(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064092
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】複合容器
(51)【国際特許分類】
B65D 33/02 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B65D33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172440
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍太
(72)【発明者】
【氏名】塚本 龍一
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AA04
3E064AB14
3E064BA27
3E064BA36
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC16
3E064HM01
3E064HN17
3E064HN18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】口頸部材がパウチの開口端部をインサートして射出成形されている形態の複合容器であり、開口端部の内径には±2mm程度の誤差が存在するにも拘わらず、射出成形された口頸部材の底壁の直下においてサイドシール部の内側に空隙が生成されることが回避され、開口端部の密封が毀損されることがない複合容器を提供する。
【解決手段】複合容器は、開口端から下方に延在する少なくとも1個のサイドシール部10aが配設されているパウチと、開口端部をインサートして射出成形された口頸部材とから構成されている。該口頸部材は、開口端に当接された環形状の底壁、この底壁から垂下し且つ開口端部の内周面に密着された筒形状の垂下壁、パウチのサイドシール部が存在する部位において、底壁から下方に且つ垂下壁から外方に突出し内面に密着された内側突出部28、及び底壁から下方に突出し、サイドシール部の両面に密着された一対の外側突出部30を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口端から下方に延在する少なくとも1個のサイドシール部が配設されている合成樹脂フィルム製パウチと、該パウチの開口端部をインサートして射出成形された合成樹脂製口頸部材とから構成された複合容器において、
該口頸部材は、
該パウチの開口端に当接乃至近接された環形状の底壁、
該底壁から垂下し且つ該パウチの該開口端部の内周面に密着された筒形状の垂下壁、
該パウチの該サイドシール部が存在する部位において、該底壁から下方に且つ該垂下壁から外方に突出し、該パウチの内面に密着された内側突出部、及び
該パウチの該サイドシール部が存在する部位において、該パウチの該サイドシール部を挟んで該底壁から下方に突出し、一方は該サイドシール部の片面に密着され他方は該パウチの該サイドシール部の他面に密着された一対の外側突出部、
を含むことを特徴とする複合容器。
【請求項2】
該内側突出部の下方への突出長さと該外側突出部の下方への突出長さとは同一である、請求項1記載の複合容器。
【請求項3】
該外側突出部の外側縁は該パウチの該サイドシール部の外側縁よりも内側に位置している、請求項1又は2記載の複合容器。
【請求項4】
該パウチには該サイドシール部が周方向に180度の間隔をおいて一対配設されており、該サイドシール部の各々に関して該内側突出部及び該外側突出部が配設されている、請求項1記載の複合容器。
【請求項5】
該パウチの開口端は円形状であり、該口頸部材の該底壁は円環形状であり、該口頸部材の該垂下壁は円筒形状である、請求項1記載の複合容器。
【請求項6】
該口頸部材は該底壁から上方に延出する円筒形状の装着壁を含み、該装着壁の外周面には雄螺条が形成されている、請求項5記載の複合容器。
【請求項7】
請求項1に記載の複合容器を射出成形するための成形型にして、
内側成形型手段と外側成形型手段とから構成され、
該内側成形型手段は、少なくとも該口頸部材の該垂下壁の内周面及び該底壁の内周面を規定する内側型部材を含み、
該外側成形型手段は相互に面対称をなす開閉自在な一対の外側型部材を含み、
該一対の外側型部材の各々は、協働して底壁の外周面及び下面を規定すると共に該パウチの該開口端部の外周面に当接される内周面と2個の周方向端面を有し、該一対の外側部材の一方の該周方向端面は他方の該周方向端面に当接され、
該一対の外側部材の各々の該周方向端面には、該パウチの該サイドシール部を受け入れる窪みが形成されていると共に、該窪みの内側端部且つ上端部には該内周面における該パウチの該開口端部の外周面に当接される部分から半径方向外側に且つ該底壁の下面を規定する面から下方に延びる凹部が形成されている、
