IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ササクラの特許一覧

<>
  • 特開-被処理液の膜処理方法および装置 図1
  • 特開-被処理液の膜処理方法および装置 図2
  • 特開-被処理液の膜処理方法および装置 図3
  • 特開-被処理液の膜処理方法および装置 図4
  • 特開-被処理液の膜処理方法および装置 図5
  • 特開-被処理液の膜処理方法および装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064069
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】被処理液の膜処理方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/14 20060101AFI20240507BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20240507BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20240507BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240507BHJP
【FI】
B01D61/14 500
C02F1/461 A
B01D65/06
C02F1/44 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172389
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】早水 基頼
【テーマコード(参考)】
4D006
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006KA17
4D006KC03
4D006KC13
4D006KC16
4D006KD24
4D006KE07P
4D006KE22Q
4D006KE23Q
4D006KE24Q
4D006KE25Q
4D006PA01
4D006PB03
4D061DA01
4D061DB07
4D061EA02
4D061EB02
4D061EB04
4D061EB14
4D061FA09
(57)【要約】
【課題】 塩化ナトリウムを含む被処理液の膜処理を効率良く行うことができる被処理液の膜処理装置を提供する。
【解決手段】 精密ろ過膜または限外ろ過膜を備える膜モジュール10と、塩化ナトリウムを含む被処理液を膜モジュール10で膜ろ過することにより生成された膜ろ過水を貯留する貯留槽20と、貯留槽20に貯留された膜ろ過水を電気分解して次亜塩素酸を含む電解水を生成する電解装置30とを備え、電解装置30で生成された電解水を膜モジュール10に供給して膜モジュール10を逆洗することができる被処理液の膜処理装置1である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ナトリウムを含む被処理液を、精密ろ過膜または限外ろ過膜を備える膜モジュールで膜ろ過することにより、膜ろ過水を生成する膜ろ過工程と、
前記膜ろ過水を利用して前記膜モジュールを逆洗する逆洗工程とを備え、
前記逆洗工程は、前記膜ろ過水を電解装置で電気分解して次亜塩素酸を含む電解水を生成し、前記電解水を前記膜モジュールに供給する工程を備える被処理液の膜処理方法。
【請求項2】
前記逆洗工程は、前記電解水に外部から次亜塩素酸を注入して次亜塩素酸の濃度調整を行う工程を備える請求項1に記載の被処理液の膜処理方法。
【請求項3】
前記逆洗工程は、前記電解水を前記電解装置により再度電気分解して次亜塩素酸の濃度を上昇させた後、前記膜モジュールに供給する工程を備える請求項1または2に記載の被処理液の膜処理方法。
【請求項4】
精密ろ過膜または限外ろ過膜を備える膜モジュールと、
塩化ナトリウムを含む被処理液を前記膜モジュールで膜ろ過することにより生成された膜ろ過水を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽に貯留された膜ろ過水を電気分解して次亜塩素酸を含む電解水を生成する電解装置とを備え、
