(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064055
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】高放熱プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240507BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H05K1/02 Q
H05K1/11 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172359
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000228833
【氏名又は名称】日本シイエムケイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 龍雄
【テーマコード(参考)】
5E317
5E338
【Fターム(参考)】
5E317AA24
5E317BB12
5E317CC32
5E317CC33
5E317CD27
5E317CD32
5E317GG14
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB05
5E338BB13
5E338CC08
5E338EE02
(57)【要約】
【課題】発熱するデバイスや大電流に対応可能な新たな高放熱プリント配線板の製造方法の提供。
【解決手段】2層以上の多層プリント配線板とプリプレグに、それぞれビアポスト挿入用のウインドウを形成する工程と、次いで、ウインドウとビアポストとが重なるように、当該ウインドウを形成した多層プリント配線板とプリプレグとビアポストを備えた金属シートとをこの順に配置し、この配置状態で積層プレスを行い、積層体を得る工程と、次いで、当該積層体に貫通穴を穿孔する工程と、次いで、全面に無電解・電解めっき処理を行った後、外層回路とビアポスト回路とを形成する工程と、次いで、当該外層回路を保護するソルダーレジストを形成する工程とを有することを特徴とする高放熱プリント配線板の製造方法。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の多層プリント配線板とプリプレグに、それぞれビアポスト挿入用のウインドウを形成する工程と、次いで、ウインドウとビアポストとが重なるように、当該ウインドウを形成した多層プリント配線板とプリプレグとビアポストを備えた金属シートとをこの順に配置し、この配置状態で積層プレスを行い、積層体を得る工程と、次いで、当該積層体に貫通穴を穿孔する工程と、次いで、全面に無電解・電解めっき処理を行った後、外層回路とビアポスト回路とを形成する工程と、次いで、当該外層回路を保護するソルダーレジストを形成する工程とを有することを特徴とする高放熱プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記ビアポストを備えた金属シートが、金属板の片面からハーフエッチングしてビアポストを形成した金属シートであることを特徴とする請求項1に記載の高放熱多層プリント配線板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造方法で得られる高放熱多層プリント配線板のビアポスト回路とめっき膜の接続部上に導電体を配置し、次いで、当該導電体上に部品を実装する工程を更に有することを特徴とする高放熱プリント配線板実装ユニットの製造方法。
【請求項4】
前記導電体の厚みは、ビアポスト回路のめっき接続側の面積値(μm2)に対して、ビアポスト回路のめっき接続側の外周の長さ(μm)に導電体の厚み(μm)を乗じた値が等しいか又は大きくなる厚みであることを特徴とする請求項3記載の高放熱プリント配線板実装ユニットの製造方法。
【請求項5】
前記導電体の厚みは、ビアポスト回路のめっき接続側の面積値(μm2)に対して、ビアポスト回路のめっき接続側の外周の長さ(μm)に導電体の厚み(μm)を乗じ、更に導電体の抵抗値(Ω)をめっき金属の抵抗値(Ω)で除した値を乗じた値が等しいか又は大きくなる厚みであることを特徴とする請求項3記載の高放熱プリント配線板実装ユニットの製造方法。
【請求項6】
前記導電体を、インクジェット印刷方式により配置することを特徴とする請求項3記載の高放熱プリント配線板実装ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体等の発熱するデバイスや大電流に対応する高放熱プリント配線板の製造方法、及び高放熱プリント配線板実装ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体等の発熱するデバイスを使用する場合や大電流に対応するプリント配線板の場合、高い放熱性が求められる。また、電源系、制御系のプリント配線板を1枚のプリント配線板に集約するために、電源系の特定部分の導体を厚くする若しくは制御系の回路幅、間隙を狭くするために部分的に導体を薄くする等の市場要求が増えつつある。
【0003】
従来、高い放熱性を有するプリント配線板として、めっきスルーホールに銅ピンを挿入して、機械的に圧力を掛けて塑性変形させながらめっきスルーホールに銅ピンを圧入させたプリント配線板がある(特許文献1参照)。当該プリント配線板では、電子部品の直下に銅を圧入することによって、電子部品実装側面と反対の面側に配置された放熱体(ヒートシンク等)へと電子部品からの発熱を伝熱させる。しかしながら、銅ピンをめっきスルーホール1穴、1穴に挿入して圧入することから、埋め込む銅ピンの数が増えると生産性が低下する問題が発生している。また、銅ピンを圧入する関係から絶縁層にクラックが入り易い。
