IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特開2024-64050モータハウジング、およびモータハウジングの製造方法
<>
  • 特開-モータハウジング、およびモータハウジングの製造方法 図1
  • 特開-モータハウジング、およびモータハウジングの製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064050
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】モータハウジング、およびモータハウジングの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/06 20060101AFI20240507BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H02K5/06
H02K15/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172351
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】殿岡 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】江口 明彦
(72)【発明者】
【氏名】野際 翔太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑基
(72)【発明者】
【氏名】田中 全
【テーマコード(参考)】
5H605
5H615
【Fターム(参考)】
5H605BB05
5H605CC01
5H605GG14
5H605GG16
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB14
5H615PP28
5H615SS08
5H615SS12
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でモータハウジングの内部と外部との連通を阻止する。
【解決手段】モータハウジング10は、筒状部20を有する鋳造品である。モータハウジング10は、筒状部20の内周面32に位置する切削加工面40および外周面30に位置する切削加工面42を有する。切削加工面40の裏面は露出する非切削加工面44であり、切削加工面42の裏面は露出する非切削加工面46である。外周面30に位置する切削加工面40の裏側の非切削加工面44は、内周面32に位置する切削加工面40から凹む凹部36に位置している。外周面30に位置する切削加工面40は、外周面30に位置する非切削加工面44から膨らむ凸部34に位置している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部を有する鋳造品であるモータハウジングであって、
前記筒状部の内周面または外周面に位置する切削加工面を有し、
前記切削加工面の裏面は露出する非切削加工面であることを特徴とする、モータハウジング。
【請求項2】
前記内周面および前記外周面の双方に前記切削加工面を有することを特徴とする、請求項1に記載のモータハウジング。
【請求項3】
前記外周面に位置する前記切削加工面の裏側の前記非切削加工面は、前記内周面に位置する切削加工面から凹む凹部に位置していることを特徴とする、請求項1または2に記載のモータハウジング。
【請求項4】
前記外周面に位置する前記切削加工面は、前記外周面に位置する非切削加工面から膨らむ凸部に位置していることを特徴とする、請求項1または2に記載のモータハウジング。
【請求項5】
筒状部を有する半製品を鋳造により成形する工程と、
切削加工面の裏面は露出する非切削加工面となるように、前記半製品の前記筒状部の内周面または外周面を切削加工する工程と、
を備えることを特徴とする、モータハウジングの製造方法。
【請求項6】
前記内周面および前記外周面の双方に切削加工することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記外周面の切削加工すべき箇所の裏側の内周面に凹部が形成されるように、前記半製品を成形することを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記外周面の切削加工すべき箇所に凸部が形成されるように、前記半製品を成形することを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータハウジングおよびモータハウジングの製造方法に関し、特に、ダイキャストまたは鋳造により成形されたモータハウジングおよびモータハウジングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータハウジングの内部への水などの浸入、またはモータハウジング内部からのガスの漏洩を防ぐため、モータハウジングの内部と外部とは連通していないことが求められている。一方、モータハウジングは、ダイキャストなどの鋳造法で成形される場合がある。しかし、成形されたモータハウジングの内部には鋳巣が生じている可能性がある。モータの内周面は寸法精度を高めるために切削加工が施される場合があるが、鋳巣は切削加工により表面に露出し、モータハウジングの内部と外部との意図しない連通の原因となり得る。このため、例えば特許文献1では、モータハウジングの内周面を画定するベース部材41とは別に、ねじ取り付け部材42を有するディスク駆動装置を提案している。特許文献1により、モータハウジングの内周面に切削加工が施されても、モータハウジングの内部とねじ孔とが連通することを阻止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-171717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、ベース部材とは別にねじ取り付け部材を設ける必要があり、コスト増加の要因となる。樹脂含浸や真空引きなど、切削加工による内周面と外周面との連通を阻止する方法も周知であるが、これらの工程を追加しなければならず、やはりコスト増加の要因となる。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でモータハウジングの内部と外部との連通を阻止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータハウジングは、筒状部を有する鋳造品であるモータハウジングであって、前記筒状部の内周面または外周面に位置する切削加工面を有し、前記切削加工面の裏面は露出する非切削加工面である。この態様によれば、切削加工面の裏面は非切削加工面であるため、鋳造の鋳巣による筒状部の内周面と外周面との連通を阻止することができる。
【0007】
前記内周面および前記外周面の双方に前記切削加工面を有していてもよい。この態様によれば、内周面および前記外周面の双方に前記切削加工面を有していても、切削加工面の裏面は非切削加工面であるため、鋳造の鋳巣による筒状部の内周面と外周面との連通を阻止することができる。
【0008】
前記外周面に位置する前記切削加工面の裏側の前記非切削加工面は、前記内周面に位置する切削加工面から凹む凹部に位置していてもよい。この態様によれば、凹部の切削加工を容易に回避できるため、内周面を容易に切削加工することができる。
