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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064067
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】愛玩動物用施設
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
A01K67/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172386
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】514235307
【氏名又は名称】アニコム ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】津島 真吾
(72)【発明者】
【氏名】太田 芹奈
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大毅
(72)【発明者】
【氏名】市川 宏史
(72)【発明者】
【氏名】亀井 達彦
(57)【要約】
【課題】健全な管理を行うことができる愛玩動物用施設を提供する。
【解決手段】譲渡及び譲渡用の繁殖を行う愛玩動物用施設1は、愛玩動物の種類で区分された領域と、愛玩動物の成育度で区分された領域とを備えている。各領域は、個々の領域に収容された愛玩動物が、他の領域に移動する必要がない配置で近接している。愛玩動物の成育度で区分された各領域は、運動場を共有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
譲渡及び譲渡用の繁殖を行う愛玩動物用施設であって、
愛玩動物の種類で区分された領域と、愛玩動物の成育度で区分された領域とを備え、各領域は近接していて、
前記愛玩動物の成育度で区分された各領域が、運動場を共有している愛玩動物用施設。
【請求項2】
前記愛玩動物の種類で区分された領域が、それぞれ独立した隔離室及び検疫室を備える請求項1記載の愛玩動物用施設。
【請求項3】
前記愛玩動物の種類で区分された領域が、診察処置室を共有する請求項1記載の愛玩動物用施設。
【請求項4】
譲受を希望する者用の出入口とは別に、個々の領域の愛玩動物用の出入口を備える請求項1記載の愛玩動物用施設。
【請求項5】
前記愛玩動物の種類で区分された領域にそれぞれ愛玩動物の飼育舎を備え、該飼育舎を区画形成する壁のうちの一面の少なくとも一部分が、透明な材料からなる請求項1記載の愛玩動物用施設。
【請求項6】
前記愛玩動物の種類で区分された領域に愛玩動物の譲渡スペースを個々に備え、各譲渡スペースは開閉可能な仕切り板を隔てて隣接している請求項1記載の愛玩動物用施設。
【請求項7】
前記愛玩動物の種類で区分された領域に隣接して運動場を備える請求項1記載の愛玩動物用施設。
【請求項8】
前記愛玩動物の成育度で区分された領域が、それぞれ独立したバックヤードを備える請求項1記載の愛玩動物用施設。
【請求項9】
前記愛玩動物の成育度で区分された領域の運動場に相当する部分の上面に天窓を備える請求項1記載の愛玩動物用施設。
【請求項10】
前記愛玩動物の種類で区分された領域に収容される愛玩動物が犬及び猫であり、前記譲渡及び繁殖のために愛玩動物の成育度で区分された領域に収容される愛玩動物が成犬及び子犬である請求項1記載の愛玩動物用施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、愛玩動物用施設に関し、詳しくは、愛玩動物を譲渡し、また愛玩動物を譲渡のために繁殖及び飼育する施設に関する。
【背景技術】
【0002】
犬や猫などの愛玩動物(ペット)は、飼い主に癒しを与えるだけでなく、核家族化や少子高齢化といった社会情勢を背景に、家族同様の存在として一緒に暮らす人が増加傾向にある。