ことを特徴とする成形型。
【請求項8】
該凹部の半径方向長さは該サイドシール部の幅と同一又はそれより小さいが、該パウチの該開口端部の内径の誤差の1/2よりも大きい、請求項7記載の成形型。
【請求項9】
該内側型部材には周方向に等間隔をおいて複数個の合成樹脂流入路が形成されており、該合成樹脂流入路の各々は上下方向に延びる主部と該主部の下端から下方に半径方向外側に傾斜して延び該内側成形型手段における該垂下壁の内周面を規定する面に開口する下流部を有する、請求項7又は8記載の成形型。
【請求項10】
該パウチには該サイドシール部が周方向に180度の間隔をおいて一対配設されており、該合成樹脂流入路は周方向において周方向に180度の間隔をおいて2個配設されており、該合成樹脂流入路の各々は周方向において該サイドシール部に整合されている、請求項9記載の成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂フィルム製パウチとこのパウチの開口端部をインサートして射出成形された合成樹脂製口頸部材とから構成された複合容器、及びかかる複合容器を成形するための成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、円形状の開口端を有する合成樹脂フィルム製パウチとこのパウチの開口端部の内周面に熱溶着された口頸部材(口部リング)とから構成された複合容器(袋カップ)が開示されている。パウチには180度の間隔をおいて一対のサイドシール部が配設されており、サイドシール部の各々はパウチの開口端から下方に延在している。口頸部材は円環形状の底壁(フランジ部)とこの底壁から下方に垂下する円筒形状の垂下壁(胴部)とを含み、垂下壁の外周面がパウチの開口部の内周面に熱溶着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている上述したとおりの複合容器は、パウチの開口端部内に口頸部材の垂下壁を所要通りに位置付けてパウチの開口端部を垂下壁に熱溶着して形成されている故に、形成工程が比較的煩雑であり、そしてまたパウチの開口端部と口頸部材のスカ壁との接合強度が必ずしも充分ではない、という問題がある。かかる問題を解決するために、本発明者等は、パウチの開口端部をインサートして口頸部材を射出成形することを試みた。しかしながら、口頸部材が円環形状の底壁とこの底壁から垂下する円筒形状の垂下壁とを有する形態の口頸部材を射出成形する場合には、後に更に詳述する如く、パウチの開口端部の内径には通常±2mm程度の誤差が存在することに起因して、射出成形された口頸部材の底壁の直下においてサイドシール部の内側に空隙が生成され、かかる空隙によってパウチの開口端部の密封が毀損されてしまう虞があることが判明した。
【0005】
本発明は、上記のとおりの事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、口頸部材がパウチの開口端部をインサートして射出成形されている形態の複合容器であり、パウチの開口端部の内径には±2mm程度の誤差が存在するにも拘わらず、射出成形された口頸部材の底壁の直下においてサイドシール部の内側に空隙が生成されることが確実に回避され、パウチの開口端部の密封が毀損されることがない、新規且つ改良された複合容器を提供することである。
【0006】
本発明の他の技術的課題は、上記とおりの新規且つ改良された複合容器を成形するための成形型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、射出成形された口頸部材の底壁の直下においてサイドシール部の内側に空隙が生成される原因を究明し、鋭意及び実験検討を重ねた結果として、パウチのサイドシール部が存在する部位において、底壁から下方に且つ垂下壁から外方に突出し、パウチの内面に密着された内側突出部と、パウチのサイドシール部が存在する部位において、パウチのサイドシールを挟んで底壁から下方に突出し、一方はサイドシール部の片面に密着され他方はパウチのサイドシール部の他面に密着された一対の外側突出部とを口頸部材に付設することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する複合容器として、
開口端から下方に延在する少なくとも1個のサイドシール部が配設されている合成樹脂フィルム製パウチと、該パウチの開口端部をインサートして射出成形された合成樹脂製口頸部材とから構成された複合容器において、
該口頸部材は、
該パウチの開口端に当接乃至近接された環形状の底壁、
該底壁から垂下し且つ該パウチの該開口端部の内周面に密着された筒形状の垂下壁、
該パウチの該サイドシール部が存在する部位において、該底壁から下方に且つ該垂下壁から外方に突出し、該パウチの内面に密着された内側突出部、及び