【0004】
また、銅板の片面を部分的にハーフエッチングした後、ハーフエッチング面に回路形成した銅張積層板を接着し、銅板をヒートシンクとしてシート全面に配置した銅ベース基板が知られている。しかし、この場合、ヒートシンクが同電位となることから、異電位を有する回路として使用できない。
また、層間接続において、銅めっきを施し、スルーホール内を銅で充填する場合、スルーホール径、板厚、穴形状に制約が生じたり、めっき時間が長時間に渡ったりする。さらに、銅板をエッチングしてビアとする場合は、銅めっきにおけるボイドが発生し易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の如き従来の問題に鑑みなされたものであり、発熱するデバイスや大電流に対応可能な高放熱プリント配線板を生産性良く製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決すべく種々研究を重ねた結果、通常ヒートシンクとして用いていた金属板を放熱用のビアポストと回路として利用すれば極めて良い結果が得られることを見い出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、2層以上の多層プリント配線板とプリプレグに、それぞれビアポスト挿入用のウインドウを形成する工程と、次いで、ウインドウとビアポストとが重なるように、当該ウインドウを形成した多層プリント配線板とプリプレグとビアポストを備えた金属シートとをこの順に配置し、この配置状態で積層プレスを行い、積層体を得る工程と、次いで、当該積層体に貫通穴を穿孔する工程と、次いで、全面に無電解・電解めっき処理を行った後、外層回路とビアポスト回路とを形成する工程と、次いで、当該外層回路を保護するソルダーレジストを形成する工程とを有することを特徴とする高放熱プリント配線板の製造方法により上記課題を解決したものである。
また、本発明は、上記の製造方法で得られる高放熱多層プリント配線板のビアポスト回路とめっき膜の接続部上に導電体を配置し、次いで、当該導電体上に部品を実装する工程を更に有することを特徴とする高放熱プリント配線板実装ユニットの製造方法により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビアポストにより表裏の導通が得られることから、高放熱と大電流を一体化したプリント配線板を生産性良く得ることができる。当該ビアポストは導通部の面積が大きくとれることから許容電流が大きい。このためスルーホールを並行して多く設置する必要がないことから、省スペースが可能となり設計の自由度が向上する。また、ビアポスト回路と他の外層回路を利用することにより、電源系、制御系回路を1枚のプリント配線板に両立させることが可能となる。
さらに、両面実装が可能となり、実装密度が増加する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明高放熱プリント配線板の製造方法を説明するための概略断面工程図。
【
図6】(k)本発明で得られた高放熱プリント配線板のビアポスト回路とめっき膜の接続部上にはんだ塗布した例を示す概略断面説明図。(l)本発明で得られた高放熱プリント配線板のビアポスト回路とめっき膜の接続部上にはんだを介して導電体を配置した例を示す概略断面説明図。
【
図7】本発明で得られた高放熱プリント配線板のビアポスト回路とめっき膜の接続部上に導電体を配置し、部品を実装した高放熱プリント配線板実装ユニットの概略断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明高放熱プリント配線板の製造方法を、
図1~
図5を用いて説明する。
【0012】
まず、L1-L4の4層貫通めっきスルーホール13を備えた多層プリント配線板PW(中間体)を用意する。当該多層プリント配線板PWは、
図1(a)に示したように、表裏面に内層回路11が形成されたコア基板10と、当該コア基板10の上下にそれぞれ積層された絶縁層Sと、最外層に積層された金属層(金属箔12(例えば、銅箔)とめっき膜14(例えば、銅めっき膜)からなる金属層)と、表裏面を貫通するめっきスルーホール13とからなる。
【0013】
次に、貫通めっきスルーホール13に充填材15を充填した後(
図1(b)参照)、多層プリント配線板PWに、ルータ加工にてビアポスト挿入用のウインドウ16を形成し(
図1(c)参照)、次いで、多層プリント配線板PWのL4面に写真法にて回路17を形成する(
図2(d)参照)。ここで、ビアポスト挿入用のウインドウ16の形成にルータを使用することによって、より精度よく加工することが可能である。また、当該ウインドウ16の内壁面において、ルータビットによる切削加工を施すことにより、加工面の粉落ち等の発生もなくなる。
【0014】
充填材15を充填し、当該充填材15を硬化した後は、表層にはみ出した充填材15をベルトサンダー等で研磨してもよい(図示なし)。充填材15は、適宜選択が可能であるが、ボイドが発生し難い、小径スルーホールにも対応可能、効果時間が短い等の点から、金属フィラーを備えた非導電性ペースト(タツタ電線(株)製、太陽ホールディング製等)や絶縁性の充填材が用いられる。
尚、充填材15の充填工程は、任意であり、後工程の積層工程でのプリプレグから溶融した絶縁樹脂をめっきスルーホール13へ充填しても構わない。また、印刷機にて印刷充填してもよい。
【0015】
写真法による回路17の形成は、具体的には、感光性のエッチングレジストをラミネートした後、露光、現像処理を行ってエッチングレジストパターンを形成し、次いで、当該エッチングレジストパターンから露出した部分をエッチング処理によって除去した後、不要となったエッチングレジストパターンを剥離する。