愛玩動物を入手する方法には、犬や猫を例にとるとブリーダーから直接に又は仲介者を介して譲受したり、ペットショップで購入したりすること等が挙げられる。このうち、ブリーダーから譲受する場合は繁殖しているブリーダーの地に行く必要があるが、必ずしも譲受しようとする愛玩動物を見に行けるブリーダーが近くにあるとは限られなかった。ペットショップから購入する場合は、ブリーダーから譲受する場合に比べて入手は容易と考えられるが、健康面、しつけの水準等でブリーダーからの譲受よりも劣ることもあった。近年、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)が改正され、動物取扱業の規制、管理が強化されたものの、法律は最低限の基準を定めるものであり、より健全な管理が十分に行われる必要が今後も生じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、譲渡及び譲渡用の繁殖を行う愛玩動物用施設であって、健全な管理を行うことができる愛玩動物用施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
譲渡及び譲渡用の繁殖を行う愛玩動物用施設について、健全な管理を行うことができる本発明は、以下の[1]~[10]である。
[1]譲渡及び譲渡用の繁殖を行う愛玩動物用施設であって、
愛玩動物の種類で区分された領域と、愛玩動物の成育度で区分された領域とを備え、各領域は近接していて、
前記愛玩動物の成育度で区分された各領域が、運動場を共有している愛玩動物用施設。
[2]前記愛玩動物の種類で区分された領域が、それぞれ独立した隔離室及び検疫室を備える[1]の愛玩動物用施設。
[3]前記愛玩動物の種類で区分された領域が、診察処置室を共有する[1]の愛玩動物用施設。
[4]譲受を希望する者用の出入口とは別に、個々の領域の愛玩動物用の出入口を備える[1]の愛玩動物用施設。
[5]前記愛玩動物の種類で区分された領域にそれぞれ愛玩動物の飼育舎を備え、該飼育舎を区画形成する壁のうちの一面の少なくとも一部分が、透明な材料からなる[1]の愛玩動物用施設。
[6]前記愛玩動物の種類で区分された領域に愛玩動物の譲渡スペースを個々に備え、各譲渡スペースは開閉可能な仕切り板を隔てて隣接している[1]の愛玩動物用施設。
[7]前記愛玩動物の種類で区分された領域に隣接して運動場を備える[1]の愛玩動物用施設。
[8]前記愛玩動物の成育度で区分された領域が、それぞれ独立したバックヤードを備える[1]の愛玩動物用施設。
[9]前記愛玩動物の成育度で区分された領域の運動場に相当する部分の上面に天窓を備える[1]の愛玩動物用施設。
[10]前記愛玩動物の種類で区分された領域に収容される愛玩動物が犬及び猫であり、前記譲渡及び繁殖のために愛玩動物の成育度で区分された領域に収容される愛玩動物が成犬及び子犬である[1]の愛玩動物用施設。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、健全な管理を行うことができる愛玩動物用施設を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施形態の愛玩動物用施設の一部分の内部を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態の愛玩動物用施設の他の一部分の内部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の愛玩動物用施設は、譲渡及び譲渡用の繁殖を行う愛玩動物用施設である。譲渡は、繁殖した愛玩動物に限られず、他から譲受、購入又は保護された愛玩動物を含むことができる。したがって、繁殖させた愛玩動物以外の、例えば複数の種類の愛玩動物を譲渡することができ、愛玩動物のバリエーションに富んだ集客力のある施設とすることができる。
また、譲渡と繁殖とを一つの施設で行うことで、適切な飼育環境で繁殖をさせた愛玩動物を譲渡することができる。
【0008】
