の不足等も含む。このため、本発明に係る搬送異常処理装置は、搬送装置における搬送品質の検知や改善にも利用できる。
【0008】
本発明の別の態様は、搬送異常処理方法である。この方法は、被搬送物を搬送する搬送装置における監視対象部位で撮影された画像に基づいて判断された画像異常を登録する画像異常登録ステップと、画像異常を含む画像が撮影された時間帯に、搬送装置の少なくとも一部を測定するセンサによって測定されたセンサデータを取得するセンサデータ取得ステップと、センサデータにおけるデータ異常を特定するデータ異常特定ステップと、データ異常を画像異常と関連付けて登録する関連登録ステップと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、搬送装置における搬送異常を効果的に処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】被搬送物を搬送する搬送装置を模式的に示す。
図2】画像提示部がユーザに提示する画像の一覧を模式的に示す。
図3】データ異常特定部の処理例を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態とも表される)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、被搬送物3を搬送する搬送装置2を模式的に示す。被搬送物3としては、紐やワイヤ等の線状のものや、紙、布、フィルム、箔、ゴム等の面状のものが例示される。本実施形態では、面状の基材を被搬送物3として搬送方向(図1における左右方向)に搬送するロール・ツー・ロール(Roll-to-Roll)方式の搬送装置2について説明する。搬送装置2は、搬送される被搬送物に対して任意の処理を施す装置、例えば、被搬送物にコーティングを施すコータまたは塗布装置、被搬送物に印刷を施す印刷機、被搬送物に張力を印加して延伸する延伸装置等の一部でもよい。搬送制御装置1は、搬送装置2の搬送動作を制御する。
【0014】
搬送装置2は、搬送ローラ群20と、ダンサ24と、巻出ローラ26と、巻取ローラ27を備える。搬送ローラ群20は、被搬送物3を搬送する複数の搬送部としての複数の搬送ローラを備える。図1の例における搬送ローラ群20は、被搬送物3の搬送方向に沿って直列に配置される3個の搬送ローラ対を備える。複数の搬送ローラは、搬送方向において隣接している。各搬送ローラ対は、後述する各駆動部111~113によって回転駆動される駆動ローラ211~213と、当該駆動ローラ211~213との間で被搬送物3を挟み込んで当該駆動ローラ211~213と連動して回転する従動ローラ221~223を備える。3個の搬送ローラ対211/221~213/223と、それぞれに対応して搬送制御装置1に設けられる3個の駆動部111~113および3個の速度制御部121~123は、互いに同様に構成できる。そこで、以下では第1搬送ローラ対211/221、第1駆動部111、第1速度制御部121について説明し、他の搬送ローラ対212/222、213/223、他の駆動部112、113、他の速度制御部122、123についての重複する説明は省略する。なお、搬送ローラ群20に設けられる搬送ローラ対の数は任意(1以上の任意の整数)でよい。また、一部または全部の搬送ローラには、駆動部が設けられなくてもよい。この場合の搬送ローラは、被搬送物3に追従して回転する従動ローラとなる。
【0015】
駆動ローラ211および従動ローラ221は、被搬送物3を搬送する搬送部の一態様としての搬送ローラであり、搬送方向(図1における左右方向)に直交する方向(図1の紙面に垂直な方向)の回転軸の周りに回転可能である。駆動ローラ211は、速度制御部121によって生成される回転速度指令に応じてモータ等の駆動部111によって回転駆動される。図1における被搬送物3の搬送方向が右向きである場合、駆動ローラ211は駆動部111によって時計回り方向に回転駆動され、従動ローラ221は駆動ローラ211と連動して反時計回り方向に回転する。搬送ローラ群20を構成する各駆動ローラ211~213を搬送制御装置1の各駆動部111~113によって個別に回転駆動することで、被搬送物3の各部の速度や張力をきめ細かく制御できるため、搬送装置2による被搬送物3の搬送動作や、当該搬送装置2が設けられる各種の装置による処理を最適化できる。