前記電解装置で生成された電解水を前記膜モジュールに供給して前記膜モジュールを逆洗することができる被処理液の膜処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理液の膜処理方法および装置に関し、より詳しくは、塩化ナトリウムを含む被処理液の膜処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海水等の淡水化や浄化を行うための前処理として、精密ろ過膜(MF膜)や限外ろ過膜(UF膜)を用いた膜処理により濁質や細菌等を除去することが従来から行われている。このような前処理においては、濁質等の付着による膜閉塞を抑制するため、膜の通水方向と逆方向に逆洗水を供給して定期的に逆洗を行う必要がある。例えば、特許文献1には、MF膜やUF膜等のろ過膜モジュールの膜ろ過水に次亜塩素酸ナトリウムを添加し、フィルターを通過させて、ろ過膜モジュールの逆洗水として利用する水処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-135936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
膜面を殺菌する目的で、上記のように逆洗水に次亜塩素酸ナトリウムを添加することは、一般に行われている。ところが、次亜塩素酸ナトリウムは不安定で分解し易い性質を有しており、薬液槽等に貯留している間に特性が変化するおそれがあるため、予め用意した次亜塩素酸ナトリウムを逆洗水に注入する場合には、次亜塩素酸ナトリウムの保管や濃度管理等が煩雑になり易いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、塩化ナトリウムを含む被処理液の膜処理を効率良く行うことができる被処理液の膜処理方法および装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、塩化ナトリウムを含む被処理液を、精密ろ過膜または限外ろ過膜を備える膜モジュールで膜ろ過することにより、膜ろ過水を生成する膜ろ過工程と、前記膜ろ過水を利用して前記膜モジュールを逆洗する逆洗工程とを備え、前記逆洗工程は、前記膜ろ過水を電解装置で電気分解して次亜塩素酸を含む電解水を生成し、前記電解水を前記膜モジュールに供給する工程を備える被処理液の膜処理方法により達成される。
【0007】
この被処理液の膜処理方法において、前記逆洗工程は、前記電解水に外部から次亜塩素酸を注入して次亜塩素酸の濃度調整を行う工程を備えることが好ましい。
【0008】
前記逆洗工程は、前記電解水を前記電解装置により再度電気分解して次亜塩素酸の濃度を上昇させた後、前記膜モジュールに供給する工程を備えることが好ましい。
【0009】
また、本発明の前記目的は、精密ろ過膜または限外ろ過膜を備える膜モジュールと、塩化ナトリウムを含む被処理液を前記膜モジュールで膜ろ過することにより生成された膜ろ過水を貯留する貯留槽と、前記貯留槽に貯留された膜ろ過水を電気分解して次亜塩素酸を含む電解水を生成する電解装置とを備え、前記電解装置で生成された電解水を前記膜モジュールに供給して前記膜モジュールを逆洗することができる被処理液の膜処理装置により達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の被処理液の膜処理方法および装置によれば、塩化ナトリウムを含む被処理液の膜処理を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る被処理液の膜処理方法を説明するためのフローチャートである。
図3】本発明の他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
図4】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
図5】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
図6】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る被処理液の膜処理装置(以下、単に「膜処理装置」という)の概略構成図である。図1に示すように、膜処理装置1は、膜モジュール10、貯留槽20および電解装置30を、主な構成要素として備えている。
【0013】
膜モジュール10は、精密ろ過膜(MF膜)または限外ろ過膜(UF膜)からなるろ過膜11を備えており、供給ライン2からろ過膜11の一次側12に被処理液を供給することができる。膜モジュール10に供給される被処理液は、海水を好ましく例示することができるが、塩化ナトリウムを含有する液体であればよく、必ずしも海水には限定されない。供給ライン2には、給水ポンプ41および開閉弁51が設けられている。
【0014】
