(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064054
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/532 20060101AFI20240507BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61F13/532 210
A61F13/532 100
A61F13/53 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172358
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 皓大
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA01
3B200BB17
3B200CA02
3B200CA11
3B200DB05
3B200DB17
(57)【要約】
【課題】体液を吸収した使用後に折りたたみ易く嵩張らない廃棄性に優れた吸収性物品を実現する。
【解決手段】液透過性のトップシート2と、液不透過性のバックシート3と、トップシート2とバックシート3との間に配置された吸収体4と、を有する吸収性物品1であって、吸収体4は、高吸収性高分子を含むとともに、当該の吸収性物品1の長手方向に沿って延びる線分状に高吸収性高分子が高濃度に散布されたSAP高濃度領域5を有し、SAP高濃度領域5は、当該の吸収性物品1の長手方向における中央部を境として、一方の側に1個以上設けられ、他方の側に2個以上設けられ、そのうえで、当該の吸収性物品1が中央部で当該の吸収性物品1の幅方向に沿って二つ折りでたたまれた状態で、一方の側のSAP高濃度領域5と他方の側のSAP高濃度領域5とが相互に対向しない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、高吸収性高分子を含むとともに、当該の吸収性物品の長手方向に沿って延びる線分状に高吸収性高分子が高濃度に散布されたSAP高濃度領域を有し、
前記SAP高濃度領域は、当該の吸収性物品の長手方向における中央部を境として、一方の側に1個以上設けられ、他方の側に2個以上設けられ、
そのうえで、当該の吸収性物品が前記中央部で当該の吸収性物品の幅方向に沿って二つ折りでたたまれた状態で、前記一方の側の前記SAP高濃度領域と前記他方の側の前記SAP高濃度領域とが相互に対向しない、吸収性物品。
【請求項2】
前記SAP高濃度領域において追加散布されている前記高吸収性高分子の坪量が、100g/m2以上1000g/m2以下である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記SAP高濃度領域は、当該の吸収性物品の長手方向の寸法が、前記吸収体の全長に対して10%以上50%以下である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記一方の側に設けられる前記SAP高濃度領域の、当該の吸収性物品の幅方向の寸法の合計が2mm以上40mm以下であり、且つ、前記他方の側に設けられる前記SAP高濃度領域の、当該の吸収性物品の幅方向の寸法の合計が2mm以上40mm以下である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記SAP高濃度領域が、前記一方の側に1個以上2個以下設けられ、且つ、前記他方の側に2個以上3個以下設けられている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記他方の側の前記SAP高濃度領域の個数が、前記一方の側の前記SAP高濃度領域の個数よりも1個多い、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記SAP高濃度領域が、前記一方の側の、当該の吸収性物品の幅方向における少なくとも中央部又は中央部寄りの位置に設けられ、且つ、前記他方の側の、当該の吸収性物品の幅方向における少なくとも両端寄りの位置のそれぞれに設けられている、請求項1に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前後方向と、前後方向に直交する幅方向と、表面シート、裏面シート及び吸収コアを有する本体部と、非肌面側に突出したフック部材を有する後処理用部材と、を有する吸収性物品が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、尿などの体液を吸収した使用後の吸収性物品は、その中央部が膨潤し、折りたたみ難く廃棄時に嵩張るという問題がある。このため、尿などの体液を吸収した使用後に折りたたみ易く嵩張らない廃棄性に優れた吸収性物品が望まれる。
【0005】
特許文献1に記載された技術では、吸収性物品にフック部材を設けることにより、廃棄時に吸収性物品をコンパクトに丸めることを企図しているものの、尿などの体液の吸収により膨潤した吸水性物品の嵩を十分に減らすことはできない、という問題がある。
【0006】
そこで本発明は、1つの側面では、体液を吸収した使用後に折りたたみ易く嵩張らない廃棄性に優れた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、前記吸収体は、高吸収性高分子を含むとともに、当該の吸収性物品の長手方向に沿って延びる線分状に高吸収性高分子が高濃度に散布されたSAP高濃度領域を有し、前記SAP高濃度領域は、当該の吸収性物品の長手方向における中央部を境として、一方の側に1個以上設けられ、他方の側に2個以上設けられ、そのうえで、当該の吸収性物品が前記中央部で当該の吸収性物品の幅方向に沿って二つ折りでたたまれた状態で、前記一方の側の前記SAP高濃度領域と前記他方の側の前記SAP高濃度領域とが相互に対向しない、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る吸収性物品は、前記SAP高濃度領域において追加散布されている前記高吸収性高分子の坪量が、100g/m2以上1000g/m2以下である、ようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る吸収性物品は、前記SAP高濃度領域は、当該の吸収性物品の長手方向の寸法が、前記吸収体の全長に対して10%以上50%以下である、ようにしてもよい。