また、愛玩動物の種類で区分された領域と、親及び繁殖で生まれた子のために愛玩動物の成育度で区分された領域とを備え、各領域は、個々の領域に収容された愛玩動物が、極力他の領域へ移動せずに済むように配置することにより、各領域に収容された愛玩動物の管理が容易であり、また、愛玩動物の防疫の観点からも有利である。更に、譲受を希望する者(以下、本明細書で「譲受希望者」という。)は、希望する愛玩動物の種類、成長度により区分された特定の領域に、施設内で短い距離で到達することができるので余分な移動が抑制される。そして複数の区画された領域が近接されることにより、集積度が高く、効率の良い施設運営を行うことができる。
【0009】
更に、成育度で区分された領域が、運動場を共有していることにより、例えば愛玩動物が犬の場合、繁殖のための成犬と、成犬から生まれた子犬とを、同一の運動場で交互に運動させることができ、成犬と子犬とが別々の運動場を備える場合に比べて、スペースを省くことができる。
【0010】
本発明の愛玩動物用施設を、図面を参照しつつ、より具体的に説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態の愛玩動物用施設1の内部を示す平面図である。本実施形態の愛玩動物用施設1は、二階建ての施設であり、一階の施設を図1に、二階の施設を図2にそれぞれ示す。なお、図1図2とでは縮尺が異なっている。本発明の愛玩動物用施設は、図示した二階建ての施設に限定されず、平屋であってもよい。
【0011】
図1に示した愛玩動物用施設1の一階は、譲渡用のフロアであり、愛玩動物の種類で区分された領域2及び領域3を備えている。具体的に領域2は犬(主に成犬)の譲渡用の領域、領域3は猫の譲渡用の領域とすることができる。すなわち、本実施形態において種類で区分とは生物分類学的にイヌ科とネコ科のように、科の階級で区分できるものをいう。
【0012】
また、図2に示した二階は、繁殖及び繁殖で生まれた子犬の譲渡用のフロアであり、愛玩動物の育成度で区分された領域4及び領域5を備えている。具体的に領域4は繁殖で生まれた子犬の領域、領域5は繁殖のための成犬の領域とすることができる。すなわち、本実施形態において育成度で区分とは、成犬と子犬のように年齢で区分できるものをいう。
【0013】
犬の譲渡用の領域2及び猫の譲渡用の領域3を備えることにより、犬及び猫の譲渡を行うことができ、単一の種類の繁殖や譲渡を行う場合に比べて、愛玩動物のバリエーションが増えるので、施設の集客力を高めることができる。また、領域5で飼育されていた繁殖用の成犬を繁殖引退後に領域2で譲渡することができるため、繁殖施設から譲渡施設へ移動させる際に生じるコストの低減や犬のストレスを緩和することができる。
【0014】
[犬の譲渡用の領域]
以下、愛玩動物用施設1の各領域を個別に説明する。図1に示すように、犬の譲渡用の領域2は、愛玩動物用施設1の一階において、飼育舎としての犬舎21を複数個で備えている。個々の犬舎21に、譲渡用の犬、例えば二階で繁殖用に飼育されていた成犬が、繁殖引退後に収容される。この犬舎21は、譲受希望者が犬を観察しやすいような構造を有していることが好ましい。具体的には、犬舎21を区画形成する四方の壁のうち、譲受希望者が対面可能な前面21aは、犬舎21内の犬を十分に観察可能とする範囲がガラスやアクリル等の透明な材料からなり、譲受希望者と犬とを隔てている。したがって、譲受希望者は透明な壁越しに犬舎21内の犬を直接確認することができ、また、譲受希望者が直接に犬に触れないようにしているので犬が受けることのあるストレスやウイルス感染を予防することができる。
【0015】
犬の譲渡用の領域2内で犬舎21に隣接して、犬ふれあい室22が設けられている。譲受希望者が希望すれば、この犬ふれあい室22にて犬舎21に収容された犬のなかから、譲受を希望する犬と触れ合うことができる。この犬ふれあい室22は、当該犬ふれあい室22を区画形成する四方の壁のうち譲渡スペース23に対向する一面22aの少なくとも一部分が、ガラスやアクリル等の透明な材料からなり、次に述べる譲渡スペース23にいる他の譲受希望者が、犬ふれあい室22における犬と譲受希望者とがふれあう状況を見ることができるようになっている。
