(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064086
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H03H 7/01 20060101AFI20240507BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240507BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20240507BHJP
H03H 7/46 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H03H7/01 A
H01F17/00 C
H01F27/00 S
H03H7/46 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172421
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 俊志
【テーマコード(参考)】
5E070
5J024
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070AB06
5E070AB07
5E070CB13
5E070CB17
5J024AA01
5J024CA02
5J024CA03
5J024CA10
5J024DA04
5J024DA25
5J024DA29
5J024DA33
5J024EA01
5J024EA02
5J024KA03
(57)【要約】
【課題】Q値を大きくしながら、所望の特性を実現することができる積層型電子部品を実現する。
【解決手段】電子部品1は、第1のインダクタL12と、第1のインダクタL12に対して並列に接続された第2のインダクタL13と、第1のインダクタL12および第2のインダクタL13を一体化するための積層体であって、積層された複数の誘電体層51~73を含む積層体50とを備えている。第1のインダクタL12と第2のインダクタL13の各々は、複数の誘電体層51~73の積層方向Tに直交する方向に延びる軸A1を中心に巻回されている。第1のインダクタL12の巻回数と第2のインダクタL13の巻回数は、互いに異なっている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のインダクタと、
前記第1のインダクタに対して並列に接続された第2のインダクタと、
前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタを一体化するための積層体であって、積層された複数の誘電体層を含む積層体とを備え、
前記第1のインダクタと前記第2のインダクタの各々は、前記複数の誘電体層の積層方向に直交する方向に延びる軸を中心に巻回され、
前記第1のインダクタの巻回数と前記第2のインダクタの巻回数は、互いに異なることを特徴とする積層型電子部品。
【請求項2】
前記第1のインダクタと前記第2のインダクタの各々は、少なくとも1つの導体層部と、複数のスルーホール列とを含み、
前記複数のスルーホール列の各々は、2つ以上のスルーホールが直列に接続されることによって構成され、
前記少なくとも1つの導体層部と前記複数のスルーホール列は、前記軸の周りを周回するように交互に接続されていることを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第1のインダクタの開口部と前記第2のインダクタの開口部は、互いに対向していることを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項4】
更に、第1の信号端子と、
第2の信号端子と、
前記第1の信号端子と前記第2の信号端子とを接続する信号経路とを備え、
前記第1のインダクタと前記第2のインダクタの各々の両端は、前記信号経路に接続されていることを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項5】
更に、前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタを含むローパスフィルタを備えたことを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項6】
更に、前記第1のインダクタと前記第2のインダクタの各々に対して並列に接続されたキャパシタを備えたことを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記第1のインダクタと前記第2のインダクタの各々は、少なくとも1つの導体層部と、複数のスルーホール列とを含み、
前記複数のスルーホール列の各々は、2つ以上のスルーホールが直列に接続されることによって構成され、
前記少なくとも1つの導体層部と前記複数のスルーホール列は、前記軸の周りを周回するように交互に接続され、
前記キャパシタは、キャパシタ用導体層を含み、
前記第1のインダクタと前記第2のインダクタの各々の前記少なくとも1つの導体層部は、前記積層方向に平行な一方向から見たときに、前記キャパシタ用導体層と重なっていることを特徴とする請求項6記載の積層型電子部品。
【請求項8】
更に、前記積層方向に直交する方向に延びる他の軸を中心に巻回された第3のインダクタを備え、
前記第3のインダクタは、前記第1のインダクタと前記第2のインダクタが並ぶ方向の先に配置され、
前記第3のインダクタの開口部は、前記第1のインダクタの開口部および前記第2のインダクタの開口部とは対向しないことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのインダクタを含む積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
小型移動体通信機器では、システムおよび使用周波数帯域が異なる複数のアプリケーションで共通に使用されるアンテナを設け、このアンテナが送受信する複数の信号を、分波器を用いて分離する構成が広く用いられている。
【0003】
一般的に、第1の周波数帯域内の周波数の第1の信号と、第1の周波数帯域よりも高い第2の周波数帯域内の周波数の第2の信号を分離する分波器は、共通ポートと、第1の信号ポートと、第2の信号ポートと、共通ポートから第1の信号ポートに至る第1の信号経路に設けられた第1のフィルタと、共通ポートから第2の信号ポートに至る第2の信号経路に設けられた第2のフィルタとを備えている。第1および第2のフィルタとしては、例えば、インダクタとキャパシタを用いて構成されたLC共振器が用いられる。