【0010】
本発明に係る吸収性物品は、前記一方の側に設けられる前記SAP高濃度領域の、当該の吸収性物品の幅方向の寸法の合計が2mm以上40mm以下であり、且つ、前記他方の側に設けられる前記SAP高濃度領域の、当該の吸収性物品の幅方向の寸法の合計が2mm以上40mm以下である、ようにしてもよい。
【0011】
本発明に係る吸収性物品は、前記SAP高濃度領域が、前記一方の側に1個以上2個以下設けられ、且つ、前記他方の側に2個以上3個以下設けられている、ようにしてもよい。
【0012】
本発明に係る吸収性物品は、前記他方の側の前記SAP高濃度領域の個数が、前記一方の側の前記SAP高濃度領域の個数よりも1個多い、ようにしてもよい。
【0013】
本発明に係る吸収性物品は、前記SAP高濃度領域が、前記一方の側の、当該の吸収性物品の幅方向における少なくとも中央部又は中央部寄りの位置に設けられ、且つ、前記他方の側の、当該の吸収性物品の幅方向における少なくとも両端寄りの位置のそれぞれに設けられている、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、1つの側面では、体液を吸収した使用後に折りたたみ易く嵩張らない廃棄性に優れた吸収性物品を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1の吸収性物品の断面構成を模式的に示す図である。(A)は
図1におけるX
A-X
A切断線による幅方向の構成を模式的に示す断面図である。(B)は
図1におけるX
B-X
B切断線による幅方向の構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】吸収性物品の吸収体の他の構成の例を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図1の吸収性物品が着用されて体液を吸収した使用後の吸収体の状態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、各図は、吸収性物品1及びその各構成部材の形状や寸法の大小関係などを規定するものではない。
【0017】
この明細書において、吸収性物品1の着用とは、体液吸収の前後を問わず、吸収性物品1を着用者の身体に装着した状態をいう。吸収性物品1の長手方向(単に「長手方向」ともいう)とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の股間部を介して前後に亘る方向であり、図中の符号Yで示す方向である。なお、図に示す例では、図中の符号Yの矢印の向きの側を、吸収性物品1が着用された際の着用者の股間部の前方側(具体的には、下腹部側)とし、図中の符号Yの矢印の向きと反対向きの側を、吸収性物品1が着用された際の着用者の股間部の後方側(具体的には、臀部)とする。吸収性物品1の幅方向(単に「幅方向」ともいう)とは、長手方向に対して直交する方向であり、図中の符号Xで示す方向である。吸収性物品1の厚み方向とは、長手方向及び幅方向に対して直交する方向であって、各構成部材を積層する方向であり、図中の符号Zで示す方向である。吸収性物品1及びその各構成部材の、肌側表面(「肌側の面」ともいう)とは、吸収性物品1の着用時に着用者の肌に当接する表面又は該肌を臨む表面であって、図中の符号Zの矢印の向きの側の表面であり、また、非肌側表面(「非肌側の面」ともいう)とは、吸収性物品1の着用時に着用者の肌とは反対側で衣類に当接する表面又は該衣類を臨む表面であって、図中の符号Zの矢印の向きと反対向きの側の表面である。体液とは、尿、血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0018】
(全体構成)
図1は、本発明に係る吸収性物品の具体的な構成態様の一例としての、実施の形態に係る吸収性物品1の構成を模式的に示す平面図である。
図2は、実施の形態に係る吸収性物品1の断面構成を模式的に示す図であり、(A)は
図1におけるX
A-X
A切断線による幅方向の構成を模式的に示す断面図であり、(B)は
図1におけるX
B-X
B切断線による幅方向の構成を模式的に示す断面図である。
図4は、実施の形態に係る吸収性物品1が着用されて体液を吸収した使用後の吸収体4の状態を模式的に示す平面図である。
【0019】
吸収性物品1の用途は、特定の使用態様に限定されるものではなく、ベビー用、成人用、及び高齢者用の種々の吸収性物品として使用でき、例えば、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿吸収パッド、生理用ナプキン等のパッド製品や、パンツタイプ紙おむつ、テープ止めタイプ紙おむつ等の紙おむつ製品などが挙げられる。アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品1とが組み合わせられて用いられるようにしてもよい。
【0020】
吸収性物品1の大きさは、特定の寸法には限定されないものの、例えば、長手方向の寸法L_1が100mm以上800mm以下の範囲に、また、幅方向の寸法W_1が50mm以上500mm以下の範囲に、それぞれ設定されるようにしてもよい。吸収性物品1の寸法が前記の範囲に調整されると、種々の形態や用途の吸収性物品が容易に得られる。吸収性物品1は、具体的には例えば、長手方向の寸法L_1が300mm以上600mm以下の範囲に且つ幅方向の寸法W_1が100mm以上200mm以下の範囲にそれぞれ設定され、パンツタイプ紙おむつと併用されるパンツ用尿吸収パッドとして用いられることが好ましい使用態様の一例として挙げられる。
【0021】
吸収性物品1は、着用者の肌側に位置する液透過性のトップシート2と、トップシート2に対向して配置されて着用者の非肌側に位置する液不透過性のバックシート3と、これらトップシート2とバックシート3との間に配置された吸収体4と、を備える。
【0022】