【0016】
犬の譲渡用の領域2における譲渡スペース23は、犬舎21の前面21aと対向する部分及び犬ふれあい室22に対向する部分を含む。譲渡スペース23には、譲受希望者用の出入口23aを備えていて、愛玩動物用施設1に来訪してきた犬又は猫の譲受希望者が、ピロティ11から出入口23aを通して出入りできるようになっている。譲渡スペース23は犬の譲渡用の領域2内で譲受希望者が、犬舎21に収容された犬や犬ふれあい室22でふれあう犬を観察したり、愛玩動物用施設1における犬の譲渡の担当者から対面で飼育方法や生年月日などの必要な情報の説明を受けたりする場所である。また、譲渡スペース23に椅子、テーブル、ソファ等を配置すれば譲受希望者が犬舎21や犬ふれあい室22の犬を見ながら休憩したり、譲渡における事務的な手続きを行ったりすることも可能である。
【0017】
犬の譲渡用の領域2内で犬舎21の背後に、犬シェルター24を備えている。犬シェルター24は、図示しないケージが設けられ、保護犬を保護し、飼育する場所である。保護、飼育された犬は適宜、譲受希望者への譲渡のために犬舎21に移動される。犬シェルター24は、外部との出入口24a及び犬舎21との出入口24bを備え、犬及び愛玩動物用施設1の従業者は、この出入口24a及び出入口24bを通して犬シェルター24及び犬舎21に移動するようにしている。したがって、犬の出入りの動線と、譲受希望者の譲渡スペース23の出入口23aを通した動線とが、分離されている。これにより人と犬との相互感染をできるだけ抑制することができる。
【0018】
犬の譲渡用の領域2は犬隔離室25及び犬検疫室26を備えている。保護犬は、何らかの感染症や寄生虫などを有している可能性があることから、愛玩動物用施設1内にいる他の犬猫に感染したり寄生虫が移ったりするのを防止する必要がある。そこで、保護犬を愛玩動物用施設1に受け入れる際は、まず犬隔離室25に収容されて所定の期間が経過するまで他の犬から隔離され、そして犬検疫室26で検疫される。本実施形態の愛玩動物用施設1は、犬隔離室25及び犬検疫室26を、猫の譲渡用の領域3における猫隔離室35及び猫検疫室36とは別個に、独立して設けられている。このことにより、犬と猫との間の感染や寄生虫の移動をより防止することができる。
【0019】
犬の譲渡用の領域2は、運動場27を備えている。運動場27は犬のストレスを軽減するために、所定の時間で運動をさせるための場所であり、犬は犬シェルター24との間に設けられた出入口27aを通して行き来できるようにしている。
図1に示した犬の譲渡用の領域2には、更に、倉庫28及び譲受希望者及び愛玩動物用施設1の従業者共用のトイレ29を有している。
【0020】
[猫の譲渡用の領域]
猫の譲渡用の領域3は、犬の譲渡用の領域2に隣接して設けられている。この猫の譲渡用の領域3は飼育舎としての猫舎31を複数個で備えている。個々の猫舎31に、譲渡する猫が収容される。この猫舎31は、譲受希望者が猫を観察しやすいような構造を有していることが好ましい。具体的には、区画形成する四方の壁のうち、譲受希望者が対面可能な前面31aは、猫舎31内の猫を十分に観察可能とする範囲がガラスやアクリル等の透明な材料からなり、譲受希望者と猫とを隔てている。したがって、譲受希望者は透明な壁越しに猫舎31内の猫を直接確認することができ、また、譲受希望者が直接に猫に触れないようにしているので猫が受けることのあるストレスやウイルス感染を予防することができる。
【0021】
猫の譲渡用の領域3内で猫舎31に隣接して、猫ふれあい室32が設けられている。譲受希望者が希望すれば、この猫ふれあい室32にて猫舎31に収容された猫のなかから、譲受を希望する猫と触れ合うことができる。この猫ふれあい室32は、当該猫ふれあい室32を区画形成する四方の壁のうち譲渡スペース33に対向する一面32aの少なくとも一部分が、ガラスやアクリル等の透明な材料からなり、次に述べる譲渡スペース33にいる他の譲受希望者が、猫ふれあい室32における猫と譲受希望者とがふれあう状況を見ることができるようになっている。