【0004】
フィルタに用いられるLC共振器には、Q値を大きくすることが求められる。LC共振器のQ値を大きくするには、インダクタのQ値を大きくすることが効果的である。
【0005】
特許文献1には、積層された複数の絶縁層を含む積層体を用いて構成されたバンドパスフィルタが開示されている。このバンドパスフィルタでは、複数の線状導体と複数の層間接続導体を交互に接続して構成されたインダクタを用いて、インダクタのQ値およびLC共振回路のQ値を大きくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、小型移動体通信機器の小型化、省スペース化が市場から要求されており、その通信機器に用いられる分波器の小型化も要求されている。分波器が小型化すると、分波器に用いるインダクタを設置するためのスペースが小さくなり、その結果、インダクタのQ値を大きくすることが難しくなる。これに対し、2つのインダクタを並列接続することによって、インダクタのQ値を大きくすることが考えられる。しかし、単に2つのインダクタを並列接続した場合には、2つのインダクタ合成インダクタンスが小さくなり、所望の特性が得られなくなるという問題があった。
【0008】
上記の問題は、分波器に限らず、2つのインダクタを含む積層型電子部品全般に当てはまる。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、Q値を大きくしながら、所望の特性を実現することができる積層型電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の積層型電子部品は、第1のインダクタと、第1のインダクタに対して並列に接続された第2のインダクタと、第1のインダクタおよび第2のインダクタを一体化するための積層体であって、積層された複数の誘電体層を含む積層体とを備えている。第1のインダクタと第2のインダクタの各々は、複数の誘電体層の積層方向に直交する方向に延びる軸を中心に巻回されている。第1のインダクタの巻回数と第2のインダクタの巻回数は、互いに異なっている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層型電子部品では、第1のインダクタの巻回数と、第1のインダクタに対して並列に接続された第2のインダクタの巻回数は、互いに異なっている。これにより、本発明によれば、Q値を大きくしながら、所望の特性を実現することができる積層型電子部品を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の回路構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の外観を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における1層目ないし3層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における4層目ないし9層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における10層目ないし20層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図6】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における21層目ないし23層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図7】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体の内部を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体の内部を示す平面図である。
【
図9】比較例のモデルの通過減衰特性を示す特性図である。
【
図10】実施例のモデルの通過減衰特性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、
図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品(以下、単に電子部品と記す。)1の構成の概略について説明する。本実施の形態に係る電子部品1は、少なくとも、第1のインダクタと、第1のインダクタに対して並列に接続された第2のインダクタとを備えている。
【0014】
図1には、第1および第2のインダクタを含む電子部品1の例として、分波器(ダイプレクサ)を示している。分波器は、第1の通過帯域内の周波数の第1の信号を選択的に通過させる第1のフィルタ10と、第1の通過帯域よりも高い第2の通過帯域内の周波数の第2の信号を選択的に通過させる第2のフィルタ20とを備えている。
【0015】
電子部品1は、更に、第1のポート2と、第2のポート3と、第3のポート4と、第1のポート2と第2のポート3とを接続する信号経路5と、第1のポート2と第3のポート4とを接続する信号経路6とを備えている。第1のフィルタ10は、回路構成上、第1のポート2と第2のポート3との間に設けられている。第2のフィルタ20は、回路構成上、第1のポート2と第3のポート4との間に設けられている。なお、本出願において、「回路構成上」という表現は、物理的な構成における配置ではなく、回路図上での配置を指すために用いている。
【0016】
信号経路5は、第1のポート2から第1のフィルタ10を経由して第2のポート3に至る経路である。信号経路6は、第1のポート2から第2のフィルタ20を経由して第3のポート4に至る経路である。第1の通過帯域内の周波数の第1の信号は、第1のフィルタ10が設けられた信号経路5を選択的に通過する。第2の通過帯域内の周波数の第2の信号は、第2のフィルタ20が設けられた信号経路6を選択的に通過する。このようにして、電子部品1は、第1の信号と第2の信号を分離する。
【0017】
本発明の第1および第2のインダクタは、第1のフィルタ10に設けられていてもよいし、第2のフィルタ20に設けられていてもよい。本実施の形態では特に、第1および第2のインダクタは、第1のフィルタ10に設けられている。
【0018】
次に、
図1を参照して、第1および第2のフィルタ10,20の構成の一例について説明する。始めに、第1のフィルタ10について説明する。
図1に示した例では、第1のフィルタ10は、ローパスフィルタである。第1のフィルタ10は、インダクタL11,L12,L13と、キャパシタC11,C12,C13とを含んでいる。
【0019】
