(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064078
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】空中表示装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/042 20060101AFI20240507BHJP
G02B 30/56 20200101ALI20240507BHJP
H04N 13/351 20180101ALI20240507BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G06F3/042 480
G02B30/56
H04N13/351
G09F9/00 313
G09F9/00 337Z
G09F9/00 366A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172407
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(72)【発明者】
【氏名】代工 康宏
【テーマコード(参考)】
2H199
5C061
5G435
【Fターム(参考)】
2H199BA32
2H199BA45
2H199BB08
2H199BB20
2H199BB27
2H199BB29
2H199BB30
2H199BB52
2H199BB59
5C061AA06
5C061AB16
5G435AA00
5G435BB12
5G435CC09
5G435EE21
5G435EE49
5G435FF13
5G435GG03
(57)【要約】
【課題】 空中像に触れたことをより明確に認識させることが可能な空中表示装置を提供する。
【解決手段】 空中表示装置は、画像を表示する表示素子20と、表示素子20からの光を受けるように配置され、表示素子20からの光を、表示素子20と反対側に反射し、空中に空中像を結像する光学素子40と、空中像を含む空間領域に検知領域を形成し、検知領域内の対象物を検知するセンシング素子50と、対象物が空中像の領域に存在する場合に、対象物に光を照射する照明素子61とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示素子と、
前記表示素子からの光を受けるように配置され、前記表示素子からの光を、前記表示素子と反対側に反射し、空中に空中像を結像する光学素子と、
前記空中像を含む空間領域に検知領域を形成し、前記検知領域内の対象物を検知するセンシング素子と、
前記対象物が前記空中像の領域に存在する場合に、前記対象物に光を照射する照明素子と、
を具備する空中表示装置。
【請求項2】
前記照明素子は、前記検知領域の面に沿って並んだ複数の第1発光素子を含む
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項3】
前記複数の第1発光素子のうち前記対象物の位置に対応する1個の発光素子を発光させる判定部をさらに具備する
請求項2に記載の空中表示装置。
【請求項4】
前記照明素子は、前記対象物が前記空中像の領域の端部に存在する場合に、前記対象物に点滅する光を照射する
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項5】
前記対象物が前記空中像の領域に存在する場合に、前記対象物に遠赤外光を照射する温感照明素子をさらに具備する
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項6】
前記温感照明素子は、前記検知領域の面に沿って並んだ複数の第2発光素子を含む
請求項5に記載の空中表示装置。
【請求項7】
前記複数の第2発光素子のうち前記対象物の位置に対応する1個の発光素子を発光させる判定部をさらに具備する
請求項6に記載の空中表示装置。
【請求項8】
前記センシング素子は、前記検知領域に向けて光を発光する発光部と、前記対象物で反射された反射光を受光する受光部とを含む
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項9】
前記光学素子は、平面状の基材と、前記基材の下に設けられ、それぞれが第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向に並んだ複数の光学要素とを含み、
前記複数の光学要素の各々は、前記基材の法線方向に対してそれぞれが傾き、互いに接する入射面及び反射面を有する
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項10】
前記表示素子と前記光学素子との間に配置され、前記表示素子からの光のうち斜め方向の光成分を透過する配向制御素子をさらに具備する
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項11】
前記配向制御素子は、交互に配置された複数の透明部材及び複数の遮光部材を含み、
前記複数の遮光部材は、前記配向制御素子の法線に対して傾いている
請求項10に記載の空中表示装置。
【請求項12】
前記表示素子及び前記光学素子は、互いに平行に配置される
請求項1に記載の空中表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像や動画などを空中像として表示可能な空中表示装置が研究され、新しいヒューマン・マシン・インターフェースとして期待されている。空中表示装置は、例えば、2面コーナーリフレクタがアレイ状に配列された2面コーナーリフレクタアレイを備え、表示素子の表示面から出射される光を反射し、空中に実像を結像する。2面コーナーリフレクタアレイによる表示方法は、収差が無く、面対称位置に実像(空中像)を表示することができる。
【0003】
特許文献1は、透明平板の表面から突出した透明な四角柱を2面コーナーリフレクタとして使用し、複数の四角柱を平面上にアレイ状に配置した光学素子を開示している。また、特許文献2は、第1及び第2光制御パネルの各々を、透明平板の内部に垂直に複数の平面光反射部を並べて形成し、第1及び第2光制御パネルを、互いの平面光反射部が直交するように配置した光学素子を開示している。特許文献1、2の光学素子は、表示素子から出射された光を直交する反射面で2回反射させ、空中像を生成している。
【0004】
空中像として例えば押しボタンを表示した場合、観察者は、機器に接触することなく、押しボタンを操作することが可能である。この時、観察者が押しボタンを押したことをより明確に認識させることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-191404号公報