吸収性物品1は、着用者の体外に排出された体液の横漏れを防止するために、トップシート2の肌側表面の、幅方向における両端寄りの位置のそれぞれに、長手方向に沿って固定して設けられる一対の立体ギャザー(不図示)を更に備えるようにしてもよい。吸収性物品1に設けられ得る立体ギャザーは特定の態様に限定されるものではなく、また、立体ギャザー自体は周知の技術であるので、詳細な説明を省略する。
【0023】
(トップシート)
トップシート2は、吸収体4へと向けて体液を速やかに通過させて吸収体4の面方向に体液を拡散させる液透過性のシート状基材である。トップシート2は、着用者の肌に直接当接してもよいように、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、相互に同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルムなどが挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等を用いて作製された、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布などが挙げられる。これらの中でも各不織布が好ましい。
【0024】
トップシート2には、液透過性を向上させる観点から、エンボス加工や穿孔加工が表面に施されてもよい。トップシート2は、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤などのうちの1種又は2種以上を含有してもよい。トップシート2の坪量は、強度、加工性、及び液戻り量の観点から、例えば、15g/m2以上40g/m2以下の範囲である。トップシート2の平面視形状は、特定の形状に限定されるものではなく、漏れがないように体液を吸収体4へと誘導するために必要とされる、吸収体4の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0025】
トップシート2は、吸収体4の肌側表面とホットメルト接着剤により接合されていることが好ましい。このような構成を採用することにより、吸収体4上に排出された体液が面方向に一層拡散し易くなり、また、吸収性物品1のフィット感が良好に維持される。なお、
図2では分かり易さを考慮して各構成部材(具体的には、トップシート2、バックシート3、及び吸収体4)を厚み方向において相互に離間させて図示しているが、各構成部材は厚み方向において基本的には相互に密接する。ただし、構成部材どうしの間に部分的に隙間が存在するようにしてもよい。
【0026】
(バックシート)
バックシート3は、吸収体4が保持する体液が着用者の衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成される。該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シートなどが挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法は特に限定されず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布との積層体、第1のスパンボンド不織布とメルトブロー不織布と第2のスパンボンド不織布との積層体等の複合不織布、これらの複合材料などが挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルムなどが挙げられる。
【0027】
バックシート3の坪量は、強度及び加工性の観点から、例えば、15g/m2以上60g/m2以下の範囲である。また、バックシート3には、着用時の蒸れを防止するため、通気性を持たせることが好ましい。バックシート3に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート3にエンボス加工を施したりすることが挙げられる。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムが挙げられ、その配合方法は、公知の方法が制限なく適用され得る。
【0028】
(吸収体)
吸収体4の平面視形状は、特定の形状には限定されないものの、例えば、砂時計形、Iの字形、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円形などが挙げられる。
【0029】
吸収体4の大きさは、特定の寸法には限定されないものの、長手方向の寸法L_4は、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、又は、150mm以上500mm以下の範囲、又は、270mm以上500mm以下の範囲に設定されるようにしてもよい。吸収体4の幅方向の寸法W_4は、例えば、50mm以上500mm以下の範囲、又は、60mm以上400mm以下の範囲、又は、70mm以上105mm以下の範囲に設定されるようにしてもよい。吸収体4の平面視形状が砂時計形である場合は、例えば、長手方向の寸法が180mm以上800mm以下の範囲であるとともに、着用者の下腹部及び臀部にそれぞれ当接する前部及び後部の幅方向の寸法がともに60mm以上400mm以下の範囲であり、着用者の股間部に当接する中央部の幅方向の寸法が90mm以上250mm以下の範囲であるようにしてもよい。
【0030】
吸収体4は、ベース吸収層41を本体として形成される。ベース吸収層41は、基材としての吸収性繊維と、体液の吸収材としての高吸収性高分子(SAP)と、を含む。
【0031】
吸収体4のベース吸収層41を構成する吸収性繊維としては、尿吸収パッド、生理用ナプキン、紙おむつなどの吸収性物品に一般に使用されるものであれば特定の種類に限定されるものではなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布などが使用される。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、例えば、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプなどを綿状に解繊したものが挙げられる。吸収体4の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、100g/m2以上800g/m2以下の坪量とすることが好ましい。
【0032】