該パウチの該サイドシール部が存在する部位において、該パウチの該サイドシール部を挟んで該底壁から下方に突出し、一方は該サイドシール部の片面に密着され他方は該パウチの該サイドシール部の他面に密着された一対の外側突出部、
を含むことを特徴とする複合容器が提供される。
【0009】
好ましくは、該内側突出部の下方への突出長さと該外側突出部の下方への突出長さとは同一である。
該外側突出部の外側縁は該パウチの該サイドシール部の外側縁よりも内側に位置しているのが好都合である。好適形態においては、該パウチには該サイドシール部が周方向に180度の間隔をおいて一対配設されており、該サイドシール部の各々に関して該内側突出部及び該外側突出部が配設されている。該パウチの開口端は円形状であり、該口頸部材の該底壁は円環形状であり、該口頸部材の該垂下壁は円筒形状であるのが好都合である。望ましくは、該口頸部材は該底壁から上方に延出する円筒形状の装着壁を含み、該装着壁の外周面には雄螺条が形成されている。
【0010】
本発明によれば、更に、上記のとおりの複合容器を成形するための成形型として、
内側成形型手段と外側成形型手段とから構成され、
該内側成形型手段は、少なくとも該口頸部材の該垂下壁の内周面及び該底壁の内周面を規定する内側型部材を含み、
該外側成形型手段は相互に面対称をなす開閉自在な一対の外側型部材を含み、
該一対の外側型部材の各々は、協働して底壁の外周面及び下面を規定すると共に該パウチの該開口端部の外周面に当接される内周面と2個の周方向端面を有し、該一対の外側部材の一方の該周方向端面は他方の該周方向端面に当接され、
該一対の外側部材の各々の該周方向端面には、該パウチの該サイドシール部を受け入れる窪みが形成されていると共に、該窪みの内側端部且つ上端部には該内周面における該パウチの該開口端部の外周面に当接される部分から半径方向外側に且つ該底壁の下面を規定する面から下方に延びる凹部が形成されている、
ことを特徴とする成形型が提供される。
【0011】
好ましくは、該凹部の径方向長さは該サイドシール部の幅と同一又はそれより小さいが、該パウチの該開口端部の内径の誤差の1/2よりも大きい。該内側型部材には周方向に等間隔をおいて複数個の合成樹脂流入路が形成されており、該合成樹脂流入路の各々は上下方向に延びる主部と該主部の下端から下方に半径方向外側に傾斜して延び該内側型部材における該垂下壁の内周面を規定する面に開口する下流部を有するのが好適である。該パウチには該サイドシール部が周方向に180度の間隔をおいて一対配設されており、該合成樹脂流入路は周方向において周方向に180度の間隔をおいて2個配設されており、該合成樹脂流入路の各々は周方向において該サイドシール部に整合されているのが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に従って構成された複合容器においては、パウチのサイドシール部が存在する部位において、底壁から下方に且つ垂下壁から外方に突出し、パウチの内面に密着された内側突出部と、パウチのサイドシール部が存在する部位において、パウチのサイドシールを挟んで底壁から下方に突出し、一方はサイドシール部の片面に密着され他方はパウチのサイドシール部の他面に密着された一対の外側突出部とが口頸部材に付設されている故に、口頸部材がパウチの開口端部をインサートして射出成形されている形態の複合容器であり、パウチの開口端部の内径には±2mm程度の誤差が存在するにも拘わらず、射出成形された口頸部材の底壁の直下においてサイドシール部の内側に空隙が生成されることが確実に回避され、パウチの開口端部の密封が毀損されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に従って構成された複合容器の好適実施形態を示す正面図。
【
図10】
図7乃至
図9に示すパウチをインサートして
図1乃至
図6に示す複合容器を成形するための成形型を複合容器と共に示す断面図。
【
図11】
図10に示す成形型における内側成形型手段を示す正面図。
【
図14】
図10に示す成形型における外側成形型手段の斜面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成された複合容器の好適実施形態及び本発明に従って構成された複合容器の好適実施形態を成形するための成形型の好適実施形態について、添付図面を参照して更に詳細に説明する。
【0015】
図1乃至
図3を参照して説明すると、本発明に従って構成された複合容器2は、合成樹脂フィルム製パウチ4と後に詳細に説明するとおりパウチ4をインサートして射出成形された合成樹脂製口頸部材6とから構成されている。
【0016】
図7乃至
