(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064072
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】高周波回路、および、レーダ装置
(51)【国際特許分類】
H01P 1/04 20060101AFI20240507BHJP
H01P 3/08 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H01P1/04
H01P3/08 102
H01P3/08 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172395
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 武紘
【テーマコード(参考)】
5J011
5J014
【Fターム(参考)】
5J011DA12
5J014CA08
5J014CA42
(57)【要約】
【課題】マイクロストリップ線路とサスペンデッド線路との接続部における損失を低減する。
【解決手段】
高周波回路10は、マイクロストリップ線路MSL、サスペンデッド線路SML、および、接続部MTPを備える。マイクロストリップ線路MSLは、対向する第1面201と第2面202とを有する誘電体基板20と、第1面201に配置された信号導体31と、第2面202に配置されたグランド導体41とを備える。サスペンデッド線路SMLは、誘電体基板20と、第1面201に配置された信号導体32と、第2面202から空隙部50を介して配置された金属筐体82とを備える。接続部MTPは、誘電体基板20と、信号導体31と信号導体32とを接続する信号導体300と、第2面202から下部空隙部53を介して配置された金属筐体82とを備える。下部空隙部53の高さH53は、第1端から第2端に向かって徐々に高くなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1面と第2面とを有する誘電体基板と、前記第1面に配置された第1信号導体と、前記第2面に配置されたグランド導体とを備えるマイクロストリップ線路と、
前記誘電体基板と、前記第1面に配置された第2信号導体と、前記第2面から第1空隙部を介して配置された金属層とを備えるサスペンデッド線路と、
前記誘電体基板と、前記第1信号導体と前記第2信号導体に接続する接続導体と、前記第2面から第2空隙部を介して配置された前記金属層とを備える接続部と、
を備え、
前記第1信号導体の幅は、前記第2信号導体の幅よりも狭く、
前記接続導体の幅は、前記接続導体が前記第1信号導体に接続する第1端から前記接続導体が前記第2信号導体に接続する第2端に向かって広くなり、
前記第2空隙部での前記誘電体基板と前記金属層との距離は、前記第1端から前記第2端に向かって徐々に大きくなる、
高周波回路。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波回路であって、
前記接続導体の幅は連続的に変化し、前記第1端において前記第1信号導体の幅であり、前記第2端において前記第2信号導体の幅である、
高周波回路。
【請求項3】
請求項1に記載の高周波回路であって、
前記接続導体の幅は徐々に離散的に変化し、前記第1端において前記第1信号導体の幅であり、前記第2端において前記第2信号導体の幅である、
高周波回路。
【請求項4】
請求項1に記載の高周波回路であって、
前記第2空隙部での前記誘電体基板と前記金属層の距離は連続的に変化し、前記第2端において前記第1空隙部での前記誘電体基板と前記金属層の距離である、
高周波回路。
【請求項5】
請求項1に記載の高周波回路であって、
前記第2空隙部での前記誘電体基板と前記金属層の距離は離散的に変化し、前記第2端において前記第1空隙部での前記誘電体基板と前記金属層との距離である、
高周波回路。
【請求項6】
請求項1に記載の高周波回路であって、
前記金属層は、前記マイクロストリップ線路と前記サスペンデッド線路を囲む金属筐体である、
高周波回路。
【請求項7】
請求項1に記載の高周波回路であって、
前記金属層は、絶縁体に形成された金属膜である、
高周波回路。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の高周波回路と、
前記高周波回路の前記マイクロストリップ線路に実装されたレーダ用の高周波素子と、