吸収体4のベース吸収層41を構成する高吸収性高分子としては、体液を吸収し、且つ、逆流を防止できるものであれば特定の種類に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物などの材料から形成されたものが使用される。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性高分子は、1種を単独で使用するようにしてもよく、2種以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0033】
吸収体4のベース吸収層41を構成する高吸収性高分子の散布量は、吸収体4のベースとしての吸収性能及び肌触りを損なわないよう、坪量が例えば50g/m2以上500g/m2以下の範囲に調整され、また、含有率が例えば15質量%以上50質量%以下に調整される。
【0034】
高吸収性高分子は、例えば、粒子状や繊維状などの形態で用いられるが、取扱い易さなどの観点から好ましくは粒子状で用いられる。このとき、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性高分子の使用を避け、中位粒子径を有する高吸収性高分子を用いることにより、吸収に関する基本性能を高め、且つ、吸収体4が体液を吸収した後に硬化することにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。高吸収性高分子の中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲、又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0035】
吸収体4のベース吸収層41を構成する吸収性繊維及び高吸収性高分子(SAP)の形態として、例えば、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものや、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートとしたものなどが挙げられる。
【0036】
吸収性繊維間にSAP粒子を固着させるために用いられるホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤などが挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法など、公知の方法が利用できる。
【0037】
吸収体4のベース吸収層41は、上層吸収体と下層吸収体とが積層されて構成されるようにしてもよい。この場合、上層吸収体と下層吸収体との各々の長手方向の寸法と幅方向の寸法との関係は、上層吸収体の寸法が、下層吸収体の寸法よりも大きくてもよく、下層吸収体の寸法と同じであってもよく、或いは、下層吸収体の寸法よりも小さくてもよい。
【0038】
SAP粒子の漏洩防止や吸収体4の形状の安定化などの目的から、吸収体4がキャリアシート(不図示)で包まれるようにしてもよい。キャリアシートは親水性シートであり、吸収体4を全体的に又は部分的に包む。例えば、キャリアシートの幅方向中央部に吸収体4を載置し、必要に応じてキャリアシートと吸収体4とをホットメルト接着剤等で接着した後、キャリアシートの幅方向両端部各々を吸収体4の肌側で重ね合わせて必要に応じてホットメルト接着剤等で接着することにより、キャリアシートでC折りした吸収体4が得られる。キャリアシートとしては、この分野で常用される親水性シートをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布、ティシュペーパー、吸収紙などが挙げられる。親水性不織布の中でも、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布がより好ましく、エアスルー不織布、パルプ含有不織布、スパンボンド不織布が更に好ましい。また、キャリアシートの、厚さは例えば0.10mm以上0.25mm以下の範囲であり、坪量は例えば5g/m2以上40g/m2以下の範囲である。
【0039】
(高吸収性高分子の高濃度散布領域)
吸収体4は、ベース吸収層41の肌側の面に、該吸収体4が吸収性物品1に配設された状態で吸収性物品1の長手方向に沿う線分状(言い換えると、帯状)の複数の、高吸収性高分子の高濃度散布領域(「SAP高濃度領域5」と称する)を有する。SAP高濃度領域5は、ベース吸収層41の肌側の面に、他の領域よりも高濃度に高吸収性高分子が散布されて形成される。SAP高濃度領域5は、例えば、ベース吸収層41を構成する吸収性繊維間にSAP粒子を追加的に固着させることによって形成される。
【0040】
ここで、吸収性物品1は、着用されて体液を吸収した使用後、二つ折りでたたまれて廃棄される。このとき、吸収性物品1は、長手方向における中央部(凡そ中央部を含む)において、該吸収性物品1の肌側の面を幅方向に沿って谷折りして二つ折りでたたまれる。そして、吸収性物品1に備えられている吸収体4も、肌側の面を幅方向に沿って谷折りして二つ折りでたたまれる。
【0041】
吸収性物品1を二つ折りしたときに吸収体4が二つ折りされる際の折り目のことを「折り線42」と称する。折り線42は、すなわち、吸収性物品1の長手方向における中央部(凡そ中央部を含む)における、吸収性物品1の幅方向に沿う線分である。なお、図に示す例では吸収性物品1の平面視における中心部に吸収体4が配置されて折り線42が吸収体4の中央部に位置するようにしているが、吸収性物品1全体における吸収体4の位置は図に示す例に限定されるものではなく、したがって吸収体4の折り線42の位置は該吸収体4の中央部には限られない。
【0042】
折り線42は、吸収性物品1を二つ折りする際の、該吸収性物品1全体にとっての折り目であって吸収体4にとっての折り目である。すなわち、吸収体4を含む吸収性物品1は、着用されて体液を吸収した使用後、該吸収性物品1の肌側の面(及び吸収体4の肌側の面)を折り線42に沿って谷折りして二つ折りでたたまれて廃棄される。
【0043】
吸収体4の、平面視において折り線42によって区分される2つの部分のうち、一方の部分である、吸収性物品1が着用されたときに着用者の股間部の前方側(具体的には、下腹部)に当接する部分を「折重ね前側部4A」と称し、他方の部分である、吸収性物品1が着用されたときに着用者の股間部の後方側(具体的には、臀部)に当接する部分を「折重ね後側部4B」と称する。