図9を参照してパウチ4について説明すると、かかるパウチ4は上端に円形であるのが好都合である開口端8を有する。パウチ4は1枚の合成樹脂フィルムから形成する(この場合にはサイドシール部は1個)こともできるが、図示の実施形態においては2枚の合成樹脂フィルムから形成されており、周方向に180度の間隔をおいて2個のサイドシール部10a及び10bが配設されている。更に、図示の実施形態においては、2個のサイドシール部10a及び10bの各々の下端から、夫々、周方向両側に向かって且つ半径方向内側に向かって下方に延びる二股シール12a-1及び12a-2並びに12b-1及び12b-2が配設されていると共に、二股シール12a-1及び12a-2の一方の下端と二股シール12b-1及び12b-2の一方の下端を接続する底シール14-1並びに二股シール12a-1及び12a-2の他方の下端と二股シール12b-1及び12b-2の他方の下端を接続する底シール14-2が配設されている。かくして、開口端8以外は閉じられているコップ形態のパウチ4が形成されている。パウチ4を形成する合成樹脂フィルムは、好ましくは単層フィルム又は複数枚が積層された積層フィルムでよい。好適例としては、後に言及する如く高密度ポリエチレンから形成されているのが好都合である口頸部材6との接着性に優れた低密度ポリエチレン製の内層、ガスバリア性に優れたナイロン製の中間層及び機械的特性に優れたポリエチレンテレフタレート製の外層を有する3層構成の合成樹脂フィルムを挙げることができる。図示のパウチ4は、2枚の合成樹脂フィルムを上記サイドシール部10a及び10b、二股シール12a-1及び12a-2並びに12b-1及び12b-2、底シール14-1及び14-2において加熱溶着することによって形成することができる。パウチ4自体は、本発明に従って構成された複合容器2の新規な特徴を構成するものではなく、当業者には周知の形態でよく、それ故に本明細書においてはパウチ4自体の詳細な説明は省略する。
【0017】
図1乃至
図4を参照して説明を続けると、図示の実施形態における口頸部材6は、円環形状の底壁16及びこの底壁16の内周縁から下方に垂下する円筒形状の垂下壁18を備えている。底壁16は環形状であればよく、従って楕円形又は多角形であってもよい。底壁16の下面は上記パウチ4の上端即ち開口端8に当接乃至近接されているのが好都合である。垂下壁18の内周面の下端部は下方に向かって半径方向外側に傾斜されており、垂下壁18の下端部は下方に向かって厚さが漸次低減されている。後に更に詳述するとおり、口頸部材6は上記パウチ4の開口端部をインサートして射出成形することによって成形されており、口頸部材6の垂下壁18の外周面はパウチ4の開口端部の内周面に接合されている。図示の口頸部材6は、更に、底壁16の上面における幅方向中央から上方に延出する円筒形状の装着壁20を備えている。この装着壁20の外周面の上端部近傍には環状溝22が配設され下端部近傍には環状溝24が配設されている。また、装着壁20の外周面主部には雄螺条26が配設されている。かような口頸部材6はポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン及びポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂から成形することができる。パウチ4が上述したとおり低密度ポリエチレン製の内層、ナイロン製の中間層及びポリエチレンテレフタレート製の外層を有する3層構成の合成樹脂フィルムから形成されている場合には、ポリエチレン製の内層との接着性等の点から口頸部材6は高密度ポリエチレンから形成されているのが好都合である。
【0018】
図1、
図5及び
図6に明確に図示する如く、本発明に従って構成された複合容器2における口頸部材6においては、上記パウチ4のサイドシール部10a及び10bが存在する部位の各々において、底壁16の下面から下方に且つ垂下壁18の外周面から外方に突出し、パウチ4の内面に密着された内側突出部28が配設されていると共に、パウチ4のサイドシール部10a又は10bを挟んで底壁16の下面から下方に突出し、一方はサイドシール部10a又は10bの片面に密着され他方はパウチ4のサイドシール部10a又は10bの他面に密着された一対の外側突出部30が配設されていることが重要である。内側突出部28の下方への突出長さL1と外側突出部30の下方への突出長さL2は実質上同一であり、垂下壁18の垂下長さL3の1/5乃至1/2、特に1/4乃至1/3程度であるのが好ましい。外側突出部30の外側縁はパウチ4のサイドシール部10a又は10bの外側縁よりも幾分内側に位置しているのが望ましい。
【0019】
本発明に従って構成された複合容器2においては、後に更に言及する如く、内側突出部28(及び内側突出部28を成形するために必然的に成形される外側突出部30)が配設されている故に、パウチ4の開口端8の内径に±2mm程度の誤差が存在する場合にも、パウチ4の開口端8の近傍においてパウチ4の内周面と口頸部材6の垂下壁18の外周面との間に空隙が生成されてしまうことが確実に回避され、パウチ4の開口端8の近傍において密封が毀損されることがない。