を備える、レーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロストリップ線路とサスペンデッド線路とが接続された伝送線路を備えた高周波回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マイクロストリップ線路とサスペンデッド線路とを接続した伝送線路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すような従来の構成では、マイクロストリップ線路とサスペンデッド線路との接続部において損失が大きかった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、マイクロストリップ線路とサスペンデッド線路との接続部における損失を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) この発明の高周波回路は、マイクロストリップ線路、サスペンデッド線路、および、接続部を備える。マイクロストリップ線路は、互いに対向する第1面と第2面とを有する誘電体基板と、第1面に配置された第1信号導体と、第2面に配置されたグランド導体とを備える。サスペンデッド線路は、誘電体基板と、第1面に配置された第2信号導体と、第2面から第1空隙部を介して配置された金属層とを備える。接続部は、誘電体基板と、第1信号導体と第2信号導体とを接続する接続導体と、第2面から第2空隙部を介して配置された金属層とを備える。
【0007】
第1信号導体の幅は、第2信号導体の幅よりも狭い。接続導体の幅は、接続導体が第1信号導体に接続する第1端から接続導体が第2信号導体に接続する第2端に向かって広くなる。第2空隙部での誘電体基板と金属層の距離は、第1端から第2端に向かって徐々に大きくなる。
【0008】
この構成では、マイクロストリップ線路からサスペンデッド線路に向かって、または、サスペンデッド線路からマイクロストリップ線路に向かって、伝送モードが徐々に変化する。これにより、マイクロストリップ線路とサスペンデッド線路との間での伝送損失は低減される。
【0009】
(2) この発明の高周波回路は、(1)の高周波回路であって、接続導体の幅は連続的に変化し、第1端において第1信号導体の幅であり、第2端において第2信号導体の幅である。
【0010】
この構成では、伝送損失をさらに抑制できる。
【0011】
(3) この発明の高周波回路は、(1)の高周波回路であって、接続導体の幅は徐々に離散的に変化し、第1端において第1信号導体の幅であり、第2端において第2信号導体の幅である。
【0012】
この構成では、所定の伝送損失を実現しながら、製造がより容易になる。
【0013】
(4) この発明の高周波回路は、(1)乃至(3)のいずれかの高周波回路であって、第2空隙部での誘電体基板と金属層の距離は連続的に変化し、第2端において前記第1空隙部での誘電体基板と金属層の距離である。
【0014】
この構成では、伝送損失をさらに抑制できる。
【0015】
(5) この発明の高周波回路は、(1)乃至(3)のいずれかの高周波回路であって、第2空隙部での誘電体基板と金属層の距離は離散的に変化し、第2端において第1空隙部での誘電体基板と金属層の距離である。
【0016】
この構成では、所定の伝送損失を実現しながら、製造がより容易になる。
【0017】
(6) この発明の高周波回路は、(1)乃至(5)のいずれかの高周波回路であって、金属層は、マイクロストリップ線路とサスペンデッド線路を囲む金属筐体である。
【0018】
この構成では、高周波回路を囲み電磁的にシールドする金属筐体を、サスペンデッド線路と接続部とに利用できる。
【0019】
(7) この発明の高周波回路は、(1)乃至(5)のいずれかの高周波回路であって、金属層は、絶縁体に形成された金属膜である。
【0020】
この構成では、金属筐体とは別にサスペンデッド線路と接続部の形状を実現でき、サスペンデッド線路と接続部の設計自由度が向上する。
【0021】
(8) この発明のレーダ装置は、(1)乃至(5)のいずれかの高周波回路と、高周波回路のマイクロストリップ線路に実装されたレーダ用の高周波素子と、を備える。
【0022】
この構成では、低損失なレーダ装置を実現できる。特に、安価な誘電体基板を用いながら、低損失なレーダ装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1(A)は、本発明の第1の実施形態に係る高周波回路の一部を示す平面図であり、
図1(B)は、本発明の第1の実施形態に係る高周波回路の一部を示す側面断面図である。
【
図2】
図2(A)、
図2(B)は、本発明の第1の実施形態に係る高周波回路の断面図である。
【
図3】
図3(A)は、本願発明の高周波回路の電界分布を模式的に示した側面断面図であり、
図3(B)は、比較構成の高周波回路の電界分布を模式的に示した側面断面図である。
【
図4】
図4(A)は、本願発明の高周波回路と比較構成の高周波回路とのS11特性を示すグラフであり、
図4(B)は、本願発明の高周波回路と比較構成の高周波回路とのS21特性を示すグラフである。
【
図5】
図5(A)は、レーダ装置の一部を示す平面図であり、
図5(B)は、レーダ装置の一部を示す側面断面図である。
【
図6】
図6(A)は、本発明の第2の実施形態に係る高周波回路の一部を示す平面図であり、