インダクタL11の一端は、第1のポート2に接続されている。インダクタL12,L13は、互いに並列に接続されている。インダクタL12,L13の各一端は、インダクタL11の他端に接続されている。インダクタL12,L13の各他端は、第2のポート3に接続されている。
【0020】
インダクタL12,L13の一方は、本発明の「第1のインダクタ」に対応する。インダクタL12,L13の他方は、本発明の「第2のインダクタ」に対応する。本実施の形態では特に、インダクタL12,L13の各々の両端は、信号経路5に接続されている。
【0021】
キャパシタC11は、インダクタL11に対して並列に接続されている。キャパシタC12は、インダクタL12,L13に対して並列に接続されている。キャパシタC13の一端は、インダクタL11の他端ならびにインダクタL12,L13の各一端に接続されている。キャパシタC13の他端は、グランドに接続されている。
【0022】
次に、第2のフィルタ20について説明する。
図1に示した例では、第2のフィルタ20は、ハイパスフィルタである。第2のフィルタ20は、インダクタL21,L22と、キャパシタC21,C22,C23,C24,C25とを含んでいる。
【0023】
キャパシタC21の一端は、第1のポート2に接続されている。キャパシタC22の一端は、キャパシタC21の他端に接続されている。キャパシタC23の一端は、キャパシタC22の他端に接続されている。キャパシタC23の他端は、第3のポート4に接続されている。キャパシタC24の一端は、キャパシタC22の一端に接続されている。キャパシタC24の他端は、キャパシタC23の他端に接続されている。
【0024】
インダクタL21の一端は、キャパシタC21とキャパシタC22との接続点に接続されている。キャパシタC25の一端は、インダクタL21の他端に接続されている。キャパシタC26の一端は、キャパシタC25の他端に接続されている。キャパシタC26の他端は、グランドに接続されている。
【0025】
インダクタL22の一端は、キャパシタC22とキャパシタC23との接続点に接続されている。インダクタL22の他端は、グランドに接続されている。
【0026】
次に、
図2を参照して、電子部品1のその他の構成について説明する。
図2は、電子部品1の外観を示す斜視図である。
【0027】
電子部品1は、更に、積層された複数の誘電体層と、複数の導体とを含む積層体50を備えている。積層体50は、インダクタL12,L13を含む第1のフィルタ10と、第2のフィルタ20とを一体化するためものである。
【0028】
積層体50は、複数の誘電体層の積層方向Tの両端に位置する底面50Aおよび上面50Bと、底面50Aと上面50Bを接続する4つの側面50C~50Fとを有している。側面50C,50Dは互いに反対側を向き、側面50E,50Fも互いに反対側を向いている。側面50C~50Fは、上面50Bおよび底面50Aに対して垂直になっている。
【0029】
ここで、
図2に示したように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、積層方向Tに平行な一方向を、Z方向とする。また、X方向とは反対の方向を-X方向とし、Y方向とは反対の方向を-Y方向とし、Z方向とは反対の方向を-Z方向とする。また、「積層方向Tから見たとき」という表現は、Z方向または-Z方向に離れた位置から対象物を見ることを意味する。
【0030】
図2に示したように、底面50Aは、積層体50における-Z方向の端に位置する。上面50Bは、積層体50におけるZ方向の端に位置する。側面50Cは、積層体50における-X方向の端に位置する。側面50Dは、積層体50におけるX方向の端に位置する。側面50Eは、積層体50における-Y方向の端に位置する。側面50Fは、積層体50におけるY方向の端に位置する。
【0031】
電子部品1は、更に、積層体50の底面50Aに設けられた端子111,112,113,114,115,116を備えている。端子111,112,113は、側面50Fよりも側面50Eにより近い位置において、X方向にこの順に並んでいる。端子114,115,116は、側面50Eよりも側面50Fにより近い位置において、-X方向にこの順に並んでいる。
【0032】
端子112は、第1のポート2に対応する信号端子である。端子114は、第3のポート4に対応する信号端子である。端子116は、第2のポート3に対応する信号端子である。従って、第1ないし第3のポート2~4は、積層体50の底面50Aに設けられている。本実施の形態では特に、端子112,116の一方は、本発明の「第1の信号端子」に対応し、端子112,116の他方は、本発明の「第2の信号端子」に対応する。端子111,113,115の各々は、グランドに接続される。
【0033】
次に、
図3(a)ないし
図6(c)を参照して、積層体50を構成する複数の誘電体層および複数の導体の一例について説明する。この例では、積層体50は、積層された23層の誘電体層を有している。以下、この23層の誘電体層を、下から順に1層目ないし23層目の誘電体層と呼ぶ。また、1層目ないし23層目の誘電体層を符号51~73で表す。
【0034】
図3(a)ないし
図6(a)において、複数の円は複数のスルーホールを表している。誘電体層51~71の各々には、複数のスルーホールが形成されている。複数のスルーホールは、それぞれ、スルーホール用の孔に導体ペーストを充填することによって形成される。複数のスルーホールの各々は、導体層または他のスルーホールに接続されている。
図3(a)ないし
図6(a)では、複数のスルーホールのうちの複数の特定のスルーホールに、符号を付している。
【0035】
図3(a)は、1層目の誘電体層51のパターン形成面を示している。誘電体層51のパターン形成面には、端子111~116が形成されている。
【0036】
図3(b)は、2層目の誘電体層52のパターン形成面を示している。誘電体層52のパターン形成面には、導体層521,522,523,524が形成されている。符号52T5bを付したスルーホールは、導体層523に接続されている。なお、以下の説明では、符号52T5bを付したスルーホールを、単にスルーホール52T5bと記す。また、スルーホール52T5b以外の符号を付したスルーホールについても、スルーホール52T5bと同様に記す。
【0037】
図3(c)は、3層目の誘電体層53のパターン形成面を示している。誘電体層53のパターン形成面には、導体層531,532,533が形成されている。
図3(c)に示したスルーホール53T5bは、誘電体層52に形成されたスルーホール52T5bに接続される。
【0038】
図4(a)は、4層目の誘電体層54のパターン形成面を示している。誘電体層54のパターン形成面には、導体層541,542,543,544,545,546,547が形成されている。導体層543は、導体層545に接続されている。
