(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064060
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】太陽光発電管理方法、太陽光発電管理プログラム、および、太陽光発電管理システム
(51)【国際特許分類】
G01W 1/10 20060101AFI20240507BHJP
G01W 1/00 20060101ALI20240507BHJP
H02S 50/00 20140101ALI20240507BHJP
【FI】
G01W1/10 P
G01W1/00 Z
H02S50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172368
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂内 容子
(72)【発明者】
【氏名】安倍 望
(72)【発明者】
【氏名】村上 好樹
(72)【発明者】
【氏名】志賀 慶明
(72)【発明者】
【氏名】大場 健史
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151JA30
5F251JA30
(57)【要約】
【課題】太陽光発電パネル上の着雪状況を高精度に予測する。
【解決手段】実施形態の太陽光発電管理方法は、着雪状況の予測対象の太陽光発電パネルの設置場所を含む所定地域の撮影画像データ、および、気象予測データに基づいて、予測対象時刻における前記所定地域の積雪状況を予測し、積雪予測結果を出力する積雪予測ステップと、前記積雪予測結果に基づいて、前記予測対象時刻における前記太陽光発電パネルの着雪状況を予測し、着雪予測結果を出力する着雪予測ステップと、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着雪状況の予測対象の太陽光発電パネルの設置場所を含む所定地域の撮影画像データ、および、気象予測データに基づいて、予測対象時刻における前記所定地域の積雪状況を予測し、積雪予測結果を出力する積雪予測ステップと、
前記積雪予測結果に基づいて、前記予測対象時刻における前記太陽光発電パネルの着雪状況を予測し、着雪予測結果を出力する着雪予測ステップと、を含む太陽光発電管理方法。
【請求項2】
前記積雪予測ステップは、前記撮影画像データに基づいて、予測実行時点の前記所定地域の積雪状況を推定し、その積雪推定結果、および、前記気象予測データに基づいて、閾値判定または機械学習を用いて、前記予測対象時刻における前記所定地域の積雪状況を予測し、前記積雪予測結果として、積雪深または積雪有無の情報を出力する、請求項1に記載の太陽光発電管理方法。
【請求項3】
前記積雪予測ステップは、前記撮影画像データとして、衛星画像データを用いる、請求項1に記載の太陽光発電管理方法。
【請求項4】
前記着雪予測ステップは、前記積雪予測結果に加えて、前記気象予測データ、前記設置場所の位置情報、前記予測対象時刻に関する時間特性情報のうち少なくともいずれかに基づいて、閾値判定または機械学習を用いて、前記予測対象時刻における前記太陽光発電パネルの着雪状況を予測し、前記着雪予測結果として、着雪有無または着雪確率の情報を出力する、請求項1に記載の太陽光発電管理方法。
【請求項5】
前記積雪予測ステップは、
前記機械学習における積雪予測モデルの学習データ量が第1所定値未満であれば、前記閾値判定を用い、
前記機械学習における積雪予測モデルの学習データ量が第1所定値以上であれば、前記機械学習を用いる、請求項2に記載の太陽光発電管理方法。
【請求項6】
前記着雪予測ステップは、
前記機械学習における着雪学習モデルの学習データ量が第2所定値未満であれば、前記閾値判定を用い、
前記機械学習における着雪学習モデルの学習データ量が第2所定値以上であれば、前記機械学習を用いる、請求項4に記載の太陽光発電管理方法。
【請求項7】
前記太陽光発電パネルによる太陽光発電量予測結果を取得する取得ステップと、
前記着雪予測結果に基づいて、前記太陽光発電量予測結果を補正する補正ステップと、をさらに含む、請求項1に記載の太陽光発電管理方法。
【請求項8】
前記補正ステップは、前記着雪予測結果に応じた補正係数に基づいて、前記太陽光発電量予測結果を補正する、請求項7に記載の太陽光発電管理方法。
【請求項9】
コンピュータを、