また、膜モジュール10は、ろ過膜11の一次側12に大気ライン3および排水ライン6が接続され、ろ過膜11の二次側13に回収ライン4が接続されている。大気ライン3は、エアポンプ42および開閉弁52が設けられており、膜モジュール10に大気を供給することができる。回収ライン4および排水ライン6には、開閉弁53,55がそれぞれ設けられている。
【0015】
貯留槽20は、回収ライン4の先端側が接続されており、膜モジュール10で被処理液を膜ろ過することにより生成された膜ろ過水が供給されて、貯留される。
【0016】
電解装置30は、逆洗ライン5により貯留槽20に接続されており、貯留槽20から逆洗ライン5を介して供給された膜ろ過水を電気分解する。膜ろ過水には、被処理液の塩化ナトリウムがイオン化した塩化物イオンが含まれているため、膜ろ過水の電気分解によって、次亜塩素酸を含む電解水が生成される。電解装置30は、電解槽内に一対の電極を備え、電源装置31により一対の電極間に電圧を印加することができる公知の構成であり、例えば、市販の次亜塩素酸生成装置を好適に使用することができる。逆洗ライン5の先端部は、膜モジュール10と開閉弁53との間で回収ライン4に接続されており、回収ライン4の一部を介して、ろ過膜11の二次側13に電解水を供給することができる。逆洗ライン5における電解装置30の上流側および下流側には、逆洗ポンプ43および開閉弁54がそれぞれ設けられている。
【0017】
回収ライン4には、膜モジュール10と開閉弁53との間から分岐する分岐ライン7が接続されている。分岐ライン7の先端部は、開閉弁55の下流側で排水ライン6に接続されている。分岐ライン7には、開閉弁56が設けられている。
【0018】
次に、上記の構成を備える膜処理装置1を用いた被処理液の膜処理方法を、図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、図1に示す膜処理装置1の開閉弁51,53を開く一方、他の開閉弁52,54,55,56を閉じた状態で、塩化ナトリウムを含む被処理液を給水ポンプ41の作動により膜モジュール10の一次側12に供給して、泥や砂等の濁質、ウイルス類、細菌類等が除去された膜ろ過水を生成する膜ろ過工程S1を行う。膜ろ過工程S1により生成された膜ろ過水は、回収ライン4を経て貯留槽20に貯留され、前処理が行われた被処理液として各種用途に利用することができる。例えば、被処理液が海水の場合には、貯留槽20内の膜ろ過水を、海水淡水化装置に供給してRO膜やNF膜に通水することができ、あるいは、養殖用の生け簀等に供給して使用することができる。
【0019】
膜ろ過工程S1を継続して行うことで膜モジュール10のろ過膜11に付着物が堆積して膜洗浄が必要になったことを、一定時間の経過または膜モジュール10内の圧力上昇等により検出すると、給水ポンプ41を停止して開閉弁51,53を閉じる一方、開閉弁54,55を開き、電解装置30および逆洗ポンプ43を作動させることにより、貯留槽20内の膜ろ過水を利用して膜モジュール10を逆洗する逆洗工程S2を行う。逆洗工程S2においては、膜ろ過水を電解装置30で電気分解することにより、次亜塩素酸を含む電解水が生成される。生成された電解水は、膜モジュール10の二次側13に供給されて、ろ過膜11を二次側13から一次側12に向けて通過することにより、ろ過膜11の逆洗が行われる。膜モジュール10を洗浄した電解水は、排水ライン6から外部に排水される。
【0020】
上記の逆洗工程S2においては、更に開閉弁52を開くと共にエアポンプ42を作動させて、膜モジュール10内に電解水と共に大気を導入してもよい。これにより、ろ過膜11を気泡によって振動させることができるので、ろ過膜11の逆洗効果をより高めることができる。
【0021】
このように、本実施形態の膜処理装置1は、膜ろ過工程S1により不純物等が除去される一方で塩化物イオンが残留する膜ろ過水を、逆洗工程S2において電気分解することにより、次亜塩素酸を含む電解水をオンサイトで生成して逆洗水として利用することができるため、膜モジュール10の洗浄効果および殺菌効果を容易に高めることができる。これにより、膜モジュール10による被処理液の膜処理を効率良く行うことができる。
【0022】