【0044】
SAP高濃度領域5は、吸収体4のベース吸収層41の肌側の面の所定の領域に、高吸収性高分子が高濃度に散布された領域として形成される。なお、SAP高濃度領域5が形成されるベース吸収層41は、基材としての吸収性繊維と体液の吸収材としての高吸収性高分子とを含んでおり(具体的には例えば、吸収性繊維と高吸収性高分子とが積繊されており)、つまり高吸収性高分子をもともと含んでいる。この点において、SAP高濃度領域5は、高吸収性高分子の濃度が他の領域よりも高濃度になるように高吸収性高分子が追加的に散布され固着されている領域であるといえる。
【0045】
SAP高濃度領域5は、折重ね前側部4Aに、吸収性物品1の長手方向に沿う線分状に形成され、更に、折重ね後側部4Bに、吸収性物品1の長手方向に沿う線分状に形成される。SAP高濃度領域5は、加えて、吸収性物品1が折り線42に沿って二つ折りでたたまれた状態で、折重ね前側部4Aに形成されているSAP高濃度領域5(「前側高濃度領域5A」と称する)と、折重ね後側部4Bに形成されているSAP高濃度領域5(「後側高濃度領域5B」と称する)と、が相互に対向しない(言い換えると、突き当たらない、重ならない)位置にそれぞれ形成される。
【0046】
例えば、前側高濃度領域5Aは、後側高濃度領域5Bを折重ね前側部4Aの方へと延長させた仮想領域(図中の符号5bで示す長手方向に沿う帯状の領域)どうしの間に形成されたり、仮想領域5bよりも吸収性物品1の幅方向における外側に形成されたりする。また、後側高濃度領域5Bは、前側高濃度領域5Aを折重ね後側部4Bの方へと延長させた仮想領域(図中の符号5aで示す長手方向に沿う帯状の領域)どうしの間に形成されたり、仮想領域5aよりも吸収性物品1の幅方向における外側に形成されたりする。したがって、前側高濃度領域5Aと後側高濃度領域5Bとは、平面視において、折り線42に対して非対称となるように形成される。
【0047】
前側高濃度領域5Aの個数は、1個以上であれば特定の値には限定されないものの、2個以下であることが好ましい。また、後側高濃度領域5Bの個数は、2個以上であれば特定の個数には限定されないものの、3個以下であることが好ましい。後側高濃度領域5Bの個数は、前側高濃度領域5Aの個数よりも多いことが好ましく、具体的には、前側高濃度領域5Aの個数よりも1個多いことが好ましい。
【0048】
前側高濃度領域5Aは、折重ね前側部4Aの幅方向における少なくとも中央部や中央部寄りの位置に形成されることが好ましい。この場合には、折重ね前側部4Aの幅方向における中央部や中央部寄りの位置に形成される前側高濃度領域5Aにより、体液の吸収能力が向上する。
【0049】
後側高濃度領域5Bは、折重ね後側部4Bの幅方向における少なくとも両端寄りの位置のそれぞれに形成されることが好ましい。この場合には、折重ね後側部4Bの幅方向における両端側に形成される後側高濃度領域5Bにより、横漏れの防止性能が向上する。
【0050】
具体的には例えば、前側高濃度領域5Aが折重ね前側部4Aの幅方向における中央部に1個形成されるとともに、後側高濃度領域5Bが折重ね後側部4Bの幅方向における両端寄りの位置のそれぞれに1個ずつ合計2個形成されることが好ましい(
図1、
図2参照)。あるいは、前側高濃度領域5Aが折重ね前側部4Aの幅方向における中央部寄りの位置に幅方向において横並びに2個形成されるとともに、後側高濃度領域5Bが折重ね後側部4Bの幅方向における中央部に1個及び両端寄りの位置のそれぞれに1個ずつ合計3個形成されることが好ましい(
図3参照)。
【0051】
ただし、後側高濃度領域5Bの個数が、前側高濃度領域5Aの個数よりも少ないようにしてもよい。具体的には例えば、前側高濃度領域5Aが2個であるとともに後側高濃度領域5Bが1個である、或いは、前側高濃度領域5Aが3個であるとともに後側高濃度領域5Bが2個であるようにしてもよい。
【0052】
吸収性物品1が折り線42に沿って二つ折りでたたまれる際に膨潤した状態の前側高濃度領域5Aや後側高濃度領域5Bが吸収性物品1(特に、吸収体4)の折り曲げの障害とならないようにするため、折り線42の近傍(図中の符号43で示す範囲で、幅方向に沿う帯状の範囲)には前側高濃度領域5A及び後側高濃度領域5Bが形成されないことが好ましい。具体的には、折り線42から折重ね前側部4A側や折重ね後側部4B側への、例えば、5mm以内の範囲(即ち、折り線42を中心として幅方向に沿う10mm幅の帯状の範囲;また、前側高濃度領域5Aと後側高濃度領域5Bとの長手方向における間隔が10mm)には前側高濃度領域5A及び後側高濃度領域5Bが形成されないようにしたり、或いは、10mm以内の範囲(即ち、折り線42を中心として幅方向に沿う20mm幅の帯状の範囲;また、前側高濃度領域5Aと後側高濃度領域5Bとの長手方向における間隔が20mm)には前側高濃度領域5A及び後側高濃度領域5Bが形成されないようにしたりすることが好ましい。
【0053】
前側高濃度領域5Aの長手方向に沿う寸法L_5A及び後側高濃度領域5Bの長手方向に沿う寸法L_5Bは、特定の値には限定されないものの、例えば、50mm以上400mm以下の範囲に設定されるようにしてもよく、80mm以上200mm以下の範囲に設定されることが好ましい。前側高濃度領域5Aの長手方向に沿う寸法L_5A及び後側高濃度領域5Bの長手方向に沿う寸法L_5Bは、また、吸収体4の長手方向の寸法L_4に合わせて調整されることが好ましく、例えば、吸収体4の長手方向の寸法L_4に対して、10%以上50%以下の範囲に設定されるようにしてもよく、20%以上40%以下の範囲に設定されることが好ましい。
【0054】
前側高濃度領域5Aの長手方向に沿う寸法L_5Aと後側高濃度領域5Bの長手方向に沿う寸法L_5Bとは、互いに同じ値に設定されるようにしてもよく、或いは、互いに異なる値に設定されるようにしてもよい。また、(折重ね前側部4Aに複数の前側高濃度領域5Aが形成される場合の)複数の前側高濃度領域5A各々の長手方向に沿う寸法L_5Aは、互いに同じ値に設定されるようにしてもよく、或いは、互いに異なる値に設定されるようにしてもよい。複数の後側高濃度領域5B各々の長手方向に沿う寸法L_5Bは、互いに同じ値に設定されるようにしてもよく、或いは、互いに異なる値に設定されるようにしてもよい。