着雪状況の予測対象の太陽光発電パネルの設置場所を含む所定地域の撮影画像データ、および、気象予測データに基づいて、予測対象時刻における前記所定地域の積雪状況を予測し、積雪予測結果を出力する積雪予測部と、
前記積雪予測結果に基づいて、前記予測対象時刻における前記太陽光発電パネルの着雪状況を予測し、着雪予測結果を出力する着雪予測部と、して機能させるための太陽光発電管理プログラム。
【請求項10】
着雪状況の予測対象の太陽光発電パネルの設置場所を含む所定地域の撮影画像データ、および、気象予測データに基づいて、予測対象時刻における前記所定地域の積雪状況を予測し、積雪予測結果を出力する積雪予測部と、
前記積雪予測結果に基づいて、前記予測対象時刻における前記太陽光発電パネルの着雪状況を予測し、着雪予測結果を出力する着雪予測部と、を備える太陽光発電管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、太陽光発電管理方法、太陽光発電管理プログラム、および、太陽光発電管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、異常気象に起因する災害の常態化による非常時対策や、電力会社、産業需要家の経営戦略としての再エネ(再生可能エネルギー発電機)の導入により、インフラに関する課題や事象と気象情報の相関性が高くなっている。再エネについて、例えば、太陽光発電設備(以下、「PV」(Photovoltaic)とも称する。)の発電量予測の高度化技術が必要とされている。そして、高精度なPV発電量予測を実施することで、最終的には再エネバランシングにおけるインバランスコストの低減等に寄与することが可能になる。
【0003】
PV発電量予測は、例えば、衛星画像データや日射量データなどを用いて実施される。しかし、PVパネル上に着雪がある場合には、PV発電量は減少するため、着雪を考慮しないと、発電量の予測値と実際値の間に大きな乖離が発生する可能性がある。
【0004】
その対策として、例えば、主に積雪深や降雪終了後の経過日数の情報を用いてPVパネル上の着雪状況を予測する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、PVパネル上の着雪状況は、積雪深や降雪終了後の経過日数以外にも影響されるので、上述の従来技術では、予測精度の点で改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、太陽光発電パネル上の着雪状況を高精度に予測可能な太陽光発電管理方法、太陽光発電管理プログラム、および、太陽光発電管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の太陽光発電管理方法は、着雪状況の予測対象の太陽光発電パネルの設置場所を含む所定地域の撮影画像データ、および、気象予測データに基づいて、予測対象時刻における前記所定地域の積雪状況を予測し、積雪予測結果を出力する積雪予測ステップと、前記積雪予測結果に基づいて、前記予測対象時刻における前記太陽光発電パネルの着雪状況を予測し、着雪予測結果を出力する着雪予測ステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、従来技術におけるPV発電量とPV発電量予測結果の時間的推移の例を示すグラフである。
【
図2】
図2は、第1実施形態の太陽光発電管理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態における第1の着雪予測アルゴリズムを模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態における第2の着雪予測アルゴリズムを模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の太陽光発電管理装置による処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態の太陽光発電管理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の太陽光発電管理装置による処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の太陽光発電管理方法、太陽光発電管理プログラム、および、太陽光発電管理システムの実施形態(第1実施形態、第2実施形態)について、図面を参照して説明する。
【0011】
(前提)