図4(a)では、導体層543と導体層545との境界を、点線で示している。
【0039】
図4(a)に示したスルーホール54T1a,54T4a,54T4b,54T5aは、それぞれ、導体層541,545,546,544に接続されている。3個のスルーホール54T1b,54T2a,54T3aは、導体層542に接続されている。スルーホール54T5bは、誘電体層53に形成されたスルーホール53T5bに接続される。
【0040】
図4(b)は、5層目の誘電体層55のパターン形成面を示している。誘電体層55のパターン形成面には、導体層551,552,553,554が形成されている。
【0041】
図4(b)に示した8個のスルーホール55T1a,55T1b,55T2a,55T3a,55T4a,55T4b,55T5a,55T5bは、それぞれ、誘電体層54に形成されたスルーホール54T1a,54T1b,54T2a,54T3a,54T4a,54T4b,54T5a,54T5bに接続される。2個のスルーホール55T2b,55T3bは、導体層552に接続されている。
【0042】
図4(c)は、6層目ないし9層目の誘電体層56~59の各々のパターン形成面を示している。誘電体層56~59の各々には、10個のスルーホール56T1a,56T1b,56T2a,56T2b,56T3a,56T3b,56T4a,56T4b,56T5a,56T5bが形成されている。誘電体層56に形成されたスルーホール56T1a,56T1b,56T2a,56T2b,56T3a,56T3b,56T4a,56T4b,56T5a,56T5bは、それぞれ、誘電体層55に形成されたスルーホール55T1a,55T1b,55T2a,55T2b,55T3a,55T3b,55T4a,55T4b,55T5a,55T5bに接続される。また、誘電体層56~59では、上下に隣接する同じ符号のスルーホール同士が互いに接続されている。
【0043】
図5(a)は、10層目の誘電体層60のパターン形成面を示している。誘電体層60のパターン形成面には、インダクタ用の2つの導体層601と、インダクタ用の1つの導体層603と、インダクタ用の5つの導体層604と、インダクタ用の2つの導体層605が形成されている。
【0044】
図5(a)に示した10個のスルーホール60T1a,60T1b,60T2a,60T2b,60T3a,60T3b,60T4a,60T4b,60T5a,60T5bは、それぞれ、誘電体層59に形成されたスルーホール56T1a,56T1b,56T2a,56T2b,56T3a,56T3b,56T4a,56T4b,56T5a,56T5bに接続される。
【0045】
符号60T1cを付した点線の枠内に配置された4個のスルーホールの各々は、2つの導体層601のうちのいずれかに接続されていると共に、接続された導体層601の一端部の近傍部分または他端部の近傍部分に接続されている。なお、以下の説明では、符号60T1cを付した点線の枠内に配置されたスルーホールを、単にスルーホール60T1cと記す。また、符号60T1c以外の符号を付した点線の枠内に配置されたスルーホールについても、スルーホール60T1cと同様に記す。
【0046】
2個のスルーホール60T3cは、それぞれ、導体層603の一端部の近傍部分および導体層603の他端部の近傍部分に接続されている。10個のスルーホール60T4cの各々は、5つの導体層604のうちのいずれかに接続されていると共に、接続された導体層604の一端部の近傍部分または他端部の近傍部分に接続されている。4個のスルーホール60T5cの各々は、2つの導体層605のうちのいずれかに接続されていると共に、接続された導体層605の一端部の近傍部分または他端部の近傍部分に接続されている。
【0047】
図5(b)は、11層目の誘電体層61のパターン形成面を示している。誘電体層61のパターン形成面には、インダクタ用の2つの導体層611と、インダクタ用の1つの導体層613と、インダクタ用の5つの導体層614と、インダクタ用の2つの導体層615が形成されている。
【0048】
図5(b)に示した10個のスルーホール61T1a,61T1b,61T2a,61T2b,61T3a,61T3b,61T4a,61T4b,61T5a,61T5bは、それぞれ、誘電体層60に形成されたスルーホール60T1a,60T1b,60T2a,60T2b,60T3a,60T3b,60T4a,60T4b,60T5a,60T5bに接続される。
【0049】
4個のスルーホール61T1cの各々と誘電体層60に形成された4個のスルーホール60T1cの各々は、2つの導体層611のうちのいずれかに接続されていると共に、接続された導体層611の一端部の近傍部分または他端部の近傍部分に接続されている。2個のスルーホール61T3cの各々と誘電体層60に形成された2個のスルーホール60T3cの各々は、導体層613の一端部の近傍部分または他端部の近傍部分に接続されている。
【0050】
10個のスルーホール61T4cの各々と誘電体層60に形成された10個のスルーホール60T4cの各々は、5つの導体層614のうちのいずれかに接続されていると共に、接続された導体層614の一端部の近傍部分または他端部の近傍部分に接続されている。4個のスルーホール61T5cの各々と誘電体層60に形成された4個のスルーホール60T5cの各々は、2つの導体層615のうちのいずれかに接続されていると共に、接続された導体層615の一端部の近傍部分または他端部の近傍部分に接続されている。
【0051】
図5(c)は、12層目ないし20層目の誘電体層62~70の各々のパターン形成面を示している。誘電体層68~70の各々には、10個のスルーホール62T1a,62T1b,62T2a,62T2b,62T3a,62T3b,62T4a,62T4b,62T5a,62T5bと、4個のスルーホール62T1cと、2個のスルーホール62T3cと、10個のスルーホール62T4cと、4個のスルーホール62T5cとが形成されている。
【0052】
誘電体層62に形成されたスルーホール62T1a,62T1b,62T2a,62T2b,62T3a,62T3b,62T4a,62T4b,62T5a,62T5bは、それぞれ、誘電体層61に形成されたスルーホール61T1a,61T1b,61T2a,61T2b,61T3a,61T3b,61T4a,61T4b,61T5a,61T5bに接続される。
【0053】