【特許文献2】特開2011-175297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、空中像に触れたことをより明確に認識させることが可能な空中表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によると、画像を表示する表示素子と、前記表示素子からの光を受けるように配置され、前記表示素子からの光を、前記表示素子と反対側に反射し、空中に空中像を結像する光学素子と、前記空中像を含む空間領域に検知領域を形成し、前記検知領域内の対象物を検知するセンシング素子と、前記対象物が前記空中像の領域に存在する場合に、前記対象物に光を照射する照明素子とを具備する空中表示装置が提供される。
【0008】
本発明の第2態様によると、前記照明素子は、前記検知領域の面に沿って並んだ複数の第1発光素子を含む、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0009】
本発明の第3態様によると、前記複数の第1発光素子のうち前記対象物の位置に対応する1個の発光素子を発光させる判定部をさらに具備する、第2態様に係る空中表示装置が提供される。
【0010】
本発明の第4態様によると、前記照明素子は、前記対象物が前記空中像の領域の端部に存在する場合に、前記対象物に点滅する光を照射する、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0011】
本発明の第5態様によると、前記対象物が前記空中像の領域に存在する場合に、前記対象物に遠赤外光を照射する温感照明素子をさらに具備する、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0012】
本発明の第6態様によると、前記温感照明素子は、前記検知領域の面に沿って並んだ複数の第2発光素子を含む、第5態様に係る空中表示装置が提供される。
【0013】
本発明の第7態様によると、前記複数の第2発光素子のうち前記対象物の位置に対応する1個の発光素子を発光させる判定部をさらに具備する、第6態様に係る空中表示装置が提供される。
【0014】
本発明の第8態様によると、前記センシング素子は、前記検知領域に向けて光を発光する発光部と、前記対象物で反射された反射光を受光する受光部とを含む、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0015】
本発明の第9態様によると、前記光学素子は、平面状の基材と、前記基材の下に設けられ、それぞれが第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向に並んだ複数の光学要素とを含み、前記複数の光学要素の各々は、前記基材の法線方向に対してそれぞれが傾き、互いに接する入射面及び反射面を有する、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0016】
本発明の第10態様によると、前記表示素子と前記光学素子との間に配置され、前記表示素子からの光のうち斜め方向の光成分を透過する配向制御素子をさらに具備する、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0017】
本発明の第11態様によると、前記配向制御素子は、交互に配置された複数の透明部材及び複数の遮光部材を含み、前記複数の遮光部材は、前記配向制御素子の法線に対して傾いている、第10態様に係る空中表示装置が提供される。
【0018】
本発明の第12態様によると、前記表示素子及び前記光学素子は、互いに平行に配置される、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、空中像に触れたことをより明確に認識させることが可能な空中表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る空中表示装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、空中表示装置の一部を抽出した斜視図である。
【
図3】
図3は、空中表示装置の主要部のXZ面における側面図である。
【
図6】
図6は、照明装置に含まれる照明素子の一部領域の側面図である。
【
図9】
図9は、光学素子における光の反射の様子を説明する斜視図である。
【
図10】
図10は、光学素子における光の反射の様子を説明するXZ面の側面図である。
【
図11】
図11は、光学素子における光の反射の様子を説明するYZ面の側面図である。
【
図12】
図12は、光学素子における入射面及び反射面の角度条件を説明する図である。
【
図15】
図15は、空中表示装置における全体動作を説明するフローチャートである。
【
図16】
図16は、本発明の第2実施形態に係る光照射動作を説明する下面図である。
【
図17】
図17は、空中表示装置における全体動作を説明するフローチャートである。
【
図18】
図18は、本発明の第3実施形態に係る空中表示装置の一部を抽出した斜視図である。
【
図21】
図21は、空中表示装置における全体動作を説明するフローチャートである。
【
図22】
図22は、本発明の第4実施形態に係る空中表示装置の斜視図である。
【
図23】
図23は、空中表示装置の一部を抽出した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
[1] 第1実施形態
[1-1] 空中表示装置1の構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る空中表示装置1の斜視図である。
図1において、X方向は、空中表示装置1のある1辺に沿った方向であり、Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、Z方向は、XY面に直交する方向(法線方向ともいう)である。
図2は、空中表示装置1の一部(センシング素子50及び照明装置60)を抽出した斜視図である。
図3は、空中表示装置1の主要部のXZ面における側面図である。
【0023】
空中表示装置1は、画像(動画を含む)を表示する装置である。空中表示装置1は、自身の光出射面の上方の空中に、空中像を表示する。空中表示装置1の光出射面とは、空中像を表示するための複数の部材のうち最上層に配置された部材の上面を意味する。空中像とは、空中に結像する実像である。
【0024】