【0016】
ダンサ24は、搬送ローラ群20の搬送方向における例えば上流(図1における左側)に設けられる。ダンサ24は、被搬送物3に搬送方向における張力を付加する。ダンサ24は、被搬送物3の搬送経路(図1において被搬送物3が延在する左右方向の経路)上に設けられる一対のローラ241、242と、当該一対のローラ241、242の間において被搬送物3の搬送経路から逸れた位置に設けられるダンサローラ243を備える。なお、ダンサローラはダンサロールとも呼ばれる。
【0017】
ダンサローラ243は、被搬送物3の搬送経路に垂直な方向(図1における上下方向)において上端243Aと下端243Bの間を移動可能に設けられる。推力付加部としてのエアシリンダ244は、ダンサローラ243を被搬送物3の搬送経路から離れる方向(図1における下方)に付勢または加圧する推力を生成する。この推力は、ピストンロッドまたはコネクティングロッドを介してダンサローラ243に接続されたエアシリンダ244の空気圧に基づく。エアシリンダ244の空気圧は、電気によって空気圧を制御する電空レギュレータ等によって構成される推力制御部17によって生成される。電空レギュレータ(推力制御部17)には略一定の電圧が印加されることが一般的であり、エアシリンダ244の空気圧すなわちダンサローラ243の推力は略一定に制御される。なお、エアシリンダ244に代えて他の原理に基づいてダンサローラ243に推力を付加する推力付加部(例えば、電気に基づいてダンサローラ243に推力を付加するリニアモータ等)を設けてもよい。
【0018】
エアシリンダ244からの推力によって下方に付勢または加圧されたダンサローラ243は、被搬送物3を搬送経路から離れる方向に引っ張ることで当該被搬送物3に張力を付加する。この時、ダンサローラ243では、エアシリンダ244から受ける下向きの推力と、被搬送物3から受ける上向きの張力が釣り合う。前述のように、一般的にはダンサローラ243がエアシリンダ244から受ける下向きの推力は略一定に維持または制御されるため、ダンサローラ243が被搬送物3に付加する張力は略一定になる。典型的には、ダンサローラ243の上下方向の位置が上端243Aと下端243Bの略中央にある時に、ダンサローラ243に加わる下向きの推力と上向きの張力が釣り合うようにダンサ24は調整される。見方を変えれば、ダンサローラ243の上下方向の位置は被搬送物3の張力を間接的に表しうる。
【0019】
推力の方向(図1における上下方向)におけるダンサローラ243の位置は、位置検出部245または位置センサによって電気信号として検出され、搬送制御装置1の減算器14に提供される。これに加えて減算器14には、搬送制御装置1の位置指令生成部13で生成された推力の方向におけるダンサローラ243の位置指令が入力される。前述の通り、ダンサローラ243の位置は被搬送物3の張力に略相当するため、位置指令生成部13が生成するダンサローラ243の位置指令は被搬送物3の張力指令に略相当する。搬送制御装置1の速度制御部15は、減算器14から提供されるダンサローラ243の位置または被搬送物3の張力の偏差を小さくするための速度指令を生成する。この速度指令は、被搬送物3の搬送速度に対する指令であり、具体的には以下で説明する駆動ローラ251の回転速度についての指令である。
【0020】
搬送制御装置1の駆動部16は、速度制御部15から提供される速度指令に応じて、ダンサ24の直後に併設される駆動ローラ251を回転駆動する。駆動ローラ251は、被搬送物3の搬送方向に直交する回転軸の周りに回転可能な搬送ローラである。駆動ローラ251が図1における時計回り方向に回転駆動されると、従動ローラ252が駆動ローラ251と連動して反時計回り方向に回転する。なお、ダンサ24の直前にも、駆動ローラ251と同様の駆動ローラ231および従動ローラ252と同様の従動ローラ232が設けられる。駆動ローラ231は例えば一定の回転速度で不図示の駆動部によって回転駆動される。これに対して、駆動ローラ251の回転速度は位置および/または張力の偏差に応じて適応的に制御される。このように、駆動ローラ251および従動ローラ252は間に挟み込まれた被搬送物3を搬送しながら、位置指令生成部13で生成されたダンサローラ243の位置指令すなわち被搬送物3の張力指令に応じた所望の張力を被搬送物3に付加する。搬送ローラ群20の搬送方向における直前にダンサ24が設けられている図1の例では、搬送ローラ群20の入口部分(図1における左端)における被搬送物3の張力を所望の値に制御できる。