誘電体層62に形成された4個のスルーホール62T1cは、それぞれ、誘電体層61に形成された4個のスルーホール61T1cに接続されている。誘電体層62に形成された2個のスルーホール62T3cは、それぞれ、誘電体層61に形成された2個のスルーホール61T3cに接続されている。誘電体層62に形成された10個のスルーホール62T4cは、それぞれ、誘電体層61に形成された10個のスルーホール61T4cに接続されている。誘電体層62に形成された4個のスルーホール62T5cは、それぞれ、誘電体層61に形成された4個のスルーホール61T5cに接続されている。
【0054】
また、誘電体層62~70では、上下に隣接する同じ符号のスルーホール同士が互いに接続されている。
【0055】
図6(a)は、21層目の誘電体層71のパターン形成面を示している。誘電体層71のパターン形成面には、インダクタ用の3つの導体層711と、インダクタ用の1つの導体層712と、インダクタ用の2つの導体層713と、インダクタ用の6つの導体層714と、インダクタ用の3つの導体層715が形成されている。
【0056】
図6(a)に示したスルーホール71T1aと、誘電体層70に形成されたスルーホール62T1aは、3つの導体層711のうちの1つの導体層711の一端部の近傍部分に接続されている。スルーホール71T1bと、誘電体層70に形成されたスルーホール62T1bは、3つの導体層711のうちの他の1つの導体層711の一端部の近傍部分に接続されている。4個のスルーホール71T1cの各々と誘電体層70に形成された4個のスルーホール62T1cの各々は、上記1つの導体層711の他端部の近傍部分、上記他の1つの導体層711の他端部の近傍部分ならびに3つの導体層711のうちの残りの1つの導体層711の一端部の近傍部分および他端部の近傍部分のいずれかに接続されている。
【0057】
スルーホール71T2aと、スルーホール62T2aは、導体層712の一端部の近傍部分に接続されている。スルーホール71T2bと、誘電体層70に形成されたスルーホール62T2bは、導体層712の他端部の近傍部分に接続されている。
【0058】
スルーホール71T3aと、誘電体層70に形成されたスルーホール62T3aは、2つの導体層713の一方の一端部の近傍部分に接続されている。スルーホール71T3bと、誘電体層70に形成されたスルーホール62T3bは、2つの導体層713の他方の一端部の近傍部分に接続されている。2個のスルーホール71T3cの各々と誘電体層70に形成された2個のスルーホール62T3cの各々は、2つの導体層713の一方の他端部の近傍部分と2つの導体層713の他方の他端部の近傍部分のいずれかに接続されている。
【0059】
スルーホール71T4aと、誘電体層70に形成されたスルーホール62T4aは、6つの導体層714のうちの1つの導体層714の一端部の近傍部分に接続されている。スルーホール71T4bと、誘電体層70に形成されたスルーホール62T4bは、6つの導体層714のうちの他の1つの導体層714の一端部の近傍部分に接続されている。10個のスルーホール71T4cの各々と誘電体層70に形成された10個のスルーホール62T4cの各々は、上記1つの導体層714の他端部の近傍部分、上記他の1つの導体層714の他端部の近傍部分ならびに6つの導体層714のうちの残りの4つの導体層714の一端部の近傍部分および他端部の近傍部分のいずれかに接続されている。
【0060】
スルーホール71T5aと、誘電体層70に形成されたスルーホール62T5aは、3つの導体層715のうちの1つの導体層715の一端部の近傍部分に接続されている。スルーホール71T5bと、誘電体層70に形成されたスルーホール62T5bは、3つの導体層715のうちの他の1つの導体層715の一端部の近傍部分に接続されている。4個のスルーホール71T5cの各々と誘電体層70に形成された4個のスルーホール62T5cの各々は、上記1つの導体層715の他端部の近傍部分、上記他の1つの導体層715の他端部の近傍部分ならびに3つの導体層715のうちの残りの1つの導体層715の一端部の近傍部分および他端部の近傍部分のいずれかに接続されている。
【0061】
図6(b)は、22層目の誘電体層72のパターン形成面を示している。誘電体層72のパターン形成面には、インダクタ用の3つの導体層721と、インダクタ用の1つの導体層722と、インダクタ用の2つの導体層723と、インダクタ用の6つの導体層724と、インダクタ用の3つの導体層725が形成されている。
【0062】
誘電体層71に形成されたスルーホール71T1aは、3つの導体層721のうちの1つの導体層721の一端部の近傍部分に接続される。誘電体層71に形成されたスルーホール71T1bは、3つの導体層721のうちの他の1つの導体層721の一端部の近傍部分に接続される。誘電体層71に形成された4個のスルーホール71T1cの各々は、上記1つの導体層721の他端部の近傍部分、上記他の1つの導体層721の他端部の近傍部分ならびに3つの導体層721のうちの残りの1つの導体層721の一端部の近傍部分および他端部の近傍部分のいずれかに接続される。
【0063】
誘電体層71に形成されたスルーホール71T2aは、導体層722の一端部の近傍部分に接続されている。誘電体層71に形成されたスルーホール71T2bは、導体層722の他端部の近傍部分に接続されている。
【0064】
誘電体層71に形成されたスルーホール71T3aは、2つの導体層723の一方の一端部の近傍部分に接続されている。誘電体層71に形成されたスルーホール71T3bは、2つの導体層723の他方の一端部の近傍部分に接続されている。誘電体層71に形成された2個のスルーホール71T3cの各々は、2つの導体層723の一方の他端部の近傍部分と2つの導体層723の他方の他端部の近傍部分のいずれかに接続されている。
【0065】
誘電体層71に形成されたスルーホール71T4aは、6つの導体層724のうちの1つの導体層724の一端部の近傍部分に接続されている。誘電体層71に形成されたスルーホール71T4bは、6つの導体層724のうちの他の1つの導体層724の一端部の近傍部分に接続されている。誘電体層71に形成された10個のスルーホール71T4cの各々は、上記1つの導体層724の他端部の近傍部分、上記他の1つの導体層724の他端部の近傍部分ならびに6つの導体層724のうちの残りの4つの導体層724の一端部の近傍部分および他端部の近傍部分のいずれかに接続されている。
【0066】
誘電体層71に形成されたスルーホール71T5aは、3つの導体層725のうちの1つの導体層725の一端部の近傍部分に接続されている。誘電体層71に形成されたスルーホール71T5bは、3つの導体層725のうちの他の1つの導体層725の一端部の近傍部分に接続されている。誘電体層71に形成された4個のスルーホール71T5cの各々は、上記1つの導体層725の他端部の近傍部分、上記他の1つの導体層725の他端部の近傍部分ならびに3つの導体層725のうちの残りの1つの導体層725の一端部の近傍部分および他端部の近傍部分のいずれかに接続されている。