【0022】
猫の譲渡用の領域3における譲渡スペース33は、猫舎31の前面31aと対向する部分及び猫ふれあい室32に対向する部分を含む。譲渡スペース33は猫の譲渡用の領域3内で譲受希望者が、猫舎31に収容された猫や猫ふれあい室32でふれあう猫を観察したり、愛玩動物用施設1における猫の譲渡の担当者から対面で飼育方法や生年月日などの必要な情報の説明を受けたりする場所である。また、譲渡スペース33に椅子、テーブル、ソファ等を配置すれば譲受希望者が猫舎31や猫ふれあい室32の猫を見ながら休憩したり、譲渡における事務的な手続きを行ったりすることも可能である。
【0023】
この譲渡スペース33は、犬の譲渡スペース23と隣接しており、猫の譲渡スペース33と、犬の譲渡スペース23との境界は、高さが低く、好ましくは透明な仕切り板33aで区切られているとともに、この仕切り板33aに開閉可能な扉33bが設けられている。この仕切り板33aにより犬の動線と、猫の動線とが、分離されている。したがって、犬は猫の譲渡用の領域3に日常的に移動、通過する必要がなく、猫は犬の譲渡用の領域3に日常的に移動、通過するがない配置になっている。
【0024】
猫の譲渡スペース33と、犬の譲渡スペース23とが、高さが低く、好ましくは透明な仕切り板33aで区切られていることにより、猫の譲渡スペース33及び犬の譲渡スペース23を、広々として圧迫感がなく見通しがよい空間としている。また、譲受希望者が扉33bを通して猫の譲渡スペース33と犬の譲渡スペース23とを行き来できるようにしている。
【0025】
猫の譲渡用の領域3内で猫舎31の背後に、猫シェルター34を備えている。猫シェルター34は、図示しないケージが設けられ、保護猫を保護し、飼育する場所である。保護、飼育された猫は適宜、譲受希望者への譲渡のために猫舎31に移動される。猫シェルター34は、外部との出入口34a及び猫舎31との出入口34bを備え、猫及び愛玩動物用施設1の従業者は、この出入口34a及び出入口34bを通して猫シェルター34及び猫舎31に移動するようにしている。したがって、猫の出入りの動線と、譲受希望者の譲渡スペース33の扉33bを通した動線とが、分離されている。これにより人と猫との相互感染をできるだけ抑制することができる。
【0026】
猫の譲渡用の領域3は猫隔離室35及び猫検疫室36を備えている。保護猫は、何らかの感染症や寄生虫などを有している可能性があることから、愛玩動物用施設1内にいる他の犬猫に感染したり寄生虫が移ったりするのを防止する必要がある。そこで、保護猫を愛玩動物用施設1に受け入れる際は、まず猫隔離室35に収容されて所定の期間が経過するまで他の猫から隔離され、そして猫検疫室36で検疫される。本実施形態の愛玩動物用施設1は、上述したように猫隔離室35及び猫検疫室36を、犬の譲渡用の領域2における犬隔離室25及び犬検疫室26とは別個に、独立して設けられている。このことにより、犬と猫との間の感染や寄生虫の移動をより防止することができる。
【0027】
猫の譲渡用の領域3は診察処置室37を備えている。この診察処置室37は、病気、ケガの診察やワクチン接種の処置等を行う場所である。診察処置室37は、犬検疫室26と猫検疫室36との間に設けられていて、診察処置室37を犬及び猫で共用するために、内部扉37aが設けられている。犬猫は、この内部扉37aを通して犬検疫室26との間及び猫検疫室36との間で移動可能である。防疫上の観点からは診察処置室を犬用及び猫用でそれぞれ独立させるのが好ましいが、使用頻度が相対的に低く、また診察のための設備は高価であるため、診察処置室37を犬及び猫で共有している。
【0028】
猫の譲渡用の領域3は、犬の譲渡用の領域2に備える運動場27と同様の運動場を備えていないが、猫舎31内に遊具や猫壁を設けるなど、猫舎31は十分な運動ができるような大きさ及び工夫をしている。