図1は、従来技術におけるPV発電量とPV発電量予測結果の時間的推移の例を示すグラフである。ここでは、晴天の1日の太陽光発電量予測結果Pと実際の出力値R1を示している。
【0012】
通常、晴天の日の太陽光発電量予測結果は、
図1の符号Pのようになる。そして、実際の出力値は概ねそれに追従するものと考えられる。しかし、その前日に降雪があり、PVパネル(太陽光発電パネル)に着雪があると、実際の出力値が太陽光発電量予測結果に追従しなくなる。
【0013】
ここでは、PVパネルにおいて、日の出より少し後の時刻t0の時点で着雪があり、その着雪が時刻t1ごろから融解や滑落によって少しずつなくなり始め、時刻t2までに着雪が完全になくなったものとする。なお、PVパネル上の着雪有無は地面上の積雪有無と関連があると考えられるが、日本国内のPVパネルは10°程度の傾斜(緯度によっても異なる。)を持って設置されているため、PVパネル上の雪が滑落する可能性がある。また、積雪のあった翌日の天候が良い場合には、PVパネルの温度が上がることで融雪または雪の滑落が発生することがある。
【0014】
図1の例では、実際の出力値は、符号R1に示すように、時刻t0~t1の間はゼロで、時刻t1から増え始め、時刻t2で太陽光発電量予測結果Pに追いつく。つまり、時刻t0から時刻t2の少し前までの時間帯は、PVパネル上の着雪のせいで、実際の出力値R1が日射量と比例しない。
【0015】
なお、PVパネル上の着雪状況を認識するために、そのためのカメラやセンサを取り付ける方法もあるが、それでは、手間やコストの点で問題がある。したがって、そのためのカメラやセンサを取り付けずに、PVパネル上の着雪状況を高精度に予測したいというニーズがある。
【0016】
しかし、上述のように、主に積雪深や降雪終了後の経過日数の情報を用いてPVパネル上の着雪状況を予測するという従来技術では、予測精度の点で改善の余地がある。そこで、以下では、PVパネル上の着雪状況を従来よりも高精度に予測可能な技術について説明する。
【0017】
なお、本明細書では、PVパネル上に雪が付着している状態を「着雪」と称し、それ以外の地面等に雪が積もっている状態を「積雪」と称する。
【0018】
(第1実施形態)
図2は、第1実施形態の太陽光発電管理装置1の機能構成を示すブロック図である。太陽光発電管理装置1は、コンピュータ装置であり、処理部2と、記憶部3と、入力部4と、出力部5と、通信部6と、を備える。
【0019】
なお、太陽光発電管理装置1の機能の一部は、例えば、クラウドコンピューティングによっても実現できるが、本実施形態では、説明を簡潔にするために、太陽光発電管理装置1は1台のコンピュータ装置であるものとして説明する。
【0020】
記憶部3は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等によって実現される。記憶部3は、例えば、処理部2の動作プログラムや各種データや処理部2による各種演算結果などを記憶する。
【0021】
具体的には、記憶部3は、例えば、PVパネル上の着雪状況の予測などに使用するためのデータとして、PVパネルの設置場所(以下、単に「設置場所」とも称する。)を含む所定地域の撮影画像データ(衛星画像データなど)や、その所定領域の気象予測データ(気温、湿度、日射量など)や、閾値判定用データや、機械学習用データや、設置場所の位置情報や、予測対象時刻に関する時間特性情報(季節、時間帯(朝、昼、夜など)などの特性(気温、湿度、日射量など)の情報)などを記憶する。
【0022】
処理部2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)によって実現される。処理部2は、記憶部3に記憶された動作プログラムや各種データに基づいて動作することで、機能部として、取得部21、積雪予測部22、着雪予測部23を実現する。
【0023】
取得部21は、記憶部3や外部装置などから各種情報を取得する。
【0024】
積雪予測部22は、着雪状況の予測対象の太陽光発電パネルの設置場所を含む所定地域(以下、単に「所定領域」とも称する。)の撮影画像データ(例えば衛星画像データ)、および、気象予測データに基づいて、予測対象時刻における所定地域の積雪状況を予測し、積雪予測結果を出力する。
【0025】
例えば、積雪予測部22は、衛星画像データに基づいて、予測実行時点の所定地域の積雪状況を推定し、その積雪推定結果、および、気象予測データに基づいて、閾値判定または機械学習を用いて、予測対象時刻における所定地域の積雪状況を予測し、積雪予測結果として、積雪深または積雪有無の情報を出力する。