空中表示装置1は、バックライト10、表示素子20、配向制御素子30、光学素子40、センシング素子50、照明装置60、及び筐体70を備える。バックライト10、表示素子20、配向制御素子30、及び光学素子40は、この順にZ方向に沿って配置され、互いに平行に配置される。バックライト10、表示素子20、配向制御素子30、及び光学素子40は、互いに所望の間隔を空けるようにして、図示せぬ固定部材で所望の位置に固定される。
【0025】
バックライト10は、照明光を発光し、この照明光を表示素子20に向けて出射する。バックライト10は、光源部11、導光板12、及び反射シート13を備える。バックライト10は、例えばサイドライト型のバックライトである。バックライト10は、面光源を構成する。バックライト10は、後述する角度θ1の斜め方向に光強度がピークになるように構成してもよい。
【0026】
光源部11は、導光板12の側面に向き合うように配置される。光源部11は、導光板12の側面に向けて光を発光する。光源部11は、例えば白色LED(Light Emitting Diode)からなる複数の発光素子を含む。導光板12は、光源部11からの照明光を導光し、照明光を自身の上面から出射する。反射シート13は、導光板12の底面から出射した照明光を、再び導光板12に向けて反射する。バックライト10は、導光板12の上面に、光学特性を向上させる部材(プリズムシート、及び拡散シートを含む)を備えていてもよい。
【0027】
表示素子20は、透過型の表示素子である。表示素子20は、例えば液晶表示素子で構成される。表示素子20の駆動モードについては特に限定されず、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、又はホモジニアスモードなどを用いることができる。表示素子20は、バックライト10から出射された照明光を受ける。表示素子20は、バックライト10からの照明光を透過して光変調を行う。そして、表示素子20は、自身の画面に所望の画像を表示する。
【0028】
配向制御素子30は、不要光を低減する機能を有する。不要光とは、空中像を生成するのに寄与しない光成分であり、法線方向に光学素子40を透過する光成分を含む。配向制御素子30は、法線方向に対して角度θ1の斜め方向を中心として所定の角度範囲の光成分を透過するとともに、上記角度範囲以外の光成分を遮光するように構成される。配向制御素子30の面積は、表示素子20の面積とほぼ同じに設定される。配向制御素子30の詳細な構成については後述する。
【0029】
光学素子40は、底面側から入射した光を上面側に反射する。また、光学素子40は、底面側から斜めに入射した入射光を、例えば正面方向(法線方向)に反射する。光学素子40の面積は、表示素子20の面積以上に設定される。光学素子40の詳細な構成については後述する。光学素子40は、空中に空中像2を結像する。空中像2は、光学素子40の素子面に平行であり、2次元の画像である。素子面とは、光学素子40が面内方向に広がる仮想的な平面を言う。素子面は、面内と同じ意味である。その他の素子の素子面についても同様の意味である。光学素子40の正面にいる観察者3は、空中像2を視認することができる。
【0030】
センシング素子50は、空中表示装置1の一側部に配置され、光学素子40の上方かつ空中像2とおおよそ同じレベルに配置される。センシング素子50は、空中表示装置1が生成した空中像2の一部又は全部を含む2次元の空間領域に、検知領域を形成する。センシング素子50は、検知領域に存在する対象物(物体)を検知する。センシング素子50は、検知領域に赤外光を出射し、対象物で反射された反射光を検知する。センシング素子50は、検知領域に向けて赤外光を発光する発光部と、対象物で反射された反射光を検知する受光部(センサ)とを含む。センシング素子50は、例えば、複数の発光素子と複数の受光素子とが交互に一列に並んだラインセンサで構成される。ラインセンサは、赤外光を用いてライン状に空間をスキャンすることが可能であり、複数の発光素子が並んだ方向と光が進む方向とからなる2次元の空間をスキャンすることが可能である。センシング素子50が出射する赤外光の方向は、適宜設定可能である。
【0031】
照明装置60は、センシング素子50の検知領域に存在する対象物に光を照射する機能を有する。照明装置60は、空中表示装置1の4個の側部にそれぞれ配置された4個の照明素子61-1~61-4を備える。照明素子61-1~61-4の各々は、光学素子40の上方かつ空中像2とおおよそ同じレベルに配置される。照明素子61-1~61-4の各々は、検知領域全体に光を照射可能なように構成される。照明素子61-1~61-4の各々は、一方向に延びる基板と、基板に実装された複数の発光素子とを備える。複数の発光素子は、一方向に並ぶ。照明装置60の具体的な構成については後述する。
【0032】
筐体70は、センシング素子50及び照明装置60を収容する。筐体70は、光学素子40の上方に配置される。筐体70は、平面視において四角形を有する。センシング素子50及び照明装置60は、筐体70の内側の面に支持部材(図示せず)を用いて取り付けられる。筐体70は、上部に光学素子40を露出する開口部71を有する。空中像2は、開口部71を通して観察者3に視認される。筐体70は、例えば黒色などの色の付いた樹脂で構成される。
【0033】
[1-1-1] 配向制御素子30の構成
図4Aは、
図1に示した配向制御素子30の平面図である。
図4Bは、
図4AのA-A´線に沿った配向制御素子30の断面図である。
【0034】
基材31は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。基材31は、光を透過する。
【0035】
基材31上には、それぞれがY方向に延び、X方向に並んだ複数の透明部材33が設けられる。また、基材31上には、それぞれがY方向に延び、X方向に並んだ複数の遮光部材34が設けられる。複数の透明部材33と複数の遮光部材34とは、隣接するもの同士が接するようにして交互に配置される。
【0036】
複数の透明部材33及び複数の遮光部材34上には、基材32が設けられる。基材32は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。基材32は、光を透過する。
【0037】
透明部材33は、XZ面において、基材31の法線方向に対して角度θ1の斜め方向に延びる。透明部材33は、XZ面において、側面が角度θ1だけ傾いた平行四辺形である。透明部材33は、光を透過する。
【0038】
遮光部材34は、XZ面において、基材31の法線方向に対して角度θ1の斜め方向に延びる。遮光部材34は、XZ面において、側面が角度θ1だけ傾いた平行四辺形である。遮光部材34は、光を遮光する。遮光部材34の厚みは、透明部材33の厚みより薄く設定される。