【0021】
なお、ダンサ24に加えてまたは代えて、被搬送物3の張力を直接的に検出可能な張力検出器または張力センサが設けられてもよい。被搬送物3および/または搬送装置2の始点に設けられる巻出ローラ26は、被搬送物3を搬送方向に沿って巻き出す。巻出ローラ26は、速度制御部124によって生成される回転速度指令に応じて、モータ等の駆動部114によって図1における時計回り方向に回転駆動される。被搬送物3および/または搬送装置2の終点に設けられる巻取ローラ27は、被搬送物3を巻き取る。巻取ローラ27は、速度制御部125によって生成される回転速度指令に応じて、モータ等の駆動部115によって図1における時計回り方向に回転駆動される。
【0022】
以上のような搬送装置2における搬送異常や、その結果として被搬送物3に現れる異常を効果的に処理するために、搬送装置2および/または被搬送物3の各部を撮影する一または複数のカメラによって構成されるカメラ群41と、搬送装置2および/または被搬送物3の各部を測定する一または複数のセンサによって構成されるセンサ群42と、カメラ群41によって取得される画像データおよびセンサ群42によって取得されるセンサデータに基づいて搬送装置2および/または被搬送物3における異常を処理する搬送異常処理装置5が設けられる。なお、カメラ群41およびセンサ群42は、総称してカメラ群/センサ群4とも表される。また、カメラ群41を構成する一または複数のカメラはカメラ41とも表され、センサ群42を構成する一または複数のセンサはセンサ42とも表される。
【0023】
カメラ群41を構成する各カメラ41は、搬送装置2および/または被搬送物3における任意の監視対象部位を撮影できるように設置される。図1の例における監視対象部位としては、左から右に向かって、被搬送物3を巻き出す巻出ローラ26、巻出ローラ26を駆動するモータとしての駆動部114、被搬送物3に張力を付加するダンサ24、被搬送物3を搬送する搬送ローラとしての駆動ローラ251、駆動ローラ251を駆動するモータとしての駆動部16、被搬送物3を搬送する搬送ローラとしての駆動ローラ211~213および/または従動ローラ221~223、駆動ローラ211~213を駆動するモータとしての駆動部111~113、被搬送物3を巻き取る巻取ローラ27、巻取ローラ27を駆動するモータとしての駆動部115が挙げられる。
【0024】
但し、カメラ群41による監視対象部位はこれらに限られず、搬送装置2および/または被搬送物3における任意の部位でよい。但し、カメラ群41は搬送装置2および/または被搬送物3における異常を撮影または検知するために設けられるため、異常の発生頻度が高い部位に設置されるのが好ましい。このような監視対象部位としては、被搬送物3の機械的な搬送動作に関わる以上で列挙されたような搬送装置2の機械要素(巻出ローラ26、ダンサ24、巻取ローラ27、駆動部16、111~115、駆動ローラ251、211~213、従動ローラ221~223等)が好適である。また、搬送装置2が被搬送物3に対して任意の処理を施す装置(コータ、印刷機、延伸装置等)の一部である場合、当該処理を担う処理部(例えば、印刷機における印刷ユニット)においても異常が発生しやすい。そこで、当該処理部の全体または一部を監視対象部位とするために、それを撮影する一または複数のカメラ41が設けられるのが好ましい。
【0025】
センサ群42を構成する各センサ42は、搬送装置2および/または被搬送物3における任意の測定部位を任意の方式で測定できるように設置される。図1の例における測定部位としては、上記のカメラ群41による監視対象部位と同様に、巻出ローラ26、ダンサ24、巻取ローラ27、推力制御部17、駆動部16、111~115、駆動ローラ251、211~213、従動ローラ221~223、印刷ユニット等の処理部が挙げられる。このように、カメラ群41による監視対象部位とセンサ群42による測定部位は重複してもよい。但し、カメラ41とセンサ42が同じ部位に設けられる場合であっても、カメラ41は画像データを生成し、センサ42はその方式に応じた測定データ(非画像データ)を生成するという違いがある。