図1に示した猫の譲渡用の領域3には、更に、事務室38A、事務室38B及び愛玩動物用施設1の従業者用の洗濯室39を有している。
【0029】
[繁殖で生まれた子犬の領域]
図2に示すように、繁殖で生まれた子犬の領域4は、愛玩動物用施設1の二階において、飼育舎としての子犬舎41を複数個で備えている。個々の子犬舎41は、それぞれ複数のブース41aを備え、繁殖により生まれた子犬が動物愛護管理法で定められた出生後56日を経過後、譲受希望者に迎えられるまでの期間は、このブース41a内で飼育される。譲受希望者に迎えられることがなかった子犬は適宜、後述する成犬舎51に移動されて繁殖に用いられるか、又は一階の犬舎21に移動されて譲渡の対象にすることができる。
【0030】
ブース41a内で飼育され出生後56日を経過後の子犬は、子犬舎41に隣接するホール42で譲受希望者と対面する。また、譲受希望者は、このホール42で愛玩動物用施設1における子犬の譲渡の担当者から対面で飼育方法や生年月日などの必要な情報の説明を受ける。更に、ホール42に椅子、テーブル、ソファ等を配置して譲渡における事務的な手続きを行ったりすることも可能である。譲受希望者が行う子犬の検索やマッチングのために、ホール42内で子犬舎41内の子犬の情報を、子犬の写真を含む紙やカードで提供することができる。また、子犬舎41内の子犬の情報を電子化してコンピュータ上のデータベースに登録し、ホール42に設けた端末でこのデータベースにアクセスして検索することもできる。更に、譲受希望者が行う子犬の検索やマッチングは、ホール42内で行う場合に限られず、電子化された子犬舎41内の子犬の情報が登録されたデータベースに、電気通信回線を通して譲受希望者が利用するパーソナルコンピュータ又はスマートフォンからアクセスして、譲受希望者が子犬の検索やマッチングを行うことも可能である。
【0031】
ホール42は、出入口42aを通して外階段43と接続されている。子犬の譲受希望者は、この外階段43及び出入口42aを通してホール42に出入りする。このため、譲受希望者は、希望する犬、猫、子犬に応じて愛玩動物用施設1の出入口を選択することになる。したがって、子犬の譲受希望者は、一階の犬の譲渡用の領域2及び猫の譲渡用の領域3を利用しようとする譲受希望者とは、愛玩動物用施設1に入る時点で人の動線が分離されている。もっとも、犬の譲受希望者からすれば、犬の譲渡用の領域2が一階であり、子犬の譲渡用の領域4が二階であり、フロアが異なるとはいえ領域が近接しているので、各領域へのアクセスは容易である。
【0032】
また、愛玩動物用施設1は、一階と二階とを結ぶ内階段を有していない。この点で、一階の犬、猫の動線と、二階の子犬及び成犬の動線とは分離されている。したがって、一階の犬、猫は二階の各領域に日常的に移動、通過する必要がなく、二階の子犬、成犬は一階の犬の譲渡用の領域3又は猫の譲渡用の領域4に日常的に移動、通過する必要がない配置になっている。
なお、二階の子犬にワクチンの接種をしたり、血統又は遺伝的疾患の検査のためのDNA検査をしたり、病気やケガの治療をしたりするには、先に説明した一階の犬隔離室25、犬検疫室26及び診察処置室37等を利用することができる。
【0033】
子犬舎41に隣接して運動場44が設けられていて、子犬は子犬舎41から運動場44に出入口44aを通して行き来できるようにしている。運動場44にて子犬は所定時間運動をすることができる。なおこの運動場44は、後述する繁殖のための成犬と運動場を共有している。運動場44の天井には図中に想像線で示された天窓44bを設けることができる。天窓44bが設けられ、この天窓44bには透明な又は透光性のある材料が用いられていることにより、太陽光を運動場44内に導くことができ、太陽光の下で子犬又は成犬を運動させることができる。天窓44bは開閉可能な構造とすることもできる。
【0034】
子犬舎41の背後に、バックヤード45が設けられている。バックヤード45は、給餌のためのフードや子犬の飼育に必要な備品を準備しておく場所である。