【0067】
図6(c)は、23層目の誘電体層73のパターン形成面を示している。誘電体層73のパターン形成面には、マーク731が形成されている。
【0068】
図2に示した積層体50は、1層目の誘電体層51のパターン形成面が積層体50の底面50Aになり、23層目の誘電体層73のパターン形成面とは反対側の面が積層体50の上面50Bになるように、1層目ないし73層目の誘電体層51~73が積層されて構成される。
【0069】
図3(a)ないし
図6(a)に示した複数のスルーホールの各々は、1層目ないし22層目の誘電体層51~72を積層したときに、積層方向Tにおいて重なる導体層または積層方向Tにおいて重なる他のスルーホールに接続されている。また、
図3(a)ないし
図6(a)に示した複数のスルーホールのうち、端子内または導体層内に位置するスルーホールは、その端子またはその導体層に接続されている。
【0070】
図7は、1層目ないし23層目の誘電体層51~73が積層されて構成された積層体50の内部を示している。
図7に示したように、積層体50の内部では、
図3(a)ないし
図6(b)に示した複数の導体層と複数のスルーホールが積層されている。なお、
図7では、マーク731を省略している。
【0071】
以下、
図1に示した電子部品1の回路の構成要素と、
図3(a)ないし
図6(b)に示した積層体50の内部の構成要素との対応関係について説明する。始めに、第1のフィルタ10の構成要素について説明する。インダクタL11は、導体層601,611,711,721と、スルーホール54T1a,55T1a,56T1a,60T1a,61T1a,62T1a,71T1aと、スルーホール54T1b,55T1b,56T1b,60T1b,61T1b,62T1b,71T1bと、スルーホール60T1c,61T1c,62T1c,71T1cとによって構成されている。
【0072】
インダクタL12は、導体層712,722と、スルーホール54T2a,55T2a,56T2a,60T2a,61T2a,62T2a,71T2aと、スルーホール55T2b,56T2b,60T2b,61T2b,62T2b,71T2bとによって構成されている。
【0073】
インダクタL13は、導体層603,613,713,723と、スルーホール54T3a,55T3a,56T3a,60T3a,61T3a,62T3a,71T3aと、スルーホール55T3b,56T3b,60T3b,61T3b,62T3b,71T3bと、スルーホール60T3c,61T3c,62T3c,71T3cとによって構成されている。
【0074】
キャパシタC11は、導体層541,542,551と、これらの導体層の間の誘電体層54とによって構成されている。キャパシタC12は、導体層542,552と、これらの導体層の間の誘電体層54とによって構成されている。キャパシタC13は、導体層531,542と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。
【0075】
次に、第2のフィルタ20の構成要素について説明する。インダクタL21は、導体層604,614,714,724と、スルーホール54T4a,55T4a,56T4a,60T4a,61T4a,62T4a,71T4aと、スルーホール54T4b,55T4b,56T4b,60T4b,61T4b,62T4b,71T4bと、スルーホール60T4c,61T4c,62T4c,71T4cとによって構成されている。
【0076】
インダクタL22は、導体層605,615,715,725と、スルーホール54T5a,55T5a,56T5a,60T5a,61T5a,62T5a,71T5aと、スルーホール52T5b,53T5b,54T5b,55T5b,56T5b,60T5b,61T5b,62T5b,71T5bと、スルーホール60T5c,61T5c,62T5c,71T5cとによって構成されている。
【0077】
キャパシタC21は、導体層541,553と、これらの導体層の間の誘電体層54とによって構成されている。キャパシタC22は、導体層532,543と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。キャパシタC23は、導体層533,544と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。キャパシタC24は、導体層533,545と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。
【0078】
キャパシタC25は、導体層546,554と、これらの導体層の間の誘電体層54とによって構成されている。キャパシタC27は、導体層547,554と、これらの導体層の間の誘電体層54とによって構成されている。
【0079】
次に、
図1、
図7および
図8を参照して、本実施の形態に係る電子部品1の構造上の特徴について説明する。
図8は、積層体50の内部を示す平面図である。
【0080】
図7および
図8に示したように、インダクタL12,L13の各々は、積層方向Tに直交する方向に延びる軸A1を中心に巻回されている。本実施の形態では特に、軸A1は、X方向に平行な方向に延びている。また、インダクタL12の開口部とインダクタL13の開口部は、互いに対向している。
【0081】
なお、インダクタL12,L13は、
図8に示したように、同じ軸A1を中心に巻回されていてもよい。あるいは、インダクタL12が巻回される第1の軸とインダクタL13が巻回される第2の軸は、互いに異なっていてもよい。この場合、第1の軸と第2の軸は、平行であってもよいし、平行でなくてもよい。
【0082】
インダクタL12の巻回数とインダクタL13の巻回数は互いに異なっている。
図7および
図8に示した例では、インダクタL12,L13の各々は、矩形状のコイルである。矩形状のコイルでは、巻回数について、矩形の1辺につき1/4回と数えてもよい。インダクタL12の巻回数は、3/4回である。インダクタL12の巻回数は、7/4回である。
【0083】
インダクタL12は、1つの導体層部L12aと、2つのスルーホール列T2a,T2bとを含んでいる。導体層部L12aは、スルーホール71T2a,71T2bによって互いに接続された2つの導体層712,722によって構成されている。スルーホール列T2aは、スルーホール54T2a,55T2a,56T2a,60T2a,61T2a,62T2a,71T2aが直列に接続されることによって構成されている。スルーホール列T2bは、スルーホール55T2b,56T2b,60T2b,61T2b,62T2b,71T2bが直列に接続されることによって構成されている。導体層部L12aとスルーホール列T2a,T2bは、軸A1の周りを周回するように、スルーホール列T2a、導体層部L12aおよびスルーホール列T2bの順に接続されている。