【0039】
隣接する2個の遮光部材34は、Z方向において互いの端部が若干重なるように配置される。
【0040】
基材31、32、及び透明部材33としては、ガラス、又は透明な樹脂(アクリル樹脂を含む)が用いられる。遮光部材34としては、例えば、黒色の染料又は顔料が混入された樹脂が用いられる。
【0041】
なお、基材31、32の一方又は両方を省略して、配向制御素子30を構成してもよい。複数の透明部材33と複数の遮光部材34とが交互に配置されていれば、配向制御素子30の機能を実現できる。
【0042】
このように構成された配向制御素子30は、法線方向に対して角度θ1の斜め方向の光強度がピークになるように、表示光を透過することができる。例えば、配向制御素子30は、法線方向に対して30°±30°の範囲以外の光成分を遮光するように構成される。望ましくは、配向制御素子30は、法線方向に対して30°±20°の範囲以外の光成分を遮光するように構成される。
【0043】
なお、変形例として、配向制御素子30は、バックライト10と表示素子20との間に配置してもよい。また、配向制御素子30を省略して、空中表示装置1を構成してもよい。
【0044】
[1-1-2] 光学素子40の構成
図5は、
図1に示した光学素子40の斜視図である。
図5には、光学素子40の一部を拡大した拡大図も図示している。
図5の拡大図は、XZ面における側面図である。
【0045】
光学素子40は、基材41、及び複数の光学要素42を備える。基材41は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。
【0046】
基材41の底面には、複数の光学要素42が設けられる。複数の光学要素42の各々は、三角柱で構成される。光学要素42は、三角柱の3個の側面がXY面と平行になるように配置され、1つの側面が基材41に接する。複数の光学要素42は、それぞれがY方向に延び、X方向に並んで配置される。換言すると、複数の光学要素42は、XZ面において鋸歯状を有する。
【0047】
複数の光学要素42の各々は、入射面43及び反射面44を有する。Y方向から見て、左側の側面が入射面43であり、右側の側面が反射面44である。入射面43は、表示素子20からの光が入射する面である。反射面44は、入射面43に外部から入射した光を、光学要素42の内部で反射する面である。入射面43と反射面44とは、角度θpを有する。
【0048】
基材41及び光学要素42は、透明材料で構成される。光学要素42は、例えば、基材41と同じ透明材料によって基材41と一体的に形成される。基材41と光学要素42とを個別に形成し、透明な接着材を用いて基材41に光学要素42を接着してもよい。基材41及び光学要素42を構成する透明材料としては、ガラス、又は透明な樹脂(アクリル樹脂を含む)が用いられる。
【0049】
このように構成された光学素子40は、入射光を内部で反射して、空中に実像を結像する。また、光学素子40は、素子面の正面の位置に、空中像2を結像する。
【0050】
[1-1-3] 照明装置60の構成
図2に示すように、照明装置60は、4個の照明素子61-1~61-4を備える。
図6は、照明装置60に含まれる照明素子61-1の一部領域の側面図である。照明素子61-2~61-4の構成は、照明素子61-1と同じである。
【0051】
照明素子61-1は、センシング素子50の検知領域に向けて光を照射可能なように配置される。照明素子61-1は、基板62と、複数の発光素子63とを備える。基板62は、一方向に延びるように構成される。基板62は、樹脂などで構成される絶縁基板と、絶縁基板の上面及び/又は内部に設けられた配線層とを備える。
【0052】
複数の発光素子63は、隣接するもの同士が所定の間隔を空けるようにして、基板62が延びる方向に沿って一列に配置される。複数の発光素子63の数及び各々のサイズは、適宜設定可能である。
【0053】
図7は、
図6に示した1個の発光素子63の斜視図である。発光素子63は、基板64、赤色LED(light-emitting diode)65R、緑色LED65G、青色LED65B、リードフレーム66-1、66-2、及び封止樹脂67を備える。
【0054】
基板64は、樹脂などで構成される絶縁基板と、絶縁基板の上面及び/又は内部に設けられた配線層とを備える。基板64は、放熱性に優れた金属ベース基板であってもよい。金属ベース基板は、金属基板、絶縁層、及び配線層が順に積層されて構成される。
【0055】
赤色LED65Rは、赤色光を発光する。緑色LED65Gは、緑色光を発光する。青色LED65Bは、青色光を発光する。赤色LED65R、緑色LED65G、及び青色LED65Bは、基板64に実装され、基板64に含まれる配線層に電気的に接続される。
【0056】
リードフレーム66-1、66-2は、基板62の配線層に電気的に接続される。リードフレーム66-1、66-2には、接地電圧、及び正電圧が印加される。
【0057】
封止樹脂67は、基板64、赤色LED65R、緑色LED65G、及び青色LED65Bを封止する。封止樹脂67は、透明樹脂で構成される。
【0058】
このように構成された照明素子61-1~61-4は、赤色光、緑色光、青色光、及びこれら3色のうち2色の光を混色した混色光を発光することができる。また、照明素子61-1~61-4の各々は、対象物の位置に対応した少なくとも1個の発光素子63を発光させることで、センシング素子50の検知領域の特定の位置に光を照射することができる。
【0059】
[1-1-4] 空中表示装置1のブロック構成
図8は、空中表示装置1のブロック図である。空中表示装置1は、制御部80、記憶部81、入出力インターフェース(入出力IF)82、表示部83、センシング素子50、照明装置60、及び入力部84を備える。制御部80、記憶部81、及び入出力インターフェース82は、バス85を介して互いに接続される。
【0060】
入出力インターフェース82は、表示部83、センシング素子50、照明装置60、及び入力部84に接続される。入出力インターフェース82は、表示部83、センシング素子50、照明装置60、及び入力部84のそれぞれに対して、所定の規格に応じたインターフェース処理を行う。
【0061】
表示部83は、バックライト10、及び表示素子20を備える。表示部83は、画像を表示する。
【0062】
センシング素子50は、発光部51、及び受光部52を備える。発光部51は、検知領域53に向けて赤外光を発光する。受光部52は、対象物で反射された反射光を検知する。
【0063】