逆洗工程S2を行った後は、電解装置30および逆洗ポンプ43を停止して、開閉弁54,55を閉じることにより、所望のタイミングで運転を再開して膜ろ過工程S1を再び行うことができる。逆洗工程S2を経た膜モジュール10や回収ライン4の内部には、逆洗工程S2で使用した電解水に含まれる次亜塩素酸等が残留するおそれがあるため、運転再開時においては、この残留成分を除去するためのリンシング工程S3を行うことが好ましい。リンシング工程S3は、開閉弁51,56を開き、給水ポンプ41を作動させることにより、膜モジュール10および回収ライン4内の残留成分を被処理液で洗い流して行うことができる。残留成分を洗い流した被処理液は、分岐ライン7の先端からフラッシング水あるいはオーバーフロー水として排出される。回収ライン4からの分岐ライン7の分岐部は、本実施形態では逆洗ライン5との合流部と膜モジュール10との間に設けているが、逆洗ライン5との合流部と開閉弁53との間に設けてもよい。逆洗工程S2の後に運転を再開しない場合には、装置停止措置(例えば、ドレン、水洗い、保存処理等)を行う。
【0023】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されるものではなく、後述するように種々の変形が可能である。以下の各実施形態の説明で使用する図面において、図1と同様の構成部分に同一の符号を付して、繰り返しの説明を省略する。
【0024】
図3は、本発明の他の実施形態に係る膜処理装置の概略構成図である。図3に示す膜処理装置101は、図1に示す膜処理装置1において、逆洗ライン5における電解装置30の下流側(電解装置30と開閉弁54との間)に次亜塩素酸を注入する注入ライン8を設けたものであり、その他の構成は、図1に示す膜処理装置1と同様である。注入ライン8は、次亜塩素酸供給源60に接続されており、注入ポンプ44の作動により、逆洗ライン5に対して外部から次亜塩素酸を注入することができる。次亜塩素酸供給源60は、例えば、次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩溶液を貯留したタンクを使用することができるが、塩素ガスを水中に溶解させた塩素水を注入可能な設備等であってもよい。
【0025】
図3に示す膜処理装置101を用いた被処理液の膜処理方法によれば、逆洗工程において電解装置30で生成される電解水の次亜塩素酸濃度が低い場合に、注入ライン8から必要な量の次亜塩素酸を補充することで、所望の次亜塩素酸濃度に調整された電解水を膜モジュール10に供給することができるので、膜モジュール10の逆洗を、より効果的に行うことができる。
【0026】
図4は、本発明の更に他の実施形態に係る膜処理装置の概略構成図である。図4に示す膜処理装置201は、図1に示す膜処理装置1において、逆洗ライン5における電解装置30の下流側(電解装置30と開閉弁54との間)に三方弁57を介して循環ライン9を設け、電解装置30で生成された電解水を、循環ライン9により、逆洗ライン5における電解装置30の上流側(逆洗ポンプ43と貯留槽20との間)に戻すことができるように構成したものであり、その他の構成は、図1に示す膜処理装置1と同様である。
【0027】
図4に示す膜処理装置201を用いた被処理液の膜処理方法によれば、逆洗工程において電解装置30で生成される電解水の次亜塩素酸濃度が低い場合に、開閉弁54を閉じて、電解水が循環ライン9に循環するように三方弁57の流路を制御することで、電解水を電解装置30により再度電気分解して、次亜塩素酸の濃度を上昇させることができる。こうして、電解水を循環ライン9に適宜の回数で循環させた後、開閉弁54を開くと共に、三方弁57の流路を膜モジュール10に向けて切り替えることにより、所望の次亜塩素酸濃度に調整された電解水を膜モジュール10に供給することができるので、膜モジュール10の逆洗を、より効果的に行うことができる。
【0028】
図4に示す膜処理装置201は、逆洗ポンプ43の下流側に電解装置30を設けることで、膜ろ過液または循環中の電解水が電解装置30に確実に供給される構成にしているが、図5に示す膜処理装置301のように、逆洗ポンプ43の上流側に電解装置30を設けてもよい。この構成によれば、開閉弁54や三方弁57の故障等により逆洗ポンプ43の下流側が高圧になるおそれがある場合に、電解装置30を確実に保護することができる。
【0029】
図6に示す膜処理装置401は、図3に示す膜処理装置101に追加された構成、および、図4に示す膜処理装置201に追加された構成の双方を備えるものである。図6に示す膜処理装置401によれば、逆洗工程において、電解水に注入ライン8から次亜塩素酸を注入して次亜塩素酸の濃度を上昇させる工程、および、電解水を循環させて電解装置30により再度電気分解して次亜塩素酸の濃度を上昇させる工程の、一方または双方を適宜選択して行うことができる。
【符号の説明】
【0030】
1 膜処理装置
10 膜モジュール
20 貯留槽
30 電解装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6