図6(B)は、本発明の第2の実施形態に係る高周波回路の一部を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る高周波回路について、図を参照して説明する。
図1(A)は、本発明の第1の実施形態に係る高周波回路の一部を示す平面図であり、
図1(B)は、本発明の第1の実施形態に係る高周波回路の一部を示す側面断面図である。
図1(B)は、高周波信号の伝送方向に平行な面の断面図である。
図2(A)、
図2(B)は、本発明の第1の実施形態に係る高周波回路の断面図である。
図2(A)、
図2(B)は、高周波信号の伝送方向に直交する面の断面図である。
図2(A)は、マイクロストリップ線路の部分の断面図であり、
図2(B)は、サスペンデッド線路の部分での断面図である。
【0025】
図1(A)、
図1(B)、
図2(A)、
図2(B)に示すように、高周波回路10は、誘電体基板20、信号導体31、信号導体32、信号導体300(接続導体)、グランド導体41、金属筐体81、および、金属筐体82を備える。
【0026】
誘電体基板20は、所定の誘電率を有する基板である。誘電体基板20は、例えば、ガラスエポキシ樹脂を用いたFR-4等の基板である。誘電体基板20は、互いに対向する第1面201と第2面202とを有し、厚みが一定の平板である。
【0027】
信号導体31、信号導体32、および、信号導体300は、誘電体基板20の第1面201に配置される。信号導体31と信号導体32とは、信号導体300を通じて接続される。
【0028】
信号導体31は、幅W31を有する線状(帯状)の平膜導体である。信号導体32は、幅W32を有する線状(帯状)の平膜導体である。信号導体31の幅W31は、信号導体32の幅W32よりも狭い。言い換えれば、信号導体32の幅W32は、信号導体31の幅W31よりも広い。
【0029】
信号導体300は、信号導体31に接続する第1端と、信号導体32に接続する第2端とを有する。信号導体300は、第1端と第2端との間において幅が変化する線状(帯状)平膜導体である。信号導体300は、第1端から第2端に向かって幅が広くなる形状であり、さらには、幅が徐々に広くなる形状であってもよい。
【0030】
この際、信号導体300の幅は、連続的に広くなる。言い換えれば、信号導体300は、第1端と第2端との間において幅が離散的に変化する箇所を有さない。
【0031】
信号導体300の第1端での幅は、信号導体31の幅W31と同じである。信号導体300の第2端での幅は、信号導体32の幅W32と同じである。
【0032】
グランド導体41は、誘電体基板20の第2面202に配置される。グランド導体41は、平膜導体である。グランド導体41は、平面視して(図のz軸方向に視て)、信号導体31に重なり、信号導体300および信号導体32に重ならない。
【0033】
グランド導体41の幅は、信号導体31の幅W31よりも広い。具体的には、グランド導体41の幅は、後述するマイクロストリップ線路MSLの電界形成および伝送特性に、高周波回路10として殆ど悪影響を与えない程度に広い。
【0034】
金属筐体81は、誘電体基板20の第1面201側に、上部空隙部800を介して配置される。上部空隙部800の高さは、信号導体31、信号導体32、および、信号導体300と、金属筐体81とが殆ど電磁界結合しない程度の高さである。
【0035】
金属筐体82は、誘電体基板20の第2面202側に配置される。金属筐体82は、信号導体31、信号導体300、信号導体32が接続される方向(図のx軸方向)において、平面視して信号導体31に重なる第1部分と、信号導体32に重なる第2部分と、信号導体300に重なる第3部分とを有する。
【0036】
第1部分の高さは、第2部分の高さよりも高い。第3部分の高さは、第1部分に接続する端部から第2部分に接続する端部に向かって徐々に低くなる。この際、第3部分の高さは、連続的に低くなる。言い換えれば、第3部分は、第1部分に接続する端部と第2部分に接続する端部との間において高さ幅が離散的に変化する箇所を有さない。
【0037】
金属筐体82は、第1部分の主面821がグランド導体41に当接するように配置される。これにより、金属筐体82の第2部分の主面822と誘電体基板20の第2面202との間に下部空隙部50が形成される。金属筐体82の第3部分の主面823と誘電体基板20の第2面202との間に下部空隙部53が形成される。下部空隙部50と下部空隙部53とは連通する。なお、マイクロストリップ線路において、金属筐体82がグランド導体41の役割を担ってもよい。
【0038】
下部空隙部50の高さH50(主面822と第2面202との高さ方向(z軸方向)の距離)は、一定である。下部空隙部50の幅は、信号導体32の幅よりも広く、後述するサスペンデッド線路SMLの電界形成および伝送特性に、高周波回路10として殆ど悪影響を与えない程度に広い。
【0039】