【0020】
上述したとおりの複合容器2においては、複合容器2内に所要内容物が収容され、そして口頸部材6に蓋(図示していない)が装着されて口頸部材6の頂面に規定されている開口が閉じられる。口頸部材6と同様にポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン及びポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂から形成することができる蓋は周知の形態でよく、例えば円形天面壁とこの天面壁の周縁から垂下する円筒形状のスカート壁とを有し、スカート壁の内周面には雌螺条が形成されており、口頸部材6に被嵌して口頸部材6の装着壁20に形成されている雄螺条26にスカート壁に形成されている雌螺条を螺合することによって口頸部材6に装着される。
【0021】
次に、
図10乃至
図14を参照して、上記パウチ4の開口端部をインサートして口頸部材6を射出成形するための成形型について説明する。成形型は内側成形型手段32と外側成形型手段34とから構成されている。図示の実施形態においては、内側成形型手段32は内側型部材36と付加内側型部材38を含んでいる。
図11及び
図13に明確に図示する如く、内側型部材36は円柱形状の主部36a、短円柱形状の張出部36b及び下方に向かって外径が漸次低減されている逆円錐台形状の下部36cを有する。主部36aの下端部は下方に向かって外径が漸次増大されて張出部36bの外周面に円滑に接続されている。付加内側型部材38は薄肉円筒形状であり、その内径は内側型部材36の主部36aの外径に対応している。口頸部材6を成形する際には、付加内側型部材38が内側型部材36の主部36aに被嵌され、適宜の位置規制手段(図示していない)によって
図10に図示する位置に位置付けられる。かくして、内側型部材36の主部36a及び張出部36bの外周面によって口頸部材6の底壁16の内周面及び垂下壁18の内周面が規定され、付加内側型部材38の外周面によって口頸部材6の装着壁20の内周面が規定され、付加内側型部材38の下端面によって底壁16の上面における半径方向内側領域、即ち装着壁20よりも半径方向内側領域、が規定される。
【0022】
内側型部材36には、周方向に間隔をおいた複数個の位置、図示に場合は180度の角度間隔をおいた2個の位置、において、合成樹脂流入路40a及び40bが形成されている。2個の合成樹脂流入路40の各々は、夫々、パウチ4のサイドシール部10a及び10bの各々に対応して(従って、後述する一対の外側型部材の当接面の各々に対応して)形成されているのが好都合である。合成樹脂流入路40a及び40bの各々は、内側型部材36の上端面から下方に向かって上下方向に延びる主部40a-1及び40b-1と主部40a-1及び40b-1の下端から下方に半径方向外側に傾斜して延び内側型部材36の主部36aの下端部、即ち口頸部材6の垂下壁18の内周面を規定する面、に開口する下流部40a-2及び40b-2を有する。内側型部材36の上面には、合成樹脂流入路40に接続される合成樹脂供給路が配設されている供給路部材(図示していない)が連結されている。
【0023】
図6、
図10と共に
図14を参照して説明すると、外側成形型手段34は一対の外側型部材42a及び42bを含んでいる。一対の外側型部材42a及び42bは相互に面対称形状であり、後述する周方向端面が相互に当接される閉位置とかかる閉位置から半径方向外方に変位した開位置との間を移動自在である。
図14を参照することによって明確に理解されるとおり、一対の外側型部材42a及び42bの各々は、略半円周形状の内周面44a及び44bと周方向端面46a-1及び46a-2並びに46b-1及び46b-2を有する(
図14には、外側型部材42aの内周面44a並びに周方向端面46a-1及び46a-2を図示しているが、外側型部材42bに関しては内周面44bの一部しか図示しておらず、外側型部材42bの図示されていない部分の符号は外側型部材42aの対応する部位の複合の後に括弧を付して表示した)。
図14と共に
図10を参照することによって理解される如く、内周面44a及び44bは協働して口頸部材6の底壁16の外周面及び下面、垂下壁18の外周面並びに装着壁20の外周面を規定する。周方向端面46a-1と周方向端面46b-1とは相互に当接され、周方向端面46a-2と周方向端面及び46b-2とも相互に当接される。周方向端面46a-1及び46a-2並びに46b-1及び46b-2の各々には、上記パウチ4のサイドシール部10a及び10bを受け入れる浅い窪み48a-1及び48a-2並びに48b-1及び48b-2が配設されている。更に、周方向端面46a-1及び46a-2並びに46b-1及び46b-2の各々における窪み48a-1及び48a-2並びに48b-1及び48b-2の内側端部且つ上端部には、内周面44a及び44bにおけるパウチ4の開口端部の外周面に当接される部分から半径方向外側に且つ口頸部材6の底壁16の下面を規定する面から下方に延びる凹部50a-1及び50a-2並びに50b-1及び50b-2が配設されている。凹部50a-1及び50a-2並びに50b-1及び50b-2の半径方向長さはパウチ4のサイドシール部10a及び10bの幅と同一又はそれより小さいが、パウチ4の開口端部の内径の誤差の1/2よりも大きく、それ故に口頸部材6には一対の外側突出部30が形成されると共に内側突出部28が確実に形成されるのが望ましい(