【0016】
次に、
図2(d)~
図3(e)に示したように、ビアポスト挿入用のウインドウ16を形成した多層プリント配線板PWと、ルータ加工にてビアポスト挿入用のウインドウ19を形成したプリプレグ(例えば、ガラスクロス等の補強繊維基材にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグ)18と、金属板(例えば、銅板)を片面からハーフエッチングしてビアポスト26aを形成した金属シート20を用意し、ウインドウ16、19とビアポスト26aとが重なるように、多層プリント配線板PW、プリプレグ18、金属シート20の順でレイアップした後、昇温温度工程を経て、温度180℃から200℃圧力20MPaから50MPaの範囲内で1時間30分から2時間積層することによって、
図3(f)に示したL1-L5の5層多層プリント配線板中間体PXを得る。
尚、当該ウインドウ16とウインドウ19は、ビアポスト26a挿入用のウインドウであり、略同一径の貫通穴である。
【0017】
次に、L1-L5の5層多層プリント配線板中間体PXに、ドリル加工にて貫通穴21を穿孔した後(
図4(g)参照)、全面に無電解めっき処理及び電解めっき処理を順次行うことによって、当該貫通穴21を含む基板全面にめっき膜22(例えば、銅めっき膜)を析出させて、貫通めっきスルーホール25を形成する(
図4(h)参照)。
次いで、写真法にて、5層多層プリント配線板中間体PXのL1面に外層回路23、L5面に外層回路24及びビアポスト回路26を形成する(
図5(i)参照)。
ここで、
図5(i)に示したように、ビアポスト回路26と、他の外層回路24を分離して形成することで、ビアポスト回路26を異電位を有する導体回路として使用することが可能である。そのため、ビアポスト回路26を独立した大電流回路として使用することができる。
【0018】
そして最後に、5層多層プリント配線板中間体PXのL1面の外層回路23と、L5面の外層回路24にそれぞれソルダーレジスト27を写真法にて形成することによって、
図5(j)に示した高放熱プリント配線板100を得る。
【0019】
続いて、高放熱プリント配線板実装ユニットの製造方法を、
図6~7を用いて説明する。
【0020】
まず、
図6(k)に示したように、高放熱プリント配線板100のビアポスト回路26とめっき膜22の接続部上に、後述する部品(発熱・大電流部品)30を実装するためのはんだ28を配置する。
【0021】
次に、
図6(l)に示したように、はんだ28上に、インクジェット印刷方式により導電体29を配置する。
当該導電体29の形成は、3Dプリンタを用いて、設計データを元に2次元の層を順次積み上げて立体モデルを造形する方法にて形成しても構わない。また、導電体29の形成には、導電性インクとして金属(銀、銅等)ナノペーストが使用される。なかでも、導通抵抗値の安定化を考慮して、銀ナノインクを使用することが好ましい。銀ナノインクには、適宜溶媒が含まれている。銀ナノインクの粒径は、20nmから150nmであることが好ましい。
印刷ヘッドから導電性インクを塗布し、赤外線硬化する工程は、導電体29が所定の厚みになるまで繰り返す。1回の導電性インクの塗布と赤外線硬化により0.1μmから1.0μmの厚みの導体層が形成される。例えば、最低導体厚(1μmから)の導体層を形成するには、通常、10回導電性インクの塗布と赤外線硬化を繰り返すことになる。
【0022】
当該導電体29の厚み(μm)は、許容電流を大きくできることから、ビアポスト回路26のめっき接続側の面積値(μm2)に対して、ビアポスト回路26のめっき接続側の外周の長さ(μm)に導電体29の厚み(μm)を乗じた値が等しいか又は大きくなる厚みであることが好ましい。
また、導電体29の厚み(μm)は、ビアポスト回路26のめっき接続側の面積値(μm2)に対して、ビアポスト回路26のめっき接続側の外周の長さ(μm)に導電体29の厚み(μm)を乗じ、更に導電体29の抵抗値(Ω)をめっき金属の抵抗値(Ω)で除した値を乗じた値が等しいか又は大きくなる厚みであることが好ましい。
【0023】
図6(l)に示したように、この実施の形態では、導電体29は、ビアポスト回路26と、当該ビアポスト回路26の周辺回路の両方に接している。導電体29が、ビアポスト回路とその周辺回路の両方に接することで、安定的に接続することが可能である。
【0024】
そして最後に、
図7(m)に示したように、導電体29上に、部品30(発熱・大電流部品)を実装した高放熱プリント配線板実装ユニット400を得る。
【0025】
本発明を説明するに当たって、4層貫通めっきスルーホールを備えた多層プリント配線板を用いて説明してきたが、本発明を逸脱しない範囲であれば、2層基板、6層基板、8層基板、又はそれ以上の層数基板が使用できることは言うまでもない。さらにまた、板厚、材料等も本発明の範囲内で変更が可能である。
【符号の説明】
【0026】
10:コア基板
11:内層回路
12:金属箔
13、25:貫通めっきスルーホール
14、22:めっき膜
15:充填材
16、19:ビアポスト挿入用のウインドウ
17:L4の導体回路
18:プリプレグ
20:金属シート
21:貫通穴
23:L1面の外層回路
24:L5面の外層回路
26a:ビアポスト
26:ビアポスト回路
27:ソルダーレジスト
28:はんだ
29:導電体
30:部品(発熱・大電流)
PW:L1-L4 4層多層プリント配線板中間体
PX:L1-L5 5層多層プリント配線板中間体
100:高放熱プリント配線板
200:はんだを備えた高放熱プリント配線板
300:導電体を備えた高放熱プリント配線板
400:部品を備えた高放熱プリント配線板実装ユニット