制御部80は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサにより構成される。制御部80は、記憶部81に格納されたプログラムを実行することで各種機能を実現する。制御部80は、表示処理部80A、情報処理部80B、検知位置算出部80C、及び光照射判定部80Dを備える。
【0064】
表示処理部80Aは、表示部83(具体的には、バックライト10、及び表示素子20)の動作を制御する。表示処理部80Aは、バックライト10のオン及びオフを制御する。表示処理部80Aは、表示素子20に画像信号を送信し、表示素子20に画像を表示させる。
【0065】
情報処理部80Bは、空中表示装置1が表示する画像を生成する。情報処理部80Bは、記憶部81に格納された画像データを用いることが可能である。情報処理部80Bは、図示せぬ通信機能を用いて外部から画像データを取得してもよい。
【0066】
検知位置算出部80Cは、センシング素子50の動作を制御する。検知位置算出部80Cは、センシング素子50に含まれる発光部51が赤外光を出射するように制御し、所定の空間領域に赤外光からなる検知領域を形成する。検知位置算出部80Cは、センシング素子50に含まれる受光部52から送られる複数の検知信号に基づいて、対象物の位置を算出する。
【0067】
光照射判定部80Dは、検知位置算出部80Cによる算出結果を用いて、対象物が設定領域(空中像2が占める領域)内に存在するか否かを判定する。光照射判定部80Dは、対象物が設定領域内に存在する場合、対象物に光を照射するように、照明装置60を制御する。
【0068】
記憶部81は、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、及びSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置と、RAM(Random Access Memory)、及びレジスタ等の揮発性記憶装置とを含む。記憶部81は、制御部80が実行するプログラムを格納する。記憶部81は、制御部80の制御に必要な各種データを格納する。さらに、記憶部81は、空中表示装置1が表示する画像のデータを格納する。
【0069】
入力部84は、例えばタッチパネルやボタンなどを含み、ユーザが入力した情報を受け付ける。情報処理部80Bは、入力部84が受け付けた情報に基づいて、表示部83に表示する画像を選択することが可能である。
【0070】
[1-2] 空中表示装置1の動作
次に、上記のように構成された空中表示装置1の動作について説明する。
【0071】
[1-2-1] 空中像2の表示動作
まず、空中像2の表示動作について説明する。
【0072】
図3の矢印は、光路を示している。
図3に示すように、表示素子20の任意の点“o”から出射された光は、配向制御素子30に入射する。表示素子20から出射された光のうち角度θ
1の光成分(角度θ
1を中心とした所定の角度範囲の光成分を含む)は、配向制御素子30を透過する。配向制御素子30を透過した光は、光学素子40に入射する。光学素子40は、入射光を、配向制御素子30と反対側に反射し、空中に空中像2を結像する。
【0073】
図9は、光学素子40における光の反射の様子を説明する斜視図である。
図10は、光学素子40における光の反射の様子を説明するXZ面の側面図である。
図10は、観察者3の両目(すなわち、両目を結ぶ線)がX方向に平行な状態で光学素子40を見た図である。
図11は、光学素子40における光の反射の様子を説明するYZ面の側面図である。
図11は、観察者3の両目がY方向に平行な状態で光学素子40を見た図である。
【0074】
表示素子20の任意の点“o”から出射された光は、光学素子40の入射面43に入射し、反射面44に到達する。反射面44の法線方向に対して臨界角よりも大きい角度で反射面44に到達した光は、反射面44で全反射され、光学素子40の光学要素42が形成されている側の反対側の平面から出射される。臨界角とは、その入射角を超えると全反射する最少の入射角である。臨界角は、入射面の垂線に対する角度である。
【0075】
図10のXZ面では、点“o”から出射された光は、光学要素42の反射面44で全反射され、その光は空中で結像されて空中像を生成する。
【0076】
図11のYZ面では、点“o”から出射された光は、光学要素42の反射面44で反射されず、その光は空中で結像することがないため空中像の生成に寄与しない。
【0077】
すなわち、観察者3が空中像を視認できる条件は、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態(例えばX方向に対して±10度)である。また、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態でY方向に沿って視点を移動した場合、空中像を常に認識することができる。
【0078】
図12は、光学素子40における入射面43及び反射面44の角度条件を説明する図である。
【0079】
Z方向(素子面に垂直な方向)に対する入射面43の角度をθ2、Z方向に対する反射面44の角度をθ3、入射面43と反射面44とのなす角度をθpとする。角度をθpは、以下の式(1)で表される。
θp=θ2+θ3 ・・・(1)
【0080】
配向制御素子30から角度θ1で出射された光は、入射面43に入射する。光学素子40の材料の屈折率をnp、空気の屈折率を1とする。入射面43における入射角をθ4、屈折角をθ5とする。反射面44における入射角をθ6、反射角をθ7(=θ6)とする。光学素子40の上面における入射角をθ8、屈折角をθ9とする。屈折角θ9が出射角である。出射角θ9は、以下の式(2)で表される。
θ9=sin-1(np*sin(sin-1((1/np)*sin(90°-(θ1+θ2)))+θ2+2θ3-90°)) ・・・(2)
【0081】
反射面44における臨界角は、以下の式(3)で表される。
臨界角<θ6(=θ7)
臨界角=sin-1(1/np) ・・・(3)
【0082】
すなわち、反射面44における入射角θ6は、反射面44における臨界角より大きく設定される。換言すると、反射面44の角度θ3は、反射面44に入射する光の入射角が臨界角より大きくなるように設定される。
【0083】
また、入射面43に入射した光は、入射面43で全反射されないように設定される。すなわち、入射面43の角度θ2は、入射面43に入射する光の入射角が臨界角より小さくなるように設定される。
【0084】
光学素子40の素子面と空中像2の面との角度、及び光学素子40の素子面と空中像2の面との距離は、光学素子40に入射する光の角度θ1、光学素子40の屈折率、光学素子40の入射面43の角度θ2、光学素子40の反射面44の角度θ3を最適に設定することで調整が可能である。