【0026】
ここで、衛星画像データに基づく予測実行時点の所定地域の積雪状況の推定について説明する。衛星画像データを画像合成処理(例えばRGB(Red,Green,Blue)合成処理)することで、地上の雪の有無の他、植生や上空の雲の判定が可能となる。例えば、積雪は可視光に対して高反射率で近赤外光に対して高吸収率である一方、雲は可視光と近赤外光の両方に対して高反射率であるという特性があり、これらの特性によって積雪と雲を識別できる。
【0027】
なお、使用する画像合成処理の手法(レシピ)は、例えば、可視光の合成結果となるものや雪や霧を見分けるためのものなどが考えられるが、そのほかに、複数の手法を組み合わせて使用することも可能である。
【0028】
次に、予測実行時点(例えば現在)の所定地域の積雪推定結果と気象予測データに基づく予測対象時刻(例えば翌日)における所定地域の積雪状況の予測について説明する。この予測には、例えば、閾値判定と機械学習の2種類の手法を用いることができる。
【0029】
閾値判定の場合、パラメータを用いて閾値を判定する。また、機械学習の場合、例えば、ランダムフォレスト、回帰分析、ロジスティック回帰などを用いる。また、積雪予測結果は、例えば、積雪深と積雪有無の2種類が考えられるが、積雪深に対して最終的に閾値を設定して積雪有無の2値分類とすることも可能である。
【0030】
なお、閾値判定と機械学習を比較すると、機械学習における積雪予測モデルの学習データ量がある程度多い場合は機械学習のほうが高精度で、その学習データ量がある程度少ない場合は閾値判定のほうが高精度であると考えられる。なぜなら、学習データ量が充分でないと積雪予測モデルが過学習となる可能性があるためである。したがって、その境界の学習データ量を第1所定値とする。
【0031】
そして、積雪予測部22は、例えば、機械学習における積雪予測モデルの学習データ量が第1所定値未満であれば、閾値判定を用い、機械学習における積雪予測モデルの学習データ量が第1所定値以上であれば、機械学習を用いる。具体的には、例えば、データが取りづらい地点について、学習データ量が第1所定値未満であれば閾値判定を用いる。また、システム導入直後で学習データ量が第1所定値未満のときは閾値判定を用いて積雪予測を実施し、所定期間が経過して学習データ量が第1所定値以上になった後に予測手法を機械学習に切り替える、といった運用が可能である。このようにして、学習データ量に応じて閾値判定と機械学習を適切に使い分けることができる。
【0032】
また、積雪予測モデルについて、対象範囲は任意に決定することができる。つまり、例えば、全国一律のモデルとしてもよいし、あるいは、エリア別のモデルとしてもよい。ここで、エリアは、市区町村、都道府県、地方といった行政単位の区分であってもよいし、あるいは、実行者が任意で設定することも可能である。
【0033】
例えば、ある県内に太陽光発電所を複数設置している事業者が、県内の全発電所一括の積雪予測モデルを作成することが可能である。また、当該事業者が、県内でエリア区分を指定して、エリアごとの積雪予測モデルを作成することも可能である。ただし、任意にエリアを設定する場合には、そのエリアの気象予測データが最低1地点以上について用意できることが条件である。
【0034】
着雪予測部23は、積雪予測結果に基づいて、予測対象時刻における太陽光発電パネルの着雪状況を予測し、着雪予測結果を出力する。
【0035】
例えば、着雪予測部23は、積雪予測結果に加えて、気象予測データ、設置場所の位置情報、予測対象時刻に関する時間特性情報のうち少なくともいずれかに基づいて、閾値判定または機械学習を用いて、予測対象時刻における太陽光発電パネルの着雪状況を予測し、着雪予測結果として、着雪有無または着雪確率の情報を出力する。
【0036】
以下、
図3を用いて着雪有無の情報を出力する場合について説明し、
図4を用いて着雪確率の情報を出力する場合について説明する。
図3は、第1実施形態における第1の着雪予測アルゴリズムを模式的に示す図である。
図4は、第1実施形態における第2の着雪予測アルゴリズムを模式的に示す図である。
【0037】
図3では、まず、ステップS11において、予測対象時刻に地面上に積雪があるか否かを判定し、Yesの場合はステップS12に進み、Noの場合はステップS13に進んで着雪なしと判定して処理を終了する。
【0038】
ステップS12において、直近h時間に積雪があるか否かを判定し、Yesの場合はステップS14に進み、Noの場合はステップS15に進んで着雪なしと判定して処理を終了する。