【0084】
インダクタL13は、3つの導体層部L13a,L13b,L13cと、2つのスルーホール列T3a,T3bと、2つのスルーホール列T3cとを含んでいる。導体層部L13aは、スルーホール71T3a,71T3cによって互いに接続された2つの導体層713,723によって構成されている。導体層部L13bは、2つのスルーホール60T3cによって互いに接続された2つの導体層603,613によって構成されている。導体層部L13cは、スルーホール71T3b,71T3cによって互いに接続された2つの導体層713,723によって構成されている。
【0085】
スルーホール列T3aは、スルーホール54T3a,55T3a,56T3a,60T3a,61T3a,62T3a,71T3aが直列に接続されることによって構成されている。スルーホール列T3bは、スルーホール55T3b,56T3b,60T3b,61T3b,62T3b,71T3bが直列に接続されることによって構成されている。2つのスルーホール列T3cは、それぞれ、スルーホール60T3c,61T3c,62T3c,71T3cが直列に接続されることによって構成されている。
【0086】
導体層部L13a~L13cとスルーホール列T3a~T3cは、軸A1の周りを周回するように、スルーホール列T3a、導体層部L13a、2つのスルーホール列T3cの一方、導体層部L13b、2つのスルーホール列T3cの他方、導体層部L13cおよびスルーホール列T3bの順に接続されている。
【0087】
図1に示したように、キャパシタC12は、インダクタL12,L13に対して並列に接続されている。インダクタL12のスルーホール列T2aとインダクタL13のスルーホール列T3aは、キャパシタC12を構成する導体層542に接続されている。インダクタL12のスルーホール列T2bとインダクタL13のスルーホール列T3bは、キャパシタC12を構成する導体層552に接続されている。積層方向Tに平行な一方向から見たときに、導体層部L12a,L13a~L13cは、導体層542,552と重なっている。
【0088】
図7および
図8に示したように、インダクタL12,L13は、X方向にこの順に並んでいる。インダクタL12,L13が並ぶ方向の先(X方向の先)には、インダクタL22が配置されている。
図7および
図8に示したように、インダクタL22は、積層方向Tに直交する方向に延びる軸A2を中心に巻回されている。本実施の形態では特に、軸A2は、Y方向に平行な方向に延びている。また、インダクタL22の開口部は、インダクタL12,L13の各々の開口部とは対向していない。
【0089】
インダクタL22は、矩形状のコイルである。インダクタL22の巻回数は、11/4回である。
【0090】
インダクタL22は、5つの導体層部L22a,L22b,L22c,L22d,L22eと、2つのスルーホール列T5a,T5bと、4つのスルーホール列T5cとを含んでいる。導体層部L22aは、スルーホール71T5a,71T5cによって互いに接続された2つの導体層715,725によって構成されている。導体層部L22bは、2個のスルーホール60T5cによって互いに接続された2つの導体層603,613によって構成されている。導体層部L22cは、2個のスルーホール71T5cによって互いに接続された2つの導体層715,725によって構成されている。導体層部L22dは、他の2個のスルーホール60T5cによって互いに接続された他の2つの導体層603,613によって構成されている。導体層部L22eは、スルーホール71T5b,71T5cによって互いに接続された2つの導体層715,725によって構成されている。
【0091】
スルーホール列T5aは、スルーホール54T5a,55T5a,56T5a,60T5a,61T5a,62T5a,71T5aが直列に接続されることによって構成されている。スルーホール列T5bは、スルーホール52T5b,53T5b,54T5b,55T5b,56T5b,60T5b,61T5b,62T5b,71T5bが直列に接続されることによって構成されている。4つのスルーホール列T5cは、それぞれ、スルーホール60T5c,61T5c,62T5c,71T5cが直列に接続されることによって構成されている。
【0092】
導体層部L22a~L22eとスルーホール列T5a~T5cは、軸A2の周りを周回するように、スルーホール列T5a、導体層部L22a、スルーホール列T5c、導体層部L22b、スルーホール列T5c、導体層部L22c、スルーホール列T5c、導体層部L22d、スルーホール列T5c、導体層部L22eおよびスルーホール列T5bの順に接続されている。
【0093】
次に、本実施の形態に係る電子部品1の作用および効果について説明する。本実施の形態では、第1のフィルタ10に設けられたインダクタL12,L13は、互いに並列に接続されている。また、インダクタL12の巻回数とインダクタL13の巻回数は、互いに異なっている。これにより、本実施の形態によれば、Q値を大きくしながら、所望の特性を実現することができる。以下、この効果について、シミュレーションの結果を参照して説明する。
【0094】
シミュレーションでは、比較例のモデルと実施例のモデルを用いた。比較例のモデルは比較例の電子部品のモデルである。比較例の電子部品の構成は、インダクタL13が設けられていない点を除いて、本実施の形態に係る電子部品1の構成と同じである。実施例のモデルは、本実施の形態に係る電子部品1のモデルである。
【0095】
シミュレーションでは、第1のフィルタ10の第1の通過帯域の上限の周波数が2.2GHzとなり、第2のフィルタ20の第2の通過帯域の下限の周波数が2.3GHzとなるように、比較例のモデルと実施例のモデルを設計した。そして、比較例のモデルと実施例のモデルのそれぞれについて、第1のポート2と第2のポート3との間の通過減衰特性と、第1のポート2と第3のポート4との間の通過減衰特性を求めた。また、比較例のモデルにおけるインダクタL12のQ値と、実施例のモデルにおけるインダクタL12,L13よりなる並列回路部分のQ値を求めた。
【0096】
図9は、比較例のモデルの通過減衰特性を示す特性図である。
図10は、実施例のモデルの通過減衰特性を示す特性図である。
図9および
図10において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。また、