【0026】
各センサ42の方式や、センサデータの種類は任意である。例えば、巻出ローラ26に取り付けられたセンサ42によって、巻出ローラ26の回転位置や回転速度、巻出ローラ26に巻き付けられている被搬送物3の径(巻出径)等のセンサデータが取得可能であり、巻取ローラ27に取り付けられたセンサ42によって、巻取ローラ27の回転位置や回転速度、巻取ローラ27に巻き付けられている被搬送物3の径(巻取径)等のセンサデータが取得可能であり、搬送ローラとしての駆動ローラ251、211~213および/または従動ローラ221~223に取り付けられたセンサ42によって、それぞれの回転位置や回転速度等のセンサデータが取得可能であり、モータとしての駆動部16、111~115に取り付けられたセンサ42によって、それぞれの回転駆動に関する速度、電流、トルク等のセンサデータが取得可能であり、それ自体がセンサ42として機能するダンサ24や張力検出器によって、被搬送物3の張力やダンサローラ243の位置等のセンサデータが取得可能であり、推力制御部17に取り付けられたセンサ42によって、その推力(エアシリンダ244の空気圧)等のセンサデータが取得可能である。
【0027】
また、搬送装置2が被搬送物3に多色印刷を施す印刷機に設けられる場合、各色間の印刷ずれまたは刷版ずれである見当誤差を低減する見当制御のために設けられるマークセンサ(例えば、各色の印刷ユニットによって被搬送物3に印刷されるレジスタマークの間隔を検出するもの)がセンサ42として利用されてもよい。更に、搬送装置2の各部の温度や湿度等の環境に関するセンサデータを取得するために、温度計や湿度計等のセンサ42が任意の場所に設けられてもよい。他にも、モータやローラ等の振動等のセンサデータを取得可能な振動センサや慣性センサ等がセンサ42として利用されてもよい。
【0028】
搬送異常処理装置5は、画像データ取得部51と、画像提示部52と、選択操作受付部53と、画像異常登録部54と、センサデータ取得部55と、データ異常特定部56と、関連登録部57と、搬送異常推定部58と、搬送異常報知部59を備える。搬送異常処理装置5が以下で説明する作用および/または効果の少なくとも一部を実現できる限り、これらの機能ブロックの一部は省略できる。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。
【0029】
画像データ取得部51は、カメラ群41によって搬送装置2および/または被搬送物3における各監視対象部位で撮影された画像データを取得する。画像データ取得部51は、リアルタイムの画像データをカメラ群41から直接的に取得してもよいし、過去にカメラ群41によって撮影されて不図示のストレージに保存されている画像データを読み出してもよい。画像データ取得部51が取得する各画像データには、その撮影時刻または撮影時間帯を示すタイムスタンプ等の撮影時間情報が付与されている。
【0030】
画像提示部52は、画像データ取得部51によって取得された画像データに基づいて、各カメラ41によって各監視対象部位で撮影された画像をユーザに提示する。例えば、画像提示部52は、一つの監視対象部位で異なる時刻または時間帯に一つのカメラ41によって撮影された複数の画像の一覧をユーザに提示する。選択操作受付部53は、画像提示部52によって提示された一覧中の各画像に対するユーザの選択操作を受け付ける。
【0031】
図2は、画像提示部52がユーザに提示する画像の一覧を模式的に示す。本図の例では、監視対象部位としての巻出ローラ26の画像の一覧として、三つの画像(「画像1」~「画像3」)が模式的に示されている。なお、画像の一覧が表示されるべき監視対象部位は、巻出ローラ26に限らずユーザが任意に選択できる。ユーザは、画像提示部52によって表示された各画像を視認して、当該各画像における異常の有無を判定する。異常が視認されなかった画像(図2の例では「画像1」および「画像3」)に対しては、その旨を表す「Good」のチェックボックス(選択操作受付部53を構成する)にユーザがチェックを入れる(あるいは、「Good」のチェックボックスにデフォルトでチェックが入っていてもよい)。なお、ユーザの選択操作を受け付ける選択操作受付部53は、チェックボックスに限らず、画面上における任意の入力手段または選択手段によって実現されればよい。