図2に示した繁殖で生まれた子犬の領域4には、更に、別のバックヤード46、倉庫47、事務室48及びトイレ49を有している。
【0035】
[繁殖のための成犬の領域]
繁殖のための成犬の領域5は、愛玩動物用施設1の二階において、中央に位置する運動場44を挟んで、前述した子犬舎41とは反対側に飼育舎としての成犬舎51を複数個で備えている。個々の成犬舎51は、それぞれ複数のケージ51aを備え、繁殖前後の成犬及が、このケージ51a内で飼育される。成犬は飼育される期間中、幼齢及び老齢の場合を避け、適切な回数での繁殖を行う。適切な回数での繁殖を終えた成犬は、適宜、一階の犬舎21に移動されて譲渡の対象にすることができる。このように、本実施形態の愛玩動物用施設1は、領域5で飼育されていた繁殖用の成犬を、繁殖引退後に近接して設けられた領域2で譲渡することができるため、繁殖施設から譲渡施設へ移動させる際に生じるコストの低減や犬のストレスを緩和することができる。
【0036】
また、成犬舎51では、生まれてから適切な期間、子犬を親犬、兄弟姉妹犬等とともに飼育することができ、これにより子犬の健全な育成及び社会化を推進することができる。この適切な期間を経過後は、子犬を、前述の繁殖で生まれた子犬の領域4の子犬舎41に移動させて乳離れを図る。このように本実施形態の愛玩動物用施設1は、成犬舎51と子犬舎41とを独立に備えていることにより、子犬の社会化の促進と、乳離れの促進とを両立させることができる。
【0037】
愛玩動物用施設1の二階の運動場44は、前述したように子犬舎41に収容された子犬のための運動場であるばかりでなく、成犬舎51に収容された成犬の運動場でもある。成犬は成犬舎51から運動場44に出入口44aを通して行き来できるようにしている。子犬も成犬も所定時間の運動をさせる必要があるところ、すべての犬が一度に運動できるスペースを確保しようとすると、かなり広い面積が必要になる。そこで、小さなスペースで効率よく運動させるために、子犬舎41の子犬及び成犬舎51の成犬が交互に利用できる運動場44を設けて、共有させている。
【0038】
成犬舎51の背後に、バックヤード52が設けられている。バックヤード52は、給餌のためのフードや成犬の飼育に必要な備品を準備しておく場所である。このバックヤード52は、繁殖で生まれた子犬の領域4におけるバックヤードとは別個に、独立して設けられている。子犬と成犬とでは、給餌のフードや犬の飼育に必要な備品が異なることが多い。仮にバックヤードを共有した場合には、不適切なフードを給餌する等の重大な事故を招くおそれがあるし、備品管理上も成犬用と子犬用とが混在して効率が悪い。成犬舎51用のバックヤード52が子犬舎41用のバックヤード45とは別個に、独立して設けられることにより、給餌フードの間違いを防止でき、また備品管理の効率化が図られる。
【0039】
成犬舎51の側方に、外階段53が設けられていて、前述したバックヤード46に扉46aを通して出入り可能になっている。この外階段53は主に愛玩動物用施設1の従業者が利用する。
【0040】
以上述べた犬の譲渡用の領域2、猫の譲渡用の領域3、繁殖で生まれた子犬の領域4及び繁殖のための成犬の領域5により、本実施形態の愛玩動物用施設1は健全な管理を行うことができる。
なお、図面を用いて本実施形態の愛玩動物用施設1を説明したが、本発明の愛玩動物用施設は、本実施形態のものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、幾多の変形が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 愛玩動物用施設
2 犬の譲渡用の領域
3 猫の譲渡用の領域
4 繁殖で生まれた子犬の領域
5 繁殖のための成犬の領域
21 犬舎
25 犬隔離室
26 犬検疫室
27 運動場
31 猫舎
33a 仕切り板
35 猫隔離室
36 猫検疫室
37 診察処置室
41 子犬舎
51 成犬舎
44 運動場
図1
図2