【0039】
ステップS14において、直近h時間の平均気温が温度閾値T未満か否かを判定し、Yesの場合はステップS16に進み、Noの場合はステップS17に進んで着雪なしと判定して処理を終了する。
【0040】
ステップS16において、直近h時間の平均日射量が日射量閾値R未満か否かを判定し、Yesの場合はステップS18に進んで着雪ありと判定して処理を終了し、Noの場合はステップS19に進んで着雪なしと判定して処理を終了する。
【0041】
次に、
図4では、まず、ステップS21において、予測対象時刻に地面上に積雪があるか否かを判定し、Yesの場合はステップS22に進み、Noの場合はステップS23に進んで着雪確率0%と判定して処理を終了する。
【0042】
ステップS22において、直近h時間に積雪があるか否かを判定し、Yesの場合はステップS24に進み、Noの場合はステップS25に進んで着雪確率10%と判定して処理を終了する。
【0043】
ステップS24において、直近h時間の平均気温が温度閾値T未満か否かを判定し、Yesの場合はステップS26に進み、Noの場合はステップS27に進んで着雪確率50%と判定して処理を終了する。
【0044】
ステップS26において、直近h時間の平均日射量が日射量閾値R未満か否かを判定し、Yesの場合はステップS28に進んで着雪確率100%と判定して処理を終了し、Noの場合はステップS29に進んで着雪確率80%と判定して処理を終了する。
【0045】
このようにして、着雪予測について、予測結果を単純な着雪ありなしの2値で判定することもでき、また、確率として判定することもできる。
【0046】
なお、
図3、
図4で用いた判定条件は例であり、これらに限定されない。ほかに、予測対象設備の緯度、経度といった位置情報や、PVパネルの傾斜角や素材といった設備情報や、時刻や季節といった時間特性情報などを用いてもよい。これらの情報は、PVパネル上の雪の融解や滑落に関係する情報となるため、着雪予測精度向上に有効である。また、
図4に示した判定結果の確率の値についても任意に設定が可能であり、判定条件と同様に予測対象設備ごとに位置情報、設備情報、時間特性情報などを用いて確率の値を変動させることも可能である。
【0047】
図2の説明に戻って、また、着雪予測部23は、機械学習における着雪学習モデルの学習データ量が第2所定値未満であれば、閾値判定を用い、機械学習における着雪学習モデルの学習データ量が第2所定値以上であれば、機械学習を用いる。これも、積雪予測の場合と同様、学習データ量が充分でないとモデルが過学習となる可能性があるため、その境界の学習データ量を第2所定値とし、閾値判定と機械学習を適切に使い分ける。
【0048】
入力部4は、ユーザによる情報入力手段であり、例えば、マウスやキーボードやタッチパネルである。
【0049】
出力部5は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置や、スピーカなどの音声出力装置である。
【0050】
通信部6は、外部装置や電力系統内の各種センサ等と各種情報の通信(送受信)を行うための通信インタフェースである。
【0051】
図5は、第1実施形態の太陽光発電管理装置1による処理を示すフローチャートである。まず、ステップS1において、積雪予測部22は、衛星画像データに基づいて、現在(予測実行時点)の所定地域の積雪状況を推定する。
【0052】
次に、ステップS2において、積雪予測部22は、ステップS1による積雪推定結果、および、気象予測データに基づいて、閾値判定または機械学習を用いて、予測対象時刻における所定地域の積雪状況を予測し、積雪予測結果を出力する。例えば、ステップS1の推定結果を用いて、当該地点の積雪有無予測を実施し、当日から所定日数分(例えば、1週間程度)の積雪予測結果を得る。
【0053】
次に、ステップS3において、着雪予測部23は、ステップS2による積雪予測結果に加えて、気象予測データ、設置場所の位置情報、予測対象時刻に関する時間特性情報のうち少なくともいずれかに基づいて、閾値判定または機械学習を用いて、予測対象時刻における太陽光発電パネルの着雪状況を予測し、着雪予測結果を出力する。
【0054】
このようにして、第1実施形態の太陽光発電管理装置1によれば、上述のように、まず、衛星画像データなどに基づいて現在(予測実行時点)の所定地域の積雪状況を推定し、次に、その積雪推定結果や気象予測データなどに基づいて予測対象時刻における所定地域の積雪状況を予測し、次に、その積雪予測結果に基づいて予測対象時刻における太陽光発電パネルの着雪状況を予測する。このような段階的な処理によって、専用のカメラやセンサを取り付けないという条件下で、PVパネル上の着雪状況を従来よりも高精度に予測することができる。