【0055】
前側高濃度領域5Aの幅方向に沿う寸法W_5A及び後側高濃度領域5Bの幅方向に沿う寸法W_5Bは、特定の値には限定されないものの、例えば、2mm以上20mm以下の範囲に設定されるようにしてもよく、5mm以上15mm以下の範囲に設定されることが好ましい。前側高濃度領域5Aの幅方向に沿う寸法W_5A及び後側高濃度領域5Bの幅方向に沿う寸法W_5Bは、また、吸収体4の幅方向の寸法W_4に合わせて調整されることが好ましく、例えば、吸収体4の幅方向の寸法W_4に対して、3%以上15%以下の範囲に設定されるようにしてもよく、5%以上10%以下の範囲に設定されることが好ましい。
【0056】
前側高濃度領域5Aの幅方向に沿う寸法W_5Aと後側高濃度領域5Bの幅方向に沿う寸法W_5Bとは、互いに同じ値に設定されるようにしてもよく、或いは、互いに異なる値に設定されるようにしてもよい。また、(折重ね前側部4Aに複数の前側高濃度領域5Aが形成される場合の)複数の前側高濃度領域5A各々の幅方向に沿う寸法W_5Aは、互いに同じ値に設定されるようにしてもよく、或いは、互いに異なる値に設定されるようにしてもよい。複数の後側高濃度領域5B各々の幅方向に沿う寸法W_5Bは、互いに同じ値に設定されるようにしてもよく、或いは、互いに異なる値に設定されるようにしてもよい。
【0057】
折重ね前側部4Aに複数の前側高濃度領域5Aが形成される場合の幅方向において相互に隣り合う前側高濃度領域5Aどうしの間の寸法S_5A、及び、折重ね後側部4Bの幅方向において相互に隣り合う後側高濃度領域5Bどうしの間の寸法S_5Bは、特定の値には限定されないものの、例えば、4mm以上120mm以下の範囲に設定されるようにしてもよく、30mm以上120mm以下の範囲に設定されることが好ましい。
【0058】
ここで、前側高濃度領域5A及び後側高濃度領域5Bは、吸収性物品1が着用されて体液を吸収すると、膨潤して、吸収性物品1の使用前(即ち、体液を吸収する前)よりも大きくなる(
図4参照)。そして、吸収性物品1が着用されて体液を吸収した使用後に折り線42に沿って二つ折りでたたまれた状態で前側高濃度領域5Aと後側高濃度領域5Bとが相互に対向しない(言い換えると、突き当たらない、重ならない)ようにするためには、すなわち、膨潤した状態の前側高濃度領域5Asと膨潤した状態の後側高濃度領域5Bsとが相互に対向しない(言い換えると、突き当たらない、重ならない)ようにすることが必要とされる。
【0059】
このため、(折重ね前側部4Aに複数の前側高濃度領域5Aが形成される場合の)幅方向において相互に隣り合う膨潤した状態の前側高濃度領域5Asどうしの間の寸法S_5Asは、膨潤した状態の後側高濃度領域5Bsの幅寸法W_5Bs以上であることが必要とされ、膨潤した状態の後側高濃度領域5Bsの幅寸法W_5Bsよりも大きいことが好ましい。また、折重ね後側部4Bの幅方向において相互に隣り合う膨潤した状態の後側高濃度領域5Bsどうしの間の寸法S_5Bsは、膨潤した状態の前側高濃度領域5Asの幅寸法W_5As以上であることが必要とされ、膨潤した状態の前側高濃度領域5Asの幅寸法W_5Asよりも大きいことが好ましい。
【0060】
すなわち、膨潤した状態の前側高濃度領域5Asを折重ね後側部4Bの方へと延長させた仮想領域のことを前側延長仮想領域5asとするとともに、膨潤した状態の後側高濃度領域5Bsを折重ね前側部4Aの方へと延長させた仮想領域のことを後側延長仮想領域5bsとすると、前側延長仮想領域5asと膨潤した状態の後側高濃度領域5Bsとが相互に重複しない(好ましくは相互に離間している)且つ後側延長仮想領域5bsと膨潤した状態の前側高濃度領域5Asとが相互に重複しない(好ましくは相互に離間している;したがって、前側延長仮想領域5asと後側延長仮想領域5bsとが、相互に重複しない、好ましくは相互に離間している)ように、前側高濃度領域5Aと後側高濃度領域5Bとの相互の位置関係が調整されるとともに、(折重ね前側部4Aに複数の前側高濃度領域5Aが形成される場合の)前側高濃度領域5Aどうしの間の寸法S_5A及び後側高濃度領域5Bどうしの間の寸法S_5Bが調整される。
【0061】
(吸収性物品の製造方法)
吸収性物品1は、公知の製造方法により製造することができ、例えば、吸収性繊維を高吸収性高分子とともに積繊してベース吸収層41を作製する工程A、ベース吸収層41の肌側の面(尚、製造上はトップシート2側に配置される面)の所定部分に高吸収性高分子を高濃度に追加的に散布してSAP高濃度領域5を形成する工程B(これにより、吸収体4が作製される)、トップシート2及びバックシート3の内側にホットメルト系接着剤を塗布する工程C、集合ドラムにおいて吸収体4の上部にトップシート2を配置するとともに吸収体4の下部にバックシート3を配置し各構成部材を固定・一体化して吸収性物品の半製品を作製する工程D、並びに、吸収性物品の半製品をカッター装置により製品寸法でカットして個々の吸収性物品1を切り離す工程Eを有する製造方法などが挙げられる。
【0062】
なお、吸収性物品1が立体ギャザー(不図示)を備えるようにする場合は、上記の工程Cの前に、トップシート2と立体ギャザーとをホットメルト系接着剤で固定・一体化する工程が追加され、また、上記の工程Cにおいて、トップシート2、立体ギャザー、及びバックシート3の内側にホットメルト系接着剤を塗布するようにする。
【実施例0063】
以下に実施例を挙げ、本発明に係る吸収性物品の具体的な構成態様の一例としての、実施の形態に係る吸収性物品1を更に具体的に説明する。
【0064】
(実施例1~3並びに比較例1~6)
表1の上段側に示す構成のSAP高濃度領域5を吸収体4が有する実施例1~3、SAP高濃度領域を吸収体(4)が有しない比較例1、並びに、実施例1~3とは異なる構成の、表2及び表3の上段側に示す構成のSAP高濃度領域(5)を吸収体(4)が有する比較例2~6の吸収性物品1、(1)を作製した。なお、比較例については、実施の形態に係る吸収性物品1の相当する構成の符号を括弧を付けて付す。また、各表の「形状、位置」の欄に示す吸収性物品1、(1)の構成を模式的に示す平面図は、左側が折重ね前側部4A、(4A)であり、右側が折重ね後側部4B、(4B)である。
【0065】
(吸収性物品の作製)