【0032】
一方、異常が視認された画像(図2の例では「画像2」)に対しては、その旨を表す「Bad」のチェックボックス(選択操作受付部53を構成する)にユーザがチェックを入れる。このように、図2の例では、「画像2」について「異常あり」とのユーザの判断(選択操作)が、選択操作受付部53としてのチェックボックスを通じて画面上で入力される。図2にも示されるように、各画像には撮影時刻等の撮影時間情報が付与されているため、選択操作受付部53を通じたユーザの選択操作に応じて、「画像2」の撮影時刻または撮影時間帯に監視対象部位としての巻出ローラ26に異常が発生したことを搬送異常処理装置5が認識できる。なお、以上のような異常画像(「画像2」)の選択または判断は、ユーザによらずに機械学習機能を備える人工知能が自律的に行ってもよい。この場合、ユーザとのインターフェースのための画像提示部52および/または選択操作受付部53は不要である。
【0033】
画像異常登録部54は、画像データ取得部51によって取得された画像データ(カメラ41によって監視対象部位で撮影された画像)に基づいて判断された画像異常を登録する。図2の例では、画像異常登録部54は、ユーザが提示された画像の一覧から選択した画像(「画像2」)における画像異常を登録する。ユーザの代わりに人工知能が画像における異常を検知する場合、その異常検知結果に基づいて画像異常登録部54が画像異常を登録する。
【0034】
センサデータ取得部55は、画像異常登録部54によって登録された画像異常を含む画像が撮影された時間帯に、センサ群42によって測定されたセンサデータを取得する。センサデータ取得部55は、リアルタイムのセンサデータをセンサ群42から直接的に取得してもよいし、過去にセンサ群42によって測定されて不図示のストレージに保存されているセンサデータを読み出してもよい。センサデータ取得部55が取得する各センサデータには、その測定時刻または測定時間帯を示すタイムスタンプ等の測定時間情報が付与されている。このため、センサデータ取得部55は、画像異常登録部54によって登録された画像異常と同時間帯のセンサデータを的確に抽出できる。なお、後述するように、センサデータ取得部55は、画像異常登録部54によって登録された画像異常を含まない画像が撮影された平常時間帯に、センサ群42によって測定された平常センサデータを更に取得してもよい。
【0035】
データ異常特定部56は、センサデータ取得部55によって取得されたセンサデータにおけるデータ異常を特定する。図3は、データ異常特定部56の処理例を模式的に示す。データ異常特定部56は、図3において「画像異常発生期間」として示される、画像異常登録部54によって登録された画像異常が発生した時間帯(当該画像異常を含む画像がカメラ41によって撮影された時間帯)を含む前後の時間帯において、センサ群42によって測定されたセンサデータ群を網羅的に分析する。
【0036】
データ異常特定部56は、画像異常を撮影したカメラ41の設置部位の付近に設置されたセンサ42だけでなく、画像異常を撮影したカメラ41の設置部位から離れて設置されたセンサ42のセンサデータも併せて分析するのが好ましい。例えば、図3の例において、画像異常が「モータ1」付近で撮影されていた場合であっても、データ異常特定部56は、「モータ1」とは離れている「モータ2」の回転数(回転速度)等のセンサデータも含めて分析する。「モータ1」で確認された異常(画像異常)が「モータ2」の動作不良等に起因することも考えられるためである。
【0037】
データ異常特定部56は、一または複数のセンサデータに対する所定の閾値に基づいて、当該センサデータにおけるデータ異常を特定してもよい。図3の例では、「モータ1」の回転数が「画像異常発生期間」の前後で急激に増減している。この場合、データ異常特定部56は、「モータ1」の回転数の絶対値、増加量、増加率、減少量、減少率、ばらつき(標準偏差等)等に対して所定の閾値を適用する。例えば、「モータ1」の回転数の増加量が所定の閾値を超えたことをもって、データ異常特定部56は「モータ1」の回転数における異常(データ異常)を特定する。なお、図3では単純化のために「モータ1」の回転数のみが「画像異常発生期間」と同時間帯に変動しているが、実際には複数のセンサデータが変動した結果として一つの画像異常が発生することも想定される。このような場合、データ異常特定部56は、画像異常に同期する変動が確認された複数のセンサデータを群として扱う。つまり、データ異常特定部56は、一つの画像異常に対して、複数のセンサデータに亘る複合的なデータ異常を特定してもよい。