図9において、符号81は、第1のポート2と第2のポート3との間の通過減衰特性を示し、符号82は、第1のポート2と第3のポート4との間の通過減衰特性を示している。
図10において、符号83は、第1のポート2と第2のポート3との間の通過減衰特性を示し、符号84は、第1のポート2と第3のポート4との間の通過減衰特性を示している。
【0097】
比較例のモデルでは、第1の通過帯域の上限の周波数における挿入損失の大きさ(減衰量の絶対値)は、1.76dBであった。実施例のモデルでは、第1の通過帯域の上限の周波数における挿入損失の大きさは、1.66dBであった。また、比較例のモデルにおけるインダクタL12のQ値は67であり、実施例のモデルにおけるインダクタL12,L13よりなる並列回路部分のQ値は77であった。シミュレーションの結果から理解されるように、本実施の形態によれば、Q値を大きくしながら、第1のフィルタ10について、ローパスフィルタとして十分な特性を実現することができる。
【0098】
なお、シミュレーションでは、比較例のモデルと実施例のモデルのいずれにおいても、第2のフィルタ20については、ハイパスフィルタとして十分な特性を有していた。
【0099】
以下、本実施の形態のその他の効果について説明する。前述のように、本実施の形態では、キャパシタC12は、インダクタL12,L13に対して並列に接続されている。積層方向Tに平行な一方向から見たときに、インダクタL12の導体層部L12aおよびインダクタL13のL13a~L13cは、キャパシタC12を構成する導体層542,552と重なっている。このように、本実施の形態では、積層体50内の空間を効率よく利用して、電子部品1を小型化している。
【0100】
また、前述のように、本実施の形態では、インダクタL22は、インダクタL12,L13が並ぶ方向の先(X方向の先)に配置されている。電子部品1を小型化すると、インダクタL12,L13とインダクタL22との間の電磁界結合が強くなりすぎて、例えば、第2のポート3と第3のポート4との間のアイソレーションが低下する等、所望の特性を実現することができないおそれがある。これに対し、本実施の形態では、インダクタL22の開口部が、インダクタL12,L13の各々の開口部とは対向しないように、インダクタL22を配置している。これにより、本実施の形態によれば、所望の特性を実現しながら、積層体50内の空間を効率よく利用して、電子部品1を小型化することができる。
【0101】
また、本実施の形態では、インダクタL12,L13よりなる並列回路部分は、比較的インダクタンスが小さいインダクタを代替している。これにより、本実施の形態によれば、インダクタL12,L13の各々の巻回数を少なくして、電子部品1を小型化することができる。なお、電子部品1の構成によっては、比較的インダクタンスが大きいインダクタ、すなわち巻回数が比較的多いインダクタの代替として、インダクタL12,L13よりなる並列回路部分と同様の構成を有する並列回路部分を用いてもよい。
【0102】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明の電子部品は、第1のフィルタ10のみを備えた電子部品であってもよいし、インダクタL12,L13を含むローパスフィルタ以外の共振回路を備えた電子部品であってもよいし、インダクタL12,L13のみを備えた電子部品であってもよい。
【0103】
また、第2のフィルタ20は、インダクタL12,L13よりなる並列回路部分と同様の構成を有する並列回路部分を含んでいてもよい。
【0104】
以上説明したように、本発明の積層型電子部品は、第1のインダクタと、第1のインダクタに対して並列に接続された第2のインダクタと、第1のインダクタおよび第2のインダクタを一体化するための積層体であって、積層された複数の誘電体層を含む積層体とを備えている。第1のインダクタと第2のインダクタの各々は、複数の誘電体層の積層方向に直交する方向に延びる軸を中心に巻回されている。第1のインダクタの巻回数と第2のインダクタの巻回数は、互いに異なっている。
【0105】
本発明の積層型電子部品において、第1のインダクタと第2のインダクタの各々は、少なくとも1つの導体層部と、複数のスルーホール列とを含んでいてもよい。複数のスルーホール列の各々は、2つ以上のスルーホールが直列に接続されることによって構成されていてもよい。少なくとも1つの導体層部と複数のスルーホール列は、軸の周りを周回するように交互に接続されていてもよい。
【0106】
また、本発明の積層型電子部品において、第1のインダクタの開口部と第2のインダクタの開口部は、互いに対向していてもよい。
【0107】
また、本発明の積層型電子部品は、更に、第1の信号端子と、第2の信号端子と、第1の信号端子と第2の信号端子とを接続する信号経路とを備えていてもよい。第1のインダクタと第2のインダクタの各々の両端は、信号経路に接続されていてもよい。
【0108】
また、本発明の積層型電子部品は、更に、第1のインダクタおよび第2のインダクタを含むローパスフィルタを備えていてもよい。
【0109】
また、本発明の積層型電子部品は、更に、第1のインダクタと第2のインダクタの各々に対して並列に接続されたキャパシタを備えていてもよい。この場合、第1のインダクタと第2のインダクタの各々は、少なくとも1つの導体層部と、複数のスルーホール列とを含んでいてもよい。複数のスルーホール列の各々は、2つ以上のスルーホールが直列に接続されることによって構成されていてもよい。少なくとも1つの導体層部と複数のスルーホール列は、軸の周りを周回するように交互に接続されていてもよい。キャパシタは、キャパシタ用導体層を含んでいてもよい。第1のインダクタと第2のインダクタの各々の少なくとも1つの導体層部は、積層方向に平行な一方向から見たときに、キャパシタ用導体層と重なっていてもよい。
【0110】
また、本発明の積層型電子部品は、更に、積層方向に直交する方向に延びる他の軸を中心に巻回された第3のインダクタを備えていてもよい。第3のインダクタは、第1のインダクタと第2のインダクタが並ぶ方向の先に配置されていてもよい。第3のインダクタの開口部は、第1のインダクタの開口部および第2のインダクタの開口部とは対向しなくてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1…電子部品、2…第1のポート、3…第2のポート、4…第3のポート、5,6…信号経路、10…第2のフィルタ、20…第2のフィルタ、50…積層体、50A…底面、50B…上面、50C~50F…側面、51~73…誘電体層、C11~C13,C21~C26…キャパシタ、L11~L13,L21,L22…インダクタ。