【0085】
[1-2-2] 光照射動作
次に、対象物に光を照射する光照射動作について説明する。
図13は、光照射動作を説明する斜視図である。
図14は、光照射動作を説明する下面図(空中像2を下から見た図)である。照明素子61-1~61-4にそれぞれ含まれる発光素子63を、発光素子63-1~63-4と表記する。
【0086】
空中表示装置1は、空中像2を表示する。空中像2は、例えば押しボタンである。センシング素子50は、空中像2を含む2次元の空間領域に検知領域53を形成する。検知領域53は、赤外光で構成される。
【0087】
観察者3は、自身の指3Aで、空中像2を押す。センシング素子50は、検知領域53に含まれる対象物(観察者3の指3A)を検知する。センシング素子50の検知結果は、検知位置算出部80Cに送られる。検知位置算出部80Cは、センシング素子50の検知結果に基づいて、対象物の位置を算出する。
【0088】
光照射判定部80Dは、検知位置算出部80Cにより算出された対象物の位置が、空中像2の領域に含まれるか否かを判定する。対象物の位置が空中像2の領域に含まれる場合、光照射判定部80Dは、対象物に光を照射するように、照明装置60を制御する。すなわち、照明素子61-1~61-4はそれぞれ、対象物の位置に対応する発光素子63-1~63-4に、所定の色の光を発光させる。照明素子61-1~61-4の各々が発光させる発光素子の数は、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。また、照明素子61-1~61-4の各々が発光させる発光素子の数は、対象物の大きさに応じて設定してもよい。対象物の大きさが大きくなるにつれて、発光させる発光素子の数を増やしてもよい。発光素子63-1~63-4が発光する光の色は、任意に設定可能である。
【0089】
発光素子63-1~63-4から出射した光は、対象物(観察者3の指3A)に照射される。観察者3は、自身の指3Aに照射された所定の色の光を視認する。これにより、観察者3は、空中像2としての押しボタンを押したことを認識できる。
【0090】
[1-2-3] 全体動作の流れ
次に、空中表示装置1における全体動作の流れについて説明する。
図15は、空中表示装置1における全体動作を説明するフローチャートである。
【0091】
制御部80は、空中像2を表示する(ステップS100)。表示処理部80Aは、表示素子20の画面に画像を表示させる。光学素子40は、表示素子20からの光を反射し、空中に空中像2を結像する。
【0092】
続いて、センシング素子50は、センシング動作を実行する(ステップS101)。センシング素子50に含まれる発光部51は、空中像2が表示された領域を含む検知領域53に、赤外光を出射する。
【0093】
続いて、センシング素子50は、検知領域53内に対象物が存在するか否かを監視している(ステップS102)。すなわち、センシング素子50に含まれる受光部52は、対象物で反射された赤外光を監視している。
【0094】
センシング素子50が対象物を検知した場合(S102=Yes)、検知位置算出部80Cは、センシング素子50の検知信号に基づいて、対象物の位置を算出する(ステップS103)。
【0095】
続いて、光照射判定部80Dは、対象物が設定領域内に存在するか否かを判定する(ステップS104)。設定領域は、空中像2が占める領域を意味する。設定領域の情報は、空中像2の画像に応じて予め設定され、当該情報は、記憶部81に格納されている。
【0096】
対象物が設定領域内に存在する場合(S104=Yes)、光照射判定部80Dは、対象物に光を照射するように、照明装置60を制御する(ステップS105)。照明装置60の動作は、前述した通りである。
【0097】
[1-3] 第1実施形態の効果
第1実施形態によれば、対象物(例えば観察者3の指)が空中像2に触れたことを検知した場合に、観察者3の指を任意の色の光で照射することができる。これにより、空中像2に触れたことをより明確に観察者に認識させることができる。
【0098】
また、空中表示装置1は、表示素子20から出射された光を光学素子40で反射させることで、空中に空中像2を表示することができる。また、空中表示装置1は、その正面方向において、光学素子40の素子面に平行に空中像2を表示することができる。また、表示品質を向上させることが可能な空中表示装置1を実現できる。
【0099】
また、観察者3の両眼がX方向(すなわち、複数の光学要素42が並ぶ方向)に平行、又はそれに近い状態で光学素子40を見た場合に、観察者3は、空中像を視認することができる。また、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態でY方向に沿って視点を移動した場合、空中像を常に視認することができる。また、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態において、より広い視野角を実現できる。
【0100】
また、空中表示装置1を構成する複数の素子を平行に配置することができる。これにより、Z方向に小型化が可能な空中表示装置1を実現できる。
【0101】
[2] 第2実施形態
第2実施形態は、観察者3の指が空中像2の端部に存在する場合に、観察者3の指に、点滅する光を照射するようにしている。
【0102】
図16は、本発明の第2実施形態に係る光照射動作を説明する下面図(空中像2を下から見た図)である。空中表示装置1の構成は、第1実施形態と同じである。
【0103】
空中表示装置1は、空中像2を表示する。センシング素子50は、空中像2を含む2次元の空間領域に検知領域53を形成する。観察者3は、自身の指3Aで、空中像2を押す。この時、観察者3の指3Aの位置が空中像2の端部であるものとする。空中像2の端部は、空中像2が占める領域の外周の端部を意味する。
【0104】
センシング素子50は、検知領域53に含まれる対象物(観察者3の指3A)を検知する。センシング素子50の検知結果は、検知位置算出部80Cに送られる。検知位置算出部80Cは、センシング素子50の検知結果に基づいて、対象物の位置を算出する。
【0105】
光照射判定部80Dは、検知位置算出部80Cにより算出された対象物の位置が、空中像2の端部であるか否かを判定する。対象物の位置が空中像2の端部である場合、光照射判定部80Dは、対象物に点滅する光を照射するように、照明装置60を制御する。すなわち、照明素子61-1~61-4はそれぞれ、対象物の位置に対応する発光素子63-1~63-4に、所定の色の点滅する光を発光させる。
【0106】