【0038】
データ異常特定部56は、図3に示されるような画像異常を含む画像が撮影された時間帯のセンサデータと、画像異常を含まない画像(例えば、図2における「画像1」や「画像3」)が撮影された平常時間帯にセンサ群42によって測定された平常センサデータの差が閾値以上の場合、当該センサデータにおけるデータ異常を特定してもよい。つまり、データ異常特定部56は、画像異常が確認されなかった平常時間帯のセンサデータ群をリファレンスとして、画像異常が確認された異常時間帯のセンタデータ群におけるデータ異常を高精度に特定できる。特に、データ異常を特定するための閾値を小さくすれば、センサデータの僅かな変動(例えば、平常時間帯と異常時間帯の間の僅かな違いや、図3に示されるような異常時間帯の前後に亘る僅かな変動)であっても見逃さずに、画像異常と関連しうるデータ異常として特定できる。
【0039】
関連登録部57は、データ異常特定部56によって特定された一または複数のセンサデータにおけるデータ異常を、画像異常登録部54によって登録された一の画像異常(カメラ41によって撮影された一の画像)と関連付けて登録する。すなわち、データ異常特定部56によって特定された一または複数のセンサデータにおけるデータ異常が原因となって、画像異常登録部54によって登録された一の画像異常が発生したという因果関係が、関連登録部57によって登録または蓄積される。このように関連登録部57によって登録されたデータ異常と画像異常の因果関係は、訓練データまたは学習データとして機械学習機能を備える人工知能の訓練または機械学習に利用されてもよい。このような人工知能は、次に説明する搬送異常推定部58に設けられることで、搬送異常の推定精度を高められる。
【0040】
搬送異常推定部58は、関連登録部57によって登録されたデータ異常と画像異常の因果関係に基づいて、センサ群42によってリアルタイムで測定されるセンサデータ群を監視する。具体的には、搬送異常推定部58は、センサ群42によってリアルタイムで測定される一または複数のセンサデータに、関連登録部57によって登録されたデータ異常(図3に示されるような、一または複数のセンサデータにおける異常な変動や挙動)が認められる場合に、関連登録部57によって登録された画像異常(例えば、図2における「画像2」に含まれる画像異常)に相当する搬送異常の発生を推定する。搬送異常報知部59は、搬送異常推定部58によって推定された搬送異常を、搬送制御装置1、搬送装置2、搬送異常処理装置5等のユーザ等に、画面表示、警報、光等によって報知する。
【0041】
以上のような本実施形態によれば、搬送装置2および/または被搬送物3における監視対象部位でカメラ群41によって撮影された画像に基づいて判断された画像異常(搬送異常)と、同時間帯にセンサ群42によって測定されたセンサデータにおけるデータ異常が関連付けられるため、両者の因果関係を搬送異常処理装置5が的確に把握できる。更に、搬送異常処理装置5において人工知能等によって構成される搬送異常推定部58は、蓄積された画像異常とデータ異常の因果関係に基づいてリアルタイムのセンサデータ群を監視することで、画像異常に相当する搬送異常の発生を自律的に推定できる。
【0042】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0043】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 搬送制御装置、2 搬送装置、3 被搬送物、4 カメラ群/センサ群、5 搬送異常処理装置、41 カメラ、42 センサ、51 画像データ取得部、52 画像提示部、53 選択操作受付部、54 画像異常登録部、55 センサデータ取得部、56 データ異常特定部、57 関連登録部、58 搬送異常推定部、59 搬送異常報知部。
図1
図2
図3