パルプシートを粉砕して解繊したフラッフパルプ20gと、高吸収性高分子6gと、をともに積繊した吸収体マットを準備し、長手方向の寸法L_4=400mm、幅方向の寸法W_4=120mmにカットして、ベース吸収層41を作製した。
【0066】
実施例1として、表1の「形状、位置」の欄に示すような長手方向の寸法120mm(即ち、吸収体4の長手方向の全長L_4の30%)、幅方向の寸法10mmの範囲3ヵ所(具体的には、折重ね前側部4Aの幅方向における中央位置1ヵ所、折重ね後側部4Bの幅方向における両端寄りの位置2ヵ所)に、高吸収性高分子0.72g(3ヵ所合計、3ヵ所いずれも坪量:200g/m2)を追加散布し、SAP高濃度領域5(具体的には、前側高濃度領域5A:1個、後側高濃度領域5B:2個)を有する吸収体4を作製した。なお、折重ね後側部4Bの幅方向において相互に隣り合う後側高濃度領域5Bどうしの間の寸法S_5Bは60mmとした。また、前側高濃度領域5Aと後側高濃度領域5Bとの長手方向における間隔は80mmとした。
【0067】
そして、吸収体4と、トップシート2としてのエアスルー不織布(坪量:22g/m2)と、バックシート3としての通気性ポリエチレンフィルム(坪量:35g/m2)と、をホットメルト接着剤を用いて一体化して(尚、トップシート2と吸収体4上面とをホットメルト接着剤を用いて接合した)、長手方向の寸法L_1=450mm、幅方向の寸法W_1=160mmの吸収性物品1を作製した。
【0068】
実施例2として、SAP高濃度領域5に追加散布する高吸収性高分子の合計の量を1.8g(各SAP高濃度領域5の坪量:500g/m2)に変更した点以外は実施例1と同様にして吸収性物品1を作製した。
【0069】
実施例3として、SAP高濃度領域5に追加散布する高吸収性高分子の合計の量を2.9g(各SAP高濃度領域5の坪量:800g/m2)に変更した点以外は実施例1と同様にして吸収性物品1を作製した。
【0070】
比較例1として、SAP高濃度領域(5)に追加散布する高吸収性高分子の合計の量を0gに変更した(即ち、SAP高濃度領域(5)を有しない)点以外は実施例1と同様にして吸収性物品(1)を作製した。
【0071】
比較例2として、SAP高濃度領域(5)の長手方向の寸法を20mm(即ち、吸収体(4)の長手方向の全長の5%)に変更するとともに、SAP高濃度領域(5)に追加散布する高吸収性高分子の合計の量を0.30g(各SAP高濃度領域(5)の坪量:500g/m2)に変更した点以外は実施例2と同様にして吸収性物品(1)を作製した。
【0072】
比較例3として、SAP高濃度領域(5)に追加散布する高吸収性高分子の合計の量を0.18g(各SAP高濃度領域(5)の坪量:50g/m2)に変更した点以外は実施例1と同様にして吸収性物品(1)を作製した。
【0073】
比較例4として、SAP高濃度領域(5)に追加散布する高吸収性高分子の合計の量を4.3g(各SAP高濃度領域(5)の坪量:1200g/m2)に変更した点以外は実施例1と同様にして吸収性物品(1)を作製した。
【0074】
比較例5として、SAP高濃度領域(5)の幅方向の寸法を25mmに変更するとともに、SAP高濃度領域(5)に追加散布する高吸収性高分子の合計の量を4.5g(各SAP高濃度領域(5)の坪量:500g/m2)に変更した点以外は実施例2と同様にして吸収性物品(1)を作製した。なお、折重ね後側部(4B)の幅方向において相互に隣り合う後側高濃度領域(5B)どうしの間の寸法(S_5B)は40mmとした。
【0075】
比較例6として、SAP高濃度領域(5)の個数を、折重ね前側部(4A)の幅方向において等間隔に3個、折重ね後側部(4B)の幅方向において等間隔に4個に変更する(即ち、前側高濃度領域(5A):3個、後側高濃度領域(5B):4個)とともに、SAP高濃度領域(5)に追加散布する高吸収性高分子の合計の量を4.2g(各SAP高濃度領域(5)の坪量:500g/m2)に変更した点以外は実施例2と同様にして吸収性物品(1)を作製した。なお、折重ね前側部(4A)の幅方向において相互に隣り合う前側高濃度領域(5A)どうしの間の寸法(S_5A)は20mmとし、また、折重ね後側部(4B)の幅方向において相互に隣り合う後側高濃度領域(5B)どうしの間の寸法(S_5B)は20mmとした。
【0076】
実施例1~3並びに比較例1~6の吸収性物品1、(1)のそれぞれについて、上記によってそれぞれ作製した吸収性物品1、(1)に注水を行って吸水した後の液戻り量、二つ折りにした際の嵩高さ、折りたたみ易さ、及び着用時の横漏れのし難さを以下に従って測定・評価した。
【0077】
(液戻り量)
吸収性物品1、(1)の平面視における中心に生理食塩水500mLを注入し、10分経過後に、予め重量を測定したろ紙(ADVANTEC社製 NO.2、直径55mm)を注入部分の中心に置き、ろ紙の上に687gの錘を載せた(圧力:35gf/cm2)。錘を載せてから1分経過後に、ろ紙の重量を測り、試験前後のろ紙の重量差(g)を液戻り量とした。液戻り量は、10サンプルについて行ったものの平均値とした。液戻り量が少ないほど、吸収性能に優れる。
【0078】
(二つ折りにした際の嵩高さ)
吸収性物品1、(1)の平面視における中心に生理食塩水500mLを注入し、10分経過後に、吸収性物品1、(1)を、折り線42、(42)に沿って二つ折りにたたみ、厚みが最も生じた箇所の高さを測定した。厚みが小さいほど、嵩張らない点で廃棄性に優れる。
【0079】
(折りたたみ易さ)
吸収性物品1、(1)の平面視における中心に生理食塩水500mLを注入し、10分経過後に、20人のパネラーに、吸収性物品1、(1)を、折り線42、(42)に沿って二つ折りにたたんでもらい、「折りたたみ易い」と「折りたたみ難い」とのうちの一方の選択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。
◎:「折りたたみ易い」が16人以上20人以下のとき
○:「折りたたみ易い」が11人以上15人以下のとき
△:「折りたたみ易い」が6人以上10人以下のとき
×:「折りたたみ易い」がいないか、1人以上5人以下のとき
【0080】
(横漏れし難さ)
20人のパネラーに、吸収性物品1、(1)の着用時の横漏れについて、「横漏れがある」と「横漏れがない」とのうちの一方の選択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。