発光素子63-1~63-4から出射した光は、対象物(観察者3の指3A)に照射される。観察者3は、自身の指3Aに照射された所定の色かつ点滅した光を視認する。これにより、観察者3は、空中像2としての押しボタンの端部を押したことを認識できる。
【0107】
次に、空中表示装置1における全体動作の流れについて説明する。
図17は、空中表示装置1における全体動作を説明するフローチャートである。ステップS100~S103の動作は、第1実施形態と同じである。
【0108】
続いて、光照射判定部80Dは、対象物が設定領域の中央部に存在するか否かを判定する(ステップS200)。設定領域は、空中像2が占める領域を意味する。
【0109】
対象物が設定領域の中央部に存在する場合(S200=Yes)、光照射判定部80Dは、対象物に光を照射するように、照明装置60を制御する(ステップS201)。ステップS201における光は、連続点灯した光である。
【0110】
対象物が設定領域の中央部に存在しない場合(S200=No)、光照射判定部80Dは、対象物が設定領域の端部に存在するか否かを判定する(ステップS202)。設定領域の端部は、設定領域の中央部の周囲の領域である。
【0111】
対象物が設定領域の端部に存在する場合(S202=Yes)、光照射判定部80Dは、対象物に点滅する光を照射するように、照明装置60を制御する(ステップS203)。
【0112】
以後、
図17のフローを繰り返し、対象物が設定領域の端部から中央部に移動した場合、対象物に連続点灯した光が照射される。
【0113】
第2実施形態によれば、空中像2としての押しボタンの端部を押していることを観察者3に認識させることができる。また、空中像2としての押しボタンの中央部を押していることを観察者3に認識させることができる。これにより、観察者3の指3Aを空中像2の中央部に誘導することができる。
【0114】
[3] 第3実施形態
第3実施形態は、空中像2の領域に対象物が存在する場合に、対象物に遠赤外光を照射するようにしている。
【0115】
図18は、本発明の第3実施形態に係る空中表示装置1の一部(センシング素子50及び照明装置60)を抽出した斜視図である。照明装置60以外の構成は、
図1と同じである。
【0116】
照明装置60は、筐体70の4個の側部にそれぞれ配置された4個の温感照明素子90-1~90-4を備える。温感照明素子90-1~90-4の各々は、光学素子40の上方かつ空中像2とおおよそ同じレベルに配置される。温感照明素子90-1~90-4の各々は、検知領域全体に光を照射可能なように構成される。
【0117】
図19は、温感照明素子90-1の一部領域の側面図である。温感照明素子90-2~90-4の構成は、温感照明素子90-1と同じである。
【0118】
温感照明素子90-1は、センシング素子50の検知領域に向けて光を照射可能なように配置される。温感照明素子90-1は、基板91と、複数の発光素子92とを備える。基板91は、一方向に延びるように構成される。基板91は、樹脂などで構成される絶縁基板と、絶縁基板の上面及び/又は内部に設けられた配線層とを備える。
【0119】
複数の発光素子92は、隣接するもの同士が所定の間隔を空けるようにして、基板91が延びる方向に沿って一列に配置される。複数の発光素子92の数及び各々のサイズは、適宜設定可能である。発光素子92は、遠赤外線の波長領域の光(遠赤外光)を発光する。遠赤外光は、物質の温度を上昇させることができる。
【0120】
次に、上記のように構成された空中表示装置1の動作について説明する。
【0121】
図20は、光照射動作を説明する下面図(空中像2を下から見た図)である。温感照明素子90-1~90-4にそれぞれ含まれる発光素子92を、発光素子92-1~92-4と表記する。対象物(観察者3の指3A)の位置を算出するまでの動作は、第1実施形態と同じである。
【0122】
光照射判定部80Dは、検知位置算出部80Cにより算出された対象物の位置が、空中像2の領域に含まれるか否かを判定する。対象物の位置が空中像2の領域に含まれる場合、光照射判定部80Dは、対象物に遠赤外光を照射するように、照明装置60を制御する。すなわち、温感照明素子90-1はそれぞれ、対象物の位置に対応する発光素子92-1~92-4に、遠赤外光を発光させる。温感照明素子90-1~90-4の各々が発光させる発光素子の数は、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。また、温感照明素子90-1~90-4の各々が発光させる発光素子の数は、対象物の大きさに応じて設定してもよい。対象物の大きさが大きくなるにつれて、発光させる発光素子の数を増やしてもよい。
【0123】
発光素子92-1~92-4から出射した遠赤外光は、対象物(観察者3の指3A)に照射される。観察者3は、自身の指3Aが温かくなったことを認識する。これにより、観察者3は、空中像2としての押しボタンを押したことを認識できる。
【0124】
なお、照明素子61-1~61-4による可視光線を照射する動作は、第1及び第2実施形態と同じである。
【0125】
次に、空中表示装置1における全体動作の流れについて説明する。
図21は、空中表示装置1における全体動作を説明するフローチャートである。ステップS100~S104の動作は、第1実施形態と同じである。
【0126】
続いて、対象物が設定領域内に存在する場合(S104=Yes)、光照射判定部80Dは、対象物に遠赤外光を照射するように、照明装置60を制御する(ステップS300)。照明装置60の動作は、前述した通りである。
【0127】
また、対象物に遠赤外光を照射する動作と並行して、対象物に可視光線を照射する動作が行われる。
【0128】
第3実施形態によれば、空中像2としての押しボタンの端部を押していることを温度感覚によって観察者3に認識させることができる。
【0129】
なお、変形例として、可視光線の照射を行わず、遠赤外光のみを照射するようにしてもよい。すなわち、照明装置60は、温感照明素子90-1~90-4のみを備え、温度感覚のみを観察者3に認識させるようにしてもよい。この変形例では、照明素子61-1~61-4による光照射は行われない。
【0130】
[4] 第4実施形態
第4実施形態は、光学素子40に対して表示素子20を斜めに配置し、表示素子20と面対称の位置に空中像2を表示する構成例である。
【0131】
図22は、本発明の第4実施形態に係る空中表示装置1の斜視図である。
図22において、X方向は、筐体70のある1辺に沿った方向であり、Y方向は、筐体70の水平面内においてX方向に直交する方向であり、Z方向は、XY面に直交する方向である。
図23は、空中表示装置1の一部(センシング素子50及び照明装置60)を抽出した斜視図である。