下部空隙部53の高さH53(主面823と第2面202との高さ方向(z軸方向)の距離)は、金属筐体82が上述の形状であるので、信号導体31側の端部から信号導体32側の端部に向かって、徐々に高くなる。この際、高さH53は、連続的に高くなる。下部空隙部53の高さH53は、下部空隙部50に連通する端部において、下部空隙部50の高さH50と同じである。
【0040】
下部空隙部53の幅は、信号導体31側の端部から信号導体32側の端部に向かって、徐々に広くなる。下部空隙部53の幅は、下部空隙部50に連通する端部において、下部空隙部50の幅と同じである。
【0041】
このような構成によって、高周波回路10は、マイクロストリップ線路MSL、サスペンデッド線路SML、および、接続部MTPを備える。
【0042】
マイクロストリップ線路MSLは、信号導体31、誘電体基板20、グランド導体41によって形成される。
【0043】
サスペンデッド線路SMLは、信号導体32、誘電体基板20、下部空隙部50、金属筐体82によって形成される。
【0044】
接続部MTPは、信号導体300、誘電体基板20、下部空隙部53、金属筐体82によって形成される。
【0045】
そして、この構成では、マイクロストリップ線路MSLの信号導体31の幅W31は、サスペンデッド線路SMLの信号導体32の幅W32よりも狭い。これにより、高周波回路10は、信号導体32と金属筐体82との間に下部空隙部50(空気層)を備えるサスペンデッド線路SMLの特性インピーダンスと、マイクロストリップ線路MSLの特性インピーダンスとを同じにできる。
【0046】
また、高周波回路10は、サスペンデッド線路SMLを用いることで、マイクロストリップ線路MSLのみを用いるよりも、伝送損失を低減できる。特に、高周波信号の周波数が高い場合、FR-4等の汎用で安価な誘電体基板20を用いると、損失がより大きくなるが、高周波回路10は、サスペンデッド線路SMLを用いることによって、伝送損失を効果的に低減できる。
【0047】
この際、下部空隙部50の高さH50は、誘電体基板20の厚みよりも大きいことが好ましい。これにより、高周波回路10は、サスペンデッド線路SMLでの伝送損失をさらに抑制できる。
【0048】
そして、高周波回路10では、接続部MTPの信号導体300の幅は、マイクロストリップ線路MSL側の第1端からサスペンデッド線路SML側の第2端に向かって、徐々に広くなる。これにより、接続部MTPにおいて、電界分布および伝送モードが急激に変化せず、徐々に変化する。したがって、高周波回路10は、マイクロストリップ線路MSLとサスペンデッド線路SMLとの間の接続損失を抑制できる。
【0049】
さらに、高周波回路10では、接続部MTPの下部空隙部53の高さH53は、マイクロストリップ線路MSL側の第1端からサスペンデッド線路SML側の第2端に向かって、徐々に高くなる。これにより、接続部MTPにおいて、電界分布および伝送モードが急激に変化せず、徐々に変化する。したがって、高周波回路10は、接続部MTPでの損失を抑制できる。
【0050】
さらに、高周波回路10では、接続部MTPの下部空隙部53の幅は、マイクロストリップ線路MSL側の第1端からサスペンデッド線路SML側の第2端に向かって、徐々に広くなる。これにより、接続部MTPにおいて、電界分布および伝送モードが急激に変化せず、徐々に変化する。したがって、高周波回路10は、接続部MTPでの損失を抑制できる。なお、接続部MTPの下部空隙部53の幅は、サスペンデッド線路の信号導体32の幅以上であってもよい。
【0051】
図3(A)は、本願発明の高周波回路の電界分布を模式的に示した側面断面図であり、
図3(B)は、比較構成の高周波回路の電界分布を模式的に示した側面断面図である。
【0052】
図4(A)は、本願発明の高周波回路と比較構成の高周波回路とのS11特性を示すグラフであり、
図4(B)は、本願発明の高周波回路と比較構成の高周波回路とのS21特性を示すグラフである。
【0053】
比較構成は、本願発明の接続部MTPを備えず、マイクロストリップ線路MSLとサスペンデッド線路SMLとを直接接続した構成である。
【0054】
図3(A)、
図3(B)に示すように、本願発明の高周波回路10は、マイクロストリップ線路MSLとサスペンデッド線路SMLとが接続される箇所で、比較構成のような急激な電界分布の変化を抑制できる。
【0055】
これにより、本願発明の高周波回路10は、比較構成よりも優れたS11特性および優れたS21特性を実現し、マイクロストリップ線路MSLとサスペンデッド線路SMLとの接続箇所における損失を低減できる。
【0056】
このような構成の高周波回路10は、例えば、レーダ装置90に適用される。
図5(A)は、レーダ装置の一部を示す平面図であり、
図5(B)は、レーダ装置の一部を示す側面断面図である。
【0057】
図5(A)に示すように、レーダ装置90は、高周波回路10、および、高周波素子91を備える。高周波素子91は、例えば、高出力の増幅器等であり、例えば、レーダの送信回路や受信回路に用いられる素子である。なお、高周波素子91は、これに限らず、コンデンサ等の受動素子も含まれる。