図6も参照されたい)。凹部50a-1及び50a-2並びに50b-1及び50b-2の半径方向長さがパウチ4の開口端部の内径の誤差の1/2と実質上同一又はそれより小さい場合には、パウチ4の開口端部の内径が所定寸法より最大誤差分だけ大きいと内側突出部28が形成されない事態が発生する。図示の実施形態においては、外側成形型手段34は一対の外側型部材42a及び42bの上面に積層される付加外側型部材52も含み、この付加外側型部材52の下面縁部によって装着壁20の上端面が規定される。
【0024】
上述したとおりの成形型を使用して口頸部材6を成形する際には、
図10、
図13及び
図14に図示するとおり、パウチ4の開口端部が成形型内にインサートされる。更に詳細には、パウチ4の開口端部を内側型部材36の主部36aの下端部及び張出部36bに被嵌し、パウチ4のサイドシール部10a及び10bの上端部を一対の外側型部材42a及び42bの周方向端面46a-1及び46a-2並びに46b-1及び46b-2における窪み48a-1及び48a-2並びに48b-1及び48b-2内に位置させて緊密に把持する。一対の外側型部材42a及び42bの内周面44a及び44bの下部はパウチ4の開口端部の外周面に密接される。そして、合成樹脂流入路40a及び40bを通して溶融状態の合成樹脂材料を成形型に規定されている成形空洞内に流入し口頸部材6が成形される。そして、一対の外側型部材42aの周方向端面46a-1及び46a-2並びに46b-1及び46b-2における窪み48a-1及び48a-2並びに48b-1及び48b-2に凹部50a-1及び50a-2並びに50b-1及び50b-2の存在により、口頸部材6には内側突出部28と共に一対の外側突出部30が形成される(
図6も参照されたい)。
【0025】
而して、一対の外側型部材42aの周方向端面46a-1及び46a-2並びに46b-1及び46b-2における窪み48a-1及び48a-2並びに48b-1及び48b-2に凹部50a-1及び50a-2並びに50b-1及び50b-2が形成されていない場合には、口頸部材6に上述した内側突出部28が形成されず、成形型から複合容器2を取り出すと内側突出部28に対応した空隙が生成され、かかる空隙に起因してパウチ4の開口端部の密封が毀損されてしまう虞がある。
【0026】
而して、図示の実施形態においては、口頸部材6は底壁16及び垂下壁18に加えて装着壁20を含んでいるが、口頸部材6が底壁16及び垂下壁18のみから構成されており装着壁20を含んでいない場合には、上述した内側成形型手段32と外側成形型手段34における装着壁20を規定する部材乃至部位を省略し、底壁16の上面は内側型部材36或いは一対に外側型部材42a及び42bに付設した部位によって規定することができる。また、図示の実施形態においては、口頸部材6の垂下壁18は底壁16よりも薄肉であって垂下壁18は比較的弾性変形容易である。そのため、口頸部材6の成形が完了した後にこれを内側型部材36から型抜きする際に垂下壁18が内側型部材36に引っかかったとしても、垂下壁18が弾性変形することで上記引っかかりは解消され、口頸部材6を内側型部材36から充分容易に型抜きすることができる。一方、底壁16が垂下壁18よりも薄肉で底壁16が比較的弾性変形容易な場合には、口頸部材6の強度が不足し好ましくない。例えば、垂下壁18の内径が90mmである場合には、垂下壁18の肉厚は0.5乃至2.0mm、底壁16の肉厚は1乃至10mmであるのが好適である。
【符号の説明】
【0027】
2:複合容器
4:パウチ
6:口頸部材
8:パウチの開口端
10a:サイドシール部
10b:サイドシール部
16:底壁
18:垂下壁
28:内側突出部
30:外側突出部
32:内側成形型手段
34:外側成形型手段
36:内側型部材
40a:合成樹脂流入路
40b:合成樹脂流入路
42a:外側型部材
42b:外側型部材
44a:内周面
44b:内周面
46a-1:周方向端面
46a-2:周方向端面
46b-1:周方向端面
46b-2:周方向端面
48a-1:窪み
48a-2:窪み
48b-1:窪み
48b-2:窪み
50a-1:凹部
50a-2:凹部
50b-1:凹部
50b-2:凹部