【0132】
空中表示装置1は、バックライト10、表示素子20、光学素子40、センシング素子50、照明装置60(照明素子61-1~61-4)、及び筐体70を備える。
【0133】
バックライト10及び表示素子20の構成は、第1実施形態と同じである。
図22では、導光板12及び反射シート13を一体で図示している。YZ面から見て、表示素子20は、光学素子40に対して斜めに配置される。表示素子20と光学素子40とのなす角度は、例えば10度以上60度以下である。
【0134】
光学素子40は、表示素子20からの光を受けるように配置される。光学素子40は、2面コーナーリフレクタがアレイ状に配列された2面コーナーリフレクタアレイで構成される。光学素子40は、底面側から入射した光を上面側に反射する。また、光学素子40は、表示素子20の画像を面対称の位置に結像し、空中に空中像を結像する。
【0135】
図24Aは、
図22に示した光学素子40のX´Z´面における側面図である。
図24Bは、
図22に示した光学素子40の下面図である。
図24A及び
図24Bにおいて、X´方向は、光学素子40のある一辺に沿った方向であり、Y´方向は、光学素子40の面内においてX´方向と直交する方向であり、Z´方向は、X´Y´面に直交する方向である。
【0136】
光学素子40は、基材41、及び複数の光学要素45を備える。
図24Aには、1個の光学要素45の斜視図を抽出して示している。基材41と複数の光学要素45とは、アクリル樹脂などの透明な材料で構成される。基材41と複数の光学要素45とは、一体で構成されてもよいし、透明な接着材で接着されてもよい。
【0137】
複数の光学要素45は、基材41の底面に設けられる。光学要素45は、直方体、又は立方体からなる。光学要素45の平面形状は、例えば正方形である。光学要素45は、2個の反射面46、47を有する。反射面46、47は、直方体の2個の側面に対応し、互いに接する。反射面46、47は、いわゆる2面コーナーリフレクタを構成する。
【0138】
光学要素45は、1辺がX´方向に対して角度θ10だけ傾くように配置される。角度θ10は、例えば45度である。なお、角度θ10は、45度に限定されず、30度以上60度以下の範囲で設定可能である。複数の光学要素45は、千鳥状に配列される。すなわち、複数の光学要素45は、1行がX方向に対して45度の方向に延び、複数行がY方向に対して45度の方向に並ぶように配置される。また、複数の光学要素45は、互いに隙間を空けて配置される。
【0139】
図23に示すように、照明装置60は、4個の照明素子61-1~61-4を備える。照明素子61-1~61-4は、空中像2を含む2次元の空間領域に配置され、空中像2が表示される四角形の空間領域の4つの側辺にそれぞれ配置される。照明素子61-1~61-4の構成は、第1実施形態と同じである。
【0140】
センシング素子50は、空中像2を含む2次元の空間領域付近に配置され、空中像2が表示される四角形の空間領域の1つの側辺付近に配置される。センシング素子50は、空中表示装置1が生成した空中像2の一部又は全部を含む2次元の空間領域に、検知領域を形成する。センシング素子50の構成は、第1実施形態と同じである。
【0141】
筐体70は、センシング素子50及び照明装置60を収容する。筐体70は、空中像2を含む2次元の空間領域に配置される。すなわち、YZ面から見て、筐体70は、光学素子40の上方に配置され、光学素子40に対して斜めに配置される。筐体70は、平面視において四角形を有する。センシング素子50及び照明装置60は、筐体70の内側の面に支持部材(図示せず)を用いて取り付けられる。筐体70は、空中像2が表示される四角形の空間領域を露出する開口部71を有する。
【0142】
第4実施形態に係る空中表示装置1の動作は、第1実施形態と同じである。第4実施形態においても、第1実施形態と同じ効果を得ることができる。また、第4実施形態に、第2又は第3実施形態を適用することも可能である。
【0143】
[5] 変形例
上記各実施形態では、照明装置60が4個の照明素子61-1~61-4を備える構成について示している。しかし、この構成に限定されず、照明装置60が1個の照明素子61を備えていてもよいし、2個以上の照明素子61を備えていてもよい。温感照明素子90-1~90-4についても同様である。
【0144】
第1実施形態では、表示素子20と光学素子40とを平行に配置している。しかし、これに限定されず、光学素子40に対して表示素子20を斜めに配置してもよい。表示素子20と光学素子40とのなす角度は、例えば、10度以上60度以下に設定される。この変形例では、配向制御素子30を省略できる。
【0145】
第1実施形態では、光学要素42の左側の側面が入射面43、右側の側面が反射面44として定義している。しかし、これに限定されず、入射面43と反射面44とを逆に構成してもよい。この場合、実施形態で説明した空中表示装置1の作用も左右が逆になる。
【0146】
上記各実施形態では、表示素子20として液晶表示素子を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではない。表示素子20は、自発光型である有機EL(electroluminescence)表示素子、又はマイクロLED(Light Emitting Diode)表示素子などを用いることも可能である。マイクロLED表示素子は、画素を構成するR(赤)、G(緑)、B(青)をそれぞれLEDで発光させる表示素子である。自発光型の表示素子20を用いる場合、バックライト10は不要である。
【0147】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0148】
1…空中表示装置、2…空中像、3…観察者、10…バックライト、11…光源部、12…導光板、13…反射シート、20…表示素子、30…配向制御素子、31,32…基材、33…透明部材、34…遮光部材、40…光学素子、41…基材、42…光学要素、43…入射面、44…反射面、45…光学要素、46,47…反射面、50…センシング素子、51…発光部、52…受光部、53…検知領域、60…照明装置、61-1~61-4…照明素子、62…基板、63…発光素子、64…基板、65B…青色LED、65G…緑色LED、65R…赤色LED、66-1,66-2…リードフレーム、67…封止樹脂、70…筐体、71…開口部、80…制御部、80A…表示処理部、80B…情報処理部、80C…検知位置算出部、80D…光照射判定部、81…記憶部、82…入出力インターフェース、83…表示部、84…入力部、85…バス、90-1~90-4…温感照明素子、91…基板、92…発光素子。