◎:「横漏れがない」が16人以上20人以下のとき
○:「横漏れがない」が11人以上15人以下のとき
△:「横漏れがない」が6人以上10人以下のとき
×:「横漏れがない」がいないか、1人以上5人以下のとき
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
表1乃至表3に示す結果から、実施例1~3の吸収性物品1は、SAP高濃度領域(5)が無い比較例1の吸収性物品(1)、SAP高濃度領域(5)の範囲が小さい比較例2の吸収性物品(1)、及び、SAP高濃度領域(5)の高吸収性高分子の坪量が小さい比較例3の吸収性物品(1)と比較して、液戻り量が少ないことが確認される。
【0085】
表1乃至表3に示す結果から、また、実施例1~3の吸収性物品1は、比較例1~6の吸収性物品(1)と比較して、吸水後の二つ折りの嵩高さが小さいことが確認される。なお、比較例1の吸収性物品(1)はSAP高濃度領域(5)が無いために吸収体(4)の全面にわたって高吸収性高分子がまんべんなく膨潤することにより、比較例2の吸収性物品(1)はSAP高濃度領域(5)の範囲が極端に小さいために吸収体(4)の全面にわたって高吸収性高分子が概ねまんべんなく膨潤することにより、比較例3の吸収性物品(1)はSAP高濃度領域(5)の高吸収性高分子の坪量が極端に小さいために吸収体(4)の全面にわたって高吸収性高分子が概ねまんべんなく膨潤することにより、比較例4の吸収性物品(1)はSAP高濃度領域(5)の高吸収性高分子の坪量が極端に大きいためにSAP高濃度領域(5)の高吸収性高分子が極端に膨潤して二つ折りにした際にSAP高濃度領域(5)の一部が相互に重なることにより、比較例5の吸収性物品(1)はSAP高濃度領域(5)の幅方向の寸法が大きいためにSAP高濃度領域(5)の高吸収性高分子が膨潤して二つ折りにした際にSAP高濃度領域(5)の一部が相互に重なることにより、比較例6の吸収性物品(1)はSAP高濃度領域(5)の個数が多く密であってSAP高濃度領域(5)どうしの間隔が狭いためにSAP高濃度領域(5)の高吸収性高分子が膨潤して二つ折りにした際にSAP高濃度領域(5)の一部が相互に重なることにより、吸水後に二つ折りにした際の嵩高さが大きくなった。
【0086】
表1乃至表3に示す結果から、また、実施例1~3の吸収性物品1は、比較例1~6の吸収性物品(1)と比較して、吸水後の折りたたみ易さが良好であることが確認される。
【0087】
表1乃至表3に示す結果から、更に、実施例1~3の吸収性物品1は、比較例1~3の吸収性物品(1)と比較して、液漏れし難さが良好であることが確認される。
【0088】
また、実施例1~3の吸収性物品1と特に比較例2の吸収性物品(1)との比較から、SAP高濃度領域5の長手方向の寸法は吸収体4の全長L_4に対して10%程度以上であることが好ましいといえる。
【0089】
また、実施例1~3の吸収性物品1と特に比較例3及び比較例4の吸収性物品(1)との比較から、SAP高濃度領域5において追加散布される高吸収性高分子の坪量は100g/m2程度以上1000g/m2程度以下であることが好ましいといえる。
【0090】
また、実施例1~3の吸収性物品1と特に比較例5の吸収性物品(1)との比較から、折重ね前側部4Aに設けられる前側高濃度領域5Aの幅方向の寸法の合計や、折重ね後側部4Bに設けられる後側高濃度領域5Bの幅方向の寸法の合計は、40mm程度以下であることが好ましいといえる。
【0091】
また、実施例1~3の吸収性物品1と特に比較例6の吸収性物品(1)との比較から、SAP高濃度領域5は、折重ね前側部4Aに1個以上2個以下設けられ、且つ、折重ね後側部4Bに2個以上3個以下設けられることが好ましいといえる。
【0092】
(作用効果)
実施の形態に係る吸収性物品1によれば、吸収性物品1が着用されて体液を吸収した使用後に折り線42に沿って二つ折りでたたまれた状態で前側高濃度領域5Aと後側高濃度領域5Bと(特に、膨潤した状態の前側高濃度領域5Asと膨潤した状態の後側高濃度領域5Bsと)が相互に対向しない(言い換えると、突き当たらない、重ならない)ようにしているので、吸収体4の折り線42に対して非対称な位置に設けられた、高吸収性高分子が高濃度に散布されたSAP高濃度領域5(具体的には、前側高濃度領域5Aと後側高濃度領域5B)により、体液の吸収後に高吸収性高分子の膨潤によって凹凸構造を生じさせることができ、二つ折りに折りたたんだ際に凹凸が相互にかみ合うように重なって廃棄時の嵩高さを減少させることが可能となり、延いては、廃棄性に優れた吸収性物品を実現することが可能となる。
【0093】
実施の形態に係る吸収性物品1によれば、SAP高濃度領域5は、吸収性物品1の長手方向における中央部(具体的には、折り線42)を境として、両方の側(具体的には、折重ね前側部4Aと折重ね後側部4B)に設けられようにしているので、高吸収性高分子が高濃度に散布されたSAP高濃度領域5により体液の吸収を補助することができ、吸収性物品1の中央部における膨潤を抑制して折りたたみ易くすることが可能となり、延いては、廃棄性に優れた吸収性物品を実現することが可能となる。
【0094】
実施の形態に係る吸収性物品1によれば、前側高濃度領域5Aを、折重ね前側部4Aの幅方向における少なくとも中央部や中央部寄りの位置に形成するようにした場合には、折重ね前側部4Aの幅方向における中央部や中央部寄りの位置に形成される前側高濃度領域5Aにより、体液の吸収能力を向上させることが可能となる。
【0095】
実施の形態に係る吸収性物品1によれば、後側高濃度領域5Bを、折重ね後側部4Bの幅方向における少なくとも両端寄りの位置のそれぞれに形成するようにした場合には、折重ね後側部4Bの幅方向における両端側に形成される後側高濃度領域5Bにより、横漏れの防止性能を向上させることが可能となる。
【0096】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成態様は上記の実施の形態に限定されるものではなく、上記の実施の形態に、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変形や変更などが加えられた形態も本発明に含まれる。