【0058】
高周波素子91は、マイクロストリップ線路MSLにおける信号導体31に接続された端子導体311、312に実装される。また、高周波素子91はグランド端子を備えており、グランド端子は、誘電体基板20の第1面201に形成された端子導体313に実装される。端子導体313は、誘電体基板20に形成されたビア導体を通じてグランド導体41に接続される。
【0059】
このように、レーダ装置90は、グランド端子を備える高周波素子91を、マイクロストリップ線路MSLの箇所で実装する。これにより、レーダ装置90は、グランド端子を備える高周波素子91を高周波回路10に確実に且つ容易に実装できる。
【0060】
また、レーダ装置90は、高周波素子91を実装しない部分では、サスペンデッド線路SMLを用いる。これにより、レーダ装置90は、伝送損失を抑制し、高効率なレーダ装置を実現できる。この際、サスペンデッド線路SMLを用いる部分は、マイクロストリップ線路MSLを用いる部分よりも長いことが好ましい。これにより、レーダ装置90は、伝送損失をさらに抑制し、さらに高効率なレーダ装置を実現できる。
【0061】
なお、本実施形態では、レーダ装置90を例に示したが、電子部品が実装される高周波装置であれば、上述の高周波回路10の構成を採用できる。これにより、高周波装置は、損失を低減でき、高周波装置としての特性を向上できる。
【0062】
なお、図示を省略しているが、金属筐体81と金属筐体82とは、誘電体基板20、信号導体31、信号導体32、信号導体300、グランド導体41を内包するように、誘電体基板20を挟んで固定される。これにより、金属筐体81と金属筐体82とは、後述するマイクロストリップ線路MSL、サスペンデッド線路SML、および、接続部MTPと、金属筐体81および金属筐体82の外部との電磁界結合を抑制できる。
【0063】
また、上述の説明では、金属筐体82を、サスペンデッド線路SMLにおいて信号導体32に結合する金属層、接続部MTPにおいて信号導体300に結合する金属層に用いる態様を示した。しかしながら、例えば、誘電体基板20とは異なる誘電体基板に電極膜(金属膜)を形成し、この電極膜(金属膜)を金属層としてもよい。
【0064】
金属筐体82を金属層とすることで、高周波回路10を簡素な構成で実現できる。一方、誘電体基板を別途設けることで、サスペンデッド線路SMLの下部空隙部50の高さ、接続部MTPの下部空隙部53の高さを、金属筐体82の形状に影響を与えず、設定できる。
【0065】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る高周波回路について、図を参照して説明する。
図6(A)は、本発明の第2の実施形態に係る高周波回路の一部を示す平面図であり、
図6(B)は、本発明の第2の実施形態に係る高周波回路の一部を示す側面断面図である。
【0066】
図6(A)、
図6(B)に示すように、第2の実施形態に係る高周波回路10Aは、第1の実施形態に係る高周波回路10に対して、接続部MTPAを備える点で異なる。高周波回路10Aの他の構成は、高周波回路10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0067】
高周波回路10Aは、接続部MTPAを備える。接続部MTPAは、信号導体300A、金属筐体82Aを備え、下部空隙部53Aを備える。
【0068】
信号導体300Aの幅は、信号導体31へ接続する第1端から信号導体32に接続する第2端に向かって離散的(段階的)に変化する。
【0069】
金属筐体82Aの第3部分の高さは、信号導体31側の端部から信号導体32側の端部に向かって離散的に低くなる。すなわち、下部空隙部53Aの高さH53Aは、下部空隙部50に連通する側に向かって離散的に高くなる。
【0070】
また、下部空隙部53Aの幅は、下部空隙部50に連通する側に向かって離散的に広くなる。
【0071】
このような構成によって、高周波回路10Aは、高周波回路10と同様に、マイクロストリップ線路MSLとサスペンデッド線路SMLとの間の接続損失を抑制できる。
【0072】
なお、上述の各実施形態の構成は、適宜組み合わせることが可能であり、それぞれに組み合わせに応じた作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0073】
10、10A:高周波回路
20:誘電体基板
31、32、300、300A:信号導体
41:グランド導体
50、53、53A:下部空隙部
81、82、82A:金属筐体
90:レーダ装置
91:高周波素子
201:第1面
202:第2面
311、313:端子導体
800:上部空隙部
821、822、823:主面
MSL:マイクロストリップ線路
MTP、MTPA:接続部
SML:サスペンデッド線路