【0055】
また、着雪予測結果は、その後の各種情報処理に用いることができる。その例として、着雪予測結果に基づいて太陽光発電量予測結果を補正する場合について、次の第2実施形態で説明する。
【0056】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の事項については、説明を適宜省略する。
図6は、第2実施形態の太陽光発電管理装置1の機能構成を示すブロック図である。
図2と比較して、処理部2に補正部24が追加されている。
【0057】
取得部21は、PVパネルによる太陽光発電量予測結果を取得する。この太陽光発電量予測結果は、太陽光発電管理装置1によって作成してもよいし、あるいは、他のコンピュータ装置から取得してもよい。
【0058】
補正部24は、着雪予測結果に基づいて、太陽光発電量予測結果を補正する。補正部24は、例えば、着雪予測結果に応じた補正係数に基づいて、太陽光発電量予測結果を補正する。
【0059】
以下、太陽光発電量予測結果の補正について詳述する。例えば、着雪ありと判定された時刻について、補正係数c_r(0≦c_r≦1)を発電出力予測結果に掛け合わせる等の方法が考えられる。
【0060】
また、この補正係数の算出方法について、一定値を用いる場合と変動値を用いる場合が考えられる。一定値を用いる場合は、任意のエリア単位、任意の期間においてあらかじめ補正係数の値を決めておきシステムに与えるという方法が考えられる。
【0061】
変動値を用いる場合は、変動のさせ方として、時間情報(季節ごと、月ごと、週ごと、日ごと、時間帯ごとなど)を用いる方法や、着雪予測結果の着雪確率を用いる方法や、補正対象の太陽光発電設備の緯度・経度といった位置情報を用いる方法などが考えられる。
【0062】
着雪予測結果の着雪確率を用いる場合は、例えば、着雪確率が10%の場合は補正係数を0.9にして、着雪確率が20%の場合は補正係数を0.8にする、という計算方法が考えられる。つまり、着雪確率をSP、補正係数をCFとした場合、以下の式(1)によって補正係数を計算することができる。
CF=(100-SP)×0.01 ・・・(1)
【0063】
図7は、第2実施形態の太陽光発電管理装置1による処理を示すフローチャートである。ステップS1~S3については、
図5のステップS1~S3と同様である。
【0064】
ステップS3の後、ステップS4において、補正部24は、PV発電量予測結果の補正が必要か否かを判定し、Yesの場合はステップS5に進み、Noの場合は処理を終了する。
【0065】
ステップS5において、補正部24は、着雪予測結果に応じた補正係数などに基づいて、太陽光発電量予測結果を補正する。
【0066】
このようにして、第2実施形態によれば、着雪予測結果に基づいて太陽光発電量予測結果を補正することで、高精度な太陽光発電量予測結果を得ることができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0068】
また、本実施形態の太陽光発電管理装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することができる。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0069】
なお、PVパネルの着雪予測と太陽光発電量予測結果の補正は、同一の装置(プログラム)によって実行されてもよいし、あるいは、別々の装置(プログラム)で実行されてもよい。後者の場合については、例えば、第1実施形態のようにして太陽光発電管理装置1においてPVパネルの着雪予測を行ってその着雪予測結果を他のコンピュータ装置に送信し、当該他のコンピュータ装置が、太陽光発電量予測と、着雪予測結果を用いた太陽光発電量予測結果の補正と、を行うようにすればよい。
【0070】
また、PVパネルの設置場所を含む所定地域の撮影画像データは、衛星画像データに限定されず、ほかに、航空写真データなどの他のデータであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…太陽光発電管理装置、2…処理部、3…記憶部、4…入力部、5…出力部、6…通信部、21…取得部、22…積雪予測部、23…着雪予測部、24…補正部