【0009】
前記外周面に位置する前記切削加工面は、前記外周面に位置する非切削加工面から膨らむ凸部に位置していてもよい。この態様によれば、外周面の非切削加工面とすべき箇所の切削加工を容易に回避できるため、外周面を容易に切削加工することができる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータハウジングの製造方法は、筒状部を有する半製品を鋳造により成形する工程と、切削加工面の裏面は露出する非切削加工面となるように、前記半製品の前記筒状部の内周面または外周面を切削加工する工程と、備える。
【0011】
前記内周面および前記外周面の双方に切削加工してもよい。前記外周面の切削加工すべき箇所の裏側の内周面に凹部が形成されるように、前記半製品を成形してもよい。前記外周面の切削加工すべき箇所に凸部が形成されるように、前記半製品を成形してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るモータハウジング10の斜視図である。
図2】本実施形態に係るモータハウジング10の中心軸を含む鉛直面による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施形態に係るモータハウジング10の斜視図である。図2は、本実施形態に係るモータハウジング10の中心軸を含む鉛直面による断面図である。モータハウジング10は、筒状部20、第1フランジ22、第2フランジ24、底部26、および突部28を有する。第1フランジ22および第2フランジ24は、筒状部20の両端部に形成されている。底部26は、筒状部20の第2フランジ24側の端部に形成されている。突部28は、底部26からモータハウジング10の内部に向かって突出する。突部28は、有底の円筒状に形成されており、底部にモータ軸が挿入される開口28aが形成されている。
【0014】
筒状部20は、外周面30および内周面32を有する。外周面30は、4つの凸部34を有する。なお、凸部34の数が4つに限定されないことはもちろんである。これら凸部34は、モータハウジング10を搬送ロボット、またはチャック、すなわち位置決め治具にて把持されるために用いられる。凸部34は、矩形に形成されており、長辺が第2フランジ24に接するように外周面30に形成されている。凸部34の軸方向の長さは、外周面30の約3分の1となっている。
【0015】
モータハウジング10は、ダイキャストにより成形されたダイキャスト成形品である。なお、モータハウジング10は他の鋳造法により成形された鋳造品であってもよい。モータハウジング10はダイキャスト成形品であるため、その表面の寸法精度はさほど高くない。しかし、モータハウジング10の内部にはステータ(図示せず)が配置され、さらにその内部にはロータ(図示せず)が配置される。ステータとモータハウジング10の内周面32との適正なクリアランスを確保するために内周面32は高い寸法精度が要求される。このため、内周面32は、切削加工面40を有する。切削加工面40は、ステータが挿入される領域、すなわち、凹部36をのぞく内周面32の全域に亘る。
【0016】
また、モータハウジング10が搬送ロボットにより把持された状態でモータハウジング10内部にステータが挿入されアセンブリされる。このとき、ステータとモータハウジング10との干渉を回避し、正確なステータの位置決めを実現するために、モータハウジング10が搬送ロボットにより把持される箇所の精度も要求される。具体的には搬送ロボットにより把持される凸部34の表面が、内周面32の同心円に正確に位置することが要求される。このため、凸部34の表面は、切削加工面42を有する。切削加工面42は、凸部34の頂面の略全域に亘る。
【0017】
一方、ダイキャストなどの鋳造法で成形されたモータハウジング10の内部には鋳巣が生じている可能性がある。鋳巣は切削加工により表面に露出し、モータハウジング10の外周面30と内周面32との意図しない連通の原因となり得る。
【0018】
ここで、樹脂含浸や真空引き、全数の気密検査など、切削加工による内周面と外周面との連通を阻止する方法も考えられるが、コスト増加の要因となる。軸方向に加工を逃がすことも考えられるが、無駄な部分すなわち駄肉が生じ、サイズおよびコストの抑制が困難となる。
【0019】
このため、本実施形態に係るモータハウジング10では、切削加工面40の裏面は露出する非切削加工面44となっている。また、切削加工面42の裏面は露出する非切削加工面46となっている。これにより、鋳造の鋳巣による筒状部20の内周面32と外周面30との連通を阻止することができる。なお、「露出する」とは、樹脂や接着剤、他の部材などで接触して覆われていないことを示し、外周面にあることを意味していない。
【0020】
本実施形態に係るモータハウジング10は、内周面32および外周面30の双方に切削加工面40および切削加工面42を有している。すなわち、内周面32に切削加工面40が形成されており、外周面30に切削加工面42が形成されている。本実施形態では、このように内周面32および外周面30の双方に切削加工面40および切削加工面42を有していても、切削加工面40の裏面は露出する非切削加工面44となっており、切削加工面42の裏面は露出する非切削加工面46となるようにモータハウジング10が構成されている。
【0021】
具体的には、外周面30に位置する切削加工面40の裏側の非切削加工面44は、内周面32に位置する切削加工面40から凹む凹部36に位置している。これにより、凹部36の切削加工を容易に回避できるため、内周面32を容易に切削加工することができる。
【0022】
また、外周面30に位置する切削加工面40は、外周面30に位置する非切削加工面44から膨らむ凸部34に位置している。これにより、外周面30の非切削加工面44とすべき箇所の切削加工を容易に回避できるため、外周面30を容易に切削加工することができる。
【0023】
モータハウジング10の製造方法について説明する、モータハウジング10の製造方法は、筒状部20を有する半製品を鋳造により成形する工程と、切削加工面40の裏面は露出する非切削加工面44となり、切削加工面42の裏面非切削加工面46となるように、半製品の筒状部20の内周面32または外周面30を切削加工する工程と、備える。
【0024】
具体的には、外周面30の切削加工すべき箇所の裏側の内周面32に凹部36が形成されるように、半製品を成形する。これにより、凹部36の切削加工を容易に回避できるため、内周面32を容易に切削加工することができる。また、外周面30の切削加工すべき箇所に凸部34が形成されるように、半製品を成形する。これにより、外周面30の非切削加工面44とすべき箇所の切削加工を容易に回避できるため、外周面30を容易に切削加工することができる。
【0025】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0026】
10 モータハウジング,20 筒状部,22 第1フランジ,24 第2フランジ,26 底部,28 突部,28a 開口,30 外周面,32 内周面,34 凸部,36 凹部,40 切削加工面,42 切削加工面,44 非切削加工面,46 非切削加工面
図1
図2